小学生に逆行した桐山くん   作:藍猫

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高橋くんの視点です。


大切なもの。大切なこと。

 

 俺は、下町の牛乳屋の家に生まれた。

 毎日飽きもせず、家のうまい牛乳を飲み続け、そのおかげかどうかは分からないが、身長は一時期からぐんぐんとのびた。

 

 じーちゃんも、親父も、気難しいけれど、仕事に誇りを持っていて、そしてこの町の事を愛していた。

 

 三月町の住人は大きな家族だ。

 商売をしている住人も多かったから、子育ては持ちつ持たれつで助け合うことも多かった。

 

 川本とはお互いの祖父同士が仲がよく、その関係で気が付いた時には友達だったと思う。

 所謂、幼馴染というやつだろう。

 

 川本のじいちゃんは、和菓子屋をずっとしていて、最近は洋風のものを扱うこともあり、そんなときにうちの牛乳を仕入れてくれていた。

 じいちゃん同士は腐れ縁だのなんだと、言い合うことは多いけれど、将棋もよくしているし、やっぱり仲が良いのだと思う。

 

 幼稚園、小学校と一緒に上がっていき、他の近所の友人とも一緒に川本とはよく遊んだ。

 

 綺麗な姉ちゃんと優しい母ちゃんがいることは知っていたけれど、そういえば親父さんは殆ど見たことがなかった。

 でも、親の事は遊ぶのに関係が無いし、俺は事が終わるまで全く、川本家に何があったのかは、全く知らなかった。

 

 小学3年生の時だったと思う。

 川本の親父さんは出ていき、川本の家は母子家庭になった。

 

 このご時世だ。片親の家庭は別に珍しいことじゃない。

 けれど、やっぱり噂は流れてしまう。そして、他人の家のことを面白そうに、色々いう人もいた。

 

 三月町の住人は、三日月堂の事を良く知っていたし、川本の家の人たちのことを、誰も悪く言ったりしない。

 

 クラスの誰かが、あの子は父親に捨てられたんだと陰口を叩いていたけれど、そんなんじゃないって事、俺は知ってた。

 だから、何も言い返さない川本に、俺の方がやきもきしてしまった。

 

「言い返したら良いのに、俺が代わりに言ってやろうか?」

 

 なんだが無性に腹がたって、そう川本に言ったけれど、あいつはきょとんとした顔をした。

 

「どうして? 言わせておけば良いんだよ。ちゃんと知っていてほしい人たちは皆分かってくれてるの、私は知ってる。それに、そんな事言う人と関わりたくないから」

 

 あいつは凄く、堂々としていた。

 しっかりしないと、という気持ちがそうさせるのか、川本はすごくシャンとするようになった。

 かっこいいなって思えた。

 

 怖がったりも、下を向いたりもしないで、本当にずっといつも通りだったから、変な噂をする奴もすぐ飽きてやめてしまった。

 

 母親に、川本の事を話すと、凄く大人の対応だと驚いていた。

 言い返したり、反論したりするのにはエネルギーを使う。関わりたくない相手にそれをするとこちらも疲れてしまう。

 かといって言われっぱなしも良くないが、川本の気にしてませんという毅然とした態度は、相手にとってつまらなかったのだろう。

 だから、飽きられるのも、はやかったらしい。

 

 いつの間にか、妙な陰口はすっかりなくなっていた。

 

 

 

 

 

 


 

 それからしばらくして、川本の家に年の離れた妹が生まれた。

 随分前から、お姉ちゃんになれる、とはしゃいでいたのをみてきた。

 どこか、寂しそうだったあいつの雰囲気が、一気に変わったというか、戻ったとな思えて、俺も嬉しかった。

 

 近所に新しい赤ちゃんが生まれると、三月町はお祝いムードで、うちの家からもお祝いを持っていた。

 

「こんばんは! おふくろが持って行けって」

 

「あれ? こんばんは。ひなちゃんのお友達かな?」

 

 出迎えてくれたのは、川本のかーちゃんでも、姉ちゃんでもなくて、優しそうな兄ちゃんだった。

 

「どうぞ、上がって。皆、夕飯の用意をしてるんだ」

 

