このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

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この愚か者に脚光を!

冒険者ギルドで今日も今日とて、借金返済のために集まっているカズマたちのパーティ。カズマたちは仕事の前に食事をとっており、わいわいと騒いでいる。カズマはちょっと乗り気でなさそうだが。そんなカズマたちの姿を見て、苛立ちを隠せないでいる男がいた。くすんだ金髪で左目下にほくろが付いていおり、ガラが悪そうな・・・一言で言えばチンピラである。

 

「・・・酒がまずい」

 

その男の名はダスト。このアクセルの街では名が知れている戦士の職業を生業としているチンピラだ。ただし、名が通ってると言っても、いい方ではなく悪い方である。

 

「何しかめっ面してんのよ?ただでさえ冴えない顔が、より一層チンピラっぽくなってるわよ?」

 

そう言いながらサラダを食べているこの赤髪を後ろに束ねたポニーテール、そして青いマントを羽織った幼さを残した少女の名はリーン。ダストのパーティの紅一点で、ウィザードを生業としている。

 

「誰がチンピラだってーの。けっ、あの男が来てから、この街も居心地が悪くなったよなーって思ってただけだってーの」

 

「あの男、というと、あそこにいるあの新入り冒険者のことか?」

 

カズマたちを背後から親指を立ててさしているのは、酒場だというのに装甲鎧を身に纏った男の名はテイラー。ダストたちのパーティのリーダーを務めている男で、ダクネスと同じクルセイダーを生業としている。

 

「あいつらって、確か魔王軍幹部のベルディアとの戦いで活躍したパーティだよな?」

 

そう言っているのは弓を背負い、軽薄そうな黒髪の男、キース。ダストのパーティの一員でダストと1番気が合う男だ。職業はアーチャーを生業としている。

 

「らしいな。俺は現場に遅れて後から到着したから、詳しくは知らねぇけどな」

 

ダストたちパーティもベルディア戦には一応は参加していたが、その中でダストだけが遅れてしまい、アクアの出した水の洪水に巻き込まれて流されてしまったのでベルディアの戦いに参加できないでいたのだ。

 

「魔王軍幹部の攻撃をその身で受け止め、苦痛に表情を歪むことなく、仲間に笑顔を見せるのは、まさにクルセイダーの鑑だった」

 

テイラーは同じクルセイダーとして、ダクネスを尊敬の眼差しで見ている。

 

「紅魔族の子も、あの魔法の威力は凄まじかったよ。ウィザードとしての格の違いを認識させられたわ」

 

リーンも同じ魔法使いとして、めぐみんを褒めている。

 

「あの青髪のアークプリーストが出した水は圧巻だったぜ」

 

鼻の下を伸ばしているキースの視線はアクアのお尻に向けている。

 

「すごいって言えばアヌビス出身の双子もそうだよね。お互いに息の合ったあの連携の攻防は見たことないもの」

 

「ああ。さすがは熟練のシーフと言ったところか。魔王軍幹部の攻撃を全て躱しきってみせたのだからな」

 

「しかもあの赤髪の嬢ちゃん、ベルディアの武器にひびを入れさせてたよな?いやマジすげぇよ」

 

ダストを除いたメンバーたちは双子の実力を尊敬している。キースは視線をアクアのお尻から、ティアの胸と、アカメのお尻に視線を変えていたが。

 

「けっ、マジで気に入らねぇ。イケてる女5人に囲まれてるあの冴えない冒険者がよぉ」

 

ダストは本気でカズマを気に入らなく思っており、カズマにたいして悪態をこぼしている。

 

「そもそもの話だ!このアクセルの街を仕切っているこのダスト様に挨拶1つもなしってのも気に入らねぇ!」

 

「誰が仕切ってんだ誰が。仕切るどころか、お前は迷惑しかかけていない存在だろう」

 

的外れな発言をしているダストにテイラーがツッコミを入れる。キースもリーンも何か言いたげのようだ。そんな時、カズマたちパーティの声が聞こえてきた。

 

「今日はカズマのことを考えて、荷物持ちにしようと思っているんですよ」

 

「そうね。無理しない方がいいわ。あんた、昨日死んだし」

 

「そうだな。強敵がいないのは残念だが、優先すべきはカズマだ」

 

「賢明な判断ね。一応、血液は良好だけど、激しい運動をすれば、貧血を起こすもの」

 

「あんまり無茶しないでね?具合が悪くなったら言ってね?」

 

「お前ら・・・今日はどうした?なんか変なもんでも食ったか?」

 

「失礼な!私たちは正常ですよ!」

 

どうやらアクアたちは冬将軍に殺されたカズマのことを考えて、討伐クエストより楽な荷物持ちという仕事を受けるようだ。一部物騒な会話が聞こえたが、ダストはそれを無視して、カズマたちパーティ・・・というより、カズマに聞こえるようにわざとらしく声を上げる。

 

「全員が上級職でいい女、そんなハーレムにいるのが最弱職の冒険者ってか!さぞかし楽ちんな人生を謳歌してんだろうよ!羨ましい限りだねぇ!」

 

ダストの声を聞いたカズマたちはダストに視線を向ける。カズマは明らかにこめかみをひくひくさせながら、怒りを抑えてダストと対面する。

 

