アクセルの街の緊急放送を聞いたアクセルの全冒険者は武装を纏って戦闘態勢で街の正門まで集まっている。カズマたちパーティも武装を整えてから街の正門までやってきた。
「えー・・・また来てるよ、あのデュラハン・・・」
アクセルの街の正門に待ちかまえていたのは、一週間前にこの街にやってきた同一のデュラハン、ベルディアであった。例の如く、ベルディアは怒りの形相で待ちかまえていた。
「誰かと思えば、先日のデュラハンじゃない。どうしたのよ?今日は何の用?
アカメは特に臆することなく、軽々しくデュラハンに話しかけた。デュラハンは怒りに満ち震えながら叫びをあげた。
「な・・・な・・・なぜ誰1人として、俺の城に来んのだ!!!この人でなし共があああああああああああああ!!!!!」
「ええ!!?」
ベルディアの叫びを聞いて、冒険者は唖然とし、カズマは驚愕する。アカメは構わず対話を続ける。
「行く必要があるのかしら?私たち、あれから爆裂魔法は撃ち込んでないわよ?」
「撃ちこんでいないだと!!?何を抜かすか白々しい!!!!そこの頭のおかしい爆裂娘は、あれからも毎日通い続け、爆裂魔法を放ち続けておるわ!!!!」
「は?」
ベルディアはめぐみんを指を差してそう言い放った。それにはカズマたちは一斉にめぐみんの方を見る。するとめぐみんはそっぽを向いて白を切る。
「・・・お前えええええええ!!!行ったのか!!あれから行くなって言ったのに、毎日欠かさず行ったのか!!!」
白を切るめぐみんにカズマはめぐみんの頬を引っ張りお仕置きをする。
「いたたたたた!!違うのです!!話を聞いてください!!」
「・・・一応言い訳を聞こうか」
「今までならば、何もない荒野に魔法を放つだけで我慢できていたのですが・・・城への魔法攻撃の魅力を覚えて以来・・・その・・・大きくて、固いものじゃないと我慢できない体に・・・」
「もじもじしながら言うんじゃねーーー!!!」
もじもじと恥ずかしそうに弁明をするめぐみんにカズマがツッコミを入れる。
「おい、めぐみんだけを責めるのは違うだろカズマ」
「確かに・・・こいつは1発魔法を撃ったら動けなくなる・・・となると必然的に共犯者が・・・」
ダクネスの言葉にカズマは納得し、アクアの方を見つめる。アクアは全くうまくない鼻歌を唱えている。
「おーまーえーかあああああああああ!!!!」
「痛い痛い痛い!!!!だって!!だって!!あいつのせいでロクなクエストが受けられない腹いせがしたかったんだもん!!あいつのせいで、毎日毎日店長に叱られるはめになったのよ!!」
子供じみた言い訳をするアクアをカズマは頬をつねってお仕置きをする。
「・・・あー、悪かったわね。こっちの手違いがあったみたいで・・・。あいつらにはカエルの粘液より臭いジャイアント・アースワームの口に放り込ませるって罰を与えるからそれで許してよ」
「うえぇっ!!?あ、アカメ!!?」
「そんな!!?嘘よねアカメさん!!?嘘でしょ!!?嘘だといってよおおおおおおお!!!??」
「自業自得だ!」
アカメのドキツイ罰の内容にめぐみんとアクアは顔を真っ青にしている。だが、当のベルディアは全く怒りの色を変えなかった。
「他人事みたいに言うな!!!この鬼ド畜生の人でなし娘がぁ!!!!!」
「は?なんで怒ってんの?」
「聞け!この愚か者め!我が名はベルディア!!俺が真に頭にきているのは、何も爆裂魔法だけではない!!貴様ら・・・特に鬼畜生には、仲間を・・・家族の死を報いようという気持ちはなかったのか!!!??不当な理由で処刑され、怨念によりこうしてモンスター化する前はこれでも真っ当な騎士のつもりだった!その俺から言わせれば、貴様みたいな鬼畜生の盾にされ、仲間からも見放されたあの妹シーフの娘が不憫すぎて・・・」
「妹シーフって、あの子のこと?」
「へっ?」
ベルディアが説教してる中、アカメは全冒険者の中に紛れて隠れているティアを指を差している。
「・・・ど、どうも~・・・ははは・・・」
「・・・え?」
「いやー・・・まさかデュラハンにそこまで気を遣われていたなんて・・・ははは、なんだか申し訳ないなー・・・ははは・・・」
ベルディアに見つかったティアは本当に申し訳なさそうな顔をしている。それを見たベルディアは目が点になって、唖然となり、そして・・・
「・・・あっるぇええええええええええええええええええ!!!???」
ティアが生きていたという事実にベルディアは目を丸くしながら困惑の叫びをあげる。
「え?え?なんで生きてるの・・・?」
うろたえているベルディアにアクアは小ばかにしたように笑う。
「何々~?このデュラハン、ずーっと私たちを待ち続けてたのー?帰った後、ティアの呪いが解かれちゃったともしらずに?プークスクス!うけるんですけど!ちょーうけるんですけどー!」
普段なら小ばかにしたら1発げんこつをかまそうとするカズマだが、相手が敵ゆえにそれはやらなかった。小ばかにされたベルディアは怒りでプルプルと震えている。
「・・・おい貴様、俺が雑魚共が集う駆け出しの街をいつまでも襲わないと思ってバカにしているのか?俺がその気になれば、街の住民だって皆殺しにすることだってできるのだぞ。いつまでも逃がしてもらえると思ったら、大間違いだぞ」
