「「ハッピーバースデー!」」
パンパン!
と綺麗に揃った声と微妙に揃わなかったクラッカーの音。
「いや〜、ありがとう二人とも」
カラフルなテープを頭から被った本日の主役は、緩い笑顔を向けた。
「最近はこの祝い方が、恒例になってきましたね」
テーブルに散らばった紙片を簡単に集めた海未は、
「みんなそれぞれ忙しいもんね〜。九人揃うのは難しいし」
ことりが寄せたゴミ箱に放り込む。
「でもみんなちゃんとメッセージくれるし、年によってはお店に顔出してくれるもん。あんまり寂しくはないよ?」
当の本人は気にした様子もなくケーキを箱から取り出す。
「まあ、特に暇を持て余しているのは私と穂乃果だけですけどね。ことりもデザイナーの仕事は多忙でしょう?」
「穂乃果だって毎日忙しく働いてるよ!」
「よくお店番を押し付けられたと文句を漏らしているらしいですが?」
「海未ちゃんだって、日舞の修行が大変だからって最近はしょっちゅう穂むらに入り浸ってるじゃん!」
「誰が入り浸ってますか! 定められた休憩時間や休日に出向いているだけです! それに、職人見習いの身で何を偉そうにしてますか。まだお店の看板を背負うには程遠いでしょう?」
「私とお父さんが作った和菓子での利き対決、二連敗のくせにー!」
「その前は四連勝してますから! おじさまの調子が悪かっただけでしょう!」
「少しくらい認めてくれてもいいのに!」
「忙しくても、お休みの希望くらいは通るからなぁ〜」
言い合いを始めた二人を止める事もなく、チーズケーキの皿を寄せるとティーバックを入れたカップにお湯を注ぐことり。
「……ことり、卒業してからとても図太くなりましたよね」
「だって二人とも、仲良く話してるだけだもん。止めなくていいかなぁって」
「「……………」」
ほわほわとした笑顔を向けたままの幼馴染に、穂乃果も海未も出てくる言葉が無くなる。そして無言で自分のケーキを手元に取り寄せる。
「──穂乃果! そのトッピングのブラウニーは私のケーキのです!」
「いーじゃん今日誕生日なんだから! 海未ちゃんのケチー!」
「それとこれとは別問題です! そもそもそれなら、取る前に一言聞けばいいじゃないですか!」
「あ、じゃあ海未ちゃん、私のクッキー一つあげるね♪」
「そしたら穂乃果のイチゴはことりちゃんにあげる!」
「ただの交換会じゃないですか……」
「平和的解決だね!」
「どの口が言いますか! そもそもあなたが横取りなんてするから事態がややこしくなったんじゃないですか!」
「このブラウニー美味しー! 海未ちゃん、そのチョコケーキ一口ちょーだい! 穂乃果のもあげるから!」
「何故そこでは素直に差し出せるんですか……」
「海未ちゃん、ことりのも一口食べる?」
「ええ、せっかくですしいただきましょうか──」
「じゃあ、あーん♪」
「…………あーん」
「おお、海未ちゃんが素直だ」
「ムグムグ……。──私だって、いつまでも振り回されてばかりではありませんからね。もう付き合いも二十年を超えるんですから」
「じゃあ、あーん!」
「…………。あーん」
「穂乃果にも穂乃果にも! 海未ちゃんやって!」
「あまり調子に乗らないで下さい」
「酷いよっ! 誕生日は一年に一度の特別な日なんだよ……? 少しくらいワガママ言ってもいいと思うの! ダメ……?」
「あなたのワガママは、ずっと昔から変わらずじゃないですか」
「ことりちゃーん! 海未ちゃんが意地悪するー!」
「よしよし穂乃果ちゃん。あーん♪」
「あむっ。──チーズケーキも美味しいね! チョコケーキも食べたいな〜」
「くっ……そうやって変な演技を身につけて……。特別ですからね!」
「分かった! ちゃんと次の海未ちゃんの誕生日で忘れず『あーん』してあげるから!」
「そ、そういう話じゃありません!」