「・・・おいお前、もう1度言ってみろよ」

 

「ああ、何度だって言ってやんよ。荷物持ちの仕事だと?上級職が揃ったパーティなのに、なーんでそんな簡単な仕事を引き受けんのかねぇ?もっとマシな仕事受けたらどうよ?大方、お前が足引っ張ってそいつらに負担をかけてんだろう?なぁ?最弱職の冒険者さんよぉ?」

 

自分を見下している発言をしているダストにカズマは苛立つが、チンピラのただの言いがかりだと判断し、我慢して何も言い返さなかった。

 

「おいおい、なんで言い返さないんだ?ほれ、言い返してみろよ?どうせ図星なんだろう?たくっ、なっさけないねぇ、上級職のいい女が5人揃っておきながらよぉ。俺が同じ冒険者だったら恥ずかしくておちおち街も歩けねぇぜ。なぁ!お前らもそう思うだろー?」

 

『ぎゃはははははは!!!』

 

ダストの発言にギルド全体が大爆笑で響き渡った。唯一ダストの発言に笑わなかったのは、先日のベルディア戦に参加してカズマの活躍を知っている冒険者全員と普段からカズマの苦労を知っている受付嬢全員である。この中には笑っている冒険者を注意する者もいる。

 

「ちょっとやめなさいよダスト。人のパーティにとやかく言う権利はあんたにはないでしょ」

 

「なんで止めんだよリーン!俺は冒険者としての心得をだな・・・」

 

「ただの焼きもちでしょ。あんたは人様に迷惑をかけないと生きていけないの?」

 

ダストのパーティメンバーであるリーンもダストの言い分を咎めている。

 

「うちのバカがすまないな。きつく言っておくから、こちらのことは気にしないでくれ」

 

「ああ、大丈夫だから気にすんなって」

 

自分のパーティメンバーの問題としてリーダーであるテイラーがカズマに謝罪をする。カズマはダストの発言に気にしていながらも、何でもない風に装う。

 

「ねぇカズマ、そろそろクエスト受けようよ。あんな奴は気にしないでさ」

 

「そうよ。あんなチンピラクズは無視するに限るわ」

 

「そうですね。ああいうのは相手にしない方がいいですよ」

 

「奴の言うことなど気にするな。ただの酔っ払いの戯言だ」

 

「そうよそうよ。あの男、私たちを連れてるカズマに妬いてるのよ。あんなの放っておいてさっさと仕事に行きましょう」

 

双子たちはダストの相手をしない方がいいと発言する。カズマもその案には賛成なので、クエストを受けるために荷物持ちの依頼書を手にしようとする。

 

「けっ!いい女におんぶにだっこされやがってよぉ。苦労知らずでいいご身分だなぁ、おい!変われるもんなら変わってやりたいねぇ!何なら今すぐ変われよ!」

 

このダストの発言だけに引っかかったカズマはぎろりとダストを睨みつけて大声をあげた。

 

「大喜びで変わってやるよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

『・・・えっ?』

 

カズマのこの一声に先ほどまでの大爆笑が静寂に変わっていった。変わってほしい発言をしたダストも目を点にして唖然としている。

 

「「「「「え・・・」」」」」

 

カズマの変わってやる発言にはアクアたちは動揺を隠せない姿勢を見せている。

 

「え・・・今・・・なんて・・・?」

 

「聞こえなかったのか、ああ!!?大喜びで変わってやるっつってんだよ!!おいお前!!さっきからごちゃごちゃごちゃごちゃ好き放題なことを言いやがって!!ああ、俺は確かにパーティの中じゃ1番の最低ステータスで最弱職の冒険者だ!!それは否定しないし、言い訳もしない!!認めてやるよ!!だがなぁ・・・お前その後なんつった!!?ああ!!?俺の耳に聞こえるように言ってみろよ!!」

 

「え・・・え・・・そ、その後・・・?」

 

明らかにキレまくっているカズマの姿勢にさっきまで強気だったダストはたじたじである。

 

「えーっと・・・いい女5人も連れてハーレム気取り・・・」

 

「ハーレム!!!ハーレムっつったか今!!?お前の目は節穴か!!!お前今いい女って言ってたがお前の言ういい女って誰のことだよ!!!俺の目には美少女と呼べるいい女がどこにもいないんだが!!!!まさかあれ5つのことを言ってんのか!!?お前はバカか!!!あれのどこがいい女なんだ!!!お前の目は腐りに腐りきってんのか!!!!」

 

「「「「「あ、あれ・・・っ!!?」」」」」

 

カズマにあれ呼ばわりされ、物同然に扱われたアクアたちは目を見開いてショックを受けている。

 

「なぁ、もっと現実を見ろよ!!俺のパーティには女なんてどこにもいねぇんだよ!!目を覚ませよ!!!」

 

「ご、ごめん・・・俺も酔った勢いで言いすぎた・・・」

 

「あ、あのぅ・・・カズマさん・・・?」

 

アクアが何か弱弱し気に何かを申そうとしているがカズマはそれを無視して発言を続ける。

 

