今年も小説をいっぱい投稿できるように頑張りたいです。それでは、微笑ましい双子に幸運を、今年1発目、どうぞ。
盛大なミスを犯して、裁判が開かれることになってしまい、双子は再び牢屋の中に入れられ、喧嘩して責任のなすりつけ合いをしていた。
「うああああああああ!!!あんたが余計なことを言ったおかげで裁判が開かれることになったじゃない!!!!」
「はあ!!?私のせいにしないでよ!!!お姉ちゃんなんか魔道具鳴りっぱなしでもっとひどいでしょ!!!!」
「私のはそこまで重要じゃないでしょうが!!!ウィズの存在を忘れるあんたが1番ひどいわ!!!!」
「うるさい!!!おまけに盗賊団だっていうことまでバレちゃってさ!!!もう裁判不可避だよ!!!!」
「それはあんたのせいよ!!!!」
「お姉ちゃんのせいだよ!!!!」
ガシャンッ!!
「おい、いい加減にしろ!上にまで響いてるんだよ!!」
双子の喧嘩は騎士が鉄格子を警棒みたいなので鳴らして黙らせる。ちなみにダストは双子の喧嘩に関わらないよう牢屋の隅っこにいた。
「あー・・・まぁ・・・あんま気にすんなよ。俺なんざ裁判なんて両手の指じゃ足りないくらいだぜ?冒険者なんて荒くれ稼業は1度くらい警察の世話になってこそ1人前だ。それこそ、盗賊団だったんならなおさらだ。前向きに行こうぜ」
「「・・・・・・」」
ダストの言葉を聞いて双子はお互いに顔を見つめて、そしてその視線をダストに切り替えて・・・
「「・・・ふん!!」」
ドゴッ!
「おぐぅ!!?」
そのままダストに腹パンチをきめる。
「お・・・お前ら・・・いきなり何しやがる!!?」
「ダストのくせに生意気だよ」
「つーか、チンピラクズに1人前とかどーとかなんて言われたくないわ」
「お・・・お前ら・・・人がせっかく気にかけたのに・・・!」
双子のあまりに理不尽さにダストはさっきの励ましを返してくれと考えた。
「まあいいわ。裁判は明日・・・カズマの采配に期待するしかないわ」
「そうだね・・・もう私たちに残された選択肢はそれしかないし・・・」
「うじうじ言ってても仕方ないし、そろそろご飯にしましょうか」
「はぁ・・・外のご飯が恋しいよぅ・・・」
「くそ・・・励まさなきゃよかった・・・て、飯少ねぇし、貧相じゃねーかよ!!揚げ物持ってこいやこらー!!」
明日の裁判に備えて双子は早いところ晩ご飯にありつく。ダストも食事にしようとした時、出された品数のショボさに文句を言い放っていくのであった。
ーこのすば!ー
深夜の牢屋、特にやることがない双子とダストは薄い布団にかぶって就寝につく。ぐっすりと就寝しているところに・・・
ドカーン!
「・・・ん?何・・・?」
遠くから爆発音が響いてきて、牢屋が微かに振動した。それに気づいたティアは目をこすって起きた。
「・・・とも・・・2人とも!ねぇ、2人とも起きて!」
そこへ格子の窓から聞きなれた声が聞こえてきた。ティアは気のせいであってほしいと思ってもう1度寝ようとした。
「ねぇ、2人とも、聞こえてる?ねぇってば!」
どうも聞き間違えでないと気づいたティアは面倒くさそうな顔をして頭をかいた。そして寝ているアカメをゆすって起こす。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん起きて」
「・・・あ?何よ・・・また脱獄しようっての・・・?」
ゆすったおかげでアカメはすぐに目を覚ました。
「やっと起きたわね2人とも!こっちよ!」
双子は格子の窓に視線を向ける。そこには格子の窓越しで双子を見ているアクアであった。アクアを見た瞬間、双子はアクアにたいして激しい殺意を向ける。
「あ・・・アークーアー・・・!!!」
「あんた・・・よくもまぁ堂々と私たちの前に姿を現したわね・・・」
「待って待って!そんな怒らないでよ!!こうして助けに来たんだから!!」
「「はあ?」」
昨日の朝に自分たちを売ったくせに何言ってんだこいつ、みたいな顔をしている双子。
「本当は昨日のうちに助けに行こうと思ってたんだけどね、カズマが無理やり私たちを縛り付けるから助けに行けなかったけど、もう大丈夫よ!そのカズマはゴッドブローをくらわして気絶させたから!」
「うわぁ・・・カズマ・・・哀れ・・・」
昨日アクアたちを止めたカズマを気絶させたという知らせにティアはカズマをかわいそうに思った。しかし、アクアは自分たちを助けようとしているのは嘘ではないようだ。
「つーか助けるんなら昨日のうちにもっと弁護しなさいよ」
「だって仕方ないじゃない!それで全員捕まったら意味ないもの!」
アクアの言うことは最もだ。弁護して自分たちまで国家転覆罪になってしまったら本当の意味で助けがなくなってしまうのだから。
「今めぐみんが街の近くで爆裂魔法を放ったから、おかげで署員たちは驚いて飛び出していったわ。今頃はダクネスが魔力を使い果たしためぐみんを抱えてその場を後にしている頃ね」
どうやらさっきの爆発音はめぐみんの爆裂魔法によるもので、揺れはその影響による地響きなのだろう。
「でもここからどうやって逃げ出すの?」
「先に言っておくけど、ピッキングは無駄よ。だってダイヤル式だもの。施錠スキルも通用しないわ」
「・・・やるわね・・・ここまで脱獄対策がされてるなんて予想外だわ・・・」
ピッキングがダメという事実にアクアは渋い顔になる。それを見た双子はやっぱりアクアはバカだと思った。
「ただダイヤル式ってだけじゃん」
「はい、終了、さっさと帰りなさい」
「待って待って!まだ作戦はあるの!これは絶対完璧だから!」
そう言ってアクアは1つの糸鋸を取り出し、それを双子の牢屋の中に入れる。
「・・・糸鋸をどうすんの?」
「まさかこれで窓の鉄格子を切れってんじゃないでしょうね?」
「よくわかったわね!明日は裁判らしいし、タイムリミットは朝までよ!時間がないから2人がかりでやりましょう!」
「「はあ・・・」」
アクアの出した提案に双子はため息をこぼす。
「仕方ないわね・・・。ティア、私が肩車するから、鉄格子を切っちゃってちょうだい。どうせ無理だと思うけど」
「しょうがないなぁ・・・どうせ無理だと思うけど・・・アクアに付き合っちゃいますか。うまくいけば儲けものだし」
とりあえずはアクアのバカに一応付き合う形でアカメはティアを肩車で上まで上げ、ティアはアクアと一緒に糸鋸で鉄格子を切る行動に入る。
「それじゃ、いくわよ!」
アクアとティアは糸鋸でぎこぎこと鉄格子を切ろうとするがびくりともしない。
「こ・・・この・・・早く切れなさいよ・・・!」
「あ、アクア、そんな考えなしに切ると・・・」
ポキッ!