「見逃してあげる理由がないのはこっちの方よ!今回は逃がしはしないわよ!アンデッドのくせに生意気よ!!ターンアンデッド!!」
アクアはベルディアに向かってターンアンデッドを放った。
「魔王の幹部がプリースト対策もなしに戦場に立つと思うなよ。俺は魔王様のご加護により、神聖魔法にたいして強い抵抗をぎゃああああああああああああああ!!!!!」
話している間にもターンアンデッドはベルディアを捉え、神聖な光がベルディアを包み込む。それによってベルディアが乗る亡霊馬は浄化できたが、ベルディア本人はじたばたと転がりこんだ後、煙をプスプスあげながら立ち上がる。
「ねぇカズマ、こいつ変よ!私のターンアンデッドが効いてないわ!」
「いや、結構効いてたような気がしたんだが。ぎゃあああって言ってたし」
ベルディアにターンアンデッドが効いていないことにアクアは若干戸惑っているが、カズマは冷静にそう返答した。
「く、くくく・・・話は最後まで聞くがいい。魔王様から特別なご加護をいただいたこの鎧と俺の力により、たかがプリーストの浄化魔法など効かぬわ!・・・でもお前、本当に駆け出しか?駆け出しが集まるところだろ、この街は。本当、どうなってるんだ・・・?」
だが一応はダメージは入っているのか、ベルディアはなぜアクセルの街のプリーストにダメージを与えられるのか困惑している。
「・・・まあいい。本来はこの街周辺に強い光が落ちてきたなどといううちの占い師がうるさく騒ぐから来たが・・・もう、この街を消してしまおう、うん、そうしよう」
国民的キャラクター並みの理不尽な発言をするベルディア。
「わざわざこの俺が相手をしてやるまでもない。出でよ、アンデッドナイトたちよ!!この駆け出しの冒険者たちに地獄を見せてやるがいい!!!」
ベルディアがそう言い放つと、地面から禍々しいオーラが放ち、彼の配下であるアンデッドの騎士、アンデッドナイトがわらわらとはい出てきた。
「あっ!あいつ、アクアの魔法が思った以上に効いてビビったんだぜきっと!自分だけ安全なところに逃げて、部下を使って襲うつもりだぜきっと!」
「へぇ、ずいぶんとビビりなヘタレなのね。」
「ち、違うわい!!魔王の幹部の称号はこんなことでビビってちゃ務まらんだろう!!まずは雑魚を片付けてからボスの前に・・・」
「セイクリッド・ターンアンデッド!!!」
「ひぎゃああああああああああああああ!!!!!」
カズマの発言にうろたえてるベルディアの話の途中でアクアがターンアンデッドより強力な浄化魔法、セイクリッド・ターンアンデッドを放った。
「あああああああ!!目が!!目があああああああ!!」
セイクリッド・ターンアンデッドを受けたベルディアがごろごろとのたうち回り、煙をあげながらよろよろと立ち上がる。
「ど、どうしようカズマ!私の浄化魔法がちっとも効かないんですけど!」
「ひぎゃあああって言ってたし、絶対すごく効いてる気がするが?」
またも浄化魔法が効いていないベルディアを見て、アクアがまたもうろたえるが、カズマはいたって冷静だ。
「こ、この・・・!人の話は最後まで・・・ええいもういい!!!アンデッドナイト共!!今すぐこの街の連中を皆殺しにしろ!!!」
何とか立っているベルディアの指示でアンデッドナイトたちはいっせいに動き出した。
『緊急クエスト!!
魔王軍の幹部、ベルディアを討伐せよ!!』
「おわあああああああ!!ぷ、プリーストはいるか!!は、早くプリーストを!!」
「誰か!!聖水を持っていたら今すぐに使ってええええ!!」
アンデッドナイトたちが街に侵入しようとする姿を見て、冒険者たちはうろたえ始めた。
「ははははは!さあ、貴様らの恐怖と絶望の叫びをこの俺に捧げ・・・て、ん?」
『んん?』
アンデッドナイトの動きに違和感を覚えたアンデッドナイトと全冒険者たちはアンデッドナイトたちを見つめる。
「・・・えっ!!?ひゃあああああああああ!!!!」
アンデッドナイトたちは街ではなく、アクアの方を目掛けて来ている。それを見たアクアはあまりの勢いで必死に逃げ出す。
「なんで!!?なんで私ばっかり狙われるの!!?私、女神なのに!!日頃の行いもいいはずなのに!!」
「「いやそれはない」」
「わああああああああ!!双子に否定されたああああああああ!!!」
必死に逃げ出すアクアの発言を拾い上げた双子は日ごろの行いは悪いという意味を込めて否定する。
「ああ!!アクアだけずるい!!私は本当に日頃の行いはいいはずなのにどうしてだ!!?」
『知らん』
ダクネスは変な意味でアクアを羨ましがっている。
「お、おいお前たち⁉なぜ他の冒険者たちではなくそのプリースト1人に執着するのだ!!?戻ってこーい!!!」
ベルディアもそれを見て本気で焦っている。だがアンデッドナイトがああまでアクアに執着するのは、アクアの女神としてのオーラを本能的に感じ取り、救いを求めているからなのである。
「めぐみん!あのアンデッドの群れに爆裂魔法を撃ち放てないか!!?」
「ええ?ああもまとまりがないと・・・撃ち漏らしが・・・」
カズマがアンデッドナイトを葬ろうとめぐみんに爆裂魔法を撃てないか聞いていると・・・
「わああああああ!!カズマさん!!カズマさあああああああん!!」
「わあ!?バカ!!こっちに来るなあああああ!!!」
「「ひゃああああああああ!!?」」