「てか重要なのはそこじゃねぇよ。お前、俺のことを苦労知らずだとかどうとか言いやがったな?苦労知らず!!?苦労知らずって確かに言ったよなぁお前!!!だったら1日変わってやるから身をもって味わって来いよ!!俺がどれだけ苦労をしてないかっていうのが1発でわかるからよぉ!!!」

 

カズマの二度目の変わってやる発言にダストは驚きつつも内心ではハーレム気分を味わえるチャンスと思い、ちょっと嬉しい気持ちになっている。

 

「おいおい、本当にいいのかよ冒険者の兄ちゃんよ。俺、案外ねちっこいから居心地が良すぎて1日と言わずにって駄々をこねるかもよ?それでもいいのかよ?」

 

「いいっつってんだろ。そして俺は断言してやる。今日のクエストが終わるころには、お前は俺に泣いて土下座で仲間を返してくれと俺に謝罪することをな」

 

「言ったな?もしお前の宣言通りになったらお前の言うことを何でも聞いてやるよ。お前らもそれでいいか?」

 

ダストは自分の仲間たちにパーティ入れ替えについて尋ねる。

 

「俺は別に構わねぇけどよ・・・」

 

「あたしも別にいいよ。てかダスト、居心地がいいからって本当に駄々とかこねないでよ?子どもじゃないんだから」

 

「俺も一向に構わんぞ」

 

(おっしゃああ!!)

 

仲間たちの了承ももらってダストは内心では非常に嬉しそうにしている。これがダストの運の尽きだとも知らずに。

 

「決まりだな」

 

「ね、ねぇカズマさん?勝手に話を進めてるけど私たちの意見は・・・」

 

「通るわけねぇだろ。寝言は寝て言えこの駄女神」

 

アクアは何か言いたげだったが、カズマは聞く耳持たず、パーティ1日交換が決まったのであった。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

『討伐クエスト!!

ゴブリンの群れを一掃せよ!!』

 

「っしゃああああああ!!あいつ、本当にトレードに応じやがったぜ!!あいつバッカじゃねぇの!!」

 

荷物持ちの仕事からゴブリン討伐クエストに変更になったアクアたちはダストと共にゴブリンの出現情報の近くの平原にやって来ていた。ダストはアクアたちとはちょっと離れた場所で嬉しい気持ちを爆発していた。

 

「何を叫んでんの?あのチンピラ」

 

「チンピラクズの考えることはよくわからないわね」

 

ダストの叫びを聞いていた双子はお互いに首を傾げている。

 

「ねぇねぇ、ゴブリン退治に行くって話だけど、やっぱり強い敵を倒しに行かない?ドラゴンとか!私たちの手にかかればお茶の子さいさいよ!」

 

「いやいや・・・ギルドの時もそうだが、あんた何言ってんだ?いや、そりゃ、あんたらならいけるかもだが・・・」

 

明らかに無茶難題なことを言いだしているアクア。そして、それを同意しているのはダスト以外の全員であった。

 

「確かにドラゴン退治は実力を知らしめるいい機会だわ。なんなら、今からでもクエストを変えようかしら?」

 

「それはいいアイディアだね!カズマってば、私たちが熟練者であるってことをもうすっかり忘れてるみたいだし」

 

「確かに名案だ!一度ドラゴンのブレスを浴びてみたかったのだ!灼熱の息を全身に浴び、こんがりと・・・いいっ!!」

 

「ドラゴン退治ですか。いいですね!その身を守りし堅牢な鱗を、我が爆裂魔法で剥ぎ取ってみせましょう!!」

 

「いや、無理無理無理!絶対無理だって!」

 

今からでもクエストを変える気でいるメンバーたちにダストは却下している。

 

「いや、確かにあんたらなら倒せる・・・倒せるんだが、ほら、俺はただの戦士だ。俺じゃ本当に役不足でな。物足りないのは百も承知だが、どうかここは、ゴブリン退治で手を打ってくれねぇか?」

 

ダストの必死さが伝わったのかどうかは知らないが、アクアたちは一応は納得してくれた。

 

「仕方ないわねー。特別にそっちの実力に合わせてあげるわ。感謝しなさい」

 

「確かに、あんたごときチンピラクズにドラゴンを相手できるとは思えないし」

 

「本当はドラゴン討伐して、カズマの認識を改めようと思ったんだけど、まぁいいか」

 

「そうだな。ここは1つ、この男に従うとしよう」

 

「まぁ、いいでしょう。ドラゴンスレイヤーはまた別の機会に」

 

納得してくれた様子を見てダストは一安心した。

 

「なぁ、あんたら、なんであんな最弱職とパーティ組んでんだ?上級職のあんたらならどんな奴でも選び放題だろ?」

 

「「「「「ギクッ!」」」」」

 

ダストの純粋な疑問に5人はビクついた。ダストは知らないようだが、アクアはともかくとして、他のメンバーは全員パーティに入れたくないと言われているのだから当然の反応だ。

 

「そ、それは・・・あれよ!カズマを放っておけなかったからよ!」

 

「そ、そうね。第一、あんな最弱職を放っておいたら、間違いなくカエルに食われるわ」

 

「そ、そうそう!決して、もう面倒見きれませんと言われて捨てられたわけじゃないんだから!」

 