アクアが切れないことのイライラで強めに切ろうとした瞬間、アクアの糸鋸の刃がぽっきり折れた。
「・・・折れちゃった」
「折れちゃったね。使い物にならなくなっちゃったね」
「はあ?折れたの?1本じゃ朝までかかるわよ?」
アクアの糸鋸が使えなくなり、ティアのものだけでは朝までかかる・・・そうなってしまえばタイムアップ、裁判の時間になってしまう。
「・・・ちょっと待ってて。追加の分の持ってくるから」
そう言ってアクアは糸鋸を取りに行こうと乗っていた台から降りる。アクアの姿が見えなくなってしばらくすると・・・
「すいまっせん!!!うちのバカでアホな仲間が本当にすいまっせん!!!」
謝罪しているカズマの声が聞こえてきた。どうやらアクアは気絶から復活したカズマに捕まってしまい、署の人間に謝罪しているのだろう。
「・・・怒られちゃってるね」
「・・・アクアのああいう前向きさは、見習うべきなのかもしれないわね」
作戦は失敗したが、前向きなアクアを見て双子はアクアに見習うべきところはあると思った。・・・ああなろうとは絶対に思わないが。
「・・・寝ようか」
「そうね。今降ろすわ」
ティアは糸鋸を窓から放り投げ、アカメはティアを肩車から降ろす。そして双子は布団にかぶって、再び就寝につくのであった。
ーこのすばー
翌日の朝、双子は手錠をかけられ、セナと騎士に無理やり連れてこられ、裁判場の被告人側に席に立たされた。ご丁寧にもこの裁判場には、首つり処刑の場まであった。会場には他の冒険者たちがこの裁判の様子を見守っている。
「これより被告人、アカメとティアの裁判を執り行う!!告発人はアレクセイ・バーネス・アルダープ!!」
双子は処刑場を見ていやに息を吸ったり吐いたりの行動を繰り返している。そして・・・
「・・・お・・・おえええぇぇ・・・」
「ティア!!?気持ちはわかるけど吐いちゃダメよ!!」
ティアが本気で吐きそうになっており、アカメが背中をさすっている。緊張がピークに差し掛かっている双子に弁護人であるめぐみんたちが緊張を和らげようと声をかける。
「緊張しているのですね。大丈夫、私たちがついていますよ。紅魔族はとても知能が高いのです。あの検察官が涙目になるぐらい論破してやりますよ」
「安心しろ、本当にどうしようもない事態になったら私が何とかしてやる。今回の件に関しては、お前たちは何も悪くない」
「めぐみん・・・ダクネス・・・」
「昨日爆発の犯人として特定されたお前らに説得力なんて皆無だけどな。ダメって言ったのに勝手なことしやがって。・・・まあ俺も、ああ書いた手前だしな。やれるだけはやってみるよ」
「・・・まあ・・・頼りにはしてるわ」
本気で双子を弁護しようと息巻いているカズマたちに双子はここ1番で頼りになると感じた。
「・・・だが、問題はあいつなんだよなぁ・・・」
最大の不安要素として、カズマはアクアをじっと見つめる。
「まあ、私に任せなさいな!聖職者である私の言葉にはものすごい説得力があるわよ!」
「お前に説得力なんかねーよ!!アクア、頼むから今回裁判終わるまでお前は口を開くな、黙ってろ。霜降り赤ガニ買ってやるから」
「何言ってるのカズマ?私たちの経済にそんな余裕あるわけないでしょ?バカなの?大丈夫、この中で1番弁護士に詳しいのは私よ?何せ私は日本で人気の裁判ゲームをこれでもかってくらい遊んだんだから!」
「よしお前は本当に黙ってろ。さもないとそのゲームのお楽しみのお仕置きくらわすぞ」
カズマとアクアのこのやり取りを聞いて、双子は本当にアクアは使えないと判断する。そんな中で、今回の裁判の告発人である大柄で毛深くて太った中年男、アレクセイ・バーネス・アルダープはめぐみんたちに視線を向けている。その後はダクネスに視線を向けている。それはもうねっとりと、念入りに。
「ねぇねえ、なんか大きいおじさんが超こっちを見てるんですけど。なんだか邪なものを感じるの」
「まあ、あんな見るからに変態で豚みたいな奴なら、そう感じても仕方ないわ」
「なんか腹立ってきた。ちょっと目潰ししようかな」
「立場悪いのに手を出そうとするな!てかあのおっさん、ずっとダクネスを見てないか?」
「見てますね。屋敷内で薄着でうろつくダクネスを見る時のカズマと同じ目つきですよ、あれは」
「お、おいやめろよ・・・俺をあんな変態おっさんと一緒にするなよ・・・て、どうしたダクネス?あのおっさんの視線が気になるのか?」
「ん・・・いや、そうではない。それについては後で話そう」
アクアたちがアルダープを気味悪がっている中、ダクネスの視線はアルダープに向けている。カズマがそれに気づいたところで、裁判長が小槌を叩く。
「静粛に!裁判中は私語を慎むように!では、検察官は前へ!ここで嘘を吐いてもこの魔道具ですぐにわかる。それを肝に銘じ、発言するように」
裁判が始まろうとしている中、この裁判の様子をクリスと全身をフードで被った女性が見つめている。
「今動かなくてもいいの?裁判始まっちゃったよ?あの2人を助けるんじゃなかったの?」
「・・・今回の裁判はあの領主の不正を暴くためにも必要な裁判です。そのためにも、あの2人にはもうしばらく我慢してもらいます。辛いところではありますが・・・」
全身フードを被っているのは、ネクサスの命によってこの街にやってきた秘書、カテジナだった。
「それに、私が裁判自体を中止にしてしまえば、それこそ自身の立場を危うくする一方です。今は、判決を待つしかないのです」
「そっちもいろいろ大変だねー。とにかく、カズマ君の力量を、お手並み拝見させてもらおうかな」
