幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話 作:アキ山
広げた風呂敷を畳むのが死ぬほど難しく、こんなに時間ががが……
あとはアクシズを何とかすれば地獄編も終わり!
なんとか頑張るんで見捨てないでつかぁさい
どうも……って、呑気に挨拶をしている場合じゃない幼女です!
ただいま当方は陰蜂のフルパワーでアクシズが地球に落っこちるのを押さえている最中!
というか、大導師はどんな力でアクシズを押し出したんだ!?
陰蜂が支えきれないって相当なんだけど!!
『インベーダーやムガン達には指揮官は存在しない。各自、最大火力で迎え撃ってほしい。Z-BLUEは地球の生命線、そして我々がそれを護る最後の盾だ。各員の奮戦を期待する』
『ソルブレイヴスはミスターと共に遊撃隊として積極的に敵を討つ! サーペント隊はトライオン3とヱクセリヲンを軸にして防衛線を構築! 敵を一人たりともアクシズとZ-BLUEには近づけさせるな!』
『『『『了解!!』』』』
アクシズを支えるのに集中するのは当然なんだけど、敵が来ているからにはソッチばかりを見ているわけにもいかない。
『全軍通信機能ハック完了。レーダーも戦域全体を捉えているから、皆の動きを逐一把握できるよ』
「……ん。ありがと、ひーちゃん」
こっちは陰蜂を出してるんだから、お手伝いできることはきっとある。
その時になって間に合わないなんて事にならないように、打てる手は打っておかないと。
『では行こう。レディ、私達は宇宙怪獣やインベーダーの大型種を始末する。ブレイヴ達は道を拓いてくれ』
『はい! ソルブレイヴス、総員突撃!!』
トールギスⅡとアーリー・ウイングガンダム(機体名はひーちゃんに教えてもらった)を先頭に、ブレイヴ達が向かったのはインベーダーの群だ。
「ギシャアアアアアアアッ!」
とんでもない速度で宇宙を駆けるトールギスⅡに感づいたインベーダー達は、巨大芋虫やセミの幼虫みたいな種類を筆頭に溶解液や光弾を放つ。
『地球も人類も君達の餌ではない。招かれざる客は退場願おうか!』
けれどトールギスⅡは速度を落とさずに、まるでダンスのステップを踏むかのような軌道を描いて躱す。
ウイングゼロと同じ翼型のバインダーを付けている所為か、方向転換の度に白い羽が舞い散る幻影が見えそうだ。
『はぁっ!』
『ギャアアアアアアッ!?』
そして懐に入ったトールギスは手にした大型ランスを突き刺すと、その推力を活かして敵を討ち貫く。
手始めに芋虫型、そのまま速度を落とさずにセミや機械との融合タイプと次々に風穴を開けていく。
『レディ! 』
『はいっ!』
そして数匹の大型インベーダーに風穴を開けると急速反転、肩に担いだ大型砲をぶち抜かれた勢いで一か所に集まったインベーダー達へ向ける。
そこへ飛行機形態に変形したアーリーウイングが追いついてきて、MSへ戻ると同時にトールギスと同じタイミングで高出力のビームを放つ。
『オギャアアアアアッ!?』
哀れ、大型種は二方向からのビームの奔流に飲まれて欠片も残らずに消滅してしまった。
『ブレイヴ隊、行くぞ! 二人に遅れるな!!』
『『『『『『『応ッ!!』』』』』』』』
そしてグラハムさんと同じ機体に乗った向こうの隊長の激で、ブレイヴ達は飛行形態に変形すると中・小型種のインベーダーとドッグファイトを繰り広げる。
『ザフトの裏切り者とジオンの残党共が来やがるぜ!!』
『ホワイトファングのMD軍団に比べたら屁でもねえ! テメエ等! ビビんじゃねえぞ!!』
『誰がビビるかよ! 地球を救うヒーローになれる大舞台だぞ! 悪役を買って出る馬鹿共なら歓迎してやるさ、盛大にな!!』
旧マリーメイア軍だったサーペント達がアクシズを支える私達の盾になっているヱクセリヲンの前に展開すると、各々がガトリング砲やミサイルを近寄ってくるMSへ向けて放つ。
