このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

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この残念パーティに1億の借金を!

魔王軍の幹部、ベルディアを討伐した翌日、今日の冒険者ギルドはワイワイと騒いでいた。それもそうだ。魔王軍幹部にはそれぞれに高い賞金がかけられており、その1人を倒したのだ。冒険者全員にその賞金の一部をもらったのだ。騒がずにはいられない。そして、ベルディア討伐のMVPであるカズマたちパーティはまだ来ていないカズマを置いて、わいわいと飲んだり食べたりしている。

 

「アクアー!ティアー!まだまだ・・・こんなもんじゃあないわよねぇ!」

 

「もっちのろんよー!せっかくの祝杯だものー!飲んで飲んで飲みまくるわよー!」

 

「これで10杯目・・・記録更新するぞーーー!!」

 

双子とティアはシュワシュワで飲み比べをしており、もう10杯というところまできている。3人の顔はほんのりと赤くなっている。その様子を羨ましそうに見つめているめぐみんが問いかける。

 

「あ、あの・・・一口だけでも・・・一口だけでもいいので・・・シュワシュワを飲んでもいいでしょうか?」

 

「お子様には早い!!!ジュースで我慢なさい!!!」

 

めぐみんは13歳ゆえに、めぐみんがシュワシュワを飲むことを許さないアカメ。ちなみに、この世界でお酒を飲める年齢は15歳以上、お互いに16歳である双子はこうしてシュワシュワを飲むことができるのだ。

 

「けちけちしないでくださいよー!私とアカメは3歳程度しか歳が離れてないじゃないですかー!」

 

「ダメよ。シュワシュワは大人になってからよ」

 

「私もめぐみんにシュワシュワはまだ早いと思うわー」

 

「そうだよ。めぐみんには、まだシュワシュワは早いよ」

 

「そんなー!アクアやティアまで、そんな意地悪を言わないでくださいよー!」

 

めぐみんがシュワシュワを飲むことを反対しているのはアクアもティアも同じである。

 

「そうだぞ。それに、めぐみんはまだ13歳だ。飲めるような歳ではない」

 

「ダクネスまで・・・みんなしてなんなのですか!私だってシュワシュワ飲みたいですよ!」

 

セドル、ヘインズ、ガリルと共にシュワシュワを飲んでいるダクネスにも反対され、めぐみんはふて腐れ、やけ食いをする。わいわい楽しんでいると、遅れてカズマがやってきた。

 

「なんだ、もう始めてたのか」

 

「カズマ!!聞いてください!!みんなが私にはシュワシュワは早いとドケチなことを・・・」

 

「いや、待て・・・そうではない」

 

「そうよ、これはめぐみんのためを思って言ってるのよ」

 

「私たちなりの気遣いだよー」

 

いまいち状況を理解できていないカズマにもうすっかり出来上がってるアクアが近づいてきた。

 

「あーー!遅かったじゃないのよー!こっちに来て一緒に飲みましょーよー!」

 

もうすっかり酔っ払いのアクアにカズマは引きつった顔をしている。

 

「ああ、カズマさん、お待ちしておりました」

 

そんな中、ルナがカズマたちに話しかけてきた。

 

「魔王軍の幹部を討伐できたので、皆様に報酬を支払ってるのはご存知かと思いますが・・・実は、カズマさんたちのパーティには特別報酬が出ています」

 

「え?マジですか⁉」

 

カズマたちのパーティにベルディア討伐報酬だけでなく、自分たちにはそれとは別に特別報酬が支払われると聞いて、カズマは驚愕する。

 

「でも・・・なんで俺たちだけが?」

 

カズマが疑問を抱いていると、荒くれ者がカズマに声をかける。

 

「魔王軍の幹部を倒すだなんてなぁ。俺は初めから、お前の中の輝きを信じていたぜ」

 

「俺の中の輝き・・・(イケボ)」

 

「地獄の入り口に光が差す・・・古い言い伝えだったかもしれん」

 

「そうそう!カズマがいなきゃ、デュラハンなんて倒せなかったんだからよ!」

 

『カ・ズ・マ!カ・ズ・マ!カ・ズ・マ!』

 

冒険者たち全員はカズマの功績を称え、カズマコールをしている。簡単に言えば、デュラハンを討伐できたのは他ならない、カズマたちの活躍あってこそ。だからこそMVPであるカズマたちパーティに特別報酬が支払われるのだ。

 

「サトウカズマさんたちパーティには、功績を称え、3億エリスを与えます!!」

 

「「「「「「さ、3億!!!???」」」」」」

 

まさかの億単位の報酬がもらえるとは思わなかったカズマたちは驚愕で満ちている。

 

「おいおい、なんだよ3億ってー。奢れよカズマー」

 

「カズマ様、奢って奢ってー♪」

 

3億の単位を聞いて周りの冒険者たちは今度は奢れの連呼である。

 

「・・・集合ー」

 

カズマの一声で、パーティ一同は全員集まった。

 

「お前らに1つ言っておくことがある」

 

「私の力で9:1でいいわよね?もちろん、9割は私で」

 

「何言ってるの?こっちの被害枠を考えてアクアには1割で十分だよ」

 

「お前らうるさい。話聞け」

 

アクアとティアが話を逸らし始めたのでカズマが話を戻す。

 

「大金が手に入った以上、俺はのんびりと、安全に暮らしていくからな。今後は冒険の回数は減ると思え」

 

「⁉ちょっと待ってよカズマ⁉」

 

「待ちません」

 

「あんた何言ってんの?ふざけてんの?」

 

「ふざけてません」

 

「そうだ!強敵と戦えなくなるのは困るぞ!」

 

「困りません」

 

「私も困りますよ!私はカズマについていき、魔王を倒して最強の魔法使いの称号を得るのです!」

 

「得ません」

 

「またヒキニートに戻るつもり?」

 

「戻りません・・・って、ニートじゃねぇから!!!」

 

「私が天界に帰れないじゃない!」

 

「いいや、もう決めたことなんだ!何度ごねたって無駄だからな!!」

 

カズマが安全に暮らす発言にカズマ以外のパーティ全員は不満をカズマにぶつけている。

 

「あのぅ~・・・カズマさん?」

 

そしてそこへルナが申し訳なさそうにカズマに声をかけながら1枚の紙を渡した。その紙を見たカズマは顔を青くしている。

 

「実は・・・アクアさんが召喚した大量の水により、外壁などに、大きな被害が出ておりまして・・・。さすがに魔王軍幹部を倒した功績もありますので・・・全額弁償とは言わないから、一部だけ払ってくれ・・・と・・・」

 

