体育祭の結果は2位。
本来なら優勝!といきたいところだったけど、寸勁擬きが禁止指定食らってたのを忘れて失格。
というか別種なんだけど、まぁ傍から見ればどっちも一緒か…。
やってて殆ど同じだと自分でも思うし……。
通形先輩の所には「体育祭を見て──」と言われていたので「必ず優勝します!」といった手前、これはもう望み薄…。天喰先輩の所は…まぁ多分ダメだろ。パイセンの所はパイセンは良くてもヒーローの方が大変になるのは違いない…。
凄くナイーブな気持ちだ…。
道が閉ざされた……そう考えるのは早計だろう。それくらい分かってる、でもそれでもふとした時に考えてしまう。
俺が──。
「お、いたいた。君が鞘無くんだよね、雄英体育祭準優勝の」
「…ええ、まぁ」
目の前に現れたのは胡散臭そうなオッサン。いやお兄さん?
なんというか、二重スパイとかしてそうな…そんな軽薄そうな感じのヘラヘラ顔の男。青エクのピンク髪みたいな奴だ。
だから少し警戒して会話する。
「そんな警戒しなさんな、俺がヴィランとかと話す時にする時の姿勢じゃん。もっと落ち着いて」
「……いやすいませんね、どうも最近敵が多いもんでして。特に俺の周りに」
「なるほどね〜、君も相当大変そうだね。体育祭でも明らかな不公平なジャッジ、噂に尾ひれが着いて今は相当なものだろう」
警戒レベルを一気にあげる。
こいつ、俺の事どこまで知ってんだ?
右手をコイントスする様に構えて、何時でも攻撃できるようにポケットの中でする。
「お前、何者?」
「え?」
俺の問いに訳が分からない…そんな顔でこちらを見てくる。
そんな顔をされても困る、誰だこいつ。
「え、俺の事知らない?」
「知らないんですけど、通報しますよ」
「……うわー、恥ずかし。結構顔広いと思ってたんだけど。そりゃいきなりこんな距離詰められて知らない人から話しかけられたら警戒するよな〜」
なんというか、自分の黒歴史が軽くバレた…時の反応をしている感じでお兄さんは羞恥に悶えている。
「ごめんね鞘無くん、俺の名前はホークス。現ヒーローランキング第3位のプロヒーローだよ」
「………マジで」
「マジマジ大マジ、流石にヒーローの卵だから知ってるかと思ったんだけど。俺もまだまだって事かな……」
「いや、あの、そのですね……俺ってテレビとかあんまり見ないじゃないですか」
「いや、知らんよ」
なんだか軽いノリになった。
警戒してたのが馬鹿らしい、というか今の不敬でヒーローとして何らかの……みたいな事ないよな…。
「まぁその話は置いといて、俺は君にとある提案をしに来たんだよ鞘無剣心くん」
「提案…ですか」
「そう、君 公安直属のヒーローになる気ない?」
「………………は?」
公安直属のヒーロー…?なんだそれ?
そんなの初めて聞いたんだけど……。
「君はオカルトとか信じるたちの人?」
「……まぁ、それなりに」
自分の起源がオカルトとは切っても切れないような物故に、一定の理解と信じる感情はある。
「この世の中が…というか個性が発現するようになってからヒーローができてそれで平和を維持出来る……だなんて本気では思ってないだろ?今の君なら尚更」
「分からなくは……無いですね」
「そう、中には死なない個性っていうのもいる。そういうのに個性を使って殺す、又はそれに近いことをするヒーローが居るんだ」
「それってSFとかじゃないんですか」
「まさか、一 二世紀前の人から見れば現代社会はSFそのものだよ」
「……そういう人達がいる…というのは信じたくは無いですけど、いることはわかりました。……で、そこに俺が入れと?」
「そそ!直属って言っても常に上からの命令を聞く訳じゃない、例えば公安からの依頼を成る可く優先させるとかそんなものだよ、あとは個性の有効。君たちで言うリカバリーガール。彼女は珍しい治癒系だから色んな場所から依頼が来てる。それの公安版とでも思ってくれたらいいよ」
「………臭いな。すげぇ臭い、俺に何を求めてるんですか?」
明らかにこの話は何かヤバい。
聞く聞かない以前に、これを知ることがもう既にやばい。
「警戒心強いなぁ……まぁざっくり言うと、君の個性無効。あれを借りたい」
「個性無効……あぁ」
合点がいった。確かにあれは特殊な力だ。
個性の一時的な無効。むしろあれを全国放送で晒すのはやばかったと、冷静になった今なら考えられる程に。
「……というか、それならウチの学校のイレイザーヘッドを頼ればいいんじゃないですか?あれもヒーローでしょ?」
「もうして貰ったけど、彼の個性は個性の発動を阻害するもので既に発動した物はどうすることも出来ない。例えばNo.2ヒーローのエンデヴァーさんの炎、出す前なら抹消でどうにかできるけど、例えば松明とかに付けた炎を抹消で消すことは出来ない。でも君のはいけるでしょ?」
「……やったことは無いですけど、まぁ恐らく」
「だと思ったビンゴ!」
指をパチッと鳴らしてヘラヘラとこちらを向く。
結局のところなんなんだ?