『マリーメイアとかいうガキの足を舐めていた負け犬共が! 図に乗る……ぐわぁっ!?』
『くそっ! なんて弾幕だ!? 近寄れん!!』
彼等の乗るサーペントは両手の大型ガトリングや肩のミサイルなど、動く武器庫みたいな機体だ。
それがズラリと並んで弾を大盤振る舞いするんだから、ジオン兵達も堪らない。
勢いに任せて突破しようとする者は次々に火花になって散り、その足が止まる。
『艦長! 宇宙怪獣が警戒網を抜けて接近してきます! 兵隊級50、上陸艇型1!』
『全砲門開け! 光子魚雷スタンバイ!! 上陸艇はトライオンに、我々は兵隊級を迎撃する!! 頼むぞ、ヒヤマ君!!』
『任せてくれ、艦長! 超ぉぉぉ咆ぉぉぉ剣ッッ!!』
胸にあるライオンの口から飛び出た柄を引き抜き、巨大なビーム剣を構えるトライオン3。
『おおおおおおおおっ!!』
そしてパイロットが叫ぶと、その気迫が乗り移ったかのように胸のライオンも咆哮を上げる。
もちろん、ただ吼えているわけではない。
その声は高出力の衝撃波となって、宇宙怪獣のトンガリ型の足を緩ませる。
『超咆剣! 縦一文字斬りィィッ!!』
その隙を逃さず剣を大上段に構えて上昇するトライオン。
『ッッッ!?』
ブースターの加速と巨体の重量、そしてスーパーロボットのパワーを込めた一撃は見事にトンガリを真っ二つにする。
けれど、兵隊級の相手をしているヱクセリヲンはそうはいかない。
『クッ! 駄目です! 兵隊級の打ち漏らしが弾幕を掻い潜ってきます!』
『総員、衝撃に備えよ! 心配するな、ヱクセリヲンは奴ら程度に沈められはせん!!』
数匹のミドリムシがハリネズミみたいな弾幕の間を縫ってヱクセリヲンの後方、迎撃が薄いエンジン部分に取り付こうとする。
『トランザムッ!』
けれど、それを地球の方から飛んで来た真っ赤に光る2機のジンクスⅣが阻む。
『アザカミ! そっちは任せる!』
『はいっ!』
一機が円を描くような軌道でミドリムシの周りを回りながらビールライフルでハチの巣にすると、もう一方のジンクスは出力が増したビームサーベルですれ違いざまに一刀両断する。
そして後続のミドリムシ三体は、遠距離狙撃のビームによって目の中央に穴を開けられて爆散した。
『さすが俺! 百発百中だぜ!!』
そして弾丸が飛んできた先には4機のジェスタの姿があった。
『調子に乗るなよ、シマダ。それだってオーブがくれた狙撃用スコープあっての事だろう』
『なにやってんだ、ヒヤマ! 戦艦は小型の相手の迎撃は不得手だって教えただろうが!』
『入れ込みすぎる癖は治っていないようだな。状況を常に俯瞰し、心は熱く頭は冷静にだぞ』
『シオヤ隊長! 皆!!』
そう、ヱクセリヲンのフォローに入ったのはオーブで一緒に戦ったおじさん達だ。
『皆はオーブに亡命したんだろ、どうしてここに?』
『だからだよ! アレを見ろ!』
副隊長のコスギが指さした先、そこには青と白を基調にした戦艦が、白い戦艦と同型の船を引き連れてこちらに向かって来ていた。
『あれはオーブのイズモ級戦艦、それにアークエンジェルじゃないか!』
『オーブ軍の精鋭諸君! 我等は「他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない」という理念を掲げ、自国の防衛以外に戦力を振るう事がないようにしてきた! しかし今回ばかりは違う!! この戦いは我等を産み育ててきた地球の危機! 仮にアクシズ落下で地球が滅べば、我がオーブの命運も尽きるだろう! それはエタニティフラットが成立しても同様だ! ならば、今こそ我等は伝家の宝刀を抜かねばならない! オーブの国民を、地球圏で平和に生きる人々を護るために!!』
そして国際チャンネルで流れてきたのは、オーブの時に見たライオンなお姉さんことアスハ代表の演説だった。
