空っぽの状態の屋敷にて、早いところ借金を返済しようと、カズマはウィズの店で出す商品開発を進めている。めぐみんとティアはちょむすけと戯れている。そんな3人から離れた場所で・・・
「へぇっくしょい!!」
「あらあら風邪ひいたの?気をつけなさいよ?」
「アカメさんこそ鼻声じゃない。早くこのマフラーを直してあげるわね」
「それ暖炉に入れて燃やしたの、お前だけどね」
アカメのマフラーを勝手に奪い取り、暖炉にくんだアクアはアカメのきついゲンコツを食らって、マフラーの修復作業を行っていた。アカメの顔は笑顔だが、心なしか目の奥は笑ってなかった。
ぐううぅぅ・・・
「あらあら、お腹すいたの?」
「そういえば、まだ朝ごはん食べてなかったわね」
「調子に乗って有り金全部を酒代に使ったの、お前だけどね」
アクアがやらかしたことに痛いことを言われてしまったアクアはぷるぷると肩を震わせて、泣きそうな顔で顔を振り返った。
「だって!!みんな楽しそうにしてたもの!!」
「・・・痛い目を合わせてもわからないような奴は・・・何度絶望させたって問題ないわよね・・・!」
せっかく手に入れたお金が全部パーになり、なおかつネクサスからもらった先代の団長のマフラーを燃やされてご立腹なアカメは右手にアクアが持っていたシュワシュワの酒瓶を持ってそう言った。
「それ・・・私がベッドの下に隠していた高級シュワシュワに見えるんだけど・・・」
「・・・いったいいつこれを仕入れたのかしらねぇ?そんな金があるなら、今すぐにでも借金に当てなさいな。それがないなら、こいつを質屋にでも売っ払ってきてやるわ・・・!」
いかにも本気な顔でそう言い放つアカメにアクアは絶望し、必死で泣きながら取り返そうとする。めぐみんとティアは関わらないようにちょむすけと戯れ、カズマも一旦は無視する。
「返して!!その子が最後の1本なの!!最後の希望なの!!」
「なーにが希望よ!!今の私たちには絶望しかないのよ!!こんな安っぽい希望なんて、今すぐに金に換えて来てやるわ!!それが嫌なら、今この場で飲んでやるわよ!!そうすれば少しはその冷えた体も温まるでしょうよ!!」
「やめて~!!私、その子を抱いてないと眠れないの~~!!!」
「知るかそんなもん!!だいたい、非常に徳が高い私のマフラーを燃やしておいてよく言えたわね!!ならあんたのその身に纏ってる羽衣をよこしなさい!!私の見立てだときっと百万はいくくらいの高級品だわ!!」
「何言ってるの⁉この羽衣は私の女神としてのアイデンティティなんだから売れるわけないじゃない!!バカなの?何バカ言っちゃってんの!!?」
酒瓶を取り返せないどころか、羽衣を奪われそうになり、必死に抵抗するアクアを見てアカメはすぐにスティールの構えを取る。
「スティ―――ル!!!」
アカメがスティールを発動し、アカメの手元には先ほどまでアクアが首に巻いていた羽衣があった。
「ああああああ!!!アカメ様~~!!調子に乗った私が悪かったから、やめてやめて~~~!!」
「うるさいバカ!!!私、前に言ったわよね?私はあんたの幸せそうにしてるのが気に入らないって!!あんたはそうやってただそこらでめそめそ泣いてるのがお似合いだわ!!!」
「うわああああああああ!!!」
いよいよ収拾がつかなくなりそうになった揉め事にカズマはそろそろ止めに入る。
「おいお前ら、もうその辺にしとけって。借金は減らないし、ダクネスももう1週間も帰ってこないんだぞ?アカメの言い分もわかるが、少しは緊張感を持ってくれ」
揉め事を仲裁しようとカズマがアカメを説得しようとした時・・・
「大変だカズマ!!!大変なんだ!!!」
部屋の扉が開き、誰かが入ってきた。その人物を見てみると、いかにも高級そうなハット帽子、高級そうなドレスを着込んでいる金髪の美しい女性だった。
「・・・どちら様?」
「!!くううううん!!!///」
「あれ?この反応・・・」
カズマが一言誰か尋ねると、女性はなぜか頬を赤らめ、若干興奮している。こんな反応をする人物はカズマたちが知る限り、たった1人しかいない。
「か、カズマ!!そういったプレイは後にしてくれ!!」
「お前、ダクネスか!!?帰って来たんだな!!心配させやがって!!」
そう、この女性はカズマたちの仲間である、ダクネスこと、ダスティネス・フォード・ララティーナである。ダクネスが帰ってきたことで、カズマたちは安堵する。するとアクアはダクネスに泣きついてきた。
「ダクネス~~~!!アカメが・・・アカメが~~!!私を無理やり脱がして、私の1番大事なものを売り飛ばそうと・・・」
「んな!!?」
「人聞きの悪いことを言わないでくれる?ただ身の程を教えてあげただけよ」
「そんなことより、アクアの言い方を訂正しようよ、お姉ちゃん・・・」
アクアのかなり問題ある言い方にダクネスは妙に反応し、アカメは悪びれた様子はない。ティアはそんな姉に呆れる。
「ダクネス、おかえりなさい」
