このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

13 / 38
中二病でも魔女がしたい!
この凍えそうな季節に二度目の死を!


アクアが出した水によって壊れた街の外壁の修理費4000万、アクアが壊したモンスターショップのジャイアント・トードの人形の賠償金6000万を合わせて1億の借金ができてしまったカズマパーティ。その借金の返済のためにカズマパーティは今日も冒険者ギルドで仕事を受ける予定である。そのため、双子はカズマたちと合流するために冒険者ギルドへと向かっていっている。

 

「・・・寒・・・やる気でないわね・・・」

 

「だね・・・借金さえなければ、お店でぬくぬくできるのになぁ・・・」

 

双子は砂漠の環境で育ったために暑さはものともしないが、寒さだけは苦手で先ほどから白い息を吐きっぱなしで、ブルブルと震えている。しかも、やる気もいまいち起きないでいた。

 

「だいたい、借金はアクアが勝手に作ったものなのだから、あいつ1人でなんとかすればいいのに、なんで私まで巻き込まれないといけないのよ・・・」

 

「そう言わないであげてよ。人形の方はともかく、あの時はアクアがいなかったら、今頃デュラハンに街を壊されてたかもしれないよ?」

 

「はっ、超ド正論を言ってくれちゃって。本人は悪びれないのだから庇ったって意味ないって自覚したらどうかしらこの愚妹」

 

「何その言い方?じゃああの時アクアがいなかったら私たちどうなってたと思う?きっとデュラハンに殺されてたんじゃないのこのバカ姉」

 

「は?」

 

「あ?」

 

またいつものお決まりの喧嘩でお互いに火花がバチバチしていく。

 

びゅぅ~・・・

 

「さ、寒い~~!!!ねぇ、こんな不毛な争いやめようよ・・・」

 

「そ、そうね・・・こんなの、労力の無駄遣いになるわね・・・」

 

だがあまりに寒さで双子は喧嘩を即中断させる。この凍える季節の前では、2人は喧嘩をする余裕がなくなっているようだ。話し込んでいる間にも双子はギルドへとたどり着いた。

 

「おや、アカメとティア。外で会うのは珍しいですね」

 

「確かに。いつもはギルドで会うから、新鮮だな」

 

「あ、めぐみん、ダクネス」

 

そこへ、同じくギルドへと向かっていためぐみんとダクネスと偶然鉢合わせた。

 

「カズマとアクアは一緒じゃないのね」

 

「あの2人ならもう先に着いてるんじゃないでしょうか」

 

「どうだろうか。まずは確認のために中に入ろうじゃないか」

 

「だね。いつまでもこんな凍える場所にいたくないし・・・」

 

4人がギルドの扉を開けた瞬間、周りの冒険者たちがワイワイと酒を飲みながら騒いでいる声が響いてくる。それにはアカメは若干不愉快な表情になる。

 

「いい気なものね。私たちはこんなに苦労しているというのに」

 

「まぁ、そりゃそうですよ。あのデュラハンの報酬は戦いの参加者全員に支払われましたから。多少懐が潤っていれば、わざわざこんな寒い季節にクエストを受ける人はいませんよ。私は、むしろ望むところですが」

 

「わ、私も・・・むしろ望むところで・・・」

 

「私は望んでないわよ。寒いのは苦手だし」

 

「言ったって仕方ないでしょー。さて、と・・・カズマとアクアはいったいどこに・・・」

 

ギルドの中に入った4人はあたりを見回し、カズマとアクアを探している。すると・・・

 

「このかまってちゃんが!!調子に乗るのもいい加減にしろよ!!確かにお前の活躍でなんとかなったのは認めてやるよ!ならあの時の手柄も報酬も1億の借金も全部お前1人の物な!せいぜい1人で借金返済を頑張るこったな!」

 

「わあああああああ!!待って!!ごめんなさい!!調子に乗ったの謝るから見捨てないでよおおおおおお!!」

 

「うわー・・・すっごいわかりやすい・・・」

 

アクアを見捨てようとするカズマの声とカズマにすがるアクアの声で何の苦労することもなく2人を発見する4人。4人はすぐにカズマとアクアに合流する。

 

「朝から何を騒いでいるのだ?」

 

「何かいい仕事はありましたか?」

 

「いや、仕事はまだ探してないよ。これからってとこだ」

 

「ならさっさと探して仕事に行きましょう」

 

「そうだな。早いとこ借金地獄から解放したいし」

 

6人揃ったカズマたちは今日の仕事をやるために、クエストボードに向かって依頼書を選んでいく。今の時期であると、報酬はいいが、高難易度ばかりではあるが。

 

「うーん・・・報酬はいいが、どれもろくなものがないなぁ・・・」

 

「カズマ、カズマ!」

 

「カズマです」

 

「これはどうだろうか?白狼の群れの討伐!報酬100万エリス!ケダモノ共の群れに滅茶苦茶にされる想像をするだけで・・・んん・・・!」

 

「はい却下」

 

ダクネスは白狼の群れの討伐を勧めたが、カズマはこれを却下。却下されたダクネスはショックを受けつつも、興奮している。

 

「カズマ、カズマ!」

 

「カズマだよ」

 

「これはどうですか?一撃熊の討伐!我が爆裂魔法とどちらが強力な一撃か、今こそ、思い知らせてやろう!!」

 

「そんな物騒な名前のモンスターと関わりたくない。首を撫でられただけで即死しそうだ。却下」

 

