このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

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この善の盗賊団にうさ耳を!

国家転覆罪の裁判が終わって翌日、判決が保留となったことによって何とか生きながらえることができた双子。そんな双子は現在住まいの屋敷で・・・

 

「・・・さて、今日はいろいろと話してもらうぞ」

 

カズマ、アクア、めぐみんの前に座って、事情を問われている。

 

「わかってるわよ。そういう話だからね」

 

「私たちに話せる範囲ならいくらでも話すよ」

 

「「で、何が聞きたいの?」」

 

双子は質問に答えられる体制は万全であった。いろいろ質問したいことはあるがカズマがまず質問するのはやはりこれだ。

 

「まず俺が聞きたいのは、そのウェーブ盗賊団ってなんだ?裁判に集まった冒険者の反応を見るからに、結構人望があったようだが・・・」

 

カズマのその問いかけを聞いて、双子とめぐみんはマジかみたいな顔をしている。

 

「カズマ、それ本気で言ってますか?紅魔の里でもその名を聞いた事のある名ですよ?」

 

「カズマが遠くから来たっていうのは知っているけど・・・」

 

「まさか名前すら知らないとは驚きだわ・・・」

 

「アクア、そんなにすごいのか?」

 

「え?知らないわよそんなの。盗賊団の存在は知ってたけど、興味なかったから詳しくないわよ。名前も知らなかったし」

 

アクアに尋ねてもカズマ同様、そこまで知ってるというわけでもなかった。むしろ興味ないと言うほどでもあった。

 

「・・・25年前、ある男がこの世界の人間の闇を嘆き、そしてその闇を取り払い、全員平等の自由を与える組織を創り上げた」

 

「その組織の名前がウェーブ盗賊団・・・私たちが属している善の盗賊団だよ」

 

「私たちウェーブ盗賊団の活動目的は、人の理不尽によって破滅に追い込まれている人間の救済、そして、理不尽を振り回す人間の闇を、根こそぎ奪い取ること」

 

「昨日の裁判の時にも言ったけど、私たちは自分たちの利益のために活動はしないの。ターゲットとするのはあくまで、悪徳貴族と、悪意のある詐欺商人・・・人間の闇を抱えた連中だけ。善良な人間からは盗り上げたりはしないよ」

 

「つまりそのウェーブ盗賊団は悪い盗賊団じゃなくて、いい盗賊団だってことか?」

 

「そういうこと」

 

「で、お前らはその盗賊団の一員だと」

 

「理解が早くて助かるわ」

 

双子の説明を聞いて、カズマはウェーブ盗賊団は義賊であるということをしっかりと理解した。

 

「あ、じゃあ・・・昨日の裁判で来た、あの・・・クラリッサ・・・だっけ?あの人も?」

 

「そうよ。今はカテジナって名乗ってるけど、あいつも盗賊団の1人よ」

 

「マジですか!!?」

 

「まあ、私たちもカテジナがカルヴァン家の貴族だっていうのは初めて知ったんだけどね」

 

昨日の裁判で現れて双子を助けた存在の1人であるカテジナも盗賊団の1人だと聞いて、めぐみんは驚きでいっぱいだ。

 

「でもまぁ、何となくわかったよ。ウェーブ盗賊団はいい盗賊団だっていうことも。その・・・カテジナ?がお前らを助けた理由も」

 

「でもおかしいじゃない。ウェーブ盗賊団はいい行いをしているのに、なんで国からあんなに疎まれてるの?納得できないんですけどー」

 

「理由は簡単よ。国はウェーブ盗賊団を単なる賊だと考えているからよ」

 

「だからなんで!!?」

 

「どんなお題目をつけようと、私たちは裏の人間・・・そして私たちのやっている盗み行為・・・後述だけで国の法に反してるからね。むしろ国に疎まれない理由を教えてもらいたものだよ」

 

「確かに・・・ゲームでもよくあるパターンだな」

 

ウェーブ盗賊団が疎まれることに納得がいっていないアクアに双子は淡々とその理由を答えた。カズマはゲームをやってきた経験から物分かりが早かった。

 

「しかし、人の命を救っているのは事実です。それだけではありません。標的になった人たちだって、これまでも自首して、今では改心しているではないですか」

 

「法って言うのはね、そんな単純なものじゃないの」

 

「そう・・・国のお偉いさんが黒って言ったら例えそれが白でも黒になるのよ」

 

(ああ・・・よくある理不尽さだ・・・)

 

めぐみんが異議を申し立てたが、双子は国の理不尽さを何の迷いもなくそう突きつけた。

 

「でも、1つだけ・・・その法を覆す方法があるの。それは、魔王の討伐すること。魔王さえ討伐できれば、私たちが白だということが認められる・・・はずなんだよ」

 

「私たちは魔王をぐちゃぐちゃにするという個人的な目的だけじゃない。むず痒い言い方になるけど、ウェーブ盗賊団は正義である、ということを証明するために魔王をぶちのめすのよ」

 

(そうか・・・妙に魔王の討伐にたいして燃え上がってたのは、そういうことだったのか・・・)

 

双子が魔王退治に積極的な理由を理解し、納得を示しているカズマ。

 

「よくわかりました・・・。でもなぜ、自分たちはウェーブ盗賊団なのかというのを、私たちに話さなかったのですか?」

 

「単純よ。あなたたちが信用できてないからよ」

 

「え・・・」

 

「だってそうでしょ?アクアはバカで女神を自称する偽物だし、めぐみんは爆裂魔だし、ダクネスはドM、カズマだってクズのヒキニートらしいじゃない」

 

「自称でも偽物でもないってばー!!」

 

「おい、それは、爆裂魔法をバカにしている、という認識でいいのですか?」

 

「ひ、ヒキニートじゃないから!!!」

 

めぐみんの問いかけにアカメは毒舌交じりの事実を突きつける。毒舌を聞いたカズマたちは文句を言っているが、双子は無視する。

 

「まあそれ抜きでも信用した相手に自分たちの存在をバラされる、なんていう事例もあるからね。それで正体がバレて捕まったりしたらたまったものじゃないしね」

 

「あ・・・そうですね・・・ありえない話でもありませんね」

 

「私たちが優先すべきなのは人の自由を守ること。それを実行に移すのは私たち。その執行人が捕まったりしたら誰がその人間の悪を盗むの?だからこそ、私たちが盗賊団っていう事実は秘匿しなければいけなかったんだ」

 

「・・・まぁ、昨日の裁判で街の連中にはバレたけど」

 

なぜ仲間たちの自分たちにも秘密なのか、そのわけは双子の説明によって理解できたカズマたち。

 

「でも今は違うよ。私たちはみんなのことを信用してる。みんなは私たちのことを必死になって助けてくれた。しかも、ウェーブ盗賊団だと知ったうえで。信用するのは、それで十分だよ」

