このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

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この幽霊屋敷に愛の手を!

今日はカズマの口から珍しく仕事は休みということで、双子はウィズ魔道具店のリビングでその名の通り、つかの間の休息を取っていた。アカメはソファに寝転がり、お気に入りの本を読んでおり、ティアはキッチンで暖かい紅茶とクッキーを作っている。

 

「お姉ちゃん、クッキーにジャム入れようと思うんだけど・・・何がいい?」

 

「何でもいいわよ別に」

 

「出たよその発言。それ1番困るワードだからやめてよ」

 

「ジャムなんてどれをつけたって甘ったるいんだから同じよ。あんたの好みに任せるわ」

 

「めっちゃムカつく・・・。本当に私の好みにするよ?後で文句は受け付けないよ?それでもいいの?」

 

「だからいいって言ってるでしょ。そんなことで読書の邪魔をしないでちょうだい」

 

いかにも口喧嘩が発展しかねているが、せっかくの休日に無駄な時間を費やしたくない双子は口の刃は引っ込め、ティアはクッキー作り、アカメは読書の続きを再開する。

 

「それにしても、今日は休みでいいだなんて・・・カズマもたまにはいいこと言うよね」

 

「まぁここ連日、借金返済のために働きっぱなしだったし・・・たまの休日でももらわないと、やってられないって思ったんでしょ」

 

「確かに・・・特にこの前なんて、初心者殺し騒ぎで大変だったし」

 

「あれは主にチンピラクズの采配が原因でそうなったんでしょうが」

 

以前のクエストの失敗をダストに押し付けている辺り、全く悪びれた様子がない双子。悪びれていないといえば、他のメンバーも同じだが。

 

「まぁね。はい、お姉ちゃんの紅茶。それから、クッキー」

 

「ん、ご苦労様」

 

テーブルにティア特製の紅茶とクッキーが並べられた。双子は紅茶を一口すすり、そしてクッキーに手を伸ばそうとすると・・・

 

「あああああああああああ!!!」

 

「・・・うるさ・・・」

 

「今の声・・・アクア?」

 

店の方からアクアの怒号のような声が響いてきた。休日にアクアの声が聞こえたことで機嫌が悪くなったアカメはすぐに本を閉じて店の方へ向かっていく。ティアはそんなアカメについていく。アカメが店の方の扉を開けると・・・

 

「出たわねこのクソアンデッド!!こんなところで店を出してたの!!?私が馬小屋で寝泊まりしてるってのに、あんたは店の経営者ってわけ!!?」

 

案の定というべきか、アクアがウィズに難癖をつけて絡んできている。その光景を見たティアは何とも言えない表情をしており、アカメはより一層不機嫌になり、アクアに近づいていく。

 

「リッチーのくせに生意気よ!!!こんな店、神の名の元に燃やし・・・」

 

「人ん家まで来てまで迷惑をかけに来たのかしらあんたは」

 

げんこつっ!!!!

 

「ひぎゃ!!?ああぁぁ・・・」

 

あまりにやかましいアクアにアカメはきつめのゲンコツをお見舞いさせて黙らせる。アクアが痛みで蹲ってる間にティアがウィズに駆け寄る。

 

「ウィズー、大丈夫ー?」

 

「は、はいぃ・・・大丈夫、ですぅ・・・」

 

「はぁ・・・で、バカがここにいるってことは・・・」

 

「ああ・・・せっかくの休みに悪いな、このバカが突っ走って」

 

アクアがここにいるということは高確率でカズマがいるという双子の予想は大正解で案の定、店の出入り口にはカズマも来ていた。

 

「ああ・・・カズマさん!」

 

「よう、ウィズ。久しぶり。約束通りに来たぞ」

 

カズマはフレンドリーな接し方でウィズに挨拶を交わした。

 

 

ーこのすば!-

 

 

ウィズ魔道具店にやってきたカズマとアクアはウィズがわざわざ用意してくれたテーブルの椅子に腰をかけた。

 

「・・・ふん、お茶も出ないのかしら、このお店は」

 

「あ、す、すみません!すぐに持ってきます!」

 

「ああ!いい!いいって!ウィズはそのままで!ちょうど紅茶入れてたとこだったし、すぐに持ってくるから!お姉ちゃん、アクアがバカやらかさないように見張っててよ」

 

文句を垂れてお茶を要求しようとするアクアにウィズが応答しようとしたが、その役目はティアが引き受け、アカメがアクアの見張りを行う。

 

「茶飲んだらさっさと帰りなさいよバカ」

 

「ちょっと!今バカって言った⁉お客様に、女神に向かってバカって!!」

 

「あんたのこと、客とも女神とも思ってないわよ。むしろ害虫でしょ?」

 

「なんですって!!!!」

 

「お前はいちいち突っかかるな。お前もアクアを煽るな」

 

言い争いに発展しかけているアクアとアカメをカズマが止める。その後カズマは魔道具店の商品をじっくり眺め、商品に手を取る。

 

「あ、それは強い衝撃を与えると爆発しますから気を付けてくださいね」

 

「げっ、マジか・・・じゃあこれは?」

 

「あ、それは蓋を開けると爆発するので・・・」

 

「・・・これは?」

 

「水に触れると爆発します」

 

「こ、これは・・・?」

 

「温めると爆発します」

 

「この店は爆薬しか置いてねーのか!!?」

 

「ああ、そこは爆発物シリーズが置いてあるって話よ」

 

爆発物のポーションしか置いてないのに対し、カズマがツッコミを入れたが、アカメが淡々に事実を述べる。爆発シリーズってなんだよとカズマは心の中で思った。

 

「お待たせー。これで少しは黙ってよね。カズマもウィズもどうぞ」

 

「むー・・・」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「お、サンキュー」

 

そこへ紅茶を持ってきたティアがここにいる全員に紅茶を手渡す。未だに不服そうにしているアクアは出された紅茶をすする。

 

「!おいしい・・・」

 

「お、確かにうまいな」

 

「わぁ・・・おいしいです」

 

ティアの入れた紅茶は普段ウィズがいれるお茶よりも絶品でそれはアクアやカズマ、ウィズの顔に表れている。

 

「・・・ふん、リッチーのくせに店を構えて、アンデッドのくせにティアの紅茶を毎日堪能して・・・」

 

「すいません!!すいません!!私なんかがこんな贅沢しちゃって・・・」

 

「ていうか、毎日作ってはいないんだけどね」

 

「小姑みたいな嫌味はやめろ」

 