 ひなちゃん、お客さんだよ、とその人はとても慣れた様子で俺を奥へと通した。

 

「あ、おばさん。これ、うちのおふくろから……」

 

「あら~高橋くん、すっごく背が伸びたわね。牛乳もありがとう。まぁおくるみもこんなに沢山、本当に貰っていいの?」

 

「どうぞ、服とかタオルとかその辺は、甥っ子たちとかが使ったけど、まだ綺麗なやつらしいです。うちにあっても仕方ないので」

 

 子どもが生まれると色々物入りらしい。服とかタオルとか涎掛けとかいくつあっても足りないと言っていた。

 

「高橋くんも良かったらご飯食べていく?」

 

「あ、いえ。今日はうちでもう作ってくれてるので、大丈夫です」

 

「じゃあ、良かったら。これ、僕が持ってきたお土産のお菓子、いくつかご家族にも持って行って」

 

 俺を中に通してくれたお兄さんが、高そうなお菓子の箱を開けてみせてくれた。

 

「え、悪いですよ。川本に持って来たんでしょう?」

 

「いいよ、持って行って! いっぱいあるでしょう。零ちゃんいつも買いすぎるんだよ」

 

 川本が楽しそうに笑いながら、俺に沢山勧めてきた。

 

「え、でもひなちゃんたち結局食べきるよね?」

 

「残ったら勿体ないもん! でも毎回買って来なくても大丈夫なのに」

 

「そう言われても、せっかく地方に行ったら色々買いたいけど、僕一人じゃ食べきれないし……」

 

「桐山くん、いつもそう言うけど、うちに買う予定無かったら殆ど買わないでしょう。この前、藤澤の奥様に聞いたのよ」

 

 あかりさんはそうやんわりと指摘した。

 

「……まぁ、良いじゃないですか。ひなちゃん、こういうの好きだよね?」

 

「そりゃあ、大好きだけど」

 

 勢いよく、川本が答えると、その人は満足そうに頷いた。

 

 零ちゃん……。桐山くん……。もしかして、と思ったけれど、テレビでみる印象とあまりに違っていて分からなかった。

 

「あの、人違いだったらすいません。桐山零七段ですか?」

 

「挨拶もせずにすいません、桐山零です」

 

 その人は、僕の言葉に少しだけ驚いたようだったが、すぐに穏やかにそう返事をした。

 

「あっ! 高橋勇介です。あの、そこの牛乳屋の息子です」

 

「あぁ、それで牛乳。ひょっとして、ひなちゃんの家の牛乳いつもそこで買ってる?」

 

「うん、そうだよ。三日月堂で使ってる牛乳もそう!」

 

「どうりで美味しいと思った」

 

 家の事を褒められて、素直に嬉しかった。

 

「あの、桐山七段がどうして……」

 

「敬称は大丈夫です。段位で呼ばれると仕事を思い出しちゃうので。川本家の人たちには、色々と、お世話になっています」

 

「いや、俺の方こそ楽に話して貰ったら……。すいません、いつもテレビで観てる人だから、なんか舞い上がっちまって」

 

 そう、いつも将棋を指しているところしか観てこなかった。

 だから気づけないくらい、柔らかい雰囲気で、リラックスしていたのに、余計なことを言ってしまったかもしれない。

 

「零ちゃんは、よくご飯を食べに来るんだよ」

 

 俺の緊張をよそに、川本はのんびりとそう続けた。居る事が当たり前になっているそんな感じだった。

 

「三日月堂も随分とお世話になってるけどね」

 

 川本の姉ちゃんはそういって、笑っていた。

 

「あ! 対局にも持ってきてましたね。そうか、それで……」

 

 川本のじいちゃんのお菓子は本当にうまいから、気に入ったのも分かる。川本の姉ちゃんも母ちゃんも店をよく手伝っている。その関係なのだろうと思った。

 

「零ちゃん、高橋くんはね。野球がとっても上手なんだよ」

 

「凄い! 野球してるんだ。確かにスポーツ少年って雰囲気あるね」

 

「いや、そんなまだまだ全然で。……桐山さんは小学生でもうプロになってましたよね? それってどんな気持ちでしたか? 不安は無かったですか?」

 