「そ、そうですよ。決して他の冒険者に断られて拾ってくれる人がいなかったからというのではないですよ!」

 

「う、うむ。一度組んだ相手からもう勘弁してくれと拒絶されたわけではないぞ?人づてに極悪非道な冒険者にか弱い女性4人が虐げられていると聞いてぜひ参加・・・ではなく、クズな行動をしないように見張っているのだ!」

 

明らかに必死さがにじみ出ているのが見え見えだが、ダストにはそうは見えなかったようで納得した。

 

「ふーん、見張りねぇ。ま、そりゃそうだよな。そうじゃなきゃ、誰があんな最弱職と組むかっての」

 

「そうよそうよ!私たちの方がすごいのに、最近調子に乗っちゃってね。もっと私を敬って、甘やかすべきだと思うのよ!」

 

「そうですよ。カズマはもっと大事に扱われるべきだと思います」

 

「ま、せめて扱いだけはどうにかしてほしいものだわ」

 

「そうそう、私たちより10年遅くに冒険者になったくせにさ」

 

「カズマは我々を甘く見ているからな。今回の一件で私たちがいかに重要かを知らしめよう」

 

アクアたちは今回、ぞんざいな扱いをしたカズマを見返すためにいつも以上に張り切っている。

 

「そうだ、そういや自己紹介してなかったな。俺はダスト、一応戦士をやってる。攻撃スキルはそれなりに振ってる。よろしくな」

 

ダストの軽めな自己紹介とスキル紹介に則ってアクアたちも自己紹介する。

 

「私はアクアよ。あのアクシズ教団が崇拝する水を司る女神、アクア様とは・・・」

 

「という、残念な設定をやってるのがアクア。単なる妄想だから気にしないであげて」

 

「ちょっと!!私の華麗な自己紹介を・・・」

 

「いいから、さっさとこいつにスキルを教えなさいよ。そんなウザい前座なんていらないのよバカ」

 

「うぅ・・・ウザいって・・・。・・・宴会芸スキルとアークプリーストのスキルは全部使える・・・得意なのは花鳥風月・・・うぐぅ・・・」

 

アカメの辛辣な態度にアクアは泣きながらスキル紹介を行った。

 

「宴会芸スキルって・・・でもアークプリーストのスキルは全部使えるって、すげぇじゃねぇか!」

 

アークプリーストのスキルを全部使えると聞いて、ダストは本当に純粋にすごいと思った。

 

「私はティア。職業はシーフだよ。使えるスキルは盗賊の引継ぎスキルはもちろん、状態異常付与とか、ダンジョンとかで使えるサポートスキルを山ほど持ってるよ」

 

「お!状態異常付与まで持ってるのか!そりゃいい!ぜひ俺の武器にも使ってくれよ!」

 

「私はアカメ。見て通り、私とティアは双子よ。職業はシーフ、短剣スキルを全振りしているから、この中で攻撃力が1番高いわ」

 

「おお!そりゃすげぇな!シーフは攻撃力が低いって話だけど、そうでもないみたいだな!」

 

双子のスキルを聞いてダストはシーフは攻撃力が低いという認識を改めた。

 

「私はダクネス。クルセイダーを生業としている。アカメと違って攻撃は苦手だが、盾になることは大得意だ!防御スキルをフル活用するので、遠慮なしに囮として使ってくれ!!」

 

「お、おう・・・よくわからんが、クルセイダーのことはよく理解してる。頼りにさせてもらうぜ!」

 

盾役になりたがっている理由は知らないが、クルセイダーという事でダクネスを頼りにしているダスト。

 

「我が名はめぐみん!!アークウィザードを生業とし、爆裂魔法を操る者!!」

 

「お、おう・・・紅魔族ってのは名前と見た目でわかったが、お前最強魔法の爆裂魔法が使えるのか!そいつはすげぇぜ!あの爆裂魔法を使える魔法使いと組めるなんて最高じゃねぇか!後で仲間たちに自慢しねぇとな!」

 

「ほほう、爆裂魔法の魅力を理解できるとは、あなたもなかなかやりますね!」

 

ダストが爆裂魔法を誉めていると、調子が上がってきためぐみんは敵もいない平原に向かって杖を突きつけた。

 

「ここは街から離れていますし、ここからなら守衛さんに怒られないのでちょうどいいです!」

 

「え?ちょうどいいって・・・何が?」

 

「我が爆裂魔法を、ご覧に入れましょう!」

 

「は?まさか・・・今ここで撃つのか!!?」

 

さすがに何もないところで撃つのはやめてほしいと思ったダストはすぐに止めようとしたが、すでに遅し。

 

「おいバカ、やめ・・・」

 

「我が爆裂魔法、その目に刻め!!エクスプロージョン!!!!!!」

 

ドオオオオオオオオオオン!!!!!!!