「・・・あれが、あの2人のパーティ・・・」
クリスとカテジナが裁判を見守る中、裁判長に呼ばれ、セナが前に出て、告訴状を読み上げる。
「被告人アカメ、被告人ティアは機動要塞デストロイヤー襲来時、これを他の冒険者たちと共に討伐。その際に爆発寸前であったコロナタイトをテレポートで転送するように指示。転送されたコロナタイトは王都にある被害者の別荘に送られ爆破。別荘は爆破によって消滅。モンスターや毒物、劇物、爆発物などを転送する場合は、ランダムテレポートの使用は法により禁じられております。被告人の指示した行為はそれらの法に抵触し、そしてまた、領主という地位の人間の命を脅かしたことは、国家を揺るがしかねない事件です。よって自分は、被告人に国家転覆罪の適用を求めます」
「異議あり!!」
セナが告訴状を読み上げたと同時に、アクアが手をあげて発言した。それには双子だけでなく、カズマたちがあんぐりとした表情をしている。
「弁護人の陳述の時間はまだです。発言がある場合は許可を求めて発言するように。・・・裁判は初めてでしょうから今回だけは大目に見ましょう。弁護人、発言をどうぞ」
「異議ありって言いたかっただけなのでもういいです」
「このバカぁ!!黙ってろって俺言ったよなぁ!!」
バシンッ!!
アクアのバカ発言にカズマは容赦なくアクアの頭を引っ叩く。
「痛い!!何で叩くのよ!!?」
「弁護人は弁護の時だけ口を開くように!!」
「すいまっせん!!本当にすいまっせん!!!」
「痛い!!痛い!!ちょ・・・頭をガンガン机に叩きつけないで・・・カズマさん!!?やめてーーー!!」
裁判長に怒られたカズマは頭を何度も下げ、アクアを頭を下げると共に机に叩きつけ、もう何度目かわからない謝罪を行った。これを見た双子はアクアを絶対にぶち殺すという思いが浮かび上がった。
「え、ええっと・・・自分からは以上です。つまりその、被告人に国家転覆罪の適用を求めるということで・・・」
「続いては、被告人と弁護人に発言を許可する。では陳述を!」
発言の許可を得たため、アカメはすぐさま発言する。
「あのですね、私は・・・」
チリーン。
「えっ!!?まだ何も言ってないのに鳴った!!?」
「おおおおい!!!またか!!またそれなのかこらぁ!!!」
「え、えぇっと・・・姉の代わりに私が説明を・・・」
まだ発言してすらいないのに嘘発見器の魔道具は反応したことにカズマは驚愕し、アカメはブチギレる。もはやアカメの発言の許可すら許さない魔道具。そんな哀れなアカメの代わりにティアがこれまでのベルディア戦、デストロイヤー戦においての活躍を述べる。
「・・・と、いうわけでですね、デュラハン戦においてもデストロイヤー戦においてもカズマの作戦のもとでこの街に大きな貢献をしたというのです。私からは以上です」
「そもそもな話ですよ?そのコロナタイトを飛ばさなかったらアクセルの街はどうなってると思います?街中火の海ですよ、火の海。そうならないように責任を負ってくれた双子にその扱いは甚だおかしい話と思うのですよ。というか、もっと俺たちを敬うべきだと思うのですよ俺たちは!」
・・・・・・。
ティアの発言とカズマの弁護は魔道具には何の反応も示さなかった。
「・・・なんでよ・・・なんで私だけ・・・」
自分にだけ魔道具に反応していることに根に持っているアカメは怒るどころか、逆に落ち込みを見せている。
「被告人の言い分はよくわかりました。では検察官、被告人に国家転覆罪に適用されるべきだとの、証拠を」
裁判長がセナに証拠を促した時、セナが騎士に合図をした。騎士は待合場へと向かっていった。
「ではこれより、証拠の提出を行い、被告人が国家転覆を企むテロリスト、もしくは魔王軍の関係者であることを証明してみせます」
そう言ってセナが取り出したのは1枚の紙。セナはそれを読み上げる。
「これは被告人の取り調べを記録したものですが、その中に、仲間のアークプリーストとアークウィザードを縛り上げ、ジャイアント・アースワームの口の中に放り込ませるという内容に、彼女らは噂だと答えました。すると魔道具が反応しました。さらには、魔王軍の幹部と交流があるのかという問いにはいいえと答え、魔道具が反応しました。これは、魔王軍と関わっていたという証拠ではないでしょうか」
取り調べ記録の内容を聞いたカズマは冷や汗をかきだす。自分も両方ともかかわっていたから反論が難しいからだ。ちなみにアクアとめぐみんはジャイアント・アースワームのことを思い出し、顔を青ざめ、頭を抱え、ぷるぷると震えている。
「証拠はそれだけではありません。ウェーブ盗賊団という名を、皆さんはご存知かと思います」
「「ウェーブ盗賊団?」」
セナの口にしたウェーブ盗賊団の名を聞いてカズマとアクアは首を傾げる。セナは構わず話を進める。
「自分は彼女ら2人にウェーブ盗賊団であるかという問いには、いいえと答えました。すると魔道具が今までにないほどの反応を示した。このような事態は初めて・・・したがって、アカメとティアは、悪名高いウェーブ盗賊団の一員であるということが判明いたしました!!」
セナのこの発言によって、双子は苦虫を嚙み潰したような表情になっている。周りにいた冒険者たちはざわめきを見せていた。
「ウェーブ盗賊団だって?」
「あの2人が?マジで?」
「あの2人、ただ者じゃねぇとは思ってはいたが・・・まさか盗賊団員ご本人様だったとはなぁ・・・」
荒くれ者だけはいたって冷静だが、冒険者たちは驚きでいっぱいの気持ちであった。めぐみんも驚きでいっぱいの顔になっている。カズマとアクアは何が何だかわかっていない様子。ダクネスだけは真剣みな顔で耳を澄ませている。