『ローエングリン、スタンバイ! 目標、宇宙怪獣!!』
『クサナギはアークエンジェルの発射に合わせろ! MS隊は斉射後に発進! ソルブレイヴスの構築した防衛戦に参加し、Z-BLUEの護衛に当たれ!!』
ミサトお姉さんによく似た声の女性艦長さんと日に焼けた肌とチリチリ気味の長い髪のオジサンの指示で、白い戦艦は前に突き出た2本の脚みたいな場所、そしてクサナギっていう船は艦首から大きな大砲が突き出てくる。
『ローエングリン、発射!』
『てぇぇぇぇっ!!』
そして大砲から吐き出されたぶっといビーム砲は、近寄ろうとしてた宇宙怪獣のミドリムシやトンガリを飲み込んで宇宙の彼方へと消えていく。
『Z-BLUE、そしてソルブレイヴス! こちら、オーブ国防軍のムウ・ラ・フラガ一佐だ! そちらを援護する!!』
『ムウさん!』
『とんでもない事になっちまったな、キラ! 邪魔をする奴は俺達が落としてやるから、お前等はその石ころをなんとかしてくれ!!』
そしてムラサメ達を率いて戦艦から飛び出したのは、全身まっ金金という派手なガンダムだ。
『よっしゃあ! ファイアバグも行くぞ!!』
『ここで手柄を立てたら恩赦が出て晴れて自由の身! 姫に仕えることも出来るんだ! 気合入れろよ!!』
『姫ー! 手助けしますよぉぉ!!』
『なんでお前等がオーブと一緒に来てんだよ!?』
なんかオーブ軍にさらっと混じってアクシオが飛んできてるんだけど、あれって宇宙に出る前に助けたミウを姫呼ばわりしている人達だ。
妹に妙なちょっかいを出さないといいけど。
『クソッ! まさかオーブまで出張ってくるとは!!』
『怯むな! 奴等もフリーダムが無ければ烏合の衆だ!! 怖るるに足りん!!』
『アクシズさえ堕とせば地球に、ナチュラル共に一矢報いれるんだ!! 恐れるな!! ユニウス7を…ぐばぁっ!?』
ソルブレイヴスの戦力やオーブの参戦にジオン軍が二の足を踏む中、ザフトのテロリスト達は進路を変えて比較的迎撃が薄い上方を取ろうとする。
けれど、そんな彼等先頭を進んでいたグフの顔面がハチの巣になって吹っ飛んだ。
『やれやれ……社長も酷な依頼をしてくるぜ。雪辱の機会を目の前にして別の獲物を食い殺せ、なんてよぉ!』
弾丸が飛んできた先にいたのは、ショットガンとゴツいハンマーを構えた深紅のガンダムだった。
なんだろう、あのガンダムから感じるのは飢えた肉食獣みたいな物騒な感覚だ。
『貴様ぁ! よくも隊長を!!』
『下等なナチュラルが! 野蛮な猿に身の程を教えてやる!!』
頭部を失った隊長機を支える部下の傍で、黒色のザクウォーリアが背中に背負った大きなビーム砲を向けようとする。
『あぁ? 野蛮に決まってんだろ! コッチは戦争大好きな傭兵様なんだからよォ!!』
けれど、その照準が捉える前に爆発的な加速でザクの懐へ入ったガンダムは、右手に持ったハンマーを振り上げる。
『ちょいさぁっ!』
『ぐがはぁっ!?』
片手だけで振り下ろされた一撃はザクの頭を二つに割ると、その勢いのまま槌の部分を胴体の半ばまでめり込ませる。
『さっきの馬鹿はユニウス7がどうとか言ってたみたいだがなぁ。テメエ等に武器やら何やら恵んでやってたのは、そこに核をブチ込んだ奴等の元締めなんだよォ!!』
『な…なんだとっ!? ぐはぁっ!!』
なんだかトンデモない事を暴露しながら、紅いガンダムは頭を失ったグフのコックピットを叩き潰した。
『地球を守るなんてガラじゃあねえが戦争は戦争だ! 普段は戦えねえバケモン共もいる事だし、存分に楽しませてもらうゼェ!!』
「……あのあかいの、いやなかんじ」
『搭乗者コードはアリー・アル・サーシェス、再世戦争の時に死んだはずの人間だよ。それに機体のガンダム・アスタロトもポスト・ディザスターって世界のロストアイテム。この世界には存在しないものだね』
「……システムのひと?」
