「……はい」
『あ、ピンクサークルから来ました。なつみです』
「解りました、今開けます」
「あ、ピンクサークルから来ました、なつみです。今日は120分コースって聞いたんですけど大丈夫ですか?」
「あー、はい。大丈夫です。……取り敢えずあがってください」
「はーい、お邪魔します」
「茶でも飲みます?」
「あ、大丈夫です」
「一人暮らしですか?」
「はい」
「へえ〜、若そうに見えるのに。結構いいマンションですよね、ここ」
「別にそんないいマンションでも無いですよ……ベッド、そっちの部屋です」
「はーい、わかりました。取り敢えず脱ぎます?」
「あ、はい」
「胸、でかいですね」
「そうですね、まあ普通の人よりはおっきいと思います……ていうか、確か電話の時点で「胸が大きい人がいい」って希望出してませんでした?」
「そうですね、出しましたけど……なんか、デリヘル呼ぶの初めてなんで。本当に胸でかい人が来るって思ってなくて」
「あー。確かにあれですよね。ネットとかで「デリヘル呼んだら詐欺られた」みたいなのありますよね」
「なんかすみません」
「いや別にいいですよ。あたしも「思ってたのと違う」って言われてチェンジ食らったこと何回もありますし」
「やっぱ、あるんですか」
「そりゃまあ、勿論」
「……さて。責めるのと責められるの、どっちが好きですか?」
「……どっちかっていうと、責められる方が」
「うん、なんとなくそうかなって思いました。乳首感じます?」
「あー……彼女に弄られたことないんで解らないです」
「彼女いるんですか?」
「……あー、いや。いません。つい最近別れました」
「あら、ごめんなさい」
「いや、いいんです。だからデリヘル呼んだみたいなとこありますから……なんていうか、ダサいですよね」
「そうですか?あたし別にそうは思いませんけど。結構いますよ、そういう人」
「じゃあ試しに乳首舐めてみますね」
「あー、はい。お願いします」
「…………」
「………………んぉっ」
「んふっ。感じてますね」
「思ったより気持ちよかった、です」
「やっぱりMの気ありますよ……結構勃ってきてるし」
「……なんか、恥ずかしいですね」
「じゃあ、取り敢えず手でやりますね」
「……あの、こんなこと聞いたらダメかもしれないですけど」
「なんですか?」
「……なんで、デリ嬢やろうって思ったんですか?」
「あー……」
「いや、失礼ですよね。こんなこと聞いたら」
「あたしはまあ、別に失礼ともなんとも思わないですよ。いやすっごく簡単な話で、お金ですね」
「あたし今21なんですけど、実家が東京じゃなくて長野なんですよ。今一人暮らしで看護学校行ってるんですけど、学費高いし、実習多いから中々ちゃんとしたシフトのバイトとか出来ないし、知り合いもこの辺にいなかったから。手っ取り早くお金稼げて、空いてる時間に入れる仕事ってもう風俗しかないかなって思って」
「看護学校……頭良いんですね」
「いや、別にそんなことも無いですけどね。まあでも、だから大学卒業したら辞めますけどね。割とそういう子が多いと思いますよ?学費払う為にやってて、卒業したらやめる!って決めてる大学生」
「やっぱ金になるんですか……なりますよね。俺みたいなやつがこうやって呼ぶから」
「まあ、普通のバイトよりは稼げますね〜。……ちょっと濡らしますね」
「実際、まああたしには合ってる仕事だとは思うんですよ。あたし性欲強いし」
「好きなことを仕事に、ってやつですか?」
「うーん、そうなんですかね?いやでも30とかでこの仕事してる人はあたし的には結構キツいと思いますよ……もしかして出そうですか?」
「そうですね、そろそろ出ます」
「はーい、いつでもどうぞ」
「はぁ……」
「割と出ましたね」
「出ましたね……ちょっと一瞬休憩してもいいですか?」
「あたしは全然いいですよ。時間だけ気にしといて貰えたら」
「あー、そうですね。120分だから……ちょっと五分くらい」
「どーぞ」
「…………合ってる仕事ってなんなんでしょうね」
「ええ?それは流石にあたしは解んないですけど」
「まあ、そりゃそうですよね。21の、まだ大学生のデリ嬢の子にこんなこと聞いたってしょうがないんですけど」
「お仕事、楽しくないんですか?」
「……まあ、楽しくはないんでしょうね」
「……休憩中手持ち無沙汰ってのもアレですし、さっき手で抜いてる間に質問されたから。お返しで質問とかしちゃってもいいですか?」
「……まあ、全然それくらいは構いませんけど」
「お兄さん、どうして彼女に振られたんですか?」
「……俺、別れたとは言ったけど振られたって言いましたっけ」