めぐみんは一撃熊の討伐を勧めたが、名前だけでも関わりたくないカズマは当然ながら却下する。めぐみんはがっかりして落胆する。

 

「ねぇ、カズマ」

 

「はい、カズマです」

 

「これならどうかしら?ポイズンコブラの討伐。じわじわ苦しめさせるクソ蛇にじわじわと苦痛を与えるとどうなるのかしらねぇ?」

 

「噛まれただけで死ぬ思いをするのはごめんだ。却下」

 

「・・・ちっ」

 

アカメはポイズンコブラの討伐を勧めるが、毒で苦しめられるのが嫌なカズマはこれも却下。アカメは舌打ちを打つ。

 

「カズマ、カズマ!」

 

「はいはい、カズマだよ」

 

「これなんてどう?機動要塞デストロイヤーの軌道進路調査!これならモンスターを倒さなくていいし、私の真骨頂を発揮できるよ!」

 

ティアは機動要塞デストロイヤーの軌道進路調査のクエストを強く勧めている。どうにも、その機動要塞デストロイヤーがどこかの街に近づいてきているらしい。

 

「そのデストロイヤーって何なんだよ?」

 

ただカズマはそのデストロイヤーを知らないために、首を傾げている。

 

「何言ってんのよ?デストロイヤーはデストロイヤーでしょ?」

 

「そうだよ。大きくて高速移動する要塞で足がわしゃわしゃと動いて全てを蹂躙し、子供たちに妙に人気のある要塞だよ」

 

「なるほど、全くわからん」

 

双子の説明だけではデストロイヤーがどういうものかいまいち理解できないカズマ。

 

「どっちにしても、要塞になんて関わりたくねぇ。却下だ」

 

「あぅ・・・」

 

デストロイヤーにも関わりたくないカズマはこれを拒否。ティアはほんの少ししゅんと肩をすくめる。ここまでクエストを却下してきたカズマだが、ここで気になるクエストを発見する。

 

「えーっと・・・これは・・・雪精の討伐?なぁ、この雪精ってなんだ?名前からして、そんなに強そうにも思えないんだけど・・・1匹報酬10万エリスだってよ」

 

「雪精は雪深い雪原に多くいるそうだよ」

 

「ええ。私たちの故郷じゃ絶対現れない奴よ」

 

「その雪精を1匹討伐するごとに春が半日早く訪れると言われています」

 

「へぇー」

 

名前からして雪関連であるというのは今の説明だけで十分に理解できたカズマ。

 

「とても弱いモンスターなので、簡単に倒すことができるのですが・・・」

 

「その雪精討伐を受けるなら、私、準備してくるわね!」

 

「おい待て・・・行っちまいやがった・・・」

 

まだ受けるとは言っていないのにアクアが先走って雪原へ行く準備をしにギルドの外へと出ていったアクア。

 

「え~・・・ただでさえ寒いのに、さらに寒いとこ行くの~?」

 

「・・・仕方ないわね。防寒着でも買っていきましょうか」

 

寒いのが苦手な双子は渋ってはいるが、アクアが準備しているので、防寒具を買いに一旦ギルドの外へと出る。

 

「・・・ふふ、雪精か・・・」

 

ダクネスはなぜだか妙に笑っている。弱いモンスターであるはずの雪精で、ダクネスが笑っている姿を見て、カズマは何かしら嫌な予感を感じ取ったが、それよりもお金を優先するカズマはこの雪精の討伐クエストを受けるのだった。

 

 

ーこのすば!-

 

 

雪精の討伐のクエストを受けたカズマたちは防寒具を着て雪精が現れる雪原までやってきた。雪原の周りには小さく、丸いかわいらしい生物がふよふよと漂っている。この小さく、かわいらしいのが、討伐対象である雪精である。

 

「これが雪精かぁ・・・。てか、その恰好、どうにかならんのか?冬場セミ取りに行くバカな子供みたいだぞ?」

 

アクアの今の恰好は防寒具姿で、なぜか虫取りでよく使う網を持っている。

 

「これで雪精を捕まえて小瓶の中に入れておくの!で、そのまま飲み物と一緒に入れておけば、いつでもキンキンなシュワシュワが飲めるってわけよ!どう?頭いいでしょ?」

 

アクアのいかにも幼稚な考えにカズマは何となくオチが読めてきたようだ。

 

「にしてもお前ら、そんな厚着で動けるのか?動きとか鈍くならないのか?」

 

カズマの視線には、他のメンバーより厚着で、雪山を上ろうと試みるアイスクライマーたちが着こみそうな格好をしている双子だった。

 

「大丈夫だって。これ、意外にも動きやすいんだ」

 

「むしろ、あんたたちはよくそれで雪原まで来れるわね」

 

一応は機動性も重視しているようで、双子は問題なく動けているようだ。

 

「ダクネスは鎧はどうしたんだよ?そんな装備で大丈夫か?」

 

ダクネスは他のメンバーと同じく防寒具だけを着込んでおり、いつもの堅そうな鎧はどこにもない。

 

「はぁ・・・はぁ・・・大丈夫だ、問題ない。ちょっと寒いが・・・それもまた・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

雪原の寒さだけでも興奮している様子のダクネス。どうやら平常運転らしい。

 

「んなことより、さっさと討伐して帰りましょう」

 

「だね。こんな寒いとこ、いつまでもいたくないよ」

 

「だな。んじゃ、とっとと始めるか」

 

カズマたちはさっそく雪精の討伐を開始するのだった。

 

『討伐クエスト!!

