最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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はい、またまたお久しぶりです。鬼武者です。今回はお詫びと言ってはなんですが、通常は10,00文字前後のところを19,000文字でお届けしますので、許してください……


第百十五話戦略爆撃

2060年2月13日09:00 ランデブーポイント上空

「隊長ー!!間も無くランデブーポイントです!!」

 

「そうか。しかし、これじゃ何も見えないぞ………」

 

2回目の登場であるミリシアルの爆撃隊指揮官であるフキニーは、後ろの雲海を面倒臭そうに睨む。天候は晴れているが、今日は雲が多い。この辺りだけらしいが、視界が遮られるのはやはり嫌だ。

 

「僚機も、ムーの航空機も未だ発見していません」

 

「遅刻ですか?」

 

「さぁな。だが、彼ら、日本人は時間にうるさいと聞く。遅刻はないだろう」

 

部下達にそう語るフキニーであったが、内心では何かトラブルがあって遅刻したのではと心配していた。しかしすぐに最後方の機体から無線が入る。

 

『パル・キマイラよりフキニー機へ。後方から皇国軍機が現れた。目視と例のIFFとやらで確認している』

 

「高度を少し上げる。目視にて確認したい」

 

「了解。機首、ちょい上げ」

 

フキニーの乗るムニシピオが数mほど高度を上げ、フキニーは双眼鏡片手に後方を確認する。すぐに皇国の特徴的なのっぺりとした、ステルス機の編隊が見える。

 

「F9心神にA9ストライク心神………おっ!アレがA10彗星II!!最強の攻撃機!」

 

フキニーはミリシアル軍屈指の航空兵器オタクである。各国の竜騎士、ムー、ミリシアル、皇国の航空機も大好きであり、最近のマイトレンドは皇国とムーの機体らしい。

 

「た、隊長!後方に大型の機体ですぜ!!」

 

「ん?……おぉ!富嶽だ!あれが皇国の超重爆撃機 富嶽IIだよ!!」

 

「えらく巨大ですなぁ」

 

雲海から飛び出してくる富嶽IIに、乗員達は窓際に詰め掛けてその姿を見る。このムニシピオがマグロくらいの魚だと言うのなら、彼方はシロナガスクジラ。そのくらいに巨大だ。

 

「隊長隊長!アイツはどんな機体なんです?」

 

「超重爆撃機『富嶽II』という、見ての通り巨大な爆撃機だ。この機体の爆弾搭載量、大体4,000kg程度だろ?あの機体は機内と翼下合わせて、大体160,000kg!ムニシピオ40機分だ」

 

「40機!?」

 

「爆撃機12機で一個飛行隊だから、あれ1機で三個飛行隊以上かよ…………」

 

フキニーの説明に呆れる副操縦士や爆撃手。すると監視を続けていた飛行兵が、フキニーの背中をバシバシと叩く。

 

「いった!いって!な、なに!!なんなの!!」

 

「たたたた隊長…………化け物です…………」

 

「はぁ?」

 

「化け物が雲から現れました!!」

 

首に下げた双眼鏡を再び構え直し、飛行兵が指差す方向を見る。するとそこには、富嶽IIが矮小に思える程の巨大な航空機……というか最早、アレを航空機と呼べるのかとツッコミたくなる、言うなれば飛行戦艦とか空中戦艦の様な巨人機が悠々と飛んでいた。

 

「おぉぉぉ!!!!!」

 

「た、隊長?」

 

「化け物か!確かに化け物だぞアレは!!あっちのブーメランみたいなのは空中母機『白鳳』!!そんでもって、その後ろにいるエイみたいなのは空中空母艦隊!!空中空母『白鯨』と支援プラットフォーム『黒鯨』だ!!!!おぉ!?しかもあれは、機動空中要塞『鳳凰』!!!!特殊戦術打撃隊までいるのか!!!!!」

 

オタクモードが作動してしまっているフキニーに、周りの飛行兵達は少し引いてしまう。だがある1人が気付いてしまった。「空中空母」とか「空中空母艦隊」と言っていた事に。

 

「た、隊長?空中空母ってのは………」

 

「あの機体は海の空母をそのまま空に浮かべた航空機だ!それも艦載機は、皇国海軍が保有するF8C震電IIをそのまま一切の制約無く120機運用してる!!」

 

「はあぁぁぁ!?!?!?」

 

「んなアホなぁ!!!!!」

 

彼らがこの反応をするのも無理はない。かつて、転移前の世界でも空中空母艦隊は各国政府の度肝を抜いた。洋上の航空基地が空母の役割であるなら、空中の航空基地には何の意味があると知識の無いものは笑うだろう。どっちも飛行機じゃないかと。

だが知識が少しでもある者なら、これの何が恐ろしいか即座に理解できる。この空中空母艦隊があれば、空母機動部隊を派遣できない大陸奥地でも大規模な航空攻撃が可能であり、例え大量の対空兵器に守られた要塞だろうが、物量による航空攻撃が可能。世界中のあらゆる場所に展開可能な、移動式の航空拠点となるのだ。

 

「恐ろしいだろう?怖いだろう?だが、ある意味一番怖いのはあのブーメランだ。あのブーメラン型の飛行機、人が乗ってない」

 

「は?」

 

「じゃあどうやって操縦を…………」

 

「その辺、詳しくは知らないが、簡単に言えば思考を人工的に再現してるんだと。ほら、SF小説のゴーレム頭脳。アレが乗ってる」

 

余談だがミリシアルにもSFは存在する。ただし発想が全て魔法とか魔術由来であり、簡単に言えばスターウォーズの科学技術を全部フォースでどうにかしてる様なジャンルである。

 

「………………皇国、世界滅ぼしませんよね?」

 

「心配するな。皇国が本気出したら瞬く間に世界滅ぶから」

 

「笑えねぇ。笑えねぇっす…………」

 

そもそも皇国が本気を出せば、この戦争自体一夜にして終わる。何もかも無制限というルールになれば、後先考えずにグラ・バルカス帝国本土にICBMとかSLBMといった、安定の核を搭載した弾道ミサイルを数発撃てばいい。主要都市全部纏めて、核の業火で焼き払えば簡単だ。

 

『…………中央戦区攻略部隊全軍に通達。こちらは第三空中空母艦隊提督、田沢大吉である。本作戦は私が指揮を執る。これより各部隊は、割り当てられた我が軍の指揮管制官と連携し、作戦にあたれ。各員の武運長久を願い、奮戦に期待する。以上だ』

 

ではここで、中央戦区攻略群と名付けられた、コルベカ工場地帯とアークトゥリズムを爆撃する為の大戦力をご紹介しよう。

 

 

世界連合軍

中央戦区攻略群

大日本皇国空軍

 ・惑星規模攻撃群『富嶽爆撃軍団』*1 80機

 ・第408飛行隊『ガルーダ』

 ・F9心神 120機

 ・A9ストライク心神 90機

 ・A10彗星II 230機

 

