文章がライブ感で出来ている。
3月15日。B・Dクラスのそれぞれの選んだ種目が発表された。
予想通りっちゃ予想通りなわけだが、Dクラスの内容は勝ち抜け戦の体力勝負。おそらく喧嘩紛いの事を仕掛けて来るのだろう、と勝手に推測していたりする。対してBクラスはもちのロン学力勝負系の種目ばかりである。当日は選ばれた種目の比率で勝敗は決まってしまいそうだ。順当にBクラスの種目が3つ以上なら、Dクラスの荒事は俺が出て4勝3敗以上には出来そう。しかし仮に2つ以下だったり、Bクラスの種目で1つでも負けると敗色濃厚そうである。
先週は勉強付けの日々だったが、今週からはDクラスの種目の対策として俺が指導出来る種目のサポートに入る事になった。指導出来るのはわずか数日。運動はそこそこ出来る未経験者ばかりの現状。初心者に毛が生えた程度で本番を迎えることになりそう。あまりにも時間が足りなすぎる。勝負が準備で9割決まるとは誰の言葉だったか。厳しい試験になりそうなのは想像に難くない。
「どう?調子の方は?」
あーでもないこーでもないと超感覚派の為、指導に難儀しつつの放課後。
超監督、ハイパーバイザーの一之瀬さんのご登場である。お疲れ様です。
「あ~どう言ったらいいですかね。辛口が良い?甘口が良い?」
「……辛口で。」
一之瀬さんはアサヒィスゥパァドゥルァァァァイ!のご所望ですか。自分に厳しいことで。お酒は二十歳になってから。
「無理。プロ野球選手に中学生集めて勝つ位無理。野村監督でも再生工場は出来ないですよこれは。そもそもそもも圧倒的に時間が足りないですぜ。俺がDクラスの選んだ全種目出た方がよっぽど勝率上がりますよこれは。」
「ハハハ……手厳しい評価だね……。そういえばさ、柔道は巧君に任せちゃって大丈夫なの?」
柔道。Bクラスにとって一番の鬼門種目。Dクラスのそこそこの奴が出てきても、俺以外はBクラスで勝てないのか確実なので、選ばれた場合は俺が引き受けさせてもらった。指導する手間も省けるしおすし。
結果論だが先週俺が勉強させられた意味を一之瀬さんには強く問いただしたい所ではある。
「大丈夫だ、問題ない。掴んで掴まれてこう…ちょちょいのちょいですよ。」
「うわぁ……説明が抽象的過ぎて逆に心配なんだけど……」
掴んで軽く脚払いする動作を見せるが何故か信頼されていないご様子。ルシフェルさん、俺どうしたら良い?一番良い回答を頼む。
「まぁ良いじゃないですか。提示されたルールで勝負するなら如何様にもしてみせますよお嬢様。」
「んじゃ、そこはお任せしちゃおうかな。絶対勝ってよね!」
「もちのロンさ。で、結局さぁ、先週の俺がさせられた勉強意味なくない?私は抗議します。不満タラタラです。」
「学生の本分は勉強だからね!今後の試験で良い点を取れた方がいいでしょ?」
「あ~心がイタイタイタイタイ。正論で殴らないで、僕のライフはもうゼロですよ。」
心臓を抑えながら一之瀬の正論パンチ精神攻撃を耐える。……いや、LPゼロはもう耐えられてねぇな。精神が燃え尽きちゃいましたよ。イワーク!
「二人結構仲がいいよね。何ていうか……夫婦漫才って感じ。」
『わかるー。』
クラスメイト達から茶々が飛ぶ。
お? これは戦争ですか? 安い挑発でも俺は買いますし、“男女平等パンチ”の覚悟も辞さない所存でございますよ、検討に検討を重ねて検討します。
わー、とやる気なく拳を振り上げるとキャーと女子たちは逃げていく。それに釣られて男子たちもとろとろと逃げていく。何かムカつきますねこれは。これがからかわれている。というやつなのせうか?
「あうち。」
すかさず間に入った一之瀬さん、俺にチョップをかましてくる。
「巧君。冗談でも暴力だ駄目だからね。」
盛大なアイスラッガーだぞと返してやりたい所だけれども、こういう事するから弄られるんとちゃいますの一之瀬さんよ?
