このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

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この紅魔の娘に友人を!

ミミィから弓スキルを教わってから翌日、何もかもが空っぽの状態の屋敷、双子はもうカズマたちに隠すことなく、盗賊団本部への報告書を書いている。アクアはもう火が弱まっている暖房で暖まろうとしているが、効果はない。そんな中で、カズマは深く頭をかかえている。

 

「・・・ああああああああああああ!!!!」

 

「「「!!??」」」

 

そして限界を達したのかカズマは頭をかけながら喚いている。

 

「い、いきなりどうしたの!!?」

 

「ついに頭でも狂ったの?」

 

「違うわ!!わからないのか!!?あの領主の元へ行ったダクネスが・・・数日たっても帰ってこなかったんだぞ!!?今頃は・・・!!」

 

「「「・・・!!??」」」

 

カズマが頭を抱える理由が分かった双子とアクアは途端に顔を青ざめていき・・・

 

「「「「ああああああああああああ!!!!」」」」

 

カズマと共に気が狂ったかのように喚く。ただカズマの心配は尤もだ。アルダープはあの時、ダクネスのことを舐め回すような目で見ていたのだ。何も思わないわけがない。

 

「んにゃーお」

 

すると子猫の声が部屋の中に響いてきた。扉の方を見てみると、めぐみんがそれはもう小さな子猫を抱えていた。その姿は黒い毛並みに額に十字架、小さな悪魔の羽のようなものが生えている子猫であった。

 

「?めぐみん?なんだその猫は?拾ってきたのか?」

 

「いえ・・・宿屋にずっと住まわせていた私の使い魔です。この子は迷惑はかけないと思うのですが・・・ダメですか?」

 

「飼いたいってことか?・・・おお、人懐っこいな」

 

カズマはめぐみんの抱えている子猫を撫でると、子猫は気持ちよさそうに身をゆだねている。

 

「私は別にいいんだけどさ・・・お姉ちゃんが・・・」

 

「ん?アカメがどうし・・・」

 

カズマたちがアカメに視線を向けてみると、アカメは顔を青ざめてめぐみん・・・というより子猫から距離を離れて顔をそっぽに向いている。

 

「おい、どうしたんだ?まさか猫アレルギーなのか?」

 

「違うわよ・・・何でもないから・・・その猫を私に近づけないでちょうだい・・・」

 

「?なぜです?この子は大人しいか・・・」

 

「ひぃ!!!来るなぁ!!!」

 

めぐみんが子猫を抱えてアカメに近づこうとした時、アカメは怯えた様子でめぐみん・・・もとい子猫からさらに距離を置く。身体も心なしか震えている。

 

「お前まさか・・・猫が嫌いなのかぁ!!?」

 

「ち、違・・・ひぃ!!来ないで!!!」

 

「お姉ちゃんは猫は嫌いじゃないよ。ただ・・・その子のサイズが問題なんだよね」

 

「サイズ?」

 

子猫に過剰に怯えているアカメのこの状態にティアが説明する。

 

「お姉ちゃんね、昔小さい蛇と触れ合ってたことがあったんだけど・・・その蛇が毒蛇でさ・・・その子に噛まれて生死を彷徨う経験をしたんだよね。それ以来、それがトラウマになっちゃって・・・小動物が大の苦手になっちゃったんだよね・・・」

 

「ってことは何か!!?リスとかネズミとかの動物もダメってことなのか!!?」

 

「大きかったら別に何ともないんだけど・・・小さい動物だとそうなるね・・・」

 

まさかアカメが大がつくほどの小動物嫌いだとは思わなかったカズマたちは非常に驚いた顔になっている。

 

「マジかよ・・・あの強気なアカメがこんなに小さい動物が苦手なんて・・・」

 

「しかし、認めざるを得ませんよ。こんな姿を見てしまえば・・・」

 

「いや・・・いやぁ・・・勘弁してよ・・・」ガクガクガク・・・

 

「・・・めっちゃ縮こまってる・・・」

 

今までに見たことがないアカメの縮こまった姿にカズマとめぐみんは戸惑いを隠せないでいた。だがしかし、そんな中でアクアだけが笑っていた。

 

「アカメってばこーんなに弱っちそうな動物がダメなのね!めっちゃ情けない!!ウケる!!ちょーウケるんですけど!!プークスクス!!」

 

アクアが縮こまっているアカメを見て笑っているのが癪なのか、アカメが凄まじい殺意を持った目でアクアを睨みつける。

 

「あんた・・・調子に乗らないでちょうだい・・・!!あんたが何をやろうが数秒で細切れに・・・」

 

「あらぁ?そんなこと言っていいのかしらぁ?この子猫を近づけちゃうわよ?」

 

「うぐっ・・・」

 

調子に乗り出したアクアは子猫を引き合いに出してアカメを大人しくさせた。

 

「そうねぇ・・・せっかく弱みを握ったのだから・・・今のうちに・・・」

 

「シャー――!!」

 

アクアがアカメにやられた分の仕返しをしようと思って子猫を持ち上げようとしたら子猫はアクアに触られるのが嫌なのか手を引っ掻いた。

 

「いった!!?ちょっと!!どうして私にだけ爪をたてるの!!?せっかく私がアカメに優位に立てると思ったのに!!」

 

「小動物に嫌われてるんじゃないの?ほらこの子、フーって言ってるし」

 

「フー―ッ!!」

 

どうやらアクアは小動物にあまり好かれていないようだ。それにはアカメはほっと安心したような顔になっている。それがあったとしても、子猫の嫌い方はまるで仇敵を見るかのようだ。

 

「なんてことかしら・・・!この漆黒の毛皮といい、ふてぶてしい態度といい、何か邪悪なオーラを感じるわね・・・!ねぇ、この魔獣の名前はなんていうの?」

 

「ちょむすけです」

 

「・・・今なんて・・・」

 

「ちょむすけです」

 

この子猫の名前はちょむすけらしく、それを聞いたティア以外のメンバーは本当に冷めた顔つきになっている。ちなみにこのちょむすけは、オスではなくメスである。

 

「・・・ですが、アカメがあの様子では、飼うのはダメ・・・ですよね?」

 

「うーん・・・ちょっとお姉ちゃんを説得してみる」

 

ちょむすけを飼うことが許されないと思っているめぐみんは少し悲しそうだ。そんなめぐみんのためにティアはアカメを説得してみる。

 

「お姉ちゃん、めぐみんはちょむすけを飼いたがってるんだけど、いい?」

 