つまり、カズマに渡されたのは小切手なのではなく、損害賠償の請求書なのである。それを見たアクアは逃げようとする。当然アカメはそれを逃がすつもりはなく、髪を掴んで逃がさないようにする。

 

「えっと・・・報酬が3億で・・・弁償額が3億4000万エリス・・・てことは・・・」

 

「とどのつまり・・・4000万の借金ができてしまった・・・ということよ」

 

「血を血で洗う魔道の旅は、始まったばかりですね」

 

「明日からは金になる強敵相手のクエストに行こう」

 

「しゃ、借金は・・・等分で、いいわよ?」

 

討伐報酬をもらうはずが、まさかの借金をもらってしまうという理不尽な状況にカズマは落胆する。

 

「・・・ちくしょう!!どうしてこんなことになるんだよおおおおおおおお!!!!」

 

こうして、カズマたちの借金返済生活が幕を開けたのである。

 

 

ーこのすばぁ~(泣き)ー

 

 

それからというものの、アクアが原因で作り上げてしまった借金の返済のために、カズマたちパーティは高難易度のクエストに赴いた。報酬のほとんどが借金返済のために天引きされていき、もらえる報酬は数万程度しかもらえないでいた。そんな生活3日目の夜、双子はウィズ魔道具店のリビングでぐったりしている。

 

「あぁ~・・・疲れた・・・」

 

「こんな低額の報酬生活・・・いったいいつまで続くのよ・・・」

 

「盗賊稼業も、これでもかーっていうくらいに来ないし・・・」

 

「ていうか、ここに来てから1回も盗賊稼業をやってないわよね?盗賊として、それはどうなのよ?」

 

「言えてる・・・これ、もうお頭に厄介払いされたって認識で間違いないんじゃない?」

 

「ここまで来れば、そう思いたくなるわね・・・」

 

3日という短い期間ながら、少ない報酬生活に双子は嫌気をさして、お互いに愚痴り合いをしている。

 

「あ・・・あのぅ・・・大丈夫でしょうか・・・?」

 

心労が絶えない双子にウィズはおどおどとしながら心配している様子でいる。

 

「大丈夫じゃないわよ・・・。こっちは借金返済の毎日・・・嫌気がさすわ・・・」

 

「もういっそのこと、アクアに借金を全部押し付けちゃおうかなぁ・・・」

 

「うぅ・・・本当に・・・本当に、申し訳ございません・・・」

 

「ウィズが悪いわけじゃないんだから気にしないでよ・・・」

 

双子が借金返済生活を送るはめになった事態にウィズは双子に謝罪している。

 

「あ、あのぅ・・・気休め程度ですが・・・今月分のお給料・・・」

 

「どうせ数千エリス程度でしょ。いらないわよ・・・」

 

「今月も、売り上げは赤字だからお金ないでしょ?だったら残しときなよ・・・」

 

「で、でも・・・やはりご不憫で・・・気休め程度でも・・・」

 

「「いらないから」」

 

ウィズは2人が働いた分の給料を払うと言っているが、2人は受け取る気分にはなれない。というか双子は最初から給料を受け取るつもりがないのだ。

 

「そんな気休め程度を渡すくらいなら、金になる情報をよこしなさいよ・・・」

 

「お姉ちゃん、無茶言わないの・・・。そんな都合のいい話、あるわけないでしょ・・・」

 

「うーん・・・あ、そういえば・・・街の冒険者の皆さんの噂なのですが・・・」

 

ウィズは何か思い出したかのように、最近噂になっている情報を双子に与える。

 

「お2人はモンスターショップってご存知ですか?」

 

「何それ?」

 

「聞かないわね」

 

聞いたことがない店の名前を聞いて、双子は首を傾げている。

 

「何でもこの街に開店したお店らしくて・・・販売はまだやってないらしいのですが・・・店主さんがモンスターの素材を欲しがっているようでして・・・それの買取りを行っているお店らしいのです」

 

「へぇー」

 

「それで?」

 

「その素材の買取り金額なのですが・・・普段売られていく素材の5倍ほどの値段で買い取るみたいなんです」

 

「「ごっ・・・!!?」」

 

モンスターの素材を通常価格より5倍で買い取ってくれる店と聞いて、双子は驚愕する。

 

「あ、あくまでも噂なので、本当かどうかはまだ・・・」

 

曖昧とはいえ、モンスターショップの存在を知った双子はお互いに顔を見合わせる。

 

「お姉ちゃん、これ、カズマに教えた方がいいんじゃない?」

 

「そうね。少なくとも、小遣い稼ぎには持ってこいかもしれないし」

 

「あのー・・・お役にたてたでしょうか・・・?」

 

「たったたった!めっちゃ役立ったよ!ありがとう、ウィズ!」

 

「まぁ、一応は、ね」

 

双子の役に立てた情報を教えれて、ウィズは思わずにっこりと微笑んでいる。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

翌日、冒険者ギルドにやってきた双子はモンスターショップの存在をカズマたちに教える。

 

「モンスターショップか・・・ゲームではありそうな店だな」

 

「だが、私は聞かないな、そのような店は」

 

日本から来たカズマはともかく、この世界では信憑がないのか、ダクネスは店の存在は今初めて知ったようだ。

 

「私、知っていますよ。私が今泊まってる宿の近くありますから」

 

「マジでか!!」

 

「大マジです」

 

店の場所がめぐみんが泊まってる宿の近くにあると聞いて噂は真実であるとわかったカズマは希望が沸いてきた。クエスト報酬が天引きされているなかで、ちょっとモンスターの素材を渡すだけで5倍お金がもらえるというのは、カズマにとっては救済措置であるからだ。

 

「何々ー?何の話ー?」

 

そこへ他の冒険者たちに花鳥風月を披露していたアクアが話題に入ってきた。

 

「今ちょうどモンスターショップの話をしてたんだよー」

 

「もん・・・?何それ?おいしいの?」

 

「食いもんじゃねぇよ!店だよ店!店の名前!」

 

「そこでモンスターの素材を売り払えば、通常の5倍の金がもらえるらしいのよ」

 

「ご、5倍!!?」

 

5倍のお金がもらえると聞いて、アクアの目の色が変わる。いや、目の色をすでに変えてるのは双子だ。

 

「だ、だとすれば・・・1つ10万の素材を売れば、50万もらえるって、ことよね・・・?」

 

「噂を信じるならそうなるね。それくらいのお金、欲しいよね?」

 

「借金があるし、試してみたいのは当然よね。と、いうわけで・・・」

 

双子はすぐさまにカズマの方を見る。10万などという素材を手に入れるには高難易度クエストは必然なのでカズマはそれだけでこの2人が高難易度クエストを受ける気満々であるのがわかる。そのため、若干カズマは関わりたくない気持ちが現れる。