「なんでそんなことに俺を?みたいな顔だね。今巷で騒がれている事件が2つある、一つはステイン。プロヒーローを意図的に狙って襲う凶悪なヴィラン。……そしてもう一つがグール、民間人が個性によってゾンビ化、そして人に仇なす。今はステインに隠れているけど、かなりやばい山になってる。ステインは言わずもがな、グールの方は」
「パンデミック」
前世の知識。
ゾンビウイルスの感染によって世界規模の事件になるのが。
まさかここって、そういう世界だったのか?
「意外と頭はいいんだね、そう感染拡大…って言いたいところだけど操られたゾンビが民間人を攻撃しても民間人がゾンビになることは無い。分かってるのはそれくらいだよ……だから今のところは個性不明、人物像も不明なんだよねー」
「相澤じゃ消せなかったから、次は俺?」
「そう、今ゾンビ…というか操られている人、それも確保出来たのは4人。最大人数はどうなのか?それすらわかってないけど、変に希望を持つよりは無限に増えると思った方がいい。だから君にはそれの解除ができるか、それを調べたい」
「……それってヒーローでもない俺がやってもいいんですか?」
「ううん、バレたらかなり不味い」
「ですよね」
「でも事が事だ、日本という国そのものを脅かす程の危険。なりふり構っては居られない……と言いたいところだけど、君、ちょうど職場体験あるでしょ?」
「………うせやろ?」
「俺が君のこと指名するからさ、俺のとこに来てくれない?」
「………マジすか」
ひょんな事から、俺氏職場体験先から指名頂きました…。
「あの…ほ、ほ……ホームズさん」
「ホークスだよ」
「……ホークスさん、実は俺違うヒーローに売り込みをしててですね…もしかしたらその人から指名が来た場合とかは…」
「断って。公安のことは絶対に言っちゃダメだからね」
「………うせやろ?」
ーーーーー
「ねーねー!剣心くん!体育祭何位だった!何位だったの!!?」
帰り道、峰田とコンビニで買ったアイスを食っていると後ろから笑顔のパイセンが現れた。
数分前に峰田は「アイス当たった!!」と半狂乱になりながら替えに行ったのだが……何故か帰ってこずにパイセンが来た。
………何故だ?
峰田を池に落とせばパイセンに変わるのか?
何それ素敵。地球に優しそう……。
「えっと……まぁほら、あれだよ。結果が全てじゃないっていうか!過程が大事って言うか!そういうのだよ!結果だけ追い求めてもいいことないって!」
「へぇ、私は1位だったんだけど剣心くんは〜?」
こいつ、絶対知ってて言ってるだろ。
というか、この人1位とったの?マジパネェわ。
「まぁ、あの2位で……ございます」
「あれ〜?おかしいな〜、剣心くん。『俺に勝てるのは俺だけだ』って言ってなかった〜?」
きゅうしょへのだいだめーじ。
こうかはばつぐんだ。
けんしんはひんしになった。
「ちょ…ちょっと、あれだ弁明させてください。本当は1位なの、1位だったの?」
「へー、ならメダルは?」
「……ぶった切りました、銀は爆発三太郎が爆発しました。今頃ゴミ箱へシュートしてます」
「へーじゃあ、2位だったかも証明できないんだねー」
「ちょっと?ぼく、うそ、つかない、ほんと」
「そうなんだねー、でも峰田くんも居ないし。証明する人がねー」
…………もしやこやつ、その為だけに峰田を……。
帰ってこないと思ったら、まさか……。
「……あ!あのパイセン……マイベストフレンド峰田は?いずこ?」
「んー、とね。雄英に体操服忘れちゃった!っと思って探してたら峰田くんが取りに行ってくれるって言ったから任せたの」
「………パイセンさん、あなたのスクールバッグからはみ出てるのはUAクソダサジャージじゃありませんの?」
「……わー!ほんとだー!ここにあったんだねー!探した時はなかったのに!ふっしぎー!」
「……………うせやろ」
なんか今日「うせやろ」率が高いのは気のせいか?