 

「けど、信用してないって簡単に言った手前、こんなこと信じないでしょうね。でもそれでいいわ。これ以上、私たちの事情であんたらに迷惑をかけるわけにはいかないわ」

 

双子は意を決したうえでカズマたちに向けてこういった。

 

「借金や魔王軍の手先でない証明は私たちでなんとかするよ」

 

「まぁ・・・あんたたちとの付き合いは、これで最後ってことよ」

 

最後・・・ということは誰が聞いても、双子はカズマのパーティから抜けると言っているのがわかる。それにはアクアは慌てふためく。

 

「な、何言ってるの?何言っちゃってんの?バカなの?バカなのよね?」

 

「今すぐにでも荷物をまとめてここから出ていくよ」

 

「だからあんたたちは気にせず今まで通り・・・」

 

「まぁ待てよ。12億4000万の借金をお前らでどうにかできると思ってるのか?」

 

双子がアクアに気を止めず、自分部屋に行って荷物をまとめようと思った時、カズマがストップをかけた。

 

「もうここまで来たらお前らだけの問題じゃないだろ。最後まで手伝ってやるよ。つーかお前らがパーティを抜けたら、もうティアのご飯が食べれなくなるだろ」

 

「そうよそうよ!!あの味を知ってしまったら、是が非でも止めたくなるじゃない!!」

 

「お前はもう少し欲をなくせよ・・・」

 

アクアの引き留める理由はあれだが、カズマも双子を引き留めている。

 

「で、でも・・・私たちのことで迷惑を・・・」

 

「迷惑なんて、それこそ今さらだろ?アクアはバカやらかすし、めぐみんは1発しか魔法を撃てないし、ダクネスも敵に突っ込みたがるし、お前らなんて喧嘩はしょっちゅうだ。もう十分迷惑してる」

 

「は、ハッキリ言うわね・・・あんた・・・」

 

「けど、もっと迷惑なのは中途半端な形で俺たちの前から去ろうとしていることだ。借金返す当てもないくせによ。見栄を張るなよな」

 

「カズマの言うとおりですよ。私たちは、仲間じゃないですか。2人が盗賊団であろうと関係ありません。私たちは火の海だろうと雷の谷だろうと・・・行くときは一緒です」

 

カズマたちは双子にパーティに残ってほしいと思っている。その思いに双子は思いとどまる。

 

「私たちは魔王軍の手先と思われてるような連中だよ?迷惑だってこれまで以上にかけると思う」

 

「それでも・・・あんたたちはこんなどうしようもない私たちを、まだ仲間と言い張るのかしら?」

 

双子の問いかけにカズマたちは何を今さらみたいな顔をしている。

 

「何を言っているの?当たり前じゃない。バカなの?」

 

「そうですよ。それに・・・己が信じた正義のために、あまねく冒涜さえも顧みぬ・・・まさに紅魔族の琴線に触れるではないですか!」

 

「ここで放っておいて何もできず、処刑なんて後味悪すぎだしな。それに、ウィズからもお前らをよろしくって言われてるから、今更除名なんて無理だろ」

 

自分たちが盗賊団であると知ってもなお、それでも自分たちを仲間だと思ってくれている。その姿勢にティアはうれし涙を流し、アカメは呆れたような顔つきになる。

 

「呆れた。あんたたちって本当にバカね」

 

「でも・・・すっごく嬉しいよ。ありがとうね、みんな」

 

カズマたちの気持ちを知って、双子はパーティを抜けることをやめ、これからもカズマたちのパーティでいることを誓ったのであった。

 

 

ーこ・の・す・ば!ー

 

双子の問題は解決し、カズマたちは今回の問題について話す。アクアだけは飽きてどこかへ出かけているが。

 

「私たちに課せられた課題は、魔王軍の関係者でないと証明すること・・・そして領主の別荘の弁償をすることですが・・・」

 

「正直、どっちも理不尽だけど、ダクネスのためにもやるしかないね」

 

「そうね。前述の奴は方は無理だけど、今は後述の方に専念しましょう」

 

「そうだな。幸い、マホの店も領主の別荘の弁償を優先してくれてるし、ウィズの方でも商品を置かせてもらえるようにしてもらった。これらを利用して少しでも借金返済を目指すぞ」

 

カズマたちはひとまず、アルダープの別荘の弁償の資金を集めること前提で話がまとまった。するとそこへ、戻ってきたアクアが手紙を持って双子に近づいてきた。

 

「ねぇ2人とも、玄関行ってみたらあなたたち宛の手紙が入ってたんだけど」

 

「はあ?私たち宛?」

 

「誰だろう・・・」

 

アカメはアクアから手紙を受け取り、その中身を確認する。

 

「あら、これ支部の救援要請じゃない」

 

「支部?」

 

支部という単語にカズマたちは首を傾げて、それをティアが教える。

 

「えっと、盗賊団はどこでも活動できるように、それぞれの街に盗賊団の支部が存在してるんだ。私たちがいるアクセルも同じ。これはそのアクセル支部からの救援要請書なんだよ」

 

「で、でかい組織なんだな・・・ウェーブ盗賊団って・・・」

 

カズマはウェーブ盗賊団のあまりのでかさに逆にドン引きしている。

 

「それよりなんて書いてあるの?」

 

「えーっと、何々?」

 

アカメは受け取った救援要請書を読み上げる。救援要請書にはこう書かれていた。

 

『街の外れにある我がアクセル支部の仮拠点がジャイアント・アースワームの群れが溢れかえっている。溢れかえった理由は、仮拠点にある魔除けの結界。それが誰かの爆裂魔法によって破壊され、アースワームが住処を取り戻そうとしている。あまりにも数が多い。至急救援を』

 

「ねぇ、その仮拠点って?」

 

「私たち盗賊団の拠点は1つだけじゃないの。万が一を備えて難を逃れるために存在してるのが仮拠点だよ。だいたいはダンジョンや洞窟を改築して作り上げてたりしてるんだ」

 

「へぇー」

 

ティアの仮拠点の説明を聞いたアクアはせんべいを頬張りながら軽そうな態度をとっている。自分から聞いておいて興味ないのはあんまりだと思うが、双子は気にしないことにする。

 

「でも、ジャイアント・アースワームかぁ・・・なんでこのタイミング・・・お姉ちゃん?」

 

「・・・爆裂魔法?」

 

仮拠点にジャイアント・アースワームが現れた原因を作った犯人に心当たりがあるのかアカメはめぐみんを見る。そのめぐみんはカズマと共にこっそりとどこかへ逃げようとしていた。

 

「おい、ちょっと待ちなさいよ」

 

「「!!」」ビクッ!