「ウエーブ盗賊団の悪行の数々はここにいる全員が証人です。しかし、証拠はそれだけではありません。証人をここへ!」
セナの合図によって騎士は待合室から証人を連れてきた。その証人とは、魔剣の勇者のミツルギであった。
「ミツルギさん、あなたは被告人に魔剣を奪われた上、牛乳パックの魔剣を渡され、試し切りを促されて危険な目にあった。それだけに飽き足らず、魔剣を売り払ったという事実を突きつけられた・・・間違いありませんか?」
「は、はい。ですけど、あれは僕が挑んだのが原因で・・・」
「そうなんです!!その女がキョウヤを地面に叩きつけて魔剣を奪ったんです!!」
「そうです!!その女が割り込んでこなかったら・・・!!」
ミツルギが発言した時、率先してクレメアとフィオが証言を言い放った。2人が双子を睨みつけた時、アカメはそれとは上回った凄まじい殺意を溢れさせている。
「・・・あんたら、これが終わったら無事で済むとは思わないことね・・・」
「「ひいぃ!!キョウヤーー!!」」
「お姉ちゃん!証人を脅そうとしないで!!」
「・・・本当に大丈夫なんですか?あのパーティは・・・」
「あ、あははは・・・」
これまで出された証拠のいくつかにたいして、カテジナは頭を抱えずにはいられなかった。クリスは苦笑いを浮かべている。退廷していくミツルギたちの次に出てきたのは、証人としては相応しくない存在であるダストであった。
「この男は次に控える裁判の被告人です。裁判長もご存知かと思いますが、しょっちゅう問題を起こして裁判沙汰になっているチンピラです」
「おうこら!いきなり呼ばれて来てみればずいぶんな挨拶だなぁ、おい!そのでけぇ乳を揉んでやろうかおい!!」
ダストはセナの発言にセクハラ発言を言いながら突っかかっている。
「ダストさん、あなたはあそこにいる被告人たちと仲がいいと聞きました。間違いはありませんか?」
「おうよ。そこにカズマと俺は親友だぜ?その親友の仲間なら、そいつらも俺のダチだからな!」
「「「いえ、知り合いです」」」
ダストの親友、ダチ発言に双子とカズマはセナが言葉を発する前に知り合いだと答えた。
・・・・・・。
魔道具には何の反応も示していない。3人は嘘を吐いてないということがわかる。
「おおおい!!?」
「し、失礼しました。付き合ってる人間は素行の悪い人間ばかりだと主張したかったのですが・・・」
「気にしないでください。知り合いなのは事実ですから」
「おおい!!お前ら!俺たちの友情はそんな浅はかなものだったのかよー!!」
ダストはカズマたちに言いがかりをつけているが、その間にもダストは騎士たちに連れられ、退廷されていく。
「最後の1人は証人として不十分でしたが、今お見せした証拠は被告人たちの人間性を証明したと思われます。そして、現在騒がれている領主様の屋敷に現れた盗人騒ぎがあることから、被告人は事故を装い、ランダムテレポートではなく、通常のテレポートによる転送で被害者の別荘にコロナタイトを送り付けたのでは、と・・・」
「それは違うわ!!!」
セナの発言に論破しようとしたのは、意外にもアクアであった。
「おお、アクア!アクアだってコロナタイトを飛ばしてたとこを見てたよね!」
「この頭の堅そうな検察官に言ってやんなさい!」
「はあ?そんなものあるわけないじゃない。単にこのセリフを言ってみたかっただけ」
やっぱりアクアはどの場面においても全く役に立たない。それによって双子はより一層アクアに殺意が芽生える。
「その弁護人を退廷させるように!!」
「すいません!!!このバカが本当にすいまっせん!!!」
「痛い痛い!!ちょ・・・カズマ!私をどこへ連れていくの!!?私も最後まで・・・」
「このバカをお願いします」
「は、はあ・・・」
「ちょ・・・なんで騎士さんに引き渡すの?ちょ・・・ま・・・」
カズマはアクアにものを言わさずに騎士に引き渡し、アクアをこの裁判場から退廷させた。
「もういいだろう!そいつらは・・・いや、ウェーブ盗賊団は間違いなく魔王の関係者だ!手先だ!殺せ!死刑にしろ!!」
「い、異議あり!!」
もう付き合いきれないといわんばかりにアルダープが双子を処刑しろと言い張ってるが、ここでカズマが異議を申し立てる。
「ジャイアント・アースワームに関しては否定はしませんが・・・」
「「おい」」
「ミツルギの証言は前提が間違ってるんですよ」
「と、言いますと?」
カズマの異議に裁判長は耳を傾ける。
「この双子・・・厳密にいえばアカメに奪われたってことだけど・・・ミツルギが標的としていたのはそもそも俺だし、勝負で勝ったからもらってアカメにあげただけだ。それをどう扱おうとアカメの自由だと思うんだけど」
「しかし、証言によると割り込んできたと・・・」
「あれは俺が指示したものだ。確かにこれは卑怯な手だが、低レベルの奴が高レベルの奴に勝てるわけないから俺のやり方でやらせてもらうっていう案にあいつは了承したんだ。つまり、俺はルールに則ったうえで勝って、戦利品をもらったってわけ。それに、剣を返してほしい件だって、最初は本物の剣を返せとは言ってなかったんだ。しょうがないだろ?」
意外にも弁護できているカズマにたいして、双子はこいつ誰だ?みたいな顔をカズマに向けている。
「そんな屁理屈が通るわけ・・・」
「他にも弁護はあるぞ。魔王軍の幹部と交流したってことだけど、それはどういう場面のことを言ってるんだ?」
「どういうことですか?」