というかこのパイセン、最低過ぎんか?峰田このこと絶対知らないだろ?しかもこの調子なら伝えてない可能性が微レ存……というかその逆というか…。
「はい、これお祝い」
「…べブシ……」
「これ好きだよねー、さっき買ったの準優勝おめでとう」
「…………うす」
「あれーどうしたの剣心くん」
「……いや、なんて言うか。やってよかったなって」
「ふふ、よかったよかった。えらーいえらーい」
頭を撫でてくるので払う。
やめろい、恥ずかしいじゃろ。
「むー…」
むくれてもダメですよ、というかあなた年上でしょ…。
さて、峰田に電話するか。
流石に定期あるっていっても面倒だろ…。
──あーしもしも?みね………ジャック・バウアーか!?お前!ルパンだなーー!!逮捕だ逮捕!!ばっかモーン、そいつがルパンだ!!!
『……ちくしょう、そうだったのかよ……』
なんでこれで分かるのかは知らないけど、多分伝わったからいいだろう。うん、しーらない。
というか、電話中になでなでするのやめて貰えないですかね。
「パイセン…さん?」
「なーに?」
「今日は凄い撫でますけど……どうしたんですか?」
「んーとね、なんとなく!」
「さいで」
「でも、一人じゃないんだよー…って分かってて貰いたかったり」
「………」
「なんてね、どうドキっとした?」
「そりゃもうバックんバッくんですよ」
「ふふっ、じゃあ一緒だね」
「そういうのサラッと言えてるから卑怯ですよ、卑劣様」
「はいはい照れてるんだねー、すぐ茶化さない」
「やめて、なんかすごい恥ずかしい…」
食べかけのアイスを一気に食べて頭がキーンってなった。
おかしい、俺はテンプレに呑まれない男だったはずなのに……。
「そういえばその腕どうしたの?凄くダサいよ、包帯巻く?」
「やめろお前!?分かってて言ってんだろ!?」
家に帰ると、何故か波動家と合同でパーティをすることになった。
弾幕の様な物に『祝優勝』とパイセンのものには書かれており、俺のものには『祝
帰る場所は大事ー……坂東は──………。
ーーーーー
……………なんか、視線が痛い。
周りからの視線が……。
別にそんなに見られても痴漢とかはしないから大丈夫ですよ、とりあえず片手はつり革に、片手はスマホに。
……ホークスが言ってた通り、ステインが大々的に報道されてる。
大量殺人鬼……どの時代でもどの世界でもこういうのはいるんだねー。
「して峰田よ」
「なんだ鞘無」
「痴漢するなら離れてやってくんない、俺も同じ類と思われたくないからさ」
「オイラじゃねぇよ!お前だよ!」
「静かにしたまえ、発情期の玉」
「無表情で何言ってんだこいつ」
「悟りをひらくのじゃ、さすれば女体への関心は………まぁなんとかなるだろ」
「最後までキャラ崩すなよ!」
「静かに……どんとすもーきんぐ」
「それはタバコ、speakingだ!」
「ふむ……」
「それで峰田よ」
「戻んのかよ、何だよ?」
「やばい、むっちゃムラムラする」
「お前ほんとぶっ飛ばすぞ」
こんな男子高校生の訳の分からない日常の一コマを電車でしていたのだが………。なんでこんなに遠目で見られているのだろうか……。
その視線は学校に着くまでずっと付き纏い……。
「ということがあったんだが、どう思う?爆発三太郎?」
「てめぶっ殺したろか!アァ!?」
「爆発三太郎は……ごめん、お前はずっと遠目から見られてるよね、人選ミスった」
「売ってんだよな喧嘩!1度勝ったからって調子乗ってんじゃねぇぞプリン野郎!!」
「え〜、本戦しか入れてないの〜?障害物も、ついでに騎馬戦も俺一位だったのに〜〜、もしかして直接負かしてないとカウントしない系ですか〜〜?」
「ぶっ殺す!!」
「ははは!優勝者が怒った〜ー!!wwwww」
「待てテメ!死ねカスオラァ!!」
ーーーーー
「おはよう………鞘無、お前どうした」
「バクゴーくんに暴力を振るわれました」
顔が腫れてる俺氏、バクゴー早すぎてすぐ掴まってボコられた。
なんだよあの早業、絶対ガキん時に虐めてた類の人間だぞあれ、固定してからのマウントが早すぎる。
「何した」
「いや、あの……視線が〜って話して」
「爆豪」
「……ちっ」
すると相澤はため息をついて出席をとる。
触らぬ〜〜ってやつだろう、俺も今日のバクゴーには絡まんとこ…。
「んな事よりも今日の情報学、ちょっと特殊だぞ」
んな事に片付けられてしまった。
俺の顔の腫れはんな事か?ん?