「おお、めぐみん、ただいま。その猫は・・・」
「何があったのかは聞きません。まずはゆっくりとお風呂に入って・・・ゆっくり心と身体を癒してきてくださいね・・・うぅ・・・」
めぐみんはダクネスにそう言って、思いやりの涙を流す。ダクネスは何のことかわからないでいる。
「何を言っている?というか、アクアの言った特殊プレイの方が気に・・・」
いろいろ困惑しているダクネスをよそに、めぐみんだけでなく、アクアたちもダクネスを見て涙を流す。
「・・・間違いないわ・・・高級品よ・・・うぅ・・・」
「ダクネス・・・私たちを庇ったばっかりに・・・あいつに・・・うぅ・・・」
「苦労を掛けたな・・・うぅ・・・」
「何を勘違いしている!!?領主に弄ばれているとでも思ったのか!!?」
「無理しなくていいのよ、ダクネス・・・帰ってきてくれてよかったわ・・・。ほら、暖かい風呂にでも入って、泣いてきなさいな」
「違う!!領主も私相手にそこまで要求する度胸はない!!もしそうなってもクラリッサ様がそれを許すはずもないだろう!!」
完全にシリアスモードに入っているカズマたちにダクネスは勘違いであると伝えた。
「あ・・・そっか、カテジナも領主のとこに行ったんだっけ・・・」
「忘れてたわね・・・あ?じゃあ何で1週間も戻ってこなかったのよ?」
「そうだ!そこが問題だ!!カズマ、まずはこれを見てくれ!!」
「何だこれ?」
1週間も帰ってこなかった理由を話すため、ダクネスはまずは1枚の似顔絵をカズマに渡した。似顔絵に描かれているのは、絵を通していても清楚で爽やかそうなイケメンの男だ。
「おお、なんだこのイケメンは。死ねばいいのに」
ビリッ!!
カズマは似顔絵を見てムカついたのかすぐに真っ二つに引き裂いた。
「ああ!!?見合い写真に何をするんだ!!?見合いを断ることができなくなるだろうが!!」
「おお、手が無意識に・・・」
「・・・て、今すごい聞き捨てならないことを言ったよね?お見合いだって?」
ダクネスが放った見合いという言葉にティアが反応する。その後にカズマたちもそれに反応する。
「そうなのだ!!アルダープめ、小賢しい手を使ってきたのだ!言うことを聞くとは言ったものの、無体な要求をしてきた場合には我が父に蹴られ・・・というか、クラリッサ様に斬られるだろう。それがわかっていたからこそああ言ったのだが・・・」
「ちょ、待て待て!ちゃんと説明してくれ!このイケメンは誰なんだ?ていうか、望んでない相手と結婚なんて十分に無体な要求じゃないか。ていうか、立場上ではダスティネス家とカルヴァン家の方が上だろ?だったらカテジナさんやダクネスの父ちゃんに断ってもらえばいいだろ?見合い写真なら直してやるから。アクア、直してやってくれ」
「はいはーい」
アクアがのりやら米粒やらで見合い写真を直している間にダクネスはちゃんとした説明をする。
「見合い写真に写っているのはアルダープの息子だ」
「えっ!!?あの写真、あの領主の子供!!?」
「はあ?あのいかにも優良物件そうな奴があの豚の?噓でしょ?」
「信じられないのはわかるが真実だ。アルダープめ・・・お前たちの猶予への代償として、息子の見合いを申し出てきた。ここのところ帰ってこなかったのは、この見合いをどうにか阻止しようと頑張っていたのだ。クラリッサ様も私の父もアルダープはともかく、息子の方は高く評価していてな・・・というか、クラリッサ様も父もこのお見合いには乗り気でな・・・」
だいたいの事情を理解できたカズマたちは腕を組み、難しそうな顔になっている。
「あいつが誰かに高い評価を出すってのは相当なものよ?断るのは難しいわ」
「ていうか、カテジナもその場にいたんだよね?今どこにいるのさ?」
「クラリッサ様はアルダープに財産の提供の契約を果たした後、ご帰還なされた。だから、後の問題は父の説得なのだ。だが私1人では、どうにも・・・。頼む!私と一緒に来て、父を説得してくれないか!!?」
カテジナがアクセルから去った今、見合いを断る最大の障害はダクネスの父だけとなった。なのでダクネスは何とか説得するためにカズマたちを連れていくために帰って来たようだ。
「はい、直ったわよ。どう?完璧でしょ?」
「お前こういったことには本当に多芸だな・・・」
アクアは見合い写真を完璧に直したようで、それをカズマに渡す。その出来栄えは本当に新品と変わらないくらいだ。
「ありがとうアクア。危うく見合いを断ることができなくなるところだった」
「こういった才能はあるのに・・・どうしてこうも中身は残念なんだろうね」
「ちょっとー!どうしてそう残念そうな顔を見つめるの!!?神業なんだからもっと敬ってよ!!」
「女神と言い放つペテン師にいったい何を敬え・・・て、カズマ、どうしたのよ?」
アクアたちで会話をしている間、カズマが見合い写真を持って妙に黙っていることに気づいた一同はカズマを見つめる。
「・・・これだああああああああああああああ!!!!!」
ビリイイイイイイイ!!!!
