気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。   作:葵 悠静

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75話 そもそもパエリアってどんな料理だっけ?

 土曜日です。休みです。現在時刻は午前10時です。おはようございます。

 

 基本的に休みの日は午後まで夢の世界にいることが当たり前な俺が、何でこんな早起きをしているか。

 

 ええ、午後にやってくる後輩と先輩のための晩御飯作りですよ。

 朝に晩御飯を作り始めるってわけがわからないよ……。

 

 それに俺自身朝ご飯食べてないし。まあもともと朝は抜きがちだから、特に何か食べようって気にもならないんだけど。

 

 掃除はとりあえず昨日何とか終わらせた。

 まあ見た感じ他人が見ても汚いとは思わないくらいに片づけられてるんじゃないかな。

 代償としてレイの部屋(仮)は開いてはいけない禁断の部屋になってしまったけど。

 

 ……だってペットボトルとか隠しようがないからね。それ以外にもいろいろと放り込んだ気がするけど、仕方ないよね。うん、仕方ない。そういうことにしておこう。

 

 しかしとりあえずキッチンの前に立ったのはいいけど、何を作ればいいのかまったく思い浮かばない。

 

 そもそも普段料理しない人間がこういう時にパッと何か思いつけるほど都合のいい世の中ではない。

 

 レイも俺の気持ちをわかってくれているのか、俺の横でうつらうつらとしながら涙目になっている目をこすっている。

 ……この子絶対眠いだけだわ。

 

 さっきめちゃくちゃ大口開けてあくびしてるの見ちゃってるし。

 でも眠そうなレイってだけで割とレアなので、これが見れただけでも早起きした甲斐があるってもんだ。

 

 しかも俺の服の裾をちょんって掴んでるところがさらにあざと萌えポイントです。

 

 レイとしては無意識に自分が倒れないようにしてることなんだろうけど、また無意識ってところが怖いよね。すごいよね。

 まあ意味があるのかどうかは知らんけど、そのまま一生つかんで離さないでください。

 

 そもそも別に俺に合わせて起きてこなくてもいいのになあ。

 そんなことされると単純だから好きになっちゃうよ? あ、もう好きなんだっけ。

 

 ……恥ずかしいことを考えさせないでほしいんだけど。朝から高血圧で倒れちゃうよ。

 顔真っ赤だよ。熱いわ。

 

 これも晩御飯を作らないといけないという今の状況が悪い。

 つまりそういう状況になるように仕向けてきた後輩が全て悪い。

 よし、後輩には謝ってもらうことにしよう。

 

 俺の中で一つの証明ができてすっきりしたところで、スマホを手に取る。

 

 ま、こういう時は先人の知恵に頼るべきだよね。

 素晴らしきかな検索時代。検索すれば何でも分かる。

 そりゃ現代人皆検索中毒になるよね。

 

 なんて調べればいいかな。とりあえず『一人暮らし もてなし料理』とかで検索してみるか。

 

 やっぱり一定数需要があるのか結構な数のサイトが検索結果として表示される。

 とりあえず一番上のサイトを開いて中身を確認する。

 

 どうやらそのサイトはQ&Aサイトになっていて、質問に対していろんな人から回答が得られるようだ。

 

「やっぱりみんな似たようなことで悩んでるもんだなあ」

 

 その質問者も一人暮らしをしていて友達が来るけど、何が振舞えばいいかわからないといったような悩みを抱えていたようだった。

 そして大事な回答だが……なになに?

 

「手軽に作れるパエリアなどはいかがでしょうか……?」

 

 ぱえりあ? 手軽に作れる?

 え、なんでこれがベストアンサーになってるの?

 

パエリアって手軽に作れるもんなの? 俺外食する時ですらパエリアなんて頼んだことが無いんだけど、パエリアってそんなにメジャーなものなの?

 

 それとも最近の一人暮らししている人って、パエリアくらいは簡単に作れるぐらいみんな自炊してるの?

 

 俺が時代に乗り遅れているだけ?

 時代に乗り遅れててもいいからパエリアはちょっと敷居が高いかな……。

 

 俺はパエリアを作るのは早々に諦めて他の回答を探す。

 結構いろんな人が回答しているようで様々な候補が上がっていく。

 

『普通にカレーとかシチューとかでいいんじゃね? あとは鍋とか。余っても自分で食べられるし、日持ちするし困らないっしょ』

 

 おー、回答の仕方は雑だがなかなかこの回答はいい感じだ。

 

 鍋は時期的にまだちょっと早いし、暑いから無理かもしれないがカレーか……。

 確かに余ったとしても困らないし、なかなかありかもしれない。

 

 うーん、でももてなし料理でカレーとかシチューってあんまり聞かないよなあ。

 

 ……まあいっか。よくよく考えたらそこまで気合い入れてもてなすような相手でもないしな。

 

 正直後輩とかはよく食堂の個性的なメニュー食べてるやつだし、味にうるさいってことはないと思う。

 

 先輩はちょっと不安だけど、あの人もいろいろとぶっ飛んでるしたぶん大丈夫だろう。

 よし決めた。俺はカレーが食べたいです。

 カレーを作ることにします。

 

 だってカレーって切った具材を鍋に放り込んで煮込んでカレールーぶち込んどけばいいだけでしょ?

 

 パエリアとかより全然簡単そうだし、とにかくなんかカレーの気分になってきた。

 料理はカレーに決定。見知らぬ雑な回答者よ、ありがとう。

 

 心の中で俺からのベストアンサーを贈呈することにしよう。

 謎の達成感に包まれながら、シンクの隣にある冷蔵庫を開け放つ。

 

 あ。そういえば俺……。

 

「ぐおおおおおお! まじかぁ」

 

「うるさい」

 

 寒い寒い寒い。思わず大きい声をあげてしまったが、おねむのレイにはご不満だったのかとてつもない冷気をあてられる。 

 

 冷蔵庫の冷気と合わさって、テンション上昇と共に上がっていたはずの俺の温度は一気に下降する。

 

 レイに謝りながら再度冷蔵庫をチラ見するが、現実は何も変わらない。

 冷蔵庫の中は見事に空っぽで、カレーの材料はおろか野菜すらどこにも姿は見えなかった。

 

 ……今から買い物いかなきゃだめなの?

 俺のテンションが底をつくのと、限界を迎えたレイがその場でこてんと倒れて眠りこけはじめたのは、ほぼ同時だった。

 

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