アクアがアンデッドナイトを引き連れて冒険者全員のところまでやってくる。それを見たダクネス以外の冒険者全員はアクアから逃げ出す。その際にカズマと双子が未だにアクアと共に追いかけまわされている。ダクネスはただ1人、ぽつんと立っていた。
「バカ!!アクア!!こっちに来んな!!」
「このアホ!!考えなし!!おたんこなす!!【ピーーッ】女ぁ!!そいつらを連れて来るんじゃないわよ!!」
「そうだよ!!そいつらはアクアが標的なんでしょ!!?何とかしてきてよ!!ご飯作ってあげるからさあ!!」
「私が作ってあげるから何とかしてぇ!!!こいつら、ターンアンデッド撃っても撃っても消し去れないのお!!」
あの甘やかされたがりのアクアがご飯を作ってあげる発言から、どうにも数が多すぎて手におえない状況らしい。
「もうこの際面倒だわ!!ティア!!そいつを蹴り上げなさい!!そいつさえ転ばしてしまえば、私たちは助かるのよ!!」
「わかったーーーー!!アクアーーーー覚悟ぉーーーー!!」
「いやああああああああ!!ちょっと待って!!蹴りに来ないでぇ!!私を1人取り残そうとしないでぇ!!!」
「いや待て!!俺たちはこいつらを引き付けるぞ!!一気に片付けられる方法を思いついた!!」
アカメの指示で腹黒ティアが出てきたところでカズマが作戦を思いついたのかティアの蹴り行動を止める。双子はカズマに従い、現状維持を続ける。
「めぐみん!!魔法を唱えて待機してろ!!」
「え?了解です」
「双子!!アクア!!ついて来い!!」
「「わかった!!」」
「え⁉え⁉何がぁ!!?」
カズマはめぐみんに魔法詠唱をしながらの待機を命じ、双子とアクアを連れてそのままベルディアの方まで直行する。
「なっ!!?」
「全員、散開!!めぐみん、今だあああああ!!!」
カズマと双子とアクアはベルディアに直撃する直前で散開する。これによって、アンデッドナイトはこのままいけばベルディアへと突っ込むであろう。これが狙いなのだ。
「何という絶好のシュチュエーション・・・!感謝します!!深く感謝しますよカズマ!!」
めぐみんはカズマに感謝しながら狙いをアンデッドナイトとベルディアに定める。
「我が名はめぐみん!!紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者!!我が力、見るがいい!!」
アンデッドナイトがベルディアのところまでやってきたところで、めぐみんは魔力を解き放つ。
「エクスプロージョン!!!!!!!!」
ドガアアアアアアアアアアン!!!!!!!!
「うぎゃああああああああああああ!!!???」
めぐみんの爆裂魔法の大爆発はベルディアとアンデッドナイトを巻き込む。爆発が晴れると、その場にはクレーターが出来上がっていた。そう、カズマの狙いとは、ベルディアの元にアンデッドナイトを集めさせて、めぐみんの爆裂魔法で一気に片付けることだったのだ。
「くっくっく・・・我が爆裂魔法を目の当たりにして、誰1人として声を出せないようですね・・・。・・・はふ・・・すごく・・・気持ちよかった・・・です・・・」
魔力を使い切っためぐみんはぐったりとしてその場に倒れこむ。
「おーい、おんぶはいるー?」
「お願いしまーす」
ティアはめぐみんの元まで駆け寄り、動けなくなっためぐみんをおんぶする。
「やったぁ!!頭のおかしい紅魔の娘がやりやがったぞ!!!」
「名前と頭がおかしいだけで、やる時はちゃんとやるじゃないか!!!」
「見直したぜぇ、頭のおかしい子!!!」
『おおおおおおおお!!頭のおかしい子、バンザーーーイ!!!!』
全冒険者たちはめぐみんの活躍を見て大いに騒いでいる。ただ、さっきから出てる頭のおかしい発言はめぐみんをイラつかせている。
「・・・すいません、ちょっとあの人たちの顔を覚えておいてください。今度絶対爆裂魔法をぶっぱなします」
「まぁまぁ、今はいいじゃん。こうしてアンデッドナイトとデュラハンを倒したんだし」
怒りを燃やしているめぐみんをおんぶしているティアがそう言い放つと・・・
「くっくっくっくっく・・・はっはっはっはっは・・・面白い・・・はっははははははは!!!」
クレーターの中より、爆裂魔法をまともにくらったはずのベルディアが現れた。さすがは魔王軍の幹部といったところか。アンデッドナイトは倒せても、ベルディアだけは倒しきることはできなかったようだ。
「面白い・・・面白いぞ!!まさか本当に配下を全滅させられるとは思わなかった!その功績を称え・・・」
「どうやら・・・ここからが本番みたいね」
「カズマ、私の後ろに下がっていろ」
「この俺自ら、貴様らの相手をしてやろう!さあ!どこからでもかかってくるがよい!」
ベルディアが背中に担いでいる大剣を取り出した瞬間、アカメとダクネスが身構える。
「ビビる必要はねぇ!すぐにこの街の切り札がやってくる!」
「ああ!魔王軍の幹部だろうがなんだろうが関係ねぇ!!」
「一度に掛かれば死角ができる!全員であのデュラハンをやっちまうぞぉ!!!」
この街の冒険者の中でも前衛職のメンバーはベルディアに突っ込んでいき、周りを囲んでいく。
「ほぅ・・・貴様ら、よほど先に死にたいらしいな」
そう言ってベルディアは自分の頭を上空に投げ放つ。その瞬間に、カズマたちを含めた後ろに控えた冒険者全員がぞわりと嫌な予感がした。