「「「「「ああああああああああああ!!!??」」」」」
カズマは変に叫びをあげてお見合い写真を全力の力を以て引き裂いた。
ーカズマでぇーすー
屋敷の外に出て、カズマはダクネスに見合いを受けろと言い放った。それには当然ながらダクネスたちは異を唱えている。アクアは力作を破られてめそめそ泣いているが。
「見合いを受けろとはどういうことだ!!?」
「カズマ、わかってるの!!?このままじゃダクネスは寿退社だよ!!?」
「せっかくの玩具・・・じゃなく、仲間を見捨てる気?」
「そうですよ!!このままダクネスが冒険者をやめちゃっていいんですか!!?」
ぶっちゃけて言えば、そのダクネスの寿退社がカズマの狙いなのだが、そういえるわけもなく、嘘偽りもなく、それらしいことを言って誤魔化す。
「見合いを断ったところであの領主はより一層無理難題を吹っ掛けてくるに決まってる」
「あ、確かに・・・」
「それに、見合いが猶予の代償なのだろ?断ったら双子、死刑待ったなしかもしれないぞ?」
「うっ・・・それは・・・」
「困るわね・・・」
「だろ?だったら見合いは受けたうえで、それをぶち壊す。ダクネスの名が傷つかない程度にさ」
カズマの出した名案に、めぐみんたちは納得し、ダクネスはいい案だと思って笑みを浮かべている。
「それだ!それでいこう!うまくいけば見合いの話が持ち上がる度にいちいち父を張り倒さなくて済む!!」
「ダクネス・・・自分の父親を殴っちゃってるの・・・?」
(親父さん、かわいそうに・・・)
お見合いの話が上がる度に自分の父親を殴るということを暴露したダクネスにティアは若干引いており、カズマもダクネスの父親を哀れに思った。
「アカメとティア!!アカメとティアはいるかーーー!!!」
「え~・・・なんでまたこんな時に・・・」
なんとタイミングが悪いことか。方針を固めた直後にセナが騎士を引き連れてやってきた。
「はぁ・・・今度は何用で来たのよ?何回も私たちのとこまで来て・・・暇人なのかしら?」
「街の周囲に謎のモンスターが溢れている。お前たち、心当たりがあるのでは?」
「はあ?それこそ本当に知らないわよ。アホじゃないのあんた?」
「お姉ちゃん!言葉に気を付けて!検察官だよ!!?」
謎のモンスターが街の周囲に現れている原因が双子にあると睨んでるセナにアカメはわけがわからないと言わんばかりの態度をとる。アホ呼ばわりされたセナはこめかみをひくひくさせている。
「あのー、セナさん。私たち、本当に何も心当たりがないんですが・・・」
「・・・とにかく、すぐに出頭してもらおう」
原因を取り除くために自分たちと来いと言っているセナに、めぐみんがそれを拒む。
「お断りします。今、私たちの大切な仲間が危機にさらされているのです。それを放っておくわけにはいきません!」
「ちょ・・・手を出すのはやめて!私たちも危機にさらされちゃうから!」
めぐみんは杖を構えて抵抗する意思を示している。
(待てよ?アクアはアホだからどうとでもなる。双子は勘は鋭いが今の立場を利用すればどうにかなる。けどめぐみんは何にも縛られてないし、妙なところで頭が切れる。このお見合いには正直、いない方がいい・・・)
ダクネスのお見合いにめぐみんに自分の思惑に勘づかれたくないカズマはモンスターの一件をめぐみんに託すことに決めた。
「めぐみん、お前が行ってくれ」
「え?」
「大量のモンスターが相手なら、爆裂魔法の出番じゃないか。大丈夫・・・ダクネスのことは、俺たちに任せてくれ・・・」
「ですが・・・」
「お前にしか・・・できないことなんだ・・・(イケボ)」
「!!!私に・・・しか・・・!!」
カズマの放った言葉に、めぐみんはいい意味で衝撃が走る。バッチリとカズマの思惑にはまったようだ。
「頼んだぞ、最強のアークウィザード!!」
「ふっ・・・我が力、見せてあげましょう!!」
モンスターの一件を承諾しためぐみんはかなりご機嫌な様子でセナたちと共にモンスターの発生源へと向かっていった。めぐみんを見送った後は、ダクネスの実家であるダスティネス邸へと向かうのであった。
ーこのすば!!ー
アクセルの街の中央通りにダスティネス邸は存在している。この屋敷の客室で、ダクネスとカズマたちはダクネスの父親である、ダスティネス・フォード・イグニスと対面している。
「ほ、本当に・・・?本当にいいのかララティーナ?本当に、見合いを前向きに考えてくれるのか⁉」
「本当です、お父様。ララティーナは此度のお見合いを、受けようかと思いますわ」
「「「「ぷっ・・・ぷぷぷ・・・www」」」」
普段の振る舞いでなく、いかにもなお嬢様の振る舞いを行っているダクネスにカズマたちは本当におかしくて笑いをこらえるので必死である。
「ところでララティーナ、そちらの者たちは?」
「私の冒険仲間です。今回のお見合いの臨時の執事とメイドとして同伴させようかと・・・」
「・・・むぅ・・・だがそれは・・・」
カズマたちを執事とメイドとして同伴させることを何かと渋っている。そこへカズマが前に出る。
「初めまして。自分は日頃ララティーナお嬢様にお世話になっている冒険者サトウカズマと申します。この度、このお見合いが成功した暁には、身分の違い等から、ララティーナお嬢様にはもうお会いできなくなるでしょう。ならば最後に、無理を承知で傍に控えさせ、大切な仲間を任せられる相手かを拝見したく存じます」