 

「高難易度討伐クエストに行きましょう。嫌とは言わせないわよ」

 

「そうだよ!私たち、今すぐにでもお金が欲しい!!低報酬生活はもう嫌なの!!」

 

借金がある以上、あまり強く断ることができないカズマは双子の懇願にたいしてため息をこぼす。

 

「わかったわかった。俺も魅力的な話だと思うし、どのみち借金返済を目指さないといけないからな・・・。お前ら、俺らでも討伐がいけそうなクエスト、取って来いよ。無理そうなやつはすぐに却下するからな」

 

「わかった!」

 

「じゃあ、取ってくるわ」

 

双子は手ごろそうなクエストを取りにクエストボードの前まで向かっていく。

 

「でも、どっちにしてもあのお店は今はやってませんよ」

 

「え!!?なんで!!?」

 

モンスターショップは開いていない発言をするめぐみんにアクアはひどくショックを受ける。

 

「店主さんが長期間の魔物調査に出かけてるんです。いつ頃に帰ってくるかわからないので、しばらくは店じまいすると、張り紙がありましたので」

 

「なんでこんな時に店じまいなのよー!!」

 

「店の従業員に頼めばよかったのではないのか?」

 

「いえ、あのお店は店主さん1人で経営してるらしいです」

 

「マジかー・・・借金返済の足しにできると思ったんだが・・・」

 

カズマもアクアほどではないが、せっかく知った店が今は機能してないことにショックを受けている。

 

「まぁでも、開いてないなら仕方ないか。何も閉店したわけじゃないんだし、素材を取っておいて損はないだろ」

 

「そうだな。素材は、店主が帰って来た時に売り払うとしよう」

 

「そうですね。では私たちは、2人がクエストを取ってくるのを待ちましょう」

 

「うー・・・今すぐお金が欲しいのにぃ・・・」

 

今すぐお金が欲しいアクア以外はモンスターショップが営業再開するのを待つことに決めたカズマたち。すると・・・

 

「バカ!だからこっちがいいって言ってるじゃん!何でそのクエストにするの!」

 

「あんたみたいな地味すぎるクエストじゃ話にならないって言ってるのよ。そんなんだから・・・」

 

「報酬額が高いこっちの方が稼ぎやすいって言ってるの!!」

 

「いーや、追加報酬が出るこっちのが1番効率がいいわ」

 

例のごとく、双子はどのクエストを受けるかでもめ合っている。それを見たカズマは若干顔を引きずっている。

 

「あいつら・・・またかよ・・・たく・・・」

 

「カズマ、喧嘩の仲裁なら私も手伝おう」

 

誰かが止めないとクエストは受けられないと判断したカズマはダクネスと共に双子の喧嘩を止めにいく。

 

「おいお前ら・・・いったい何を・・・」

 

ガシッ!

 

「ふぁ?」

 

喧嘩を止めに来たカズマは急にティアに掴まれる。その瞬間、ティアはカズマを持ち上げる。

 

「こぉんの・・・!!」

 

「いや、ちょ!ティア!待て!それはま・・・」

 

「バカァ!!!」

 

「甘いわ!!」

 

ドゴォ!!

 

「ごっはあ!!?」

 

ティアはカズマを武器として扱い、アカメはダクネスを盾として扱い始めた。

 

「ああ・・・こうして盾としてこき使われ、ぼろ雑巾のように捨てるつもりなのだな?これは・・・なんというご褒美なのだ・・・!」

 

(人を巻き込むのは・・・マジでやめてくれ・・・俺が死ぬ・・・)

 

喧嘩に巻き込まれたカズマは今後双子の仲裁に行くのはやめようと誓ったのだった。

 

 

ーこ、このすば・・・ー

 

 

『討伐クエスト!!

ストーンゴーレムを討伐せよ!!』

 

「うぅ・・・私が悪いんじゃないのにぃ・・・」

 

「なぜ私まで・・・」

 

結局クエストはめぐみんが選んだものに決まり、喧嘩をしていた双子は選んだクエストを却下され、『私は悪い子です』というプレートをつけられている。

 

「ここにそのゴーレムがいるのか?それらしいのが見当たらないが・・・」

 

「そのはずなのだが・・・」

 

「困りましたね・・・ゴーレムがいないとクエスト達成できませんし、爆裂魔法を撃ち込むこともできません」

 

今回の標的であるストーンゴーレムが出現する岩場までやってきたカズマたちパーティだったが、ストーンゴーレムらしい姿はどこにもなかった。

 

「ティア、敵感知スキルに反応あるか?」

 

「・・・え?あ、ちょっと待って。今スキルを発動・・・」

 

ゴゴゴゴ・・・

 

ティアが敵感知スキルでストーンゴーレムを探そうとした時、突然地響きのような音が聞こえてきた。

 

「な、なんだ⁉」

 

「地響きの音・・・?近いわね・・・」

 

「ちょ、ちょっと後ろ!!みんな後ろ見て!!!」

 

地響きの音の正体を探ろうとした時、アクアが何やら焦ったような声を上げている。アクアの言うとおり、全員が後ろを振り向くと・・・

 

「「「・・・・・・」」」ゴゴゴ・・・

 

「で・・・でけえええええええええ!!!??」

 

今回の討伐対象であるストーンゴーレムがカズマたちを見下ろしている。ストーンゴーレムのあまりの巨大さにカズマたちは驚愕する。

 

「こ、これがストーンゴーレムか!やはりでかいな!」

 

「いやそれにしたってでかすぎだろ!!完全に予想外だぞこれ!!」

 

「しかもこいつら・・・3体いるよ!!!どうすんの!!??」

 

「み、みんなー!!何とかしてーーー!!!」

 

「無理言うんじゃないわよ!!こんな巨体どうやって・・・」

 

予想外の大きさ、そしてこの巨体3体を前にして、カズマたちは動揺している。そんな中で、めぐみんだけが高らかに笑う。

 

「わっはっはっは!笑止!あのような岩の塊など、我が爆裂魔法でまとめて吹き飛ばしてみせましょう!」

 

「ちょっと待てめぐみん!!」

 

めぐみんはさっそく爆裂魔法を放とうとした時、カズマがストップをかける。

 

「な、なんですかカズマ!」

 

「よく考えてから行動しろ!相手はあの巨体だぞ!それも3体!こいつらを確実に仕留められる状況にしないとまずいだろ!お前の魔法は1発しか撃てないんだから!」

 

「でも具体的にどうするの?」

 

「それを今考えて・・・なんだこれ?」

 

ストーンゴーレムを確実に仕留められる方法を考えようとしたカズマは、足元に何やらへんてこりんな顔が付いた岩を見つける。中には愛らしい顔の岩もあるが。

 

「よくわかんねぇが、お前から先にやってやるぁ!!!」

 

「あ!ちょっとカズマ!それは・・・」

 

カズマがヘンテコ岩に攻撃した時、アカメがストップをかけたがすでに遅い。攻撃を加えられた岩は怪しく光りだし、そして・・・

 

ドカアアアアン!!