「交流したってことが話したってことになるなら、俺たちだってベルディアと会話をした。話したうえであいつと戦った。これってさ、交流したっていうことに当てはまらないか?」
「それは・・・」
「だいたい、この双子は一応はベルディアの被害者でもあるんだ。ベルディアはアカメに向かって死の呪いを放ったんだ。当たったのはティアの方だけど・・・魔王軍の関係者なら、なんでわざわざその関係者を殺そうとしたんだ?そんな目にあえば、縁を切ろうとか普通考えるだろ」
至極当然の意見にセナは悔しそうにしている。あまりのカズマの活躍ぶりに双子は嬉し涙を流しながら手を繋ぎ合っている。
「やるねー、カズマ君」
「本当に裁判初めてなのですか?あの男、意外にも粘れてるんですが・・・」
カズマの意外な弁護っぷりに遠くでクリスは感心し、カテジナは少なからず驚いている。
「で、ではウェーブ盗賊団に関してはどうです?あなた方は、この2人が盗賊団だとは知らなかったはずです」
「そ、それは・・・その・・・」
ウェーブ盗賊団の話題を出されたらカズマは言いよどんだ。それもそうだ。ウェーブ盗賊団の名前自体、今回の裁判で初めて知ったのだ。何も知らない状態で反論など、できるはずもない。
「ウェーブ盗賊団は善の行いをしています!!!」
言いよどんでいるカズマの代わりに応えたのはめぐみんであった。
「紅魔の里に現れたあくどい商人に1人のぼっちが被害にあいました!ぼっちの人生が破綻されそうになった時、ウェーブ盗賊団は現れ、商人の騙し取った物を取り返してくれたのです!そのおかげでぼっちは人生を奪われずに済んだのです!それは、他に被害にあった紅魔族も同じです!それは、紅魔の里全員が証人です!」
めぐみんがそこまで称賛するとは思わなかったカズマは驚いていた。どうもウェーブ盗賊団のかっこよさだけで弁護しているわけではないようだ。
「私も同意見だ。ウェーブ盗賊団は悪ではない。あなた方も知っているだろう。ある貴族の因縁によって、家を潰されそうになった貴族の話を。ウェーブ盗賊団は加害者側の歪んだ性根と被害者から巻き上げたものを盗み取り、被害者の私物を返却したのだ。行いこそ褒められたものではないが、あの盗みがなければ、被害者は死に絶え、国の問題になっていったはずだ」
「しかし、その盗み取られた者は・・・」
「なんてことはない。何人かがそのものに手を差し伸べ、今では改心している。私は、その手を差し伸べた存在が、ウェーブ盗賊団だと思っている」
「本当にウェーブ盗賊団が魔王軍関係者ならば、そのような行為を取るはずがありませんよ」
「それが演技だという可能性も・・・」
「では、実際に聞いてみることにしよう。ちょうど嘘を見抜く魔道具もあるわけだからな」
ウェーブ盗賊団が演技を行っている可能性があるというセナの指摘に、ダクネスは双子に聞いてみる。
「アカメ、ティア・・・お前たちは私たち全員を騙していたのか?これまで私たちを助けてくれた盗賊団の行為は、全て演技だったのか?」
ダクネスのその問いかけに双子は嘘偽りなく答える。
「そんなわけないよ!!私たち盗賊団は騙してなんかない!そもそも演技なんて、たいそれたことをできる奴なんて1人もいないよ!」
「行いこそ褒められたものではないのも認めるわ。でも、それでしか救われない命もある。だから私たちはウェーブ盗賊団に誇りを持ってる」
「私たちは自分たちの利益のために行動はしない!優先とすべきなのは、この世界にいる全員の自由を守ること!それは検察官だって、裁判長だって同じ!」
「それを奪う奴らはこの私たちがその性根を盗み出してやる!だから・・・この場で断言してやる!ウェーブ盗賊団は、テロリストでも魔王軍の手先でもない!!」
・・・・・・。
「・・・魔道具に反応なし」
「そ、そんなバカな⁉」
双子の力強い力説に魔道具は何の反応も示さなかった。それにはセナは強く衝撃を受けたように驚いている。
「魔道具による判別はこのように曖昧のものです。ウェーブ盗賊団であるというのは事実ではありますが、国家を揺るがすほどの事件を起こしたわけでもありません。被告人アカメ、被告人ティア、これらを国家転覆罪としてではなく、盗人騒ぎの主犯として・・・」
「ふざけるな。今行われているのは国家転覆罪の裁判だ。ウェーブ盗賊団は魔王軍の関係者であり、手先だ。さあ、その2人を処刑するのだ」
裁判長が判決を言い渡す前にアルダープが言いがかりをつけてきて、双子を処刑するよう促した。
「しかし、今回の事例も、今までのウェーブ盗賊団の騒ぎも死者はありません。ウェーブ盗賊団の事件は丸く収まっている以上、死刑にするほどでは・・・」
アルダープの出した決断にセナが反論しようとしたが、アルダープがじっとセナを見つめると・・・
「・・・いえ、そうですね。確かに死刑が妥当だと思われます・・・ね?」
「「は?」」
急に掌返しをして、妥当だと言い始めた。それには双子は納得いかない顔をしている。それはこの場にいる冒険者全員がそうだった。
「おいおいおい!おかしいだろ!!今のは明らかにおかしいだろ!!」
「そうですよ!なんですか今のは!検察官が言うことをころころ変えてどうするんですか!!」
それには当然カズマとめぐみんはセナに食って掛かるが、セナはなぜそう言ったのか・・・そもそも言った事がないといわんばかりに困惑している。
「今何か邪な力が感じたわ!!どうやらこの中に悪しき力を使って事実を捻じ曲げようとした人がいるわね!」
いつの間に戻ってきたのかアクアが突拍子もないことを言いだした。
・・・・・・。