「ダメよ」

 

「そんなこと言わずにお願いだよ。お姉ちゃんだって、毎度毎度小動物に襲い掛かるなんてしたくないでしょ?少しでも小動物に慣れようよ」

 

「今なんか物騒なことが聞こえたんだが・・・」

 

「え?まさか・・・小動物触ったら殺すの?嘘よね?さすがにそれはないわよね?」

 

「た、例えそうであったとしても、ティアがいるので絶対未遂ですよ・・・そうに違いありません・・・」

 

説得する際にかなり物騒なワードが聞こえてしまったカズマたちは顔を青ざめている。ちなみに、襲い掛かるのは事実だが、全部未遂に終わっている。

 

「それにアクアに弱み握られたままじゃ嫌でしょ?舐められっぱなしだよ?」

 

「それは当然嫌よ。腹が立つもの」

 

「でしょ?ちょっとでも克服って意味でもさ・・・ね?いいでしょ?」

 

「・・・・・・」

 

小動物を飼うことはアカメは嫌だが、それ以上にアクアに屈辱を受けさせられるのはもっと嫌なので、飼う際に条件を付けた。それは克服には程遠いものだが、ティアは一応は承諾する。

 

「ちょむすけをお姉ちゃんに近づけないならオッケーだって」

 

「わ、わかりました!アカメに近づけませんので、ちょむすけを殺そうとしないでください!」

 

「え?殺すなんてワード一言も出してないけど・・・」

 

飼うのは嬉しいことだが、物騒なワードを出されてしまっては嫌でもアカメに近づけてはいけないと思うめぐみんたちであった。

 

「ふぅ・・・よかったな、ちょむすけー」

 

「なーう」

 

「・・・ところでカズマ、さっきは何を騒いでいたのですか?」

 

ちょむすけを飼う問題が解決したところで、めぐみんはさっきまでカズマが喚いていた件を聞きだした。

 

「めぐみん、結構冷静だね。ダクネスはきっとアルダープのところで今頃・・・!!」

 

「あの領主のよくない噂はよく聞きます。盗賊団のターゲットにするのも納得です。ですが、ダクネスがそうやすやすと・・・」

 

「こーれだからガキんちょは!!!あんた、まだあの変態豚領主のことがわかってないのかしら?いい?ダクネスは今頃・・・くっ、この体を自由にできても、心までは自由にできると思うなよ!!・・・とか言うに違いないわよ?」

 

アカメの指摘によって、めぐみんはようやく、事の問題が理解でき、ひどく取り乱す。

 

「ど、どどど、どうしましょうカズマ!!ダクネスがひどいことに!!どうしましょうカズマ!!」

 

「もう手遅れだ・・・。いいか?ダクネスが帰ってきたら、普段と変わらず優しく接してやるんだぞ」

 

「わかったわ!大人の階段を上ったダクネスに何があったか聞いちゃいけないってことね!」

 

ひとまずはダクネスが帰って来た時に、何が起こったのかは聞かない方針で固めていく時・・・

 

「アカメとティア!!アカメとティアはいるかーーー!!!」

 

「・・・えー・・・こんな時に面倒な・・・」

 

突如としてセナが屋敷に入ってきた。

 

「はぁ・・・いったい何の用よ?私たち、ひとまずは大人しくしてたわよ?」

 

「大人しくしてただと?何を言うか白々しい!!やはりウェーブ盗賊団は魔王軍の手先だろう!!またやらかしてくれたな!!」

 

またやらかしてくれた・・・という発言にカズマは何やら嫌な予感がひしひしと感じ取った。

 

「あ、あの・・・やらかしてくれたって・・・何をですか?」

 

「・・・失礼しました。ギルドの職員の話によりますと、実は、街の周辺に冬眠中だったジャイアント・トードが這い出してきたのです。報告によりますと、何かに怯えるように這い出てきたとのことです。怯えると言えば、立て続けに起こっている爆裂魔法が頭によぎりまして、もしかしたらと・・・」

 

セナの説明を聞いて、カズマは嫌な予感が的中したかのような表情になり、すぐさまめぐみんとアクアに視線を向ける。めぐみんとアクアは屋敷の奥へ逃げようとしていたが、すぐに双子に捕まった。

 

「めぐみーん?どこへ行くのかなー?」

 

「あんたら・・・またやらかしてくれたわね・・・!」

 

「ち、違います違います!確かに爆裂魔法を撃った実行犯は私ですが、主犯はアクアです!」

 

「ちょ・・・ずるいわよめぐみん!めぐみんだってノリノリで承諾したじゃない!私のせいじゃないわよ!」

 

「言ってる場合か!!お前らがやらかした後始末をしに行くぞ!」

 

こうしてカズマたちはめぐみんの爆裂魔法でやらかした後始末として、ジャイアント・トードの討伐へと向かうのであった。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

ジャイアント・トードが出現する草原はもうすっかり雪で白く覆われて雪原に変わっており、今もなお雪が降り続けている。

 

「いやあああああ!!もういやああああああ!!ミミズに続いてカエルに食べられるのは、もういやあああああああああ!!!」

 

そんな雪原でアクアは寒い中でも元気に動いているジャイアント・トードに追われていた。

 

「えーっと・・・資料によるとカエルって寒さで動きが鈍くなるってあったんだけど・・・元気に動いてるね・・・」

 

「カエルがこの寒さの中でも動きが鈍くならないとか・・・たくましすぎやしないか?」

 

「過酷な世界だからこそ、生き物は皆、その時その時は精いっぱいに生きていくのです」

 

「私たちだって負けてられないわよ。もっと高みを登って、この過酷な世界を生き抜くのよ」

 

めぐみんとアカメはカズマのつぶやきに真顔でそう返した・・・顔から下らへんをバクりと食われている状態で。

 

「えと・・・あの・・・サトウさん・・・?」

 

「言いたいことはわかりますよ・・・爆裂魔法と、喧嘩の後の結果がこうなってるわけですから・・・」

 

めぐみんはすでに爆裂魔法を放ち、カエルに食われ、アカメもティアと喧嘩の際でコンビネーションがぐだぐだになり、成す術もなく食べられたのだ。監視のためについてきたセナが驚かないわけがない。

 

「今助けて・・・」

 

「いや、先にアクアからでもいいわよ。外はめちゃくちゃ寒いし、ミミズよりかは臭くないし、カエルの中はものすごく暖かいのよ。ぶっちゃけ言えば、寒いから外に出たくないわ」