雪精たちを討伐せよ!!』

 

「ワイヤートラップ!」

 

ティアはシーフのスキルの1つ、ワイヤートラップを発動し、雪精を捕えようとする。雪精は突如出てきた網によって、数匹ほど捕まってしまう。

 

「・・・?」

 

しかも雪精はどうも自分に置かれた状況を理解できていないようだ。

 

「よし!確保!」

 

「よくやったわ。後は私が・・・」

 

「・・・?」

 

ティアが捕まえた雪精をアカメが切り裂こうとした時、雪精がじっとつぶらな目でこちらを見ている。

 

「・・・よく見たら、結構かわいいじゃない」

 

「でも、これを討伐するのが仕事だし・・・」

 

「・・・?」

 

「「・・・・・・」」

 

近くで見て、雪精の愛らしさによって討伐するのを躊躇ってしまう双子。

 

「ティア、とどめはあんたに譲ってあげる。経験値、欲しいでしょう?」

 

「ううん、やっぱりこういうのはお姉ちゃんがやるべきだよ。血も涙もないお姉ちゃんなら、できるでしょ?」

 

「いや、いくら私でも優しさくらいはあるわよ?姉の優しさを噛みしめながら、経験値をありがたく受け取りなさい」

 

「いやいや、そんな優しさいらないから。お姉ちゃんがやってよ」

 

「いやいやいや」

 

「いやいやいやいや」

 

「どっちでもいいからさっさと討伐しろよ!!!て、待てこのちっこいの!!ちょろちょろ動くな!!」

 

自分が雪精を討伐するのに心が痛んでるのか、双子はお互いに討伐の役目を押し付け合っている。カズマは逃げ回る雪精を追いかけながらツッコミを入れる。

 

「4匹目取った!!カズマー、見て見てー!雪精の大量よ!」

 

(もし、今回の討伐ノルマ数が足りなかったら、あいつの捕まえた雪精を退治してしまおう・・・)

 

アクアは討伐という趣旨を忘れて雪精を捕まえていく。カズマはノルマを越せなかったらアクアの雪精を潰そうと静かに考える。

 

「お、今だ!!」

 

カズマは動きが鈍っている雪精を見逃さず、剣で斬り裂いていく。斬られた雪精は真っ二つに斬れ、雪の粉となって消滅した。

 

「カズマ」

 

「なんだ!」

 

「雪精がすばしっこくて捕まえられません。辺り一面、爆裂魔法で吹っ飛ばしていいですか?」

 

「よーし!まとめて一掃してくれ!」

 

「了解です!」

 

これだけ数が多いのだから爆裂魔法で一掃した方が早いと判断したカズマはめぐみんの提案をすぐに了承する。

 

「我が真紅の流出を以て、白き世界を覆さん!エクスプロージョン!!!!!!」

 

ドオオオオオオオオオオン!!!!!!

 

めぐみんの爆裂魔法によって、雪精の何体かは大爆発の炎によって溶けて消滅し、残り数十体の雪精は爆風によって吹き飛んでいく。爆発が晴れると、爆裂魔法が放たれた一面は雪が解け、クレーターが出来上がった。めぐみんは当然ながら、爆裂魔法によって魔力が尽き、倒れる。

 

「おーい、大丈夫かー?」

 

「ふふふ・・・10匹やりましたよ・・・倒した雪精は10匹です。レベルも1つ、上がりました」

 

「おお!やるなぁ!!雪に埋もれてなきゃ、もう少しかっこよかったが」

 

逃げはするが、何の苦労もなく高い報酬がもらえる雪精討伐はカズマにとっておいしい話であるために、にやけ顔が止まらなかった。それと同時に、こんなにいい待遇なのになぜ誰も受けようとしないのかも疑問を持った。

 

「ん・・・出たな!!」

 

「え?」

 

ダクネスが身構えている視線を見てみると、突如として凍てついた霧が一面を覆い尽くしている。

 

「な、なんだぁ!!?」

 

「「ひぃ!!」」

 

「わくわく・・・」

 

「・・・・・・」

 

突然の事態にカズマは困惑し、双子は恐怖でお互いに抱き合い、ダクネスは興奮で身震いし、めぐみんは死んだふりをしている。

 

「カズマ、なぜ冒険者が雪精討伐を受けないのか、理由を教えてあげるわ」

 

「え?」

 

「あなたも日本に住んでいたんだし、天気予報やニュースくらいで名前くらいは聞いた事あるでしょう?雪精たちの主にして、冬の風物詩と言われる・・・冬将軍の到来よ!!」

 

「はあ!!??」

 

霧がカズマたちさえも覆い尽くし、霧の中から、1つの人影が見えてきたが、その存在が異常だった。全身が雪のように真っ白く、その存在から漂う凍てついたオーラを放っている戦国武将の将軍の姿をしたモンスター・・・その名も、冬将軍。

 

「こ、こここここ、こいつが・・・冬将軍・・・?こ、怖いよぅ・・・」

 

「こ、怖いのは当たり前よ・・・何せこいつは、国から高額賞金をかけられている特別指定モンスターの1体なのだから!!」

 

「ええええええ!!!???」

 

まさかここで国からの特別指定されている超強力モンスターの出現にカズマは驚愕する。

 

「はぁ・・・はぁ・・・こいつはきっと、将軍の地位を利用して、私を手籠めにするつもりだろう・・・。私も抵抗はするが、恐らく力及ばず、辱められ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