「やめろぉ!!!行くなぁーーーーーー!!!!」
カズマが制止の声を上げるがもう遅い。前衛職の冒険者全員の攻撃を余裕があるように躱し、大剣で回りの大気ごと薙ぎ払った。
『ご・・・はぁ・・・』
ベルディアの前に出た前衛職の冒険者は全員、大剣に斬られて、成す術ものなく倒れてしまう。
「たわいもない・・・。さて、次は誰だ?」
目の前の圧倒的な力の前に、カズマたちパーティ以外の冒険者たちは全員、ベルディアに恐れ戦いた。
「あ・・・あんたなんか・・・今にミツルギさんが来たら、一撃で斬られちゃうんだから!!」
「ほう・・・あの魔剣の勇者、ミツルギのことか・・・」
この街の切り札的存在であるミツルギの名前を聞いて、カズマは本気で焦った。なぜならそのミツルギはアカメが魔剣を売り払ってしまったゆえに、どこかにある鍛冶屋で魔剣を取り返そうとしている最中だからだ。だからいくら待ったところでミツルギは来ないかもしれないのだ。
「お姉ちゃん・・・もしかして・・・噂の魔剣の勇者って、あのムカつくナルシスト・・・?」
冒険者全員の反応からして、ティアはミツルギが噂になっている魔剣の勇者だと気が付いた。
「ああ・・・なら残念だけど、そいつなら来ないわよ」
『え?』
ミツルギが来ない発言をしたアカメに冒険者全員はアカメに注目する。
「そいつ、よほどの武器管理がなってないのか、その魔剣をなくしてしまって、それを求めてこの街から出ていったわよ」
『なにいいいいいいいいいい!!!???』
「お姉ちゃん!!?今それを言う!!?」
(こ、こいつぅ!!?爆弾発言しやがったうえに自分のやらかしたことをなかったことにしやがったぁ!!?)
アカメの嘘が混じった真実に冒険者全員は驚愕の声を上げた。自分のやらかしたことを消そうとしているアカメの嘘にカズマは心の中でツッコまずにはいられなかった。そして、最悪なことに・・・
「・・・ではやはり、この街に残っているのは、雑魚のみというわけか」
この会話はベルディアにバッチリ聞かれてしまっているからだ。
「も、もうダメだ・・・おしまいだぁ・・・」
「終わった・・・俺の人生、ここで終わっちまった・・・」
「ちくしょう!!殺すなら殺せぇ!!」
「いやぁ!!まだ死にたくない!!弟だっているのにぃ!!」
頼みの綱であるミツルギが来なくなった状況下に、冒険者全員は絶望したり、取り乱したりしている。
「諦めないで!!!」
『!!!』
そんな中、ティアが背負っためぐみんを岩の近くにおろし、冒険者全員に一喝した。
「ここで諦めたら、誰がこの街を守れるの?この街を守れるのは・・・私たちだけなんだよ!私たちが力を合わせて立ち向かえば・・・きっと・・・!」
「そもそもな話、自分たちの街を他人に守らせようって考えが間違っているのよ。私たちは弱くても、力ある冒険者よ。全員の力を結集させさえすれば・・・」
「「魔王軍幹部だって、必ず勝てる!だから諦めないで!」」
双子たちの一喝により、目を覚ましたかのように、冒険者たちの目が変わる。
「そうだ・・・俺たちがやらなければ、この街は終わりだ・・・」
「そうとも・・・俺たちは冒険者だ!俺たちだって・・・やる時はやるんだ!」
「みんなで協力し合えば、きっと・・・そうだよね!私たちがやらなきゃ!」
『おおおおおおおおおお!!!!』
全員が目の色を変え、ベルディアを倒そうという意気込みが強くなる。それを見ていたカズマは非常に申し訳なさそうな表情をしている。
(すいません・・・ミツルギさんが来ないの・・・俺の仲間のせいなんです・・・本当にすいません・・・)
冒険者全員にたいして、カズマは心から全員に謝罪を心の中で述べた。
「ほぅ・・・その意気やよし・・・では望み通り・・・全員まとめて消し去ってやろう!!!」
ベルディアは冒険者全員に向かって、自分の大剣を振るった。
「はああ!!」
そのベルディアの一撃を、ダクネスが剣を抜き、受け止める。
「よくも・・・よくもみんなを!!!」
倒れている冒険者の中にはダクネスの知り合いがいたようで、ベルディアに向けてダクネスは怒りをぶつけている。
「ダクネス!いったん体制を立て直す!戻れ!」
「守ることを生業とする者として!譲れないものがある!!」
カズマはダクネスに戻るよう説得するが、ダクネスは一歩も引くつもりはない。
「その大剣で、見せしめとして、淫らな責め苦を受けるさまを・・・みんなの前で晒すつもりだろうが・・・やれるものならやってみろ!!いや!!むしろやってみせろぉ!!!!」
「変な妄想はよせぇ!!!!俺が誤解されるわ!!!!」
ダクネスとベルディアはいったん距離を取り、そしてダクネスはベルディアへと突っ込んでいく。
「勝負だ!ベルディアぁ!!!」
「首なし騎士として、相手が聖騎士とは是非もなし!!」
「はああああああ!!!」
ダクネスはベルディアに向かって両手剣を3連撃放ち、攻撃を仕掛ける。だが・・・
ベコンッ!!バコンッ!!
「・・・ふぁ?」
攻撃は全て近くにあった岩に当たり、ベルディア本人は無傷で済んでいる。大口をたたいておきながら一撃も当てられず、ダクネスは恥ずかしさで顔を赤くする。
(やだもぉ~!動かない相手にすら外すなんて、恥ずかしい!!この人俺の仲間なんですけど!!?)