嫌味を言いまくっているアクアにたいして、アカメはイライラしながらも、カズマたちがここに来た目的を問いだす。

 

「・・・で?人の休日を潰してまで、いったい何しに来たのよあんたは」

 

「ああ、ほら、前にウィズがリッチーのスキルを教えてくれるって言ったじゃん?」

 

「ああ、そういえばそう言ってたね。それで、ウィズに会いに来たと」

 

「そういうことだ。だからウィズ、スキルポイントに余裕ができたから、リッチーのスキル、何か教えてくれよ」

 

「ぶーーーー!!?」

 

カズマがリッチーのスキルをウィズに教えてほしいと言うとアクアは口に含んでいた紅茶を吹き出した。

 

「ちょっと!!何考えてんのよカズマ!!リッチーのスキル?リッチーのスキルって言った今!!女神の従者がリッチーのスキルを覚えるだなんて到底見過ごすなんてできないんですけど!!」

 

「誰が従者だ誰が!!」

 

やはり女神としての職業柄なのかカズマがリッチーのスキルを覚えることに断固として反対していた。

 

「いい?リッチーってのはね、薄暗くてじめじめしたところが大好きな、言ってみればナメクジの親戚みたいな連中なの!!」

 

「ひ、ひどい!!」

 

あんまりなアクアの言い分にウィズは涙目である。

 

「ふーん・・・じゃあ、馬小屋で生活しているあんたたちは、そのナメクジの親戚以下の存在よね。いうなれば、馬の糞ね」

 

「おっと、辛辣な言い方ですね。てか俺も含まれてんのかよ」

 

アカメの度を越えた辛辣な言い方にカズマはこめかみをひくひくさせ、アクアは涙目になってアカメに突っかかろうとする。

 

「なんですってーーー!!!この・・・」

 

「ふん!!!」

 

ガシッ!!ぎゅうううううううう!!!!

 

「ぎゃあああああああああ!!!!痛い痛い痛い痛い!!!!手がああああああああ!!!!」

 

「アークプリーストのクソ雑魚如きが私と力比べなんて百年早いのよ」

 

「お姉ちゃんやめたげて!!!それ以上はアクアの手が折れちゃうよ!!!!」

 

だがつかみかかろうとした手は逆にアカメに掴まれ、力強く握られ、アクアは泣きながら喚いている。元々のアカメの腕力が強いため、さすがにティアが止めに入る。

 

「いいかアクア、俺たちのパーティはバランスが悪い。だったらせめて俺が1つでもスキルを覚えて強くした方がいいだろ。それに、リッチーのスキルなんて、普通は覚えられないだろう」

 

「あ、それは確かに!リッチーのスキルを覚えられる冒険者ってカズマが初じゃない?私もお姉ちゃんも大賛成だよ」

 

「ふっ・・・初・・・か・・・。なんかいいな、それ!てことで、多数決の結果なんだ、悪く思うなよ」

 

「ううぅぅ・・・私女神なのに・・・どうして・・・私の意見は通らないの・・・」

 

リッチーのスキルを覚えられる初の冒険者と聞いて、カズマは少し浮かれている。一方のアクアは強めに握られて手を痛めたのと意見が通らないことに涙目である。

 

「あのぅ・・・さっき、女神って・・・」

 

アクアの発言を聞き取ったウィズは純粋に疑問を抱いていると、アクアは急に元気になり、調子に乗り始めた。

 

「そうよ!私はアクア・・・そう!!アクシズ教団に崇められている女神、アクアよ!!控えなさいリッチー!!!」

 

「ひいいいいい!!?」

 

アクアがアクシズ教団が崇めている女神と聞いたウィズは悲鳴をあげながら恐れ戦いている。

 

「おいウィズ、そんなに怯えなくても・・・」

 

「い、いえ・・・その・・・アクシズ教団の方は頭のおかしい人が多く、関わり合いにならない方がいいというのが世間の常識なので・・・」

 

「「間違ってはない!あいつら頭おかしいし!」」

 

アクシズ教団の世間一般の常識を聞いて双子はウィズの言葉を最後まで聞かず、激しく同意した。

 

「ちょっと!!どうして2人とも私をフォローしないの!!?私、本物の女神なのよ!!?」

 

「うるさい偽女神!!私は調子に乗りまくってるあんたが気に入らなくてしょうがないのよ!!そもそも、アクシズ教徒嫌いの私たちが、アクシズ教徒を味方してるあんたに、どうしてわざわざフォローしなくちゃいけないのよ!!!」

 

「アクアが本物の女神ならあの頭のおかしい連中をどうにかできるでしょ?ほら、さっさと行って来てよ!!愚かな行為をしないでくださいって言って来てよ!!それができないから見栄を張ってるだけでしょこの疫病神!!!」

 

「わ、わああああああ!!!2人が言っちゃいけないことを言ったぁ!!どうして私の信者の子をそんなに嫌うの!!?あの子たちは本当にいい子たちなの!!自慢の子なの!!お願い、信じて!!!」

 

「「信じられるかアホ!!!!」」

 

「わあああああああああん!!!!」

 

双子にボロクソに言われてアクアはその場で泣き出してしまう。あの双子がここまでひどいことを言い、アクシズ教徒を嫌っていることから、よっぽどの目にあったんだなとカズマはそう思った。

 

 

ーこのすば!!!!-

 

 

カズマが相当頭にきている双子を落ち着かせ、アクアも励ますことでようやく場は落ち着いた。機嫌が戻ったアクアは魔道具店の魔道具をウキウキしてる様子で眺めている。その様子に双子はしょうがないといった様子で眺めている。

 

「そういえば、お2人から聞いたのですが、カズマさんはあのベルディアさんを倒されたそうで・・・」

 

「ベルディアさん?」

 

「あの方は魔王軍幹部の中でも剣の腕は相当なもののはずだったのですが・・・すごいですね」

 

魔王軍幹部の1人であるベルディアをやたらと知っているようなウィズの口ぶりにカズマは疑問符を浮かべる。

 

「なんかベルディアを知っているような口ぶりだな」

 

「ああ・・・私、魔王軍の10人の幹部の1人ですから」

 

「確保ーーーーー!!!!」

 

「きゃあああああああああ!!?」

 

ウィズのさりげないカミングアウトにアクアはウィズを捕える。まぁ、さりげなくとはいえ、魔王軍幹部の1人だと聞けば、当然の行動だが。

 

「待って!待ってくださいアクア様!お願いします!話を聞いてください!!」

 

「やったわねカズマ!!これで借金なんてチャラよ、チャラ!!それどころかお釣りが来るわ!!」

 