大日本皇国特殊戦術打撃隊

 ・第三空中空母艦隊

 ・機動空中要塞『鳳凰』 2機

 ・空中母機『白鳳』 4機

 ・ADF1妖精 8機

 ・ADF2 16機

 

 

ムー空軍

 ・戦闘機グレン*2

 ・戦闘機パシフィカ*3

 ・駆逐機テーラー*4

 ・急降下爆撃機ルーデル*5

 ・襲撃機エアラコ*6

 ・襲撃機アイーエ*7

 ・攻撃機バラクダル*8 160機

 ・戦闘爆撃機ウッドチェイサー*9 640機

 ・爆撃機フォート*10 420機

 

 

神聖ミリシアル帝国空軍

 ・エルペシオ3 480機

 ・ジグラント3 320機

 ・ムニシピオ 280機

 

 

グラ・バルカス帝国軍

工業都市アークトゥリズム

アークトゥリズム守備隊

 ・重装型高射砲塔 32基

 ・高射砲塔*11 64基

 ・レーダー型高射砲塔 16基

 ・12.8cm速射高射砲 8基

 ・12cm高角砲 16基

 ・12cm連装高角砲 24基

 ・7.5cm高角砲 19基

 ・25mm機銃 109基

 ・25mm連装機銃 89基

 ・25mm三連装機銃 64基

 ・軽戦車ブル 80両

 ・軽戦車シェイファーII 130両

 ・中戦車レトリバー 60両

 ・中戦車ハウンド 210両

 ・自走砲カプセル 145両

 ・対空戦車アウル 38両

 ・シェパード対空装甲車 248両

 ・トラック 1580台

 ・バイク 480台

 ・側車 289台

 

アークトゥリズム秘密基地

 ・拠点防空戦闘機スターダスト 80機

 ・ジェット戦闘機スターゲート 40機

 ・ジェット戦闘機スターゲート改 12機

 ・電子偵察機ポラリス*12 6機

 

コルベカ工場地帯守備隊

 ・拠点防空戦闘機スターダスト 40機

 ・重装型高射砲塔 32基

 ・レーダー型高射砲塔 8基

 ・12.8cm連装速射高射砲 18基

 ・12.8cm速射高射砲 20基

 ・12cm高角砲 48基

 ・12cm連装高角砲 53基

 ・7.5cm高角砲 108基

 ・25mm機銃 108基

 ・25mm連装機銃 230基

 ・25mm三連装機銃 320基

 

 

今回の攻撃目標であるアークトゥリズムとコルベカ工場地帯は、帝国における戦略上の要所である。アークトゥリズムは古来の城塞都市に倣ったようで、しっかり城壁と大砲が設置されている程だ。

一方のコルベカ工場地帯は、帝国の超巨大工業地帯。民間工場から兵器工場まであり、建造ドッグすら有する。そればかりか製鉄所まであり、素材の製造・加工からの兵器製造まで全部ここで完結するとかいう場所だ。

 

「隊長隊長。アレはなんですか?なんか皇国の戦闘機が群がってますけど………」

 

「どれどれ?」

 

フキニーが窓の外を双眼鏡で覗くと、たしかに皇国の戦闘機が大型機の周囲に群がっている。まるで鯨のを周りを泳ぐイワシの魚群のようだ。

 

「あの機体はKC787。空中給油機だ」

 

「空中給油機……ですか?」

 

「よく見てみろ。あの大きい機体、尾部からパイプが伸びてるだろ?アレを戦闘機に接続して、飛びながらの給油ができるらしい。パイロットの負担もあるが、理論上は無限の航続距離を得る事になる」

 

フキニーの説明に、またも機内は唖然とする。パイロットや飛行機乗りとして、やはり「空中で燃料の魔液を補給できたら楽だなぁ」とかは思ったことがあるが、それは机上の空論だった。しかし皇国はそれを行える。開いた口が塞がらなかった。

 

「案外、10年も経てば我らがミリシアル空軍にも空中給油用の機体や改造が施されるかもね。皇国という前例があるし、燃料が石油由来か魔石由来かの違いで、液体物を流し込むという点は変わらない」

 

フキニーらがそんな夢のような時代を想像している中、皇国軍機は次々に燃料を補給していく。燃料補給が終わった機体から編隊に戻っていき、1時間もすれば全機の補給が完了する。

 

『よし、いいぞガルーダ1。ディスコネクト』

 

『各機、ウェイポイント5通過だ。進出に備えろ』

 

『行くぞ!ペイバックタイムだ!!』

 

『行こう、ガルーダ1。金色の王の微笑みが共にあらんことを』

 

「先駆け攻撃隊、続け!」

 

ガルーダ隊を先導とし、編隊の後方から追い上げながら加速し、綺麗な編隊から、少し乱雑なトレイル編隊へとロールしながら移行していく。その様はまるで、航空ショーのように鮮やかだ。

しかしその姿は、グラ・バルカス帝国軍の最新鋭機。電子偵察機ポラリスに捉えられていた。

 

「班長!世界連合軍です!!」

 

「大規模攻勢があるっていう情報は本当だったか。数は?」

 

「機数、43機!!何れも超音速!敵速マッハ1から1.5!!距離およそ60km!!」

 

「だとすれば大日本皇国を置いて、他にあり得ないな。よし、全域に———」

 

「待ってください!!接近する編隊より更に後方70km!本機より130km!!!!超大編隊探知!!!!!!」

 

レーダー手の報告に班長は、レーダー画面を確認する。ポラリスに搭載されている長距離レーダーは、最大探知距離100km。130km地点は本来探知できない。なら何故、探知できたのか。それは機器の故障、或いは超大規模な編隊であるかの二つに一つだ。

 

「………直ちに打電しろ!!アークトゥリズム全域に警報発令!!!!」

 

「うわぁ………どんだけ本気出してんだよ………………」

 

「機数分かるか!?」

 

「わかりません!!多すぎて………恐らく1000機は居ますよこれ!!!!」

 

ポラリスの機内が大騒ぎになる中、レーダー波の逆探知と送信された無電をキャッチした事で、皇国軍がポラリスの存在を把握する。

 

「提督。レーダーに反応あり、機数1。大型機。恐らく例の新型AWACS!」

 

「探知されたか?」

 

「確実に」

 

レーダー員の報告に、田沢はニヤリと笑う。帽子を目深に被り直すと、艦橋の乗組員達に振り返る。

 

「全艦、対空戦闘用意。戦闘機隊を制空装備で発艦させろ」

 

「アイ・サー。対空戦闘よーい!!」

「旗艦より全艦へ。対空戦闘用意。繰り返す、対空戦闘用意」

「全域送信。全機、戦闘に備えよ。繰り返す、戦闘に備えよ。敵機来襲の可能性大」

 