「バカーーーー!!!このクソったれな世界の連中は、人も食い物もモンスターも、みんな揃って大馬鹿だああああああああ!!!!」

 

カズマが絶叫している間にも、冬将軍は凄まじい殺気を放ちながら、腰に付けていた鞘から刀を取り出し、カズマたちを殺そうと構える。

 

「「「ひいいぃぃぃ!!!」」」

 

冬将軍から放つ殺気にカズマと双子は情けない悲鳴を上げる。冬将軍は凄まじい殺気を隠さず、素早い動きでダクネスに近づき、彼女の剣を刀で真っ二つにへし折る。

 

「あああ!!わ、私の剣が!!」

 

ダクネスは自分の武器を折られて、驚愕している。

 

「精霊は人が無意識に思い描いた思念を受けて、その姿に実体化するわ!けど、冬に街の外を出歩くのは、日本から移住してきたチート持ちの連中くらいだから・・・」

 

「つまりあいつは、日本から来たどっかの大馬鹿野郎が、冬といえば冬将軍みたいなノリから連想して生まれたのか!!?なんて迷惑な話だ!!!」

 

冬将軍が生まれた経緯が自分たちと同じ日本出身者だと聞いてカズマは同郷として頭を抱えずにはいられなかった。

 

「・・・・・・」

 

冬将軍の目の前でさっきから死んだふりをしているめぐみん。それを見てカズマは後でめぐみんを踏んでやろうと考える。

 

「ど、どどどど、どうしようお姉ちゃん!」

 

「お、落ち着きなさい!確か冬将軍は寛大よ!きちんと礼を尽くして謝れば、見逃してくれるわ!!」

 

「な、ならこの雪精を・・・ほら冬将軍様、雪精をお返ししますーーーー!!!」

 

双子は自分たちが捕まえた雪精を見逃して、土下座をして謝罪する。

 

「カズマ何やってんの!DOGEZAよ!DOGEZAをするの!ほら!みんなも双子を見習って武器を捨てて早くして!」

 

「は!!?」

 

「謝って!カズマも早く謝って!!」

 

アクアも瓶の雪精を解き放って冬将軍に向けて土下座をしている。プライドをそこらに捨ててきた元なんとかさんはそれはそれは見事な土下座を行った。だがダクネスは未だに冬将軍と構えている。

 

「おいダクネス!お前も早く頭を下げろ!!」

 

「誰も見ていないとはいえ、騎士たる私がモンスターに頭を下げるなど・・・」

 

「バカーーーー!!!何やってんのダクネス!!早くしないと殺されちゃうよ!!!」

 

「いつもホイホイモンスターに向かっていくくせに、こんな時だけ安っぽくてくだらないプライドを見せてんじゃないわよ!!ぶっ殺すわよ!!!」

 

状況をまるで理解していないダクネスを守るために双子はダクネスを無理やり頭を地に付けさせ、無理やり土下座をさせる。

 

「や・・・やめろぉ!!下げたくもない頭を無理やり下げさせられ、地に顔をつけさせられる・・・はぁ・・・はぁ・・・どんなご褒美だ・・・。はぁ・・・雪がちべたい・・・」

 

「いいからあんたは黙れ!!!」

 

「いいから頭下げて!私、まだ死にたくない!!!」

 

ダクネスはいつも通り平常運転だが、雪将軍を前にして、双子は余裕をなくしており、ダクネスに付き合ってる気力はない。

 

「カズマ!早く武器を捨てて!そのままじゃ雪将軍に襲われるわ!!」

 

「え?お、おう・・・」

 

ザンッ!!

 

土下座をしていたカズマだったが、未だに武器を持っていたことが仇となった。カズマは冬将軍が振るった刀をもろにくらってしまうのだった。

 

 

ー・・・このすば・・・-

 

 

「佐藤和真さん。ようこそ、死後の世界へ」

 

目を覚ましたカズマがいた場所は神殿らしき場所だ。そして、カズマの目の前にいるのは、白い羽衣を身に纏い、白い肌を持ち、長い銀髪をなびかせていた女性だった。

 

「私は、あなたに新たな道を案内する女神、エリスと申します」

 

そう、今まさにカズマの目の前にいるのは、あの世界でエリス教徒たちから深く崇拝されている存在、幸運を司る女神、エリスその人なのだ。

 

「この世界でのあなたの人生は、終わったのです」

 

エリスの言葉を聞いて、カズマはハッキリと思い出した。自分は冬将軍に殺されたのだと。つまりここは、異世界で死んだ人たちが来る転生の間なのだ。

 

「あなたがこっちの世界の女神様ですか?」

 

「はい、佐藤和真さん。せっかく平和な日本からこの世界に来てくれたのに・・・こんなことになってしまい・・・」

 

カズマの境遇を知ってか、エリスは本気で悲しんでくれている。これだけであの駄女神アクアとは違うと本気で考えるカズマ。

 

「まー、この世界に期待を抱いて来た奴らの中で、1番酷い末路だな、お前」

 

「え?」

 

急に真後ろからエリスとは別の声が聞こえてきたカズマはすぐに後ろを向く。後ろにいたのは、自分と同じジャージを着込んだ男だった。

 

「あの・・・勝広さん?お仕事中ですので、今は黙ってくれませんか?」

 

「なんですかー、俺だってこの世界の住人なんですよ?ここでゆったりして何が悪いんですか?」

 

「あなたが勝手に決めただけで、この世界の住人じゃありません!!」

 