しかし、魔道具自体は反応を示していないことで、この場の全員がアクアに視線を向ける。
「悪しき力・・・神聖な裁判で何か不正をしたものがいる、と?」
「ええ、そうよ。この私の目はそこの魔道具より信憑性があるわ!何を隠そうこの私はこの世界に一千万の信者を有する水の女神!水の女神アクアなのだから!」
チリーン。
だがアクアの言葉に魔道具が反応したことによって、全員は白けたような顔つきになる。
「なぁんでよー!!ちょっと待って、嘘じゃないってばー!!」
「被告人、弁護人の選定はちゃんとするように」
「「すいません。超反省してます」」
喚いているアクアにアルダープはなぜか顔を青ざめ、唇をかみしめて見つめていた。アルダープの顔色、そして先ほどのセナの発言の撤回はクリスとカテジナは見逃さなかった。
「見た?あの領主の顔色を」
「ええ。アルダープが裁判で勝ち続けていた理由・・・ようやく見つけることができました」
カテジナはアルダープが裁判で勝ち続けていた理由を確信を持ったように理解できた。とはいえ、今その根源を潰したところで処刑されるのは免れないだろう。それを理解しているカテジナは行動を示す。
「これで不正の正体が判明したってわけだ。後は・・・」
「ええ。私の出番です」
カテジナはそろそろ頃合いだと思い、裁判上の奥へと近づいていく。そうしている間にも双子の判決が言い渡される。
「被告人アカメとティア。あなたの行ってきた度重なる非人道的な問題行動、及び街の治安を著しく乱してきた反社会的行為を鑑みるに、検察官の訴えは妥当と判断。被告人は有罪。よって・・・判決は、死刑とする」
裁判長が出された判決にティアは顔を青くして取り乱し、アカメは裁判長に異議を申し立てる。
「やだ・・・いやだぁ!!死にたくない!!死にたくなんかない!!」
「ちょっとおかしいでしょその判決は!!!確かな証拠を持ってきなさいよコラぁ!!!盗賊団としてならともかく、こんな適当な裁判で死刑なんてたまったもんじゃないわよ!!!頭【ピーッ】してんじゃないのあんたぁ!!!」
「被告人!もっと言葉を慎むように!」
この裁判の判決に納得がいっていないのはカズマたちも同じだ。
「絶対おかしいわよおかしいわよ!!私の曇りなき眼には邪悪な空気が漂ってるんですけど!」
「よろしい、それほどまで2人をテロリストとして扱うのなら・・・て、何をするんですかカズマ!」
「ここで爆裂魔法を撃とうとするなぁ!!けどどうすりゃいいんだこの状況!」
カズマは必死に考えるが、どう考えても死刑を覆す方法が思いつかない。もはやこれまでかと思われた時・・・
「裁判長、お待ちを」
「!!こ、この声は・・・」
裁判場までやってきたカテジナが裁判長にストップを言い渡した。そして、身に纏っていたフードを思い切って外した。
「な・・・っ!!!???」
「あ、あなた・・・いえ、あなた様は・・・!!!」
フードを外したカテジナの衣装は、今まで見て来た鎧の中でもダントツで強固で、ダントツの輝きを放っている白銀の鎧であった。カテジナの鎧と顔を見たアルダープとセナ、そして検察官は驚愕に満ちた顔をしている。
「か、カテジナ・・・?」
「え!嘘⁉」
カテジナが現れたことにたいして双子は驚愕している。
「そ、その鎧は・・・!カルヴァン家の者にしか着用できないとしている賢者の鎧!!そしてあなた様は・・・カルヴァン家の第一後継者、カルヴァン・メレーデ・クラリッサ様!!!!」
「カルヴァン家・・・!!?」
「うっそ・・・!!?」
カテジナが大貴族一家の1つである、カルヴァン家の貴族であると知った双子は驚愕を隠せないでいた。
「判決が出たところ申し訳ありませんが、その判決を・・・私に預からせていただけないでしょうか?裁判をなかったことにしろというわけでなく、時間を頂きたいのです。そうすればこの2人が・・・いえ、ウェーブ盗賊団が魔王軍とは関係ないと証明しましょう。そちらの別荘も全て弁償いたしましょう」
カテジナが出した案に裁判長もセナも何も言葉を発せられないでいた。アルダープだけは除いて。
「それは・・・!し、しかし!いくらあなた様の頼みでも・・・!」
「納得がいきませんか?困りましたね・・・あなたは被害者なのですから私の財産を一部、そちらに提供しようと思いましたのに・・・」
「な、なんと・・・?」
カルヴァン家は巨大な貴族一家。娘であるカテジナの財産も一軒家は軽く買える程のものである。それを十分に理解しているアルダープはどうするべきか悩んでいる。ウェーブ盗賊団は何としてでも始末したい一方、超がつくほどの強欲であるため、カルヴァン家の一部の財産も捨てがたい。どちらを取るかアルダープは悩んでいる。すると・・・
「ならばその裁判の判決を、私も預からせてほしい」
ダクネスもその判決を預からせてほしいと言い出した。ダクネスは自身の懐から高価そうなペンダントを取り出した。それを見た裁判長と検察官はさらに驚愕する。
「そ、それは・・・!ダスティネス家の紋章!!」
「だ、ダスティネス家!!?ダクネスが!!?」
「うええええ!!?」
「え?え?何何何?」
「なんだなんだ!!?何が起こってるんだ!!?」
「あのお嬢さん、最初っからなんかあると思ったが・・・まさかな・・・」
ダクネスがダスティネス家の者だと知った冒険者全員は驚愕で満ちていた。その中で驚いてなかったアカメは呆れたような顔になる。
「あんた・・・せっかく黙ってやってあげたのに・・・」
「え?お姉ちゃん・・・まさか、知ってたの!!?」
「黙っていてすまない。だが、奴は狡猾だ。いくらクラリッサ様の威厳でも、もう一押しがなければ、覆すのは難しいだろう」