ーーーーーー
さて、時は過ぎ去りまして――。
準備はしたが万端で不安要素抱えまくりの選抜種目試験の真っ只中である。
で、現在の勝敗は二勝二敗。
Bクラスには謎の体調不良者が続出し、Bクラスの選択科目を一つ落とした苦しい展開。ここでリード取れないと苦しい展開ですねぇ。
第5戦目に選ばれた種目は『空手』。必要人数3人の勝ち抜け戦だ。司令塔は任意の対戦を一度だけやり直す事が出来る。、次がBクラスの選択種目の可能性もあるし、流石に一之瀬は俺を投入するだろう。
しかし、一之瀬が選択した名前の中に俺の名前は無かった。
「……ガチィ?」
心の準備をしていたのに肩透かしを食らってしまった。流石に何か戦略があるやつです?
結果は呆気ないほどに簡単敗北。司令塔の関与を行ったものの結果は変わらず。第5戦は短時間で終わってしまい。Bクラスは後が無くなってしまった。次に負ければ敗北が確定する。これはまずいですよ!
そして、勝敗を決めてしまうかもしれない第6戦。選ばれたのは……『柔道』だった。必要人数は1人。試合時間は4分。ルールは試合結果を無効とし、対戦を一度だけやり直すことが出来る。Bクラスにとって最大の鬼門種目が選ばれる。しかし、それは俺が居ない場合の話。一之瀬さん、流石にここで出してくれますよねぇ?
龍園率いるDクラスからは『山田アルベルト』が選ばれる。生徒を選択する時間は30秒。ギリギリまで待って一之瀬が選んだのは……『赤羽巧』。俺ですね。出番です。勝つとかっけぇ所で選んでくれるとは彼女中々の勝負師ですね。
『お願い。勝って。』
機会音声で一之瀬から伝えられたのはたった一言。試合中は確かに口のはさむ余地はないだろう。分かりましたよおかのした。期待に応えて進ぜよう。
胴着に着替えて対戦場へ向かう。そこには既にアルベルトがいた。準備万端気合十分といった所である。
俺も対戦相手の前に立つ。
本気の喧嘩では無いけれど、ピリリとした真剣勝負の緊張感は何度味わっても飽きませんな。
『試合開始!』
合図と共にお互いに両手を前に出し構えを取る。だが、お互いに動きはなく様子見である。
俺は取りあえず挑発しておく。
「攻めなきゃ俺からブラックベルトは取れないぜ。おデブチャン。」
アルベルトは俺の挑発は意に介せず、自分の有利な間合いを探す。冷静でございますね。
すり足で間合いは縮み、互いの襟袖を掴み合う。さて、どう仕掛けてくるかーー
アルベルトの選択は力任せの背負い投げ。有利な体格差使った悪くない判断。
その力に引っ張られ、俺は宙を舞ったーー
ーーー 一之瀬視点
今回の特別試験は翻弄されっぱなしだった。まずはDクラスからあったのは、暴力紛いの圧力。私は冷静に対応するように求めたけれども、クラス内からは対抗しようとの声も多くて結局クラス内に不平を溜め込んで当日を迎えてしまった。
そして私のクラスの何人かが訴えている体調不良。ベストなコンディションでない状況。
最後に極めつけはDクラス代表として現れたのは金田君では無く龍園君だった。つまり、今回の種目を選んだのは金田君主導ではなく、龍園君だったということ。不意を突かれたのが今まで私の判断を鈍らせられてしまっていたのかもしれない。
そして今は2勝2敗で迎えた、第5種目。
選ばれた種目はDクラスの種目の『空手』だった。
通常の采配なら巧君を出せば勝てる可能性が高い。
しかも数少ない相手の種目での勝利を得られるチャンスではある。ここで勝つことが出来れば、リードが出来て、少し精神的には余裕が出るかもしれない。ただし、使えるのは人数的にも40人全員出場する事は無いので一度切りだ。
3人目に巧君を選ぼうとしていた時、脳裏に以前彼の言っていた言葉が過ぎる。
普段、特別試験に口を挟まなかった巧君が言っていた事。『本当の本当に困った時に俺に任せて欲しい』と。
彼の意思を汲み取るなら今では無いのかもしれない。でも、これは特別試験だ。クラスの代表としては、拾えるかもしれない勝ちをみすみす見逃すことは出来ない。次の種目が私たちのクラスのものとは限らないのだ。