ぼけーとしている男の登場でエリスはひどく頭を抱えている。

 

「えっと・・・あなたは?」

 

「俺?あー、俺、伊藤勝広。すぐ別れっけど、よろしくー」

 

カズマの問いに、寝転がっている男、伊藤勝広ことマサヒロは軽く自己紹介する。この態度を見て、カズマはあまり関わっちゃいけない男だと判断し、すぐにエリスに顔を向ける。エリスは咳ばらいをして、本題に入る。

 

「佐藤和真さん」

 

「は、はい!」

 

「せめて私の力で、次は平和な日本で裕福な家庭に生まれ、何不自由なく暮らせるように、転生させてあげましょう」

 

「え!!?マジで!!?そんなことできるんですか!!?」

 

「あなたが望むなら」

 

裕福家庭で何の不自由もない暮らしができる日本に転生できると聞いて、カズマは心躍った。

 

「で、できれば、魅力と知力と体力のパラメーターが平均以上で美少女の幼馴染みがいる人生だとなお嬉しいですーーー!!」

 

「お前、そんな欲望を抱くと、転生しても早死にするぞ」

 

「うるさいよお前!!!で、どうなんですか、エリス様?」

 

「え、えーっと、そこまでは難しいかと・・・」

 

カズマの欲望はちょっと難しいらしいが、転生ができることにカズマは嬉しさが大きく上回っているようだ。

 

「いやー、なんにしても、よかったーー!!もう終わりかと思ったけど、首の皮1枚繋がった感じですわー!これって俺が、がんばってきたご褒美ですよね?今まで本当、ひどい人生でしたからね!!」

 

「わかる。お前の気持ち、すごいわかる。あの世界は本当に、ろくでもないからな!!俺もお前と同じ経験をしてきたからすっっっっごく理解できる!!!」

 

「え?」

 

「勝広さん!!」

 

今、この男は何と言った?自分と同じ経験?この死後の世界の住人のくせに?カズマはそう思わずにはいられなかった。

 

「俺もお前みたいにゲームみたいに冒険できると思って、この世界に転生したのに・・・俺の周りにいる奴は本当に変な連中だった。水の女神とやらを崇拝するクソ迷惑宗教のアークプリーストだったり、中二病全開の紅魔族だったり、ほいほい敵に突っ込みたがるドMの変態ご令嬢だったり・・・俺も冒険者だってのに、普通のバイトをやらさせられるわ、空飛ぶキャベツ狩りをやらされるわ・・・馬小屋で寝泊まりしたら、凍え死にそうになるわ・・・。毎朝、まつ毛が凍る俺の気持ち、わかるか?」

 

「わかる・・・もうそりゃもう!!俺の仲間も女神を自称する奴は態度がでかいだけで何の役にも立たないし、目を離す隙にすぐに喧嘩を引き起こして、人様まで巻き込む双子と、魔法を打つたびにぶっ倒れる頭のおかしい爆裂娘と、ドMで変態で、攻撃が全く当たらないクルセイダーが集まって・・・もう・・・」

 

自分の気持ちを理解してくれるどころか、同じ境遇をしたマサヒロにカズマはひどく共感した。

 

「挙句の果てに、ボスキャラを封じ込めたと思ったら、俺は死んじまうわで、本当、ろくでもない世界だよ。ゲームバランス悪すぎだろ」

 

自分たちは借金を背負わされた身ではあるのに、マサヒロの場合は死んでしまうという不遇な待遇に、カズマは同情する。

 

「て、あれ?てことは・・・お前、日本からの転生者か?」

 

「え?ああ、そうだけど」

 

マサヒロが肯定したところで、カズマはさっき思い出した。エリスは言っていた。マサヒロはこの死後の世界の住人ではないと。

 

「勝広さんは、もう16年もこの死後の世界に滞在していらっしゃるのです・・・。私もほとほとまいっておりまして・・・」

 

「じゅ、16年!!?日本で裕福な家庭に転生できるのに、なんでここに住んでんだ!!?」

 

カズマの最もな疑問にマサヒロは腕を組ませる。

 

「ま、あんなろくでもない世界でも、俺は気に入ってたしな。俺、あそこに親友もいるし、結婚もしてるしな。あいつらがいる世界を見守りながらここで暮らすのも、悪くないかなーって思ってな」

 

「なんて身勝手な・・・」

 

「・・・それにな。俺にはあの世界に未練があるんだよ。妻や娘たちが気になって、中々日本に転生できないでいる。だからって、アンデッドになる気はない。あいつらの様子を確かめるまでは、是が非でも転生しない。ここに来る時から、そう決めてんだ」

 

真剣みを帯びたマサヒロの顔を見て、並々ならぬ決意を見て、カズマは何も言えなくなる。エリスも思うところがあるのか、マサヒロを日本に転生すべきかもうしばらく保留すべきか非常に困った様子でいる。

 

「・・・お前も、あのろくでもない世界が、割と気に入ってるんじゃないか?だから・・・涙を流してる」

 

「・・・え・・・?」

 

マサヒロに指摘され、カズマはようやく、自分が涙を流しているのに気が付いた。その様子を見ていたエリスは心が痛んだような表情をしている。

 

「・・・生まれ変わった、佐藤和真さんに、またよき出会いがあらんことを」

 

そういいながら、エリスを日本に転生させようとカズマに向かって、暖かい光を放とうとしている。

 

(・・・そうか・・・。この人の言うとおり、俺は・・・大嫌いだと思っていたあのろくでもない世界のことが、案外気に入ってたらしい・・・)