『多分ね。今のところは相手も地球を守るつもりみたいだから利用させてもらうけど、油断しないでね』
「……ん」
さて、周りの様子を確認するのもこのくらいにしよう。
今すべきは次元修復までアクシズを支える事だ。
『みんな頑張れ!』
『努力と根性よ! 私達ならきっと地球を護れる!!』
『当然だ! ここで全力を振り絞らないで、どこで出すってんだ!!』
『こんな石ころ一つ! 余裕で押し返してやろうじゃん! 行くわよ、先輩!!』
『おうよ! やってやるぜぇっ!!』
『青山君、エンジンの確認頼むわよ! オーバーロードで吹っ飛ぶなんて御免だからね!!』
『ああ、しっかり限界を見極めてやるさ! 赤木、こっちは遠慮せずに思い切りやれ!!』
「応! おりゃああああああっ!!」
ノリコお姉さんを始めとするスーパーロボットの皆は陰蜂の近くの隙間からアクシズへ取り付いて、必死に押し返そうとしている。
『小型機はエヴァ達の近くに付いてくれ! ATフィールドの庇護下なら安全だし、より長くアクシズを支えられる!』
『了解! 行こう、ゼロ、C.C、カレン!』
『やれやれ、まさかあんな物を持ち上げる事になるとはな。もう少し身体を労わってくれてもいいだろうに』
『子供が一番頑張ってるんだから文句言わない! キリコ達も!』
『ああ』
『やれやれ、こうなるのなら作業用アームと高出力ブースターパックを用意しておくんだったな』
そしてナイトメアやATみたいな小さな機体は、バリアが張れる仲間の傍で必死にアクシズを押し返そうとしている。
もちろん推力としては他の機体に勝てなくても誰一人手加減はしていない。
みんな全力全開だ。
『おい、ウエスト! デモンへインは直らないのかよ!?』
『無茶言うなであーる! この損傷は人間で言ったらミンチよりひでぇのだぞ? そんなの一瞬で修理できたら苦労は無いのである』
『九郎、落ち着くのだ』
『けどよ!』
『この隕石を何とかすれば、次は獣との決戦が待っている。悔しいだろうが今は力を温存すべきだ』
九郎さん達の機体と繋げていた通信から聞こえてくるのは、焦る彼の声と博士の言い争いだ。
どうやら無事にクォーターに回収されたらしい。
あの状態でアクシズを押すのは無理があり過ぎるので、今は大人しくしてほしい。
『リシュウ先生、ミチル、ダンナーチームは左翼に付いてくれ。あとサイバスターは外縁ギリギリに。君の推力ならアクシズの引力から離脱できる。万が一敵が侵入してきた際には迎撃を頼む』
陰蜂を中心にしてアクシズに取り付いているZ-BLUEの皆。
その各々が取り付く場所を指定しているのはギリアム少佐とゲシュペンストだ。
『うむ、承知した』
『まかしとけ!!』
『杏奈、もしもの時は……』
『分離するからオクサーで逃げろなんて無しだからね! 私達は夫婦なんだから! 病める時も健やかなるときも一緒! それは地球が危ない時だって変わらない!!』
『──わかった。なら気合を入れろよ!!』
『うん!』
『さすがはギリアム少佐ニャ』
『配置に隙がニャいわね。という訳だから少しは余力を残しておかないとダメよ、マサキ』
『わかってるよ!』
そんな彼の言葉にリシュウのおじいちゃんやマサキさん達も気合を入れて答えてくれる。
違う世界の事なのに、こうして力を貸してくれるのは本当にありがたい。
『カミーユ! バナージ! 刹那! 他のサイコミュを積んでいる機体はシャアの近くへ行くぞ!』
『了解した。クワトロ大尉が特異点なら彼との対話が必要だ』
『なら、最適なルートをこちらで割り出す! 蜃気楼の絶対領域でカバーするから、その通りに進むのだ!』
『というか、シャアってあの状態で生きているんですか?』
『大丈夫だ、バナージ。……多分』
そしてアムロ大尉を始めとするニュータイプなMS部隊は、ゼロのサポートを受けながらお墓みたいに岩壁へ突き刺さっている試作三号機のコンテナへ近づいていく。
