みのもこです。何にも思いつかなくて、ふっと思いついた。
ただいま、幻想郷の季節は秋。
モミジもイチョウも、とある神様によってその召し物の色を変え、山を彩っている。とある烏は、赫々とした山が映るこの季節を一番好いているとか。
そして、秋といえば実りの季節でもある。これもまたとある神の賜物なのだが、人里の住人達は此方の神益をありがたがっているようである。
「おーい、妹紅さーん!」
「ん?」
迷いの竹林。一人の少女が地べたに座り、煙草を吹かしている。
そしてフィルターまで完全に無くなったところで、少女の名前を呼ぶ大きな声が響いた。
「穣子か。一年ぶり」
「そうだねー」
くふふ、と笑うのは穣子と呼ばれた少女。両手で抱えている袋からは、積まれた柿が顔を出している。
彼女こそが秋の実りを司る神、秋穣子である。
「よく此処まで来れたね。迷いそうなものだけど」
「煙を追って来たの」
なるほど、と納得する妹紅。とはいえ、たばこの煙などそこまで昇く上がるような煙ではないのだが。
穣子が彼女に会いに来た理由としては、実りのおすそ分けである。ついでに焼き芋する時に火を貸してくれたお礼でもある。
「上は柿で、下は十三里。あと銀杏も底にあるよ」
「あら、わざわざありがとうね」
差し出された紙袋を受け取る妹紅。ずっしりとしたボリュームで、かなり豊作だったことが判る。
そして荷物を受け取って両手が塞がったあと、徐に穣子が妹紅の体に顔を近づけた。
「な、何?いきなり」
「...煙草臭いわ」
言い放たれた言葉に少なからずショックを受ける妹紅だが、実際そうなので反論の余地は無かった。
それなりの頻度で煙草を吸う彼女だが、蓬莱人である故に肺は汚れない。だが当然ながら、服には煙草の臭いが染みついていくのである。
「さては、洗濯サボった?」
「...少しだけ」
目を逸らしながら答える妹紅。これには穣子も溜め息を吐く。
ばつが悪い妹紅は、何となく仕返しがしたくなった。そんなわけで、今度は妹紅が穣子の体に顔を近づけた。
「ひゃあ」
妹紅の鼻腔をくすぐったのは、華やかな秋の薫り。甘ったるく、郷愁を誘うものだった。
「...いい匂いするね、穣子」
「...うぅ~」
「いいって、前は自分でするから」
「ダメ!私がするの!」
永遠亭のお風呂場から、二人の少女の声が聴こえる。
一人は穣子。人里の男衆がたびたび話題にするその大きな胸を、恥ずかしげもなく晒している。
もう一人は妹紅。穣子とは対照的な白く細い体に、所々泡が付着している。
そして柔らかな布巾を持った穣子が、泡の上から擦り始めた。
「んっ」
腹を優しい手つきで擦られ、思わず声をだす妹紅。背中に当たる柔らかい感触もまた、その要因だろう。
「そういえば、蓬莱人だから垢は出ないんだよね」
「まぁね。それでも汗とかはかくけど」
ひとしきり洗い終わり、お湯で泡を流す穣子。そして再度顕わになった妹紅の体に、穣子は一瞬だけ息を呑んだ。
しっかりとした背中に、無駄なものがまるで無い腰周り。普段もんぺで隠されている華奢な足は、病的な美しさを湛えていた。
「それじゃ、しっかり浸からないとね」
「...あ、あぁうん。三十秒くらい肩までね」
「十秒じゃないんだ」
妹紅が脱いだ服を洗濯するのは、序列からして優曇華の役目となった。
であるからして、優曇華は今右手に妹紅の服を持っているのだが。
「妹紅さんの服...これが...」
優曇華はゆっくりと、その服に顔を近づけ。
スウゥーーッ
と、可能な限り服の臭いを吸い続けた。
(ダメ、こんな...変態みたいなこと...)
ちなみに割と早く妹紅達が風呂から上がったので、洗濯は間に合わなかった。
「よし、オッケー」
穣子は妹紅の服を嗅ぎ、煙草の臭いが消えていることを確認した。
「着る前に確認すればよかったのに」
「そりゃそうなんだけど」
まぁいいじゃん、と笑顔を浮かべる穣子。
「どうせだし、もっかい穣子の臭い嗅がせてよ」
「えー、やだよー」
軽くじゃれ合う二人だが、不意にお互いの顔が近づいた。あわや唇が重なるかというところで。
「......」
「......」
妙な含みを孕んだ沈黙が流れ。
「...それじゃ、私はそろそろ」
と穣子。
「あぁうん、送っていこうか?」
「大丈夫。またね」
少し早口で言い終わり、永遠亭の玄関をくぐる穣子。
結局この後で迷ってしまい、泣いている所を妹紅に見つかったのは別の話。
飛べばよかったのに、と揶揄されるのも別の話。