 

カズマの脳裏に思い浮かんだのは、自分が連れてきたアクアと、異世界で出会った仲間たちともに冒険をする、自分の姿だった。

 

(・・・もう少し・・・あいつらと・・・冒険したかったな・・・)

 

カズマがほんの少し寂しい気持ちを抱きながら、転生されようとしたその時・・・

 

『さあ、帰ってきなさいカズマ!!』

 

「え?」

 

どこからともなく、この場にはいないアクアの声が響いてきた。

 

『何あっさり殺されてんの!!死ぬのはまだ早いわよ!!』

 

「な、なんだ!!?」

 

「え、何々?何が起こってんの?」

 

突然響くアクアの声にカズマもマサヒロも驚愕している。だがそれ以上に驚愕しているのが、エリスであった。

 

「こ、この声、アクア先輩!!?まさか、本物!!?」

 

どうやらエリスとアクアは先輩後輩の間柄で、アクアが先輩で、エリスが後輩のようである。

 

『ちょっとカズマ!聞こえるー?あんたの体に復活魔法をかけたから、もう帰ってこられるわよー!』

 

「おお!!マジか!!?」

 

「あー、それ、無理だから。俺らって、1度日本からこの世界で生き返ってるから、なんか天界規定とかどうとかでもう復活できないんだってよ」

 

「え?そうなの?」

 

天界規定によって復活魔法をかけてももう異世界で復活は出来ないと聞いて、カズマはエリスに顔を向ける。それに同意するようにエリスは首を縦に頷く。

 

「アクアー!俺って日本から異世界で1度生き返ってるから、天界規定とやらでもう生き返ることができないんだってよ!!」

 

カズマはアクアに聞こえるように大きな声でそう伝えると、アクアはありえないといった声をあげる。

 

『はああああ!!?誰よそんなバカなことを言っている女神は!!ちょっとあんた、名乗りなさいよ!!日本担当のエリートである私にこんな辺境担当の女神がどんな口きいてんのよ!!』

 

アクアの声にエリスはかなり引きつった顔をしている。

 

「えっと、エリスっていう女神様なんだけど・・・」

 

『エリス?この世界でちょっと国教として崇拝されてるからって調子こいてお金の単位にまでなった上げ底エリス!!?』

 

「なぁ!!?」

 

『ちょっとカズマー!!』

 

「はい」

 

『それ以上エリスがなんかごたごた言ってるようなら、その胸パッドを・・・』

 

「「えっ!!?パッド!!?」」

 

アクアの発言の胸パッドと聞いたカズマとマサヒロはすぐにエリスに視線を向ける。

 

「わ、わかりましたから!!特例で、特例で認めますから!!今門を開けますからーーー!!」

 

「「パッドなんですか?」」

 

「全く・・・アクア先輩は相変わらず理不尽な・・・」

 

「「パッドなんですね!!?」」

 

エリスは涙目で特例で復活を認め、すぐにカズマの復活の準備を始めるのだった。

 

 

ーこのすばぁ!!!

 パッドでも構いませんよ?-

 

復活の準備が終わったエリスはカズマの足元に魔法で現世と繋がる魔方陣を描いた。

 

「これで現世と繋がりました。こんなこと、普通ないんですよ?」

 

カズマが復活できると聞いたマサヒロはエリスに突っかかる。

 

「いいなー。エリス様、俺も復活させてくださいよー。それで妻と娘たちに会いに行くんです」

 

「ダメです。あなたは天界規定以前に、16年前に身体がなくなってるので復活できません」

 

「くそう!こんなことならもっと遅くに死ねばよかった!そうすれば復活できたのに!!」

 

「軽々しく死ぬなんて言わないでください!!」

 

マサヒロはどう足掻いても復活できないとわかり、悔し涙を流している。

 

「・・・和真さん」

 

「は、はい」

 

「このことは・・・内緒ですよ?」

 

エリスの茶目っ気たっぷりの笑みを見て、カズマはほんの少し、頬を赤らめる。するとカズマは現世へ向かって宙を浮いていく。

 

「く・・・くそう・・・お、おい和真とやら!」

 

「あ、はい」

 

カズマが現世へ向かおうとした時、マサヒロはカズマに向かって、何かを伝えた。カズマは伝わった言葉によってマサヒロを見ようとしたがその瞬間、カズマは現世へと戻っていったのだ。

 

「・・・復活できない、かぁ・・・。世知辛いなぁ・・・。ところでエリス様」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「あなたって、胸パッドしてたんですね」

 

「い・・・いい加減、日本に転生されてください!!!いつまで居座るつもりなんですかぁ!!!」

 

「転生、しません」

 

 

ーこのすば!-

 

 

「・・・ズマ・・・カズマ起きてください!!カズマぁ!!」

 

「はっ!!」

 

カズマが目を覚ますと、自分は雪原にいた。そして視界の先には自分を心配してくれている仲間たちと、復活させてくれたアクア本人がいた。

 

「やっと起きたわね。たく・・・あの子は頭固いんだから・・・」

 

「「「カズマー!!」」」

 

「おわっ!!?」

 

ちゃんと復活したことを確認しためぐみんとティアとダクネスはカズマに抱き着いた。抱き着かれたカズマは顔を赤くする。

 

「ねぇ、ちょっとカズマー、何照れてんのよー?なんとか言いなさいよー。この私があなたを復活させてあげたのよ?何か言うことあるでしょー?」

 