もちろん私だって陰蜂パワーで石を支えているだけじゃない。
「……ひばちとハシュマルくんで、みんなのおてつだい」
『わかった。けど、サイコミュ制御じゃなくてMD用のAIで動かすね。ミーちゃんは大仕事があるんだから』
『姉さま、私もサポートしますから無茶は駄目ですよ』
『……ん』
陰蜂はただ強いんじゃなくてお供もいっぱいいる。
『うおっ!? でっけぇ! なんだ あのモビルアーマー!』
『アクシズを支えている化け物蜂から出てきたって事は味方なのか?』
なので彼等にお願いして、お邪魔な勢力を足止めしている人達のサポートもしているのだ。
『弾幕がっ! 弾幕が宇宙をぉぉぉッ!?』
『ピギィィィッ!?』
いつもはビットみたいに私が指示を出すんだけど、今回はひーちゃんが彼等に積まれた人工知能に命令している。
なので、人にはできない機動でテールブレイドを振ったり、弾幕をまき散らしながら高速移動したりと大暴れだ。
『うおおおおおおっ! ジーク・ジオ…べっ!!』
『いやだぁっ!? 蜂に殺されるなんて嫌ばらっ!?』
『こ…これが捕食者系!? やはり野蛮なナチュラル…おごべっ!?』
私もフィフスでやったけど、改めてみると辺り一面弾幕で囲まれてタコ殴りってかなりエグい。
『とんでもねぇ! 敵が急に死におったっ!?』
『あれ絶対ヤバいって! Z-BLUE、どんなロボット作ってんだよ!?』
オーブやソルブレイヴスの人達からも怯えの感情が伝わってくる。
本当はいい子達なんだけどなぁ。
「……ん?」
そう思っていると、サイコミュ……これ違うな。
GN粒子だったっけ?
それを通じて緋蜂やハシュマル君たちの思いが伝わってきた。
【もっと強く! 女王様の為にもっと強くならないと!!】
【怖い獣がもうすぐ来る! アイツ等を食べて力を付けるんだ!!】
それと同時に皆の動きが明らかに変わる。
始まりは緋蜂の一体が芋虫型のインベーダーの背後を取った事だった。
彼はお尻に着いた針をズンッと突き刺すと、ビクビクと痙攣を始めたインベーダーの頭を大顎で噛み砕いたのだ。
そのままバリバリとインベーダーを食らいながら、高速機動で血と肉片、さらには弾幕をまき散らす緋蜂。
弾幕を食らって弱ったインベーダー達を、他の緋蜂達も捕らえると次々に捕食していく。
『うおおおおおっ!? アイツ等、敵を喰ってやがる!!』
一方のハシュマル君たちはテールブレイドでニアお姉さんの仲間や兵隊級の宇宙怪獣を串刺しして、お腹に出来た口でバリバリ食べ始めたじゃないか。
カッチンから伝わる情報だと取り込んだモノは全てUGセルで分解して、その情報を精査したうえで自分にない機能を付けたり自己強化を行っているらしい。
その証拠に緋蜂達は背中に大型のブースターや胸に新しい砲台を増設しているし、ハシュマル君達も羽が増えてファンネルみたいなのを使い始めたり、テイルブレイドがドリルに変わってる。
『姉さま、あれ大丈夫なんですか?』
『……ミユたちをまもるため。だいじょぶ』
ひーちゃんいわく、食べた物はUGセルで完全分解してるからインベーダーでも乗っ取られたりすることはないそうだ。
『ミユ、聞こえるか?』
そんな事を考えていると、ブライト艦長から通信が入ってきた。
「……ん」
『アムロ達がシャアとフロンタルをサイコミュの効果圏内に捉えた。今から時の牢獄破りを始める。大変だろうが、力を貸してくれ』
「……だいじょぶ」
『時の牢獄破りと言ってますけど、手筈は整ってますの? ファイアーボンバーはともかくとして、あれにはシェリル・ノームやランカ・リーの協力が不可欠ですのよ』
『そこは心配無用だ。今、大統領がエタニティ・フラットの説明と対処について全世界へ演説を行っている。そこからシェリル達のライブへと移行する算段になっている』
『ミユちゃん、大統領府からの通信回すね』