田沢の指示が飛ぶや否や、編隊に所属する全機が動き出す。空中空母艦隊、白鳳、鳳凰が最前衛に展開。その後方に富嶽爆撃軍団の富嶽IIが全周を固めるように展開し、その内部にムー、ミリシアルの順に収める。

各国の護衛戦闘機隊は、一部の直掩部隊を残し、全機が編隊上空にて待機し、陣形が整い次第、会敵予測ポイントに進出する。

 

『総員、対空戦闘用意。総員、対空戦闘用意。ダックビル、マクタビッシュ各隊は直ちに発艦。迎撃に備えよ。総員、対空戦闘用意。総員、対空戦闘用……』

 

「パレット前進!!」

 

「ミサイルの装填急げぇ!!」

 

この『白鯨』には、熱田型や『日ノ本』に搭載されている多層パレット式格納発着艦装置の前身が採用されている。空中空母『白鯨』とあるように、この兵器は空飛ぶ空母。空母なら航空隊の発着艦が行えなくては、単なる戦闘機輸送機である。しかし乱流やら何やらの諸問題により、普通の空母みたいにしては、飛ばす前に戦闘機が後ろへ飛ばされてしまう。そこで生み出されたのが、パレット式格納発艦装置だ。

まず戦闘機は、洋上の空母へ着艦するように着艦する。本来ならエレベーターで格納庫に降ろされるが、『白鯨』では着艦後にパレットに機体を固定。パレットごとエレベーターに乗り込み、そのまま格納庫に降ろされる。

発艦の際はパレットごと甲板に上がり、そのままパレットに乗った状態で発艦パットに移動。電磁カタパルトにパレットが接続し、そのままエンジンに点火。発艦と同時にパレットのロックが外れ、そのまま発艦するというシステムを搭載している。これにより迅速かつ安全に、戦闘機隊を発艦させられるのだ。

 

「エンジン、コンタクト!回転数良好!!」

 

『ダックビル1-1より、マクタビッシュ1-1。こちらが先でいいか?』

 

「ウィルコ。コーヒー1杯おごれよ?」

 

『この間みたいに1杯といっぱいを引っ掛けてなけりゃな』

 

いつも通りの軽口を叩きながらも、パイロットの手つきに寸分の狂いはない。コックピットのパネルをタップし、発艦前のチェックと準備を行う。

 

「スタビライザーチェック、クリア。ブレーキ、チェック、クリア」

 

『ウェポンチェック』

 

「ラジャー。…………HUD、オールウェポンズシステム、オールグリーン。MG、トリガー」

 

『…………チェック!機関砲スピンアップ!!』

 

「ラジャー。マクタビッシュ1-1、ラダー、フラップ、スラット、計器、兵装全て異常なし」

 

パレット移動しながら、整備員と共に機体のチェックを終わらせる。空母なら飛行甲板で行うチェックだが、流石に酸素マスク必須かつ移動中の航空機である以上、露天でのチェック作業は危険極まる。というかチェックなんて、マトモにできないだろう。

 

『ハンガーコントロールよりオールマクタビッシュ。ダックビル隊が発艦中、待機せよ』

 

「マクタビッシュ1-1、ラジャー。1-1より、オールマクタビッシュ。仕事の時間だ、おっ始めるぞ」

 

間も無くしてダックビル隊の発艦が完了し、マクタビッシュ隊の発艦が始まる。パレットがスライドし、パレットごと飛行甲板へ上昇。横向きにスライドして、電磁カタパルトに接続する。

 

『コントロールよりマクタビッシュ1-1、オールグリーン』

 

「マクタビッシュ1-1ラジャー、Cleared For Takeoff」

 

電磁カタパルトの加速でシートに押しつけられる感覚と共に、大空へと飛び立つ。ちなみに発艦の衝撃は空母より少ない。というか、失速ギリギリでの発艦である。白鳳の場合、空中空母である為、当然だが元から、まあまあの高度で発艦が行われる。失速して高度を下げようと、十分に回復できるのだ。イメージ的には第二次世界大戦時の空母から発艦する際、航空機が甲板から飛び出した後に高度を下げてから上昇していくのが近いだろう。

 

「隊長機より全機へ。招待した覚えはないが、お客様を出迎える。ついて来い」

 

白鳳から航空機が発艦する一方、ムーとミリシアルの護衛戦闘機隊も動き出していた。ムー側の護衛戦闘機隊指揮官は第49戦闘飛行隊指揮官、クリケット・エンデュランス中佐。訓練とはいえマリンでミリシアルのエルペシオ3を撃墜した事もあり、更にはアンタレス3機を撃墜したエースである。

 

『………第49戦闘飛行隊、聞こえるか?応答せよ』

 

「こちら第49戦闘飛行隊。指揮官のエンデュランス中佐だ」

 

『…………確認した。ようこそ未来の戦場へ。こちらはAWACSウィッチウォッチ。第49戦闘飛行隊の指揮管制は私が担当する』

 

「皇国との共闘戦は、このサービスがありがたい。ウィッチウォッチ、誘導を頼む!」

 

『オーライ、ウルトラエース。敵編隊は1-5-1、高度14,000!そちらから見て大体11時の方向だ』

 

ムーの航空隊からも、ミリシアルの航空隊からも、AWACSまたはAEWによる情報支援というのはありがたい。大型レーダーによる装置探知と、効果的な指揮管制。言うなればFPS視点固定のゲームで、俯瞰視点でのプレイができる。そんなイメージだ。

 

「了解ウィッチウォッチ。全機、迷わずついて来い!」

 

編隊は翼を翻し、指定された方向へと進む。しばらく進むと、全ての周波数帯で警戒勧告が指示される。

 

『作戦行動中の全機へ。全機、現高度及び進路を維持せよ。繰り返す、全機現高度及び進路を維持せよ』

 

『隊長、妙な無線ですね?』

 

「あぁ。ウィッチウォッチ、この指示は一体なんだ?」

 

『今、データリンクで送られてきた。どうやら支援が行われるらしい。提灯による支援攻撃だ』

 

「チョウチン?」

 

エンデュランス含め、パイロット達は困惑する。一部日本の文化に明るい者は、頭にあの提灯が浮かぶが、知っての通り提灯とは日本における光源。ランプのようなものだ。こんな大空で使う代物ではない。

 

『超大型レールガン『提灯』という、そうだな。海上移動要塞だ。現在、帝国本土をグルリと包囲する形で展開している。簡単な話、超巨大な大砲を乗せた移動する要塞島だ』

 

「威力は?」

 

『隕石を破壊する為の大砲、一撃で大編隊を壊滅せしめる。これで伝わるか?』

 

「……………そんなものがあるのか」

 

『皇国には300個もそれがあるぞ。しかもその内、30個がこの戦線に配備されつつある』

 

あまりの数にパイロット達は困惑する。しかもこの提灯、コンクリート製の人工島であり目玉武装である提灯の他、防衛用の50口径510mm四連装砲18基を始めとした、各種戦艦以上の兵装が搭載されている。航空攻撃だろうが、艦隊による攻撃だろうが、陸上部隊揚陸だろうが、全部対応できてしまうのだから恐ろしい。

