気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。   作:葵 悠静

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128話 旅行前のテンションが一番高いまである。

「これ!」

 

「それはいらないでしょ」

 

「むー」

 

 我々は今旅行カバン作成中です。

 それなのにレイさんは両手いっぱいにアイス棒を持って頬を膨らませております。

 

 ちなみにこのやり取りはすでに三回目です。

 いらないといっているのに、なぜか両手に持ったアイス棒を離そうとしないレイ。

 

 別に持って行ってもいいけど、もし後輩にでもそれを見られたりしたら一人遊びしている悲しい独身男性扱いされるし、絶対にネタにされるから却下だ。

 だから早くその手に持っているものを離して、自由になりなさい。

 

「じゃあ……これ!」

 

 お次に登場しましたのは大量の服です。

 確かにおしゃれしたいのは分かる。

 

 せっかく遠出するわけだし、ずっと同じ服だと飽きちゃうもんね。

 レイも最近おしゃれを覚えた女の子だ。

 

 その気持ちは痛いほどにわかる。

 だがしかし。

 

「却下です」

 

「ぶー」

 

 頬を膨らませてこちらを睨みつけてくるレイは実に可愛い。

 この顔を見れるならいくらでも却下できるというものだ。

 いや別に俺も意地悪がしたくて却下をしているわけではない。

 

 倫理観的な問題だけなのである。

 だって俺が旅行カバンの中に大量に女性ものの服を入れて持って行っていたりして、ばれたりしてみろ。

 

 それこそ何を言われるか分かったものではない。

 まあ正直あの建造物バカにそんなことをとやかく言われる筋合いはないのだが。

 

 いやがらせ目的のために今回の旅行に強制連行することになった後輩だが、はっきり言ってこういう弊害を考えてなかった。

 

 レイにももちろん楽しんでほしいが何せ考えなければいけないことが多すぎる。

 こうなったら観光地まで案内してもらって、そこから自由行動にするべきか……?

 

「むーー」

 

 うなりながら漫画を読み始めてしまったレイさん。

 ちゃっかり俺の身体を背もたれにしてすっかりリラックスモードである。

 

 しかしその体勢だと俺も動けないんだよね。

 まあ正直な話準備といっても特に大荷物になる予定もない。

 

 男の旅行の用意なんて最悪財布と下着くらいあればなんとかなるレベルだ。

 財布があれば現地でも下着とか調達できるしな。

 

 手ぶらで行ってもいいくらい。

 ただ俺は思うわけである。

 

 旅行とはこの準備期間も楽しんでこそなのではないかと。

 現地に着いた時のことを想像しながらいろいろなものを詰め込む。

 その過程が楽しいのである。

 

 レイにもその楽しさを味わってもらおうと思ったんだけど、すでにレイさんは飽きてるモードに入っていて、漫画に熱中しているみたいです。

 いや確かに俺も却下ばっかりで申し訳ないとは思うけどさあ。

 

 そんなことを考えながらダラダラしていると、レイが突然立ち上がってキッチンの方へと走っていった。

 今度は一体なにを持ってくるつもりなのだろうか。

 

 そんなことを考えてレイの後姿をボーっと眺めていると、彼女は振り返りこちらへと走って戻ってきた。

 その手にはきらりと光るものが……。

 

「待て待て落ち着け! レイ! 別に意地悪したわけじゃないから!」

 

 レイがその手に持っていたのはまさかの包丁だった。

 そんなにアイス棒を持っていきたかったならもっと抗議してくれればいいのに!

 

 俺はそんな実力行使に出るような短絡的な思考に育てたつもりはない!

 誰だ、レイに実力行使という手段を教えたやつは! 妹か? あいつめ!

 

「?」

 

 小首をかしげてこちらをつぶらな瞳で見つめてくるレイはとてもかわいい。

 その両手に包丁を持っていなければ素直に眺めていられるんだけどね! 

 

 というか何か言ってくれてもいいんじゃないですかね。

 どうしてずっと無言で包丁を持ってるんですか。その刃先が若干こちらに向いているように見えるのは気のせいですか?

 気のせいですよね、気のせいだといって!

 

「もっていかない?」

 

 ……ん?

 逆に問いたい。包丁を持って行っていったい何をしようというのか。

 その包丁を使う場面が来るのでしょうか。そんな場面に遭遇したくないんですけど。

 

「片付けて来なさい」

 

「じーー」

 

 いや、じっと見つめられても困るんだけど。

 そもそも包丁なんて持っていったら銃刀法違反で捕まるんじゃないの?

 

 包丁くらいの刃渡りだったらOKなの?

 いやOKだとしても持って行ったりしないだけど。

 

 だめだ俺。レイの目力にごまかされるんじゃない。

 体が凍えそうなくらい寒いけど負けちゃだめだ。

 そういえば久しぶりだな。これほどの冷気を浴びるのは。最近平和だったもんな。

 

「ちぇ」

 

 だれ、今舌打ちしたの? まさかレイじゃないよね?

 だれ、あんな健気な子に舌打ちという悪しき文化を教えたんですか!?

 

 まあガチっぽい舌打ちじゃなくて口で言っているような可愛らしいものだったから、まだ許せる。

 許してあげるからその大事気に持っている包丁を今すぐ戻してきなさい。

 

 もうレイから目を離すことができない。だって目を離した瞬間に彼女包丁を持って飛び込んできそうなんだもん!

 

 結局そのままレイとのにらみ合いが続き、その日の旅行カバン作成は全く進まなかった。

 

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