「いや、ウィズを浄化したところで金は入ってこないわよ」

 

「へ?」

 

アクアはウィズを浄化させようとしているが、アカメが討伐したところでお金は入ってこないと伝えると目が点になる。

 

「なぁ、どういうことだ?さすがに魔王軍幹部となると、冒険者としては見逃せないんだが・・・。お前らはウィズからそういう話は聞いてるのか?」

 

「うん。ウィズの言ってることは本当のことだよ。でもそれは魔王城を守る結界の維持を頼まれてるだけの、いわばなんちゃって幹部なんだって」

 

「なんだそりゃ」

 

「だから当然、人を殺してるなんてことはないんだよ。だから討伐報酬もなし。というかそもそも、賞金だってかけられてない。だよね、ウィズ」

 

カズマの疑問にティアが丁寧に答える。ウィズは同意するように強く首を縦に頷いている。

 

「わかったらさっさと離れなさい。さもないと手首を本当に折るわよ」

 

「ひい!!降りる!降りますから!」

 

アカメに手首を折られることを恐れたアクアはすぐにウィズから離れる。ちなみに双子がウィズが魔王軍幹部だと知ったのはベルディアを倒した後で、双子もアクアと同じようなことをやっていたことがあった。

 

 

ーこ・の・す・ば!!ー

 

 

アクアがウィズから離れたところで本題に戻る。

 

「じゃあつまり、なんだ。幹部を全部倒すと魔王の城への道が開けるとか、そんな感じか?」

 

「そういうことです!魔王さんに頼まれたんです!人里でお店を経営しながらのんびり暮らすのは止めないから、幹部として結界の維持だけ頼めないかって・・・」

 

「つまり、あんたがいる限り人類は魔王城に攻め込めないってわけね。カズマ、退治しておきましょう」

 

話を聞いてもなお、ウィズを退治したがるアクア。ウィズは慌てて何とかアクアを説得しようとする。

 

「待って!待ってください!せめてもう少しだけ、活かしておいてください!!私には・・・まだやることがあるんです・・・」

 

「私なら結界くらい破れるけどね。リッチーだし退治・・・」

 

「したら本当に手首・・・」

 

「なんて言いませんよねー?ねぇ、カズマさん?」

 

「俺かよ!!?て、おい!お前も視線を俺に向けんじゃねぇ!!」

 

本当に退治しようとしたアクアだがアカメに痛い目に合わされたくないためそれをカズマに振った。アカメのその視線はカズマに変更された。

 

「私からもお願いだよカズマ。結界破れるって言っても、魔王軍幹部は10人いるんだよ?さすがのベルディアとウィズを倒しても残りは8人、アクアでもそんな状況じゃ結界は破れにくいでしょ?」

 

「むむむ・・・それは、確かに・・・ここに来て力も一部弱まってるから、それだけ多かったら、破れるのはせいぜい2、3人じゃないと限界かも・・・」

 

「それに・・・ウィズにはお世話になってるし、ウィズを倒されると、こっちが非常に困るの。砂漠にいるギルドマスターとも仲いいから、こんなことが知られたらその人に叱られちゃう」

 

ティアも説得をしたおかげでアクアの考えも思いとどまる。最終的な判断をするのはカズマだが、カズマの考えはウィズの話を聞いた時から決まっている。

 

「どっちにしろ今結界を解いたところで、俺たちのレベルじゃ魔王は倒せないんだ。・・・首チョンパされるのがオチだ。それに、2、3人でいいなら倒す必要もないだろ。だったら、見逃してやろうぜ」

 

「・・・わかったわよ・・・」

 

「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

カズマの最終判断もあるということで、あまり無下にできないアクアは納得できないながらも渋々了承した。見逃してもらえてウィズはカズマに深く感謝している。

 

「でもいいのか?ベルディアを倒した俺たちに恨みとか・・・」

 

「ベルディアさんとは、特に仲が良かったとかそんなことはなかったですからね。私が魔王さんのお城を歩いてるとよく足元に自分の首を転がしてきて、スカートの中を覗こうとする人でした・・・」

 

「完全なる変態ね、あの首なし【ピーー―ッ】野郎・・・」

 

「私、ベルディアはまともなアンデッドだと思ってたのに・・・」

 

ベルディアが実はセクハラ行為を行っていたことを聞いて、双子は冷めた顔をしている。それはカズマとアクアも同じだし、ウィズも頬を赤らめている。

 

「幹部で仲が良かったのは1人だけしかいません。その方は簡単に死ぬような人でもないですから。それに・・・今でも心だけは、人間のつもりですしね」

 

ウィズはにっこりと微笑みながらそう口にした。一緒に過ごしてウィズのことをよく知っているティアはそれには連れて笑みを浮かべ、アカメは呆れたように頭をかいている。

 

「そっか。なら話は終わりだ。それでウィズ、早いところスキルを教えてくれるか?」

 

「はい。それでは、私のリッチーのスキルを教えますね。以前私を見逃してくれたせめてもの恩返しを・・・」

 

ウィズがリッチーのスキルを教えようとしたところで少々困ったような表情になる。

 

「どうした?」

 

「あの・・・リッチーのスキルは相手がいないと使えないものばかりでして・・・その・・・誰か1人でも手助けてしてもらえないかと・・・」

 

どうやらリッチーは対人専用のスキルが多いらしく、誰かがそのスキルを受けないと教えられないらしい。

 

「アカメ、悪いがウィズのスキルを受けてくれないか?」

 

「は?何で私なのよ?ティアがいるじゃない」

 

「ねぇ2人とも、今さりげなく私を選択肢から除外したわよね?」

 

ウィズのスキルを受ける相手がアカメに指名された。それにはアカメは当然しかめっ面になる。最初から選択肢から外されたアクアは不服そうだ。まぁ、選ばれたとしてもアクアは嫌そうな顔はしそうだが。2人はそんなアクアを無視して話を進める。

 

「ティアはそんなに丈夫ってわけでもないからだよ。戦いだってサポート専念タイプだし。それに引き換えお前は戦闘に参加してる分、ステータスはティアより高いから多少は頑丈にできてるだろ?だからだよ」

 

「あのね、シーフはクルセイダーと違って固くないんだから耐久力がそんなにあるわけないでしょ。お断りよお断り」

 

「そこをなんとか頼むよ。ウィズに免じてさ・・・それに、アクアなんかに任せたら、何やらかすかわかったもんじゃない」

 

「・・・・・・・・・・・・はぁ・・・仕方ないわね。確かに、アクアに任せたら浄化しそうだわ」

 

