気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。   作:葵 悠静

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100話到達記念ss ※この話は本編とは一切関係ありません。

「先輩、もしも私たちの会話が不特定多数の全世界の誰かに見られていたとしたらどうします?」

 

 いつもの昼食、いつもの食堂、いたって真面目な顔で後輩が語りかけてくる。

 口からはっぱを垂らしながら。

 

「それうまいの?」

 

 見た目的に完全に野原なんだけど。

 皿の上に壮大な草原が広がっているようにしか見えないんだけど、本当にそれおいしい?

 葉っぱという名の自然の味しかしないんじゃないかな。

 

「先輩、もしもですよ。もしも私たちの会話だけじゃなくて、先輩が考えていることまで余すことなく不特定多数の誰かに見られていたら。どうします」

 

 口元の葉っぱにばっかり気が取られていたが、いったいこいつは何を言ってるんだろう。

 

 やけに真剣な顔して話してるけど、内容は全く現実味のないものだし何より口元に増えていく葉っぱがシリアスムードを台無しにしている。

 

 なに? 口の中で高速増殖でもしてるの? 自らの身体の栄養分を栄養に育ってるの?

 もうそれはただの葉っぱじゃなくて寄生葉とかそんな感じなのよ。

 いったいこの食堂は何を目指してるの。

 

 まあ後輩の話をいくら真面目に聞こうとも、俺の思考が誰かに見られているなんて考えたこともないし、普通考えない。

 

 それに俺とレイの会話ならまだしも、俺と後輩の会話なんて食堂にいるときや会社にいるときは常に周りの不特定多数の人間に聞かれている。

 

 だから何を当たり前のことを言ってるんだって感じだ。

 そもそもこいつはなんで突然そんなことを話し始めたんだ?

 

「私ですね、結構寝る前とかにネット小説を読んだりするんですよ。それで最近読んだ小説に先輩の思考に似通った主人公が、私のしゃべり方とか考え方によく似た後輩キャラと話している描写があってですね……」

 

 葉っぱを貪りつつも首をかしげる後輩。

 別に俺の考えていることなんてほかの普通の人と変わらないんだから、キャラが被ることくらいあるでしょ。

 むしろ共感性を得るためにあえてそういう普通の主人公にしているのかもしれない。

 

 それに俺と後輩がしゃべってる内容だって、別に何も特別なことを話しているわけではない。

 似たような会話が出てくることくらいあるんじゃなかろうか。どうなんでしょうか。

 

「先輩のキャラを主人公なんて、一般受けを狙ってやることじゃないと思うんですよね~。結構特殊な人なんだから」

 

 おい、どういう意味だおい。

 シリアス風に言ってるけど、それただの悪口だからね?

 

 俺は周りの人と溶け込むように普通の一般人として生活しているんだから、モブを主人公にするなんて理解できないならまだわかるが、特殊なのに主人公にするなんてありえないはただの悪口だからね。

 

「まあでも小説としては寝る前に読むものとしては、ちょうどいいものでしたよ。先輩みたいな主人公が可愛い女の子の幽霊と一緒に暮らしてるっていう話で、なんかほのぼのしてましたし」

 

「は?」

 

 後輩の一言により一瞬で背中が伸びる。

 こいつ、今なんて言った?

 

 俺と後輩の会話が小説の一部分と似通っている、まあそれはまだわかる。

 俺の性格が主人公と似通っている、それもわかる。

 俺みたいな性格の主人公が女の子の幽霊と一緒に暮らしている?

 

 ……そんなピンポイントなこと、後輩が言えるわけがない。

 いや、まさか……たまたまでしょ。

 

「先輩どうしたんですか? 口から葉っぱなんか垂らして。これ、そんなにおいしくないですよね」

 

 うん、まあこの葉っぱはおいしくないんだけど。

 そんなことより話の腰を折らないでほしいんだけど。

 

「ところで先輩、話は変わるんですけど」

 

 いやだから話を変えるなって。その小説のタイトルを教えなさいよ。

 俺がこの目で見てしっかりと確かめるから。

 

「今日は何の日でしょう」

 

 今日? 今日は四月一日だろ?