もちろん仲間のそれを見ていたカズマも恥ずかしさでいっぱいになっている。
「何たる期待外れだ・・・もう貴様に用はない!!!」
ベルディアは興が冷めたのか、その大剣で容赦なくダクネスを斬りつけた。
「ああっ!!わ、私の鎧がぁ!!?」
だがダクネスはただ鎧に傷がついただけで本人はたいした怪我を負っていない。
「・・・な、なんだ貴様は?俺の剣を受けてなぜ斬れない?その鎧ってまさか相当な防御力を?いや、それにしても・・・?なぜだ?」
大したダメージを負っていない事態にベルディアは困惑を隠せないでいた。
「ダクネス邪魔よ!どきなさい!!」
「お、おいアカメ⁉行くな!!」
「やめろ!!来るんじゃない!!せっかくの楽しみが・・・!」
アカメがベルディアに向かって突撃している姿を見て、カズマとダクネスが制止の声をあげる(ダクネスは変な意味で)。
「今度は鬼畜生のシーフか!!血も涙もない貴様は・・・俺が始末してやりたいと、思っていたぁ!!!」
ベルディアは自分の頭を上空に投げ、前衛職の冒険者と同じように大剣を振るい、連撃を放つ。だがアカメはその大剣を一撃一撃を躱し、最後の一撃はマジックダガーを振るって軌道を逸らさせる。
「ば、バカな・・・この俺の攻撃を全て見切った・・・だと・・・?このシーフ、何者だ・・・?」
ベルディアが困惑していると・・・
ペキッ!
ベルディアの持っていた大剣に微かながらのヒビが入り始めた。
「んなぁ!!?魔王様のご加護を受けた剣に微かなヒビが!!?さっきの一撃か!!?シーフは攻撃力が低いはずだろう!!?それなのに・・・このさっきのプリーストといい、頭のおかしい爆裂娘といい、このクルセイダーといい、なんなのだこの街は!!?」
明らかに普通でない能力にベルディアはもう困惑気味だ。
「よそ見してる、場合かしら!!」
「おわっ!!」
アカメはマジックダガーをベルディアに向かって振るったが、大剣を壊されることを危惧したベルディアはアカメの攻撃は避けている。
「そらそらそら!!避けてないで反撃したらどうかしらぁ!!」
「くそぅ!!この鬼畜生め!!いつまでも調子に・・・」
「バインド!!!」
「うおっ!!誘導か!!」
避け続けているベルディアにティアがバインドを放った。どうやらアカメはベルディアをティアの近くまで誘導していたようだ。それに気づいたベルディアはそのバインドを躱した。
「何外してるのよこの下手くそ!!あれが決まれば身動き取れなくなるのに!!」
「はあ!!?相手は動いてるんだから外したって仕方ないじゃん!!それに、バインドを使って動きを封じたって、一時的なものでしょうが!!」
「そんなもん何度でもバインドをかければいいだけの話でしょ!!あんたには知恵ってものがないのかしらこの、腹黒!!」
「むっか!!なんだったら標的をお姉ちゃんに変えてあげてもいいんだけど!!?」
戦闘中にもかかわらず、口喧嘩を始める双子。これによって大きな隙が生まれる。
「・・・なんなんだこいつら?急に仲間割れを?というか、こいつら本当に姉妹なのか?・・・まぁいいい・・・その背中を見せたのが命とりだと知れ!!!」
ベルディアは困惑しながらも隙が生まれた双子に向かって大剣を振るった。
「やらせん!!!」
「邪魔をするなクルセイダー!!!」
口喧嘩する双子の危機をダクネスが前に出てそれを救った。ベルディアは容赦なくダクネスに大剣を一撃、二撃、三撃、四撃をダクネスに放った。
「ぐわあああああ!!!」
「「!ダクネス!!」」
ベルディアの攻撃によって、ダクネスの鎧はさらに砕けていった。ダクネスが自分たちを庇ってくれたことに気付いた双子。そして双子はベルディアの攻撃によって傷ができてしまったことにも気づいた。
「ダクネス・・・あんたその怪我・・・」
「私たちのせいで・・・」
「仲間を守るためだ。この程度の傷など、どうということなどない。それに・・・」
ダクネスははぁはぁと興奮した様子を見せ、言葉をさらに続ける。
「このデュラハンは、やはりやり手だぞ!!!」
「「・・・うん?」」
「奴の一撃は私の鎧を少しずつ削り取るのだ!全裸に剥くのではなく、中途半端に一部だけ鎧を残し、私を・・・この公衆の面前で裸より煽情的な姿にして辱めようと!!」
「えっ?」
ダクネスの発言にベルディアは攻撃をやめて戸惑っている。そんなベルディアにダクネスはお構いなしだ。
「さあ来い!!魔王軍の辱めとやらはそんなものか!!もっと打って来い!!さあ!!!」
「時と場合を考えろ!!!この筋金入りのド変態がぁ!!!!」
「ド・・・変・・・態・・・!!」
こんな時でも自重しないドMのダクネスにカズマがツッコミを入れる。ダクネスは変態という単語に反応する。
「か、カズマこそ時と場所を考えろ!!公衆の面前で魔物に痛めつけられているだけでも精いっぱいなのに・・・お・・・お前とこのデュラハンはいったい2人がかりで、この私をどうするつもりだぁ!!?」
「「どうもしねぇよ!!!」」
やっぱりかなり興奮しきってるダクネスにカズマとベルディアはきっぱりとそう言い切る。