相変わらずでかい態度のアクアにカズマはアクアとエリスとチェンジしたいと考え始める。

 

「何とか言いなさいよー。感謝の言葉とかー、今まで高貴な女神さまに舐めた態度をとって申し訳ございませんとかー・・・」

 

「女神、チェーンジ!!」

 

カズマの言葉にアクアは当然ながら憤慨する。

 

「上等よこのクソニート!!だったら今すぐエリスに会わせて・・・」

 

ガッ

 

「ふぎゃっ⁉」

 

アクアがカズマにゴッドブローをくらわせようとした時、ずっと黙っていたアカメがアクアの足を引っかけてそれを阻止する。

 

「アクア、うるさい。今機嫌が悪いんだからごちゃごちゃ言うな」

 

「ご・・・ごめんなさい・・・」

 

「それから、カズマ。あんたも簡単にくたばってんじゃないわよ。残される側の気持ちとか考えなさいよ」

 

「ご、ごめん・・・」

 

明らかに不機嫌そうにしているアカメにアクアもカズマも申し訳なくなっている。不機嫌の理由は自分たちを残して死んだ父親と連想しているからだ。ティアはそれをわかってるゆえに、複雑そうな顔をしている。

 

「カズマ、後でアカメにもう1回謝っておけ。言動はきついが、あれでもカズマを心配してたんだ」

 

「ああ・・・わかったよ」

 

迷惑をかけた自覚をしているのか、カズマはダクネスの言葉を了承する。

 

「具合はどうですか?どこか調子が悪いところは・・・」

 

「一応大丈夫そうだ」

 

カズマが問題なく生き返っているとわかり、めぐみんは安堵する。

 

「はぁ・・・よかったです・・・ひどい殺され方をしてたもので・・・」

 

「え!!?ひ、ひどい殺され方って・・・」

 

「カズマ、冬将軍に首チョンパされたんだよ。思い出すだけで吐き気を催すくらいそりゃあもう・・・」

 

「く、首チョンパぁ!!!???」

 

首チョンパされて殺されたと聞いてカズマはひどく顔を青ざめる。遠くを見て見ると、確かに、カズマが首チョンパされた後がもうくっきりと残っていた。この世界の冬は食料も乏しい環境の中それでもなお、生存競争を生き残れる者のみ活動が許される。カズマたちのような駆け出しにこなせるクエストはないのだ。

 

「・・・はい、撤収」

 

それが理解したカズマたちはクエストをリタイアして、この雪原から離れるのであった。

 

『討伐クエスト!!

雪精たちを討伐せよ!!

リタイア!!』

 

 

ーこ・の・す・ばぁ!!!-

 

 

雪原からギルドに戻ってきたカズマたちは受付で今回のクエストの報酬をもらいに来た。リタイアしたとはいえ、討伐してくれた報酬は応じるようだ。

 

「しかし、小1時間で15匹・・・150万か・・・。稼ぎはでかいが、死んだのが割に合わないな・・・」

 

150万というお金を得ることは出来たが、1億の借金の前では、空しい報酬である。しかも今回、カズマが復活したとはいえ、死んでしまったのだからなおさらだ。

 

「なぁ、冬将軍って特別指定だったよな?あいつにはどんだけの報酬がかかってるんだ?ハッキリ言って、3億の報酬があるベルディアよりも強かったぞ?」

 

そこでカズマは今回遭遇した冬将軍にどれだけの報酬があるのか尋ねてみた。

 

「ベルディアの場合はただ魔王軍の幹部で完全に人類の敵であるからね。その危険度が高いから3億になってるんだよ。でも冬将軍は別。あれは雪精に手を出さなければ無害なモンスターだからね」

 

「それでも冬将軍を討伐した際に与えられる報酬は2億よ。それだけ、冬将軍1体の戦闘能力が化け物じみているってことよ」

 

2億・・・それだけのお金があれば1億の借金なんて屁のようなものだし、それでも1億のお釣りがくる。カズマは目先の欲にかられそうになっている。

 

「・・・めぐみん、爆裂魔法は・・・」

 

「爆裂魔法では冬将軍は倒せませんよ。あれは人ではなく精霊ですからね。精霊は本来実態を持たない魔力の固まりのような存在です。その精霊たちの王ともなれば、魔法防御もそりゃすごいものです。爆裂魔法ならばダメージを与えられますが、一撃で葬るのは難しいでしょう。というか、あんな恐ろしい存在に爆裂魔法を打ちたくないです。絶対殺されてしまいます」

 

めぐみんの爆裂魔法でも倒しきれないと聞いて、カズマは落胆する。倒せる人物といえば、魔法のエキスパートであるモンスターショップの主、マホなら可能性はあるだろうが、そのマホからの借金を背負っている身だ。意地でも動くことはないだろう。というか、マホなら冬将軍が日本人が原因で生まれたと知ってるだろうから、乗り気でないだろう。

 

「ふふん、カズマ、なんか落ち込んでいるようだけど、この私はただ土下座してたわけじゃないわよ?これを見なさい!」

 

得意げに笑うアクアが取り出した瓶の中には、あの雪原から持ってきたのか雪精が1匹だけ残っていた。

 

「それ・・・まさか雪精!!?」

 

「ふふん、全部逃がしたフリをして、1匹だけ残しておいたのよ!冬将軍も私の迫真の演技は見抜けなかったようね!」

 

「でかしたアクア!よし、そいつをよこせ、討伐してやる」

 

カズマは追加報酬として10万を得ようと考えるが、アクアがそれを抵抗する。

 