カズマのこの態度にイグニスは結構評価され、同伴が許可された。が、カズマの豹変ぶりにアクアたちはぽかんとした様子である。
ーこのすば!ー
臨時の執事、メイドとして任されることになったカズマたちは応接室に連れられ、ここでメイド服を着替えることになった。さすがにカズマは隣の部屋で着替えることになったが。
「わあ・・・私、メイド服を着る機会ないと思ってたから、かなり新鮮!」
メイド服を着て、子供っぽくはしゃいでいるティアを見て、アカメはやれやれと肩をすくめる。
「サイズはいかがですか」
「うぅーん・・・強いてあげるなら、胸がちょっときついと・・・」
「!!??」
胸が少し成長したティアに何の成長もないアカメは鋭い目つきでティアを睨みつける。
「やっぱ胸辺りが成長してたのね。女神の曇りなき眼には誤魔化せないわよ」
「ああ、やっぱり?なんか下着もきつくなってきちゃって・・・」
「ぐぎぎぎ・・・!」
メイド服に着替えたアクアはティアの成長に気付いてたようでそんなことを言った。アカメの怒りゲージはただいま上昇中。
「それより、アクア、似合ってるよ」
「そういうティアも似合ってるわよ。アカメも背伸びしてるメイド見習いって感じでいいと思うわ」
「おっと面白いことを言ってくれるじゃない。ここが貴族の屋敷じゃなかったらあんた、今頃ぐちゃぐちゃの挽肉のミンチになってたところだわ。ねぇ、ララティーナお嬢様」
「ら、ララティーナお嬢様はやめろぉ!!!」
本名で呼ばれること、及び、お嬢様扱いされることを嫌がるダクネスはからかわれて若干涙目である。
「おい、着替え終わったのなら出て来てくれ。もうすぐ時間だぞ」
「もうちょっと待って。ダクネス、早く着替えて着替えて」
「わ、わかっている!もう少し待ってくれ!」
外で待っていたカズマに声をかけられ、ダクネスは今回のお見合いのためのドレスを着込み、化粧まで行って準備万端。全てが準備できたアクアたちは応接室から出る。外で待っていたカズマの恰好も執事の服装をしている。
「ほぉ、お前ら、中々似合ってるじゃないか。一流の使いっパシリみたいだ」
「それ褒めてないよね?それよりカズマ、大丈夫?どっかでドジやらかしそうな執事で怖いんだけど」
「今回に限っては大丈夫だって。俺に任せとけ。なあ、ララティーナお嬢様」
「だ、だから!!ララティーナお嬢様はやめろお!!」
カズマも揃ったところで、全員はお見合い相手を出迎えるために玄関へと向かっていく。
「手筈はわかっているな?頼んだぞ?」
ダクネスはお見合いを壊すつもりでいるようだが、カズマはそうでもない。それというのも、つい先ほどカズマはイグニスにこう頼まれていたのだ。娘が粗相をしないように助けてやってくれないかと。ダクネスを寿退社させるのが目的のカズマだが、見合いがうまくいけば報酬も支払われるのだから、否応にもやる気が出る。カズマがにやけているうちに玄関まで辿り着いた。そこにはイグニス、執事やメイドも勢ぞろいで見合い相手を待っていた。主役であるダクネスは前に出て、カズマたちは使用人たちに紛れて後ろに控える。
「お前が見合いを受けてくれて本当にうれしいよ。アルダープから話を持ちかけられた時には何事かと思ったが・・・。アルダープはともかく、息子のバルター殿は本当にいい男だ。幸せになるんだぞ、ララティーナ」
「嫌ですわお父様。ララティーナはお見合いを前向きに考えると言っただけです」
「何っ⁉」
「そして考えた結果、やはり嫁入りなどまだ早いとの結論に達しました」
にこやかに笑うイグニスたいして、ダクネスはきっぱりと言い切った。
「もう今更遅い!!見合いを受けはしたが、結婚するなどとは言ってはいない!!ぶち壊してやる・・・見合いなんて、ぶち壊してやるぞ!!!」
「ら、ララティーナ・・・!ま、まさかそこの4人も最初からそれが目的で・・・!!?」
いかにも悪党らしい笑いをしているダクネスにイグニスはまさかと思い、怯えた様子でカズマたちを見つめる。
「お嬢様、そのようなはしたない言葉遣いはおやめください。先方に嫌われてしまいますよ」
そんな時、カズマがそう口にして、場を鎮めた。その言葉にダクネスは顔をみるみるしかめ、イグニスは救いの神を見るかのような涙をこみ上げている。
「貴様裏切る気か!?」
「裏切るも何もありませんよ。今の自分はダスティネス家の臨時執事・・・お嬢様の幸せが、自分の幸せです」
「カズマ貴様ぁ・・・!!」
「おお・・・か、カズマ君と言ったね!この見合いが成功しなくてもいい!せめて・・・せめてララティーナが粗相をしないようにフォローをしてくれるだけでいい!報酬もたっぷり弾む!頼む!」
「お任せください、旦那様。全身全霊をもってこのカズマ、お嬢様を・・・」
ガチャリッ
カズマたちが話してるその時、玄関扉が開かれた。扉からお見合い写真に写っていた例の見合い相手の男が自分の使用人を引き連れてやってきた。
「おお、バルター殿・・・」
そう、この男こそが、あの憎きアルダープの息子であり、今回ダクネスの見合い相手であるアレクセイ・バーネス・バルターである。バルターを見るや否や、ダクネスが前に出てきた。
「よく来たな!貴様が私の見合い相手か!我が名はダスティネス・フォード・ララティーナ!貴様・・・」
ぐいっ!ずてーん!!
