「おねえちゃん」
呼びかけるけど、なんにも答えてくれない。
ずっと書類と睨めっこしてる。私が目に入らないほど熱中してるんだなぁ。
「おねえちゃん」
今度は肩に手を置くけど、にべもなく払われた。よっぽど大きな仕事なんだろうなぁ。邪魔しちゃ悪いよね。
「行ってくるね」
扉が開いたことにも気づいてないみたい。いや、私が開けたからかな。
「おりん」
呼びかけるけど、なんにも答えてくれない。
おくうとお喋りするのに夢中で、私が目に入ってないんだなぁ。
「おくう」
おくうにも呼びかけたけど、やっぱり答えは無いなぁ。二人ともお喋りが大好きだもんね。
二人とも笑ってる。二人が楽しそうでよかった。
「ばいばい」
別れ際に手を振ったけど、全然気がついてないみたい。当たり前だよね。
「橋姫さん」
呼びかけるけど、なんにも答えてくれない。
ずっと河の流れを見てる。誰かに嫉妬してるんだろうなぁ。いいなぁ。
私も誰かに嫉妬されたい。誰か私のいい所見つけてくれないかなぁ。
「ねぇ、何かないかな?」
私のいい所。橋姫さんに聞いてみたけど、何も言わなかった。
まぁいいか。きっと他の人のいい所を見つけるのに忙しいんだよね。
「鬼さん」
呼びかけるけど、なんにも答えてくれない。
皆と楽しそうに飲みあってる。本当に楽しそうに。
「鬼さん」
もしかして皆の声が煩くて、私の声が聞こえてないのかな?
でもいいか。ワイワイやってるから、水差しちゃ悪いよね。
「蜘蛛さん」
呼びかけるけど、なんにも答えてくれない。
これから地上に行くみたい。何しに行くんだろう。
私もついて行っていいのかな?
「一緒に行ってもいい?」
「まほう使いさん」
呼びかけるけど、なんにも答えてくれない。
前に会ったことがある人だけど、今は勉強中だからかな。
私が此処にいること、判ってくれないや。真剣にやってるんだなぁ。
私もあんなに集中して出来るようなものが欲しいなぁ。
「みこさん」
「あら、こいし?」
気づいてくれた。嬉しいなぁ。
「あんた、地底帰ったんじゃなかったの?」
「えへへー、出てきた」
「出てきたって...地底の奴は来ちゃ駄目だってのに」
やれやれ、って溜め息を吐くみこさん。でも呆れてるだけで追い出そうとはしてない。解るよ。
私だって
「何食べたい?」
「なんでもいいよー」
「じゃあ適当にするわ」
「はーい」
ほらね。
みこさんは無意識的に私を気にかけてくれる。もしかしたら、私が此処にきた理由はそれだったのかも。
あれ?
私、いつの間にか能力使っちゃってたのね。だから皆気づかなかったんだなぁ。
うっかりしちゃってたなぁ。
「はい」
「ありがとう!頂きまーす!」
別に深読みしてくれても構いませんよ?