運命とは数奇なものだ。
これは黒き銃身の犠牲となった男の最後の物語。
これは『運命』と『縁』と『恋』と『覚悟』の物語
2020年冬 東京のどこか
降り注ぐ雨が全身に当たる。
目の前にいる傘をさしてただ黙っているパイセンに視線を合わせながらゆっくりと口を開く。
「俺にもパイセンみたいに...出来るかな?......へへっ」
「その作ったような笑いはやめなさい。......そうね、もし私が『私』でなければ全力で止めていたわ、後輩。当然でしょ?『恋のために全てを敵に回す』なんて、到底できるわけ無いもの......」
その白い手がゆっくりとコートの裏ポケットに入っていた『それ』を取り出す。
「人の身で無くなってでも得たいものが有るのなら、全力で行きなさい」
差し出されたそれを飲み込む。
これ渡されたときのことを思い出す。
あの時は今ほど自覚をしていなかった。
「............ようこそ、『化物の世界』へ。後輩」
「...」
意識が沈む。
何か遠くの光を掴む。
暖かく、そして大きい。
その穴に入り込み引きずり出す。
雨が降り注ぐなか。
私の世界から色彩が消え、何もかもが書き変わった。
2035年春 南極大陸 カルデア
今日、カルデアは閉館されることになりました。
今までのあらゆる異常事態、前所長マリスビリーアニムスフィアの行為の真意の数々より黒と断定。
先輩を縁にした全ての英霊も退去。
ただ。
意味深な発言をしたサーヴァント『始皇帝』『項羽』『黒い剣のアルトリア』『ギルガメッシュ』
まず始皇帝さんは先輩に不老不死の薬を渡したと芥さんから聞き、一応その薬は此方で処分させていただきましたが......。
『...支配者でも王でも皇帝でも無いそなた達だからこそ。この結末に至り、そしてこの戦いが始まるのだ...実は朕もちょっと楽しそうで参加したいが仙女めに邪魔されそうゆえこのまま高みの見物としよう、ではな。カルデアの者たち』
二番目に項羽さん。
芥さんがカルデアから出ていってからも先輩との縁で残ってくださっていた力強い方でしたが。
『...虞と主導者の望みであればこの結果は仕方無し...此度ばかりは何も言うまい、心せよカルデア。次が最後の騒乱である』
三番目のアルトリアさんはいつも先輩と話し合ったりジャンヌオルタさんをからかったり、私よりも信頼されているサーヴァントでした。ですがあの日は
『やはり、貴様らは支配者では無いがゆえにあのような不適な報酬を与え余計な事をするか......間違ってはいなかったが、最高でも最善でもなかっただけだ、文句は述べるな、これから起こることは貴様らの不手際であり、取りこぼしだ』
四番目のギルガメッシュ王もまた先輩が信頼を置くサーヴァントの一騎でした。
ただ、どこかいつもお二人での話し合いは未来を行きすぎているような気もする、そんな関係でもありました。
『貴様らの働きに王として我は最大限手を貸したぞカルデア。だが、結果はこうなったか......これもまた一つの『間引き』だ。心するがいい近い内に『人類の敵』が現れるであろう、貴様らカルデアの所業でな』
皆さんそれ相応であるがゆえにその言葉を信じ確認を今まで続けてきましたがそれも一切現れることは無く、ここまで来てしまいました。
ただの勘違い...ではないでしょうが......。
「......フォウ!!」
「フォウさん?」
「フォウキュッ」
胸元にダイブするフォウさんを抱きながら時間になったため保管庫に入る。
ここには今までの探索で集まった無数の聖杯が保管されて...いるはずだった。
「?あれ、もうダヴィンチちゃんが持っていってしまったのでしょうか」
「ヤッホーマシュ。聖杯の廃棄の時間だからいると思ったけど......わーおもうなくなってるじゃーん」
「え?いえ、もうダヴィンチちゃんが処分しているのだと」
「???いや、私は一切...ここのパスワードは私とマシュ、そして今は居ないホームズと藤丸君、ロマニぐらいだ......」
ふと過ってしまった。
これがあの人たちの意味だと。
そして答えは訪れた。
訪れてしまった。
『特異点反応』
場所の中心は日本の東京
規模は『銀河規模を越えているため測定不能』