 ……あ、そうか。四月一日か。

 

「全部嘘ってことか」

 

「さあ? どうでしょう?」

 

 後輩は意味深でやけに妖艶な笑みを浮かべると、席を立ってその場から立ち去っていく。

 

 なんだ、エイプリルフールの嘘ってことか。

 

 そうだよな。俺によく似た主人公で、俺と似通った境遇の話があるなんて偶然そうそうあるはずがない。

 ほっとした瞬間に全身の力が抜ける。

 おもむろにポケットからスマホを取り出し画面をつけると、ふと時刻が目に入る。

 

「ん? 12時25分……?」

 

 あれ、確かエイプリルフールで嘘をついていいのって、午前中だけだったような……。

 

 それによくよく考えればたとえ嘘だとしても後輩が俺の状況をピンポイントで詳しく知っているのはおかしいし、俺の考えてることなんて後輩に話したことはないし、それをあたかも知っているかのように話しているのはおかしいような……。

 

 ……いやいや、まさか、ね。

 

 

 

 結局午後の仕事は後輩のことが気になって、全く身が入らなかった。

 いや別に後輩のことが気になってってそういう意味じゃなくて、単純に食堂の話を聞こうとしたんだけど、何回聞いてもはぐらされるというか、そもそもそんな話などしていないかのようにふるまってくる。

 

 しまいに腹が立って壁ドンとか顎クイとかしてた気がするけど、それでも後輩は真相は話そうとしなかった。

 

 今考えれば後輩相手にずいぶんととち狂ったことをしてしまった。

 そんなことするからろくに仕事もしてないのに、疲れちゃうんだよなあ。

 

「ただいまー……」

 

「さとるー!!」

「ドュベ!!」

 

 家に入るなり、レイが懐へと全力でダイブしてくる。

 普通に考えれば俺の腹を貫通して扉に頭をぶつけそうなのに、こういう時だけ都合がいいのがレイだ。

 

 見事にレイの頭は俺の腹にクリーンヒットし、しかも謎の重量感に襲われる。

 いったい何事?

 

「だれかにみられてる……きがする」

 

 上目遣いをされながら放たれた一言は、今の俺にとって十分な破壊力を持っていた。

 

 なんでよりによって今日そんなこと言うの?

 ねえ、どうしてレイまでそんなこと言うの?

 

 それにそのセリフは本来幽霊に抱きつかれている俺が言うべきセリフであって、幽霊がそんなことを言うのはなんか違うんじゃないかなあ?

 

 

 嘘かほんとかはわからないが、後輩が見たというネット小説。

 そして今のレイの言葉。

 

 偶然にしてはあまりにもできすぎているような気もする。

 でも、まさかそんなことが、あるわけがない。

 

 き、きっと後輩の話を深読みしている俺の考えすぎで、レイが感じているそれも一人の時に感じる勘違いに決まってる。

 

 今のこの思考だって俺だけが知りえるもので、ほかの俺のことを知らない誰かが俺の考えてることが見えてるなんてことがあるはずがない。 

 

 そうだよね? 誰にも見られてない……よね?

 

「勘弁してくれ」

 

 もし誰か見てるなら、俺にくっついて離れようとしない冷気ましましの幽霊を引きはがす方法を教えてほしい。

 




……ということで、本作がついに100話到達いたしました!
記念の短編がこんなホラーチックなメタメタな感じでいいのか?
まあこの作品だし、いいでしょ! という感覚で書き上げましたw

深夜テンションのノリと勢いではじめた作品でまさかこんなに長く書き続けるとは思っておりませんでしたが、主人公とレイ、後輩の絡みを書いていると面白く、気づけば100話になっていました。

もちろんここまで続けられたのも読んでくださる方がいらっしゃったからです。
誰にも読まれなければここまでは続いていませんでした。

いつも楽しんでいただきありがとうございます。
これからものんびりと書いていけたらと思いますので、飽きるまでお付き合いただけると幸いです!!
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