 野球は好きだ。すごく好きだ。

 でも、これだけで食っていける保証なんて何処にもない。

 夢はプロ野球選手なんて子どもは沢山いる。

 だから、今はみんな笑って、頑張れという。

 

 でも、俺は本気で目指したいと思っていて、だからこそ色々考えてもいた。

 

 家の事だってある。じいちゃんから親父へと引き継がれつつある牛乳屋をみて、次は俺がって気持ちもある。

 

 じいちゃんや親父が、桐山さんの事を話しているのを聞いたとき衝撃だった。

 俺と同じ小学生でプロになった人。

 野球よりずっとプロになる門が狭い将棋という世界で、たった4つ上のその人は、その日からずっと大人と同じように、活躍していた。

 

 桐山さんはじっとだまって、僕の目を見返してきた。

 

「……不安だったよ。でも、変な話将棋しかなかったんだ。そして、ある意味では、それは幸福だった」

 

「幸福……?」

 

 桐山さんの事情は少しは知っているから、将棋しかなかったという言葉の意味は理解できた。

 けれど、それが幸福だったってどういう意味なんだろう。

 

「普通はさ、もっと色々悩むんだと思う。その選択肢の多さも幸せなことなんだろうけれど、僕にはそれが無かった。だから、考えもしなかった。将棋以外の道を行くことを。有無をいわずにただ一つにかける。それって結構難しいけど、逆にそのおかげもあったような気がする」

 

 色々悩む……まさに自分の事だった。

 たった一つにかける。それは凄く怖い事だ。でも、この人はそれをやり遂げて、そして今もそれを続けていた。

 

「凄いっすね。だからMHK杯勝てたんですね。俺、みてました」

 

「あれね! すっごくカッコよかった。零ちゃんまけそうな雰囲気だったけど、スパンッて指してそこから一気にだったよね」

 

 川本が興奮したように相槌を打った。

 

「ひなは、本当にあの対局が好きよね」

 

「ありがとうございます。テレビで全部放映してくれるのは珍しいですから、印象に残ったのかな?」

 

 桐山さんは、照れたように笑っていた。

 

「高橋くんも、将来の事を今からしっかり想像する事は、それだけですごい事だと思う。悩んだ末に選んだ結果っていうのも、僕は大事だと思います。野球のことなんだよね? できる場所が、沢山あってそれだけでも悩むと思う。でもきっと、君の夢のために選んだら、それが一番なんじゃないかな?」

 

 そうだ、野球ができる場所は沢山ある。

 今は、リトルのチームに所属しているけれど、中学になれば部活にはいるか、強いシニアのリーグに入るのか、選択肢が生まれてくる。

 桐山さんほどじゃないけれど、俺もちゃんと考えて選ばないといけない。そして、それを最後に決めるのは、自分じゃないといけないと言われた気がした。

 

「高橋くんの夢はプロ野球選手?」

 

 川本が無邪気に聞いてきた。

 

「……おう! 俺はプロ野球選手になる!」

 

 仲間内のノリじゃない、尊敬する人と幼馴染の前で俺はしっかり宣言した。

 

「私の夢はね。三日月堂をもっともっと素敵な場所にすること! 大好きな場所をもっと大好きにしていくの」

 

「良いね。二人とも素敵な夢だ」

 

 桐山さんは、目を細めて優しくそう言ってくれた。

 

「あの、プライベートなのに、こんなこと頼むのもあれなんですが……、今度じいちゃんに一筆いただけませんか? 貴方の事すごく応援していて」

 

「あぁ、もちろん良いよ。色紙? 扇子? どっちがいいかな。今度、ひなちゃんに渡しておきます」

 

 長居してしまった。帰り際に、だめもとでお願いしたら、桐山さんは気軽に頷いてくれた。

 

 後日、川本を通して、台紙が付いた色紙に美しい揮毫を書いてくれた。

 じいちゃんは家宝にすると大騒ぎして、嬉しそうだった。

 

 俺は、ただの川本の幼馴染だ。

 それっきりになるかと思った桐山さんとの交流は、意外にもその後も川本の家で会うことで続いた。

 

 

 

 

 

 


 