この規模になるともう何も言ってられない。
すぐにレイシフトを開始する
レイシフトするとそこは真っ暗な東京の夜景だった。
「聞こえるかいマシュ」
「はい、オールグリーンです。......え」
目を疑った。
そう、目の前にコートを着た190cmは越える大男。
似ても似つかないような身長だがそれはたしかに。
「先輩!!」
「マシュ...」
先輩が居た。
レムレムで巻き込まれたのかはしらないが幸先が良かった。
すぐに近づこうとした瞬間、ダヴィンチの制止が入る。
「待つんだマシュ!!待って。どういうことだ!!『0.00001秒前にはどこにも存在していなかった』君が急に目の前に現れて、どうして『生態反応』が芥ちゃんと『同じタイプ』なんだ!!」
「...え?どういうことで...?!」
気が付かなかった。
気配遮断とかそんなものではない。
だがこれは事実だ。
「あぁそうだね、今最高に気分がいい。計画を止める権利があるのはカルデアの皆だ、だからこそ全力で抗うよ」
私は気がつけば先輩に心臓を...その腕が肋骨を砕いて心臓を貫き、貫通していた。
アキレウスさんより速い。
あり得ない。
あり得ないはず
人間であった先輩では出来ない。
「あぁそうだね、そうだよ。俺は人間をやめた。理由は俺を倒せたら教えてあげるよ♪」
同時にいつの間にか蹴り飛ばされ後ろのビルに叩きつけられその余波で周辺のガラスは砕けちり、私自身の肉体もズタボロになっていた。
「っ!!......チェックメイトだマシュ!!」
その声と同時に空からイージス艦が三隻、私めがけて落ちる。
回避不能防御不能。
純粋に強すぎる。
何もかもがおかしい。
最後にと思い、その手を見る。
気付いた。
そう、その手には令呪があり、そこには『龍と振り子の紋章』があった。
つぶれるあの感覚。
それはいつまでたっても来ず。
恐る恐る目を開けるとそこはカルデアだった。
「よし、成功した...緊急のレイシフト帰還、あの攻撃の一瞬の隙が生死を分けたね...」
「...ですが、これでは」
「そうだね。そして最悪の報告だ。カルデアはもう使い物になら無い。本当に彼は恐ろしいね、五年近く共に戦ってきたせいでこちらの手を全て読まれているよ」
そう言われ周囲を確認するとそこはもう血まみれで無数の職員が干からびていたり衰弱していたりで死んでいた。
「ははっ...そういう私自身も彼女の爆発を受けてしまってね。さすがに真祖の自爆は響くねぇ...中国の仙術、東洋の呪術も交ざっているのか...ね」
「...まだ、減らず口を叩けるの?しぶといわね。じゃあもう一発ラメるかしら」
「芥さん!!」
その声も届かず。
爆発音が広がる。
だが、その衝撃も雨も無かった。
「やれやれ、やっぱり僕というお助けキャラは必須かな?まぁ僕は無くても来るけどね、だってアルトリアに無茶苦茶なオーダーされたもん」
血の雨ではなく花弁が桜吹雪のように舞い落ちる中。
「......花の魔術師...本当に来たのね」
「勿論着たとも。本当はマイロードの覚悟をただ見守ろうと思っていたけどね、いやー二度とやりたくなかったよ。『徒歩』なんてあーもうまっぴら御免だ」
マーリンさんが私たちを庇うように芥さんの前にたった。
「...そう、じゃあさっさと用件済ませて帰らせてもらうわ」
そういうと芥さんは持っていたトランクをこちらに投げ捨てる。
「貴方達『タロットカード』って知ってるかしら?まぁ深くは言わないけど、それは元は名もない力よ...本当は半殺しにして無理矢理植え付けさせるつもりだったけどいいわ、そこにあるものは『星』と『賢者』よ」
「あの待ってください...急にそんなこと言われても」
「でしょうね。まぁ簡単に言うわ、後輩は『世界』の霊基を持っていた、だからただのサーヴァントの貴女では勝てないの、後輩も変わっているわね、わざわざチャンスを与えるんだもの......」
「......」
止めて欲しいこと。
なのだろう。
「じゃあマーリンさんが」
「あぁいいよ、僕はもうアルトリアから横流しで『愚者』を貰ったからね......うん、別にアルトリアにどう見られていても構わなかったようん」
「...では」