 

アカメに呼び止められ、めぐみんとカズマはピンと背筋を伸ばした。

 

「あんたらなんか心当たりあるわね?私たちが牢屋に入ってる間、何があった?言え」

 

「「はい・・・」」

 

アカメの鋭い目つきにたじたじになりながらも、カズマは双子が牢屋に入っている間のことを話す。

 

「えっと・・・あなたたちが署に連れてかれた日、アクアたちがあなたたちを脱獄させようって喚いてたんです」

 

「ほぉ、それで?」

 

「俺はダメだって言ってやったんですけど、アクアたちは聞かなくて・・・それで・・・アクアとダクネスは縛って黙らせたんですけど・・・めぐみんには説得させてから、いい爆裂スポットがあると言って、最近見つけた洞窟に行ったんですよ」

 

「んで?」

 

「その洞窟の近くで・・・めぐみんが爆裂魔法を放ったんです・・・。まさか・・・そこが仮拠点だったとも知らずに。で・・・撃った感触が心地よかったらしくて・・・今朝も・・・そこで爆裂魔法を・・・放ち・・・まし・・・た・・・」

 

どうやら仮拠点であった洞窟の近くでめぐみんが爆裂魔法を放ち、近くにあった魔除けの結界を破壊してしまったようだ。その事実を聞いた双子は何とも苦い顔をしている。とはいえ、そこが仮拠点だと黙っていた自分たちにも否があるが。

 

「・・・今すぐに仮拠点に行って尻ぬぐいするわよ。いいわね」

 

「「はい・・・」」

 

自分たちのパーティがやらかしてしまった責任をとるために双子はカズマたちと一緒に仮拠点へと向かっていった。

 

 

ーこのすばー

 

 

街外れにあるアクセル支部の仮拠点、カズマたちは双子の案内でそこまで辿り着いたが、そこはもう阿鼻叫喚と化していた。

 

「おらぁ!!死ねミミズ!!」

 

「くそ!体力がたけぇ!!なかなか倒れねぇ!!」

 

「おわぁ!!来るな!!来る・・・」

 

「ああ!!仲間が食われ・・・」

 

「ああああ!!みんなーー!!」

 

「やばい、このままじゃ全員食われるー!」

 

アクセル支部の盗賊団がジャイアント・アースワームに立ち向かっているが、数が多いのと、アースワームがタフなため、かなり苦戦していた。そして・・・

 

「いやあああああああ!!!やめてええええええ!!!来ないでえええええええ!!!」

 

ただいま絶賛アクアがジャイアント・アースワームに追われていた。

 

「なんだかいつもの光景ですね」

 

「うん・・・それがカエルだろうとミミズだろうと、これだけは変わらないんだね・・・」

 

「全く・・・誰かさんが余計なことをしなければこんなことには・・・」

 

「すいません、超反省しています」

 

アクアのあの光景をカズマたちは遠くから見つめるのだった。そして誰もアクアを助けようと動く気配はなかった。

 

「と、とにかく、早く終わらせて早く帰ろうぜ」

 

「自分たちが引き起こしたのに偉そうに・・・」

 

「ここは双子が協力して、1匹ずつ一撃で・・・」

 

「一撃?多分お姉ちゃんでも無理だよ?」

 

「そうね、ワーム系のモンスターは雑魚だけど、体力が異常に高くて私でも一撃は無理ね」

 

「マジかー」

 

双子でもアースワームを倒すのにかなり手間がかかる、それによってだいぶ時間をくうとカズマは考える。

 

「ねぇ!!遠くで見てないで早く助けて!!このままじゃ私食べられちゃう!!!」

 

「あー・・・待ってろー。ちゃんとそいつ倒してやるからー」

 

「何そのやる気のない返事は!!?いやあ!!!もうカエルにもミミズにも食べられるのは嫌ぁ!!!誰か・・・」

 

バクッ、ちゅるちゅる・・・

 

アクアが喚いている間にもアクアはアースワームに食べられ、咀嚼されている。

 

「・・・さて、俺たちも行動に移すか」

 

「くぅ・・・あれほどの数・・・爆裂魔法を撃ちたいです・・・!カズマ、爆裂魔法で一網打尽にしますのでもうちょっと魔力補給を・・・」

 

ボコッ!バクッ、ちゅるちゅる・・・

 

「「「め、めぐみーーーーん!!?」」」

 

めぐみんが爆裂魔法を放つためにカズマに魔力補給を頼もうとするが、その前に新しいアースワームが地面から現れ、めぐみんをぱくりと食らった。

 

ボコッ!ボコォ!

 

そして、カズマたちの背後からも新しいアースワームが地面から現れた。

 

「・・・これ、まずくない?」

 

「まずいわね・・・」

 

「・・・まさか・・・」

 

カズマと双子がアースワームを見た時、3人はかなり冷や汗をかき、そして・・・

 

「「に、逃げろぉ!!」」

 

「結局こうなるのかあああああ!!!」

 

カズマたちはアースワームに食われないように必死に逃げるのであった。まだ何も行動してもいないのに不便であるアースワームは逃がさないと言わんばかりに追いかけている。

 

「カズマぁ!!君の犠牲は・・・」

 

「そうはさせるかぁ!!ドレインタッチーーーー!!!」

 

「ほわあああああああ!!!??」

 

ここで腹黒ティアが出てきて、カズマを犠牲にしようとした時、それを察知したカズマが突き飛ばそうとしたティアの手を逆につかみ、ドレインタッチを行う。それによってティアは気が緩み、転げ落ちてしまう。そして、ティアにアースワームが迫る。

 

「ああ!!置いてかないで!!お姉ちゃん!!助けて!!妹がピンチだよ!!」

 

「・・・・・・」

 

ティアはアカメに助けを求めたが、アカメはティアを一目見た後、目を逸らし、ティアを見捨てた。

 

「こ・・・このバカあ・・・」

 

バクッ、ちゅるちゅる・・・

 

そしてティアは空しくアースワームに食われ、咀嚼される。

 

「カズマ、あんたティアのパターンに慣れてきたわね」

 

「言ってる場合かぁ!!アカメ!この状況何とかしろって!おい!!」

 

「無理言わないでちょうだい。ティアが食われたんだから、私じゃどうすることも・・・」

 

バクッ、ちゅるちゅる・・・

 

アカメとカズマが話している間にもアースワームが追い付き、そのままアカメを食らい、咀嚼する。

 

「お・・・お前らあああああああ!!!」

 

アースワームに食われた仲間に絶叫するカズマであったが、すぐ目の前には別のアースワームがいた。

 

「お、おわぁ!!?」

 

前にもアースワーム、後ろにもアースワーム・・・そして、横からもアースワームが近づいてきて、カズマに逃げ道がなくなってきた。

 

「も、もうダメだぁ!!」

 

カズマは食われる覚悟をし、目を閉じた。・・・が、いくら待てども、カズマが食われた様子はなかった。

 

「・・・ん、んん?あれ?俺、まだ食われてない?」

 

いつまでも襲ってこないアースワームに疑惑を感じたカズマは恐る恐る目を開けてみると、アースワームの動きが止まっていた。アースワームの頭には、矢が突き刺さっていた。そして・・・

 

ドオオオン!