 

めぐみんは何もない平原に爆裂魔法を撃ち放った。ダストは爆裂魔法による強い爆風に耐えるため伏せた。ダクネスは平然と立っており、アクアはあくびをかいて座っており、ティアは背伸びをして立っており、アカメは今回の爆裂魔法を見定めながら立っている。爆発が晴れると、お約束のクレーターが出来上がっていた。

 

「マジか・・・こんな威力・・・見たことねぇぞ・・・」

 

「どうですか・・・我が爆裂魔法の威力は・・・」

 

「今回の爆裂は威力はあったけど、芸術性に欠けるわね。美しさのかけらもない。期待に応えようと力みすぎよ。35点」

 

「くうぅ・・・やっぱりですか・・・私もちょっと力みすぎたと思ってましたし・・・」

 

ダストが驚いている間にも、アカメが今回の爆裂に低評価をつける。めぐみんも自覚があったのか悔しそうにしながらも納得している・・・倒れている状態で。

 

「・・・で?なんでこの紅魔の娘は寝てんだ?」

 

「なんでって、爆裂魔法で今日使う魔力を使い切ったんだよ」

 

「え?じゃあこいつは1発撃っただけで魔力を尽きたのか?冗談だろ?」

 

「こんなことで冗談なんか言わないよ。ついでに言うと、めぐみんは爆裂魔法しか使えないよ」

 

嘘偽りのないティアが放った真実にダストは信じられないといった気持ちでいっぱいになった。

 

「はあああああん!!?じゃあ何か?そいつはもう一歩も動くことができないってのか!!?」

 

「何を驚いてんのよ?こんなの、世間の常識でしょう」

 

「ちょ、待て待て待て!!おい!紅魔族!何でそんな魔法だけ使ってんだよ!!1発撃って動けなくなる魔法使いなんて無価値じゃねぇか!!ギルドで噂になっていた頭のおかしい爆裂娘ってお前のことだったのかよ!!?」

 

「おい、さっきの無価値発言、訂正していただこう。後、誰ですかその噂を流した奴は?そいつには後でいかに私が頭がおかしいのかということを、身をもって味わってもらうとしよう」

 

「落ち着け、いつものことだ」

 

「いつものことってなんだよ!!?攻撃の要が1人減ったんだぞ!!?少しは慌てろや!!」

 

「うるさいわねー。いつまでも過ぎたことを言ってると、いつか頭はげるわよ?」

 

めぐみんが魔力切れで倒れたというのに、普段通りの対応をしているアクアたちにダストは頭痛がしたかのように頭を抱える。

 

「・・・あ、今なんか敵感知スキルに引っかかった。ゴブリンの巣の奥からものすごいスピードでこっちに来てるよ」

 

「て、おいおい・・・それってまさかとは思うが・・・」

 

「まぁ、ゴブリンなんて雑魚の周りをウロチョロしてる奴っていったら、ねぇ」

 

こちらに近づいてきている敵反応について話していると、近づいてきた存在がダストたちの前に現れた。その姿は、猫科のような姿でライオン以上の大きさに、口に大きな牙2本、全身黒い毛で覆われている獣だ。

 

「おお・・・なんと野性味溢れる見事な獣なんだ・・・」

 

「感心してる場合か!!やっぱり初心者殺しじゃねぇか!!!」

 

初心者殺し・・・それはゴブリンやコボルトなどといった比較的弱いモンスターの周りをうろつき、弱い冒険者を狩ろうとする狡猾で危険度の高いモンスターだ。

 

「なるほど!あれが初心者殺しか!一度手合わせしたいと思っていた!剣を借りるぞ!」

 

「あ!おい待て!それは俺の大事な・・・」

 

ダクネスはダストの剣を奪い取り、初心者殺しに向かって一直線に向かっていく。初心者殺しは殺気立って威嚇している。

 

「受けてみろ!!はああ!!」

 

ダクネスは初心者殺しに向けて剣を振るったが、ダクネスの剣は初心者殺しには当たらず、空ばかりを斬るだけであった。

 

「・・・何これ?」

 

「見てわからないかしら?ダクネスは攻撃が全く当たらないクソ役立たずなのよ。盾としては役立つし、私のお気に入りのおもちゃだけど」

 

アカメのその真実を聞いて、ダストは絶望しそうになった。だがアクアと双子の実力をまだ知らないため、何とか持ち直した。その間にもダクネスは初心者殺しの攻撃をもろにくらってしまった。

 

「なかなか鋭い攻撃ではないか!」

 

やはりというべきか、ダクネスは防御力がよいことが活かし、初心者殺しの攻撃をもろともしていない。それどころか初心者殺しと素手で格闘している。そして初心者殺しはダクネスを噛みついてきた。

 

「そのまま押し倒し、その獣欲を私にぶつけるというのか!人のみならず、獣にこの柔肌を蹂躙・・・くぅぅ!!」

 

「が、がぅ・・・?」

 

ダクネスの欲望丸出しの性癖に初心者殺しはかじりつつも戸惑っている。

 

「なぁ、なんであのクルセイダーはあんなに興奮してんだ?やられまくってんのに」

 

「それはダクネスがモンスターにいじめられるのが大好きでたまらない女の子だからだよ」

 

「言うなれば、ドMよ。救いがたい変態だこと」

 

「それは知りたくもなかった真実だよちくしょう!!!」

 

ダクネスがドMだということを双子の説明でわかったダストはそう大声をあげた。

 

「はぁはぁと欲情を垂らしながら、涎を垂れ流し、もっと私を激しく噛んでこい!!そして、鎧を粉々に打ち砕かれ、抵抗する私を・・・たまらん!!はあああああああん!!!」