 

「・・・お姉ちゃんはそれでいいの・・・?」

 

「私も同様で構いませんよ。私とて、爆裂魔法を放った後ですから、今の私にできることは、こいつを足止めしておくことくらいです」

 

2人ともどうやらジャイアント・トードを暖房代わりにしているようで、外から出ようという気配はどこにもなかった。ある意味大物ともいえるだろう。

 

「・・・お、おう・・・じゃあ・・・任せる」

 

「ええ!!?いいんですか!!?」

 

「本人たちがいいならいいんじゃない?ぶっちゃけこれ、いつもの光景だから」

 

「ええええ!!?」

 

カズマのめぐみんたちの放置、そしてこれがいつものことと聞いて、セナは混乱しっぱなしである。

 

「カジュマしゃーーーん!!!もう無理!!!もう無理だから早くしてええええええええ!!!」

 

「アクア!そのまま引き付けてろ!俺が弓で仕留めてやるから!」

 

「お、さっそくミミィから教わったスキルを使っちゃう?」

 

カズマは弓矢をアクアを追っているジャイアント・トードに狙いを定めた。アクアがジャイアント・トードに食われそうなタイミングを狙って・・・

 

「狙撃!(イケボ)」

 

ミミィから教わった狙撃スキルを発動し、矢を放った。矢はアクアの髪をかすりながらも、ジャイアント・トードに見事にヒットする。ジャイアント・トードはピクリとも動かない・・・

 

「ちょっと!!今私の頭のチャームポイントを矢がかす・・・」

 

バクっ

 

「「あ・・・」」

 

と思われていたが、ジャイアント・トードはそのままばっくりとアクアを捕食した。

 

「あ、アクアーーーーーー!!!」

 

カズマはすぐさまアクアを捕食したジャイアント・トードを剣で倒した。結局いつも通りの光景であった。

 

 

ーこのすばあああああ!!!ー

 

 

なんとかジャイアント・トードを討伐し、アクアを救出に成功した。

 

「うぐぅ・・・ひぐぅ・・・」

 

「スキルが・・・俺のスキルが・・・!」

 

アクアはカエルの粘液塗れになって泣いており、カズマはスキルが通用しなかったことに激しく動揺している。

 

「あ、あなた方はいつもこんな危ない戦いを・・・?」

 

「今日の方はだいぶマシな方だけどね・・・」

 

「ほ、本当にこんな人たちが魔王軍の関係者・・・?」

 

いつも通りの光景とはいえ、普通ならあり得ない光景を目の当たりにセナはぶつぶつと頭を抱えている。すると・・・

 

「ぼーっとしない!さらに新しいのが来たわよ!」

 

「その数、ざっと4体です!」

 

「「「はあ!!??」」」

 

さらに奥地から新しいジャイアント・トードがカズマたちのところまで迫ってきている。数的にも、4対4・・・その状況にカズマたちは焦りを生じる。

 

(まずい・・・!!これでは餌・・・ではなく、囮の人数が足りない・・・!!)

 

アクアたちを餌と考えているカズマの考えはともかく、絶対的不利と感じたカズマたちは速攻で逃げ出す。

 

「うおおおおおお!!アクア!引き続き囮を頼む!!」

 

「嫌よ!!今度はティアが囮になりなさいよ!!」

 

「アクアにカエルを倒せるわけないでしょ!!ていうか、カズマが囮になってよ!!」

 

「バッカ!!お前戦闘能力とか0だろ!!1匹でも倒せれば、残りは3匹だ!!そうすりゃお前らとセナさんの3人で仕留められるからぁ!!」

 

「ええ!!?私はあなたたちの監視をしているだけなので、巻き込まれるいわれは・・・というか、一般人の私を囮に使う気ですか!!?」

 

ジャイアント・トードに逃げながら囮になれと醜い争いをするカズマたち。特に一般人であるセナまでも囮に使おうとする考えはひどい。

 

「つべこべ言わずに・・・行って来てくださーーい!!」

 

ドンッ!

 

「えっ!!?」

 

「「はあ!!?」」

 

ティアは囮としてセナをジャイアント・トードにいる方へと突き飛ばす。検察官相手でも容赦なしの腹黒さである。

 

バクッ

 

突き飛ばされたセナは成す術もなく、ジャイアント・トードの舌に絡めとられ、そのまま口の中へと放り込まれてしまう。

 

「さあカズマ、チャンスだよ!!セナさんが足止めしてる間にカエルを・・・」

 

ティアがそう言っている間にもティアはジャイアント・トードの舌に捕まり・・・そのまま・・・

 

バクリッ

 

見事に食われてしまう。自業自得とはまさにこのことを言うのかもしれない。

 

「カズマ!2人の犠牲を無駄にしないために、一気にカエルを・・・」

 

アクアも最後まで言葉を紡ぐことなく、ジャイアント・トードの舌に捕まってしまい・・・

 

「いやああああああああ!!」

 

バクッ

 

「お前らあああああああああ!!」

 

本日2度目の捕食の餌食になってしまう。生き残っているカズマは必死になってジャイアント・トードから逃げる。

 

「カズマ、なんか徐々に飲み込まれ始めてるんだけど、そろそろ助けてくれないかしら?」

 

「すいません、こっちも少しずつ飲み込まれ始めたので、そろそろ救出してもらえないでしょうか・・・ぷく・・・」

 

最初からジャイアント・トードに飲まれているアカメとティアも少しずつ胃袋の中へと運ばれつつある。めぐみんにいたってはもう顔まで飲まれ始めている。

 

「ああ、もう!!こんな時にダクネスがいれば!!いったいいつになったら帰ってくるんだよ!!」

 

「あ・・・やばいわ・・・これ本当にやばいわ・・・カズマ、早く助け・・・むぐ・・・」

 

「ぷ、ぷ、ぷ、ぷ、ぷ・・・」

 

カズマが逃げてる間にもアカメも顔のあたりまで飲み込まれ、めぐみんはもう全部食われつつある。

 

「も、もうダメだーーーーーー!!!」

 

カズマが転んで、ジャイアント・トードが目の前まで迫ったその時・・・

 

「ライト・オブ・セイバー!!!」

 

突如として発生した光の刃がジャイアント・トードを貫いた。さらに他の光の刃もジャイアント・トードを貫き、アクアたち全員を救出した。この光の刃は光の上級魔法だ。この上級魔法を発動させたのは、黒いローブを羽織った少女であった。よく発育した体に、黒い髪に紅い瞳といったいかにも目立つ特徴をしていた。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

