個性『ローション』を活かし、それにあった職場で働く男。
これは彼がヒーローになった一夜のお話。
R-17.9です。
あまりあれな表現はありませんが、良い子は見ちゃだめだヨ!!
何がとは言いませんが。
「君、せっかく酒を飲んでいるんだから、何か話したまえ。」
赤ら顔の女が私にもたれかかりながら絡んできて鬱陶しい。
その酒臭さを遠ざけながら、私は迷いながら答えた。
「そうですねぇ~。それでは、一つ昔話でも・・・。」
それはある
「んん・・・。ん~~~~~~~~!!!」
「ぐへへ!!あんたの体は、俺の
女の体を激しく揉みしだく男は手のひらから淫靡な液体を溢れさせながらも、その手を止めやしない。
その押し殺された声は、いつのまにか大きな悲鳴交じりの艶声に変わっていった。
ひときわ大きな声を上げると、体を二、三度跳ねさせ声は聞こえなくなった。
「・・・・はい!!カーット!!!」
かんかんと黄色いあれが叩かれ、一気にその場内が騒がしくなる。
その部屋の清掃を始めるもの。
さっきとは一転、きりっとした表情の女にジュースを渡すもの。
そして私の方に手を叩きながら近づいてくる監督などだ。
「いやー!!やっぱりいいねえ。君の
そう言いながら私に肩を回してくる。
そう、今までのは演技でお芝居であったわけだ。
私は男優をしているのである。まああまり大きい声では言えないほうの男優ではあるが。
手から
肩の手からさりげなく逃れながら、私は答える。
「・・・ありがとうございます!監督も僕のような若輩者を起用していただき、感謝します。」
僕は現在高校を卒業したばかりの18歳である。法律的にはセーフでも、ぎりぎりの部分があるため
敬遠されがちな年齢だ。
しかし、監督はニコニコしながら言葉を返す。
「いやいや!若いころから自分でお金を稼ぐなど関心なことじゃないか!私が応援しない理由はないよ。」
監督は、演技もうまいしね。と付け足した。
「・・・ありがとうございます!」
私はそれだけしか言えなかった。
ロッカールームに足を向けると、監督が後ろから、今日は飲みに行かないかい?、と誘ってきた。
私は、未成年なので、とだけ答えるとさっさと帰ってしまった。
帰り道。代り映えのない都会の秋の道を行きながら考える。自分の将来についてだ。
私は実は好き好んでこの仕事をしているのではない。
皆が就職しバリバリ働いているころ、こうした半ばフリーの仕事をしているのには理由がある。
私にはどうしてもかなえたい、いやどうしても捨てきれなかった夢があるのだ。
恥ずかしくて、誰にも言ったことがない夢だけれど。
私は、ヒーローになりたかったのである。
そのためのお金を貯めている真っ最中なのだ。
有名どころは雄英高校などの高校だが、社会人向けのヒーロー養成施設もあることにはある。
何年かかってもヒーローになってやるのだ!
私はその決意を胸に日々頑張っていた。
しかし、今日は腹がすいてしまった。
コンビニにでも寄って何か買っていこう。
きっとそれくらい神様は許してくれるはずだ。
私はそんな、甘々な神様を妄想し近場のコンビニに入っていった。
しかし、そんな時私をピンチが襲った。
(・・・・・!?腹が痛い!!)
おでんを喰おうかとか考えていた私は、そんなことも忘れてトイレに駆け込んだ。
ジャーーーー。ガチャン。キィィ。
いやー。間に合った。
私は少し気恥しそうに、静かに扉を閉めた。
別に悪いことをしているわけではないのだが、なんかこうしてしまう気持ち、誰かわかってくれないだろうか?
今度監督との話のネタにしてみよう。
私はそんなとりとめのないことを考えながら、出てきてしまった。
今日が私の運命を変える日になるとも知らずに。
「手を上げろ。」
冷静で低い声と同時に聞こえたのは、バチバチという何かがはじけるような音であった。
私がその時冷静に判断できたのは多分刑事ドラマが好きだったからだろう。
私がとっさに商品棚に身を隠しながら覗き込むと、レジ前に黒いコートを着た男が銃を持っていた。
黒コートは銃で女店員を脅しながら、もう片手に青白い電気を纏わせている。
すると、男はこっちを見もしないで私の頭上の監視カメラを電撃で破壊した。
(うわっ!!!)