 

「おおお!!?」

 

矢は突如として爆発し、アースワームを爆散させた。しかし、この爆散はカズマのところのアースワームだけではなかった。

 

ドオオン!ドオオン!ドオオン!

 

アクア、めぐみん、双子、盗賊団員を食らっていたアースワームにも矢が突き刺さっていて、その矢が爆発したのだ。しかも、器用にも爆風でアクアたちを救出していった。

 

「---!!」

 

アースワームが矢が放たれた場所に突進した時、人影が飛び出したのが見えた。人影は空中で弓矢を構え、狙いを残りのアースワームにめがけて矢を放った。

 

トストストス!ドオオン!ドオオン!ドオオン!

 

人影が放った矢は全て命中、1匹残さず、爆散させて、アースワームを全滅させた。

 

「す・・・すげぇ・・・」

 

アースワームをたった1人で全滅させた人影をカズマは見る。その姿は水色の短パンをはき、白い長そでの服を着込んだ銀髪の女性だった。ただ・・・その女性が普通でないのは、人間にはあるはずがないウサギの耳に、お尻にウサギの白い尻尾があることであった。

 

ーこのすば!ー

 

アースワームが全滅したことによって、辺りは落ち着きを取り戻し、盗賊団員は再度魔除けの結界の設置作業を行っていた。

 

「うぐぅ・・・もう・・・食べられるのは嫌ぁ・・・」

 

「お姉ちゃん・・・よくも見捨てたね・・・」

 

「それはお互い様でしょ、このクズ」

 

「は?」

 

「あ?」

 

アースワームに食われ、粘液塗れになったアクアは泣き崩れ、双子は互いに喧嘩になりかけていた。

 

「は・・・はぅ・・・」

 

「うえぇ・・・くせぇ・・・」

 

カズマとめぐみんは粘液の匂いで顔を歪ませている。今この場に残っているのはカズマたちパーティとうさ耳の女性だけであった。

 

「えっと、誰だか知らないけど、助かったよ!ありがとうな!」

 

「!い、いえいえいえ!!そんな!!とんでもない!!こんなゴミカス以下の私にお礼だなんてとんでもない!」

 

「え?ゴミカス?」

 

カズマの感謝にうさ耳女性は顔を真っ赤にしながらネガティヴ発言交じりで謙虚なことを言う。自分を卑下する発言にカズマはきょとんとする。

 

「そ、それに・・・そのぅ・・・私はアカメちゃんとティアちゃんを助けたかったから・・・」

 

「ん?双子の関係者ってことは・・・」

 

カズマが双子に視線を向けると、双子はうさ耳女性の前まで近づく。

 

「あ、あの・・・その・・・ひ、久しぶり、だね・・・。私のこと、覚えてる、かな?アヌビスにいた時に同じ訓練生だった・・・」

 

双子を知っているような口ぶりに双子の反応は・・・

 

「・・・誰?」

 

「誰よあんた」

 

「おい!!知り合いじゃないのかよ!!?」

 

まさかの知らない発言をした。すると同時に、うさ耳女性ズーンと落ち込みを見せている。

 

「・・・そうだよね・・・私のこと、覚えてるわけないよね・・・。こんな醜い不細工なゴミカスみたいな存在、すぐに忘れられてても仕方ないよね・・・」

 

「ちょ・・・ちょっと待ってくれ!!そんな落ち込まなくても・・・」

 

「いいんです・・・私という存在は道端に落ちている缶に入っているアリ以下なんですから・・・」

 

(な、なんというネガティヴ思考・・・!!)

 

目の前にいるうさ耳女性のあまりのネガティヴっぷりにカズマは少し引いた。

 

「そんなに落ち込むことないと思いますよ。爆裂魔法ほどではありませんが、あの矢の爆発は見事なもとでしたから」

 

(励ますとこそこか!!?)

 

「でも・・・私は誰にも食べられないパセリみたいなもので・・・」

 

「そ、そんな風に思い込むなって!ほら・・・あれだ!ゴミとかパセリとかは人を助けられないだろ?だからお前はゴミじゃないし、いいことをしたんだ!誇ったっていいんだ!」

 

「・・・ありがとう・・・ございます・・・こんな虫けらごときに・・・。少し・・・気がよくなりました・・・」

 

自分を卑下するのは変わってないが、カズマとめぐみんの慰めで少しは気が晴れて、微笑を見せた。

 

「あ・・・自己紹介がまだでしたね・・・。私・・・ミミィ・・・と、申します・・・。そこの2人の・・・その・・・同期でして・・・一応・・・アクセル支部の・・・支部長・・・です・・・」

 

「「支部・・・!!?」」

 

目の前にいるうさ耳女性、ミミィが盗賊団の支部を担う支部長と聞いて、カズマとめぐみんは目を見開いた。

 

「あ、誤解しないでください!支部長といっても私、そんな偉くありませんから!むしろ人様に迷惑をかけてばかりで・・・支部長だって・・・運悪くなっただけでして・・・本当・・・なんで支部長に選ばれたんだろう・・・」

 

(この子面倒くせー!)

 

ミミィが支部長に関して弁明している途中でまたネガティヴ思考になり、カズマはだんだん面倒くさくなってきた。

 

「「ミミィ・・・?」」

 

双子がミミィの名前を聞いた時、少し考える素振りをして、ようやく思い出した。

 

「あ、ああ!ミミィね!うん!訓練生だった時に一緒だった・・・も、もちろん、覚えてたよ?」

 

「そう?私はすっかり忘れてたけど」

 

「ティア、絶対忘れてたろ。アカメはもっとオブラートに包め」

 

覚えてたフリをしているティアと正直な答えを言い放つアカメにカズマは冷めた顔つきになる。

 

「とにかく、こいつらの仲間っていうのはよくわかったよ。よろしくな、ミミィ」

 

「い・・・いえ!こちらこそ!2人の仲間なら、私たちの仲間も同然ですから!あ、あの・・・親交の証に握手しましょう!」

 

「あの・・・ものすごい距離感があるのですが・・・」

 

ミミィはカズマたちに握手をしようとしているが、カズマたちとの距離がものすごく遠くて、しかも近づこうとすると、ミミィが離れるから握手なんてできるわけがない。

 

「ところでアクアはどこ?」

 

「アクアならもう先に帰りましたよ」

 

「あいつはもう少し我慢できんのか!」

 

どうやらアクアは粘液塗れの体を洗うために先に帰ったらしい。

 