そっとそのカードを手に取る。
触れた瞬間それは粒子となって体に入り込む。
「そう、『星』なのね...ぴったりじゃないカルデアに星なんて......ま、これではっきりしたでしょ?残りのタロットカードの連中を倒すなり仲間にしてあいつの元へ向かいなさい。オススメルートはイギリスからゆっくりと行くことね」
それを最後に芥さんの周囲を包むように光が集まり、光が大きくなった瞬間そこには何も居なかったように跡形もなく消えていた。
東京
朝の訪れない関東圏の中央。
本来はあるはずの皇居を潰すようにそこに巨大なビルが建っていた。
「もっきゅもっきゅ」
「......ねぇ、マスターちゃん、もう何時間このよくわからない作業を繰り返しているのかしら」
食卓に積み上げられた食材
もう三桁単位で作られたハンバーガー。
「......メイドなりバトラーなり喚べば良かった」
「もっき...マスター、私というメイドがいながらそのような戯れ言。到底ゆるせないぞ」
「やっぱり人選ミスよ!!マスターちゃん、同じ暴君でも歌音痴の赤い方が良かったわ」
「まぁまぁ...」
実はもう五、六回目のことだ。
でも、この時間こそ望んだものなのだから、悪くない。
「...ふぅ、モードレット。『皇帝』を連れてさっさとカルデアを倒すためにイギリスで待機しなさい、どうせ『戦車』と『教皇』では力不足だろうからな」
小さな物音が鳴り、騎士は光となって部屋の警護を外れ一瞬でこの都市から消える。
「『吊られた男』...厄介なものだ。セイバーのクラスステータスでの鏡面移動......そういえば『セイバー』、ホームズ...『魔術師』は始末したかい?」
「そこの突撃女の攻撃が雑なせいで滝壺に落ちたとだけ言っておこう」
「ちょっと」
「つまり生きていると...面倒だなぁ、あの宝具だとこの『世界』とジャンヌの霊基の能力が簡単にバレるからね、確実に始末しないと」
指を鳴らし友を呼ぶ。
正直、なぜ彼が味方しているのかよくわからない。
止めてくると思ったが...まぁ、そのあれだ。
「どうしたリツカ。もう二時間程度は作っていて飽きたか?」
「いいやそれはないよ友よ。この時こそ最高の瞬間だ。なにちょっとその『白蛇』の霊基でサクッと行ってきて欲しいんだ」
「......なんだ。なら、虞美人さんが帰ってから行ってくるよ」
少しもどかしい。
というか
「なぁ、ジーク。その作ったようなしゃべり方やめない?」
「お互い様さ。実はこういうのやってみたかったんだ」
うーんこのエンジョイ勢。
「そうかぁ。でもいいのか?世界の敵になっても」
「いいさ。元々俺は世界と関係ない裏側の住人だ、余程でない限りは世界の味方しないさ。それにリツカの計画を聞いたとき。『ルーラー』だからってのもあったかな?」
「ルーラーねぇ...建前かな?」
「本音さ、友の為、そしてルーラー...いや、『ジャンヌ・ダルク』の為」
「ねぇ。冷血女、二人の会話がわから...何でアンタ笑ってるのよ」
「なに、こんなことの動機が下らないだけだ...フフッ...あぁ見えて結構奥手で不器用なのは変わらないな」
「それに、リツカ。実はまだ数本懐刀を仕込んでいるだろうに。」
「いや?全く」
「嘘が下手だ『宮本武蔵』『メルトリリス』の二人はいるだろうに」
「......ラムダがこんなことの味方するわけ無いだろ...」
「じゃあどこにずっと残しておいた『月』と『妖刀村正』が消えたのかな?リツカ」
「...妬いてる?」
「別に?真っ先に頼ってくれないのはリツカの性格からして理解していたさ」
「...あーあー。ねぇセイバー。メガロ......あの『力』の化物はどう?使い物になる?」
「試練はそこの突撃女のせいで全て使い物になら無いが、無理矢理手配した聖杯の泥の簡易汚染と都市一つ潰した魂喰らい、『力』の霊基による補強で使い物にはなる。とはいっても本当にあれはどこで手にいれたのだ?」
「......どこでもいいじゃないか......刃物は何本あってもいい。『力』『九尾』『愛欲の獣』『怪獣』『癌』『死神』...今までの会ってきたあらゆる縁を使って俺は勝つだけさ。さぁ諸君、聖杯の無い『聖杯戦争』を始めよう」
続かないこれで終わり