「ダメよ!この子は家に持ち帰って家の冷蔵庫にするの!!」

 

「そいつの討伐報酬は1匹10万だぞ!!冷蔵庫なんかよりもよっぽど・・・」

 

「嫌よ!!この子は嫌ぁ!!もう名前だって付けてるのに、殺させるもんですか!!やめてやめてーーーー!!!」

 

「予想外の抵抗・・・」

 

予想してなかったアクアの激しい抵抗にカズマは渋い顔をしている。

 

「やめてやれ、カズマ。アクアに生き返らせてもらっただろう?そのお礼だと思え」

 

「・・・はぁ・・・仕方ないなぁ・・・」

 

確かにアクアに生き返らせてもらった恩があるゆえに、深い手出しは出来ないカズマは渋々ながら討伐を諦める。

 

「はぁ・・・それにしても雪精、愛らしいわね・・・。生かしてもらえてよかったわね、お前」

 

アカメはアクアが抱えている雪精をうっとりとした表情で見つめている。

 

「珍しいね。お姉ちゃんが小さい生物に気を許すなんて」

 

「そいつは動物じゃなくて精霊だしね」

 

「どういうことだ?」

 

「実はお姉ちゃん、小動・・・」

 

「余計なことは言わなくていいわよ」

 

ゴチンッ!

 

「いったぁ~・・・ぶたなくたって・・・」

 

ティアが何か言いかけたところで、アカメがげんこつをしてそれを止める。

 

「この子は大事に育てて、夏になったら氷をいっぱい作ってもらうのよ。そしてかき氷屋を出すの」

 

「自分の利益のためじゃない。そんな使い方をするくらいなら私に譲りなさいよ」

 

「い、嫌よ!!大事にするのは変わりないもの!!」

 

明らかに自分のために使おうとしているアクアにアカメは譲ってくれというがアクアは断固として譲る気はなかった。

 

「ねぇ、この子って何食べるの?」

 

「そもそも雪精って何かを食べるのでしょうか?」

 

「ふわふわしていて、柔らかそうで、むしろこいつに砂糖をかけて口に入れた方がおいしそうだな」

 

「た、食べさせないわよ!」

 

「マホなら何か知ってそうだろうけど・・・正直、今は関わりたくないね・・・」

 

「そうだな・・・あの一件以来、俺たちまで目の敵にされているからな・・・」

 

「わ、私のせいじゃないわよ!!?」

 

ジャイアント・トードの人形を壊されてからというもの、マホはカズマたちを目の敵にしており、借金を返済するまではぎすぎすした関係は改善できないようだ。

 

「というか、お腹すきましたね」

 

「何か頼みましょう。何にしよっかなー」

 

アクアたちが料理を注文している間にカズマは死後の世界で出会ったエリスのことを考えていた。カズマが死んだ時は悲しんでくれて、生き返らせる時は優しく微笑んでくれた、色物枠でない本物の美少女なのだ。何も思わないわけがない。

 

(この世界にやってきて、ようやくメインヒロインが登場した――!!)

 

「ちょっとカズマー、あんた食べないのー?」

 

「え?」

 

カズマが考え事をしている間に、料理はカズマたちの前に並べられている。それも1つや2つでない。大量にだ。

 

「て、お前らどんだけ注文してんだぁ!!?」

 

「私ほどの大魔法使いともなると、活動するための贄が必要となるのだ」

 

「今日は私がカズマを生き返らせてあげたのよー?これくらいのご褒美いいじゃない!クエストの報酬も少しは入ったし」

 

「冬を越すための金なんだよ!!」

 

「何。金がなくなったなら、またクエストを受ければいい。次はどんなモンスターがいいか・・・」

 

料理を大量にバクバク食べていくメンバーを見て、カズマは選択肢を間違えたと激しく後悔した。

 

「・・・はぁ・・・まぁいいか。それより・・・」

 

カズマはアクアたちと同じくバクバクと食べ続けるアカメとティアを見つめる。

 

「・・・ん?どうしたのカズマ?私の顔に何かついてる?」

 

「気持ち悪いわね。じろじろ見てんじゃないわよ」

 

「わ、悪い・・・」

 

カズマは慌てて自分の料理を装い、何でもないと主張する。が、脳裏に浮かび上がったのは死後の世界で会ったマサヒロの最後に放った言葉だ。聞き取りにくかったが、マサヒロはこう言っていた。

 

『これからも、俺の娘たちを、よろしく頼む』

 

(・・・まさか、な)

 

娘たちと言っていたところから、双子を見たが、きっとマサヒロは自分をからかったに違いない、絶対にありえないと思い、カズマは自分の料理を頬張るのだった。




希代の天才魔法使いめぐみん。

その愛くるしさとは裏腹に、彼女の爆裂魔法は絶大で、芸術的なまで壮麗だった。
子どもからお年寄りまで、そして、邪悪な魔物までもが涙するのであった。
その魔法を一目見ようと世界中から見物客が押し寄せ、社会問題になるほどであった。

偉大なる魔法使いの書、第126章

これを読んだカズマとアカメの反応

カズマ「・・・残りの章はいったいどこに行ってしまったんだ?」

アカメ「でも、爆裂魔法は本当に凄まじいし、言ってることは間違ってないし、今回も素晴らしい爆裂だったわ」

カズマ、アカメ「ナイス、爆裂!」

めぐみん「ナイス、爆裂」

次回、この愚か者に脚光を!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。