……私は、彼以外の三人を選択した。
この試験で負けてしまったら、クラスの皆はこの采配をどう思うのだろうか?私以外にプロテクトポイントを持っている生徒は居なかったのだからしょうがないと励ましてくれるのだろう。
巧君はこの私の采配をどう思うのだろうか?彼はあまり試験に関与出来る所はしてくれるが勝利にはこだわっていないように感じる。それとも私の不甲斐なさに呆れてしまっているのだろうか。
空手は関与虚しくBクラスの敗北で終わってしまう。2勝3敗。もう後が無くなってしまった。
そして勝負が決してしまうかもしれない第6戦、選ばれたのは『柔道』。
龍園君は迷わず『山田アルベルト』を選択した。
ここだーーという直感と、脳裏によぎる第5種の人選は失敗だったのか?そもそも巧君のコンディションは万全なのか?彼の言葉を尊重してしまった私のミスだったのか?と言う疑念が交差する。龍園君が今回の種目を選択しているなら。勝率を上げるために巧君はターゲットになっているはずだ。もっと早く気付いていればと思ってしまったが、時間は戻らない。もう彼に頼るしかなかった。
私は……『赤羽巧』を選択した。
私は短いメッセージを送る。その言葉を聞いた彼は『任されました。』と画面の中で言っている様に見えた。彼の唇の動きはおそらくそんな感じだったと思う。
戦略は無い。負ければ終わり。勝てば首の皮が一枚繋がるだけの一戦。でも彼が居なければその首の皮すらも繋がらずにリタイアを選択していただろう。
少しの準備の後、試合が始まった。
体格差は歴然。しかも相手の選択種目でのハンデの有る状況。
お互い間合いを取りながら、隙を伺い合う。
途中巧君が喋っていたが、何を言ったかは分からなかった。
先に間合いを詰めたアルベルト君が巧君を掴む。
そして力任せに背負い投げの動作を取り、巧君が宙を舞う。
ーーー負けた。
私は目を瞑り、画面から目を逸らした。
やはり無理だったのだ。日本人離れした体格差の相手に勝てる訳が無かったのだ、もしかしたら怪我をしてしまっているかもしれない。無理を押し付けてしまったという後悔が私の胸を苛んだ。
……画面に目を戻すと、試合開始時と全く同じ光景が画面に映っていた。
「真嶋先生、今何が起こってましたか?アルベルト君が投げた後、画面を見ていなくて…」
「山田が赤羽を投げた後か?俺も信じがたいんだが、赤羽は背負い投げをされたが、足から着地してお互いにまた間合いを取り直している様に見えた。赤羽の背中が付いていないから、一本にはならない。試合続行だな。」
「そうですか……」
真嶋先生は私にそう返す。信じがたいが、先生がここで嘘を言っているとは思えない。
また、睨み合いが始まるのかと思いきや。アルベルト君は審判の方を向き、何か話し始めた。
「……?」
「……そうか……。山田アルベルトはリタイアを宣言したようだ。龍園、試合を無効にするか?」
真嶋先生が龍園君に問いかける。
画面から分かるのはアルベルト君は手首を抑え、自分の口からリタイアを宣言した様だった。投げる際に怪我をしたのだろうか?その様子に龍園からは舌打ちが聞こえたが、結局無効の介入は無かった。怪我をしていたとしたら、これ以上勝負は出来ずリタイアとなるのは理に適っているのだろうが、にわかには信じられなかった。彼はどんな魔術を使ったのだろう?
「奴が出てきた試合は捨てていたが、アルベルトがこうもあっさりとはな。良い駒を持ったな一之瀬。ま、気を取り直して次に行こうじゃねぇか。ーーーーーー」
「……お願いします。」
納得は出来ていないが勝ちは勝ちだ。首の皮が一枚つながった一勝。
私は気を引き締め直すために、掌を強く握りしめた。
久々に更新したのに意外と見てくれる人がいて、ありがてぇ…という気持ちと同時にヤッベ…という更新頻度の少ない申し訳なさを感じている。感じても早くならないのが更新、後ろ倒しにならないのが仕事の締め切り。