私は思わず声をあげかけたが、手からローションを噴出させて口に押さえつけて、必死に押し殺した。
・・・それはまさしくヴィランであった。
(は、犯罪現場に初めて居合わせた!!)
男は私のそんな内心は無視して、銃で入り口を指して話し出した。
「ヒーロー、メタルクワガタの妹だな。命が惜しければ私とともに来るがいい。」
乱暴はしないと誓う、銃を元通りに照準を定めながら付け加えた。
私もそんな光景を黙ってみていたわけではなかった。
(け、警察だ!!)
私は隠れたまま、慌てて警察に電話をかけ始めた。
そうしている間にも、女店員は言われるがまま歩き始めてしまった。
急がなければ!!私の番号を打ち込む腕も震えながらではあるが可能な限り早く打ち込んだ。
女が入り口に差し掛かった時、事態は動いた。
ビィーーーーーーーーーーー!!!
私の携帯から甲高い不協和音が鳴り響いた。
驚いて画面を見ると、警察でもなんでもなく文字化けした番号が映る。
私は内心で舌打ちをした。
深夜とはいえ、あんなに堂々としたヴィランだ!
対策をとっているのは当たり前のことであった。
男は素早く銃口を女店員から、私に向けた。
それと同時に私と黒コートの目が合う!!
それはテレビアニメのように真っ黒な穴ではなく、だからこそ邪悪さを感じさせる人間の目であった。
プシュッ!!プシュッ!!プシュッ!!
黒コートは警告もなしにいきなり発砲してきた。
サプレッサーで押し殺された特徴的な音である。
私はとっさに商品棚の奥に、個性を使いながら文字通り滑り込んだ。
屈んでできるかぎり被弾面積を少なくする体制(土下座)に情けない声のおまけつきだ。
テラテラに光った床は、摩擦をきわめてへらし私の体を結構奥に運んだ。
発砲された弾丸は、私の滑った後の棚を余裕で貫通して、小さいが当たれば人体には致命的な穴をあけていっていた。
(個性を使わなければ、殺られていた・・・・!!)
私はその事実に視界がぐらりと揺れ、胃酸がこみあげてくるが、何とか踏みとどまった。
カチャリと何かが落ちる音が響く。
続けてガチャガチャと機械的な音が鳴った。
私は遅れてリロードしているのだと、気づいた。
そして降りかかるようにに声が響いた。
「すまなかった。少々驚いてしまったんだ。傷つけるつもりはない。」
低くはあるが、さっきの行動とは真逆の優しい声音だった。
しかし、逆に私の心はざわついた。
(・・・・ありえない!!)
ため息が聞こえたかと思うと、またあの発砲音が聞こえた。
私はあわてて身をかがめるが、今度は広範囲に等間隔で撃ってきた!
そのうちの一発が肩にあたり、私は今まで感じたことのない痛みに襲われた。
「い、っ!!!」
声は押し殺したが、肩が尋常ではなく熱くなる。
目元が熱くなり、体のコントロールを失う。
私は情けなく前に倒れこんだ。
奥に滑り込んだのが祟ったか、そこは商品棚から外れていた。
・・・つまり、勝ち誇った犯人の顔面が見えるというわけだ。
男は、目元だけで笑いながら狙いを私の頭に定める。
吸い込まれそうな黒点が私の方をまっすぐ見ていた。
しかし、私はぼんやりした意識で、別のものも見た。
あれは・・・女店員だ。たしかメタルクワガタの妹と言っていた。
勝ち誇った男の背後で、女は静かに鋼鉄化させた腕を振り上げていた。
ガヅン、と鈍い音が響いた。
もしここがアニメの世界であれば、星でも見えたのではないだろうか?
しかし、これはまぎれもない現実だった。
頭を殴られた男は一瞬よろめき、銃を取り落としたもののまだピンピンしていた。
「・・・死ね!!」
男は右腕から激しく電気をスパークさせて、女店員にたたきつけようとする。
女の口から大きな悲鳴が漏れる。
その瞬間、私の鼓動が早くなる。
ここだ。ヴィランの気がそれた今しかない!
