気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。   作:葵 悠静

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132話 冷静に考えると滝飲むって日本語はおかしい気がするけど、いまさら気にしても仕方がない

 参道とか正門には結構な人がいたっていうのに、本堂でもある清水の舞台には人が少なかった。

 

 あんなに多かった人はみなどこに行ったのか。

 本堂から少し奥に歩いてすぐにその謎は解けた。

 

「これ全部滝飲みに来た人?」

 

「これでも少ない方ですから、並びましょ」

 

 どれだけ眺めても前に見えるのは、人、人、人。

 人しか見えない。先が見えない。ゴールも分からない。もはや何も分からない。

 えー、本当に並ぶの……?

 

 目を凝らして行列の奥を見てみれば、確かに三股に分かれた滝の姿を見ることができる。 

 

 でももはやこの人の行列の方があの落ちている滝より長いのではないだろうか。

 どれだけみんな滝飲みたいんだよ。そんなにのど乾いているなら、適当にそこら辺の自販機で水を買えばいいじゃん。

 

 どれだけ心の中で文句を垂れ流しても、後輩は止まってはくれない。

 俺はあまり行列に並ぶって言うのが得意じゃない。というかその待っている時間で他のところに行きたいってなってしまう派なのだが、後輩はそうではないのだろうか。

 

 それにレイがこれだけの人の中で耐えられるかどうかが問題だ。

 そう思って後ろについてきているはずのレイがいる方に顔を向けるが、そこにレイの姿はなかった。

 

 一瞬迷子かと思ったけど、再度行列の方に目を向けるとその最後尾に後輩とレイの姿があった。

 どうやら今の俺に味方はいないらしい。

 

 まあ別に一切列が進んでないわけでもないし、並んでみればすぐかもしれないよな。

 そう自分に言い聞かせながら、俺は後輩の横に歩を進める。

 

「この滝を飲むと願いが叶うらしいですよ」

 

「人類みな強欲なり」

 

「突然何言ってるんですか。怖いですよ」 

 

 怖いのは今の状況だよ。

 どれだけみんな自分の夢を叶えたいんだよ。

 

 この並んでる時間を夢を叶えるために努力する時間にあてなさいよ。

 ……うっ。自分自身で考えたことが自分自身に返ってきてダメージを負ってしまった。

 

「まあ正確にはどの滝を飲むかで成就できる夢は決まってるみたいですけど」

 

 あー三股に分かれてて、その一つ一つにそれぞれ意味があるってこと?

 いや確かに三股には分かれてるけど。滝って自然には三股になったりしないでしょ。

 

「あれって元々は一本の」

「先輩、余計なことは言わなくていいんです。そんなんだからモテないんですよ」

 

 俺の話を遮るようにして、後輩は冷たい目線をこちらに向けながら辛らつな言葉を投げかけてくる。

 

 モテるモテないの話は関係ないでしょうが!!

 今は滝の話をしているのであって、そこに俺がモテるかどうかなんて要素は一切関係なかったと思うんですけど!?

 

 それに俺の場合、モテなくてもレイがいるからいいんですー。

 まあそのレイさんはさっそく並ぶことに飽きてしまったのか、俺の背中の方に回り込んで、背中をつついてきてるけど。

 

 いや、これはつついているというよりも何か文字を書いているような……なになに……

 

「も」「て」「な」「い」

 

 ぐっ……。きっとレイには悪気はないのだ。

 単純に後輩が言ったことを繰り返すように背中に書いただけなんだ。

 

 そうだよね? そうだと言って!

 思わずレイの方に顔を向けてしまい、隣に立っていた後輩が唐突な俺の奇行に驚いたのか、ぎょっとしたように半歩距離を取る。

 

「ど、どうしたんですか先輩。急に振り返ったりして」

 

「誰かが俺を呼んでる気がした」

 

「急に不思議ちゃんにならないでもらっていいです?」

 

 ……ふう。冷たい視線を浴びることにはなったが、なんとかごまかせたようだ。

 ことの発端もとい原因であるレイは素知らぬ顔で俺の背中をつつき続けている。

 それ楽しいの?

 




お知らせです!
この度投稿サイト「たいあっぷ」様にて本作を投稿いたしました!
このたいあっぷというサイトでは、イラストレーター様に表紙を作成していただけるのですが、何と! 今回Σウルフ様にイラストを描いていただきました!

レイが超絶美少女に描かれておりますので、抵抗ない方はぜひとも一度見てほしいです!
本編の流れは変わりませんが、たいあっぷ限定で読み切り短編を二本投稿しております。
ぜひとも一読いただけると幸いです!

https://tieupnovels.com/tieups/1725

それでは今後とも本作をお楽しみいただけると幸いです。
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