 俺が出会った翌年、中学二年生の時に、桐山さんは獅子王というタイトルを獲った。

 中学生のタイトルホルダーの誕生に、俺のじいちゃんは大いに喜び、その偉業を称えた。

 

 それからも彼の強さは増していった。

 

 中学三年生の初夏に聖竜のタイトルを宗谷名人から奪い、そして秋には獅子王戦の初の防衛。

 これには、親友の二海堂さんとの約束も大きなモチベーションになったらしい。

 二海堂さんが新人王を獲り、桐山さんと記念対局をするという約束。

 二冠になった桐山さんは、その資格を充分に持ち、そして将棋連盟側もずっと宗谷名人だったそのタイトルホルダー側の役割を、今年は桐山さんに任せた。

 そして、二海堂さんも約束を果たし、新人王となる。

 

 記念対局は見事なものだった。

 ライバルという高めあえる関係は、すごいなぁと思った。

 

 

 

 高校には進学せずに将棋に集中するのかと思った桐山さんは、予想に反して、在籍していた私立中学の連携校へと進学した。

 

「進学はしないのかと思っていました」

 

 川本の家でばったり会った時にそう言ってしまった。

 

「まぁ随分悩んだけど……。冬に棋匠もとったし、来年からはA級だから大事な時期なのは分かってるしね」

 

 丁度この前、桐山さんは三冠になった。

 かつては七冠を保持し、将棋界の最強とうたわれた宗谷名人から、タイトルを半分近く奪取している。

 そして、順位戦だ。B級一組も全勝で抜けた桐山さんは、次年度のA級順位戦を戦う。

 そこを勝ち抜けることができれば、名人位にも挑むことができる。

 当然最年少記録だ。日本中が期待していることを、この人が知らないわけはない。

 

 それでも、高校の進学を選んだ。

 

「理由をきいてもいいですか? 将棋に関していうなら時間を取られるし、周りも反対しませんでしたか?」

 

「一部の人には勿体ないとは言われちゃったね。でも会長は許してくれたし、師匠は寧ろ応援してくれた」

 

 桐山さんはそこで一度、言葉を切った。続きを探している感じだった。

 いつもこの人は、その場しのぎの言葉を返さない。

 俺に対して真正面から応えてくれる。それがどんなに嬉しかったか。

 

「……前例を作りたいと思ったんだ」

 

「前例? プロ棋士でありながら高校を卒業するってことですか?」

 

「もちろん高校在籍中にプロになってそのまま卒業する人はこれまでもいたし、通信とかを使って卒業した人もいるにはいる。でも、タイトルを持ちながら卒業した人はいない」

 

 ……それは、そうだろう。そもそも中学で獲ってる人が、目の前のこの人だけだ。

 

「もし、僕がちゃんと両立して卒業できたら、今後もプロ棋士をしながら、または目指しながら、高校も行って卒業する人が増えると思う。それは奨励会員も一緒。多いんだよ、高校受験を期に奨励会を辞めちゃう子もね。そういう子は、結構親に言われる子も多い。事情は様々だけど、本意じゃない子もいたかもしれない」

 

 だから、そんな子が、あの人に出来たんだから自分も頑張れるって言いやすくなったら良いなって。桐山さんは、そう静かに教えてくれた。

 

「……すげぇ。道を切り開くってことですよね!? めっちゃカッコいいっす」

 

「ありがとう。まぁ僕の行ってる駒橋高校は、だいぶ配慮してくれてるから、それを指摘されると辛いんだけどね」

 

「いやでも、スポーツ特待生みたいなもんですよね? 制度としてあるならありですよ」

 

「とりあえずは、頑張ってみるよ。あまりに成績がおちたり、どっちつかずになったりしたら、また考える」

 

 そう言った桐山さんの目には、強い闘志があるように見えた。

 

 

 

 

 

 そして、本当に負けなかった。

 初夏の聖竜の防衛戦、相手はいつもの宗谷名人ではなく土橋九段だった。防衛は成功する。

 その後も、保持していた獅子王と棋匠のタイトルも渡すことはなかった。

 そのうえ、棋匠戦とほぼ同時並行でタイトル戦が行われる王将戦で挑戦者となり、宗谷王将からストレートで奪取する。タイトルの番勝負で宗谷名人が、一勝もできなかったのは実は初めてだったらしい。