ミウの問いかけにジェフリー艦長が答えると、通信担当のラムお姉さんがこっちに地上で流れている放送を合わせてくれた。
するとサブモニターに国会議事堂みたいな会議室で壇上に立って話すおばさんが現れる。
『───私の知る限りのエタニティ・フラットとバアルについての情報を皆さんにお話ししました』
そこで一端に言葉を切ると、彼女は深く大きく息を吸い込む。
『ここからの世界の在り方を決めるのは、あなた方一人一人です』
そして次に口を開いたのはドーリアン外務次官だ。
『地球にいる方は宇宙を見上げてください、宇宙にいる方は地球の方を見てください。今、宇宙と地球が交わる場所で世界を護るために必死に戦っている人達がいます』
続いてカメラは外務次官から黒髪で青い目をしたお姉さんを映す。
このお姉さんは誰だっけ?
『マリナ・イスマイールっていう中東の小国のお姫様だよ』
ひーちゃんの助け舟に私は納得する。
なるほど、だからあそこにいるのか。
『願ってください、自分達の進むべき未来を』
『一人一人の想いが未来を創ります。自分の為、大切な人の為。そして世界の為に祈ってください』
マリナ王女の真摯な祈りを継いだのは、ナナリー代表だ。
『ミーちゃん、リンクコネクト・サイコミュを起動するよ』
「……ん」
ひーちゃんの合図でコックピットに張り巡らされたサイコフレームが低い音を立て始める。
今は闘いをしていた所為か赤く光っているけど、それも少しづつ緑へ変わっていく。
それと同時に地球から皆の祈りが伝わってくる。
「……みんなのこころ、スッてかんじる」
地球が近いって言っても結構離れている筈なのに、前の実験よりも身近に感じるぞ?
『ミユ・アスカちゃん、聞こえるか?』
サイコミュの感度のよさに首をかしげていると、サブモニターの一つが一人の男の人を映し出した。
長いブルネットの髪を左右に分けたサングラスを掛けた人。
年の頃はにぃに……ううん、キラさん達と同じくらいか。
「……アレックス・ズラ?」
『ズラじゃない、ザラだ! アスラン・ザラ!!』
「……ごめんね」
サイコミュ経由で名前を調べたら、混線したのか妙なのがヒットしてしまった。
『ブッ…ププ……ズラって、ナイスよミユ』
『ルナマリア、笑い過ぎだ!!』
不機嫌なアスランさんの隣からヒョコッと顔を出したのは、にぃにの彼女さんであるルナお姉さんだ。
『ゴホンッ! 君が今回の計画の要と聞いて、俺達は世界各国に思念誘導を補助する為にサイコフレームを基にした思念波増幅装置を設置した』
『装置はトライア博士のお墨付きだから、これで少しは作業や負担が楽になる筈よ』
おお、あのコンコン博士なら安心だ。
「……ありがと」
『小さな君に重責を任せるのは申し訳ないが、地球の未来が掛かっている。頑張ってくれ』
『今回の件が終われば、私もZ-BLUEに合流できそうなの。その時はおしゃれしましょうね』
プツンと通信が切れると、私は国会の様子を映しているモニターへ目を向ける。
そうして大統領が壇上から退くと、会場に現れたのはシェリルさん、ランカさん、そして───
『ラクス?』
『議長!? マジかよ!』
現れた第三の人にキラさんとにぃにが驚きの声を上げる。
そう、なんとライブにはラクスさんも参加するみたいなのだ。
『中継をご覧の皆様、エタニティ・フラットを覆して地球が未来を掴むには地球に住む方々が明日へ希望を持たねばなりません』
『私達には歌う事しかできないけど、歌声でそのお手伝いをさせてください!』
『地球の命運をかけたライブ、テンション上げていくわよ! 私の歌をきけぇ!!』
そうして始まるきっと前代未聞の国会議事堂を舞台にしたライブ。
「う…うぅ……」
『伝達されるサイコミュ出力増加! ミーちゃん、がんばって!!』
トライア博士達の装置があっても地球規模で流れてくる人たちの想いを集めるのはかなりしんどい。
それでも皆だってアクシズを押さえる為に頑張ってるんだ!