そりゃ酷いんじゃないですかねぇ!?
「なんだ鞘無?」
「なんでもないです!」
「そうか」
ガン飛ばしたらしれっと流された。
「コードネーム、ヒーロー名の考案だ」
『「胸膨らむやつきたーーー!!!」』
ーーーーー
爆豪3155
鞘無366
轟4251
ーーーーー
「いや、俺だけ桁違くね!?」
シーン。
………あ、ミスった。俺この教室だと友達ほとんど居ないわ。
というか「何をお前、当たり前だろ」みたいな目で見られてるのが辛いんだけど。
「勝ったぁ!!ざまぁみろプリン野郎」
まじかよ爆豪、このシーンとした雰囲気で俺に話しかけてくるとか。
煽ってるのか良い奴なのかハッキリしてくれよ、いやもう俺の脳内では良い奴にすることにした。
故の菩薩スマイル。
「……(ニコォ」
「ちっ!」
煽り耐性があるのか…とか思われてると思うけど……。違うぜ!爆豪!お前の心意気に感謝をしているんだぜ!
「まぁ頑張ろうぜ、轟に負けたもの同士」
「うっせ一緒にすんなカス!」
「……あれぇ、爆豪君は1位なのにぃ〜?」
「テメぶっ殺すぞマジで」
「せんせー!爆豪が便秘だそうでーす」
「やったらボケカスjebdisj#j!!!」
………尚、この最中教室は笑い声が響く訳ではなく。と言っても全く声が聞こえないというわけでもなく。
切島、上鳴、耳郎、瀬呂等の陽キャ集団は笑いを堪えていた。
寧ろ反応しなかったのは緑谷と飯田と轟と青山等の真面目なメンツ。
こういうのは飯田が直ぐに止めに来ると思ったんだけど……そのせいで爆豪に腫れてない方の頬を殴られて両方とも腫れた。
許さんぞ委員長、君が止めるまで計算してやったのに……。
「──爆殺王」
「んー、10点!面白いからOK!」
「ダメよ鞘無くん、センスの欠けらも無いわ考え直しなさい」
爆豪が同士を見つけたような顔をするが、ごめんだけど俺は厨二病はもう終わったんだ。ごめんね……。
爆豪のをボロカスに笑ったから周りの「お前はどんなんだよ」って視線が痛いな。
大丈夫、俺だって温めてきたんだ。
ここ数日だけど。
「俺のヒーロー名は」
「──【スカー】です」
「あと爆豪のヒーロー名は【爆発三太郎】です」
「んだとぶっ殺すぞ!」
「爆殺王よりは……爆豪くんさえ良ければそれでいいわよ」
「いい訳ねぇだろババアぶっ殺すぞ!!」
「誰がババアだクソガキ!!」
修羅場と化した……。というか原因は………うん、爆豪だろ。
………ていうか、オレってこんなキャラで合ってたッケ??
思春期男子ってね、チョロいの。
美人幼馴染に頭撫でてもらえるだけで元気100倍なの……
でもね……──