僕の灰色アカデミア   作:フエフキダイのソロ曲

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後で修正するかも。




第22話

「勧誘しに来ました」

 

琉電の返事は簡潔だった。

 

「勧誘?拉致じゃなくて?」

 

はんっと鼻で笑ってやる。突然学校に押しかけ問答無用で謎空間に拉致した挙句、訳の分からない契約の強要。ヤクザかな?

 

 

「勧誘です。少々強引な手段になってしまったのは申し訳ありませんが、いかんせん誰がどこで聞いているのか分からないもので」

 

「いや別に誰も聞いてないでしょ」

 

 

聞くとしたら校長くらいなものである。

 

 

「いえ。千差万別な個性があるこの世の中、警戒するに越したことはありません。実際この学校の全教員、全生徒のうち、聴力強化やテレパシーその他により離れた場所の会話を認識することが出来るタイプの個性の持ち主は19名ほどおります」

 

「……そうですか」

 

 

 

まあ。うん、まあいいよ。話が進まないからとりあえず君たちの横暴には目を瞑ろうじゃないか。僕は単細胞の爆豪とは違うので、例え心の中でこの合法ヴィランがと思っていても口には出さない。で、勧誘ってなんの勧誘?

 

 

「国防軍の予備要員として情報提供者になって頂きたい」

 

 

「予備要員?……普段は普通に学校に通ってるけど、召集がかかった時だけ国防軍の1人として活動する、みたいな?」

 

 

「ええ、まあ。概ねその理解で問題ないです。君の場合は情報提供者なので、情報の報告が主ですが」

 

 

…………。

 

困った。疑問が多すぎる。どこから始めたものか……。

 

 

「色々聞きたいことはありますがその前に1ついいですか」

 

「はい」

 

「なんで僕?なんの情報?」

 

「…………それをお話するにあたって、前置きを述べさせていただいても?」

 

「ああ、はい。どうぞ」

 

「なぜ君か、なんの情報を提供するのか、予備要員とは何をするのか、そもそも国防軍とは何をしているのか、など、これから全て説明致しますが、これらの情報は機密扱いのものです。よって、君に我々の提案を受け入れて貰えなかった場合、この一連の記憶を削除させていただきます」

 

 

ふーん。今の一連の行動を見る限り、記憶を消すだのなんだの言われても驚けない。あっそ、という感じである。

 

 

「へぇ。今度は記憶を消す個性ですか」

 

「正確には催眠術の個性です。記憶を消すというより、個性によって強力な催眠状態へと導き、暗示をかけて記憶を封印させていただきます」

 

「……はい。分かりました。いいですよ、それでは説明を始めて頂けますか」

 

「ええ」

 

 

うん、もう分かったからさっさと本題へどうぞ。

 

ここまでの会話で何だかやけに疲れた僕が投げやりに先を促すと、琉電は頷いてやっと、やっと!本題に入ったのであった。

 

 

「まず、君が我々に目をつけられた理由ですが、大きく分けて2つあります。1つ目は君がオールマイトの秘密に気がついたこと、2つ目は君の立ち位置」

 

「立ち位置?」

 

「はい。まず1つ目。オールマイトについて。彼の力の衰えについては限られた人しか知らない機密事項です。彼が傷を負った当初、その情報は外部に漏れないよう周囲の者の尽力により完全に秘匿されていました。しかし当の本人が考え無しにそこら中で変身するせいで次々と目撃者が発生しています」

 

 

「…………」

 

 

そこまで言うと琉電はわざとらしいため息をついた。

その様子を見るに、国防軍もオールマイトの情報統制に一役かったのだろうか。

 

まあ僕がその変身シーンを目撃した状況を考えても、あの人目の多い中で堂々と変身していたしな。目撃者がわさっと出てきてもおかしくはない。特にこの現代、監視カメラなんかにも映っていることだろう。それに人前で変身しなけりゃいいってもんでもないしね。

 

最近で言うと、ゴミの不法投棄で有名な海岸にオールマイトがよくいるらしい、との、オールマイト出没情報がファンによって写真付きでSNSに投稿された。

 

そこで、当然その投稿を見たファンがその海岸へ向かう。

 

そして、オールマイトどころかガリガリのオッサンしかいなかったんだけど!でもなんか声似てたwwww と、これまた写真付きで投稿された。

 

