気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。   作:葵 悠静

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127話 いつから自分だけ安全地帯にいれると勘違いしてた?

 目の前にはさっきまでのきらきらとした目はどこに行ったのか深い闇をのぞかせながら、ふてくされたようにこちらを見つめてくる後輩の姿があった。

 

 俺は最初から別にお前の気持ちを分かったなんて一言も言っていないはずなのに、何を勘違いしたのか迫りくる後輩の圧から逃れるため、というよりも俺の純粋な疑問であると理解してもらうために必死に説明をした。

 

 そしたらふてくされてしまったのだ。

 子供かよ。

 

「それで? どこに行きたいとかはあるんですか?」

 

 ふてくされてはいても一応話を聞いてくれる気はあるらしい。

 行きたいところか……。

 

 京都へは旅行で行ったことがない。

 いや学生時代に修学旅行とかで言ったことはあるような気はするが、ほとんど団体行動だったこともあり、ほとんど記憶に残ってない。

 

 学校によっては自由行動できるみたいだけど、俺のところは小中高全部団体行動だったな。 

 あの頃は自由なんてものはなかった……。

 

 まあそんなことはどうでもよくて、普通の旅行で京都は行ったことがない。

 でもいつかは行ってみたいと思ってたから、色々観光地を調べていたりはした。

 京都ってすごいよね。観光地の宝庫。

 

 一回行ったくらいじゃ京都に行ったことがあるなんて言えないんじゃないかって思うほど、観光するところがたくさんある。

 

「一番行きたいところはあれだな。あの……赤い鳥居がいっぱい並んでるところ」

 

「あー伏見稲荷ですか。あの周り何もないんですよね……」

 

 すごいな。名前がわからなかったから何となく画像を見たイメージだけで言ったのに、ほとんど食い気味で答えてきた。

 

いやまあ有名なところだから行ったことがある人ならすぐわかるのかもしれないけど、それにしてもメモ帳まで取り出して何をしてるんですかね?

仕事の時もそれくらいの真面目さを出してもらってもいいでしょうか。

 

「ほかには?」

 

 俺のちょっと引いている様子なんて見る気もないようで、メモにかじりつくようにして顔を接近させたまま聞いてくる。

 

「やっぱり……金閣寺とか? あー清水寺とかも見てみたいかも」

 

「……先輩って意外とミーハーなんですね」

 

 少し冷めた目線をこちらに向け吐き捨てるようにそういうと再び目線はメモへと戻る。

 

 ミーハーか? 俺がミーハーなら京都に行きたい人はみんなミーハーになっちゃうんじゃないかな。

 確かに横道なところを選びすぎな気はするけど。

 

「これもしかして一泊二日で行くつもりですか?」

 

 そういえばそういうところも話してなかったっけ。

 

「二泊三日だな」

 

「それならまあ……」

 

 さっきからめちゃくちゃメモに何か書き込んでるけど、俺が言ったことなんてそう多くない。

 いったい何をまとめているというのか。

 

 もしかして今速攻で旅行のしおりとか作ってないよね?

 もしかして修学旅行のしおりとか本気で作ってた感じ?

 

 俺なんてしおり作成に参加することなく、むしろ配れることもなかった類だよ?

 別にいじめられていたとかそういうわけでもなく本気で忘れられてたっていう一番悲しいパターンだけど?

 

 そんなことを考えている間にも後輩はするすると手を動かして、メモに何かを書いている。

 

「そういえば、降りる駅とか決まってるんですか?」

 

「降りる駅? いや別に特に考えてないけど……」

 

「はあ……」

 

 一瞬こちらに冷たい視線を向けた後輩は、再び視線をそのメモへと落とす。

 今まで黙ってたけどさ、後輩の圧がすごいんだよ!

 

 なんでそんな突然人を殺すような目でこっちを見つめてくるわけ?

 なんで人が変わったようにそんな圧を発せられるわけ?

 まともな返事をしないとこの世から消されそうな勢いの雰囲気を発してるよ?

 

「できました」

 

 別に後輩のことなんてちっとも考えていなかったけど、突然手をこちらに突き出してきたことに対して、思わず背筋を伸ばしてしまった。

 

 後輩の手に握られていたのはナイフではなく、さっきまで必死に何かを書いていたメモ用紙のようで、恭しくそれを受け取る。

 

 その中身は一日目と二日目の簡単な回り方ルートみたいなのが書かれていた。

 ちゃんと俺が行きたいところも盛り込まれているし、多分本当にこの順番で回るのが一番効率がいいんだろう。

 

「俺この平安神宮とか下鴨神社とか行くつもりなかったんだけど?」

 

「黙っていけ」

 

 なんだそれは。どうやら後輩のおすすめスポットらしい。

 平安神宮は聞いたことあるけど、下鴨神社なんて正直初耳だ。

 

 まあ建築物狂いが行けと命令するほどおすすめの場所なら、もちろんいかせていただくんですけども。

 しかし後輩は必死にこれを作っていたようだが、一つ大事なことが抜けているようだ。

 

 まあ俺も言ってなかったから仕方ないんだけど。

 俺はポケットにもらったメモを入れながら、代わりにスマホを取り出しカレンダーを開いて、後輩の方へ見せる。

 

「なんですか?」

 

「この日とこの日、暇?」

 

「まあ実家に帰るのはそのあとなんで、暇ですけど……」

 

「じゃあ申し訳ないけど今のメモは必要ないな」

 

「……先輩。私すっごく嫌な予感がするんですけど」

 

「あの旅館お前の分の部屋もとっておいたから」

 

「はあ!?」

 

 もちろん俺は最初から、というかあいつが勝手に部屋を予約した時からこいつも道ずれにすると決めていた。

 万が一やばい旅館だとしてどうして俺だけがそんな目に合わなければいけないのか?

 

 どうせなら旅館に行くことの決定打となった元凶もつれていくべきだ。

 後輩が表示するサイトには旅館のページはなかったかもしれないが、俺がもう一度検索した時はその旅館のサイトはまだあった。

 だからもう一部屋予約しておいたのだ。

 

「先輩、私行きませんよ!?」

 

「喜べ後輩。俺のおごりだ」

 

「だから行きませんって!?」

 

 聞こえないなあ!

メモではなく実際についてきてもらって案内してもらうことにしよう!

 

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