「お嬢様!!足元にお気をつけて!!!」
何かをやらかす前にカズマは地まで届いているダクネスのドレスを踏んづけて転ばし、何かを阻止した。
ーこのすば!!ー
転んだダクネスが怪我をしてないかという確認のためにカズマたちが一旦玄関から離れている間、イグニスがその時間を稼いでいる。その間場を離れたダクネスはカズマに詰問している。
「カズマ!!どういうつもりだ!!私の手助けをしてくれるのではなかったのか!!?」
「ダクネス落ち着いて落ち着いて・・・」
「家の名前に傷つけないっていう前提をすっかり忘れてるだろ?」
「悪評が立って嫁の行き先がなくなれば心置きなく冒険者稼業が続けられる!!勘当されるのは覚悟の上だ!!それでも必死に生きようと、無茶なクエストを受け続けた私は、力及ばず魔王軍の手先に捕えられて・・・私はそんな人生を送りたい!!!」
「このドM変態とうとう言い切ったわね・・・」
変な意味で前向きに開き直っているダクネスにカズマたちはかなり引き気味である。
「だいたい、あのような男は私の好みのタイプではないのだ」
「そんなダメな感じなのか?親父さんの話だと、結構いい人そうじゃないか」
「そういえば・・・街の連中が言ってたわね。あの豚の息子は本当に息子とは思えないほどの出来がいいって・・・。名前も確か・・・バルターで一致してたわね」
「アレクセイ・バーネス・バルターといえば、この街でも評判いいって話だよ?父と違ってウェーブ盗賊団にたいしても結構寛容的っていう噂も聞いたんだけど・・・」
「そうよね。どこが悪いのかしら?恵まれない人にも配給なんかもやってるみたいだし。私も何度か配給のお世話になったわよ」
「アクア、死刑」
「なぁんでよーー!!?」
皆に内緒で配給してもらったアクアに怒ったアカメはともかく、街の人のバルターの評価は見た目通りの好印象らしい。だがダクネスはかなり不満らしい。
「ダメだ!ダメだ!そんなものは我が父がやればいいだろ!私を嫁にしようという貴族がやることではない!!」
「はあ?どこが悪いのよ?あれ、裏で何か悪事を働くって感じではないわよ?噓つきの目は誤魔化せないからわかるわ」
「そうだな・・・まず人柄がものすごくいいらしい。誰にたいしても怒らず、努力家で、最年少で騎士に叙勲されたほどの剣の腕前を持つ」
「本当にどこが悪いの?全然いい相手じゃん。何が不満なの?」
「全部だ!!!貴族なら貴族らしく、常に下卑た顔を浮かべていろ!!あの曇りもない真っすぐな視線は何だ?もっとこう・・・よくカズマが私に向けてくる舐め回すような視線で見られないのか!!!」
「そそそそ、そんな視線で見てないしぃ!!??」
ダクネスが出した変態的な例を出して、カズマは激しく動揺している。
「誰にたいしても怒らない?バカが!!失敗したメイドにおしおきと評してあれこれやるのは、貴族のたしなみだろうが!!!」
「それカテジナが聞いたら多分ダクネス、絶対斬られると思うよ・・・」
いろいろと問題のある例を出すダクネス。とにもかくにも、バルターはダクネスの好みのタイプでないようだ。
「そもそも私の好みのタイプは、あのようなできる男とは正反対なのだ!!外見はぱっとせずに、体型はひょろくても太っていてもいい。私が一途に思っているのに、他の女に言い寄られれば、鼻の下を伸ばす意志の弱い奴がいいな。年中発情して、スケベそうなのも必須条件だ。できるだけ楽に人生を送りたいと人生なめてるダメな奴がいい。借金があれば申し分ないな。そして働きもせずに酒ばかり飲んで、俺がダメなのは世間が悪いと文句を言い、空の瓶を私に投げてこう言うのだ・・・『おいダクネス、そのいやらしい体を使って、ちょっと金を稼いで来い』・・・んにゃあああああ!!」
「・・・要するに、クズでダメ人間が好みってことじゃない・・・」
「それ人生で1番聞きたくなかったよ!!」
「ちくしょう!!この女はダメだ!!」
ダクネスの問題のある好みを聞いてカズマたちは度を越して引いている。このままじゃダメだと言わんばかりに。