そしてその数分後にその投稿は運営により消されることになる。

 

いくらガリガリなオールマイトといえど、基本的にムキムキとは同一人物なため、万が一、ネットの住民に気づかれることを避けるためだろうなー、と、息抜きに開いたネットでそれを見つけて思った記憶があった。

 

 

つまり本当に細心の注意を払わないと、こういうちょっとした事でバレかねないということであり、その尻拭いを今まで国防軍がやってきていたということか。

 

 

 

「単に目撃されただけならまあ…それほど問題はないのですが、君のように証拠を手に入れられると厄介でして。

報道関係には手を回してありますので、そこら辺の方々はまあ問題は無いです。問題は一般人で、彼らは当然のことながらインターネットにアップしたり友人に送ったりと、拡散しようとします。

そういった方々に対しては国防軍の方で担当班が削除やアカウント凍結や警告などの対応を行っており、大抵の方はそれで静かになりますが、それでも騒ぎ立てるような方はこちらから記憶を曖昧にする処置を施させていただいております。

証拠の動画や画像は可能な限り消させていただいておりますし、他にも監視カメラに撮られたりなど様々な問題がありますが国防軍の担当班が処理しております。

勿論全てを網羅できている訳では無いですが」

 

「……すごく大変そうですけど、オールマイトに注意したりしないんですか?」

 

「感情で物事を判断する人間には話が通じません。以前何度も抗議致しましたが、毎回、助けられるのは私しか居なかったから仕方なかった、というような返事しか返ってこなかったので諦めました」

 

「そうですか……」

 

オールマイトらしいっちゃらしいがな…。

 

「そんな彼だからこそ平和の象徴として人々に信頼され、その存在が犯罪の抑止力となるまでに至ったとも言えますが……」

 

 

そこまで言って琉電は言葉を切った。静かに目を閉じ、そして開くと、話を続ける。

 

 

「目撃者が発生しているとはいえ、そこまで数は多くないのが不幸中の幸いですね。ですがやはり、人の口に戸は立てられません。これから先、目撃だけした方やこちらの記憶操作対象にならなかった方などの口から口へと噂がどんどん広まっていくことでしょう。我々も全ての証拠を隠滅できる訳では無いので」

 

「……大変じゃないですか」

 

「そうですね。まあでもオールマイトももうそう長くはないでしょうし、噂に火がついて爆発する前には既に引退していると思うのでギリギリ大丈夫だとは思いますよ」

 

「オールマイトが引退?」

 

「ええ。平和の象徴の引退です。社会に大きな影響を及ぼすでしょう。……このことから見てもわかるでしょうが今の社会は歪です。そして歪みを抱えた社会はそう長くは続かない」

 

「というと?」

 

「ヒーローという幻想に支えられた社会が終わる可能性があるということです」

 

 

「……。いまいちよく分からないんですが」

 

 

「そうでしょうね。では少々脱線して、歴史の話をしましょうか。学校で習うお綺麗なものではなく、真実のお話を。その方がこれからの話にもついてきやすいでしょう」

 

 

「はあ」

 

 

は?真実?お綺麗じゃない歴史?ヒーローが幻想?

 

 

僕は様々な疑問を抱きつつもその話に耳を傾けた。

 

***

 

 

超常黎明期にまで時を遡りましょう。

 

誰もが知っている通り、ことの始まりは中国・軽慶市から発信された「発光する赤児」が生まれたというニュースです。全ての始まりとも言えるでしょう。

 

ええ。超常黎明期とは、人類社会で超常を発現させる者たちが突如増えだした混乱期を指す言葉ですね。

 

この時代は徐々に特異体質を持つ者は増えていたものの、まだ超常能力を持たない人類の方が多かった時代です。

 

人間という種の規格がそれまでの常識から大きく崩れ、世界中が壊滅的な混乱に陥りました。

 

一説によると、この時代の混乱がなければ人類はとっくに外宇宙に生息領域を広げるまでに科学を発展させていたとらしいですが……。

 

ええ、はい。そうですね。ですが基本中の基本から話させていただきますので、しばしご辛抱を。

 

では。

 

覚醒した異能によって社会の秩序を乱す者たちによる犯罪件数が増加した事で

異能に覚醒した人々全体が社会から迫害を受ける一方、自警団のような活動する異能の使い手が現れるようになります。

 