「それにしても・・・珍しい姿だな。そのウサギの耳といい、その尻尾といい・・・本物か?それ」

 

「あ、はい。私・・・人間ではなく、獣人ですから」

 

「ほほぅ、獣人ですか。実物を見るのは初めてです」

 

獣人・・・それは人間に獣の因子が宿り、半分が人間、半分が獣となった文字通りの獣人間である。ゆえに獣人であるミミィの耳と尻尾は飾りではなく本物なのである。

 

「んなことはいいから。あんた、本題があるんじゃなかったのかしら?」

 

「あ・・・そうだったね・・・。やっぱり私はハエだからこんな・・・」

 

「そーいうネガティヴはいいから本題!!」

 

双子に本題を切り出され、ミミィはまたもネガティヴになりながらもその本題に入る。

 

「え、えっと・・・その・・・皆さんのことはアクセル支部のみんなが教えてくれて・・・知ってはいたんです。いろいろご活躍されているそうで・・・すごいです」

 

「いやぁ・・・それほどでも」

 

「ほほう、中々に見る目がありますね」

 

「それで、その中でも2人を裁判で助けていただいて・・・感謝の気持ちでいっぱいです・・・。このままお世話になりっぱなしというわけにも・・・せめて、何かお礼でも・・・と・・・」

 

お礼・・・と言われてカズマは冷や汗を浮かばせる。今回のアースワームが現れる事態を作ったのは自分たちだからお礼を受け取るようなことなど、今までのことを踏まえても、カズマにはできそうもない。だからカズマは必死にそのお礼を拒否する。

 

「いやいいってお礼なんて!俺も好きでやってたわけだし!な!」

 

「え・・・でも・・・お礼・・・」

 

「ふっ・・・冒険者にとって、仲間がピンチな時に、駆け付けるのは、当然だろう?」

 

「それでも!!それでもぜひともお願いします!!こんなカスでも譲れないものはあるんです!!何でもしますのでなんでも言ってください!!どんなことでも叶えます!!」

 

「ん?今なんでもするって言った?」

 

「は、はい・・・」

 

「んふふ・・・それじゃあ・・・」

 

ゴチンッ!!

 

「真面目にやってください」

 

「すいません・・・」

 

頑なにお礼をしたがるミミィに何でもする発言に下心丸出しになったカズマはめぐみんの杖で制裁を受け、大人しくなった。とはいえ、おかげで自制心が保たれたから助かったが。

 

「諦めなさい。この子、意外にも律儀だからしつこいわよ」

 

「うん。多分地の果てまで追ってくると思うよ、お礼を返しに」

 

「何それ怖い」

 

オーバーな例えにカズマは若干恐怖し、仕方ないと言わんばかりにため息をこぼす。

 

「わかったよ。でも、さすがに今すぐには思いつかないから・・・明日、明日にでもどうだ?」

 

「・・・そういうことでしたら・・・まぁ・・・。では・・・待ち合わせ場所は・・・その・・・モンスターショップでどうでしょう?」

 

(よりにもよってあそこか!)

 

ひとまずは明日の約束に取り付けることになり、ミミィは結界作業に、カズマたちは屋敷に戻ることにした。

 

 

ーこのすばー

 

 

仮拠点の尻拭いを終えたカズマたちは盗賊団からお礼としてもらったアースワームの皮を何枚も持ちながら屋敷へと戻っていく。

 

「お前ら、今日はギルドの大浴場で洗えよ。屋敷に臭いが染み付いたらたまらん」

 

「わかってるわよ。おえ・・・吐きそうだわ・・・」

 

「やっぱワーム系のモンスターは臭い~・・・」

 

ワーム系のモンスターの粘液はジャイアント・トードよりもかなり臭いため、粘液まみれのアカメたちは全員顔がかなり歪んでいる。

 

「それにしても、かなり濃い人でしたね、あのミミィなる人は」

 

「だな。獣人で恥ずかしがり屋でさらにネガティヴって・・・。あの子っていつもああなのか?」

 

「そうね、私たちが盗賊団の訓練生だった時もあんな感じよ」

 

「聞いた話だと、生まれつきらしいよ、あの性格」

 

ミミィのあの性格は生まれた時からずっとだと聞いてカズマとめぐみんはミミィを不便に感じた。

 

「・・・で?どうすんのよ。面倒なことになったじゃない」

 

「そうだよなぁ・・・今さら俺たちのせいなんて言えないしなぁ・・・」

 

「一応、アースワームの皮をいくつかもらいましたが・・・」

 

「これ、他の盗賊団員が無理やり渡しただけでお礼ってわけじゃないしね・・・」

 

「うーん・・・」

 

お礼と言われてもピンとこないカズマ。元々もらうつもりがなかったため、大きい要求もできないためかなり悩む。悩みに悩んでふと頭によぎったのは、ミミィの弓スキルだった。

 

「なぁ、あの子弓使ってたけど、あの子ってやっぱアーチャーなのか?」

 

「正しく言えばレンジャーね。シーフと同じく多彩なスキルを持っているのが特徴よ。でも装備できる武器は違うわ。例えば今あげた弓とかね」

 

「ミミィはああ見えても凄腕の弓の名手でさ。多分私たちが知ってる中じゃ弓に関してでミミィに勝ってる人はいないと思うな」

 

「へえー・・・そっか」

 

双子のその説明を聞いてカズマはお礼内容を決めた。

 

「何?弓スキルでも教えてもらうの?」

 

「ああ。そうなんだ。俺たちのパーティには物理遠距離攻撃できる奴がいない。いや、アカメは一応できるんだけど、それでも技が投擲しかないだろ?だったら俺が覚えて、少しでも今後に活かそうって思ってな」

 

「ふーん。ま、いいんじゃないかしら?そこまで要求も大きくないし」

 

「そうですね。カズマはただでさえレベルが低いですからね。強くなることはいいことです。私も賛成です」

 

「ほっとけ」

 

カズマが弓スキルを覚えることにたいして、めぐみんたちは賛成している。

 

「とにかくそういうことだから、俺は先に屋敷に戻って準備するから・・・お前ら、さっさと大浴場行って洗って来い」

 

めぐみんたちは身体を洗うためにギルドの大浴場へと向かい、カズマは明日の準備のために1度屋敷に戻る。十数分たってカズマが屋敷に戻って扉を開けた時だった。

 

「ただい・・・う!くさ!粘液くさ!」

 

アースワームの粘液の臭さが屋敷に充満している。あまりの臭さでカズマが顔を歪んでいると、困り果てているアクアがやってきた。

 

「カズマー!おかしいの!洗っても洗ってもミミズの匂いが落ちないの!というか屋敷全体に匂いがするんだけど!どうなってるのこれー!!?」

 

