気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。   作:葵 悠静

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57話 何もかもが初めてだから、どこに行くにも新鮮です。

 策士的かつ天才的で独創的な作戦により、何とか日が沈む前にショッピングモールにたどり着いた俺は、レイの目隠し状態を保ったまま、モール内部に侵入することに成功した。

 

「しかし久しぶりに来てみると広いな」

 

「なにもみえません」

 

 うん、そうだね。目隠ししているからね。

 レイが本気になれば、いや別に本気にならなくてもその気になれば、俺の手をすり抜けて目隠し状態から抜け出せるのだろうけど、この状況を楽しんでいるのかレイは今のところ、俺の腕の中におとなしくおさまっていた。

 

 途中から歩くのが疲れたのか、俺の身体にもたれかかるようにしてちょこちょこと歩いていたが、実際に効果があるのかどうかはわからない。

 

 だって感覚的には俺の身体すり抜けているわけだからね。

 だからレイがもたれかかってきても意味があるとは思えないんだけど、そこら辺のレイの感覚でしかわからん。 

 

 俺たちがやってきたのは田舎の救世主イーオン様だ。

 食料品をはじめとして、衣服、フードコート、そしてゲームセンターというアミューズメント施設まで何でもござれの最強ショッピングモールである。

 

 学生時代こういうところにいきすぎて、逆に何もすることが無い状態に陥っていたのはいい思い出だ。

 

 別に毎回のデート場所がイーオンだったとかそういうわけではない。

 それで若干ひかれてたとかってことは断じてない。

 

 ……だって学生の身分で行ける場所なんてせいぜい限られてるじゃん。田舎なんてそれこそこういうショッピングモールで、ウインドウショッピングという名の散歩をするくらいしかやることないでしょ?

 

 さあ悲しい青春の一ページにはふたをして、今のことを考えよう。

 服売り場は二階にまとまっている感じか……。

 

 あのエスカレーターから乗ればすぐに行けそうだな。

 なるべく食料品売り場を避けて、服売り場へとたどり着かなければならない。

 

 なぜなら相手は目ざといスイーツ大好き幽霊が相手だ。

 もしかしたらスイーツの気配を感じとって、突っ走ってしまうなんてことがあるかもしれない。

 

 俺は周りを確認しながら、エスカレーターに乗りこむ。

 エスカレーターに乗った瞬間、レイが少しびくっと体を震わせて俺の顔を見上げてきた。

 

「どうした?」

 

「うごいてないのにうごいてる」

 

 なに? なぞなぞ?

 

 突然のレイの謎の言葉を一瞬理解できなかったが、今の状況を考えてすぐに答えにたどり着いた。

 

 そうか、レイはエスカレーターに乗るのも初めてだもんな。

 確かに乗ったことが無かったらびっくりするのかもしれないな。

 

「ちゃんと終着点になったら降りるんだぞ」

 

 レイのことだから足が巻き込まれるなんてことはないんだろうけど、足が地面にめり込む映像は、そんなに見たいものでもない。

 

 レイは俺の掛け声と同時にエスカレーターからジャンプして、無事に二階へとたどり着いた。

 二階は見た感じ食料を売っているような場所もなければ、フードコートもなさそうだし、もう目隠しを外してもよさそうだ。

 

 スマホを耳から離しながら、感謝をこめてポケットにしまう。

 スマホはまさに俺が変態として通報されないようにしてくれる救世主だった。

 お前のことは忘れないぞ。

 

 目隠しを外した途端、レイから放出される冷気が一気に膨れ上がった。

 外の気温のせいで突然氷点下並みの寒さに叩き落された俺の心臓がちょっと止まるかと思った。

 

 怖くなったのかなと思って、レイに目を向けるとどうやらそうではなく、逆に目をキラキラと輝かせていて凄まじい勢いで首を振って周りを見渡していた。

 

 やっぱりレイも女の子だから、服とかにときめきを覚えるんだろうか。

 

「行くぞー」

 

 周りに人がいないことを確認してから、小声でレイに話しかけて目的地へと向かう。

 

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