この時の自警団的な活動を国が世論に押される形で追認し、現代のヒーロー公認制度によるプロヒーローとなりました。

 

 

さて、この辺りの時期についてです。異能覚醒から世の中は大混乱に陥りましたね。そしてその世で、異能者達をまとめ数多の犯罪行為を唆し、裏で糸を引き活躍した伝説の犯罪者といわれているのが、君もよくご存知のAFOです。ええ、君は知っているはずですよ。調べたでしょう。

 

こういう時こそ役に立つべき国が戸惑うばかりで解決策を打ち出せなかった一方、今のヒーローの前身のような自警団がポツポツと現れてきます。そして先程話した通り、見事にその混乱を抑えて秩序を取り戻したのがヒーローなのだ!!

 

……と、一般的には言われているわけですが。

 

 

さすがに国がそこまで役立たずなはずはないと思いませんか。

 

 

 

 

 

 

当時、政府の権力者のなかでも意見が大きく2つに割れました。

 

片や、今の警察組織を作った、統率と規律を重要視し個性を武に用いず、従来の在り方を貫こうとした一派。

 

 

片や、今の国防軍を創った、個性を武に用い従来の方法と組み合わせ、新たな時代における秩序を守ろうとした一派。

 

 

保守的な人が多かったので前者の方が賛同者が多く、後者の勢力は苦戦しましたが、なんとか国防軍を創立しました。

 

では、国防軍とは一体何をする組織であるのかといいますと、個性を使用した凶悪犯罪と戦う組織であります。

 

ええ、申し訳ありません、抽象的で分かりにくいですね。

 

つまり我々は通常の犯罪者を相手にするのではなく、

個性発現後の混乱期に乗じてこの国に大量に入り込んできたチャイニーズマフィアなどの外国の凶悪犯罪組織と、その勢力と繋がった日本のヤクザなどの裏社会の大物によって引き起こされる、

個性を使用し従来より更に活発に悪質に、そして狡猾になった、麻薬密売、武器密売、賭博、売春、密航、人身売買、高利貸し、みかじめ料徴収、詐欺、恐喝、強盗、誘拐、嘱託殺人、資金洗浄、ハッキング等の犯罪に対抗しているのですね。

 

ええ、これらの組織に比べると、AFOなんて可愛いものですよ。個性を得た一般人をまとめあげて犯罪をそそのかしたと言っても所詮は素人の集まり、加えてその当時の個性など大したことの無いものが多かったので、AFOなどが引き起こす犯罪行為は当時我々の管轄にはなりませんでした。

 

個性は世代を経るごとに混ざり合い強くなっていきます。中国は日本に比べると個性先進国でして。まあ、個性が発現し始めたのが日本より早かったですからね。当然、日本が経験した混乱期を先に経験している訳です。

 

その外国の裏社会とのルートを通じて日本の暴力団などは情報や、個性を活かした犯罪行為のノウハウなどを学び、日本に入り込んできた組織と融合する形で裏社会の奥へと潜っていきました。

 

外国の勢力はですね、日本より個性の世代が進んでいましたから、日本でその当時発現していたものよりも強い個性を持った人が多く、日本の勢力と結びついたのと世の中の混乱も相まって、その活動が活発化していったんです。

 

 

国防軍を組織したあと、しばらくして政界で国防軍の最大の支援者だった方が亡くなりまして、それから我々は警察を組織した勢力に押され気味になります。国防軍はかつての自衛隊よりも規模を縮小することを余儀なくされ、人手不足のなか活動をしていくこととなりました。

 

 

しかし国防軍の存在の重要性は反国防軍派の方々も認めざるを得なかったようで、けれども人員を増やして勢力が大きくなると困るので規模はそのまま、ということで、凶悪犯罪の相手は我々が、一般市民が起こすような犯罪は警察が、というように役割分担をすることを上は決定しました。

 

 

そして時は流れヒーローが台頭して今の社会になり、また日本に限らず世界全体が落ち着いてくると、国防軍には、潜り込んでくる他国の勢力やテロ組織の排除など国防に関する新たな役割も加わることになりますが……、ここは今は関係ないので省略させていただきます。

 

 

***

 