 

ダクネスは妄想で悶えながら白目をむいて気絶した。初心者殺しはダクネスの堅さと頭のおかしい性癖に怖気づいて噛みつくのをやめて後ずさる。

 

「よ、よし、今がチャンスだ!逃げるぞ!」

 

ダストが逃げるように言い出すが、アクアは一歩も引かなかった。

 

「アホなこと言うんじゃないわよ!!ちょうどゴブリンなんかじゃ役不足なんじゃないかって思ってたところよ!ここで初心者殺しを倒せば、カズマが私を見直してシュワシュワを何杯も奢ってくれるに違いないわ!!行くわよ!!ゴッドブロー―!!!」

 

「やめろーーー!!行くなーーー!!!」

 

アクアは初心者殺しに向かってゴッドブローを放った。

 

「あーあ、拳で行っちゃうんだ・・・」

 

「あいつやっぱバカナンバー1だわ」

 

「どういうことだ?」

 

「あんたは知らないみたいだし教えてあげる。初心者殺しは全身毛むくじゃらだから毛が打撃を吸収するのよ。この意味、わかるわよね?」

 

「まさか・・・」

 

「そう、そのまさかだよ・・・」

 

ドォン!・・・しゅう~~・・・

 

「グルルルル・・・!」

 

「初心者殺しは打撃が利かないんだよ」

 

アクアのゴッドブローは見事初心者殺しにヒットした。が、双子の宣言通り、毛が打撃を吸収したため、初心者殺しはノーダメージ。初心者殺しは攻撃を加えたアクアに激しく怒っている。

 

「・・・よく見ると、あなたの牙って、かっこいいと思うの」

 

アクアは目を点にしながら初心者殺しの牙を褒めた。だが相手は獣・・・そんなのが通用するはずもなく・・・

 

ガブッ!

 

「いやあああああああ!!!噛まれてる噛まれてるーーー!!!私、もぐもぐされちゃってるーーーー!!!」

 

アクアは初心者殺しの餌食・・・頭からがぶりといき、もぐもぐとかじりつかれる。

 

「ちょ・・・は、離して!!女神をおいしく食べるだなんて罰当たり、許されるとでも・・・ちょ・・・ね、ねぇ、それ以上は本当にやばいと思うの。だから・・・離して?ね?ねぇ・・・ねぇって・・・助けてーーーー!!!カズマさん!!!カジュマしゃーーーーーん!!!!!」

 

アクアも全くの役立たずとわかり、ダストは地に手と膝をつけてショックを受けている。

 

「やれやれ、やっと私たちの出番だね!」

 

「真打は最後に登場するものよ」

 

そこへ前へ出たのはずっと諦観の姿勢を取っていた双子だ。いよいよこの2人が動き出す。

 

「お、おい!この状況を打破できるのか!!?」

 

「当然!これを突破するなんて朝飯前!」

 

「何せ私たちこいつをどうにかする作戦をいくつも持ってるもの」

 

「ほ、本当か!!だったら頼む!!この場をどうにかしてくれーーー!!!」

 

ダストは最後の望みと思い、全ての期待を双子に賭けた。今度こそまともであってくれ、と。

 

「相手は初心者殺しだからね、慎重に行こう!」

 

「ええ・・・選択のミスが命とりだもの。油断できないわ」

 

「よし!ならここはパターン9で行こう!」

 

「何言ってんのよ?ここはパターン15しかないわ」

 

「は?」

 

「あ?」

 

初心者殺しを倒す算段を立てようとすると、そのパターン決めによって双子はお互いに突っかかってきた。

 

「ちょっとちょっと、何言っちゃってんの?パターン15?お姉ちゃん、死にたいの?」

 

「あんたこそパターン9なんて自殺行為以外の何物でもないわよ。バカなの?死ぬの?」

 

「わかったわかったって!なら百歩譲って、パターン1!これでどう!」

 

「はぁ?その作戦も死ぬっての。ならあんたに合わせてパターン30でどうよ?」

 

「はあ?」

 

「ああ?」

 

あらゆるパターンを提案しているが、双子はお互いに首を縦には振らなかった。そしてついに・・・

 

「このアホ!!!」

 

「おたんこなす!!!」

 

初心者殺しが目の前にいるにもかかわらず、双子はいつもの如く取っ組み合いの喧嘩を始めてしまう。この光景を目にしたダストは目が点になる。

 

「ど、どうなってんだ・・・?」

 

「どうもこうも、あの双子は意見が合わないとすぐに喧嘩を始めてしまうんですよ」

 

「・・・まさかとは思うが、これを毎日・・・」

 

「してますね」

 

めぐみんの説明を聞いて、ダストは本気で絶望した。このパーティにはまともな奴はいないのかと。

 

「て、こんなことしてる場合じゃねぇ!おいあんたら!仲間が食われかけてんだぞ⁉こんなとこで喧嘩やってる場合じゃ・・・」

 

「「邪魔すんな!!!!!」」

 

バキィッ!!×2

 

「へぶぅ!!?」

 

非常事態のため喧嘩を止めようとするダストだったが、そんなダストに双子は腹パンチをくらわされた。

 

