レベルアップで世界最強 作:奈落兎
ライセンの迷宮は魔法が使えない環境に加え、様々な罠が襲いかかってくる迷宮。おまけに暇なのか、罠が設置された場所には文字通りの煽り文句が描かれている。
更にシアの情報によると迷宮は一定時間毎に変化するらしい。
「お、ここにもあった。錬成っと………」
ただ、その仕組みは粘土のように作り変えているわけではなく、立体パズルのように幾つものパーツを組み直しているようだ。
薄暗い明かり、人工的故に存在する壁の彫り込みに隠されたパーツの継ぎ目を錬成で溶接していく。製作者は泣いていい。
「ユエ〜、凍らせそこねた罠には気を付けるんだよ〜」
おまけに、恵里が【着氷霧】を発動させ罠のスイッチが動かぬように凍らせていく。この世界由来の魔法ではないからか、こちらは分解されないのだ。
「ユエ、少し寄れ。恵里、俺から離れるな」
と、不意にハジメが恵里を抱き寄せユエに近付くように言う。不思議に思う二人、同時に、氷を突き破り壁から丸鋸が飛び出す!
「チッ!」
破壊は簡単だが破片がどう飛び散るか解らない。飛んで交わし、しかし空中にいるのを狙ってきた杭を影の衣で捉え飲み込む。
「手動で罠を発動してやがるな………面倒くせぇ、一気に駆けるぞ」
手動である以上、ラグが生まれる。ハジメは加速し迷宮を駆け抜ける。
途中、壁の向こうに空間があるのに気づき壁を蹴破る。
「迷宮の組み換え機構は溶接されて、壁も壊される。ん、哀れミレディ・ライセン」
「マップに細工して良い迷宮なんて、イージーモードも良い所だからねえ」
「お前ら降りろ……」
壁の向こうの部屋は長方形型の奥行きがある大きな部屋だった。壁の両サイドには無数の窪みがあり騎士甲冑を纏い大剣と盾を装備した身長二メートルほどの像が並び立っている。部屋の一番奥には大きな階段があり、その先には祭壇のような場所と奥の壁に荘厳な扉があった。祭壇の上には微かな魔力を持った菱形の黄色い水晶のようなものが設置されている。
ハジメは周囲を見渡しながら微妙に顔をしかめた。
「いかにもな扉だな。ミレディの住処に到着か? それなら万々歳なんだが……この周りの騎士甲冑に嫌な予感がするのは俺だけか?」
「こう言うのってお約束は守られるものだよね」
そんなことを話しながらハジメ達が部屋の中央まで進んだとき、確かにお約束は守られた。
ガコン!
ピタリと立ち止まるハジメ達。続いて、別の音が周囲から聞こえる。周囲を見ると、騎士達の兜の隙間から見えている眼の部分がギンッと光り輝いた。そして、ガシャガシャと金属の擦れ合う音を立てながら窪みから騎士達が抜け出てきた。その数、総勢五十体。
ドガガガン!
と炸裂音が響き、恵里がドンナーで頭部を狙い撃つ。流石に鎧の隙間から目を狙う、なんて神業は出来ないが、大きく仰け反る騎士達。恵里の影が広がり『冥王の宝物庫』から現れる無数の魔物が騎士達に殺到した。
「物量戦ならこっちが上だな」
「ん……」
ハジメやユエも参加してるが、殲滅戦に置いてこの中で一番は間違いなく恵里だ。何なら彼女一人に任せてもいいかも知れない。
「いや、けど時間かかりそうだな」
よくよく見ると騎士達は再生機能までついてた。流石に無限とは思えないが、どれだけかかるか解らない。
「恵里……」
「適材適所だね、解るとも」
恵里が影に死体兵を飲み込むと恵里を驚異と判断したのか騎士達が狙って来る。その内一体の頭をハジメが掴み……
「錬成……」
魔力を通し他の騎士達に向かい投げつける。黒い魔力が紫電のように迸り、騎士達がただの鉄塊と貸す。
「こいよ鉄人形、一体残らず屑鉄に変えてやる」
ハジメがまだ持っていない鉱石何かも使われていたので、鉄屑は全て回収することにした。
「あ、扉開いた」
「通路みたいだね。明らかにボス部屋への道みたいだ………僕だったらここで散々苦労させて振り出しに戻させるけど」
「ハジメに迷宮滅茶苦茶にされるよりマシだった、とか」
「じゃあここ固定して、迷宮滅茶苦茶にした後戻ってこよう」
「鬼かお前は」
ハジメが呆れながら進むと騎士達は距離を取りながら付いてくる。恐らくだが、最終試練には本来参加する筈なのだろう。だがハジメに触れられれば役に立たない鉄屑になり果てるので距離を取っていると言ったところか。
「道が切れてる」
通路の終わりが見えた。通路の先は巨大な空間が広がっているようだ。道自体は途切れており、十メートルほど先に正方形の足場が見える。
「飛ぶぞ」
ハジメはそう言って恵里をお姫様抱っこした。ユエは背中にしがみつく。そのまま地面を踏み砕くほどの脚力で跳ぶが、突如正方形の足場がスィーと動く。
「っ!? チィ!」
地味な嫌がらせに舌打ちしつつ『宝物庫』から取り出したオスカー製の『これで安心! 切れない鎖』(オスカー命名)を取り出し先端の杭を正方形に突き刺す。隙有りとばかりに突っ込んできた騎士。ハジメの首を狙うそれを、恵里がギロリと睨んだ瞬間バランスを崩しハジメ達の頭上を通過する。
ハジメ達を通り過ぎた騎士は、そのまま勢いを減じることなく壁や天井、床に激突しながら前方へと転がっていった。
「これって、重力?」
「だろうな。つか、何した?」
鎖を引き寄せた勢いで正方形の上に着したハジメは、壁に
「魂をあげた。他人から操られてる人形が、自意識を持って混乱してるのさ」
「趣味が悪い」
ユエの言葉にアハハハ、と笑う恵里。ハジメもまあ、今回ばかりはユエに同意だ。
「それにしても………ここは」
ハジメ達が入ったこの場所は超巨大な球状の空間だった。直径二キロメートル以上ありそうである。そんな空間には、様々な形、大きさの鉱石で出来たブロックが浮遊してスィーと不規則に移動をしているのだ。完全に重力を無視した空間である。だが、不思議なことにハジメ達はしっかりと重力を感じている。おそらく、この部屋の特定の物質だけが重力の制限を受けないのだろう。
なんか天空の城ラ○ュタみたいだな、と思っていると、不意に目を見開きユエと恵里を近くの足場に投げ飛ばし、超高速で降ってきた赤熱化した巨大な何かを蹴りつける。
「───っ!!」
ミシッ、と足が軋む。しかし、先に耐えられなくなったのは鉄塊。砕け散り周囲に破片が散らばる。
「おお〜、やるやる。その強さ、やっぱりプレイヤーだね、君?」
不意に聞こえた態度の軽い女の声。視線を向ければ、一人の少女が浮いていた。
「我こそはミレディ・ライセン! 可愛くて強い、解放者のリーダーなのだ!」
ビシッ! と妙ちきりんなポーズを取るミレディ。ハジメ達は胡散臭げな視線を向ける。
「ほらほら、解放者だよ? とって〜も偉くて優しい人だよ? 称える歌を歌ってもいいんだよ? ふんふふ〜ん、ミ、ミ、ミ、ミレディちゃんは〜♪ とっても可愛い女の子〜♪」
ハジメ達は思った、こいつ………ウゼェと。