気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。   作:葵 悠静

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71話 二人なら問題ないですよね! とかそういう問題じゃない気がするんですが。

 いやなんかしれっと隣に座ってきたけど、よくこんな空気の中普通に合流できたな。

 それに先輩にはついこの間こっ恥ずかしい場面を見られたばかりなので、正直言って気まずい。

 

「先輩聞いてくださいよー。先輩が意地悪なんですー」

 

 ややこしい、ややこしいよ。ちゃんと固有名詞を使いなさいよ。

 ほら、先輩もちょっと困っちゃってるじゃん。

 それに俺が意地悪なんじゃない。お前が非常識なだけなんだよ。

 

「いったい何をそんな言い争いをしているんだ?」

 

 別に言い争いなんかしていない。後輩が一方的に俺のことを責めてきてるだけで、俺は全然言い返したりなんかしていない。

 

「ふっ。君の目を見れば、何がいいたいかなんて想像つくさ」

 

 先輩は髪をかきあげながら、まっすぐと俺の瞳を見つめてきていた。

 え、なにこの人。すっげえイケメンじゃないですか。

 ていうか目を見れば社員が何考えているかわかるとか、どれだけハイスペックなんですかね。

 

 そもそも先輩はこの間のことを全く聞いてくる気配がない。

 俺は颯爽と逃げ去ったというのに先輩はあの時の話は、あの場で折り合いをつけてくれたというのだろうか。

 

 プライベートと仕事を完全に切り分ける。これが社会人というやつだよ。

 分かるか? 後輩、見習えよ。

 

「そうか、後輩は彼の家に行きたいということなんだな」

 

「それだと語弊があります! 私はあくまで先輩に相談をするために先輩の家に行きたいんです」

 

 後輩の発言にはいつも語弊しかないんだから、今更訂正しても仕方ないと思うけど。

 

 俺が先輩の株をあげている間、後輩が先輩にこれまでのいきさつを話していてくれたようだった。

 

 そして今先輩は俺の目をじっと見つめてきている。

 お、これはまた俺の心理を読み解いてくれるというあれか?

 

 絶対に嫌です。断固拒否です。勘弁してください。なんでもしま……せんけど、家には誰も呼びたくないんです。

 

 俺は目を見開いてしっかりと先輩の目を見つめ返す。

 そして先輩は俺に向かってしっかりと頷くと、微笑を携えて後輩の方へと顔を向ける。

 

 さすが先輩。あの顔は完全に以心伝心できたようだな。

 これで安心して昼休みを過ごせるようになるわけだ。

 

「わかった。私も一緒に行くとしよう」

 

「……ん?」

 

「どうした?」

 

 きょとんと首をかしげながら俺が問い返したことが予想外です。とでもいうように不思議そうにこちらに顔を向ける先輩。

 いやいや、さすがに聞き間違いだよな?

 

「ぱーどぅん?」

 

「だから私も彼女と一緒に君の家にお邪魔しようといってるんだ。九条もそれを望んでるんじゃないのか? 私のことを熱烈に見つめてきたじゃないか」

 

 何を考えてるか目を見ればわかるって話はいずこへ……。

 

「先輩! それはめちゃくちゃ名案ですよ! 先輩も一緒に先輩の家に行ってくれるなら、先輩も私とどうにかなるなんて心配しなくて済みますもんね!」

 

 先輩がゲシュタルト崩壊しそう……。

 どうにかなるとかそれ以前にそもそも家に来ることが問題だといってるんだけどな。

 

「週末ですか?」

 

「そうですねー。早ければ早い方がいいですね。私は以前から連絡してたのに無視されてましたし……。今週の土曜日とか?」

 

「九条、無視はよくないな」

 

 どうして俺は頭では拒否しているのに口をついて出たのは、日程の確認なんだろうか。

 どれだけ否定してもこの決定は覆らないってもう深層心理で認めてしまっているのかもしれない。

 

 ていうか休みの日に来るのかよ。会社終わりに10分くらいアパートの前で世間話程度にお話しして、はい終わり。じゃだめですかね。

 だめですか、そうですか。

 

「先輩はどうですか? 土曜日空いてますか?」

 

「俺は」「あ、そっちじゃないです」

 

 だから紛らわしいんだよ! 名前で呼べ名前で!

 

「だって先輩だって私のこと名前で呼ばないじゃないですか。対等ですよ対等」

 

 あれー? 先輩と後輩って対等なんだっけ? 一応上下関係っていうものが存在してるんじゃないっけ?

 

 それと俺口に出して言ってないのに、どうして普通に会話できてるわけ?

 俺ってそんな内心を読み取りやすそうな顔をしてるんかね。

 

「うん、問題ないぞ」

 

 スマホで予定でも確認していたのか先輩は触っていたスマホから目を離すと、いい笑顔でそう宣言した。

 

「じゃあ決まりですね!」

 

「そうだな!」

 

 いや、二人とも実にいい笑顔を浮かべてるけど俺の意志は結局……。

 

「だから俺の家は……」

 

「先輩! 早く食べないとお昼休み終わっちゃいますよ!」

 

 最後の抵抗むなしく、俺の発言は無視されるという結果に終わり、そしてなし崩し的に週末先輩と後輩が俺の家に来ることとなってしまった。

 ……なってしまったのかあ。

 

 後輩のやつめちゃくちゃ笑ってるじゃん。悩みなんてなさそうなんだけど。

 いったいこいつは俺に何を相談するっていうんだ……。

 

 

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