 

『噂をすれば何とやら。丁度、砲弾が編隊の上を通過するぞ。3、2、1』

 

次の瞬間、機体がビリビリと揺れる。反射的に操縦桿を握り直すと、耳をつんざく轟音が10秒以上遅れて聞こえる。

 

『弾着まで3……2……1……Now』

 

「なんだあれは!?」

 

パイロット達の目に、まるで目の前に太陽が現れたかのような、巨大な火球が彼方の空に発生する。雲が一瞬で消え去り、どう見ても何が起きたか分かる前に死ぬと理解できてしまう光景だ。

 

『敵迎撃部隊第一陣、完全に消滅』

 

「消滅!?え、消滅って言ったか!?」

 

『あぁ。文字通り、消滅さ。編隊が丸々、あの火球の加害範囲に入ってる。例え直撃せずとも、衝撃波と熱波が襲い掛かる。カケラも残さずに死ぬさ』

 

実際、迎撃の初動として上がった60機の戦闘機隊は、提灯の燃料気化弾である月華弾によって自分達に何が起きたか分からずに壊滅した。しかもその情報は、後続に伝わる事はない。

提灯による攻撃の前、ガルーダ隊に率いられた先駆け攻撃隊によりレーダー、及び指揮管制の中核をなす通信アンテナを破壊。さらにダックビル隊の一部がステルス性を生かして敵支配域に潜入し、搭載したECMポッドでジャミング。二段構えで情報を遮断させる事に成功したのだ。

 

『これで時間的猶予は確保した。安心して進出できるぞ』

 

「………ウィッチウォッチ。皇国じゃ、これが普通なのか?」

 

『というと?』

 

「こんな……効率よく殲滅するみたいな………」

 

『あぁ。これが我々の常套戦術だ。敵を分析し、こちらを分析し、最も効果的な戦術を選択する。そもそも君達の兵器と違って、こちらは使うコストも高い。種類にもよるが、大体ミサイル1発=ムーの戦闘機くらいだ。それを戦闘機は数十発搭載する。効率よくやらないと、予算が無くなるのさ』

 

ウィッチウォッチの言葉は正しい。だが皇国はその戦闘機を、何百機と一度に投入するチート国家。本来質か量のどちらかしか取り得ない中、両方とも普通に取った上で最大活用してくるヤベェ連中である。それにエンデュランスは気付いたが、怖くて何も言えなかった。

編隊はさらに進出し、ムーとミリシアルの編隊は第二迎撃ラインまで進出。雲の中に身を潜めていた。

 

『敵機間も無くポイントに到達。突撃に備えろ?』

 

「ラジャー、ウィッチウォッチ。隊長機より全機、これよりお客さんを出迎える。命落とすな、敵を堕とせ!!」

 

『『『『『『『ラジャー!!』』』』』』』

 

『………敵機、アタックポイントに到達!全機突入せよ!!』

 

翼を翻し、雲の中に潜んでいた飛行隊が一気に飛び出して襲い掛かる。ムーの戦闘機はエンジンパワーに物を言わせて一撃離脱を図る機体であり、ミリシアルもエンジン特性的には一撃離脱に適している。対する帝国軍は装甲を犠牲にしての格闘戦性能を重きを置いており、一撃離脱には弱い。

 

「目標視認!速度を落とすな、一撃で突き抜ける!!」

 

第49戦闘飛行隊の他、ムーとミリシアルの戦闘機隊が突っ込む。狙うは敵編隊の側背面。誰もがこのまま一方的に撃ち込めると思っていた。なにせ相手は戦闘機、爆撃機じゃない。戦闘機は後ろが死角というのは、万国共通なのだから。

しかし次の瞬間、あり得ないことが起きる。敵が後方に射撃してきたのだ。

 

「っ、後ろからだと!?」

 

「なんで——後方に射線が!?」

 

先頭の8番機が翼を抉られ、火花と黒煙を散らしながらスピンに落ちた。続いて4番機の尾翼を弾丸が貫き、機体が震えながら制御を失う。見ればミリシアル側も、直線番長故に弾幕の餌食となり黒煙を吐いている。

 

『くそっ、何だあの機体!ケツに機銃を積んでやがる!』

 

「全機回避!抜けろ!」

 

エンデュランスが叫ぶが、降下速度を乗せすぎたグレンの数機は急には抜け出せず、追い打ちの弾幕に捕まっていく。

予想外の火線に全隊が乱れ、隊列が一瞬でバラバラになった。

 

「戦闘機じゃないのか!?」

 

『……隊長!アイツは戦闘機じゃない!!爆撃機です!!!!シリウスだ!!!!』

 

「んだとぉ!?」

 

『全機警戒(コーション)!ウィッチウォッチより全機!!ドッグファイトに備えろ!!!!』

 

アンタレスとアンタレス改。帝国が誇る、最強のドッグファイト専用戦闘機。エンジンと装甲に割り振っているグレン、そしてジェットエンジンに近い特性を持ったエルペシオ3にとっては、ドッグファイトは最も避けたい状況だ。

 

『後ろに回られるぞ!警戒を——くっ、こいつら速い!』

 

『こちらオラタン、援護に入る!……っ、数が多い!』

 

パシフィカの編隊が急旋回で切り込むが、敵は完全に混乱を突いてきた。一瞬前まで攻撃側だったはずの世界連合軍側が、たちまち被弾を避けるためバレルロールや急降下に散り散りとなる。

パシフィカも奮戦するが、いくら格闘戦に最も対応できる機種とはいえアンタレスとアンタレス改の前では意味をなさない。

 

「ウィッチウォッチ、こちらエンデュランス!奇襲失敗!敵、格闘戦に移行中!」

 

『了解、状況を再計算する!グレンとエルペシオ3は上昇して速度を取り戻せ、パシフィカは下層で時間を稼げ!』

 

だが指示を受けても混乱は収まらない。アンタレスはまるで匂いを嗅ぎつけた獣のように散開したグレンを追い回し、アンタレス改が上から速度を乗せて押さえ込む。

 

『12番機、被弾!油圧が落ちてる!』

 

『23番機、ケツを取られた!振り切れない!』

 

無線が悲鳴と絶叫で溢れ、編隊は瞬く間に空中戦へと引きずり込まれていく。本来は上からの一撃離脱で圧倒するはずが、いきなり背中を撃たれ、速度を失ったまま敵の得意な格闘戦に巻き込まれた。

エンデュランスは歯を食いしばりながら、急旋回でアンタレス改の追尾を振り払う。視界の端に、雲をかすめて旋回するアンタレスのシルエットがいくつも見えた。

 

「全機!一度縦に引け!速度を取り戻せ!パシフィカ、後ろを抑えろ!……くそ、完全にやられたぞ!こっちが完全に狩られる側になった!!」

 