 

 これで、4冠。桐山さんは、現状の棋士の中で、最も多くタイトルを持つ棋士になった。

 宗谷名人が台頭しはじめてから、七冠ではないにしろ複数タイトルを彼の人以上に保持した人はいなかった。

 世代交代……という声がはやくも聞こえ始めるほど、この頃の桐山さんの勢いは凄かった。

 

 A級順位戦は3月に勝率がならんだ3人のプレーオフとなり、桐山さんはそれを勝ち抜いた。

 彼は来年度、名人位に挑む。

 高校生でその偉大なタイトルへ挑む権利を勝ち取ったのだ。

 

 

 

 

 

 


 

 彼の活躍をみながら、俺にも大事な転機の時期が訪れていた。

 

 中学は地元の中学に進学したけれど、野球部には入部しなかった。同じリトルの友人たちには随分と誘われたけれど、有名なシニアの監督から声をかけられていた方を優先した。

 強いシニアでいっぱい試合に出る事が出来たら、高校への選択肢も広がると思ったから。

 

 そこで、俺は切磋琢磨しあう多くの仲間たちと出会う。

 桐山さんと二海堂さんみたいな、良いライバルに沢山出会えた。

 

 その先も、俺は野球に集中できる環境を選び続けた。

 自分の夢のために、選択をし続けた。

 

 進学した高校は、毎年甲子園に出場する機会を得て、俺も二年の時から2回レギュラーとして出場することが出来た。

 一位指名……は無理だったけれど、ドラフトに選んでもらえるような選手になれた。

 大学への進学を考えた事もあったけれど、高校卒業後にプロになることを、はやいと微塵も思えなかったのは、桐山さんの影響があったと思う。

 

 

 

 

 俺を獲得した球団は、関東に本拠地をおくセ・リーグの球団だった。

 初年度は、なかなか使って貰えなかったが、代打で成績を残したこともあり、二年目からは準レギュラーのような扱いだった。

 三年目の今は、ショートのレギュラーの座を狙いながら、練習に励んでいる。

 

「高橋~! 今度の始球式、おまえ打席にたってくれ」

 

 広報担当の人にそう声をかけられたとき、自分が? と思ってしまった。プロ三年目といえ、まだそれほど人気があるわけじゃない。

 始球式に立つのは球団の顔のような選手が多いはずだ。

 

 疑問に思ったことが伝わったのだろう、相手の事を教えてくれた。

 

「ほら、このまえ永世獅子王を獲っただろう。プロ棋士の桐山先生。話を受けてくれたんだよ。将棋連盟の会長のプッシュも大きかっただろうけど。打席に立つならお前がいいそうだ。ファンなのかな?」

 

「え! 桐山さんが始球式に出るんですか!? ……大丈夫かな」

 

 受けてくれたのは勿論嬉しかった、そのうえ自分を指名してくれたのも。けれど、運動は苦手だった筈だ。

 川本はあれで、結構ミーハーな所もあるから、旦那が始球式に出たら喜ぶだろうし、それも理由な気がした。桐山さんは、本当に川本には弱いから。

 

「知り合いなのか! じゃあ色々よろしく頼むよ」

 

「はい、勿論です」

 

 久しぶりに連絡をとろう。

 練習がてら、キャッチボールに誘ったら、頷いてくれるだろうか。

 その時は絶対に指に怪我をしないように、細心の注意を払わなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




5巻に収録予定の高橋くんの視点でした。
ひなちゃんと同じ年なので、桐山くんと4歳も離れているのかぁ、子どもの頃の4歳ってすごく遠く感じたなぁと思いながら書きました。

高橋くんは絶対にプロ野球選手になってくれると思うので、夢をかなえてプロ野球選手になってもらいました(笑)

お久しぶりの3月のライオンの投稿になってしまいました。
3月はイベントにも出ますので、3ライいっぱい投稿します。
次は、後輩くん(原作の桐山くんのクラスメイト)視点で高校生の桐山くんの話を投稿予定です。

1巻から3巻の在庫が復活していたり、4巻の通販の予約が始まったりしています。
詳しくは、BOOTH等のショップ等を見てください。
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