「ねぇ、2人とも、私のことをなんだと・・・」

 

「ウジ虫」

 

「ウジ・・・!!?」

 

カズマはアクアを例に出して、何とか説得する。長い沈黙はあったが、渋々ながら了承した。例に出されたアクアは突っかかってきたがアカメの直球の返答に涙目である。

 

「で?どんなスキルを使うのよ?」

 

「え、えーっと・・・ドレインタッチなんてどうでしょう?相手の体力や魔力を吸い取ったり、逆に相手に分け与えたりするスキルです」

 

「なるほど・・・それを使えればめぐみんの魔力切れを補えるかもな・・・」

 

リッチーのスキルの1つ、ドレインタッチの有用性を理解するカズマ。

 

「も、もちろん、ほんのちょっぴりしか吸わないので・・・」

 

「何でもいいわよ。吸うならさっさと吸いなさい」

 

さっさと終わらせたいのかアカメが急かすように手を差し出し、ドレインタッチを使うように促す。

 

「ではアカメさん、失礼しますよ。具合が悪くなったらすぐに言ってくださいね」

 

ウィズはアカメの手を取り、ドレインタッチを行う。傍から見れば普通に手を取り合っているようにしか見えないが、変化はすぐに訪れた。

 

「・・・うあっ・・・」ふらぁ・・・

 

「お姉ちゃん⁉」

 

「あ、アカメさん⁉大丈夫ですか⁉」

 

突然としてアカメがほんの少しふらついた。その様子にはティアが駆け寄り、ウィズもドレインタッチを中断する。

 

「だ、大丈夫?」

 

「だ、大丈夫よ。これが魔力を吸われる感覚って奴なのね」

 

「すみません、すみません!すぐに魔力を戻します!」

 

ウィズはスキルを教えるためとはいえ、アカメに負担をかけさせて申し訳ないと思い、すぐにドレインタッチでアカメの魔力を戻す。

 

「・・・ほぁ・・・なんか気持ちいいわ・・・」

 

「わっ、今度はすごい気持ちよさそう・・・ドレインタッチっていいのか悪いのかよくわからないね・・・」

 

魔力を戻される感覚は気持ちいいらしく、アカメの顔に表れている。何はともあれ、これでカズマの冒険者カードにドレインタッチの項目が追加され、カズマはドレインタッチを覚える。

 

「これでドレインタッチ習得完了っと・・・ありがとな、ウィズ」

 

「い、いえいえ、お役に立てて何よりです」

 

ドレインタッチを習得し、カズマがウィズにお礼を述べた時、店の扉が開かれた。

 

「ごめんください、ウィズさんはいらっしゃいますか?」

 

店に入ってきたのはこの街の不動産屋の男性だった。

 

 

ーこのすばー

 

 

不動産屋の男性がやってきた理由はとある屋敷に住まう悪霊退治をウィズに依頼するためらしい。何でも最近その屋敷に悪霊が何体も住み着き、悪霊を祓っても祓っても新しい悪霊が住み着いてしまうのだとか。冒険者ギルドでも依頼を出しているようだが、初めての事態らしく、キリがないようでウィズに依頼してきたのだ。ウィズは何でも元はかつて名が轟いた魔道の勇者と並ぶほどの高名の魔法使いらしく、アンデッド関連の案件はよく持ち込まれるらしい。この案件に女神としての性分なのかウィズに頼むのが納得いっていないアクアが無理を言って引き受けてしまったのだ。そして現在カズマたちは、休みにも関わらずギルドにいためぐみんとダクネスを連れてその例の屋敷の前にやってきていた。

 

「ここがその例の屋敷か・・・」

 

「悪くない・・・悪くないわ。この私が住むのに相応しいんじゃないかしら!」

 

「しかし・・・除霊の報酬としてここに住んでいいとは、太っ腹な大家さんだな」

 

「災い転じて福をなす、とはよく言ったものね。特に馬の糞2人は」

 

「あああああ!!また私のこと馬の糞って言った――!!」

 

「俺はこいつの毒には、すっかり慣れたよ」

 

今回の除霊の仕事は報酬としてこの屋敷に住んでいいため、カズマたちは全員ここに住む気満々で各々が荷物を持っている。

 

「というかお前ら、ウィズのとこ離れてってもよかったのか?住みやすかったんじゃ・・・」

 

「いいのよ。元々私たちの住まいが決まるまでっていう約束だもの」

 

「お店の方はこれまで通り手伝うし・・・。そして何より、いつまでもウィズに甘えてばかりもいかないから、むしろちょうどいいんだよ」

 

「ならいいんだが」

 

カズマは居候であった双子がウィズの店から離れてもよかったのかと思ったが、2人もこう言ってるのなら気にしないようにする。

 

「それにしてもここ、元々はとある貴族が住んでた屋敷なんですよね」

 

「アクア、本当に大丈夫?大家さんが言うには、祓っても祓ってもキリがないって話だけど・・・」

 

「ふふん、任せなさい!私は女神にしてアークプリースト・・・言うなれば対アンデッドのエキスパートよ!」

 

「また女神って言ってるし・・・懲りないなぁ・・・」

 

アクアはさっそく自身の能力をフル活用し、この屋敷に潜んでいる悪霊たちの存在を確認する。

 

「見える・・・見えるわ・・・この屋敷には、貴族が遊び半分で手を出したメイドとの間にできた子ども、その隠し子が幽閉されていたようね。元々身体の弱かった貴族の男は病死、隠し子の母親のメイドも行方知れず・・・この屋敷に1人隠された少女はやがて若くして父親と同じ病に伏して・・・」

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

細かすぎる設定を語りだしたアクアにカズマたちは冷めた目でアクアを見つめ、そしてキリがないと判断し、語っているアクアを置いて屋敷の中へと入っていく。

 

「なんでそんな余計な設定までわかるんだってツッコミたいんだが・・・」

 

屋敷に入りながらカズマはそんなことを呟いた。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

この屋敷に入ってまずカズマたちがやったのは掃除である。長く使われていないため、汚いところが多かったが、カズマたち5人が協力することで夕方までかかったが、一通りはきれいになった。

 

「これで一通り掃除が終わりましたね」

 

「部屋割りも決めたし、荷物も運びこんだ。後は夜を待つだけだ」

 

「もう夕方になったね。私、晩ご飯の準備をするよ」

 

「楽しみにしてます!」

 

掃除を終えたティアは晩ご飯の準備をするため屋敷にある厨房へと向かっていった。

 

