気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。   作:葵 悠静

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79話 魔の扉が開かれしとき、かの後輩は千里眼を獲得せんし者とならん。……なにいってんの?

「え、いやーさすがに手ぶらだと悪いかなって思ってコンビニに寄ったんですけど」

 

 後輩に手に持ったビニール袋をぶらぶらさせながら、悪びれる様子もなく供述を始める。

 そもそも手ぶらじゃまずいと思って、コンビニに行く理由がよく分かんないんだけど?

 

 コンビニでもさすがに手土産に最適な菓子折りとかは売ってないでしょ?

 え、売ってるの? 最近のコンビニってそんなものまで完備してるの?どうなの?

 

「いや私も悪いんだ。ついちょっと気になる味のお酒があったから、それを手に取ってしまってだな……」

 

 先輩も後輩に併せるように自供し始める。

 先輩気になるお酒って、お酒飲まないんじゃなかったっけ?

 

 そもそもお酒飲まない集団の会合だから、今日俺の家の集合的なノリになったんじゃなかったっけ?

 

「いやー、それを私が見てしまって、私もなんか今日は飲める気がする―!! ってなっちゃいまして」

 

 なっちゃいまして。じゃあないんですよ。

 確かに気持ちはわかる。

 

 酒にめっぽう弱い俺だが、半年に一回くらいのペースで「あれ、今日俺酒に強いんじゃね?」 みたいな謎気分になって、酒缶を購入してみることはある。

 

 まあ大体一本消費する前に酔いつぶれるんですけど。

 気分だけが強くなったところで、体が急に酒に強くなるわけがないんだよな。

 

「私もそんな後輩のことを見てたら、行けるんじゃないかと思ってだな……」

 

 後輩に続けて自供を続ける先輩。

 まあその気分はわかる。理解できる。

 

 でもその量は何さ?二人して両手でビニール袋を持たなきゃ持ちきれないくらいの量の酒を買ってきてるわけでしょ?

 

 本当に飲むんだよね? 余ってもだれも処理できる人いないからね?

 そもそも後輩は店内で「今日は飲める気がするー!」って叫んでたわけ?

 

 もしかして俺がよくいくコンビニでやったわけじゃないよね?

 もしそうだとしたらもうなんか恥ずかしくなって俺あそこいけなくなっちゃうんですけど。

 

「それで、レジを通して店を出たときには気づいたらこんなことに……」

 

「そういうことだ」

 

 最後だけ申し訳なさそうに語尾を濁らせ自供を終える後輩。

 それとは真逆に先輩はなぜか誇らしげに胸を張って、ビニール袋を後輩に渡していた。

 いや、さすがに後輩も20缶くらいを両手で持つのは厳しいと思うんだけど……。

 

「ま、まあ細かいことは気にせず今日はパーッと行こうじゃないか!」

 

「そうですよ! 気にしたら負けなんです! そこで試合終了なんです!」

 

 先輩、それどちらかというと、俺のセリフだと思うんですよ。まあ俺そんなこと言うつもりもなかったですけど。

 後輩もそれに便乗しないでもらえます?

 

 試合始まる前に負確みたいなもんだからね?

 そもそも始まってもないし、何との勝負なの? 自分の肝臓と酒のキャットファイト?

 うん、勝てる気がしねえわ。

 

「そういうわけで先輩、冷蔵庫お借りしますね!」

 

 もう……なんか……どうでもいいわ。好きにしてください。

 なんか俺の家のはずなのに、既に主導権は後輩にわたっているような気がする。

 

 それどころか家主のように手慣れた手つきで冷蔵庫を開ける。

 ……ん? 冷蔵庫?