「でもまぁ、時間は稼げたぜ!双子!こっちに戻って来い!!」
「「わかった!」」
双子はカズマの指示に従い、カズマの元まで戻っていく。
「よし!いくぞぉ!!クリエイト・ウォーター!!!」
カズマはクリエイト・ウォーターをベルディアに向けて放った。ベルディアは水を躱すが、その水がダクネスにかかってしまう。
「・・・突然こんな水責めの仕打ちとは・・・嫌いではないが・・・時と場所を考えてくれ」
「うわぁ・・・カズマ・・・」
「スケベ野郎」
「ち、違う!!そういうプレイじゃない!!」
水浸しになるダクネスは頬を赤らめており、その様子にティアとアカメはカズマに非難の目を向ける。カズマは必死になって否定する。
「これはな!こうするんだよ!フリーズ!!」
カズマはベルディアが立っている水たまりに向かって初級魔法、フリーズで小さな冷たい風を放った。そのフリーズによって、水たまりが凍った。それによってベルディアの足元も凍り付く。
「!ぬぅ!!ぬかった!!だが・・・俺の強みが回避だけだと・・・」
「回避しずらくなりゃそれで十分だ!アカメ!ティア!お前らもスティールは覚えてるな!あいつの武器を奪うぞ!!」
「!なるほど・・・そういうことなんだね!」
「試す価値はありね・・・」
カズマの意図を察した双子はカズマの作戦を了承し、スティールを発動させる。
「「「スティ―――ル!!!」」」
3人はベルディアに向かってスティールを発動させたが・・・ベルディアの武器は未だに手元に持ったままで何も奪われていない。
「・・・なるほど・・・悪くはない手だったな・・・」
「くっ・・・スティール失敗・・・!」
「やっぱり相手は仮にも魔王軍幹部・・・!」
「いくらアヌビス出身の貴様らといえど、俺とのレベルの差がありすぎたな。もう少しレベルがあれば、俺も危ないところであったな・・・」
「くっ・・・盗賊職のみんなも、あいつの武器を奪うんだぁ!!」
『スティ――ル!!』
他の盗賊職の冒険者もベルディアにスティールを放つが、武器は一向に取れる気配はない。
「さて・・・このくだらない茶番を終わりにしよう」
ベルディアの足に凍り付いた氷はベルディアがほんの少し歩いただけで簡単に砕かれていった。ベルディアはカズマの元まで近づいていく。
「こうなったら・・・私があの武器を破壊してやるわ!ティア!援護を!」
「わかった!あの剣にはヒビが入ってる!あと1発さえ当てれば!」
ティアはバインドでベルディアの動きを封じようとするが、ベルディアはそれを難なく躱す。それに続いてアカメもベルディアの剣に向かってマジックダガーを振るうが、ベルディアはそれさえも躱す。
「もう貴様らの攻撃など二度と当たらんよ!!!」
ベルディアはアカメに向かってマジックダガーに触れないようにしながら大剣を振るう。アカメは何とかベルディアの攻撃を避け続ける。
「どこを見ている!お前の相手は私だ!!」
「ぬるいわ!!勇敢で愚かなクルセイダー!!」
ダクネスがベルディアに向かって剣を振るうが、剣を当てられないと理解しているベルディアは臆することなくダクネスに大剣を振るう。3人がかりで戦っているというのに、ベルディアに傷どころか武器さえも破壊することが叶わず、悪戦苦闘である。
(思い出せ・・・相手はデュラハンだ・・・!ロールプレイングゲームでは・・・何が弱点だった?あいつをよく観察しろ・・・。アカメはともかく、なんであいつは俺の出した水を大袈裟に避けたんだ?デュラハンの弱点は・・・アンデッドモンスターの弱点は・・・)
「ぬううううん!!!」
「ぐわあああああ!!!」
「「ダクネス!!」」
カズマがベルディアの弱点を探っている間にも、ベルディアは大剣を振るい、3人まとめて薙ぎ払おうとした。ダクネスが庇ったおかげでなんとか双子には当たらずに済んだが、状況はかなりやばい。
(!そうか!!デュラハンの弱点は!!)
「さて・・・ではそろそろ・・・クルセイダーもろとも、貴様らを地獄へと連れていってやろう。さらば・・・アヌビスの双子のシーフ!!そして、勇敢なるクルセイダー!!」
「クリエイト・ウォーター!!」
ベルディアは大剣でダクネスもろとも双子を貫こうとした瞬間、ベルディアの弱点に気が付いたカズマがベルディアに向かってクリエイト・ウォーターを放った。ベルディアはその水を避ける。
「だから何のつもりだ小僧!!」
「水だあああああああ!!魔法使いの皆さーーん!!あいつに水の魔法をーーーー!!」
『クリエイト・ウォーター!!』
カズマの指示によって、ベルディアの弱点に気付いた魔法使い職の冒険者は全員、クリエイト・ウォーターを発動させる。
「よせ!そんな攻撃・・・」
『クリエイト・ウォーター!!!』
「うおおぉぉ!!?き、貴様らぁ!!いい加減・・・おわぁ!!?」
魔法使い職の冒険者とカズマはクリエイト・ウォーターを放ち続けるが、一向にベルディアに当たらない。
「当たれ!当たれぇ!くそ・・・このままじゃ魔力が尽きちまう!!」
「ねぇねぇ、いったい何の騒ぎなの?なんで魔王の幹部と水遊びをやってるの?バカなの?」
(こいつぅ・・・!!)