「さすがに埃っぽいわね・・・。空気の換気でも・・・あ・・・」

 

「ん?どうし・・・」

 

アカメが空気の換気のために窓を開けた時、何かを見て冷めた顔になっている。それに気づいたカズマも覗き込んで、冷めた顔に。

 

「アンナ・フィランテ・エステロイド・・・好きなものはぬいぐるみ人形・・・そして冒険者たちの冒険話!でも安心して、この霊は悪い子じゃないわ。おっと、でも子供ながらちょっと大人ぶったことが好きのようね!」

 

「「・・・・・・」」

 

窓の外には未だにアクアが屋敷の幽霊の細かい設定を語っている。冷めた顔をしたアカメはそっと窓を閉じた。

 

「・・・んじゃ、各自自由行動ということで!悪霊が出たら、すぐに連絡すること!解散!!」

 

カズマはあれを見なかったことにして自由行動を宣言する。アクアを見てなかっためぐみんとダクネスはきょとんとした顔になっていた。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

夕食を食べ終えた頃には全員各各々の部屋へと向かっていっていた。ちなみに双子は盗賊団アジトの時も、ウィズの店の時も2人で1部屋でいたため、この屋敷でも部屋は同じ部屋になっている。ただし、今回はいつもの部屋とは1つだけ違っていた。

 

「1部屋にベッドが2つあってよかったね、お姉ちゃん。これで快適に寝られるよ」

 

「・・・ええ・・・そうね・・・!おかげさまで・・・ちゃーーーんと寝られそうだわ・・・!」

 

いつもは1つのベッドで2人一緒に寝ていたが、今回はベッドが2つある。ゆえに1つのベッドで個人1人だけで寝られるのは双子にとってはありがたい話である。特に貧乳のアカメは寝ている時にティアの大きな胸を背中に当てられて嫌でも意識してしまうため、非常にありがたかった。

 

「はー、それにしても私たちが屋敷に住むことになるなんて夢にも思わなかったよ」

 

「・・・そうね。私たちには縁がない話だと思ってたし」

 

「無理に話を引き受けたアクアには感謝だね」

 

「あいつもたまには役に立つことがあるわね」

 

盗賊である自分たちがまさか貴族の屋敷に住めるとは思っていなかったが、屋敷暮らしはちょっとは夢見てたため、それが叶ってティアはちょっとにやけ顔になっている。アカメも口元に笑みを浮かべている。

 

「あ、でも・・・今はここ、幽霊屋敷になってるんだよね・・・?大丈夫かな・・・?呪われたりして・・・」

 

「アクアがいるんだし大丈夫でしょ。あいつが悪霊を野放しにすると思う?」

 

「思わ・・・ないけど・・・でも・・・」

 

「それに・・・手は打ってあるわ」

 

「ああああああああああああああああ!!!???」

 

「!!?今の・・・アクアの声!!?」

 

双子が悪霊のことについて話していると突如としてアクアの悲鳴が聞こえてきた。アクアが心配になったティアがアクアの部屋まで駆け付ける。アカメもそれについていく。

 

「アクア、大丈夫!!?何があったの!!?呪われてないよね!!?」

 

「アクア、入るわよ」

 

「ふ・・・二人とも~・・・」

 

アクアの部屋に入るとそこにはアクアがめそめそと泣いていた。・・・空の酒瓶を持って。

 

「・・・おい」

 

「こ、これは大事にとっておいたすごく高いお酒なのよ・・・。お風呂から上がったらゆっくりとちびちびと大事に飲もうと楽しみにしてたのに・・・。それが私が部屋に帰ってきたら、見ての通り空だったのよーーーー!!!うわああああああああ!!!!」

 

自分たちにとっては非常にどうでもいいことで悲鳴を上げていたアクアにたいしてティアは本当に冷めた顔をしている。

 

「そう、それは残念ね。いったいどんな悪霊の仕業なのかしらね」

 

「え・・・」

 

「悪霊!そうよきっと悪霊の仕業に違いないわ!!ちょっと私、屋敷の中を探索して、目につく霊をしばき倒してくるわ!!うおりゃああああああああああ!!!出てこいやああああああああ!!!」

 

アクアは霊にたいして怒り狂い、部屋を出ていった霊を見つけてはターンアンデッドをかけまくった。ついでに花鳥風月も披露した。

 

「はっ、やっぱバカね。霊がどうやって酒を飲むのよ」

 

「ねぇお姉ちゃん、アクアのお酒、なんか心当たりあるの?」

 

「・・・ティア、今晩飲んだお酒、おいしかったかしら?」

 

「え?ああ・・・そういえば・・・いつも飲むシュワシュワより結構おいしかったような・・・て、まさか・・・」

 

アカメの突然の質問にティアは勘づいたような顔をし、信じられないといった顔になっている。

 

「そうよ。私がこの酒瓶を取ってめぐみん以外の全員に提供したわ」

 

「うわぁ・・・お姉ちゃんが珍しく手伝ってくれるって言ってたのって・・・引くわー・・・」

 

アクアが騒ぐ元々の原因を作ったのはアカメで、それらをめぐみんを除いたメンバーたちに提供したようだ。ティアはその事実を結構引いている。

 

「ま、これで怒り狂って悪霊退治に専念してくれてる・・・計画通りだわ」

 

「でもアクア、さっきお風呂上がりの楽しみにって言ってたよ。かわいそうじゃない?」

 

「高級酒の味を見抜けなかったあいつがマヌケなだけよ。それにね・・・」

 

アカメはにっこりと微笑んだ後・・・ゆっくりと悪党が浮かべるようなゲスい笑みを浮かべていく。

 

「アクアの思惑を潰すのが、何より楽しいんじゃない・・・」にこぉ・・・

 

「ゲスだ!!!ここに本物のゲス女がいる!!!」

 

アカメのあまりにゲスい発想にティアはそう言わずにいられなかった。

 

「どっちにしても、高級酒を飲めたのだからよかったじゃない。ふわぁ・・・眠・・・さっさと寝ましょう」

 

「え・・・う、うん・・・」

 

眠そうにしているアカメはせっせと自分たちの部屋に戻っていく。一方のティアは何やら不安そうにしながら部屋に戻っていった。

 

 

ーこのすばー

 

 

部屋に戻った後、双子はと就寝に入る。アカメはベッドでぐっすりと寝息をたて、とても気持ちよさそうに眠っている。

 

「・・・お姉ちゃん。お姉ちゃん」

 

するともう1つのベッドで寝ていたティアがアカメをゆすって起こそうとしている。ゆすられて起きたアカメは明らかに不機嫌そうに、眠そうにしながらティアを見る。

 