帝国軍のパイロット達は、まるで開戦以来一方的にボコボコにされてきた恨みを晴らしてやると言わんばかりに、執拗に追いかけ回す。アンタレスとアンタレス改の編隊が大蛇が獲物に巻き付くように絡み付き、シリウスは編隊を維持しながら再び後部銃座をこちらに向け、次の餌を探していた。一方的な狩りな筈が、狩られる側に早変わりしてしまったのだ。

エンデュランスは急降下を抜けざま、スロットルを絞って乱戦を見渡した。無線は断末魔と絶叫で渦を巻く。だが耳を澄ませば、まだ息をしている声がいくつかあったし、何より既にエンデュランスは立ち直っていた。

 

「……エップス、応答できるか?」

 

『こちらエップス、まだ生きてます!翼端に穴が空いたが飛べる!』

 

「ブーチャー!ワックサー!」

 

『ブーチャー軽傷!』

 

『ワックサー問題なし!勝手に殺さんでくれ隊長!!』

 

エップス、ブーチャー、ワックサー。第49戦闘飛行隊のエースと呼ぶに足る、エンデュランスが最も信頼する3人だ。

 

「ファルテン隊長、聞こえるか?」

 

『こちらフォルテン。まだ飛べるぞ。何機か生き残りを拾ってる』

 

パシフィカを運用する第223戦闘飛行隊の指揮官も生きている。フォルテンもまた、かなりの腕前を持つエース級パイロットだ。エンデュランスは息を詰め、決断する。速度を捨て、旋回戦へ移行する。本来なら愚策だが、このままでは爆撃機が食い荒らされてしまう。

 

「よし……ベテランは迎撃に当たれ!!エップス、ブーチャー、ワックサーは俺に付け!フォルテン隊長も好きに暴れてくれ!!」

 

『よしきたぁ!』

『了解!』

『久しぶりにおっ始めようやクリケット!』

『了解だエンデュランス隊長』

 

4機バラバラの空域から無理やり集結してくる。翼を水平に揃え、タイトな梯形を組む。彼らは皆、過去の空戦を潜り抜けてきた古株。狭い空でも動きを読み合える仲だ。

 

「このまま円を描く!パシフィカは内側で支援射撃、グレンは外側を回って牽制しろ!アンタレスの旋回を逆手に取るぞ!」

 

言うなれば狩りである。防御力と速力に優れるグレンが猟犬となり、攻撃力と機動性に優れるパシフィカはハンターの役割だ。

そこへアンタレスの群れが突っ込んできた。旋回勝負に自信がある。だが隊形を整えたエンデュランスたちは、互いの死角を補い合う。1機が敵を引き付ければ、別の機が射線を送り込む。円の中心ではパシフィカが20mmを吐き出し、追ってきたアンタレスの翼を粉砕した。

 

『命中!一機落とした!』

 

『ナイスショット!』

 

だが敵も黙ってはいない。アンタレス改が上昇力を活かして円の上から襲いかかり、真上から一撃を見舞う。

ブーチャーの機体に弾が食い込み、翼が千切れて炎を噴く。

 

『ブーチャーがやられた!』

 

『うおおぉぉぉ!!!!』

 

『ウィッチウォッチよりブーチャー中尉。脱出しろ。必ず救出する!』

 

エンデュランスは即座にバレルロールで敵の下へ潜り、反転上昇から背後を取る。視界が一瞬、Gで黒く狭まる。だが照準に敵の腹が入った瞬間、12.7mmを叩き込む。アンタレス改が炎上しながら落ちていった。

 

「撃墜確認!……クソ、まだ来るぞ!」

 

『ブーチャーのパラシュート確認だ!!』

 

パシフィカの内側から曳光弾が次々と吐き出される。敵が食い込もうとするたび、誰かがトリガーを引き、別の誰かが回避のためにループを描く。全員が速度を失いながらも、編隊はまるで一つの巨大な生き物のように円を保った。

 

『ウィッチウォッチより全戦闘機隊へ!!爆撃機編隊に連中を誘導しろ!!!!』

 

無線にウィッチウォッチの声が再び割り込む。しかしその指示に全員が驚愕し、エンデュランスがブチギレる。

 

「ふざけんなウィッチウォッチ!!爆撃機の連中を見捨てる気か!?!?」

 

『まさか。大丈夫だ、皇国を信じろ。こっちだって今回は本気だ』

 

「——————ッ!!!!!全機、コイツらを引っ張れ!!!!爆撃機へ誘導するぞ!!!!!!」

 

生き残った全機が敗走を装い、爆撃機のいる方向へと飛ぶ。それを帝国軍も追いかけて行く。本来なら悪手も悪手、それどころか裏切りに等しい行為だ。だが問題はない。

 

「全艦、対空戦闘。目標敵迎撃編隊、先頭集団!」

 

「アイ・サー!白鳳全機、前衛展開!!」

 

「旗艦『白鯨III』より『鳳凰IV』及び『鳳凰V』へ。対空戦闘始め」

 

ウィッチウォッチからの通報を受けた爆撃編隊は、迎撃体制に移る。特殊戦術打撃隊隷下の第三空中空母艦隊、『鳳凰IV』『鳳凰V』、そして『白鳳V』『白鳳VI』『白鳳VII』『白鳳VIII』が前衛に展開。その後方に富嶽II、ウッドチェイサー、フォート、ムニシピオの順のコンバットボックスを展開。完全な防護体制をとる。

 

「ウィッチウォッチ!本当に大丈夫なのか!?」

 

『大丈夫だ!それより、指示を聞き流すな?そっちの機体にはIFFが付いてないないんだ。加害範囲にいたら、問答無用でフレンドリーファイアだぞ!!』

 

「了解している!」

 

第49戦闘飛行隊の他、迎撃の為に進出していた航空隊がどうにか帝国軍を引っ張ってくる。敗走と勘違いした帝国軍の迎撃機は、嬉々として護衛戦闘機隊を追いかけてくれた。

 

「ウィッチウォッチ!先頭の大型機、何かを落としてる。爆弾を投棄してるのか?」

 

『いやUAVだ』

 

「UAV?」

 

『なに、すぐ分かる。っと、ここだ。全機、最大推力で上昇!!6,000m以上に向かえ!!』

 

操縦桿を手前に目一杯引き、スロットルレバーを前に叩き込む。エンジンが唸り声を上げ、高度を一気に上げる。上昇性能では過給機を搭載したムーの機体と、ジェットエンジンに近い特性を持つジグラント3に軍配が上がる。帝国軍機は付いてこれない。

 

『ショーの開幕だ』

 

「なっ!?」

 

エンデュランスが見たのは、この世のものとは思えない光景だった。紫色のレーザーが横薙ぎに編隊を掠めると、一気に爆発し墜落していく。爆弾だと思っていた何かは、小さな戦闘機となって帝国軍機を追いかけ回している。