「あ、ごめんなさい。勝手にあたしの中で振られたことになってました」
「いや、まあ実際振られたんでいいんですけど。そうですね……まあ、一言で言うなら「冷められた」んです」
「二年くらい付き合ってたのかな。一つ歳下で、友達の紹介で仲良くなったんですけど。別れるまでは同棲もしてました」
「あー、だから一人暮らしにしては広い家だったんですね」
「そういうことです。俺は彼女のこと好きだったし、彼女もまあ、結構言葉にしてくれるタイプだったんで。好きってよく言ってくれました」
「で、俺は結婚もちょっと考えてたんです。まだ俺25ですけど、頑張って金貯めて、ちゃんと養えるようにって。その為に仕事頑張ってたんですけど、向こうからしたらそれが「自分に冷めてて仕事の方が楽しい」って思ってたらしく」
「あー……まあ、よくあるパターンっちゃパターンですね」
「でも、俺は俺で「仕事がきつい」って思い始めてたんですよ。「仕事をしてお金を貰う」ことと、「お金を貰うために仕事をする」って、似て非なるものだって気付けてなくて。気が付いたら喧嘩が増えてて、いつの間にか……って感じです」
「…………別れてから、俺は何のために金稼いでたんだろうって。その瞬間、仕事すら無意味に思えて、余計仕事がキツく感じて。その時に仕事にすらやり甲斐を見出せて無いことに気がついて、俺何がしたいんだろうなって思って……結局、それでも性欲は出てくるから、その稼いだ金で今日初めてデリヘル呼んで……って感じですね。ホント、ダサくて申し訳ないです」
「……いや、なんかこっちこそごめんなさい。あたしちょっと軽い気持ちで聞いちゃったのに、結構ガチだったから」
「……歳下の初めて会った女の子にこんな話しても、しょうがないっすよね」
「……歳下のデリやってる女に、こんなこと言われたってあんま信用ないとは思うんですけど。大丈夫ですよ、多分」
「あたし、東京出てきて割とすぐこの仕事始めたから、もう三年くらいデリやってますけど。結構色んな人が呼ぶんですよ、デリヘルって。例えば「童貞が恥ずかしいから卒業したい」みたいなのとか。これもまた23とかだったら全然いいですけど、たまに52歳とかで「童貞」っていう人いますし。あんまりこういうこと言っちゃいけないとは思いますけど、もうそういう人見た目からキツいですからね……。他にも、お兄さんみたいに「彼女と別れたから」とか、「嫁ともうやってないから」みたいなとか、「彼女がノーマルプレイしかしてくれないから」みたいなのもありましたね。アブノーマルなことしたいならそういう専門のデリ嬢呼べよ、とは思いましたけど……」
「あのー、何が言いたいかっていうと……あたしもよくわかんないですけど、結構お兄さんって自分のこと今「ダサい」って言ってますけど、もっとダサい理由でデリ呼ぶ人もいるし、結構皆「ダサい」んです。あたしだって正直「ダサい」ですよ。風俗してる子がダサいって訳じゃないですけど、東京出てくる前に親と喧嘩して仕送りとか止められてなかったら、別に不定期シフトでも普通のバイトしてたらなんとか学費とかも多分払えてますし。だからお兄さんの「ダサい」は案外ダサくないし、結構普通のことだと思いますよ」
「あたしだって言ってしまえば「お金を貰うために働いてる」訳ですし。別にいいじゃないですか、デリヘル呼ぶ為に働いたって。あたしでいいなら指名もらったらいつだって抜いてあげますよ?営業外ではお断りですけど」
「……いやホント、歳下の初めて会ったデリ嬢からこんなこと言われたって、それこそ迷惑かもしれないですけど。お兄さん結構イケメンだし、チンコデカいし、お金持ってるみたいだし、真面目そうだし。良い人は絶対見つかると思いますよ?Sっ気のある良い人」
「…………これ、俺追加料金払った方がいいですか?」
「えっ……なんでですか」
「人生相談受けたみたいな気分で。エッチ以外は別料金ですよね?」
「いやいいですよ別料金とか。時間内だったらNGプレイ以外はセーフですし。犬の面倒見といてくれって言われた子とかいたらしいですし、エッチ以外の普通のこともたまにありますよ」
「そうですか……なんだろ、逆に初めて会っただけだからかな。すっげえスっと入ってきたし、すっげえスッとした気がします。看護師とかカウンセラー、向いてるかもですよ」
「そうですか?良かった、あたしも実は結構看護師ちゃんとなれるか不安で。初めて会ったお兄さんだけど、アテにしときますね」
「もう五分以上休憩してますけど……本番、やります?」
「……やります。お願いします」
「はーい、じゃあゴム付けてくださいね。あたしが付けてあげましょうか?」