気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。   作:葵 悠静

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126話 相談する相手はきちんと選びましょう。

「何か俺に言いたいことはないですか」

 

「ご武運を」

 

「…………」

 

「すいません。出来心だったんです。だが後悔はしていない!」

 

 別にお前はあの旅館に行かなくていいって思ってるんだもんな! 

 レイがメイドをやっていた翌日、俺は昼休みで堂々と昼飯を食っている後輩の首根っこをつかんでいた。

 

 一日経ったら俺が追いかけないとでも思っていたのだろうか。

 まあそう思わせるように今日は朝から何もしかけていなかったら、油断させておいた俺の作戦勝ちといえば聞こえはいいな。

 

 そういうことにしておこう。

 多分単純にこいつがバカなだけだと思うけど。

 

「そんなに怒らなくていいじゃないですかぁ。先輩の勇気が出なかった部分を私が代わりにプッシュしてあげただけじゃないですかぁ~」

 

 似合わないぶりっ子のような猫なで声を出しながら必死の抗議をする後輩。

 首根っこをつかまれながらも飯は食ってるんだから、絶対こいつ反省もしてないしこの声も俺が気持ち悪さで手を離すと思っての作戦だろう。

 

 だが甘い! これくらいの気持ち悪さでは俺はお前を逃がすわけがない!

 なぜなら建造物の写真を眺めて、挙句の果てに画面にキスまでし始める後輩の姿の方が、今の何倍も気持ち悪いからこれくらいは全然許容範囲だ!

 

 後輩はしばらくにゃーんとかごろーんとか訳の分からない単語をつぶやいていたが、俺が動じないと気づいたのか途端に真顔で俺の方へと顔を向けてきた。

 

「そんなに私の首が好きですか。セクハラで訴えますよ。先輩と後輩の関係なのでパワハラでもいいですね。どっちがお好みですか?」

 

 ……ぐっ。

 思わず彼女の首から手を離してしまう。

 

 今のご時世ハラスメントで訴えかけられたら俺の方は何もすることができない。

 こいつの場合思ってもないのに平然と口に出すから余計にたちが悪い。

 

 こんなのハラスメントハラスメント、略してハラハラじゃないか!

 俺が一体何をしたっていうんだ。俺は無実だ!

 

「突っ立ってないで、座ったらどうです?」

 

 後輩よ。君はたまに無言で至極正論を投げてくるよね。

 その茶番に付き合ってあげてるんですよ~。みたいな雰囲気を唐突に出すのやめてくれない?

 

 俺がかまってほしい人みたいじゃん。というか基本的に暴走してるのは君の方だからね?

 

 まあ拒否する理由もないため、後輩の前の席へと腰掛ける。

 ちなみに俺はもうご飯を食べた後だ。

 

 今日の謎メニュー、豆腐の上に納豆が乗っただけのおかず、大変おいしゅうございました。

 

 もうなんというか謎とかじゃなくてただの手抜きメニューだよね。

 まあ食堂のいつもの謎センスは今はどうでもいいとしてこいつに聞かないといけないことがある。

 

 後輩の建造物に対する情熱と愛情は本物だ。格段に俺よりも知っている。

 誠に不本意ではあるが有意義な旅行にするにはこいつに頼るしかないのだろう。

 

「一つ聞きたいことがある」

 

「なんで質問する立場の人間がそんな歯を食いしばって悔しそうな顔してるんですか。私まだ何も言ってないですよ。まあ何か聞くつもりなら? それなりの対価は用意してくださいね」

 

 よしこいつはもうだめだ。海に捨ててこよう。

 再度手をつかんで引っ張りそのまま首根っこをつかんでやろうとしたが、ぼそっとつぶやかれた「セクハラ」という言葉に俺はあえなく敗れ、おとなしく席に戻った。

 

「で、なんですか?」

 

 どうして俺はまだ何も言ってないのに、目の前に座るこいつは偉そうに腕を組んでるんだろうか。

 心なしか見下されているような気もする。

 

 もしかしてここぞとばかりに普段の恨みを発散してるのか?

 俺普段そんなひどいことしてるっけ? 会社では頼りがいのある先輩で通ってると思うんだけど。被害妄想はよくないよ?

 

 この後どうなってしまうのか。俺はとてつもなく悪い予感がしながらも意を決して口を開く。

 

「京都に旅行に行こうと思っているんだが、回るとしたらどこを回ればいいと思う?」

 

 俺がそういった瞬間後輩の目の色が変わった。

 手に持った茶碗を投げ捨てそうな勢いでテーブルの上に置き、俺の方へと顔を寄せてくる。

 

 俺は早くも後悔した。

 どうしてよりにもよってこの後輩に相談をしてしまったのか。

 

「先輩。やっと私の気持ち、わかってくれたんですね?」

 

 せめて先輩に相談すればよかったなあ。

 もはや諦めに近い感情を抱いて俺はうつろな目で、それとは対照的にキラキラ、いやギラギラとした瞳を向けてくる後輩のことを見つめていた。

 

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