 

「あ、ちょっとま!」

 

「……先輩、これなんですか?」

 

 冷蔵庫の中には無理やり詰め込んだカレーもどきが存在している。

 そんなことは後輩たちが持ってきた酒の量ですっかりと忘れてしまっていた。

 

 そしてその結果、今冷蔵庫の扉は開け放たれ、中に封印していた例の物が姿を現していた。

 

「もしかしてこれ九条が作ったカレーか?」

 

「匂いの正体はこれですか!」

 

 いや、それはカレーというかなんというか……。カレールーをぶち込んだ酢の物といいますか、人様に出せるものではないんですよ。

 わかったら早く冷蔵庫を閉めてくれないですかね?

 

「美味しそうなハンバーグがあるよ!」

 

「でもそれ、コンビニで売ってるやつですよね? さっき寄ったコンビニの冷凍コーナーで見ました」

 

「確かに言われてみれば……」

 

 なんでそういうときだけ勘が鋭いのかな! この後輩は!

 そして先輩も便乗しないで! そこはいつもの大人らしくスルーしてくれると助かるんですけど!

 

 何かを察したのか後輩は冷蔵庫に手をかけたままにやにやとした表情で、こちらを見つめてくる。

 

「先輩が作ったカレー、私食べてみたいなあ?」

 

「そうだな。せっかく作ってくれたんだし、食べてみたいもんだな」

 

「いや、本当に……その……」

 

「まさかカレーを失敗するなんてことないですもんね!?」

 

「まあ多少失敗していたとしてもそこまでひどい味にはならないだろ」

 

 後輩のあおりは普通に腹が立つし、先輩のフォローも逆にいらっとしてしまう。

 というかこの状況から何か逃げ出す手段はないのだろうか。

 

 そういえば俺ご飯炊いてなくね?

 そうじゃん。ご飯が無ければカレーライスにならないじゃん。

 カレーだけ食べてもしょうがないよね。

 

「ご飯がない」

 

「そういうと思って! 買ってきました。レトルトごはん! なんとチンするだけ簡単にホカホカご飯が食べれちゃう!」

 

 わーお便利! じゃなくて! なんでそんなものを買ってきてるわけ?

 どうして俺がご飯炊き忘れることを見越してんの? エスパーなの?

 

 千里眼でも持ってるの? いや、持ってたとしても俺の家を監視しないでほしいんだけど。

 いやそもそも持ってたらこんなとこにいねえわ。

 

 もっとなんか国のすごいところとかで頑張ってそう。なんか別の話はじまりそう。

 いや後輩が千里眼持ってようが、持ってなかろうがそんなことはどうでもいいんです。

 

 動揺しすぎてわけわかんないこと考えちゃってるわ。

 

「先輩はそこそこできる人ですからねえ。どこか抜けてるところがあるというかなんというか……」

 

「そうだな。読みが当たって正解だったな」

 

 その読みのせいで、あなたたちは黄泉の世界に送られるかもしれないんですよ?

 カレー神にそれはもうこてんぱんの、ぼこすこに怒られると思うんですよ。

 だからやめといた方がいいと思うんですけど……。

 

「なんなら私温めましょうか? ていうかこの鍋が邪魔でお酒はいらないので、むしろ温めてもいいですか?」

 

「無言は肯定の意になってしまうぞ。昔からのルールだ」

 

 そんなルール聞いたことないけど、もうなんかどうでもいいや。

 

 二人が食べたいって言ってるからね。別に俺が好き好んでふるまうわけじゃないからね。

 俺は悪くないからね? ここ大事。

 もう勝手にしてくださいって感じですよ。

 

「よし! じゃあパーティを始めましょう!」

 

「楽しみだな!」

 

 後輩は冷蔵庫から鍋を取りだすと楽しそうに振り回している。

 いや、こぼれそうだから正直やめてほしいんですけど。

 

 それにパーティって今日そんな陽気な集まりだったけ?

 なんかもうちょいシリアス的な感じのノリかと思ったのに、めちゃくちゃウェイウェイなノリじゃん。

 いやまあ後輩にシリアスを求めたこと自体が間違っているんだろうけどさ。

 

 いや、あんたたち本当に何をしにきたの?

 

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