 

「なんだありゃ………」

 

『あれ爆弾じゃなかったのか………』

 

『ってか飛行機がレーザー撃つのかよ………』

 

それだけではない。『黒鯨V』『黒鯨VI』も攻撃を開始し、空のど真ん中に凡そ空の上で形成されているとは思えない、そんな弾幕が展開される。その弾幕に阻まれて、次々に迎撃機は墜落していく。

だがそんな中でも、シリウスの数十機が弾幕を突破。得意の急降下を『白鳳III』に仕掛ける。しかもその攻撃に、どの護衛戦闘機も迎撃が間に合わない位置だった。

 

「ウィッチウォッチ!!あのブーメラン型ヤバいぞ!!!!」

 

『大丈夫だ』

 

シリウスの翼下から無誘導ロケット弾が発射され、爆弾倉に搭載していた大型ロケット弾を一斉に放つ。航空機なら致命傷は間違いない火力の筈であり、しかも全翼機は安定性が悪い。墜落しかねない。ムーとミリシアル、誰もがそう思った。

しかし知っての通り、その狙われた機体は空中母機『白鳳』である。『白鳳』には最強の防衛装置、APSが搭載されているのだ。青白い天使の輪の様な物を機体の直上で生成し、それが『白鳳』をすっぽり覆う円形に広がり、青い半透明の球体を作る。そこに命中したロケット弾は、まるで水面に石を投げた様に波紋を広げるだけであり、球体の中に突入してしまったシリウスはバラバラになりながら墜落していく。

 

『なんだいまのは!?』

 

『バリアかよ!』

 

『APSと呼ばれる兵器だ。あれを作動したら、通常兵器では早々破壊できない。破壊するとなると例の提灯、ストーンヘンジ、後は海軍の超戦艦による飽和攻撃しか破れないだろう』

 

APSによる動揺が帝国軍に走ると、真上から航空隊が突撃し、さらに多方面から攻撃が加えられ、そこから2分もしない内に迎撃に上がった帝国軍第二陣は全滅した。

 

「アークトゥリズム上空に到達!爆撃コース突入!」

 

「黒煙が上がっている。先遣隊が対空砲を潰せているな」

 

特殊戦術打撃隊は高度を上げ、爆撃隊を前面に展開させる。富嶽II、フォート、ウッドチェイサー、バラクダル、ムニシピオ、ジグラント3が群れをなしてアークトゥリズムに殺到した。

コンバットボックスの編隊を維持しつつ、下方に広がるアークトゥリズムに向けて機銃掃射を加えつつ突き進む。機体の上部に搭載された機銃は、またやってくるかもしれない迎撃機を警戒する。

 

「爆撃手!どうだ、見えるか!?」

 

「問題なーし!コースそのまま、そのままぁ!!」

 

フキニーがいるコックピット、その下に設けられた爆撃照準器室を根城にする爆撃手の軍曹は地図と町並みを見比べる。照準器室の窓越しに見下ろす都市は、地図が立体になったように小さなブロックと格子で構成されていた。河が黒く光り、倉庫群が四角い影を落とす。

 

「上空!フォートが通過します!!」

 

フォートは高度を少し上げ、爆撃隊の最先鋒として突撃する。目標はアークトゥリズムの心臓部、鉄道ヤードと貨物輸送ハブステーションだ。隣にある倉庫区画ごと破壊する。

 

『………こちらパスファインダー。マーカーを投下した』

 

爆撃手が呼吸を整える。長い飛行で堆積した疲労と寒さ、それでも手順が染みついている。照準の十字を揃え、滑らかにダイヤルを回す。赤いマーカーが地上で散り、炎の輪郭がその周囲で膨らむ。

ムニシピオの目標は都市と工業地帯を繋ぐ大型幹線道路、鉄道路線、倉庫区画だ。

 

「3、2、1、ドロップ!」

 

その瞬間、機体が一瞬軽くなる。機体がフワリと浮かび上がる感覚に襲われた数十秒後、真下でパパパっと一瞬赤い炎のゆらめきが生まれる。炎が消えれば、残るのは黒煙だけだ。

 

「命中確認。発電所、主要設備致命的損傷。鉄道ヤード、機関車三両被害。倉庫複数焼損」

 

「了解。いい戦果だな」

 

爆撃隊が悠々と離脱しようとしたその時、爆撃機数機が一気に爆発し墜落していく。

 

「8番機被弾!!」

 

「なんだぁ!?」

 

「……フキニー隊長!左上方敵機来ます!!突っ込んでくる!!!!」

 

フキニーは咄嗟に、左真上を見る。太陽で余り見えなかったが、それでも一瞬ギラリと嫌な光り方をする何かを見た。

 

「クソォっ!!!!!!!」

 

操縦桿を目一杯右に曲げて、スロットルを早速ギリギリにまで絞る。予想外の動きに驚いたのか、敵機が放った砲弾は逸れた。それでも風防を掠めているので、生きた心地はしない。

 

「ひょぇぇ!!」

 

「なんだ今の!?」

 

「機関銃手!見えたかぁ!?」

 

「見えた!!ジェット機です!!でもジェットにしては、加速と上昇が桁違いだ!!!!」

 

この時のフキニー達が知る由もないが、爆撃編隊に襲いかかったのはジェット機ではなかった。グラ・バルカス帝国が新たに開発した、ロケット推進の拠点防空局地戦闘機スターダストである。航続距離が局地戦闘機にしても極端に短くクセが強すぎる機体ではあるが、ロケット推進故に加速力、上昇能力は凄まじい。更には機首に爆撃機を一撃で破壊する40mm機関砲を搭載しており、その攻撃能力は計り知れない。

 

「全爆撃機!敵機下方よりくるぞ!!弾幕を張れ!!!!」

 

機長の一喝がコックピットの空気を鋭く切り裂く。機体の外側で金属が震え、翼の下から吐き出される弾幕が空を切り裂くように炸裂する。狭い視界の外で火の玉が弧を描き、黒い煙がすぐそこに立ち上る。

 

「右翼編隊、間隔を広げるぞ!!フォーメーション崩すな!射手は上下左右、全弾発射!」

 

爆撃編隊は互いに距離を取る。これは犠牲を減らすための古典的な処置だが、同時に互いの背中を預けることでやっと保っていた安定を投げ捨てる賭けでもある。機体間の隙間に入り込む冷気が、乗員の顔に鋭く刺さる。

 

『来たぞ!』

 

『来やがった!!』

 

「うおっ!?」

 

機体が大きく揺れて、嫌な臭いが鼻腔に刺さる。機銃手が振り向けば、翼の付け根から魔液が流れ落ち、燃える臭いが機内に充満する。

 

「副操縦士!推力どうか!?」

 

「まだ行けます!!」

 

「フキニー隊長!!多分まだ飛べますぜ!!エンジンは燃えてるが、まだちゃんと動いてる!!!!目視で確認しましたぁ!!!」

 