「なんかこのお見合い、壊しちゃいけないような気がしてきたわ・・・。あの好みを聞けばなおさらよ・・・」
「私も・・・このままじゃダクネスはもっとダメな方向に行っちゃうかも・・・というか、あんな夢お父さんに話せるわけないじゃん・・・」
「確かに・・・私はダクネスには好きな人と結婚して幸せな道を選んでほしいけど・・・このままじゃまずい気がするわ」
「俺が言わずともわかってくれて嬉しいよ。いいかお前ら、ダクネスが相手に好かれるように、いろいろフォローするんだぞ?」
ダクネスがトリップしている間にカズマたちはひそひそと話し、お見合いを成功させようと決意した。アクアたちは最初はお見合いを壊すことが目的だったのだが、ダクネスの好みを聞いて、それはダメだと考えを改めてくれたようだ。ひそひそと話しているのを見たダクネスは全員に耳打ちをする。
「悪いことは言わない。やめておけ。さもなくばお前が死ぬほど後悔する事態になるぞ」
「何それ怖い」
警告のつもりだろうが、カズマには味方としてアカメがついているから別に怖くは感じなかった。というのも、パーティ内で力が1番強いのはアカメで、ダクネスは2番目で強いのだ。だからいざとなればアカメを引き合いに出すつもりだからだ。一通りの話が終わった後、カズマたちはバルターが待っているであろう客間に向かうのであった。
ーこのすば!ー
客間ではもうすでにバルターとイグニスが待っていた。ダクネスはバルターと向かい側の席に座り、カズマたちはダクネス側に控える。主役2名が揃ったところで、お見合いが始まる。
「では、自己紹介させていただきます。アレクセイ・バーネス・バルターです。アレクセイ家の長男で父の領地経営を手伝っております」
「私はダスティネス・フォード・ララティーナ。当家の細かい詳細は省きますわね。成り上がり者の息子でも、知っていてとうぜああああああああああ!!??」
自己紹介している最中にダクネスが突然奇声をあげた。その原因は両隣にいる双子が両足を痛みが感じるように強めに踏んでいるからだ。
「ど、どうされました!!?」
「い、いえ・・・バルター様のお顔を見ていたら気分が悪くううううううう!!?」
またいらないことを言いそうになったダクネスに双子は踏んでいた足に力を籠め、ぐりぐりと踏んづける。
「お嬢様はバルター様とお会いできて少々舞い上がっておられるのです」
「・・・そういえば、顔が赤いですね。いやぁ・・・お恥ずかしい・・・」
カズマがいいように誤魔化してくれたおかげか、何とか軌道修正できた。これ以上何か言わないようにアカメがダクネスの耳元で呟いた。
「おいお嬢様・・・それ以上余計なことを口走ったら、帰った時に後悔するような目に合わせるわよ・・・」
「ご・・・ご褒美だ・・・」
「ダクネス・・・お願いだから自重して・・・」
ダクネスはどこに行っても、ぶれないのである。
「はははは・・・私がいてはお邪魔かな?どうだね?庭の散歩をしてきては」
イグニスの案によって、ひとまずダスティネス邸の庭を散歩することになった。
ーこのすば!ー
ダスティネス邸の庭はやはり広かった。そんなダスティネス邸の庭でお見合いを続ける中、アクアは池の前に立ち、口笛を吹く。その瞬間、池にいた鯉がアクアの元まで集まってきた。
(何あれすごい!!後で教えてもらおう)
その様子を見ていたカズマは普通にアクアのこの芸当に感心していた。
「ご趣味は?」
「ゴブリン狩りを少々」
ゲシッ!バシッ!
またいらないことを言いだしたダクネスにアカメは容赦なく頭を叩き、ティアも膝を蹴り上げる。
「・・・メイドさんとは、ずいぶん仲がよろしいんですね」
「ええ。仲良しですよ。それはもう・・・バルター様以外の殿方など、一緒にいるなど御法度、言語道断。あそこの執事がいること自体も汚らわしい。何から何まで、このお見合いのためにお嬢様をサポートしてきた敏腕メイドですから」
「んなっ!!?アカメ!!貴様!!」
(なんかむかつく発言もあるがナイスだアカメ!!)
(お姉ちゃん、よくもまぁ、そんな堂々とした嘘を・・・でも今はそれが助かってるかも!)