状況に全く気付いてないアクアにカズマはいい加減アクアを殴ろうかと考えたが、今はそれどころではない。
「見てわかんないのか!!?あいつは水が弱点なんだよ!!お前、一応かろうじてでも水の女神なんだろ!!?水の1つくらい出せるだろこの駄女神!!!」
「あんた、そろそろバチの1つでも当てるわよ無礼者!!洪水クラスの水だって、私に掛かれば出せるんですからね!!」
「出せるのかよ!!?」
「ねえ、謝ってよ!!水の女神様を駄女神とか言ったことをちゃんと謝ってよ!!」
カズマの失礼発言に謝罪を要求するアクアだが、何度も言うが今はそれどころではない。
「後でいくらでも謝ってやるから!!さっさとやれよこのなんちゃって女神がぁ!!」
「あああ!!今なんちゃって女神って言ったぁ!!あんた見ていなさいよ・・・女神の本気を見せてやるんだから!」
アクアが手を天にかざすと、アクアの周辺に小さな水の玉がふよふよと漂う。
「!!こ、これは・・・!」
アクアから放つ神々しいオーラにベルディアは自らの危険を察知する。
「この世にある我が眷属たちよ・・・水の女神、アクアが命ず・・・我が求め、我が願いに応え、その力を世界に示せ!」
「い、いかん!!」
ベルディアはすぐにその場から離れようとするが、ダクネスががっちりとベルディアの足を固定させる。
「は、離せこのド変態騎士がぁ!!!」
「なんという罵倒・・・♡」
思うように動けなくなったベルディアに、アクアは、自らの力を一気に解放する。
「セイクリッド・クリエイト・ウォーターーー!!!!!」
アクアが上級の水の魔法、セイクリッド・クリエイト・ウォーターを放つと、空から大量の水が滝のように発生する。
「おわあああああ!!!水があああああああ!!!」
大量の水はダクネスも巻き込んではいるが、ベルディアに命中。だが・・・
「お姉ちゃん・・・これ・・・多すぎない・・・?」
「これ・・・明らかに・・・」
「もういい!!!もういいって言ってるだろアクア!!今すぐ止め・・・」
バシャアアアアアアアン!!!!
明らかに水を出す量を間違えているせいで双子とカズマも巻き込み、そして全ての冒険者も水に巻き込まれてしまう。
「あぶ・・・ちょ・・・おぼ・・・おぼれ・・・がぼぼ・・・」
「めぐみーん!!しっかり掴まってー!流されないようにー!」
「殺す!!あのアマ絶対ぶち殺す!!」
「覚えてろあの駄女神ぃ!!!」
当然めぐみんもこの洪水に巻き込まれ、ティアが何とか流されないようにしている。アカメはこの事態を引き起こしたアクアに激しい殺意を覚える。そして、やがて洪水が引いていくと、辺り一面は水だらけ、街の城壁もところどころ壊れている。そんな状況下でベルディアはよろよろと立ち上がる。
「くぅ・・・何を考えているのだ・・・バカなのか・・・大馬鹿なのか貴様ぁ・・・!!」
予定外の事態ではあったが、ベルディアは弱体化している。
「私の活躍であいつが弱まってるわ!!チャンスよカズマ!!」
「お前本当に覚えてろよ駄女神!!行くぞ、双子!!」
「汚名返上させてもらうよ!!」
「今度こそ、そのひび割れ武器を盗ませてもらうわよ!!」
カズマと双子たちはベルディアの武器を奪おうとスティールを放とうとする。
「そうはさせるかぁ!!!その前に、貴様らを始末してくれる!!!」
ベルディアは自分の頭を上空に放り投げ、カズマたちに向かって切りかかる。が、行動はカズマたちの方が早かった。
「「「スティ―――ル!!!!」」」
ベルディアより早い行動によって、先にカズマたちがスティールを発動させる。3人の光が晴れると、カズマにはベルディアが持っていた大剣、ティアには隠れていた短剣が取れた。
「よし!スティール成功!これであいつは無防備だ!」
「こっちも取れた!あいつ、万が一を考えてこんなものまで隠してたんだ!」
「マジか!やっぱ3人同時にやって正解だった・・・」
「お姉ちゃんは何取れたの?」
「・・・・・・」
ティアはアカメに何が取れたかと聞いているが、アカメは返答がない。
「・・・あ、あのぅ・・・」
そこでベルディアの申し訳なさそうな声が聞こえてきた。その発声場所は、アカメの方からだ。
「剣もそうですけど・・・その前に・・・首、返してもらえます?」
アカメの手にはなんと、ベルディアが放ったであろう自分の頭があった。そう、アカメがスティールで取れたのは、ベルディアの頭だったのだ。
「・・・・・・うふっ♪」にたぁ・・・
ベルディアの頭を見てアカメは非常に悪党らしいゲスの笑みを浮かべている。
「ねぇあんた・・・?お腹すかない?今ちょうどいいものを持ってるんだけど・・・食べるかしら?」
「へ?いや・・・あの・・・首・・・」
ベルディアが戸惑っている間にアカメは自分のポケットから唐辛子を取り出した。
「これ、うちでよく取れる唐辛子なんだけど・・・疲れには抜群なのよ?食べるでしょ?食べるわよね?」
「い、いや・・・結構・・・」
「遠慮しなくてもいいのよ・・・そのまま・・・食べさせてあげる・・・おらぁ!!!」
アカメは持っていた唐辛子をベルディアの口ではなく、目に突っ込ませた。しかもご丁寧に両目に。
「ぎぃぃぃやああああああああああ!!!!!!???目があ!!!目があああああああああああああ!!!!!!」
それには当然、ベルディアの本体はごろごろと地面を転がっていく。
「あー、スッキリした。カズマ、後の対処はあんたに任せるわ」
アクアの仕打ちをベルディアで果たしてスッキリしたのか後はカズマに丸投げする。
「・・・ぐぇっへへへへへへ・・・」にたぁ・・・
今度はベルディアの頭がカズマに渡ったことにより、カズマはアカメ以上のゲスい笑みを浮かべている。
「おーいお前らー!サッカーしようぜーー!サッカーっていうのはなぁ!!」
ゲシィッ!