これで生き残るのは運がいい。普通は当たれば最後、40mm砲弾は容赦なく装甲を破り、機体に穴を開け、内部の燃料もしくは魔液が一瞬で誘爆し、炎が花火のように噴き上がる。実際、無線では乗員の声が途切れ、最後に短い断末魔の音がマイクを震わせる。

 

「敵機来る!高高度からの急降下!気をつけろ!」

 

「くそっ!!死角に入った!!!!狙えない!!!!」

 

他の機体が懸命に弾幕を張るが、それでも無理がある。しかも敵はフキニーが乗るムニシピオ狙いなのが察せられてしまうほど、急角度で突っ込んでくる。

 

「弾幕貼りつつ衝撃に備えろ!!」

 

しかし次の瞬間、予想だにしない事が起きた。スターダストが、赤い光に貫かれて爆散したのだ。

 

「な、なんだ?」

 

『こちら特殊戦術打撃隊、モルガン飛行試験師団。これより我が隊は、ロケット戦闘機に対処する』

 

特殊戦術打撃隊隷下の飛行試験師団。ADFシリーズを運用する航空隊であり、皇国空軍の中でもエース級の実力者が引き抜かれて設立された部隊である。モルガン師団、ファルケン師団、レーベン師団の三師団があり、それぞれ各ADFシリーズを運用している。

 

「全機続け。攻撃を開始する」

 

『TLSチャージ完了』

 

「撃て」

 

編隊を組んでのTLS照射は面倒な事この上ない。TLSの弱点とは、点での攻撃しかできない事にある。しかも直進するので、これを命中させるのにはちょっとしたコツがいる。

だが編隊を組んでのTLS照射は、ある程度の面攻撃が可能となる。掠めただけで、容易に翼を溶断せしめるTLSの唯一の弱点が実質消えるとなれば、相手にとっては悪夢でしかない。

 

『1キルー』

 

『いや、3だ』

 

『しかし奴ら弱いっすねー』

 

しかも今回の敵であるスターダスト、このTLSと頗る相性が悪い。TLSが直線的である様に、スターダストのロケット推進という推進機構もまた直線的だ。ジェット推進も直線的だが、ロケット推進はその上を行く。お陰で狙い易い上に機体自体も発展途上で遅いので、いい的なのだ。

 

「爆撃隊へ。上空はクリアだ」

 

『こちら神聖ミリシアル帝国空軍、フキニー少佐だ。援護に感謝する』

 

一方その頃、富嶽IIと特殊戦術打撃隊の姿はアークトゥリズムの東方、コルベカ工場地帯にあった。目標は当然、コルベカ工場地帯全域である。

 

「目標補足、爆撃開始」

 

「ウィルコ!」

 

ムーとミリシアルと違い、爆撃手が直接照準する訳ではない。爆撃手はコンピューターがロックした目標に近付いたら、トリガーを引くだけ。後はコンピューターが勝手に投下してくれる。

 

「爆弾、残弾80。70。コースそのまま」

 

その攻撃の様は、まるでライン作業の様に感情がない。ただただ機械的に爆弾を落とす。しかしその火力投射量は凄まじく、最も大きな被害を与えていた。

 

「爆撃隊がやっているな」

 

「はい、艦長」

 

「では我々も始めようか。レールガン、砲撃用意!!」

 

機動空中要塞『鳳凰』には、下部に大口径レールガンが搭載されている。本来この『鳳凰』は成層圏と中間圏の間、高度約50kmを飛行し、弾道ミサイルの迎撃を主任務とする。

しかしレールガン自体は通常のレールガンなので、弾さえ変えれば普通に対地攻撃も可能なのだ。今回は弾薬庫に小型ミサイルを満載している時雨弾や、燃料気化砲弾の月華弾ではなく通常の榴弾と、二段階で爆発する五月雨弾を多く搭載している。

 

「砲撃準備完了!」

 

「神⭐︎仏⭐︎照⭐︎覧!!!!」

 

「撃てぇ!!!!!」

 

レールガンから次々に砲弾が射出され、爆撃を逃れた目標を破壊していく。効率的な破壊こそ、皇国の基本戦略だ。

爆撃が完了した各国の爆撃機は合流し、基地への帰還の途につく。しかしグラ・バルカス帝国軍もタダでは終わらないらしい。

 

『ウィッチウォッチより全部隊最優先通信!!敵編隊探知!!正面から来るぞ!!!!』

 

ウィッチウォッチの通報に、ある男がニヤリと笑う。小野忠弘大佐。この富嶽爆撃軍団の団長である。

 

「富嶽爆撃軍団前進!!編隊前衛に展開!!!!」

 

「やりますか?やりますねぇ。ガハハハ!!おっしゃぁ野郎共ぉ!!!!前進だぁぁぁ!!!!!!!」

 

機長の前島宏樹中佐もノリッノリでスロットルレバーを押し込む。編隊の後方から飛び出していく富嶽爆撃軍団は、機体越しにも狂気を感じる程だ。

 

『あー、ウィッチウォッチ?多分大丈夫なんだろうが、一応仕事だから聞くぞ?援護した方がいいか?』

 

『その必要はないさ、エンデュランス隊長』

 

エンデュランスの仕事は爆撃機の護衛。本来ならこんなことは止めるべきであり、せめて援護する位は必要だ。それが任務なのだから当然である。だが慣れてしまったのか、エンデュランスの胸中には「まあ、いっか」という諦めや呆れに近い皇国軍への信頼が生まれていた。

実際、戦闘機の甲高いジェットエンジンとは違う、空全体が震える様な重苦しい重低音を掻き鳴らしながら突き進む巨人機の群れを見てしまったら、誰でも安心感を感じてしまうだろう。

 

「全機、弾幕展開準備だ。敵影確認、正面より多数接近!獲物が来やがったぁ!!!!」

 

「来やがったなぁ……グラ・バルカスの連中だ!!」

 

前島中佐の叫びに応えるように、富嶽IIのレーダーに無数の点が点滅する。その数、優に500を超える。アンタレス、アンタレス改、そしてさらに奥にはスターゲートとスターゲート改。明らかに「テメェら生きて帰れると思うな」という、強い意志を感じる編隊だ。

 

「全砲塔、攻撃用意だ」

 

「了解っ!!全砲塔旋回!前面防御陣形、距離維持!」

 

巨大な富嶽IIの腹部、翼の根元、上部下部ターレットが一斉に唸りを上げ、数十門の銃口が開く。

 

「機先を制す!!120mm砲撃用意!!!!」

 

「ラジャー!!各砲6発、撃て!!!!!」

 

数十機が一斉に放った120mm砲弾は編隊手前で起爆し、3分の1近くを消し飛ばす。

 

「消し飛んだぁ!!!!」

 

「敵さん大慌てで散開してますぜ!!」

 

「野郎共突撃だ!!!!」

 

