気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。   作:葵 悠静

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134話 どうして君がまるでまともな人間であるかのような発言をしてるんですか?

「ありえないですよ! 何考えてるんですか! 常識がないです。あんな場面で変な度胸見せなくていいんですよ!」

 

 まさか後輩に常識を説かれる日が来ようとは。

 音羽の滝から離れてからというもの後輩はずっとこんな調子だった。

 結構本気で怒ってるぽいし、もちろん俺も反省はしているんだが、あれ以降レイがずっと上機嫌でニコニコしているのである。

 

 その姿を見たらレイにも滝飲みさせたのは間違っていなかったと思える。

 だから反省はしているが後悔はしていない!

 

「何にやにやしてるんですか! 話聞いてます?」

 

 しまった。顔に出ていたようだ。

 さすがにこれ以上俺の不審な行動を後輩に見られるのはまずい。

 なるべく自然にしないと。

 

「まあ落ち着けって」

 

「誰のせいだと思ってるんですか!」

 

 俺のせいですよね。知ってます。

 うーん、どうにかして後輩の機嫌を取らないとな。 

 何かいいものはないか……。

 

「お」

 

「先輩、ちょっとどこに行くんですか」

 

 ちょうど歩いている隣に売店があり、そこに立ち寄る。

 いろいろと置いているが特に目についたものがあった。

 

 音羽の滝の天然水。

 いやそういう言い方をしていいのかどうか分からないけど、立派な箱に入ったそれをレジへと持っていく。

 

「先輩そこまでして……」

 

 なぜまた後輩に引かれているのかは分からないが、俺はそのまま会計を済まして後輩の元へと戻る。

 

「ちょっと先輩のこと侮っていたかもしれません。そこまで真剣に悩んで」

 

「やるよ」

 

 俺は今買った重厚な箱に入った音羽の滝水をそのまま後輩へと手渡す。

 差し出された勢いで受け取った後輩は状況を理解できていないのか、ぽかんと口を開けている。

 

 しかし徐々に理解し始めたのか手の中で何度も箱を転がしながらわたわたと慌て始めた。

 

「え、あ、でもこれ意外と高いんじゃ……」

 

「本気だったからな。気にするな」

 

「え……? いやいやいや! 私も消去法でしたよ!?」

 

 嘘つけ。

 消去法で恋愛成就の滝を選んだ奴があんな据わった目で水を飲み干すわけがない。

 

 別に悪いって言ってないんだから否定せずに受け取っとけばいいのに。

 まあそれに迷惑料と思ってくれば構わない。

 

「こういうところずるいですよねー。だからモテないんですよ」 

 

 こいつまたモテないって言ったな!? 気にしてないとはいえちょっとは傷つくんだからね!?

 純真な男心を傷つけないで!

 

「……よし、次行きますよ!!」

 

 しかしすっかり機嫌を直した後輩は、俺のひびが入ったガラスハートには一切気にせずにバス停へと歩き出した。

 え、もしかしてまたあのすし詰めバスに乗るんですか? ほんとに?

 他に交通手段とかないですかね……?

 

 

 

 バスまじ恨むべし、忌むべし。

 

「バスガス爆発ブスバスガイド乗降中……」

 

「完全に目がいっちゃってる状態で早口言葉で呪おうとするのやめてもらっていいですか。それにバスガイド乗降中って何ですか。ちゃんと乗せてあげてください」

 

 爆発するバスに乗ろうか乗らまいか迷っているバスガイドさんの心情を表してるんでしょうが。むしろ乗らないのが正解でしょうが。

 

 そもそもそれならなんでバスが爆発すること知ってるのさ。絶対犯人バスガイドじゃん。

 

 あとあんな満員状態のバスに詰め込まれて元気なままな後輩の方がおかしいと俺は思うんだ。

 

「バスパスパクパクプスプスプスプス」

 

 レイに関しては俺の真似をしようとしたんだろうけど、ちゃんと言えてないしバスパスしようとしてるし、何なら食べようとしてない? あと後半諦めないで。

 

 そんなレイも俺の周りを飛び跳ねるようにして歩いている。

 どうして俺以外みんな元気なんだろう。俺がおかしいんだろうか。

 

「それにしてもあんなに満員なのに先輩の周りには人が寄り付かないですよねえ。不思議です」

 

 そう言って後輩は俺に顔を近づけて匂いを嗅ぐそぶりを見せる。

 やめて。まるで俺が臭いから誰も寄り付かないみたいな行動するのやめて。

 

 間違いなくレイのせいというか、おかげだから。

 レイに重なると死ぬほどの怖気が走るから、誰も近づけないだけだから。

 

 まあそれはいいとして、俺たちはいったいどこを歩いてるんだろうか。

 

「次どこだっけ」

 

「もう忘れたんですか? 八坂神社ですよ」

 

 あー、やさかじんじゃね。知ってる知ってる。

 まるで祭りの時並みに露店の如く食べ物を売っている商店街通りを歩きながら、目的地を向かう。

 

 その向かい側では木々がうっそうとしているのにそんなザ・日本な風景を挟むように車道を車がどんどん通りすぎていく。

 

「なんというか日本すぎて日本らしくない」

 

「言ってる意味が分かりません」

 

 いやなんというかさ、この商店街の感じとか反対車線の木々で神社の中が隠れてる感じはすごい日本っぽさがあるじゃん。

 

 それなのに真ん中に太い都会ならではの車道が通ってて、一気に現実に引き戻されるというか、今どきこんないかにも日本! って光景も見ないから、逆に新鮮というか違和感があるというか、そういう感じよ。

 伝われ、このセンチメンタルな感情!

 

「バカなこと言ってないで行きますよ」

 

 バカって……。

 俺は俺自身が感じたこの気持ちが後輩に一切伝わらず、一刀両断された悲しみを背負いながら、八坂神社へと向かった。

 

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