 

「ぎゃあああああああ!!!」

 

カズマを巻き込ませて爆発を引き起こした。

 

「それ、爆裂岩よ。本で見たことがあるわ。それに攻撃を加えると爆発するって・・・」

 

「早く言ってくれ!!」

 

爆裂岩の爆発巻き込まれたカズマは憤慨する。言うのが遅れたアカメは対して気にした素振りはない。

 

「ちょっとヒキニート!私まで巻き込んでんじゃないわよ!!」

 

「お前もくらってたのかよ!!?」

 

ついでというか、アクアも近くにいたため、爆発に巻き込まれたようだ。

 

「ん?待てよ・・・この爆裂岩、使えるかもしれん!アカメ!こいつを持ち運ぶことってできるか?」

 

「ええ、爆発する条件は攻撃された時だから持ち運んでも問題ないはずよ」

 

「よし!それで十分だ!」

 

ストーンゴーレムをまとめて討伐できる方法を思い付いたのかカズマは仲間たちに指示を出す。

 

「めぐみん!お前はここから離れたら魔法を撃つ準備をするんだ!」

 

「え?わ、わかりました!」

 

「ダクネス!ゴーレムを3体まとめて引き付けることはできるか?」

 

「囮だな?任せておけ!私のデコイを使えば、こいつらを引き付ける事など造作もない!」

 

「でも、さすがに3体のゴーレムの攻撃を防ぐのはダクネスでも・・・」

 

「心配するなティア。伊達に防御力を振り続けていない。こいつらの攻撃、凌ぎきってやろう」

 

それにと、ダクネスははぁはぁと興奮したような表情を見せている。

 

「3体のゴーレムに鎧を壊され、全裸になった私をもみくちゃにされると想像するだけで・・・むしろ望むところだ!!では・・・行ってくりゅ!!」

 

「うん、相手がゴーレムでよかったな。心を持ってたら絶対寄り付かないだろうから」

 

ドM心むき出しのダクネスはクルセイダーのスキル、デコイを使って3体のゴーレムを引き付けて攻撃を喜んで受けようとする。そして、残ったカズマたちも行動する。

 

「ティア!アカメ!俺たちは潜伏スキルで気づかれないようにしながら爆裂岩を・・・ぬぐおおおお!重!くぅぅ・・・運ぶぞ!」

 

「うぅぅ・・・重いよぅ・・・」

 

「だらしないわね。私はすいすいと運べるわよ」

 

「くぅ・・・お姉ちゃんなんかに・・・負けるかぁ・・・!」

 

「よ、よぉし・・・その調子・・・だ!!」

 

カズマたちは自分たちの潜伏スキルでストーンゴーレムたちに気付かれないようにしながら爆裂岩を近くまで運び込む。その中で何もしてないのがアクアだ。

 

「みんなー、がんばれー」

 

「お前!!何サボってやがんだ!!ちょっとはなんか役に立てよ!!」

 

「わ・・・私はそんな重労働なんかできないし・・・私のできることは・・・そう!傷ついた仲間を癒したり・・・応援したり!」

 

(あ、ダメこいつ、使えねぇ)

 

アクアは重労働したくないのかそんなことを言いだし、カズマたちに任せる。カズマはアクアを戦力外として認識し始めた。そうしてる間にも、爆裂岩をそれなりの数をストーンゴーレムの近くまで置くことに成功した。

 

「よし、こんなもんでいいだろ。ダクネス!もういいぞ!ここから離れるぞ!」

 

「な、何⁉もう終わりなのか!!?も、もう少しだけ待ってくれ!後一撃だけでも・・・」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないわよ!!」

 

「もういいでしょ!行くよダクネス!」

 

「ああ!!後一撃~!!」

 

爆裂岩を運び終えたカズマたちはまだ突っ込もうとするダクネスを無理やり引きずってストーンゴーレムたちから離れさせる。

 

「念のために・・・ティア!」

 

「うん!バインド!!」

 

念には念を入れてティアはバインドでストーンゴーレムたちの動きを止める。

 

「今だめぐみん!!撃てぇ!!!」

 

カズマたちがストーンゴーレムから離れたところでカズマはめぐみんに爆裂魔法の指示を出す。

 

「こ・・・これなら我が爆裂魔法の威力が上昇・・・!感謝しますカズマ!深く感謝します!!」

 

詠唱を唱え終えためぐみんはカズマに礼を言いながら狙いをストーンゴーレム3体と爆裂岩に向ける。

 

「我が最高にして究極の奥義、食らうがいい!!エクスプロージョン!!!!!!!!」

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!

 

めぐみんの爆裂魔法はストーンゴーレムと爆裂岩にヒットした。さらに爆裂岩の爆発も加わり、今までより強力な大爆発を引き起こした。爆発が晴れると、巨大なクレーターが出来上がっている。

 

「お・・・おい・・・無事か・・・?」

 

「「「「「な、何とか・・・」」」」」

 

大爆発の爆風に巻き込まれて吹っ飛ばされたカズマたちは死屍累々の状態だが、何とか生きている。

 

「か、カズマさん・・・もっと穏便に事を運べなかったの・・・?」

 

「仕方ねぇだろああでもしないとゴーレム3体はきついって」

 

カズマたちがよろよろとしながら起き上がろうとすると、カズマの近くに何やら宝石のように赤くキラキラしたものが落ちている。

 

「ん?なんだ、これ?宝石か?」

 

「ああ、それはゴーレムの目だな」

 

「ストーンゴーレムの目は魔力を帯びた宝石だから、売ったらそれなりの値段になるはずだよ」

 

「へぇー・・・」

 

「入手がなかなか難しい素材のはずですが・・・」

 

「さすが、私たちより幸運値が高いカズマね」

 

どうやらこのキラキラしたものはゴーレムの目だったようだ。すると、アクアはにこにこした様子でカズマに声をかける。

 

「ねぇ、カズマさん?そのゴーレムの目なんだけど・・・」

 

「お前、今回役に立たなかったからこれはやらねぇぞ」

 

アクアの考えを見抜いているカズマはきっぱりとゴーレムの目を渡すのを拒む。それを聞いてアクアは目をうるうるとさせる。

 

「お、お願いよぉーー!!私にちょうだい!!私、ギルドの酒場でお金使いきっちゃったんですけど!!ていうか、ツケまであるんですけど!!」

 

「おま・・・!!借金があるっていうのに何をやってんだ!!」

 

カズマとアクアのいつもの戯れをしていると・・・

 

「!!カズマ!後ろだ!!」

 

「え?」

 

カズマが後ろを振り向くと、ボロボロの状態のストーンゴーレムの1体がカズマに向けて攻撃を仕掛けようとしている。

 

「なっ!!?嘘だろ!!?あれでも仕留めきれなかったのか!!?」

 

カズマが驚愕している間にもゴーレムの拳はカズマに振り下ろされる。

 

(あ、これ俺、終わった・・・)

 

カズマはもう抵抗しても無駄だと思い、自身の死を悟った瞬間・・・

 

「トルネード!!!!!」

 

ゴオオオオオオオ!!