小野の指示に、全ての富嶽IIがフルスロットルで敵編隊に突っ込んでいく。そこから始まったのは、防空戦闘ではなく虐殺だった。先陣を切ったアンタレスの編隊は40mm、30mm、20mmの弾幕に阻まれ次々に墜落していく。

 

「弾幕のスコールですぜ!!ギャハハ!!!!」

 

「おっ、アンタレス改も来るぞ」

 

富嶽IIの前方を、アンタレス改が機首を下げて突き抜けた。突撃速度と引き換えに特攻軌道を取る。一撃必殺の戦術だが、そこは75ミリ速射砲の間合いだ。艦艇と同じシステムを搭載した75mm速射砲は、正確にアンタレス改を次々に破壊していく。

 

「HAHAHAHAHAHA!どうだ!これが富嶽だ!!!!」

 

「正面からくるぞ。速度、マッハ0.9!ジェットだ!」

 

「OK、確認した!エンジン2発!Me262(シュヴァルべ)もどきに間違いねぇ!!!」

 

ガンナーは手動照準に切り替えて、接近する敵機を照準。76mm砲を当てる。まるでゲームの、砲台を操作するミニゲームの様だ。

 

「前島、突っ込め!!」

 

「おっしゃぁ!!!!フルスロットル!ガンナー!!各砲、自由射撃!!中央突破で蹴散らせぇぃ!!!!」

 

富嶽IIの巨体が敵編隊のど真ん中に突っ込む。クジラが小魚を海水ごと吸い込むかの様に、全てを食い尽くしてしまう。上に逃げようが下に逃げようが、右や左に回避しようが全て破壊されてしまう。

 

「攻撃隊へ!上空はクリアだ!!」

 

爆撃隊は悠々とアークトゥリズムから離脱し、今度こそ基地へ向けて進路をとる。このアークトゥリズムへの爆撃を持って、世界連合軍による一斉侵攻作戦『報復の嵐』作戦が発動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 南部戦区 フォレボワ森林上空

『ポイント3、通過。レーダー波、未だ探知ありません』

 

「このまま進みたいな。ドラゴンズの初陣だ」

 

アークトゥリズム全域が火の海になっていた頃、経済都市グレムゲールに程近いフォレボワ森林の上空を、36機の黒地に赤いラインの入った戦術機が木々を揺らしながら飛んでいた。神谷戦闘団隷下、特別戦術機甲大隊『インペリアルドラゴンズ』である。

神谷戦闘団に新設した戦術機専門部隊であり、高い技量を誇る精鋭衛士に加え、所属する全機が最強の59式戦術歩行戦闘機『浄龍』を装備し、アーマードパックの標準搭載が許可されている最強無敵の戦術機甲大隊である。

 

《衛士、光学センサーに目標を捉えました。……データリンクより情報更新。現在、ゲルガメラード空軍基地の戦闘機隊はアークトゥリズムへの迎撃に出払っている様です》

 

「帰還までの時間は?」

 

《全滅したそうです。気にする必要はありません》

 

淡々と告げるAIに、苦笑いを浮かべる。AIなのだから仕方がないのだが、こうも淡々と言われると自然と笑みが溢れてしまうのだ。

 

「ドラゴンズ1よりサンダーヘッド。こちらは間も無く、目標に突入する。そちらはどうか?」

 

『了解した。ラーズグリーズ隊が間も無く突入する』

 

インペリアルドラゴンズの上空、凡そ12,000m。そこには真っ黒に塗装された、5機のF8CZ震電IIタイプ・極が飛行していた。神谷戦闘団専属の航空隊、ラーズグリーズである。

 

『全機、時間だ。始めろ』

 

「ウィルコ。ラーズグリーズ1より全機へ。EMLで行くぞ」

 

ラーズグリーズ1ことブレイズの指示に、全員が無言で応じる。EML、つまりレールガン。タイプ・極には機体下部に、連装レールガン2基を搭載しているのだ。

 

「レールガン、解放。正常に作動、アークライトを展開。電磁エネルギー充填開始」

 

《5%…15%…30%…65%…80%》

 

「オートサポートシステム作動」

《エネルギー充填率100%》

 

「ラーズグリーズ1、クリア」

『ラーズグリーズ2、クリア』

『ラーズグリーズ3、クリア』

『ラーズグリーズ4、クリア』

『ラーズグリーズ5、クリア』

 

『……全機EML充填率100%を確認。ラーズグリーズ隊全機、オールクリア』

 

サンダーヘッドの報告を聞くや否や、全機が翼を翻し、横一列に並びながら急降下する。エンジンを全開で吹かしながらの降下突入は、例えAIによるサポートがあろうと並みのパイロットなら、撃ち損じるだろう。だが彼らは、最強の神谷戦闘団に所属するファイターパイロット。問題はない。

 

「全機、振り降ろせ」

 

 

 

*1
新たに設立された超重爆撃機 富嶽IIのみを集中運用する部隊であり、700機の富嶽IIが配備されている

*2
P51H型に酷似。12.7mm機銃6門

*3
ハリケーンに酷似。20mm機関砲4門

*4
Bf110G4に酷似。12.7mm機銃4門、旋回機銃連装12.7mm機銃1基

*5
スツーカG型に酷似

*6
P39Qエアラコブラに酷似。37mm機関砲1問1門、20mm機関砲2門、12.7mm機銃4門

*7
Il-2M3に酷似

*8
バラクーダに酷似

*9
デ・ハビランド DH.98 モスキートFB Mk. VIに酷似

*10
B17Gに酷似

*11
鉄筋コンクリート性の要塞。屋上から12.8cm速射高射砲 4基、第三階層に25mm三連装機銃 18基を装備。これより下は射撃指揮所、発電設備の他、一般市民用のシェルターにもなる

*12
新たに開発された、初の早期警戒機。四発機で長距離対空レーダー、短距離対空レーダーの2種類を搭載し、航空機としては最高峰の通信装置、そして初歩的ながらもジャミング装置を搭載する。防護用に12.7mm連装機銃を前部、中央上部、中央下部、後部に搭載。12.7mm機銃を左右に搭載する。




という訳で、次回は神谷戦闘団大暴れ回です。
さて、ここからは言い訳というか近況報告なんですけども、前回投稿時は就活と教育実習と言っていました。現在は教育実習の方も合格が判明し実質教員免許もゲットできたようなもので、就活も実質的に終了し大学生活を楽しむだけという状況です。
しかし今度はご縁あった企業様のところで研修している状況で、教員の方は教員の方で急遽、100分間の大規模な授業をする事になるという、ここにきてまた怒涛の忙しさに突入しており、多分もうしばらくは超ノロノロ更新が続きそうです。
読者の皆様には、もう少しこのノロノロ更新に付き合ってもらえたらと思います。恐らく、次回の投稿で2025年最後とかになりそうです。という訳で、どうか首を長くしてお待ちください。
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