「・・・何よ。睡眠の邪魔をしないでちょうだい・・・」

 

「あ・・・あのさ・・・今日は・・・一緒に寝ない?」

 

「はあ?」

 

ティアの提案にアカメはわけわからないといった声を上げる。

 

「あんた、何言ってんのよ?それやったらいつもとなんも変わらないじゃない」

 

「そうなんだけど・・・そうなんだけどさ・・・」

 

「わかってるなら自分のベッドに戻りなさい」

 

アカメは門前払いするかのようにそう言って寝がえりをうつ。そんなアカメの意図を無視するかのようにティアはアカメのベッドに入り込む。

 

「ちょっと、勝手に入らないで」

 

「お願いだよ。今日だけ、今日だけだから・・・」

 

「あんたまさか、幽霊が怖いとか言わないでしょうね?」

 

「ち、ちちち、違うよ!!幽霊なんか・・・幽霊なんか怖くなんかない!!」

 

明らかに声が強張っているが、アカメはいちいちそれに付き合ってる暇はない。

 

「だったら自分のベッドに早く戻りなさい。てか狭いのよ、私のベッドから出ていけって」

 

「嫌だ。今日は意地でもお姉ちゃんのベッドから出る・・・わけ・・・には・・・」

 

ティアが自分のベッドに視線を向けた時・・・そこには・・・いた・・・。さっきまでは存在するはずがなかった・・・1つの女の子の人形が。

 

「わ・・・わああああああああああああああ!!!!!????」

 

それを見たティアはすぐにアカメのベッドから出ていって、さらには逃げるように部屋からも出ていった。

 

「・・・たく・・・ふわぁ・・・」

 

ベッドから出たのを確認したアカメはすぐに再び就寝する。アカメが目を閉じて眠りにつこうとしたのを見計らったかのように、アカメにずしんとした重みが乗った。

 

「・・・・・・」ムカッ

 

アカメが再びを目を開けると・・・それは・・・あった・・・。絶対になかったはずの女の子の人形が・・・それはもう・・・大量に・・・

 

ガシィ!!!メキメキメキ!

 

怖がるのかと思いきやアカメは人形の1個の頭を鷲掴みにする。かなり強い力がこもってるのか人形にメキメキと音をなっている。

 

「いい加減にしなさいよ・・・こっちは寝たいって言ってんの。幽霊だかなんだか知らないけど・・・私の睡眠を妨害して・・・このまま寝かさないつもりじゃないでしょうね、ああ?殺すわよ」

 

「・・・・・・」じわ・・・

 

不機嫌が限界に達したのかアカメの顔はまるで般若のように恐ろしかった。メキメキと音とたてている人形は出るはずもない涙を流している。幽霊人形が恐れをなしてか人形全員は双子の部屋から出ていった。掴まれた人形も他の人形についていった。

 

「・・・たく・・・幽霊ごときに何ビビってんだか・・・ふわぁ・・・」

 

アカメは何事もなかったかのように3度目の就寝に入る。人形にとり憑いた幽霊を潰そうとする辺り、メンバーの中で1番図太いのかもしれない。

 

 

ーこのすばー

 

 

幽霊人形から逃げたティアは廊下で息を整え、先程目にした光景を振り返る。

 

「はぁ・・・はぁ・・・え?何あれ何あれ?あんな人形部屋に置いてあったっけ?やばい、怖いんですけど・・・」

 

さっきは否定していたが、ティアは実は実態がない幽霊の類いがかなり苦手なのである。アンデッドはともかく、あのように急に現れた人形や幽霊などを見ると冷静さを失うのだ。

 

「・・・ああ、きっとあれは普通に私が置いた人形だうん、そうに違いない。だって動くなんてありえるわけないし・・・追いかけたりなんて・・・」

 

急に現実逃避をし始めたティアは回れ右するように体を振り返った。振り返った先で、アカメから逃げていった幽霊人形が大量にこっちに近づいて来ている。

 

「わ・・・わああああああああああ!!!夢じゃないいいいいいいいいいいいああああああああああああああ!!!!!」

 

幽霊人形が動いているのを見たティアはアクア並みに泣きわめきながら幽霊人形から逃げていく。

 

「なにこれなにこれなにこれええええええああああああああ!!!!怖い怖い怖い怖い!!!!助けて!!!!誰か助けてお姉ちゃん助けて!!!!」

 

ティアは必死に幽霊人形から逃げていき、アクアの部屋まで辿り着いた。

 

「アクア!!!!アクアさん!!!!アクア様!!!!お願い本当に助けて!!!!」

 

ティアはあまりの必死さでアクアの部屋に勝手に入り、ドアを閉める。部屋に入って安堵していると・・・ティアは見た。短い黒髪に・・・紅く怪しく輝く瞳の少女を・・・。

 

「ふわああああああああああああああ!!!???」

 

「ひゃああああああああああああああ!!!???」

 

ティアと少女はお互いに見て悲鳴を上げた。

 

「・・・て、めぐみんじゃん。こんなところで何やってんの?」

 

そう、この紅い瞳をした少女は仲間であるめぐみんであった。

 

「そ、それはこちらのセリフです。ティアこそなぜアクアの部屋に?」

 

「う・・・それは・・・人形が私たちの部屋に現れたから・・・身の安全のために・・・守ってもらおうと思ったんだよ」

 

「なんですか・・・そちらも同じでしたか・・・」

 

どうやらめぐみんの口ぶりから察するに、めぐみんのところにも幽霊人形が現れたようで、考えていることはティアと全く同じであったようだ。

 

「ところで、アクアはどこ?部屋にいないみたいだけど・・・」

 

「恐らくはまだ屋敷の除霊をやっているのではないでしょうか。ちなみに、ダクネスも一緒です」

 

「そっか・・・。なら・・・安心・・・かな・・・?」

 

「そういえば、同じ部屋、といえば・・・アカメはそのまま・・・置いて・・・?」

 

「お姉ちゃん、かなり図太いから多分逆に幽霊を脅してるかも・・・」

 

「ああ・・・なんだか容易に想像できますね・・・」

 

ティアとめぐみんはアカメが幽霊を脅している姿を想像して若干引いたような顔になっている。

 

「まぁ・・・しばらくはここにいよっか。多分アクアが戻ってくる頃には、除霊が終わってるはずでしょ」

 

「あ・・・あのぅ・・・」

 

アクアが戻るまでここに居座るつもりのティアにめぐみんがもじもじと話しかけてきた。

 

