友達から聞いた話と根性で書き上げました。
あ、そうそう。実在する店をモデルにしてありますが、結構改変してあります。
「あの店だな」と気づけたら同郷の人だと思われます。
出てくる女の子もまたとある作品をモデルにしています。
幻想郷にもカフェがある。しかし、肝心のコーヒーの豆は?コーヒーミルは?カップは?
答えは単純で、とある大妖怪が外から持ってきているのである。だが、些か特別扱いが過ぎないだろうか。どこぞの貸本屋のように、特別な存在という訳でもないのに。
カラン、と鈴が鳴る。扉が開けられたことに他ならない。
「いらっしゃいませー」
樫の一枚板のカウンターに肘を乗せ、いかにもやる気が無いですよと言っているかのような態度をとる少女。彼女がこの店の店主、『cow-he亭』を取り仕切っている
少女の容姿の影響も多大にある。短く揃えられた薄赤の髪に、化粧の臭いが微塵もしないながらも可愛らしさを持った顔立ち。低めで抑揚を欠いた声が、少し尖った目によく似合っている。
この少女は基本的に面倒くさがりなので、あまり着替えるという事をしない。つまり、夏場になると汗で服が透けるという好事に出会うことがままあるのだ。
ところで、この店のカウンターは木製である。大理石で作られた正統派の、高級感漂うカウンターとは一線を画している。
店は決して広くは無く、普通の体形の人間が15人入るかどうかといった具合である。だがもとより幻想郷でコーヒーを好んで飲む者は少ないので、この位の広さがちょうどいいという所もあるかもしれない。
余談だが、カウンターの奥には立派な酒樽があり、中で熟成されているのはシェリーともウイスキーとも言われている。今までの来客者でこの樽の中身を確かめた者は存在しておらず、真相は藪の中という事になっている。ただ、酒が入っていることは間違いないようだ。
入口近くにあるラックには多くの種類の雑誌や本があり、時には文々。新聞が置いてある。これは時々、新聞料は払わないが新聞は読みたいという倹約家が読んでいる。
また、本の多くは鈴奈庵から貸し出された物であり、どんな本が読まれているかを纏めたデータを鈴奈庵に送っていたりする(謝礼を貰っているかは定かでない)。
さて、ようやくメニューの項目に入る。こだわりが強いと、書く事も長々となってしまう。
とはいえ、この項目はそう長くはならないことはよく知られている。何故なら、料理を作っているのが、誰あろう朱果であるからだ。
前述したとおり、彼女は面倒くさがりである。必然的に、手間がかかるような料理はメニューには無く、簡単なサンドイッチやクッキーが主なものだ。
だがコレ等がなかなかどうして美味い。コーヒーに合うのは当然として、単品で食べても自然と手が伸びること請け合いの味わいである。
珍しいことに、このカフェのもので注文してから出されるまでの時間が一番長いのはコーヒーである。その裏には並々ならぬ拘りがあるのだろう。
コーヒーの味の参考として、酸味は無く、優雅な香りと後に残るコクが特徴。アイスコーヒーは金属製の器に淹れられて出てくるが、なんとホットコーヒーも同じ金属製の器で出される。最初はその取っ手の熱さに驚くだろう。彼女曰く
「取っ手の熱が冷めない内に飲み切るのが粋」
なのだそう。
さて、こうして昼はカフェとして薄利倹生なこの店だが、夜になるとバーとして生まれ変わる。
といってもメニューに殆ど変化は無く、せいぜいコーヒーの項が酒名になるだけである。しかし注目すべきはその酒である。
なんと、洋酒が殆どである。
つまり、人里のみならず幻想郷中から酒好きが我先にと来店しようとするのだ。だがこの店は歯に衣着せない言い方をすると狭いので、どうしても入れない存在も出てくる。
そんなこんなで、妖怪から目をつけられている店になりつつある。
そして午前9:00-午後20:00までの営業が終わると、この少女のもとに訪れる影がある。
八雲紫と名乗る妖怪である。
客が居なくなり邪魔が無くなると、この二人は毎晩のように密談を交わすのである。内容としては、人里の動向、思想、来店しようとする妖怪の数などなど。
有り体に言えばスパイである。人里で好からぬ事を考え行動する輩などもこの店に来ることは多いので、幻想郷の安全管理にかなり貢献していると言えよう。
なお、朱果は面倒くさがりではあるものの話好きで、いざ話しかけてみると気さくに答えてくれたりもする。
見た目に沿わぬ深さの知恵で以て話を盛り上げてくれるだろう。ただ、秘密を話したりしないように注意されたし。
つい格好よく見られようとして虚実の過去を話したりすれば、八雲に伝わって最悪消される可能性もある。
彼女の話のジャンルは多岐にわたり、人生相談なども乗ってくれる。少女に縋ることも厭わないほど悩んでいるのなら、いっそ彼女の知恵を借りるのも手だろう。
「何か相談したい事があったら、とりあえずコーヒーでも飲みにおいで」
そんなことを謳う彼女だが、不思議なことにこの店以外で見られたことはただの一度も無い。この狭い人里において、である。
そんなミステリアスさも、彼女の人気に一役買っているのかもしれない。