そこで琉電が軽く咳払いをし、話に聞き入っていた僕はその音で我に返って、それまでの話を自分なりにまとめてみることにした。

 

 

「あー……。つまり昔から日本にあった犯罪組織が、より強力な個性と情報とノウハウを持った外国の犯罪組織と結びついて、巨大化し凶悪化したと。そして国防軍はそいつらを抑え込むのに手一杯で、普通のヴィランの相手をしている余裕がなかったと」

 

「ええ。そこら辺は警察が担当しましたが、やはり無理だったようで。まあ当たり前ですがね。銃を持った相手に素手で対抗するようなものですから。銃社会のアメリカの警察は皆銃を持っていて、銃には銃を用いて対抗しています。個性もそれと同じなのでは」

 

「それで警察は役に立たず、代わりに自警団というヒーローの前身が活躍して小物のヴィランに対処していくことになった?」

 

 

「ええまあ。そもそもヴィランなどと曖昧で抽象的な名前で呼んでいますが、要するにヴィランとは個性という武器を使用して犯罪を犯した犯罪者であり、やはりそれには個性を用いて対応するべきであったということでしょう」

 

 

「概ね理解したとは思いますけど……、国防軍の存在が世に知られていない理由は?」

 

 

「ただでさえ秩序が崩壊している世の中です。裏社会が凶悪化、巨大化し、酷い犯罪が活発に行われている、なんていうことが明るみに出たら更なる混乱を引き起こすので国が情報に規制をかけまして、国防軍は人知れず密かに活動をしていたからです。

 

当然の事ながら最初は酷く苦戦しましたが、我々も徐々にコツをつかみ、凶悪犯罪を未然に防いだり大物を逮捕したり大規模な犯罪組織をいくつか壊滅状態に追い込んだりと、徐々に治安を回復させていったそうでして。

 

その時期にどんどん台頭してきたのが自警団ですね。つまりヒーロー。

ヒーローは、人目に付く軽度の犯罪を大勢の前で断罪することにより話題になっていったといいますか…。

 

ヒーローのおかげで秩序が蘇った!というような風潮になっていき、ヒーローに対する信頼を根底として社会が落ち着いてきたため、そういうものとしてやっていく方向に政府は舵を取りました。

 

ここでいきなり国防軍を出しても混乱するだけですので、とりあえずは秩序の回復を優先させたということです。

 

そして法整備を進めていくなかオールマイトが現れ、以前に比べれば少なくなったとはいえ、個性を悪用する犯罪が当たり前のように横行している世の中で、

誰よりも多くの人々を救い出し、犯罪者を次々と打ち倒すことで、一般の犯罪への抑止力となり、混迷の最中にあった社会の在り方を一変させ、ヒーローに対する信頼を揺るぎないものとしたのです。そして今に至る、と。彼の功績は非常に大きいですね」

 

琉電はそこまで言うと一息ついて、一旦休憩にしましょうか?続きを話す前に自分の中で情報の整理をした方がいいなら遠慮なく言ってください。

 

と言ったので、僕は有り難く休憩をとることにした。

 

 

うん?つまり、僕たちが今まで思っていた、個性を用いて悪事を働くヴィランは全てヒーローが倒している。今の世の中の秩序は黎明期に現れた自警団が奮闘し、オールマイトが現れたことによって培われたものである。みたいな常識はまやかしで、

 

実は、一般的にはヒーローが倒すヴィランと呼ばれているのは小物、この世に起こる犯罪の上澄みの方の、取るに足らない犯罪者にすぎず、もっと恐ろしい犯罪も当然多発しているがそれは人知れず国防軍が闇に葬ることで治安を維持してきたということだろうか。

 

しかし歴史の流れからして、人々はヒーローというものの上に絶大な信頼を置き、ヒーローという存在を根底として秩序だった社会を取り戻したわけなので、

 

これ以上の混乱を避けるために “ そういうこと ” にしたということか。

 

 

まあそうだとしたら、プロを名乗る割にヒーローが案外弱かったりすることに納得が行く気もするが、

じゃあ何でAFOは伝説の犯罪者とか裏社会の究極悪とか言われてるんだ?あとヤクザってほぼ全部摘発されたんじゃなかったっけ?

 

 

 

 

 

 

 




昔インターン編を読んで思ったこと。プロヒーロー弱くね。
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