「そ・・・そのぅ・・・トイレに・・・行きたいので・・・一緒に・・・行きませんか・・・?」

 

「・・・ええ・・・」

 

どうやらめぐみんはトイレに行きたいようだが幽霊に出くわしたくないティアはかなり渋ったような顔をしている。

 

「ああ・・・めぐみん、申し訳ないけどそれは私には分不相応な頼みだよ。だからそれはカズマ辺りに頼みなよ。じゃ、私はここで待って・・・」

 

ティアはやんわりとめぐみんの誘いを断ろうとしたが、そのめぐみんがティアの袖を掴んで引き留めた。

 

「・・・何してんの?放してよ。私はここでゆーったりと待ってるからめぐみんはトイレにでも・・・」

 

「・・・させませんよ。何1人だけ助かろうとしてるんですか。私たちは・・・仲間じゃないですか。トイレだろうとどこだろうと・・・行くときは一緒です」にこ♪

 

めぐみんは爽やか笑顔でそう言ったが・・・ティアは力づくでもめぐみんを引き離そうとする。

 

「ええい!!放してぇ!!こんな時だけ仲間の絆を主張するとかクズでしょ!!だいたい、紅魔族はトイレに行かないんじゃなかったの!!?なんだったらそこに空の酒瓶が転がってるからぁ!!!」

 

「今とんでもない事を口走りましたね!!?その空いた酒瓶で私に何をしろと!!?させませんよ!!自分は用を足す用がないからと言って調子・・・に・・・」

 

ティアとめぐみんが互いに構えようとした時、めぐみんは途端に青ざめた顔になり始めた。それに気づいたティアは思わず後ろをふりむく。そこには・・・いたのだ・・・。大量の幽霊人形たちが・・・もうびっしりと・・・窓全体に覆い尽くすように・・・。

 

「「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」」

 

恐怖を感じたティアとめぐみんはすぐさま泣きさけびながらアクアの部屋から逃げるように出ていった。

 

 

ーこのしゅばああああああああ!!!!ー

 

 

幽霊人形から逃げきったティアとめぐみんがいるのはトイレの前だった。めぐみんはすぐにトイレに入り、ティアはそこで息を整えながら待機している。

 

「・・・ティア、ちゃんといますか?」

 

「・・・いるよ」

 

「本当に、そこにいますか?」

 

「・・・いるって!」

 

「本当に・・・本当に・・・ちゃんといてくれますか?」

 

「いるってば!!ちゃんとここにいるし、置いてったりしないから早くして!!私は1秒でもこんな廊下にいたくないんだってば!!」

 

めぐみんはかなり心細いようでティアがいるかどうか何度も確認を行っている。ティアもかなり心細いようでめぐみんをかなり急かしている。

 

「・・・あのぅ・・・さすがにちょっと恥ずかしいので、大きな声で歌でも歌ってくれません?」

 

「何が悲しくてこんなトイレの前で歌わなきゃいけないのさぁ・・・!」

 

ティアがめぐみんのトイレを早く済ませてほしいと思っていると・・・

 

「あああああああああ!!!ああああああああああああああ!!!!」

 

「!!?か、カズマぁ!!?・・・て・・・」

 

曲がり角からカズマが何かから逃げている様子で現れた。その後ろを見て見ると・・・いた・・・幽霊人形が・・・。

 

「わああああああああ!!!バインドおおおおおおおおおお!!!」

 

絶叫をあげたティアはこの場から取り残されるのを恐れて通りかかろうとしたカズマにバインドをかけて逃げなくさせるようにした。

 

「うおおおおお!!?ティアああああああ!!?放せええええええええ!!!こんなところで何してんだぁ!!?」

 

「そんなことは今どうだっていいからあああああああああ!!!めぐみんんんんんん!!!急いでえええええええ!!!!」

 

ティアはカズマを逃げさせないようにさせてめぐみんに早くトイレから出るように急かす。

 

「そんなに急がせないでくださいよ!!というか、そこにカズマもいるんですか!!?」

 

「早くしないと私もカズマも逃げられないからあああああああ!!!」

 

「逃げられないのはお前が俺にバインドを使ったからだろおお!!?てかアカメがいないのになんでスキルが正常に使えるんだよ・・・て、あああああああやばい!!!やばいのが近づいてくるうううううううううう!!!」

 

「そ、そんなに急かされたら出るものも出ませんよぉ!!!」

 

何度もめぐみんに呼び掛けている間にも、幽霊人形はじりじりと近づいてきている。

 

「ひいいいいいいいいい!!!!もう限界いいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

 

近づいてきた幽霊人形から逃げるためにティアはトイレの鍵を施錠スキルで開けて扉を開いた。

 

「!!??ふわあああああああああああああああああああ!!!!!」

 

「急いでえええええええ!!!!」

 

ティアはめぐみんを無理やり連れだしてカズマを引きずりながらこの場を離れていく。

 

「あなたがこんな非常識な人だとは思いませんでしたよ!!!」

 

「そんなことを言って、置いていったら後でぐちぐちぐちぐち文句言うでしょうが!!」

 

「つーかこの縄をほどけぇ!!!走りづらいんだよ!!!後俺の膀胱が限界なんだが!!?」

 

「あんたもかい!!!」

 

カズマとめぐみんが文句を言っている間にもティアは倉庫に入り、身を隠す。その間にもティアはカズマにかけたバインドを解く。

 

「こ・・・ここまでは・・・来ない・・・よね・・・?」

 

「うぅ・・・俺の膀胱が・・・!いっそここに置いてあった花瓶で用を・・・」

 

「ちょっとやめてよ!!こんな時に非常識な!!」

 

トイレに行くことができなかったカズマは花瓶で用を済ませようとするがティアがそれを止める。

 

「・・・黒より黒く・・・闇より暗き漆黒に・・・我が真紅の混交を望みたもう・・・」

 

「何やってんの!!?この屋敷ごと吹き飛ばす気!!?」

 

めぐみんがどさくさに紛れて爆裂魔法を放とうとしたところをティアが必死になって止める。

 

ドォン!!

 

「「「ひっ・・・!」」」

 

ドォン!ドォン!

 

バカをやっている間にも扉がどんどんと音が鳴り響いている。

 

「・・・くそ!しょうがねぇなぁ!!」

 

怖がっているめぐみんとティアを見てカズマがここで男としての意地を見せる。

 

「めぐみん、ティア、ドアを開けたらお前らは走れ!俺は覚えたてのドレインタッチで人形の魔力を吸い取ってやる!!」

 

めぐみんとティアはカズマの提案にこくこくと頷き、カズマはすぐに行動に出る。

 

「おらああああ!!かかってこいやああああ!!この悪霊が!!後でうちの狂犬女神けしかけてやんぞこらああああああ!!!」

 

ガチャッ!ガン!!!