ダクネスの将来を思って、アカメはカズマを遠ざけるような嘘を平気で述べた。それにはムカつきはしたがアカメを称賛するカズマ。
「・・・ぬあああああ!!いつまでもこんなことやっていられるか!!」
とうとう我慢の限界が来たのかダクネスはその場でドレスをビリビリと引き裂いて、動きやすくした。
「おい!バルターと言ったな!今から修練場に付き合ってもらおう!!そこでお前の素質を見定めてやる!!」
「おい!ダクネ・・・す・・・」
まずいと思ったカズマはダクネスを止めようとしたが、ダクネスの下着が見えそうで見えないような格好に鼻の下を伸ばし始めている。
「おい!貴族たるもの、常日頃からここにいるカズマのいやらしい目つきを見習うがいい!!」
「は?」
「いや、貴族全員がそうとは限らないでしょ⁉」
もう論点からずれているダクネスにカズマはわけわからん顔をし、ティアはツッコミを入れる。
「・・・ララティーナ様。僕は騎士です。女性に剣を向けるなど・・・」
バルターは特に驚いた様子はなく、淡々と、そしてなおかつ騎士らしい振る舞いを行った。が、やはりそれはダクネスのお気に召さなかったようだ。
「何という腑抜けな!!そこのカズマはなぁ!!」
「へ?」
「自称男女平等主義者で、女相手でもドロップキックを食らわせられると豪語してる男だぞ!!」
ダクネスのいらぬ発言によって、カズマはいたたまれなくなり、バルターから目を逸らす。バルターはカズマを見る。そして視線をダクネスに戻して告げた。
「・・・実は、ここにはあの父に押し付けられた見合いを、断るためにやってきたのです」
「「へ?」」
見合いを断るためにやってきたという点で双子は目が点になる。それは他のメンバーも同様だ。つまり、ダクネスたちが手をこまねく必要がなくても、すんなりとお見合いを見送ることができたのだ。少なくとも、今のダクネスを見なければ。
「でも・・・あなたを見て気が変わった。豪放にして、それでいて可愛い一面もある。それでいて、物事をハッキリ言える清々しさに・・・執事にたいしても接するその態度・・・僕はあなたに興味が湧いた」
問題点はともかく、ダクネスの性格に惹かれたバルターはダクネスの案を了承し、修練に付き合うことになった。
ーこのすば!ー
修練場にやってきて、修練が始まって30分後・・・
「もういいでしょう⁉なぜ諦めないのですかあなたは⁉」
結果は一目瞭然、バルターは無傷でダクネスはもうボロボロ。原因はやはりダクネスのノーコンにある。それでも立とうとする辺りはさすがではあるが。
「どうした!!遠慮などせずもっとどんどん来い!!徹底できる強さを見せろ!!」
どう見たってバルターが優勢なのではあるが、突然バルターは剣を構えるのをやめた。
「・・・参りました。技量では勝っていても、心の強さで負けました。これ以上あなたを打つことはできません。あなたは・・・とても強い人だ」
固い意志を示したダクネスに折れた、みたいな雰囲気だが、ダクネス自身は全くそんなこと考えていない。むしろ自分の欲望を優先させている。その内情を知っているカズマたちは全然感動できない。
「この腑抜けが!!ならば次はお前が来いカズマ!!お前の容赦のなさと外道さをバルターに教えてやれ!!」
「僕も見たいな。ララティーナ様が信頼を寄せる君がどんな戦いをするのか」
自分に振ってきたダクネスとバルターにカズマは何言ってんだこいつらはとは思ったが、ため息をこぼして、仕方なく了承する。
「どうせ見合いは失敗だしな。それに、あんたはお嬢様の悪い噂なんぞ流さないだろうし」
「よしいいぞカズマ!!実は1度お前とはやり合いたかったのだ!!さあ全力で・・・」
「クリエイト・ウォーター!!!」
「ええ!!?」
ダクネスが話をしている最中にカズマは容赦なしにクリエイト・ウォーターを放ち、ダクネスを水浸しにする。それには当然バルターは驚愕する。
「どうかしたか?」
「木刀の試合で魔法は使わないだろうと・・・」
「そういうものなのか?」
変にまじめなところがあるバルター。
「引くわー。さすがはセクハラにかけては並ぶものがないカズマさん・・・本当に引くわー・・・」
「そ、そんなつもりじゃあ・・・」
アクアたちにかなり引かれて、必死に弁明しようとするカズマだが、ダクネスに遮られる。
「見ろバルター!!この男のこういうところをちゃんと見ておけ!!」
「あああ!!もう!!全力で来いって言ったんだから全力で行かせてもらうぜ!!フリーズ!!!」
「にゃあああああああああ!!!」
カズマは顔を赤くしながらも容赦なくダクネスにフリーズを唱える。
「鬼だ!!真冬に水をかけるだけでなく、まさかの氷結魔法!!」
「まあ、伊達に世間でカスマだのクズマだのゲスマだのと言われてないわよ、こいつは」
「言っておくけど、お姉ちゃんもカズマと同類だってのを忘れないでね」
「あ?」
「は?」
カズマと同類というティアの発言にアカメは突っかかる。そしていつもの如く、互いに睨みあっている。その間にもダクネスの気分は向上している。
