題材はいいと思います題材は
それなりに読み難いかも。
「来たわねメリー」
「来ないわけ無いでしょ」
大学の食堂、その中にある四人用のテーブル。
そこに一人で座っていた蓮子のもとに、パートナーが遅れてやってくる。
それまで蓮子は一人で四人用テーブルを占領していたわけだが、そもそも食堂を利用する者が少ないので誰も何も思わなかった。
「今回は?」
「...凄いわよ、メリー」
テーブルの上で手を組み、双眸をほんの少し鋭くする蓮子。自信に満ちたその姿から、メリーは緊張を走らせた。
「今度こそ幻想の郷を拝めるかもしれない」
「...何をやろうというの?」
「簡単な話よ。とある場所に行くだけ」
「何処まで?」
その質問に、なぜか蓮子は答えない。
「蓮子、私たちは何処まで行くの?」
「...忘れた」
ばつが悪そうに言う蓮子に、メリーは絶句した。そしてその後、言葉を紡いだ。
「この話は無しで」
「待って待って!地名を忘れただけだから!」
席から立ちあがろうとしたメリーを、全力で制止する蓮子。だが、メリーの目は平時より幾らか冷やかである。
「そもそも、情報源は?」
「...場末のバー」
「週末にレポートだって。今から頑張らないとね」
「待って。信頼出来る筋ではあるから」
慌てて店の様子を見せる蓮子。古びた看板を掲げた、良く言えばレトロな店。『隆西酒店』...だったのだろうが、『隆西酒占』になっている。
メリーは呆れ顔のまま、溜め息を吐く。
場末のバーで得られる情報に、信頼できるものなど存在しない。
「大体、貴女お酒飲めないでしょ」
「そこは大丈夫だった。飲むフリしたから」
「何で私を誘わなかったの?」
言葉に詰まる蓮子。実際はメリーのことを心配しての事だったのだが。
「...行き方は覚えてるんでしょうね?」
「勿論」
「着替えはどれくらい要るかしら?」
「二日分...ぐらいかしら」
「いつ出発?」
「明日、朝八時」
「......」
「英気を養っておいてね。じゃあ明日!」
あっ、と声をあげるメリーだったが時既に遅し。蓮子は自慢の逃げ足を活かして消えてしまった。
今さら怒るつもりはメリーの方には無かったのだが。
「はーい、お早う」
「お早う」
八時七分、蓮子が駅に到着した。メリーはぴったり八時に来たため、七分待たされた事になる。
「貴女ほど時間に敏感な人間は居ないでしょ。何で遅れたのよ」
「落ち着いて。言葉の画数が多いわよ」
「今日はヒロシゲじゃないのね」
「東京には行かないからね」
そして蓮子が時刻表を確認しようとすると、先客がいた。
白いドレスに白い帽子。巻かれた青いリボン。片手に持っている古くさい型のスーツケースから察するに、旅行客なのだろう。
「うーん...」
時刻表を見ながら唸っているので、恐らく旅行に慣れていないのだろう。ここで、メリーは今朝に見た占いを唐突に思い出した。
「一期一会の出会いを大切にしましょう」と言っていた。つまり、こういう事なのだろう。
「何かお困りですか?」
その言葉に、蓮子は少し面食らった。メリーが面識の無い人物に自分から話し掛けるなど、考えられなかったからだ。
「あら、ありがとう。えっとね、此処に行きたいのだけど」
旅行客が路線図に掲載されている駅を指さす。そんなに複雑な乗り換えは無いように見えるが。
「あ、其処だったら私達の目的地よ」
隣で見ていた蓮子が言った。どうやら駅名を思い出していたようだ。
「貴女も一緒に来たら?」
「いいの?」
「いいわよ。ねぇ、メリー」
「構わないわ」
かくして、華ある三人の電車旅が始まった。
電車の中は、西へ向かう電車だからか、それなりに年月を経ているように見える。
三人は二つの二人席を合わせて、向かい合うように座った。
「いやぁ、助かったわ。何せ初めて乗るから」
その言葉を示すように、窓の外を楽しそうな眼で眺める旅行客。だが、この電車はトンネルに入らない。
「貴女達も観光かしら?」
「というよりは、調査に近いわね」
「調査?」
「ちょっと、メリー」
確かに秘封の活動は隠すようなものでもないが、晒すようなものでもない。それはメリーもよく知っているはずだが。
「私達は、ちょっと変わった物を探しているの」
「へぇ。少し、お姉さんに話してくれるかしら?」
「いいわよ」
あっさりと承諾したメリーに、蓮子は内心かなり狼狽える。
たまたま同行した旅行客だというのに、何故こうも情報を明け渡すのだろうか。
「...ふーん」
話を聴き終えた旅行客は、手を口元に当てながら感想を言う。たった一つの感嘆詞だったが。
「それで、さっきの話を踏まえた上で質問したいのだけど」
「どうぞ」
「貴女は魔法の存在を信じるかしら?」
突拍子も無い質問だが、旅行客はまるで動じた様子を見せなかった。ある程度予測出来た質問だからだろうか。
「信じているわ。きっと、何もかもを解決出来る魔法が存在するって」
「そう」
簡潔にメリーが答えた。
電車は次第に速度を緩め、寸分違わず駅に停車した。
ドアが開き、出てきたのはたった三人の女性である。
「それじゃ、此処でお別れね」
駅を出たところで、旅行客から別れを告げられる。
「ありがとう。貴女達のお陰で来ることが出来たわ」
「お礼なら、私じゃなくて蓮子に」
「いいよ別に。たまたま目的地が一緒だっただけだし」
スーツケースを転がし、離れていく旅行客。が、道半ばで此方を振り返った。
「そういえば、名前を言ってなかったわね。私、ルイズっていうの」
「そう。またいつか会いましょう、ルイズ」
互いに手を振りながら、今度こそ離れていく。そして進むべき道を見据える。
が、振り返る途中の蓮子の目の端に映ったのは。
ルイズの姿が、音も無く消え去った光景だった。
「...え?」
「どうしたの蓮子?」
「今、ルイズが...」
「そんな事も起こるでしょうね」
「...こりゃ、一杯食わされたわね」
メリーは気づいてたからこそ、あの話をしたのだろう。
まったく、私が怪異に気づかないとは。もしかしたら、今までにも同じ事があったのかしら。
そこまで考えて、蓮子は思考を打ち切った。
怪異が側にいながら気づかなかったというのは、何となく癪だから。
はい。
難産というより、鬼子を産んだ気分。オチが無いねぇ...
まぁそれはそれとして、今回は僕の素の文体で書いてみたよ。読みにくかったら言ってね。僕が喜ぶから。