どうやらアクアはこの屋敷の風呂場を使ったようだ。その風呂場へ行くために屋敷の廊下を歩いた・・・ということは当然アクアのついた粘液がぼたぼたと廊下に落ちるわけで・・・

 

「・・・お前何してくれてんだあああああああ!!!」

 

結局カズマは明日の準備でなく、屋敷内を消臭するだけで1日が終わったのであった。

 

 

ーこのすばああああ!!!ー

 

 

翌日が経ち、カズマたちは屋敷から出て、鍛冶屋で弓を購入してから約束の場であるモンスターショップまでやってきた。

 

「おーい、マホ、いるかー?」

 

「ん?おう・・・カズマか・・・いらっしゃい・・・」

 

モンスターショップにマホはいたが、その姿は少しやつれてるように見える。

 

「どうした?体調悪いのか?」

 

「いや・・・あれだよあれ」

 

「あれ?」

 

マホが指さした店の隅っこを見て見ると・・・

 

「うおっ!!?」

 

「あ・・・カズマさん・・・こんにちは・・・来てくれたんですね・・・本当・・・ゴミでごめんなさい・・・」

 

隅っこには偉くどんよりとしたミミィが体育座りをしてひどく落ち込んでいる。

 

「ど、どうしたんだよ?お前、きつめなこと言ったのか?」

 

「いや・・・店入る前からあんな感じだったぞ」

 

「はい・・・マホさんは何も悪くありません・・・。ただ・・・朝起きて・・・ふと思っただけです・・・私は単なるナメクジだって・・・」

 

(いや、ネガティヴにもほどがあるだろ⁉)

 

どうやら朝起きてからずっとネガティヴになっていたようで、何かあったというわけではないらしい。

 

「そんなわけでな・・・待ち合わせは別にいいんだが・・・このままじゃ営業妨害だ。何とかしてくれ」

 

「はぁ・・・わかったよ。俺たちもミミィに用があるからな。マホ、相手してる間に査定、頼むよ」

 

「アースワームの皮か?いいけどよ・・・値段はあんま期待すんなよ」

 

マホでは手におえないらしく、ミミィをカズマ任せた。その間マホはカズマから渡されたアースワームの皮の値段を査定する。

 

「ねぇ、その子が昨日言ってた獣人の子?」

 

「そうだよ。名前はミミィ。性格は見ての通りだよ」

 

「見たとおりのネガティヴってこと?実力はあるのになんか頼りなさそうね。もったいないわ」

 

「もったいなくてごめんなさい・・・」

 

「あんたにだけは言われたくないと思うわ。つーかこいつのネガティヴに触れてたらキリないからさっさと本題に入りましょう」

 

「そうだな。話がこじれる前に本題に入るか」

 

話がこじれる前にカズマは切り替えて本題に入る。

 

「ミミィ、昨日のお礼の件なんだけど・・・」

 

「は、はい!何でも言ってください!私にできることなら・・・恥ずかしいことでも・・・」

 

「いやいや違う違う。昨日使ってた弓スキル、俺でも手ごろで使えそうなものがあったら教えてくれよ。お礼はそれでいいよ」

 

弓スキルを教えてほしいというカズマの願いにミミィは意外そうに目をぱちくりさせている。

 

「そ、それでいいんですか?あの・・・昨日みんなから聞いた話だと、カズマさんはカスマとかクズマとか・・・そんなあだ名で呼ばれていましたから・・・てっきりきわどいものを要求するかと・・・」

 

「あ、セナさんが言ってたの、マジだったんだ・・・」

 

「ひ、ひどい!!誰だそんなあだ名を広めやがった奴!まさかまたお前か!何の嫌がらせだ!」

 

「私じゃないわよ!つーかそのせいで私まであんたと同列扱いされてるのよ!どうしてくれんのよ!!」

 

「知るか!!それは俺のせいじゃねーだろ!!」

 

「カズマとアカメが同列扱いされるのは仕方ないことだと思いますよ」

 

「カズマとアカメが外道なのは今に始まったことじゃないじゃない」

 

「「はあ!!??んだとこの駄(偽)女神!!」」

 

「おい!うっせーぞ!!騒ぐんだったら店から出ていけ!!!」

 

不名誉なあだ名のせいでカズマとアカメがいい争いし、アクアの言動のせいで悪化しそうになった時、マホが怒鳴ってそれを鎮めた。

 

「すみません・・・私が言い出したことのせいで・・・。やっぱり本当のカスは私なんだ・・・」

 

「そんなことないですよ?本当のカスはカズマみたいな人間のことを言います」

 

「おい!」

 

「そうよ?以前だってこの女神である私を檻に入れて汚い水の中に沈めたんだから」

 

「おいやめろ・・・違うからな?間違ってないけど違うからな?だから引いた顔をして俺から遠ざかろうとするんじゃない」

 

ネガティヴになっていたミミィだが、カズマの非道さをアクアが暴露した途端顔を青ざめ、カズマから距離を取る。カズマは必死になって弁明する。

 

「話がもう拗れてるわね・・・」

 

「カズマが1番のクズでいいから本題!」

 

「よくねーよ!!」

 

「あ・・・そうだったね・・・。私というゴミのせいですみません。えっと、弓スキルでしたよね?もちろん、お教えしますよ。こんな大役を私なんかが務まるとは思えませんが、助けていただいたお礼として、精いっぱい頑張ります。それでですね・・・あのぅ・・・」

 

ようやく本題に入ったが、ミミィが若干言いにくそうに縮こまっている。

 

「どうした?」

 

「私の弓スキルは・・・その・・・的がないと教えることができないものばかりでして・・・何か的になりそうなものって近くにないですか?」

 

「的・・・的かぁ・・・」

 

確かに的は重要だ。的がなければ、弓をスキルを教えようにも教えられないから当然の懸念材料だ。

 

「あら、的ならここにいっぱいあるじゃない。これとかにしちゃいなさいよ」

 

「おいこらクソ女神!!」

 

「バカぁ!!借金を増やすつもりかお前はぁ!!」

 

アクアは周りにあるモンスターの人形を的にしようと提案するが、当然ながら却下になる。

 

「でもどうするんですか?的になりそうなものなんてないですよ?」

 

「だよなぁ・・・カエルとかも今は冬眠中だし・・・」

 

「なんだお前ら。なんか弓の的探してんのか?ならいいのがあるぜ」

 

的をどうするか悩んでいると、話を聞いてたマホは引出しからクエストの紙を取り出す。

 

「なんだそれ?討伐クエストか?」

 

「違うんだが・・・まぁ、モンスターと相手するのは変わんねぇよ。内容は採取クエスト。取ってくるものはカモネギのネギだ」

 

「カモネギ?」

 

「!」ビクッ

 

カモネギというモンスターの名を聞いてカズマはゲームに出てくるモンスターを連想し、ミミィは一瞬ビクついた。

 