 

「おおおおおおお!!??」

 

突如としてストーンゴーレムがいる個所に竜巻が起こった。ストーンゴーレムは竜巻の風の刃に切り裂かれ、粉々に砕け散った。

 

「な、なんだこりゃぁ!!?」

 

「な、何!!?なになになに!!?」

 

「これは・・・風の上級魔法だ!」

 

そう、今の竜巻は風の上級魔法なのだ。竜巻が晴れると粉々になったゴーレムの存在はもはや素材になるものだけだ。

 

「風の上級魔法って・・・」

 

「めぐみんはやってない、よね?」

 

「当然です。私は爆裂魔法しか使えません・・・というか、他の魔法は使いたくありません」

 

「てことは別の誰かが・・・」

 

「あ!あいつじゃないかしら?」

 

魔法を放った者の正体を探っていると、アクアがクレーターの外から誰かがいることに気づいた。クレーターの外にいたのは長ズボンを履き、白い服に黒いマントをなびかせた茶髪を後ろに短く結んだ女性だった。

 

「よっと・・・おーい、お前らー、大丈夫かー?」

 

黒マントの女性はクレーターの中に入り、カズマたちの元まで駆けつける。

 

「あ、ああ。今の魔法はお前が放ったものだよな?助かったよ、ありがとう」

 

「お前、オレがたまたま近くにいてよかったな。オレが爆発音に気付いてなかったらここに来なかったし、間違いなく死んでたぞ」

 

「は・・・はは・・・ありがとう・・・」

 

カズマはさっきのゴーレムの振り下ろされる拳を思い出し、顔を青ざめた状態で引きつった笑みを浮かべる。

 

「つーか・・・お前、見たところ最弱職の冒険者だろ?連れてるメンツは・・・アークプリーストにシーフ2人、アークウィザードにクルセイダー・・・いいメンツは揃っちゃいるが、それでもお前みたいなのが来るべき場所じゃねぇよ。こんなところで何してやがる?」

 

「クエストだよクエスト。今はとにかく金が必要でさ・・・」

 

「そういうあんたこそ、ここで何してんのよ?てかあんた誰よ?」

 

アカメの訝しげな表情でそう尋ねると、マントの女性は忘れてたみたいな表情をする。

 

「おっと、わりぃ・・・そういやぁ、まだ自己紹介がまだだったな」

 

マントの女性はコホンと咳ばらいをし、自身の名と経歴を話す。

 

「オレの名前は櫻井真穂。アクセルの街でモンスターショップの店主をやってる。よろしくな」

 

マントの女性、櫻井真穂ことマホが放った言葉にカズマたち全員が驚愕している。モンスターショップの店主、という単語に。

 

「モンスターショップだと?」

 

「それって今朝の・・・」

 

「てことは・・・お前がモンスターの素材を欲しがってるっていう・・・?」

 

モンスターショップの店主がまさか目の前にいる女性だったということに、カズマたちは衝撃が走った。

 

 

ーこのすば!-

 

 

アクセルの街まで戻ってきたカズマたちはクエスト達成報告をした後で、マホの案内によってモンスターショップへの道のりを歩いている。

 

「ぎゃははは!なんだそりゃ!お前そうやって倒したのか⁉そんなの被害が及ぶからいくらオレでもやらねぇ手段だぞ!ははははは!腹痛ぇ!」

 

道のりを歩いていく最中、カズマたちはどうやってゴーレムを倒したのかというのを話すとマホはこれでもかというほどに大爆笑している。

 

「こいつ・・・笑いすぎだろ・・・!」

 

「それにしても・・・本当の意外すぎるんだよねぇ・・・。モンスターショップの店主が、まさか女の人だったなんて・・・」

 

「私の想像だと、モンスターショップっていうか、グロテスクな奴がやってると思ってたわ」

 

「私も、紅魔族の琴線に触れるような、ダイナミックかつ、かっこいい男の人がやってるかと・・・」

 

「私も・・・もっと、モンスターを痛めつけ、徐々にあれやこれやと引きはがし、お前みたいな家畜には餌はヌルヌルの粘液で十分だ、といってモンスターの辱めを楽しむような卑劣漢だと・・・」

 

「お前ら、モンスターショップの店主を何だと思ってるんだよ・・・」

 

モンスターショップの店主の印象をめぐみんたちが述べるとカズマは若干呆れたような表情をしている。それでも意外というのはカズマも同じだ。自分たちとほとんど歳が変わらない女性がモンスターショップをやってるなんてこの中の誰もが想像がつかなかっただろう。

 

(それに・・・こいつの櫻井真穂っていう名前・・・もしかして・・・)

 

自分と同じ共通点を見出しているカズマはまじまじとマホを見つめる。マホは未だに大爆笑している。

 

「ねぇ、そんなことはいいから早く私の宝石を買い取ってよ!あれだけ苦労して手に入れたのよ!相当な額になるに違いないわ!」

 

(こいつぅ・・・!!なんもやってねぇくせに何さりげなく自分のものにしようとしてんだ!)