「「クラリッサ様?」」
ダクネスがカテジナの本名でしかも様と呼んでいることから、立場上ではカルヴァン家が上の立場であるというのがわかる。
「ララティーナ、あなた・・・」
「申し訳ございません、クラリッサ様。ですがこれは私たちパーティの問題・・・クラリッサ様1人に責任を負わせるのは間違っています」
「・・・・・・」
「アルダープ」
「は、はい!!」
ダクネスはカテジナに一礼した後、その視線をアルダープに向ける。
「クラリッサ様が言うように、これは被害者であるあなたへの借りとなる。だから待ってくれれば私にできることがあるならば、何でも1つ言うことを聞こう」
「な、なんでも・・・?」
「そうだ。何でも、だ」
なんでも言うことを聞く、というダクネスの案には、アルダープにとってはカテジナの財産よりもかなり魅力的だった。
「ダクネスさん・・・」
「ダクネス・・・」
「そうだ!双子は何も悪くない!!」
「ああ!ウェーブ盗賊団には、ダチを助けてもらったしな!!」
「こんな裁判なんてくそくらえだ!!」
『ウェーブ!!ウェーブ!!ウェーブ!!ウェーブ!!』
「静粛に!!静粛に!!」
ダクネスが双子を庇ってくれているのを見て、全冒険者たちは先日の件から掌返しするようにウェーブコールを行っている。裁判長が静まるように静粛にと呼び掛けているが、ウェーブコールは止まらない。
「静粛に!!・・・静粛にって言ってんだろボケェ!!!!」
最終的には裁判長がキレて小槌を投げつけてようやくそれで静まった。余談だが、その小槌はダストに直撃した。
「お、おほん・・・他ならぬカルヴァン家、そしてダスティネス家のご令嬢の頼み・・・あなた方の言葉を信じましょう」
そして、裁判長は予備の小槌を取り出して、双子にこう告げた。
「被告人アカメと被告人ティアの判決を保留とする!!」
判決を保留・・・それはつまり、双子には猶予が与えられ、ひとまずの死刑は免れた。それには全冒険者は歓喜の声を上げ、双子も安堵する。
『裁判の結果。
アカメ、ティア、処分保留
容疑者として観察継続』
ーこのすば!ー
裁判が終わった後、双子はカテジナに話があると言って先に裁判場から出て、待ち合わせ場所に移動する。
「おーい、こっちこっちー」
「クリス」
待ち合わせ場所にはクリスとカテジナが待っていた。2人を確認するとティアはカテジナに抱き着いてきた。
「カテジナー!!ありがとう!!本ッ当にありがとう!!!」
「・・・礼ならばララティーナに言ってください。1番あなたたちの身を案じていたのは、彼女です」
「それでも・・・カテジナも私を助けてくれた!!ありがとう!!ありがとう!!」
「さりげなく私を抜いてんじゃないわよ、バカ妹」
アカメは少しため息をこぼし、視線をカテジナに向ける。
「・・・あんたがカルヴァン家の令嬢なんて、聞いてないわよ」
「アタシもつい最近初めて知ったよ。いや、驚きだね」
「それは・・・」
「そいつは当然だ。盗賊団でその事実を知ってんのは、俺とバーバラ、支部長クラスの幹部だけだからな」
アカメの問いかけに答えたのは、建物の上にいたネクサスだった。ネクサスはそこから飛び降りて、双子たちの前で着地する。
「ネクサス様、いらっしゃったのですか?」
「まぁ・・・なんだかんだ言って気になってな・・・。おお、クリスもいたのか」
「やぁ、ネクサスさん、久しぶりー」
「・・・やっぱり普通の知り合いだったみたいだね・・・」
「隠し子じゃないのも本当みたいね・・・ちっ・・・」
「あれ?また舌打ち?」
「お前らは俺をなんだと思ってんだよ・・・。このやり取りも久々だな」
双子がこそこそと話してる内容を聞き取ったネクサスは呆れ半分、懐かしさ半分の気持ちでいっぱいになった。
「それで?裁判の結果はどうなった?まぁ、こうして歩いてるってことは、うまくいったんだろうが・・・」
「その点についてですが・・・ネクサス様にご報告が・・・」
カテジナはネクサスに裁判での経緯、アルダープの不正の正体、そして判決の結果を包み隠さずに話した。
「・・・そういうことかよ。あのおっさん・・・ふざけた真似しやがって・・・」
「迂闊だったよ・・・普通に考えれば、あの領主が好き放題できている理由は明らかだったのに・・・」
アルダープの不正の正体を知ったネクサスは普段は業務以外でしか見せない怒りの表情をしている。
「私たちはあの領主にいいようにやられた!あいつのせいで私たちは死にかけた!」
「お頭、団長として、あいつを野放しに・・・」
「するわけねぇだろ。あのおっさんを少しでも改心しようって考えが甘かった。俺の大事な子分を手を汚さずに殺そうとしやがったんだ。野郎にはこの借りを何千・・・いや、何億倍にして返さないと気が済まねぇ。生きてることが辛いって思えるくらいにな」
盗賊団としての方針は、アルダープへの仕返しを強く決意している。
「仕返しの時が来たら真っ先に連絡する。だがそのためにも、お前らは自分の身の潔白を示せ。盗賊活動もしばらく禁止だ。いいな」
「うん」
「わかってるわよ」
状況を理解できている双子はネクサスの言葉に首を縦に頷いた。ネクサスは次にカテジナとクリスに視線を向ける。
「奴には大掛かりな手で領主の地位から叩き落すつもりだ。そのためにもカテジナ、それから・・・クリス。お前らの手が必要だ。手を貸してくれるか?」
「盗賊団じゃないけど、アタシは問題ないよ。アタシもあの領主大嫌いだし」
「全ては・・・ネクサス様のために・・・」
「ありがとうな。感謝してる」