ジャイアント・トードを討伐し終えた雪原にいるアクアたちはカエル、ミミズの時特有の粘液塗れになっている。唯一無事なカズマは触りたくないながらもめぐみんにドレインタッチで魔力を分け与える。

 

「これで歩けるだろ?誰だか知らないけど、助かったよ。ありがとうな」

 

カズマは助けてくれた黒ローブの少女に視線を向ける。少女は恥ずかしそうに顔を赤らめている。

 

「た・・・助けたわけじゃないですから・・・。ライバルがカエルなんかにやられたりしたら、私の立場がないから・・・」

 

「ライバル?うちらの中にライバルがいるの?」

 

「そういえば、めぐみんと同じ特徴をしてるわね・・・ということはこの子、紅魔族か」

 

言われて見てみれば、黒い髪に紅い瞳・・・めぐみんと特徴が一致している。それだけでこの少女が紅魔族であるとわかる。めぐみんは粘液で転びつつも、立ち上がり、少女と向き合う。

 

「ひ、久しぶりねめぐみん!約束通り、修行を終えて上級魔法を覚えてきたわ!さあ、今日こそは長きにわたった決着をつけるわよ!」

 

そう言って少女はめぐみんに指を差して勝負を挑んできた。するとめぐみんは・・・

 

「どちら様でしょう?」

 

「ええ!!?」

 

すっとぼけた様子で返した。それには少女は驚愕している。

 

「だいたい、名前も名乗らないなんておかしいじゃないですか。これは、きっとカズマが言ってたオレオレ詐欺とかいう奴ですよ」

 

「わ、わかったわよ!知らない人の前で恥ずかしいけど・・・こほん!」

 

少女は咳ばらいをして、頬を赤くして恥ずかしがりながら、紅魔族の例の挨拶を始める。

 

「我が名はゆんゆん!!アークウィザードにして、上級魔法を操りし者!!やがては紅魔族の長となる者!!」

 

少女・・・ゆんゆんは紅魔族でも珍しく、この名乗りを恥ずかしがっている。

 

「とまぁ、彼女はゆんゆん。紅魔族の長の娘で、自称私のライバルです」

 

「ちゃ、ちゃんと覚えてるじゃない!!ていうか自称じゃないから!!」

 

めぐみんはさも当たり前のようにゆんゆんの紹介をしている。ちゃんと覚えているにも関わらず、忘れたふりをしていためぐみんにゆんゆんは涙目である。

 

「なるほど・・・俺はこいつの冒険仲間のカズマ。よろしく、ゆんゆん」

 

ゆんゆんの名乗りにたいして特に気にしていないカズマを見て、ゆんゆんは目をぱちくりさせている。

 

「あ、あれ?私の名前を聞いても笑わないんですか?」

 

「世の中はな、変わった名前を持ったにも関わらず、頭のおかしい爆裂娘なんて不名誉な通り名で呼ばれてる奴もいるんだよ」

 

「私ですか!!?それは私のことですか!!?私の知らない間でその通り名で定着しているのですか!!?」

 

不名誉な通り名で呼ばれていためぐみんはもちろんそのことに怒ってカズマに突っかかってきた。

 

「さ、さすがねめぐみん!いい仲間を見つけたわね!それでこそ私のライバル!」

 

ゆんゆんはなぜかめぐみんの評価を爆上げさせている。

 

「私はあなたに勝って、紅魔族一の座を手に入れる!さあめぐみん!!この私と勝負しなさい!!」

 

「嫌ですよ、寒いですし」

 

ゆんゆんの勝負の申し込みにたいして、めぐみんは普通に拒否った。

 

「えええ!!?なんでぇ!!?お願いよぉ~、勝負してよぉ~・・・」

 

「嫌です」

 

拒否られたゆんゆんはめぐみんに泣きながら勝負勝負と必死に頼み込んでいる。めんどくさいと思ったカズマは双子に視線を向けるが、双子はセナと話をしていた。

 

「今日は何とかなりましたが・・・これが私の目を欺く演技だということを捨てていませんよ。私はあなたたちを信用していませんから」

 

「あー、そう。信用しないならそれで結構」

 

「まぁ・・・そう・・・ですよね・・・」

 

「・・・では、失礼します」

 

「じゃあ、私はギルドにカエル肉を運んでもらう手続きをしてくるわね・・・」

 

話を終えたセナはアクセルの街に戻り、アクアもギルドへと向かうためにアクセルの街へと向かっていく。

 

「つーかティア、見てたけど、あんた何検察官相手でも餌に使おうとしてんのよ。バカじゃないの?」

 

「お姉ちゃんが私の意見に合わせなかったからでしょ。そのせいでお姉ちゃんが食べられて、何もできなかたんだからこのバカ」

 

「バカはあんたでしょ!」

 

「お姉ちゃんだよ!」

 

そしてそのまま取っ組み合いの喧嘩を始めてしまう。この状況の中で取りのこされるのは勘弁してほしいカズマである。

 

「・・・はぁ・・・しょうがないですね・・・私は今日はもう魔法は使えません。なので勝負はあなたが得意だった体術でどうですか?」

 

ゆんゆんにせがまれためぐみんは根気に負け、体術で勝負してやると言った。それにたいしてゆんゆんは嬉しそうだ。

 

「いいの?その・・・学園では碌に体術の授業に出なかっためぐみんが昼休みの時間になるとこれ見よがしに私の前をちょろちょろして、勝負に誘って私からお弁当を巻き上げていったあなたが・・・」

 

「・・・お前・・・」

 

「私だって腹を空かせて死活問題だったのです。彼女の弁当が私の生命線だったのですよ」

 

めぐみんの故郷でゆんゆんの弁当をさりげなく巻き上げていた事実にカズマは冷めた目でめぐみんを見つめる。

 

「わかった!体術勝負でいいわ!」

 

「え?いいの?」

 

「よろしい・・・では、どこからでもかかってきなさい!」

 

互いの了承も得て、体術勝負が始まった。ゆんゆんとめぐみんは互いに身を構える。その姿勢には双子も一旦喧嘩を止める。

 

「・・・なんか勝負ってことになってるけど・・・これ体術勝負?どっちが勝つと思う?お姉ちゃん」

 

「私が見るに、あのゆんゆんって奴はそれなりに腕っぷしがいいわね。私には遠く及ばないけど。で、世辞にもめぐみんは体術が得意ってわけではないわね。けど、これはめぐみんの勝ちね」