「どわぁ!!?」
カズマはベルディアの頭をサッカー感覚で蹴り上げてそれを他の冒険者たちに手渡す。
「手を使わず、足だけでボールを扱う遊びだよー!」
他の冒険者たちの手にベルディアの頭が渡った瞬間、冒険者たちはベルディアの頭をサッカー感覚で遊んでいる。
「わははは!これおもしれー!これがサッカーか!」
「おーい!こっちにもパスしてくれー!」
「やめっ!!?ちょ・・・いててて!!頭痛いし目も痛い!!もうやめてええええええ!!!」
あまりにも哀れなその光景は何というか、魔王軍幹部とだいぶかけ離れてるような気がする。
「バインド!!」
「うおっ!!?」
ティアはじたばたするベルディア本体にバインドを使い、身動きを取れなくさせる。
「おいダクネス、一太刀食らわせたいんだろ?仲間の仇、うって来いよ」
カズマの言葉にダクネスは首を縦に頷き、立ち上がった。
「これは!お前に殺された、私が世話になったあいつらの分だぁ!!この一撃を・・・まとめて受け取れぇ!!!」
「ぐはぁ!!!」
ダクネスは動けなくなったベルディア本体に剣による斬撃を与えた。元々の攻撃力が高いおかげで、ベルディア本体は鎧と共に大きなダメージを与えた。
「ベルディアの鎧が壊れたよ!今なら・・・」
「アクアー!!今だあ!!やっちまえ!!」
「任されたわ!!」
アクアは自身の杖を構え、ベルディアに向かって浄化魔法の態勢を整える。
「セイクリッド・ターンアンデッド!!!」
「ちょっ・・・ま・・・ほあああああああああああああああ!!!!!」
ベルディアの鎧が壊れたことによってアクアのセイクリッド・ターンアンデッドが確実に効き、ベルディアは離れていった頭ごと浄化され、天へと召されていった。戦いが終わった後、曇っていた空が晴れていった。ダクネスは膝を地につけ、祈りをささげている。
「ダクネス、何をやってるのです?」
「祈りをささげている。デュラハンは不条理な処刑で首を落とされた騎士が恨みでアンデッド化するモンスターだ。奴とて、モンスターになりたくてなったわけではないのだ。ならばせめて、同じ騎士として、瞑目を捧げてやらねばな」
「・・・きっと、ダクネスの思いは、あのデュラハンに伝わると思うよ」
「ありがとうティア・・・そう言ってもらえると、あいつも少しは浮かばれるだろう」
ダクネスは空を見つめ、この戦いで失った仲間との思い出を振り返っている。
「私のことを、鎧の中はガチムチなんだぜと大嘘を流してくれたセドル・・・うちわ代わりにその大剣で扇いでくれ。何なら当ててもいいぜ。当たるんならなと私をからかったヘインズ・・・そして・・・1日だけパーティに入れてもらった時、なんであんたはモンスターの群れに突っ込んでいくんだと先叫んでいたガリル・・・。皆・・・あのデュラハンに斬られた連中だ」
ダクネスは仲間たちを思い、そして静かに涙を流した。
「・・・叶うことなら・・・もう1度会って・・・一緒に酒でも飲みたかったな・・・」
なんとも感動的なシーンが流れていた時・・・
「「「お・・・おう・・・」」」
死んだことによりもう会うことが叶わなくなったと思われていた3人・・・セドル、ヘインズ、ガリルの3人が申し訳なさそうに立っていた。
「剣が当たらないこと・・・実は気にしてたんだな・・・。あの・・・その・・・悪かったな。今度奢るからよ・・・」
「お、俺も・・・悪かったな・・・。本当、すまなかったな・・・」
「俺も・・・変な噂を立てちまって・・・本当、ごめん・・・」
「・・・生き・・・てる・・・」
死んだと思っていた3人が実は生きていたことにダクネスは恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
「この私くらいになると、死にたてほやほやの死者なんてリザレクションでちょちょいと蘇生できるわよ。よかったじゃない!これでみんなでお酒が飲めるわよ!」
どうやらみんなが戦っている間、ベルディアに斬られた冒険者たちの蘇生を行っていたようだったのだ。
「よかったわね、ダクネス。あんたお望みの羞恥プレイよ。しばらくはこのネタで、いじり倒してやるわ。感謝しなさい」
「・・・こ・・・こういう攻めは・・・私の望む羞恥プレイとは違うからぁ!!うえええええええええん!!」
ダクネスはあまりの恥ずかしさにその場で泣き出してしまうのだった。
『緊急クエスト!!
魔王軍の幹部、ベルディアを討伐せよ!!
クエストクリア!!』
次回予告的なもの
我が名はめぐみん。アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者。
後生に我が偉業を伝えるために、ここに書き記す。
希代の魔法使いめぐみんの強大な魔力は魔王軍を震え上がらせていた。
救われた人々は心から崇め奉り、子供たちはめぐみんに夢中だった。
ギルドには出待ちファンが殺到し、整理券が配られるほどであった。
偉大なる魔法使いの書 序章
これを読んだとある女性アークウィザードの反応
???「・・・確かに紅魔族は魔力が高くて、魔王軍を怯えさせられるのは認めるけど・・・これどっちかっていうと、ただの願望なんじゃないか?頭のおかしい紅魔族らしい発想だけどよ・・・」
めぐみん「おい、私の書いた伝説に文句があるのなら聞こうじゃないか」
次回、この残念パーティに1億の借金を!