 

どさくさに紛れてゴーレムの目を自分のものと評しているアクアにカズマはイラつきが高まる。

 

「ははは・・・ああ、わかったわかった。店についたら買い取ってやるって何度も言ってるだろ・・・ひひひ・・・金は全部店に置いてきたんだからよ・・・くふふ・・・」

 

「お前はいつまで笑ってんだよ・・・」

 

まだ笑っているマホにカズマは若干顔が引きつっている。

 

「ひー・・・ひー・・・あー、やっと収まった・・・と、着いたぞ。ようこそ、我がモンスターショップへ」

 

笑いが収まった頃にはもう店にたどり着いた。店の看板にはこの世界で出会ってきたモンスター・・・例えば、ブルータルアリゲーターやアンデッドナイトなどの装飾が飾られている。

 

「はぁ・・・近くで見てもすごい看板ですね・・・」

 

「・・・ねぇ、この看板・・・クソアンデッドが付いててすごいムカつくんですけど」

 

アクアは作り物とはいえ、アンデッドを看板につけていることに怒っている。

 

「ああ?なんだお前?オレのチョイスにケチをつけんのか?」

 

「当たり前でしょう!!作り物とはいえ、こんなクソアンデッドを街中にさらすなんて、女神である私の目が黒いうちは許すわけにはいかないわ!!」

 

「ああ、そうかい!勝手に言ってろや!モンスターをバカにするやつには店に入れてやらねぇ!買取りだって禁止だ!!」

 

「わあああああ!!ごめんなさい!!謝るからそれだけは許してぇ!!もう二度とバカにしないからぁ!!私!!お金が欲しいの!!」

 

買取りをしてもらわないと困るアクアはマホの発言ですぐに泣いて謝罪をした。

 

「たく・・・ああ、お前らも変ないちゃもん言うなよ?迷惑な客は追い出すことにしてんだからよ」

 

「ああ、変に騒ぐのはこいつだけだから心配するな」

 

「頼むぜ、本当に・・・」

 

マホで魔法でかけた鍵を解除して店の扉を開ける。

 

「さ、どうぞ中へ、お客様」

 

マホから入店許可を得て、カズマたちは店の中へと入る。そして、店で待ちかまえていたのは、アクアたちのトラウマの1つ、ジャイアント・トードだった。

 

「「「「「ほわああああああああ!!!???」」」」」

 

「こ、これは!ジャイアント・トード!!」

 

店の中にいたジャイアント・トードを見てカズマとトラウマを持つ4人は絶叫する。ダクネスは粘液塗れになる想像をしたのか顔を赤らめている。もちろん、ドM的な意味で。

 

「ああ、そいつは人形だ。襲ったりしないから安心しろ」

 

「へ・・・?人・・・形・・・?」

 

目の前にあるジャイアント・トードは作り物だと聞いて、カズマたちは唖然となっていつつ、内心ドキドキしている。人形かどうかを確かめるためにダクネスがジャイアント・トードのお腹を触ったり、叩いたりしている。

 

「ふむ・・・この感触は・・・ジャイアント・トードそのもののようだな・・・」

 

「ほ、本当に人形なんですか・・・?実は動いたり・・・なんて・・・」

 

「て、ティア・・・どうなのよ・・・?」

 

「・・・あ、本当だ。敵感知スキルに全く反応がない。これただの人形だよ」

 

「な、なんだ・・・よかった・・・」

 

「・・・人形なのか・・・残念だ・・・」

 

「今残念って言ったか?」

 

「言ってない」

 

ティアが敵感知スキルに反応がないということと、触られても全く動かないことから、本当に人形であるとわかったトラウマ4人は安堵する。ダクネスはちょっと残念そうにしている。

 

「もう!何なのよ!紛らわしすぎるわよ!何よこのカエル!!」

 

「おい、変に殴ったりすんな!壊れたらどうすんだ!!」

 

柔らかい材質をいいことにアクアはジャイアント・トードに打撃を与えている。壊れたら大変と思い、カズマが止める。

 

「おい!素材持ってきてんだろ!売るのか売らないのかどっちなんだ!」

 

「ああ!売ります売ります!!」

 

カウンター席に座ったマホに急かされてカズマは手に入れたゴーレムの目をマホに引き渡す。

 

「おお・・・こいつは・・・ちょっと査定するから店を見て待っててくれ」

 

「ああ、わかったよ」

 

ゴーレムの目を見てマホは感心する声を上げ、ゴーグルを取り出してゴーレムの目をじっくり観察する。

 

「それにしても・・・見れば見るほど壮観な景色ね」

 

「えっ?・・・おわはぁ!!?」

 

アカメの言葉でカズマは周りを見て驚愕する。それもそのはずだ、店のところどころにはジャイアント・トードだけに飽き足らず、まだ出会ったことのないモンスターや見たことのあるモンスター、そしてさらには天井には空飛ぶ野菜やキャベツの人形まで飾られているのだから。

 

「嘘だろ・・・これ、全部この世界のモンスターの人形か・・・?」

 

「みたいだよ。私たちが動いてるにも関わらず、ちっとも襲ってこないんだもん」

 

「な、なんか私・・・怖くなってきたんですけど・・・」

 

「しかもこれ、妙にリアルに再現されているので、初見で見たら逃げ出したくなりますよ・・・」

 

「ほ、本当に襲ってこないのか?襲ってくるのならば、私が受けてたとう」

 

あまりにリアルに再現できている人形を見てカズマたちはある意味で恐怖を覚える。

 

「査定が終わったぞー」

 

「お、おお」

 

人形を見ている間、査定が終わったようでカズマたちはカウンターに集まる。

 

「で?で?私の宝石、おいくら万円?」

 

「いや万って決まったわけじゃ・・・」

 

「おう。普通の店で売れば、ざっと100万エリスだな」

 

「「「「「「ひゃ、100万!!!???」」」」」」

 

まさかの100万エリスの額にカズマたちは驚愕せずにはいられなかった。

 

「こいつの帯びている魔力が半端じゃねぇからな。正直、オレでさえ見たことがないくらいだ。それが値上げの要因になっているんだよ。それだけじゃねぇ、爆裂魔法をくらったとは思えないほどのつやつや感・・・さらに、オレのルールでここの買取りが5倍になるから・・・」

 

マホはこの世界では見ないそろばんでゴーレムの目の値段を計算して、それをカズマに見せる。

 

「これ単体で500万エリスで買い取らせてもらうぜ」

 

「「「「「「500万!!!!!」」」」」」

 

まさか素材1つで高難易度クエスト以上の額になるとは思わなかったカズマたちは目が$の形になる。

 

「ど、どうしよう・・・すごい予想外なんですけど・・・」

 

「これだけの額の素材を売り続けたら・・・」

 

「借金返済も・・・」

 

借金返済できる希望を持ち始めたアカメたちをよそに、すぐに正気に戻ったカズマはすぐにマホを連れ出す。

 

「ちょっとあんた!話がある!こっちに来い!!」

 

「は?おいちょ・・・ま・・・放せって!」

 

「ちょ、ちょっとカズマさん!!?まだ500万もらってないんですけどー!!」

 

「すぐ戻るから待ってろー!!」

 

カズマはマホを連れ出して店の外へと出ていった。残ったアクアは500万と騒いでいる。

 

 

ーこのすば!-

 