「な・・・なぜぇ・・・」

 

「あの2人の喧嘩はヒートアップする度に今みたいに周りを巻き込んでしまうんですよ。おかげでほとんどの人が止めようとしません」

 

「なんじゃそりゃ!!?じゃあ誰があいつらを止めるんだよ!!?」

 

「普段はカズマとダクネスが止めます。あの2人もたまに巻き込まれてしまいますが、大抵は止まります。でも今はダクネスが気絶してますし、カズマもいませんから、今止めるのは難しいかもしれません」

 

めぐみんのその説明を聞いて、ダストは日頃カズマがどんな苦労をしてきたか理解し、今朝カズマに突っかかったことを激しく後悔した。

 

「そこまで言うならそのパターンでやってみれば!!?私は好きにやらせてもらうから!!」

 

「言われるまでもなく、好きにさせてもらうわ。そっちの方法がいかに生ぬるいか教えてあげる」

 

「何でもいいから早く助けてーーー!!!」

 

双子はここで仲違いをし、別々の行動をとり始め、お互いにアクアに噛みついている初心者殺しに狙いを定める。

 

「私が1番優秀なんだから!バインド!!」

 

「この私こそがパーティで1番のMVPよ。このナイフを食らいなさい」

 

ティアは初心者殺しに向かってバインド放った。そしてアカメは初心者殺しだけに向かって投げナイフを放った。しかし、バインドのロープもアカメの投げナイフも的が外れて、空を通るだけだ。

 

「あ、当たってないいいいいいいいいわあああああうえあああああああ!!!死ぬ!!このままじゃ死んじゃううううううう!!カジュマしゃん!!!カジュマしゃーーーーーん!!!!」

 

全く助かってないアクアは初心者殺しに噛まれながらウロチョロウロチョロと走り回る。思い通りに行ってない双子は互いに睨みつけ合っている。

 

「何やってんの?まったく当たってないじゃん。やっぱり私の案が1番よかったんだよ」

 

「当たってないのはそっちも同じでしょうが。それで偉そうに言っても説得力ないわ」

 

「それはお姉ちゃんが私の言うことを聞かないのがいけないんでしょ?バカじゃないの?」

 

「バカなのはあんたの方でしょ。あんたは黙って私の言うことを従ってればいいのよビッチ」

 

「はああああん!!?」

 

「あああああん!!?」

 

双子の喧嘩はこれによってさらに悪化していく。ダストはこの喧嘩に嫌気をさしているが、その前に、1つ気になっていることがある。

 

「な、なぁ・・・あいつらって本当にアヌビスの冒険者か?攻撃、思いっきり外してたが・・・」

 

「あの2人は2人で1人前の冒険者らしくて、息が合わなくなってしまうと、使用するスキルが全て中途半端になってしまうんです」

 

「じゃあ・・・今みたいに喧嘩した状態だと・・・」

 

「戦力0になってしまいます」

 

追い打ちをかけるようなめぐみんの説明にダストは目に涙を潤ませる。どうしてこんなことに?なぜ自分がこんな苦労せねばならんのだと。

 

「わあああああ!!助けて!!本当に助けて!!助けてくれたら女神の加護をあげるからあああああああ!!!」

 

「わあ!!バカ!!初心者殺しを連れてくんなぁ!!」

 

未だに初心者殺しに噛まれているアクアはその初心者殺しをダストたちのところまで連れてきた。そしてアクアが走ってきた先は未だに喧嘩している双子だ。

 

「アカメ!!ティア!!助けて!!助けて!!わああああああああ!!!」

 

「「うるっさいわあ!!!!!」」

 

バキャァ!!!!×2

 

「がうあああああ!!??」

 

アクアの泣きわめきをいい加減鬱陶しくなった双子はアクアに噛みついていた初心者殺しの顔面に強烈なパンチを浴びせる。毛で打撃を吸収してるとはいえ、顔面はさすがに初心者殺しに大ダメージを与えた。これによって初心者殺しはあまりの痛みでアクアから離れた。

 

「マジかよ!!?あいつら、あの初心者殺しに顔面パンチしやがったぁ!!?」

 

「「・・・あ・・・」」

 

「いや、待て・・・この展開はまさか・・・」

 

双子が何にパンチをしたのかというのに気が付き、顔を青ざめる。ダストは双子が初心者殺しに顔面パンチを決めたのに驚いたのもつかの間、すぐに顔を青ざめながら初心者殺しを見る。

 

「ぐおあああああああああ!!!!!!」

 

当然というべきか、初心者殺しは怒りむき出しの状態でダストたちに向かって咆哮をあげている。

 

「やっぱり怒ってんじゃねぇか!!おい、お前ら逃げ・・・」

 

怒っている初心者殺しを見たダストはすぐさまアクアたちに逃げることを提案するが、この場にはダストとアクアしか残っておらず、双子は倒れこんでいるめぐみんとダクネスを背負って真っ先に逃げている。

 

「あ!お前ら汚ねぇ!!真っ先に逃げんじゃねえ!!なんでそういうのだけ息が合うんだよ!!!」

 

「ぐおおおおおおおおお!!!」

 

「ひいいぃぃぃ!!!クエストなんてやってられるか!!こんな場所とっととおさらばしてやる!!!」

 

「わああああああ!!!待ってぇ!!!私を置いていこうとしないでえええええええ!!!」

 

ダストとアクアは怒れる初心者殺しから逃れるためにその場から離れようとする。初心者殺しは怒りに任せてダストやアクアたちを追いかけまわす。ダストとアクア、初心者殺しによる追いかけっこは1時間も続いたそうだ。

 

『討伐クエスト!!