 

「「「・・・?」」」

 

扉を開けた瞬間にガツンと音がしてカズマたちは怪訝な表情になる。ドアの先を覗いてみると、扉にでこをぶつけたであろうアクアが気絶している。周りには動かなくなった人形が大量に転がっていた。これを見る限り、もう除霊は終わったようだ。

 

「お、おいアクア⁉大丈夫か⁉」

 

「さっきからピーピーうるさいわよ・・・。おかげで目が覚めたじゃない・・・ふわあぁぁ・・・」

 

「「「・・・・・・すみません」」」

 

一緒にいたダクネスはアクアを心配し、アカメはあくびをしながら文句を垂れている。いたたまれなくなった3人は謝罪した。

 

 

ーこのしゅば・・・。

 わー。

 わーい、わーいー

 

 

悪霊を退治し終えたカズマたちパーティは翌日、冒険者ギルドに顔を出している。

 

「悪霊を退治したということで、臨時報酬が出てますよ」

 

訪れた理由はギルドから呼び出され、臨時報酬を受け取るためである。

 

「ギルドでも討伐クエストを設定したんですが・・・いくら退治してもすぐに新しい悪霊が住み着いて、困っていたんです」

 

「らしいですね。なんでそんなに悪霊が集まってきてたんだろう?」

 

「それなんですが・・・あの屋敷の近くに共同墓地があるじゃないですか」

 

ルナが言う共同墓地というのは、カズマたちがウィズと初めて会った場所である。

 

「誰かがイタズラか何かで巨大な結界を貼ったみたいなんですよ。それで行き場をなくした霊があの空き家に住み着いたみたいで・・・」

 

「・・・!」

 

ルナの説明にアクアは明らかに心当たりありまくりで顔を青ざめている。それに気づいたカズマたち全員がアクアをじっと見つめる。

 

「・・・ちょっと失礼しますよー」

 

「・・・おい、ちょっと来なさい」

 

カズマたちはいったん受付から離れてアクアを問い詰める。

 

「・・・おい、心当たりがあるな。言え」

 

「はい・・・。以前・・・ウィズの代わりに墓地の除霊を引き受けたじゃないですか・・・」

 

「ああ」

 

「でも初地から墓地まで行くのって面倒くさいじゃないですか・・・」

 

「ああ」

 

「それでいっそ墓地に霊の住み場をなくしてやれば・・・そのうちどっかに散っていなくなるかなと思って・・・やり・・・まし・・・た・・・」

 

どうやら共同墓地に結界を貼った犯人はアクアであり、今回の幽霊屋敷騒動を起こし、それらを解決したのも全部アクアである。完全なるマッチポンプである。

 

「・・・ギルドからの臨時報酬は受け取らない。いいな?」

 

「・・・はい」

 

今回の件はアクアはさすがに反省しているようで、臨時報酬を受け取らないという決定に従った。その後は全員で不動産屋の男に直接に謝りに行ったのであった。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

カズマたちは臨時報酬を受け取らず、今回の幽霊騒ぎについてを不動産屋の男に謝罪をした。アクアが起こした件を不動産屋の男は心優しく、快く許してくれた。しかも、屋敷の庭にある墓をきれいにしてくれるだけで屋敷に住み続けていいとも言われた。屋敷に戻ったらカズマはさっそくその墓をきれいに掃除していく。ちなみに、先日言っていた幽霊の細かい設定は本当のことだったようだ。

 

「カズマさん、こんにちは。お墓の掃除ですか?」

 

「おお、ウィズ」

 

カズマが墓を掃除しているとウィズがやってきた。

 

「よかったですね、ここに住んでいいことになって」

 

「本当、大家さんがいい人で助かったよ。ウィズも迷惑をかけちまったな」

 

「いえいえ、私としてはむしろこれでよかったと思ってますから。これならきっと、寂しくないでしょうし」

 

ウィズはにっこりと微笑んでそう告げた。

 

「それより、ウィズはいいのか?あいつら、ここに住むことを決めたみたいだけど・・・」

 

「寂しくはなりますが、アカメさんとティアさんが決めたことなので、私からは言うことはありません。それに、お2人はカズマさんをとても気に入っているご様子なので、むしろこれでいいのだと思います」

 

「そう・・・なの・・・か?」

 

双子がカズマを気に入ってると言っても、本人はあまり実感がない。

 

「それでは、私はお店番があるので帰りますね。カズマさん、皆さんのこと、アカメさんとティアさんのことを、よろしくお願いしますね」

 

「ああ。来てくれてありがとうな」

 

ウィズはカズマにぺこりとお辞儀をし、魔道具店へと戻っていく。

 

「ふぅ・・・頼むから、もうイタズラしないでくれよ?」

 

ウィズが去った後、カズマは貴族の娘の墓に手を合わせて、冥福を祈る。

 

「カズマー、お昼ご飯できたよー!早く帰ってこないと、ご飯が冷めちゃうよー?」

 

「わかったー!今行くー!」

 

「ちょっとアクアー、暖炉の薪がないんだけど?」

 

「ああ、じゃあそこにあるカズマのジャージをくべておいてー」

 

「!!!やめろおおおおおおお!!!アクアの奴ふざけんな!!!俺の唯一の日本の思い出の品を、燃やそうとすんなああああああああ!!!」

 

カズマはお昼ご飯食べに、自分の思い出のジャージを燃やされるのを阻止するため、屋敷に戻っていくのであった。




ダクネスの騎士の心得覚書・第15条

騎士たるもの、些細なことで心を乱してはならない。
魔物の妖術にかかるなどもってのほかでましてや淫らかな精神攻撃に踊らされ、味方に痴態を晒すなど恥ずべき行為である。
また、万が一にもそのような事態に性的興奮を感じてしまうような真似はあってはならない。騎士以前に人間としてどうかと思う。
全く持って愚かな行為である。

アカメ、ティアの反応

アカメ「へぇ・・・言うじゃない。なら・・・私の拷問を前に同じことが言えるかしら?」

ダクネス「何!!?その拷問について・・・詳しく!!」

ティア「立派なものを書いてる側からこれだよ・・・。絶対書いていることと全く真逆な反応するよ・・・。全然信憑性がない・・・」

次回、この素晴らしい店に祝福を!

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