 

「それはなんで・・・あ・・・」

 

アカメはこれはめぐみんの勝ちと言い張っている。ティアは怪訝に思ったが、その理由はすぐに理解できた。

 

「・・・ねぇ・・・めぐみん・・・その・・・あなたの体がてらてらしたままなんだけども・・・」

 

「そうですよ・・・この全身ねっちょりは全てカエルのお腹の中の分泌物です。さあ・・・近づいた瞬間に、思いっきり抱き着いて、そのまま寝技に持ち込んであげます・・・!」

 

抱き着くという行為・・・それすなわち、抱き着いた相手に自身についた粘液がつくということだ。それをよく理解しているゆんゆんは顔を引きつらせている。

 

「う・・・嘘でしょ・・・?私の戦意を挫いて降参させようという作戦なのよね?でしょう・・・?」

 

ゆんゆんの恐怖交じりの問いかけにめぐみんはにっこりと微笑む。

 

「私たち、友達ですよね?友人というものは、苦難を分かち合うものだと思います」

 

めぐみんのこの言葉に長い沈黙が続き、そして・・・

 

「いやあああああああ!!降参!!降参するから!!こっちに来ないでえええええええ!!」

 

ゆんゆんはすぐにめぐみんから逃げ出す。そしてめぐみんは逃がすまいとゆんゆんを追いかけ、思いっきり抱き着いた。それによってゆんゆんはカエルの粘液が体についてしまう。

 

「降参・・・降参したのにぃ・・・!」

 

「今日も勝ち!!」

 

汚いやり方で勝利を納めためぐみんはドヤ顔である。

 

 

ーこのすば~(泣)ー

 

 

一段落したカズマたちは屋敷へと向かっている。

 

「あのゆんゆんって子、泣いて逃げちゃったね」

 

「あのくらいで泣くなんて軟弱ね」

 

それはただ双子たちがカエルの粘液に慣れてしまったからでゆんゆんの反応が1番普通なのである。

 

「2人とも、ゆんゆんの勝負の戦利品のマナタイトです。借金返済の足しにしてください」

 

めぐみんはゆんゆんの勝負で戦利品としてもらった鉱石、マナタイトを双子に渡した。

 

「それは嬉しいけど・・・いいの?それ、魔法を使う際の魔力消費を肩代わりできる代物だよ?」

 

「ふっ・・・私くらいの規格外の大魔導士には、不要なものなのです」

 

「要するに、爆裂魔法じゃそれは何の役にも立たないってことでしょ」

 

「そういうことです」

 

普通の魔法使いなら重宝するものだが、爆裂魔法では魔力消費の肩代わりできないから、いらないということである。

 

「なぁ、爆裂魔法以外のスキルを取る気は・・・」

 

「ないです」

 

「ですよねー・・・はぁ・・・」

 

カズマの問いかけに即答するめぐみん。カズマは思わずため息をこぼす。

 

「何ですか?」

 

「さっきの子より、めぐみんの方が美人だなって」

 

カズマの皮肉な言葉にめぐみんは目を赤く輝かせて、怪しげな動きをし始める。

 

「それはどうもありがとう!お礼にぎゅっとハグしてあげましょう!」

 

「こ、こっち来んな!!」

 

「もっと喜んでもよいですよ?ヌルヌルの女の子に抱き着かれるなんて、場合によってはお金を払う人だっていますよ?」

 

めぐみんはカズマに有無を言わさず、抱き着いて自分のカエルの粘液を引っ付けた。

 

「ぬあああああ!!カエル臭い!!」

 

「・・・なんかお楽しみみたいだし、お邪魔虫は退散しようか」

 

「そうね。カズマ、今日はウィズんとこに泊まるから、明日迎えよろしく」

 

「おい、ふざけんな!!こいつどうにか・・・おえ、カエルくせぇ!!」

 

じゃれ合っているカズマとめぐみんを察し、双子は屋敷への道のりからウィズの店へと向かうのであった。

 

 

ーおえ、カエルくさ・・・ー

 

 

「ウィズー、今日そっちに泊めてー」

 

「え、ええええええ!!?お2人とも、どうしてまた粘液塗れになってるんですか!!?」

 

「ああ、まずシャワーを使わせてちょうだい」

 

 

ーこのすばー

 

 

シャワーを浴び終え、晩ご飯を食べ終え、ウィズ魔道具店の双子が住んでいた部屋に双子は数日ぶりだというのだが、懐かしさがこみあげてきている。

 

「なんだか久しぶりだなー、ここ。不思議な気分だよー」

 

「そうね。数日だけ間が空いただけなのにね」

 

そう思うのも無理はない。数カ月と短い期間だが、ここでウィズと過ごしてきた時間は決して無駄ではなく、双子にとって大切な思い出なのだから。

 

「今思い返してみれば、ここに至るまでいろいろあったね」

 

「確かに、デュラハン襲来にデストロイヤー襲来・・・検察官に捕まって裁判・・・それでもなお生きているなんて・・・波乱万丈な日々だったわね。砂漠では味わえなかった体験ね」

 

「ふわぁ・・・驚いたといえば・・・ミミィが支部長になっていたりとかね・・・」

 

「前支部長が引退して後釜ができたなんて話は聞いたことはあったけど、まさか同期のネガウサが・・・」

 

ここまでの思い出を振り返っていると、ティアは非常に眠たそうにこっくりこっくりとしているのに気が付いたアカメ。

 

「・・・ふぅ・・・仕方ないわね。疲れたでしょう。ゆっくりと寝るといいわ」

 

「うん・・・そうするね・・・おやすみ・・・zzz」

 

ティアはアカメに身をゆだねるかのようにアカメの膝の上で眠り始めた。

 

「まったく・・・こうしてれば、普通にかわいい妹なのだけれどね・・・」

 

アカメは膝の上で気持ちよさそうに寝ているティアの頭を起こさないように優しく撫でる。こうしているアカメの姿はしっかりした優しい姉そのものである。するとウィズが双子の部屋にリンゴを持って入室してきた。

 

「アカメさん、ティアさん・・・」

 

「しー。ティアが眠ってるでしょ」

 

「あ、ごめんなさい」

 

アカメが静かに注意し、ウィズもティアを起こさないようにテーブルにリンゴを置き、ティアの寝顔を見る。

 

「ティアさん、気持ちよさそうに眠っていますね。よほど疲れていたんでしょうか」

 