「カモネギっつーのはな・・・」

 

「カモネギは戦闘能力こそ低いけど、倒した時にもらえる経験値が豊富なおいしい鴨のモンスターだよ!」

 

「さらに!!カモネギのお肉はとてもおいしいし、取れるネギも栄養価がとても高いため、二重の意味でおいしいのです!!」

 

「お、おう・・・なんだ、やけに詳しいじゃねぇか・・・。・・・オレが語りたかった・・・」

 

マホが説明に入る前にめぐみんとティアが饒舌的にカモネギの詳細を語った。

 

「えーっと・・・そのカモネギってモンスターからネギを取るクエストか?ならスティールで取れると思うんだが・・・」

 

「それもできるっちゃできるが、野良だと個体によってはすぐに逃げるからなかなか分捕れないんだよ。しかもスティールは幸運値が要求されるだろ?だからこそ遠くで気づかれないようにして、弓で動きさえ止めさえすれば、効率が高いんじゃねぇか。それにお前ら、的が欲しいんだろ?この方法が練習にもうってつけじゃないか?」

 

「でもカモネギは珍しいレアモンスターよ?会うことってできるの?」

 

「オレを誰だと思ってやがる?モンスターショップの店主だぞ?カモネギの出現地点を割り出すなんて、朝飯前よ!」

 

「おお!それなら問題解決だな!ミミィもそれで・・・」

 

カモネギの出現地を割り出せるとわかって、カズマはミミィの了承を得ようと視線を彼女に向けた・・・が、当のミミィは顔を手とうさ耳で覆い隠していた。

 

「ま・・・またあの悲劇を味わえと・・・?また私に・・・あの苦しみを味わえと・・・?」

 

「ど、どうしたんだよ急に?」

 

「ああ、その子、カモネギ系のモンスターにいい思い出がなかったのよ。主にティアのせいで」

 

「・・・おい」

 

「仕方ないじゃん。当時の私の職業レベル二桁もいってなかったから必死なんだよ」

 

妙にミミィが苦しんでいる状況を作った原因であるティアをカズマたちは冷めた目でティアを見る。ティアはたいして気にも留めてもいない。

 

「ちなみにカモネギの容姿はこんなんだ。罪悪感は湧くだろうが・・・まぁ、急所なんてそうそう当たらねぇから死なないだろ。だから大丈夫だ・・・多分・・・」

 

「いやこれ大丈夫の問題じゃないから!こんな姿のモンスターなら誰だって手を上げにくいって!!」

 

マホに見せてもらった資料のカモネギは実にかわいらしい容姿をしていた。その姿を見たカズマは今から弓の的にしようとしている罪悪感がこみ上げてくる。

 

「あのな、ミミィ、無理に引き受けなくてもいいぞ?もっと別の奴でも・・・」

 

「い、いえ・・・また同じことは起きないと思いますし・・・それに・・・わざわざ私のためにお仕事を変えるのは恐れ多いです・・・それでいきましょう・・・」

 

(・・・不安だ・・・)

 

ミミィに気を利かせて別のクエストでもとカズマは提案したが、ミミィは顔を覆い尽くしながらもカモネギ関連のクエストを了承した。が、不安はかなり残っているカズマであった。

 

 

ーこのすばー

 

 

『採取クエスト!!

カモネギのネギを入手せよ!!』

 

ひとまずマホからのクエストを受けたカズマたちはマホから教えてもらったカモネギ出現地点である林まで来ている。

 

「ここがカモネギの出現地点ね」

 

「言っておくけどあんたら、カモネギに手を出すんじゃないわよ」

 

「わかっていますよ。今回の目的はカズマが弓スキルを習得することですから」

 

「そこら辺のことはちゃんとわきまえてるって」

 

「信用ならないわね・・・」

 

アカメはめぐみんとティアがカモネギを狩らないように注意深く言っているが、当の2人は目を背けているため、信用性皆無だ。

 

「おい、本当に大丈夫か?なんか、小刻みに体震えてるけど・・・やっぱやめても・・・」

 

「だ、大丈夫・・・です・・・。これもカズマさんのためだと思えば・・・そうだ・・・カズマさんのため、カズマさんのため、カズマさんのため・・・」

 

「自己暗示かけてるし・・・本当に大丈夫か・・・」

 

カズマはミミィの精神的に心配をしているが、ミミィが自己暗示をかけていることから、不安はいっぱいだ。ようやく落ち着いたところで、本題に入る。

 

「すぅー・・・はぁー・・・。で、では、これから弓スキルをお教えますので、よく見ていてください・・・ね・・・?」

 

「ああ。よろしく頼むよ」

 

「えっと・・・ステータスを見た限りだと、カズマさんが1番扱いやすいスキルは千里眼スキルと狙撃スキル・・・です・・・。千里眼スキルは、遠くの標的、または隠れている標的を見つけ出すのに便利なスキルとなっています・・・。例えば・・・この林の奥・・・とか、草辺りに隠れてる標的を千里眼スキルなら簡単に見つけ出せ・・・ます・・・」

 

「おお!それは便利だ!」

 

「では・・・実際にやってみますね・・・。・・・千里眼!!」

 

ミミィは遠くなどを見渡すことができるスキル、千里眼を発動させて、林にいるカモネギを探し出す。カズマたちから見れば、ただ近くを探してる程度にしか見えないが、ミミィの視界には千里眼によって林の奥の光景が広がっていた。すると途端に顔を青ざめる。

 

「・・・はぁ!!いました!!カモネギです!!カモネギがいました!!」

 

「え?本当?私にはただ林にしか見えないけど・・・」

 

「あの・・・見間違い・・・とかではないですよね?」

 

「いるんでしょうね・・・顔の青ざめ方が尋常じゃないもの」

 

「お前・・・ミミィの前で何をしたんだ?」

 

「カモネギを見たら・・・そりゃ経験値をもらうに決まってるでしょ。後はそうだな・・・みんなでお鍋を振舞ったりとか・・・」

 

「お前・・・むごいことするよな・・・」

 

かわいらしい容姿をしているカモネギを人の目の前で討伐、しかも鍋にして食べるということをしたティアにカズマは本気で引く。

 

「なぁ、やっぱりやめてもいいんだぞ?千里眼は見せてもらったし、クエストもやめるし、狙撃はキース辺りに教えて・・・」

 

「だ・・・大丈夫・・・です・・・。カモネギはかわいいですけど・・・一応、モンスターですし・・・や、やれます・・・」

 

「お、おい!無理すんなって!!」

 

カズマは必死になってミミィの精神の安全性を考慮しているが、ミミィは頑なに考えを曲げず、そのまま弓を構え、狙撃体制に入る。

 