ゴブリンの群れを一掃せよ!!

リタイア!!!!』

 

 

ーこ、このすばぁーーーー!!!!ー

 

 

何とか初心者殺しから撒き、双子たちと合流を果たしたダストはギルドまで戻ってきていた。ダストは心身共に疲弊しきっており、あまりの疲れでテーブルに突っ伏す。今日1日リーンたちと一緒にいるカズマはまだ戻ってきていない。

 

「・・・はぁ・・・」

 

ダストはため息をこぼしながら、アクアたちを見つめる。

 

「うぐ・・・えぐぅ・・・」

 

「死ねこら」

 

「あんたが死ね」

 

「「・・・・・・」」

 

アクアは未だに泣きじゃくっており、双子はまだ喧嘩の最中、ダクネスも気絶したまま、めぐみんも倒れたままだった。こんな苦労をさせられたダストはカズマが帰ってきたら今朝の非礼を詫び、仲間を返してもらおうと考える。そのためなら土下座でもすると考えるほどである。

 

「いやー、今日は大冒険したって気分で清々しいぜ!」

 

そう思っているうちにカズマたちが帰ってくる声が聞こえてきた。ギルドの扉が開かれ、案の定カズマたちが帰って来た。

 

「ただい・・・」

 

「調子に乗ったこと言ってすみませんでしたーーーーーー!!!!!」

 

「うおあっ!!?」

 

カズマたちが戻ってきたのを見計らってダストは誠心誠意の土下座をカズマに行った。驚いたカズマはアクアたちの方を見る。案の定予想通りの結果だというのが、カズマは何も聞かなくてもわかる。

 

「あんたの苦労はもうじゅーーーーーーーーーぶんに理解できた!!!あれはハーレムなんて生易しものではなかった!!!!今朝のことは心から反省してる!!!だから頼む!!!俺の仲間を返してくれ!!!!」

 

もう必死の謝罪と仲間返却の懇願をするダストにカズマはダストの肩をポンとのせ、にっこりと微笑む。

 

「なぁ、ダストっていったな?お前、今朝俺に言ったこと、覚えてるか?」

 

「へ?」

 

「俺の宣言通りになったら、何でも1つ言うことを聞くって話だよ」

 

「ま、まさか・・・」

 

カズマの思惑を察したダストは心の底から絶望が込みあがってきた。

 

「ま、これから大変な道のりになるだろうけど、今日から新しいパーティで、がんばってくれ」

 

予想的中であった。カズマの願い・・・それは、カズマがいたパーティをそのままダストに、ダストがいたパーティにそのまま自分が入れ替えることである。ダストは必死になってそれを止める。

 

「待ってくれぇ!!そんなの横暴だ!!それ以外のこと!!それ以外ならなんでもする!!靴を舐めたっていい!!だから頼む!!仲間を返してくれぇ!!」

 

「おーい、皆ー、腹も減ったし、とりあえず飯でも食おうぜ。新しいパーティ結成に、乾杯しようぜ」

 

「「「おおおおおっ!」」」

 

カズマのこの一声でリーンたちは喜びの声を上げている。どうやら同じゴブリン討伐でも、充実したクエストだったらしく、リーンたちもカズマのパーティ入りには大賛成らしい。まさかの仲間たちも乗り気でダストは必死にカズマを説得する。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれぇ!!!いや、待ってください!!!今朝のことは本当に謝りますから!!!それ以外の言うことは何でも聞きますから!!!俺の仲間を返してください!!!!」

 

もはやなりふり構わないダストは必死の敬語でカズマを説得するのであった。

 

その甲斐あってか、ダストはリーンたちのパーティに戻ってきて、カズマはアクアたちのパーティに戻っていった。それにはダストは泣きながら喜んでおり、カズマはまた苦労させられるのかと深い悲しみを抱いたのであった。

 

 

ーこのすばぁ!!!(泣)ー

 

 

「あ、あのぅー・・・カズマさん?私たちのこれからの評価は・・・」

 

「変わるわけねぇだろ。寝言は寝て言えやポンコツども」

 

パーティに戻ってきたカズマからのこの言葉を聞いたアクアたちは全員ショックで手と膝を地に付けたのであった。




ティアです。今日は報告代わりに、シーフの心構えを1つ。

シーフは盗賊より迅速に、そして華麗に得物を盗む。
その姿は影の如く、まるで闇に紛れるアサシンの如く。
その華麗なる姿により、老若男女問わず大人気。
あまりの人気ぶりにより、大行列の嵐となり、一時は社会的問題を引き起こすであろう。

報告書作成者、ティア

頭の一言:これ、心構えじゃなくて、ただの願望だろ。後、報告書にこんなのを書くんじゃない。

次回、この幽霊屋敷に愛の手を!
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