「無理ないわ。牢屋生活に裁判、仮拠点騒ぎにカモネギの説教・・・さらに屋敷の物の差し押さえ・・・いろいろあったから、疲れもなかなか取れなかっただろうしね」

 

カモネギに関しては自業自得だが、それらの苦難続きで疲れが溜まるのは当然だろう。現にアカメも多少の疲れは残ったままだ。それでもなお、ティアの疲れ解消を優先させている辺りは、姉らしいともいえる。そんなアカメの姿にウィズは微笑んでいる。

 

「ふふ・・・」

 

「・・・何よ?」

 

「あ、すみません。ただ、アカメさんはいいお姉さんだなっと思いまして・・・」

 

「何を今さら。私は・・・今でもいいお姉ちゃんでしょ」

 

「え?あ・・・はい・・・そう・・・です・・・ね・・・?」

 

アカメの的外れな発言にウィズは困惑気味である。

 

「ま、冗談はいいとして、私は一応、この子の姉だしね。姉が妹を守り通していくのは、姉としての義務だし、当然のことでしょ」

 

「・・・ふふ、そうですね」

 

(・・・ま、普段はそれ、できてないけど)

 

できてるできてないはともかく、一応は姉としての自覚はあるアカメにウィズはにっこりと微笑む。アカメはらしくないと思い、頭をかく。

 

「・・・やっぱあんたの前だと、調子狂うわね。らしくないことを言ってしまう」

 

「す、すいません。ご迷惑でしたか?」

 

「いや、別に。そこは気にしてないし。それより、あんたって、酒はいける口?」

 

「え?あ、はい。一応は飲むことはできますが・・・」

 

ウィズの答えを聞いたアカメはティアを起こさないようにベッドまで運ぶ。運び終えたら屋敷からこっそりと持ってきた酒瓶を取り出す。実はこの酒瓶、アカメが誰にも見つからないようにしながら隠していたもので、唯一無事だった酒瓶なのだ。

 

「ちょっと晩酌に付き合いなさいよ。飲んだらすぐに寝るしさ」

 

「え?でも・・・いいんでしょうか?」

 

「リビングで飲めば問題ないでしょ。それに、あんたと2人で飲んでみたかったのよね」

 

「えっと・・・じゃあ・・・一杯だけなら・・・」

 

「よし」

 

ウィズの了承も得て、アカメは酒瓶とテーブルのリンゴを持って、ウィズと共にリビングへ向かった。リビングへ到着したら酒を注ぐためのグラスを用意する。

 

「なんだか悪いことをしてるような気分ですね」

 

「内緒で晩酌なんて悪いうちには入らないわよ。あっちが勝手に寝たんですもの」

 

「は、はぁ・・・」

 

アカメはウィズにグラスを渡し、そこに酒瓶に入ってある赤ワインを注ぐ。そして自分の分の赤ワインもグラスに注いだ。

 

「それじゃ、あんたの商売繁盛を願って・・・乾杯」

 

「あ、はい・・・いただきます」

 

この夜、アカメとウィズはワインを飲み、他愛ない話をしながら一晩を過ごした。その夜は静かながらも、とても充実した時間となった。

 

 

ーこのすばー

 

 

ウィズの店で寝泊まりした双子は今日はウィズの店を手伝うことにしている。現在双子は商品である魔道具を商品棚に並べる。

 

「すみません、わざわざ手伝ってもらって・・・」

 

「一宿一飯の恩を考えれば当然よ。ティア、これをあっちに並べてちょうだい」

 

「はーい。えっと・・・これはここ・・・これは・・・あれ?」

 

ティアが魔道具を並べながら窓を見ると、何かを発見する。

 

「・・・ちょっと、手が止まって・・・」

 

「お姉ちゃん、あれ・・・」

 

窓を見てみると、そこには店の外でやたらとそわそわしながらうろついているゆんゆんがいた。

 

「あれってゆんゆんって子じゃない?何してるんだろう?」

 

「・・・店の前をうろちょろと・・・鬱陶しいね」

 

店の前でうろうろしている姿を見てイライラしたアカメはすぐに扉を開けてゆんゆんに声をかける。

 

「店の前で何してんのよあんた」

 

「ひゃああ!!?」

 

声をかけられたゆんゆんは過剰に反応してビックリする。

 

「やあ、昨日ぶり、ゆんゆん」

 

「あ、あれ?あなたは確か・・・めぐみんの仲間の・・・」

 

「そうそう、覚えててくれて嬉しいな」

 

「で?あんた何してたのよ?店の前をうろうろと・・・営業妨害よ」

 

「そ、それは・・・そのぅ・・・」

 

何をしていたか問われると、ゆんゆんは急に恥ずかしそうにもじもじし始めた。

 

「煮え切らないわね・・・言いたいことがあるならハッキリいいなさいよ」

 

「で、ですから・・・あの・・・ここに来るかもしれないめぐみんを・・・その・・・」

 

「ずっと待ってたの?」

 

「は、はい・・・」

 

どうやらゆんゆんはめぐみんはここに来るだろうと踏んで朝からずっと待っていたようだ。

 

「それならなんでここなのよ?めぐみんとは関係・・・」

 

「もしかして、あれじゃない?昨日のマナタイトを売るためにって思ったんじゃ・・・」

 

「・・・はぁ・・・そういうこと・・・」

 

だいたいの事情を想像できたアカメはゆんゆんは面倒くさいと心の奥底から思った。

 

「なら、お店の中で待ってる?めぐみんなら今日ここに来るだろうし」

 

「ちょっと勝手に・・・」

 

「い、いいんですか⁉その・・・ご迷惑とか・・・」

 

「いいのいいの。むしろお客さんが来ないから、中に入ってくれたら嬉しいから」

 

「はあ・・・仕方ないわね・・・。ただし、中に入るからには1つくらい魔道具買っていきなさいよ」

 

「は、はい。では・・・お、お邪魔します」

 

双子・・・というより、ティアのご厚意に甘えてゆんゆんは店の中に入って、ウィズと双子と話をしながらめぐみんが来るのを待っていた。ちなみにゆんゆんはカズマたちがウィズの店によく出入りするという噂を聞きつけて、朝から待っていたようで、ティアの考えは外れていた。そして、十数分後・・・

 

「ウィズー、うちの双子たちを回収しに・・・」

 

ちょうど双子を迎えに来たカズマたちはウィズと話をしていたゆんゆんと目が合った。

 