 

マホを連れて店の外に出たカズマは先ほどの興奮を落ち着かせるためにぜぇぜぇと息を整える。

 

「・・・で?話ってなんだよ?つまんねぇ話しやがったら許さねぇぞ」

 

「い、いや・・・さっきの額でちょっと気になることがあるんだけど・・・その前に確認させてくれ!」

 

「なんだよ?」

 

カズマは本題に入る前にずっと気になっていたことをマホにぶつける。

 

「その櫻井真穂って名前からして、お前異世界転生者なんだろ?ミツルギと同じ!」

 

「・・・カズマっつったな。ミツルギって奴は知らんが、それを誰から聞きやがった?」

 

否定はしないということは、カズマの思っていたことは正しかった。マホは日本で1度死に、この世界へとやってきた転生者だったのだ。

 

「俺の本名は佐藤和真っていうんだ!俺もお前と同じで日本から転生してきたんだよ!」

 

「佐藤・・・和真・・・。はぁ・・・そういうことかよ」

 

カズマが自分と同じ転生者だとわかったマホはいろいろと納得した表情をしている。

 

「あ?待てよ?だとするとお前と一緒にいたあのアクアって奴は・・・」

 

「お察しの通り、本物の水の女神だよ。俺が特典として連れてきた」

 

「マジかぁ・・・さっきからあいつを見ててむかむかすると思ったら・・・オレを小ばかにしやがったあのクソ女神本人かよ・・・」

 

アクアが本物の女神だと気づいたマホは嘘だろといった様子で手を顔に当てている。それを見てカズマはマホが死んだ際になんかあったのだろうと察する。

 

「で、お前も転生者ってことは、なんか特典をもらったんだろ?お前専門の武器みたいな奴」

 

「特典?ああ・・・これのことか?」

 

カズマの質問に答えるようにマホは1冊の魔導書をカズマに見せる。

 

「こいつは魔導書ネクロノミコンっつーらしく、これがあればこの世界の魔法を全て使うことができるらしい。アークプリーストの魔法とかアンデッドの魔法とか何でもな」

 

「へぇー・・・じゃあそれさえあれば、リッチーの魔法も使えるってことか」

 

「それだけじゃねぇ。こいつはどうも、普段の消費魔力を大幅に抑えてくれるみたいなんだよ」

 

マホの転生特典である魔導書ネクロノミコンの性能を知ったカズマはなぜ自分はあの役に立たない駄女神を選んだんだろうと激しく後悔した。

 

「そ・・・そんなすげぇ特典を持ってて、500万なんてバカみたいに稼げてるのに、なんでこんな初心者の街でこんなモンスターショップを開いてるんだ?正直、もったいない気がするが・・・?」

 

カズマの本題といえる内容にマホは目をぱちくりさせている。

 

「・・・まさか、そんなことを聞くためにわざわざ外に連れ出したのか!!?」

 

「いやだって、あの時弱ってたとはいえ、魔法でゴーレムを一撃で倒せてたし・・・それに、同郷のよしみとして気になって・・・」

 

カズマの本音にマホは何言ってんだかといった表情で頭をかいている。

 

「・・・オレもな、前まではクソ女神を見返してやろうと思って、魔王討伐、なーんてガラでもないことをやってた時期はあったさ」

 

「もう諦めたってことか?でもそれが・・・」

 

「・・・お前はさ、この世界のモンスターについて、どう思ってる?」

 

マホの質問にカズマは意図はわからないが正直に答える。

 

「ろくでもないと思ってる」

 

「はいそれだ!!オレがモンスターショップを開いている最大の理由がそれ!!」

 

「おおっ!!?」

 

カズマの回答にマホはものすごい剣幕でカズマに顔を近づけて睨みつける。

 

「オレはこの世界のモンスターと初めて出会った時・・・オレはある感情が芽生えたんだよ・・・。こいつは・・・なんと愛おしいんだってな」

 

「・・・はあ?」

 

マホがこの世界のモンスターが愛らしいという発言にカズマは変に訝し気な表情になった。

 

「今まで愛らしいと感じたことのなかったこのオレが唯一愛しさを芽生えさせた存在であるこの世界のモンスター!オレは歓喜で震えたね・・・あまりの喜ばしさに、ジャイアント・トードに食われたこともあるくらいだ!だがその捕食もまた、愛おしい!!」

 

「えー・・・」

 

「・・・なのに、この世界の連中ときたら、この世界のモンスターの素晴らしさが、何にもわかっちゃいねぇ!!モンスターを捕獲する奴もいるがせいぜい研究の足しにして、用が済んだら捨てるって奴ばかりだ・・・嘆かわしい!!あれほどの愛らしい存在を否定するとは言語道断だ!!」

 

「ちょっと何言ってるかわからないです」

 

マホの熱い熱弁にカズマは頭の理解が追い付いてこない・・・いや、理解したくなかった。

 

「ゆえに決めた。オレは・・・この世界のありとあらゆるモンスターの素晴らしさ、そして愛おしさを、この世界の連中に知らしめてやるのさ!!モンスターショップはその大いなる目的の第一歩にすぎねぇ。ゆくゆくはモンスターの愛らしさが詰まったテーマパークを作り・・・その中で本物のモンスターとの触れ合いを前提とさせた施設を創り上げる!!それが、オレの目的であり、この世界で初めてできた、大きな夢なのさ!!」

 

マホの大いなる夢の内容を聞いて、カズマはマホからアクアたちと同類のものを感じ取った。

 

(あー・・・何となくわかった・・・。こいつ、この世界の頭のおかしさに浸食されちまってる)

 

せっかく出会えた日本の同郷者がこの世界に慣れてしまっているどころか、悪い意味で浸食されていることにカズマは心の中で涙を流す。この世界にはまともな奴はいないのか、と。

 

「えーと、じゃあ、何か?その大きな目的のためにこのアクセルの街に店を?」

 

「駆け出しの街の連中からモンスターの素晴らしさを説いていけば、そいつらがモンスターの良さを広めてくれるから都合がいいんだよ。ま、実際うまくいったことはないがな!」

 

そりゃそうだろとカズマは心の中でツッコんだ。

 

「まぁ、お前の事情はよくわかったよ。ま、大変な道のりだろうけど、がんば・・・」

 

ドッシャアアアアン!

