時期は梅雨。
雨ばかりが降るこの季節は、自然と人々の外出が減り、人間の里には陰鬱な空気が蔓延していた。
その空気は、やがて妖怪にも伝搬し、いつしか幻想郷全体が微妙な雰囲気になっていた。
そして、ここ博麗神社の巫女、博麗霊夢も気分が落ち込んでいた。
「ぴえん」
振り続ける雨を見ながら、博麗霊夢が何とも言えない声を発する。
博麗神社は古い建物であるため、当然のようにそこら中で雨漏りが起きていた。
梅雨の間、彼女はその対処に追われていたのだ。
「ヨシ!」
金ダライを設置し終えた博麗霊夢は、他に雨漏りがないか確認した。
「ぴえん」
そして、彼女に虚無の時間が訪れた。
異変も起こらず、知り合いも現れずの毎日に、彼女はいい加減飽き飽きしていたのだ。
そんな時、彼女は神々の宣託を受け取った。
1週間後、幻想郷は洗濯日和になると……
「ヨシ!」
博麗霊夢は、すぐさま博麗神社の倉庫に向かった。
そして、倉庫の中から大量の酒を持ち出した。
洗濯日和の宣託は即ち、1週間後の天気が晴れになるという意味に他ならない。
それなら、ここらでパーッと宴会を開こう、と彼女は考えたのだ。
「ヨシ!」
酒の状態をチェックした博麗霊夢が満足そうに言った。
続けて、博麗霊夢は雨の中、神社の外に出ていった。
宴会の参加者を集めるためである。
彼女は、知り合いに片っ端から声をかけた。
宴会に参加してくれる者を見つけた時には「ヨシ!」と喜んだ。
予定が合わず参加できない者がいた時には「ぴえん」と泣いた。
そして、博麗霊夢は雨の中、幻想郷のありとあらゆる場所を回った。
「ヨシ!」
彼女はあらゆる手を尽くした。
お酒もたくさん用意したし、酒の肴もいっぱい用意した。
それに、宴会になる程度には人数を集めることができた。
後は、当日を待つだけである。
「ぴえん」
博麗霊夢はくしゃみをした。
雨に濡れたせいである。
そして、宴会当日。
天気は生憎の雨!
それも土砂降り!!
「ぴえん」
博麗霊夢は、泣くに泣けずに変な声を出した。
いったい、この1週間は何だったのだろうか。
彼女は、怒りを覚えた。
矛先は、無論のこと宣託を与えた神々である。
そして、彼女は怒りに任せて、博麗神社のご神体を蹴り飛ばした。
「ヨシ!」
満足した彼女は、雨漏りの対処に向かった。
かくして、梅雨の宴会は中止となったのだった。
なお、しばらくして神々の天罰により、幻想郷中に謎の妖怪「ぴえん」が大量発生。
謎のダンスと歌で人々を恐怖のどん底に陥れるが、それはまた別の話である。