シンフォギア習作 振れば風の鳴る翼的な女の子   作:レノボのカナリア

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暴力の話

 

スーパーや百貨店などの放送に暗号というか隠語のような物が存在するのはご存知だろうか。

 

トイレ掃除をする時間を知らせるものであったり、万引き常習犯などの要注意客の来店を知らせるものであったり、棚の確認作業をさせるものであったり………………そういった本来客へ聞かせるようなものでもない連絡を放送するときに使用される

 

 

「三番業務お願いします」

 

みたいな放送の事だ。

 

よほどお育ちがよろしいお家のお坊っちゃまお嬢ちゃまでもなければこういう放送を聞いたことがあることだろう。

 

 

かくいう俺こと久我雅実は今生に至るまで聞き及びもしなかったので、よほどお育ちがよろしいお家のお坊っちゃんなのは紛れもなく俺自身なのだが、それを知った時にはまぁそういう物もあるのだなぁ……なんて考えていただけであった。

子供時分には買い食いなどしなかったしスーパーなんぞ行きもしないし、太い実家で小遣いを貰っていたからわざわざバイトの為にも小売店に行きはしない。

 

つまり以前の俺には全く関係のない知識だった。

 

 

以前の俺にはということでつまり今の俺にはどうなのさ!?って話なんだが、なんとびっくり関係あるんだなぁ……

 

 

 

「学生課より久我君、久我雅実君、内線103581へご連絡下さい。103581へご連絡下さい」

 

駄弁っていた先輩を追っ払って早々にそんな放送が館内に響いた……えぇ? 今回も来たのかぁ? そんな気持ちだわ。

 

 

「雅実さん、呼ばれてるみたいデスよ?」

 

何かやらかしたんデス?みたいな顔で見られると、ちょっと悲しくなるからやめて欲しいよ。

どっちかと言えば今からやらかしを退治に行くんだ。

 

 

「あー、あれだね、学祭の準備を色々手伝っていたからその確認か何かだ。うん、名残惜しいけど多分時間掛かっちゃうから俺は此処でお暇させて貰うよ」

 

「えー!?もうすぐ響さんたちも来るのに!?」

 

「あはは、まぁ呼ばれちゃったからね」

 

行きたくねーなー、去年一昨年と散々潰したのになー、またかよなー………

 

 

「じゃ、二人ともゆっくりしていってね」

 

「はーい!」

 

「さようなら」

 

あー、めんどくせーなー…………

 

 

 

 

────

 

 

 

 

内線103581、そんな物日皇大には存在しない。

存在しないそんな物が雅実を呼び出すとは?

 

そもそも論として大学というのはわざわざ1学生を放送で呼び出したりなどはしない(いや、するところも有るかもしれないが……少数だろう)

プライバシーの問題であったり、大量の学生を抱える大学側がその生徒が大学構内に居るかなど分からない!だったりするからなのだが、では何故雅実が呼ばれたのか?

 

答えは内線の数字に現れている。

 

 

103581

 

柔道部、それも第三柔道部という意味で103。

怖い人が来ているよという581。

 

今日は外部の人間を招き入れる学祭であるので、つまり第三柔道部が道場又は出店で外客とトラブっているよ!という感じの意味になるのだ。

 

 

荒れていた日皇大でそういったトラブルが馬鹿みたいに頻発していたことに殺気立った雅実が考え学生課に周知させた、ある意味死刑宣告とも言える符丁である。

実際かつて体験した連中は放送を聞いて首を縮こめるように肩を竦めているほどに、雅実はトラブルの元をゴキゲンな目に遭わせて来た。

 

歩きタバコの連中は口が臭いからと砂利を飲み込ませて消臭させたり、酒を飲んで暴れていた連中は適当に水に漬け込んでみたり、全裸で旗と一緒に掲げられたOBもいた。

流石に命に関わるレベルの事はしていないが手脚の関節を倍にしたり、前歯が全損したりなどは平然と行われている……警察? 歴史が歴史な上にOBに剣道やら柔道やらの指導師範がいるような所になんぞ殺人やら政治的な異変でも起こらなければ介入するわけがない。

 

 

故に今回もそれはもう酷い惨状になるのだろうと、放送を理解できた人々は考えていた。

 

去年までに繰り広げられた惨劇は、雅実が自ら籍を置く大学が荒れていることを良しとしなかった自治的な行動ゆえの暴虐だったが今回は違う。

今年の学祭、雅実が完全に遊びに回るつもりであったのは、実行委員として動く学友の側に彼が居なかった事から周知の事実として扱われていた。

常ならば何に置いても優先される親友の活動を手伝わず他の活動に手を貸していた時点で、ただ楽しむつもりであるのだろうと。

 

見合い相手――勘違い――と仲睦まじく歩いている所からもそれは確定だった。

 

 

あーあーまーた忙しくなるよなどと放送を理解した救護室の人間たちは、イソイソと対象の下へと向かうための準備を始めた。

担架を数個と添え木を十本、鎮痛剤やら消毒液やら応急処置のための諸々をカバンに詰めていざ出発。

 

あんまりグロく無ければ良いなと、皆が思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

 

「こここここれはね、一種のSMプレイなんだよね!?」

 

「え、え、え?」

 

「ほほ、ほーら聞いてご覧! こいつら蹴っ飛ばすと嬉しそうに鳴くでしょ!」

 

「おぼぇ」

 

「オーボエだって! 知ってるかな!? クラリネットのデカい版!」

 

「いや、あの」

 

「あっはっはっ、いやぁ参った参った!! はははは」

 

 

ゲロだの小便だのまみれになって呻いている男どもの上で雅実は一人爆笑していた。

笑うしかないので、大爆笑していた。

目の端にキラリと美しく光る何かがあったが、もうホント、どうしようもなく笑うしかなくて、哄笑していた。

 

 

呼ばれて飛び出てボコボコーンと雅実比数倍の痛みを与えて問題を起こしていた連中の束をのした所までは良い。

楽しみにしていたシークレットライブの前に不快にされたので、いつも以上に手痛く痛めつけたことも良い。

警察官僚がどうとか代議士がどうとかの意味不明な鳴き声を発していたことを無視して手足を圧し折ったことも良いだろう。

 

 

上位者を怒らせたらこうなるという事くらいある程度の身分持ちの人間としては理解しておくべきであり、その上位者が何処にどの立場として存在するのかが分からないのであれば、普段から謙虚に生きているべきなのである。

少なくともこの国には先まで風鳴訃堂のようなフィクサーがいたのだから、真に官僚だの代議士だのであればそのあたりは考慮しなければならないはずだ。

 

それを怠って適当に暴れていたのだから、当然適当に手折られるのも致し方なし。

 

 

そういう雅実的な思想の下で行われた暴虐なのだが、何故だが……というより当然のことのように

 

 

 

「あの、えっと……とりあえず、その人達から降りませんか?」

 

「アッハイ……」

 

 

響を筆頭とした装者連中に見咎められてしまった。

 

 




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