「やっと来たわね。この・・・」

 

「わ・・・我が名はゆんゆん!!なんという偶然!なんという運命のいたずら!こんなところで鉢合わせになるなんて、やはり終生のライバル!!」

 

アカメがゆんゆんが来た理由を話そうとした時、ゆんゆんが言葉をかぶせてきた。

 

「ウィズの店にめぐみんたちがよく来るって噂を聞いたみたいで朝からずっと待ってたみたいだよ」

 

「なななな、何を言っているのですか店員さん!!私はただマジックアイテムを買いに来ただけで・・・あ、あの、これください!!」

 

ティアが真実を話した途端ゆんゆんは慌てふためき、自分に負担しか返ってこない魔道具を購入する。見栄を張っているのがバレバレである。

 

「あの子が言ってることは大嘘よ。ティアが言ってることが本当のこと」

 

「あ、あう~・・・」

 

とどめと言わんばかりにアカメが本当のことを言い放ち、真実を言われてしまったゆんゆんは顔が真っ赤になる。

 

 

ーこのすばぁ~ー

 

 

事情を把握したカズマたちはゆんゆんと話をする。ちなみに、アクアとアカメはウィズが用意したお菓子を食べており、ウィズはカウンター席でちょむすけと戯れている。

 

「なるほど、そんな回りくどいことせず、うちに訪ねてくれればよかったのに」

 

「そ、そんな・・・いきなり人様の家に伺うなんて・・・」

 

「てな感じで、店の前でも煮え切らない様子で、店の中まで入ろうとしなかったのよ、こいつ」

 

「本当に煮え切らないですね。これだからぼっちは」

 

「え?そうなの?」

 

ゆんゆんがぼっちだと聞いて、カズマたちは驚きを隠せないでいた。

 

「ゆんゆんは自分の名前を恥ずかしがるような変わり者でして・・・学園ではだいたい1人でご飯を食べていました。その前をこれ見よがしにうろうろしてやると、それはもう嬉しそうに何度も挑戦してきて・・・」

 

「そ、そこまではひどくないわよ!友達だっていたもの!!」

 

ゆんゆんに友達がいる発言にめぐみんはありえないと言わんばかりの顔つきになっている。

 

「今、聞き捨てならないことを言いましたね。ゆんゆんに友達?」

 

「いるわよ!!私にだって友達くらい!!ふにふらさんとどどんこさんが私たち友達よねって言って私の奢りでご飯を食べに行ったり・・・」

 

「ゆんゆんそれ、友達じゃないよ・・・ただたかられてるだけだよ・・・」

 

「何よこいつ・・・ネガウサよりひどいじゃない・・・」

 

ゆんゆんはふにふらとどどんこといった紅魔族にたかられていることに気づいてないようで、双子はゆんゆんのあんまりな境遇に哀れに思う。それはカズマもアクアも同様である。

 

「で、爆裂魔法しか使えない私としては魔法勝負は避けたいところなのですが・・・」

 

「他の魔法も覚えなさいよね。スキルポイントだって溜まったはずでしょ?」

 

「溜まりましたよ。もれなく全て、爆裂魔法威力上昇や高速詠唱につぎ込もうと・・・」

 

「バカ!!どうしてそんなに爆裂魔法に拘るのよ!!」

 

(いいぞー、もっと言ってやれー)

 

爆裂魔法に拘るめぐみんにゆんゆんは怒り、ゆんゆんの指摘はカズマは大いに賛同している。

 

「勝負勝負って、同級生なのに殺伐としてるわねー」

 

「紅魔族同士なのにそれはよくないと私は思うんだけどね。私たちとミミィみたいにフレンドにならないと」

 

「ティアまでそんなことを・・・」

 

「お前、ミミィのこと忘れてたくせによく言うよな」

 

アクアとティアの発言にめぐみんは面倒そうな顔つきになっている。ミミィのことを忘れてたにもかかわらず発言するティアにカズマはジト目でティアを見つめる。

 

「そんなあんたたちに、いい魔道具があるわよ。仲良くなる水晶。オススメよ」

 

仲がいいのか悪いのかよくわからないめぐみんとゆんゆんにアカメは魔道具の1つである仲良くなる水晶をお勧めしている。

 

「ああそれ、熟練した魔法使いじゃないと、うまく使えないんですよ」

 

「うまく使えれば、仲良しになれるんですか!!?」

 

ウィズの発言にゆんゆんはめぐみんと仲良くなりたいのか、嬉々とした顔つきになっている。

 

「ええ、まぁ・・・」

 

「もちろんよ。絶対に仲良くなれるから、試してみなさいな」

 

アカメがにこやかな笑顔で勧めている辺りから、カズマは妙に怪しさがぷんぷんと感じている。それはめぐみんも同じだった。

 

「アカメがああいう顔する時は、大抵嫌な予感がするのですが・・・それに、仲良くなる必要なんて微塵もないのですが・・・」

 

「怖気づいたの?めぐみん」

 

「ああ?」

 

だがゆんゆんに挑発され、すぐに触発するめぐみん。

 

「つまりこれは、よりうまく扱えた方が格上の魔法使いだという証明!!」

 

 

ー勝負よ、めぐみん!!ー

 

 

ゆんゆんの挑発に乗っためぐみんは仲良しの水晶を使った勝負を受けることになった。使用方法は簡単、水晶に己の魔力を与えるだけ。

 

「そこまで言うのであれば、見せてあげますよ!真なる魔法使いの力を!!」

 

「今日こそ決着をつけるわよ!!」

 

めぐみんとゆんゆんは水晶に向かって己の魔力を与える。その魔力の膨大さは、カズマたちにも感じ取れる。

 

「すごい魔力値だ・・・めぐみんもゆんゆんもすごい!」

 

「さすがは、紅魔族と言ったところね」

 

「さあ水晶よ!!その力を示して!!」

 

「水晶の力が、発動しますよ」

 

めぐみんとゆんゆんの高い魔力によって、水晶は辺りに投影映像が現れ始めた。その数は尋常でない数でウィズでさえも見たことないほどである。

 

「こんなにも投影されたのは初めてです。2人ともすごい魔力です」

 

ウィズが感心していると、その投影映像を見たカズマたちは信じられない表情になった。

 

「なんだ・・・これ・・・?」

 

映し出された投影映像には学校の教室が写っていて・・・そこで学生時代のめぐみんが、こそこそとしながらパンの耳をこれでもかと袋に詰め込んでいる。

 