私が泣き言を言う訳にはいかない。
シェリルさん、ランカさん、そしてラクス議長。
一曲ごとに交代して彼女達が歌うたびに地球の方角から、そしてプラントから未来を願う正のエネルギーが伝わってくる。
『凄い! 凄いぞ! この人々の心のうねりは!!』
『やっぱり皆、未来を! 明日を掴みたがっているんだ!!』
『シャア! 聞こえるか、シャア!! 人々の想いをお前に託す! 時空修復を!!』
それをアムロ大尉達に送ると、彼等はコンテナに埋まった状態のシャアへ呼びかける。
しかし返ってきたのはシャアの声ではなかった。
「にゃあああああああっ!?」
私は増幅された思念を通して伝わってくるソレに思わず両耳を塞いでしまった。
『ぐわぁぁぁぁぁぁっ!?』
『こ…この歌は!!』
『クソッタレぇ! 変態共が、ラクス様の歌をどれだけ貶めれば気が済むんだ!!』
そう、それはあの忌まわしいジオンエンジェルズが歌う変態ソングだったのだ。
『聞こえるかね、ミユ・アスカ』
「……ふ、フロンタル」
『時空修復などさせはせんよ。アクシズはこのまま地球へ落ちるのだ、我々と共に。その為ならば君達の策も過去の恥辱も利用できるものはすべて利用させてもらう』
なんて…なんて執念深いんだ!?
あと、あの笑顔を私の脳裏に浮かべるな!!
『あっ!? ああっ!? あのアゴい笑顔が窓に! 窓にィィ!!』
『やめろ! やめろォォォっ!!』
『頭の中にPVとさっき見た股間がブルンブルンが再生しやがる!!』
『こんなん、神も仏もねえよ!!』
せっかく集めた思念がドンドン萎んでいく!!
このままじゃ……!
『諦めてはなりません!』
泣きそうになった私の心を叱咤したのは、議事堂にいるラクス議長の声だった。
『歌で勝負するっていうのなら受けて立とうじゃないの!』
『私達は死ぬ気で歌手になったの、あんなおふざけ集団に負けるはずがない!!』
シェリルさんとランカさんも乗り気だ。
『ええ。この事件を乗り越えれば、あの変態を芸能界と言わずこの世から抹殺できます! 歌姫の名に懸けて絶対に負けるわけにはいきません!!』
『ふ……懐メロとかした時代遅れの曲を再ブレイクさせてあげたのに、随分な言われようだ。この機会にもう君達の時代ではない事を分からせてやろう』
『よくぞほざきました。地獄に突き落としてやりましょう』
ラクス議長もランカさん達も落ち着いて!
ライブ動画で青筋が隠せてないから!!
『ならば、地球の運命を賭けて───』
『『絶唱バトル! レディ・ゴー!!』』
どうしてこうなった!?
シャア、早く目を覚まして!!