「そ、そそそ、狙撃スキルは・・・こここ、こうやって・・・標的にねねね、狙いを定めて敵を討つだけでなく・・・こここ、幸運値が高ければ高いほど・・・め、め、命中率が・・・あ、あ、上が・・・」

 

「もういい!!もういいよ!!よくやった!!もう帰ろう!!な?狙撃スキルはキースに見せてもらうから!」

 

明らかに声も体も震えているため、カズマは必死になってミミィを止めようとするが、もう遅い。狙いはすでに遠くのカモネギに向けている。

 

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさーーーーい!!!」

 

「いったーーーーー!!?」

 

ミミィはカモネギに謝罪しながらカモネギに向けて狙撃スキルで矢を放った。矢は林の中へと消えていき、そして・・・

 

「きゅっ!」

 

遠くからカモネギらしきかわいい声が聞こえてきた。

 

「え?今の・・・カモネギの声?」

 

「間違いありませんよ。今の声はカモネギですね」

 

「やったぁ!やるじゃないミミィ!これで報酬はいただきよ!私、カモネギを取ってくるわね!」

 

カモネギの声を聞いた事のあるめぐみんからのお墨付きをもらい、本物であると判明した。アクアはさっそくカモネギを捕えようと林の中へと入っていく。

 

「ミミィ・・・よく・・・頑張ったな・・・」

 

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・カモネギさん、ごめんなさい・・・」

 

カズマは精神的にもそろそろ限界に近くなっているミミィを強く励ます。が、ここで空気が読めない双子が追い打ちをかける。

 

「ネガウサ・・・あんた、容赦ないわね・・・あの容姿のカモネギを躊躇なく・・・」

 

「う、ううううぅぅぅ・・・違うんだよぉ・・・私・・・そんなつもりじゃ・・・」

 

「おめでとう、これでミミィもカモネギスレイヤーだね!」

 

「いやああああああああ!!いらないいらない!!そんな称号いらないいいいい!!」

 

「お前ら空気読めよ!!!」

 

容赦ない追い打ちにミミィは泣きそうになりながら頭を抱える。ちなみにアカメが言ったネガウサというあだ名はミミィのことを指している。

 

「いや、本当によく頑張った!!もうスキルも見たからネギ取ったらそのまま帰ろう!!これ以上無理すんな!!な?」

 

「え?ネギ1個だけでいいのですか?せっかくのカモネギですよ?滅多に会えないのですよ?」

 

「ミミィの様子を見てみろ!もう限界だって!これ以上やったら本当に心に深い傷をおうことになるだろうが!」

 

ミミィの精神面を考えてカズマはアクアがカモネギのネギを取ってきたらそのまま街に帰ろうと提案する。まぁ、マホの話だとここにはカモネギ1匹しかいないので、撃たれたカモネギ以外はいくら探しても出てこないのだが。

 

「みんな!見てみて!本当にカモネギよ!ほら!矢が刺さってるし、間違いないわ!」

 

「ちょっ!!?」

 

そう話している間にも、アクアが矢が突き刺さったネギを背負った鴨、カモネギを持ってきた。それを見たカズマは驚愕し、ミミィはさらに顔を青ざめる。

 

「あ・・・ああ・・・あああ・・・カモネギさんごめんなさい・・・こんなクズに討たれて悔しい思いを・・・私が・・・私が・・・」

 

「お前ミミィにとどめさしてんじゃねーよ!!!」

 

「な、なんで怒るのよ!!?私、カモネギを連れてきただけなんですけど!!?今晩のお夕飯を取ってきただけなんですけど!!?」

 

「ネギだけを持ってこいって言ってんの!!本体連れてきてどうすんだ!!」

 

ぐったりしているカモネギを見て、自身が矢を撃った行為に激しい罪悪感に襲われるミミィ。ちゃっかりお夕飯の肉にしようとカモネギを持ってきたアクアにカズマが怒鳴る。

 

「きゅ・・・きゅう・・・」

 

すると、アクアが持っていたカモネギが苦しげながらも小さな声をあげた。どうやらまだ生きていたようだ。

 

「あら?このカモネギ、まだ生きてたのね」

 

「おお、マジか!ほら、ミミィ、カモネギ生きてたぞ!まだ倒されてないぞ!よかったな!」

 

「あ・・・ああ・・・よかった・・・本当に・・・よかった・・・」

 

カモネギが生きていたということにミミィは大変喜ばしく思っており、精神面も回復された。

 

「あ、まだ生きてたんだ。てことはまだ経験値取られてないってことだよね?じゃあ・・・」

 

「やめときなさい。今日だけはネガウサに譲りなさい」

 

「うえ・・・ちょ・・・何で!!?あいつモンスターだよ!!?」

 

「アクア、お前もだ。絶対にやらかすなよ」

 

「ちょ・・・どうして私の首根っこを掴むの?どうしてカモネギから遠ざけるの?」

 

ティアとアクアが何かやらかさないようにアカメとカズマに2人を遠ざける。

 

「きゅう・・・」

 

「ごめんなさい・・・私のせいで・・・痛かったでしょう?さあ、カモネギさん、今手当てを・・・」

 

きゅっ!

 

「きゅ・・・」

 

「・・・え?」

 

「ちょっ!!?」

 

ミミィがカモネギを手当てしようとした時、めぐみんがカモネギの首を締め上げ、完全に息の根を止めた。これにはミミィは目が点になり、カズマも唖然となる。

 

「・・・めぐみんはレベルが上がった」

 

「わああああああああん!!!」

 

「バッカやろおおおおおおおお!!!!」

 

めぐみんによってカモネギが倒されて、ミミィは地面に突っ伏して大泣きした。カズマはそんなめぐみんを大きく怒鳴り、ドレインタッチで魔力を奪うのであった。こうしてカズマは弓スキルを習得できたが、なんとも罪悪感が残るクエストとなった。

 

『採取クエスト!!

カモネギのネギを入手せよ!!

ネギ獲得成功!!

ミミィは心に深い傷を負った・・・』




私、ティアがカモネギのおいしい料理を紹介するよ。

カモネギで何がおいしいっていえばやっぱりお鍋だね。特にそのお鍋の中でも水炊きが1番だと私は思うの。
作り方は簡単。まず昆布で出汁をとって、出汁がいい感じになってきたら生きのいい野菜をドバーッて入れて蓋をして動けなくさせるの。その後火を止めて、カモネギのお肉とネギを投入して、もう1度煮込む。そうしてぐつぐつと煮えてきたらカモネギの水炊きの出来上がり!是非ご賞味あれ!

頭のお言葉:いや、確かにうまいかもだが・・・だからと言ってカモネギを人の目の前で討伐するな。てかまた報告書に関係ないことを書いてんのかよ。・・・でも腹減ってきたな・・・。

次回、この紅魔の娘に友人を!
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