「うおおおおおおああああああああ!!!!!」
私は悲鳴とも掛け声ともいえない奇声を発しながら、男に向かって全力で走った。
アドレナリンが異常分泌されていることを自覚する。
男が振り向き、電撃を私に向けるのもスローモーションに見える。
・・・大丈夫。多分!きっと!
あいつは必殺技みたいにずっと電撃を貯めていたが、銃なんて使ってるのがいい証拠だ!!
黒コートが電撃を発射する瞬間、私は跳躍し勢いそのままにタックルをした。
・・・全身から
バチバチバチバアアアアアアアア!!!!!!
激しい放電音があたりに響いた。
「カ、カハ・・・。」
その声は、私とヴィランの両方の口から漏れた。
私は心の中でほくそ笑んだ。
(・・・へへへ。思ったより、威力は・・・強かったが・・・死ぬほどじゃなかった。やっぱりメインは・・・電波のかく乱か。)
ヌルヌルを伝って、自身の電撃を私とともに浴びたヴィランは、私と同じく地面に倒れ伏していた。
しかし、自身の能力だけあって、多少耐性があるのか、苦しそうにではあるが起き上がった。
キョロキョロと自身の銃を探しているようである。
しかし、その銃がローションの海で溺れているのを見ると、舌打ちをして逃げ去った。
そんな姿を情けない恰好のまま、私は見送るしかなかった。
しかし、独特の臭気が漂う液体まみれなのだ。
到底、逃げ切れるとは思えない。
「おーーーーーーい!!あんたら!!大丈夫かい!?」
遠くから、ぞろぞろとヒーローと野次馬が現れる。
ああ、そうか。黒コートが逃げたのは、彼らが来たからか。
私はそう考えると、何か緊張の糸が切れたようにぐったりした。
終わったのだ。
安心すると、私は酷く眠くなってきてしまった。
女店員が、ヒーローにヴィランの特徴を伝えているのを見ながら、意識は闇へと沈んでいった。
「へーーーーー!!それからどうなったの!?」
赤ら顔の女はバシバシと私の背中を叩きながら言う。
うるせえ。揺らすな。
酒の入った頭には、少々きつい諸行だ。
「・・・・それから、そのヴィランはメタルクワガタに捕まったって聞きましたよ。そんで何の罪もない僕は一週間入院する羽目になりましたよ。」
警察からは個性の無断使用で怒られるし、散々です。と続けた。
しかし、女は納得ができないようで、指をくるくる回しながら口を開く。
「違う違う!君のことだよ!!そんなヒーローらしいことして、ヒーローにならないのかい?」
「・・・ああ。そのことですか。」
ま、それは尤もな疑問だろう。でもその日運命は変わったのだ。
「ヒーローにはならないんじゃなく、なれません。僕はあの一件で、もうヴィランと戦うのはこりごりだと悟ってしまったんです。」
「ふ~~~~ん。」
女は行儀悪くコップを噛みながらつまらなそうに言う。
私はその姿を見て自嘲気味に、笑った。
「ま、もとからヒーローの器じゃなかったてことですね。この話はこれでおしまいです。」
私はすっかり温くなった酒を飲みほした。
当時は一大決心であったが、今となってはいい話のネタだ。
遅かれ早かれそうなっていたと思うし、後悔はない。
しかし、女はそんな私をじっと覗き込んできた。
「そうかなあ。私は君の行動、結構かっこいいと思うけどね。」
「・・・・!!」
そういう女の顔は、花が咲いたように綻んでいた。
ああ、あの行動で何ができたとは思わないけど・・・。
この顔が見れたなら、まあ良しとするか。
僕は照れるのを隠すようにそっぽを向きながら、話を変えることにした。
「・・・この後、ホテルでも行きますか?
「私と君は
バシバシと私の背中が叩かれる。
・・・まだ、か。
私の顔が自然に綻ぶ。
その部分をつつくのはやめておこう。
ああ、でも。
私は彼女の可愛らしい顔を見る。
・・・この仕事も悪くないな。
私は心の底からそう思うのであった。
ローションって電流流れるのか・・・?
まあ、この世界では流れるってことで。(適当)