気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。   作:葵 悠静

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67話 やはり神は存在した。いや幽霊だけど、俺からしたら女神でありその背後から後光が射しているといっても決して過言ではなく、そもそもレイの可愛さは(以下略)

「さーとーるー、ひーまー」

 

 分かった、分かったからとりあえず俺の首元を軸にしてぶらぶら揺れるのはやめなさい。

 別に苦しくもないし、感覚はそんなにないんだけどなんか首絞められている感じして心象はよくないから。

 まあアイスもお好み焼きもレイが食べ終わったわけだし、そろそろ帰ってもいいかなあ。

 

 果たしてレイは俺が買った服を着てくれるのだろうか。

 そんなことを考え、若干憂鬱な気分で紙袋の中身を再び覗き込む。

 

「やっぱり着るの?」

 

「着ません」

 

 店員さんにまだあんなダサださ恰好を見られるのはまだセーフ。

 あの店に足を運ばなければ、もう一生会うことはないだけだし。

 

 でも会社の先輩に見られてしまったのがつらすぎる。だって会社の先輩だよ?

 明日会社で会うんだよ? 先輩俺のことを見るたびに、俺のあの恰好を思い出すんでしょ?

 

 俺が先輩なら絶対思い出して笑っちゃう。1か月は思い出して目の前で笑いをこらえなきゃいけないことになる。

 え、なにそれ。先輩にそんな感じで見られたら死にたくなっちゃう。

 

 考えるだけでもこれほど憂鬱になるのだ。

 再び着ようものなら羞恥心と懐疑心と猜疑心と後悔で俺の心は破裂してしまう。

 

 こっちとらガラスのハートどころかメンタル豆腐なんだから、もっと世界は俺に優しくするべきだと思う。まあ俺は納豆のように粘り強く時代に食らいついていくけどな!

 あーやっぱり俺お腹空いてんのかな。

 

 そんな感じでこれからの想像とこれまでの事実に打ちひしがれ、自分のことを憂いていたら、またまたいつの間にかレイは俺の背中から離れて紙袋の前でちょこんとしゃがみこんでいた。

 

 紙袋をじーっと眺めているが、正直何を考えているのかわからないほどに、その視線には力がこもっておらず、表情は無表情だった。

 なんだろう。やっぱりお気に召さなかったのだろうか。フリマアプリに出してしまったほうがいいのだろうか。

 

 レイは警戒心全開で会袋の中に手を突っ込むと、ゆっくりと人差し指と中指でつまむようにしてニーハイを取りだす。

 

 いや、確かに俺が一回履いているけど、そんなに汚くないから。

 そんなばっちい物を触るような手つきで取りださないでね。

 目の前でそんなことされると俺も傷つくからね。ねばりついた心もバリバリにはがされちゃうからね。俺の中の何かが。

 

 悲しい気持ちでそれを眺めていると、しゃがんでかろうじて見えていたレイの足元が一瞬で黒色に塗り替わる。

 

 ん? え、もしかして、もしかして!!?

 

「れれれれレイさんや、少し立ってもらうことはできるでしょうか?」

 

 動揺しすぎて口がうまく動かないし、言葉遣いはなぜか敬語になってしまっているが、そんなことは今はどうだっていい。

 

 レイが無言で差し出してきたニーハイを丁重に受け取りながら、ゆっくりと立ち上がる彼女の姿を見つめていた。

 そして俺の予想通りやっぱりレイはニーハイをその身にまとっていた。

 

 だが……惜しい!! ニーハイはパーカーぎりぎりまで覆っていて、レイの太ももがあまり見えない!!

 

 なんかもうちょっとで見えそうなのに見えない! みたいなギリギリ路線が好きな人にはたまらないシチュエーションなのかもしれないが、俺は絶対領域絶対派だ。

 何を言っているのかわからなくなってきたけど、これは実に惜しい!

 

 でもニーハイを着なれてないからか、俺がじっと見つめていて恥ずかしいからなのかわからないけど、もじもじとパーカーを伸ばそうとして足を隠そうとしているレイは可愛い!

 

 俺は一心不乱に紙袋の中に手を突っ込んで、ワンピースを取りだす。

 

「これとかどうだ?」

 

 これは強制ではない。あくまでレイの意思を尊重している。着たければどうぞ? 俺がしているのはそういった類の提案だ。

 

 まあ気持ち的にはそんな感じなんだけど、手が前に伸びてしまってレイに押し付けてしまっているような構図になっているのは仕方がない。きっと気のせいだろう。

 

「着ていいの?」

 

「もちのろん」

 

 俺が返事をするや否やレイのパーカーが消えて、その姿が大きく変化する。

 あ、パーカーが消えるって言っても別に服が消し飛んで一瞬きわどい全裸姿になるとかではなく、単純に一瞬の衣チェンジって感じね。

 

 余計なことを考えているとレイは俺からの反応が無い事を気にしたのか、俺の顔を覗き込むようにしてしゃがみこんできた。

 

「……だめ?」

 

「いい。すごくいい。もう眼福。その……なんというか、ね。いいよね」

 

 フリーズしていた俺のもとに、突然のレイの上目遣いからの疑問形というオーバーキルのダメージを受けた俺は、語彙力をなくした。

 

 そんな返答でも満足したのか、レイは勢い良く立ち上がるとその場でくるくると回り始める。

 いやー、予想した通り……いや、予想以上、天井突破唯我独尊って感じ。

 

 いつもだぼだぼのパーカーを着ているからわかりづらいが、レイのスタイルは十分に細い。だがしかし出るところはしっかり出ていて、足は細すぎるわけでもない。

 つまり出るところは出ていて、引っ込んでいるところは引っ込んでいるのだ。

 

 身長は低いけど、それでもワンピースはよく似合っている。フードコートを照らす明るいライトは、今だけはレイを照らすために存在しているかのようにレイを照らし映していた。

 

 そして注目すべきはやはり絶対領域!!

 

 先程のパーカーとは違い、惜しみもなくその白い太ももを見せつけ絶対な比率を誇っている。

 そしてレイが両手をあげてくるくるするたびにちらリズムを刺激する。

 

 いやー、いい買い物したわぁ。

 ちょっと、いや大分無理して小さいサイズの服を着てよかったわ―。

 

 いろいろと過去の行動を後悔していた俺だが、今この瞬間の光景を眺めているだけで後悔なんてものは幸福という名の激流で洗い流され、それと一緒に過去の愚行の記憶も一緒に流し忘れることにした。

 

 まあ何よりレイが気に入ってくれているようで本当に良かった。

 俺の独りよがりになっても仕方ないしな。

 

 結局俺は眩しく光り輝きながら、スカートがひらひらするのを楽しみながらくるくるしているレイを小一時間ほど生暖かい目で眺めていた。

 

 なぜか周りの人から感じる視線は冷たく感じたが、俺は気にしない。

 そんなことよりこの光景を目に焼き付けることの方が大事。

 

 

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