 

これ以上頭のおかしい内容を聞きたくなかったカズマは適当に話を切り上げようとした時、店の中から何か崩れるような音が聞こえてきた。

 

「あ?うるせぇなぁ・・・店の中からか?」

 

(なーんか・・・嫌な予感・・・)

 

店の中に残っていたアクアたちが真っ先に頭に思い浮かべ、、カズマは嫌な予感がひしひしと高まる。マホは何事かと思って店の中に戻る。

 

「・・・な!!な、な、な、な・・・なあああああああああああああああ!!!!????」

 

店の中に入ってみると、真っ先に視線に映ったのは、ジャイアント・トードの人形が粉々に砕け散っており、こちらを申し訳なさそうに見つめているアカメたちだった。

 

「お・・・オレが・・・何日もかけて作り上げた・・・血と涙の結晶が・・・」

 

自分が作り上げた最高傑作の1つが無様に壊されてる様を見て、マホはひどく落ち込んでいる。そんな中で、こっそりと逃げようとしているアクアがカズマの視線に映った。

 

「待て駄女神。お前・・・いったい何をした?」

 

「えっと・・・それが・・・ですね・・・」

 

全ての一部始終を見ていためぐみんたちがいったい何が起こったのかを全て話す。

 

 

ーこのすば!-

 

 

回想

 

「カズマたちはいったい何の話をしてるんだろう?」

 

「意外にも、2人揃っていかがわしいことだったりしてね」

 

「詳しく!!!」

 

「ものの例えよ。本気にしないでちょうだい」

 

「それにしても・・・本当に本物そっくりですね・・・」

 

「なんか、このジャイアント・トードを見ているとムカムカしてくるんですけど・・・。そうだわ!てぇい!!」

 

ポヨンッ

 

「アクア⁉どうしてジャイアント・トードの人形を殴りつけているの⁉」

 

「決まってるじゃない!私たち、散々カエルに食べられ続けてきたのよ!その恨みがないと思うかしら?いいや、ないわけがない!!だからこそ、今!!ここで!!晴らすべきなのよ!!」

 

「それって単なる八つ当たりじゃない。やめておきなさい」

 

「そうだぞアクア。壊れでもしたらどうする。そんなに鬱憤が溜まってるなら・・・ぜひ私が受けよう」

 

「平気よ平気!本物を再現してて打撃を吸収するんだもの!壊れるわけがないわ!」

 

「やめた方がいいと思いますよ。なんだか・・・嫌な予感がこみ上げて・・・」

 

「そろそろとどめの一撃をお見舞いしてあげるわ!」

 

「ばっ!!あんたやめ・・・」

 

「ゴッドブロー!!!!ゴッドブローとは!!女神の愛と悲しみの一撃!相手は死ぬ!!!」

 

ポヨォン!

 

・・・ベキッ!!

 

「・・・ベキ?」

 

ベキベキベキ・・・

 

「人形にヒビが・・・」

 

「まさか・・・」

 

ドッシャアアアアン!!!!!

 

 

回想終了

 

 

「・・・つまり、カエルに食われた腹いせを、人形にぶつけてたら壊れた・・・と?」

 

「・・・はい、そうです」

 

全ての回想を聞いたカズマはそう問いかけ、めぐみんは首を縦に頷く。

 

「お前ええええ!!!人のものに手を出すところか、壊すってどういうことだぁ!!!」

 

「いひゃいいひゃいいひゃい!!しょうがないじゃない!!ゴッドブローで壊れるなんて予想してなかったんだもん!!」

 

「あれは作り物だから限界は来るんだってんだよこのバカがぁ!!!」

 

人形を壊した張本人であるアクアにカズマは頬を引っ張ってお仕置きをしている。そしてその背後から、どす黒いオーラを感じ取った。

 

「はっ!!殺気!!?」

 

「てーめーらぁ・・・!!!!!」

 

どす黒いオーラの出所はマホからであった。その表情は明らかに怒りで染め上がっている。その様子にはカズマたちパーティは怯えている。ダクネスは興奮しているが。

 

「なんてことをしやがった!!!これはオレが初めて作り上げた努力の結晶の塊なんだぞ!!!こいつを作り上げるのにどれだけの時間をかけたと思ってやがる!!!!」

 

「す、すいまっせん!!!このバカが本当にすみませんんんんん!!!!!」

 

怒れるマホにカズマはアクアを無理やり地面につけさせながら自分も土下座をしながら許しをこいているが、この程度ではマホの怒りは収まらない。

 

「謝って済むなら警察なんざいらねぇんだよ!!!オレの命の次に大事な大事な人形の1つをぶち壊しやがって!!!土下座なんざで許されると思うな!!!!弁償だ弁償!!!損害賠償を払いやがれ!!!!」

 

「「「「「「いっ!!!??損害賠償!!!!???」」」」」」

 

ただでさえ借金がある身だというのに、そこに損害賠償を突き付けられ、カズマたちは顔を酷く青ざめている。

 

「お前らが持ってきたゴーレムの目は、その損害賠償の足しにしておくからな!!」

 

「そ、そんな!!?私の500万が!!?」

 

「そ・・・それで・・・500万を引くと・・・おいくらほどの損害賠償を・・・?」

 

「オレがこいつを作るのにかかった費用、経済費、創作日数込み、その他もろもろを合わせて・・・」

 

人形にかかったお金の計算をしていき、カズマたちが払うべき金額を突き付けるマホ。

 

「しめて6000万エリス!!!それがお前らがはらうべき金額だ!!!」

 

「「「「「「ろ、6000万!!!????」」」」」」

 

アクアが作った借金が4000万、さらにそこに損害賠償である6000万を合わせると・・・カズマたちにできた借金は、なんと1億まで跳ね上がったのだ。

 

「これまでの借金を合わせると・・・1億の借金・・・」

 

「む・・・無理だ!!!そんな金額どうやって返せば・・・」

 

「無理とかじゃねぇんだよ!!冒険者だろ!!クエストをバンバンこなして、うちの店を利用してきっちりと返しやがれ!!受付嬢にはお前らの報酬は天引きするよう伝えといてやるからよぉ!!」

 

なんとも理不尽ともいえることの連続に、カズマは本気でこの世界にいる魔王の討伐を強く決意するのだった。この・・・ろくでもない世界から脱出するためにも。




次回予告的なもの

アカメです。遅れながらも、お頭に定時報告です。

私とティアはアクセルの街で変わりなく平和に過ごしています。トラブルなんてこれっぽっちもありませんし、問題も引き起こしておりません。
これほどまでに平和に過ごせているのは、アクセル支部の盗賊団の活躍あってのことです。なので心配などせず、どうかアヌビスでぬくぬくとのんびりお過ごしください。決して問題など引き起こしていませんのであしからず。

報告書作成者、アカメ

頭の一言:アクセルの街に魔王軍幹部が来たのと、お前らに1億の借金ができたって報告を受けてるんだが?

次回、この凍えそうな季節に二度目の死を!
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