「あれ・・・パンの耳集めてるのか・・・?」

 

「ねぇ・・・ちょっと待って・・・」

 

アクアの見ていた映像には・・・学生時代のゆんゆんが誕生日パーティーでお祝いしている姿だった。・・・他は誰1人おらず、たった1人で・・・。

 

「1人・・・なの・・・?」

 

ひどい映像はこれだけではなかった。めぐみんの場合は畑の野菜をかっさらったり、川でザリガニを捕まえたり、セミを捕まえたりして、それらを妹と一緒に食べたりしていたのだ。

ゆんゆんの場合はたった1人でチェスを行ったり、犬と友達になろうとしたところ逃げられたり、あまつさえ花でさえ足で逃げ出したり・・・最終的には悪魔と友達になろうと悪魔召喚を行ったりと、それはもうひどい映像ばかりであった。

 

「架空の友達に奢るために・・・アルバイトしてるの・・・?」

 

「嘘でしょ・・・芋虫を・・・虫を食べてるってあんた・・・」

 

「「わああああああああああああ!!!!!」」

 

自身の黒歴史をカズマたちに見られてめぐみんとゆんゆんはあまりの恥ずかしさで絶叫する。

 

「いったい何ですかこれは!!??」

 

「店主さん!!仲良くなる水晶だって言いましたよね!!??」

 

2人の尤もな疑問にウィズはそれはもう気まずそうにしながら答える。

 

「これはお互いの恥ずかしい過去を晒しあうことでより友情や愛情が深くなるという大変徳の高いものなん・・・で・・・す・・・」

 

やっぱり問題のある商品だったようだ。説明したウィズでさえ後ろめたさを感じているし、推奨したアカメでさえ罪悪感で目を逸らすほどである。

 

「めぐみん!!ねぇめぐみん!!これで私たち仲良くなるの!!??」

 

めぐみんに泣きながらそう問いかけるゆんゆん。めぐみんは問いかけには答えず、水晶を手に持つ。

 

「ぬりゃああああああああああああああああ!!!!!!」

 

ガッシャ―――ン!!!!

 

『あああああああああ!!!』

 

黒歴史をこれ以上見られないようにするためめぐみんはその水晶を地面に叩きつけて壊したのであった。

 

 

ーこのすばぁ!!ー

 

 

壊れてしまった仲良くなる水晶をウィズは風呂敷に包み込ませる。

 

「これはカズマさんにつけておきますね」

 

今すぐ払うのではなく、ツケでもいいというのは、ウィズの優しさだろうが、カズマは納得いっていないようだ。

 

「待て、壊したのはめぐみんだろ。めぐみんにつけろよ」

 

「その水晶を使いたがっていたのはゆんゆんです。ゆんゆんが払います」

 

支払いをゆんゆんに押し付けようとしているめぐみん。そして、当のゆんゆんはというと・・・

 

「勝負が・・・せっかくの勝負が・・・」

 

黒歴史を見られたどころか、あまりにあんまりな結果にゆんゆんはひどく落ち込んでいる。

 

「いったいいつまでめそめそしているのですか?」

 

「だってこれじゃあどっちが勝ったかわからないじゃない!ねぇ、引き分けでいい?」

 

勝負は引き分けでいいかとゆんゆんがめぐみんに尋ねると、めぐみんはふっと小さく微笑む。

 

「別に構いませんよ。もう勝負ごとに拘るほど、子供でもないですから」

 

めぐみんの発言にゆんゆんはちょっと驚いていたが、すぐに強気になる。

 

「そういえば昔、発育勝負をしたことがあったわよね!子供じゃないっていうなら、またあの勝負をしていいわよ!!」

 

「子供じゃないというのは、別の意味での子供じゃないってことですよ」

 

「?」

 

ゆんゆんが首を傾げていると、めぐみんはここでの爆弾発言をする。

 

「だって、私はもう・・・ここにいるカズマと一緒にお風呂に入る仲ですから」

 

「ちょっ!!??」

 

「まあ!!」

 

「わお!カズマ、めぐみんとそこまでの関係に!」

 

「へぇ、中々にやるじゃない。見直したわ」

 

どうやら双子がウィズの店で寝泊まりしている間にもカズマとめぐみんは共に風呂に入っていたようだ。その事実にウィズは感心し、双子もカズマを称賛した。そして、ゆんゆんはきょとんとした後に・・・

 

「・・・ええええええええええええ!!!???」

 

顔を赤くして、今までにないくらいに驚愕の声を上げている。

 

「お前ふざけんな!!この口か!!この口がまた俺の悪評を広めるのか!!」

 

カズマは顔を赤くして爆弾発言をしためぐみんの頬を引っ張ってお仕置きをする。

 

「きょ・・・今日のところは私の負けにしといてあげるからぁ!!!うえーーーーーーーん!!!!」

 

ゆんゆんは顔を赤くしながら泣きだして、そんなことを言って店から飛び出していった。

 

「あ、せっかくの金づるが・・・」

 

「ゆんゆんまたねー」

 

「またどうぞー」

 

「賑やかな子ねー」

 

「お前もな・・・」

 

ゆんゆんを見送った後、めぐみんはゆんゆんとの勝負履歴のメモを取り出し、今回の勝負を記録した。勝負履歴には全部めぐみんの勝利で納めてある。

 

「・・・今日も勝ち!!」

 

めぐみんは顔を真っ赤にしながらも、勝利宣言をしたのであった。




女神アクアです。滞っていました経過報告です。

ヒキニートとして問題視されたカズマ氏ですが、清廉で屈強な冒険者となりました。セクハラや借金なんてもってのほかです。
私の目に狂いはありませんでした。そう、私はできる女神なのです。
大工の親方にも認められ、日給も上がりました。今では造花と牛乳パックの内職と合わせて暮らしていけるようになりました。
・・・いやパートタイマーとかじゃなくって!!

双子の反応

ティア「いや完全にパートタイマーでしょ・・・なんだよ、内職で暮らしていけるって・・・」

アカメ「あ、そうか。普段から言ってる女神はバイトの女神様ってことね」

アクア「ちっがうわよ!!水よ水!!水の神様よ!!そんな口を叩いてるとゴッドブローを・・・」

アカメ「百年早いわ」

アクア「ぎゃあああああああ!!!」

ティア「アクア、いい加減学習して・・・アクアじゃお姉ちゃんには勝てないって・・・」

次回、この迷宮の主に安らぎを!
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