自分の意見に賛同してくれたカテジナとクリスには、ネクサスは感謝しかなかった。
「しかし、まさかダスティネス家のご令嬢がお前らのパーティにいたとはな・・・」
「裁判が始まる前、私はどんな手を使ってでも判決を覆すつもりでしたが・・・まさかララティーナがいたとは・・・」
「おかげで事がスムーズに進んだのは事実だ。俺たちにとっちゃ、嬉しい誤算だったぜ」
「でも、アタシは心配だな。大丈夫かな、ダクネスは・・・」
「ああ、そこだけは俺も懸念している。あのおっさんのことだ・・・。何を要求するかわかったもんじゃねぇ」
先にアルダープの元へと向かったダクネスの身をこの場の全員が心配している。特にダクネスと友人であるクリスはこのメンバーの中で心配が尽きない。
「ダクネスなら大丈夫だよ。きっと・・・そう信じるしかないよ」
「うん・・・そうだね・・・」
「ま、何かあったらすぐに連絡を入れるわ。大切な友人・・・なんでしょ?」
「うん・・・ありがとうね、2人とも」
心配しているクリスに気休め程度ながらも双子は気にかける。そんな双子を見たネクサスとカテジナは、いい笑みを浮かべている。
「では、ネクサス様。私もアルダープと話をしてきますので、失礼します」
「おう。気をつけてな」
カテジナはネクサス、ついでにクリスと双子に一礼をして、アルダープの屋敷へと向かっていく。
「「・・・クラリッサ様」」
「・・・はい?」ギロッ
「「・・・いえ、何でもないです・・・」」
本名で呼ばれたカテジナは双子に向かってギロリと睨みつけた。双子はその視線からそらした。どうやら本名で呼ばれることはあまり好きではないようだ。
「さて、と。いつまでも留守にするわけにもいかんから、俺もアヌビスに戻るぜ。双子、新しい拠点ができたら一度こっちに戻ってこい。宴でもしようぜ。そん時には、お前らのパーティを紹介してくれ」
「わかったよ」
「そっちも気をつけなさいよ」
「おうよ」
ネクサスも双子に手を振ってアヌビスに戻ろうと街の外へと出る。
「アタシもそろそろ行くけど・・・2人とも、まだまだ油断できない状況だけど、がんばってね。アタシもできることなら協力するからさ」
「うん。クリスもありがとうね」
「事が落ち着いたら、シュワシュワでも飲みましょう。もちろん、あんたの奢りでね」
「はいはい、楽しみにしてるよ」
クリスも双子と別れて、この場を後にした。この場に残ったのは双子だけであった。
「さて、と。私たちも帰りましょう」
「うん。きっとカズマも待ってるよ」
双子たちはカズマたちと合流するために自分たちの屋敷へと戻っていく。
ーこのすば!ー
少しだけ間が空いた期間であったが、屋敷に戻ってこれて、双子はほっとしている。
「あ!帰って来たわね!おーい!」
そんな双子たちを出迎えてくれたのはカズマたちであった。その中に、ダクネスの姿はなかった。もうアルダープの屋敷へと向かったのだろう。
「ダクネスは?」
「あの領主の元へと行ってしまいました」
「そう・・・まぁ、あの子なら大丈夫でしょ・・・きっと」
アルダープの元へといったダクネスを全員は心配しているが、きっと大丈夫だと信じるしかなかった。
「さて、お前らには聞きたいことがある。何かはわかるだろ?」
「「・・・・・・」」
「・・・けどまぁ、裁判で疲れただろ?聞くのは明日にするよ。それよりティア、飯作ってくれよ。あの味が恋しくてさ」
「あら、ティアのご飯にすっかり虜になったようね」
「う、うん。すぐに用意するよ」
細かい説明は明日にし、カズマたちは双子を出迎えて、屋敷へと戻っていく。
双子が死刑から免れるために課せられた使命は主に2つだ。1つは、当たり前のことながら、ウェーブ盗賊団が魔王の手の者ではないと証明すること。そして2つ目は、アルダープの別荘の弁償だ。理不尽な要求ながらも、自分たちを庇ってくれたダクネスのためにもやるしかない。そう思いながら、カズマたちが屋敷に入ろうとした時・・・
「裁判所の命により、被告人たちの借金を資材より差し押さえとすることとなった!!」
突然騎士たちがカズマたちの屋敷に駆け込み、屋敷にあった家具、私物、アクアの高級酒全て、ありとあらゆるものを持っていかれてしまった。これによって・・・屋敷の中は・・・暖炉以外は空っぽになってしまった。こんな理不尽さによって、カズマたち全員は心から涙を流す。こんな理不尽な状況ながらも・・・双子の死刑を免れるための行動が、ここから始まろうとしていた。
カズマパーティの借金総額
12億4000万エリス
拝啓、お父さん、お母さん、ご無沙汰してます。カズマです。
僕の仲間は今、とても難しい立場にいます。冒険者として、1人の人間としての生き方を問われている最中だと思います。
でも、これまで世話になった仲間たちを思えば、僕も一生懸命、仲間のために頑張れます。
そう、僕は仲間のためならやる時にはやる男です。日頃からいつかはやると奴だといわれ続けた者です。
・・・犯罪的な意味じゃなくて!!
双子の反応
ティア「いや・・・あの・・・こうハッキリと書かれていると・・・なんか・・・照れるんだけど・・・」
カズマ「おわあ!!?お前ら、見るんじゃねぇよ!!」
アカメ「そう思うのなら私との立場を変わりなさいよ」
カズマ「おっま・・・!!せっかくお前らのことを思って言ってやったのに・・・!もう知らん!!勝手にしろ!!」
ティア「ちょ・・・!!カズマ!!ごめんって!!お姉ちゃんも謝って!!」
アカメ「いやよ。そんなもの・・・」
ティア「謝れつってんでしょうが!!」
次回、この善の盗賊団にうさ耳を!