「ふ・・・ふははははは!!この容赦のなさが・・・実に・・・いいいいいいいいいい!!」
「おわあああああ!!?」
ダクネスは剣を捨て、そのまま取っ組み合いになる。もはや剣とは関係なしである。
「いいわーダクネス―!組み合えば貧弱なカズマとあなたじゃ勝負にならないわー!」
「こらカズマ!!今回あえてあんたに賭けてんだから持ち前のずる賢さでなんとか切り抜けなさい!!」
「お姉ちゃんのお金とアクアの羽衣を賭けたこの勝負、勝つのはどっちだー!!」
「人を使って勝手に賭け事やってんじゃねーよお前ら!!!」
カズマとダクネスで勝手に賭け事をやっているアカメとアクアにカズマは絶対後で痛い目を合わすと心に思っている。
「私に力で勝てる気か?舐められたものだ!!力比べではアカメには負けたが、クルセイダーの私と冒険者のお前では、力の差がにゃああああああ!!?」
取っ組み合いをしていると、急にダクネスの力が抜けている。これはカズマがドレインタッチを使用したからだ。
「げははははは!!俺が真正面からやりあうわけねえだろ!長い付き合いなんだから理解しろよいたあああああああああ!!?」
カズマがゲス顔をしている間にダクネスはドレインタッチで生命力を吸われながらもカズマの手首を捻る。
「ふ・・・ふふふ・・・ドレインタッチか・・・だが、私の体力を吸い尽くす前に、お前の腕をへし折ってやる!」
「ぬ・・・ぬぐぐぐ・・・やれるものならやっていててててて!!!」
ドレインタッチを行っていても、優勢なのはダクネスのままだ。そこでカズマはここで言葉巧みの策に出る。
「お、おい!今あいつらがやってるように、俺たちも1つ賭けをしないか?勝った方が相手に1つなんでも言うことを聞かせられるって条件で!」
「いいだろう・・・私が勝ったら貴様に土下座させてやる!」
賭け事に乗ったダクネスにカズマは勝機を見出した。
「本当だな?約束したぞ?俺が勝っても泣いてやめないからな!!」
「な、何を・・・する気だ・・・」
「お前が恥ずかしがって泣いて嫌がることだよははははは!!お前が必死に許しを請う姿が目に浮かぶぜ・・・。勘弁してください、許してくださいって言って謝らせてやる。おっと、気が早いぞこの欲しがりめ。お前が想像していることより、すごいことを命令してやるからなぁ!!」
カズマの言い出したことにダクネスは変な想像をして、顔を赤らめる。
「や、やめろぉ・・・て、抵抗しようにも、ドレインタッチで力を吸われてー・・・」
やっぱり欲しがりなダクネスは急にカズマに込めていた力をわざとどんどんと緩めていっている。
「こ、このままでは負けてしまうー・・・」
「気を失うまで体力を吸わせてもらう!!目が覚めた時、どんなすごい目に合うのか楽しみにしておくんだなぁ!!!」
「くっ・・・どんなすごい辱めを受けようとも、私の心までは屈しは・・・すごいこと!!?」
ここでダクネスはカズマの言うすごいことにひどく食いつき、変な妄想を膨らませて、頬がトマトのように真っ赤になる。
「かかかかか、カズマぁ!!!私が風呂に入った後の残り湯をどうする気だぁ!!!???」
「は?」
唐突に変なことを言いだすダクネスにカズマはきょとんとする。
「しゅ・・・しゅ・・・しゅごいことおおおおおおおおおおお!!!!!」
気分が最高潮にまで達したダクネスは気を失い、倒れた。どういうことかわからないでいたが、とにかくカズマの勝利で収まった。
「よっしゃ勝ったーーーーー!!羽衣ゲットおおおおおおおお!!!」
「うわあああああああ!!!許してください!!羽衣だけは!!羽衣だけはあああああああ!!!」
カズマが勝ったことでアカメはアクアの羽衣を無理やりゲットし、アクアは泣きながら羽衣はやめてと訴える。
「え、えっと・・・とりあえず勝ったー・・・」
「うわぁ・・・本当にクズ過ぎる勝ち方・・・」
「クズマとはよく言ったものだ・・・!」
「失礼な!!!」
クズ過ぎる勝ち方にティアは本当に引いており、バルターもカズマのクズさに驚愕しっぱなしだ。
ガシャンッ!!
唐突に修練場から何か瓶が割れるような音が聞こえてきた。入り口の方を見てみると、そこには笑顔のままで固まったイグニスがいた。足元には彼が落としたであろう酒瓶の破片が。
「「・・・あ・・・」」
固まった原因は一目瞭然。自分の娘のダクネスがもうあられもない姿で倒れているのを目撃したからだ。
「「「あいつらがやりました」」」
「よし、処刑しろ」
「「違うんです!!誤解なんです!!」」
カズマとバルターはこうなった経緯を話して、一生懸命誤解を解こうとする。
ーこのすばー。ー
なんとか誤解を解くことができた後はダクネスを応接室のソファで寝かせ、カズマたちはイグニスと話をする。
「娘はもともと人付き合いが苦手で、クルセイダーになっても1人きりでな・・・毎日エリス様の教会に通い詰め、冒険仲間ができますようにと祈っていたら、ある日初めて仲間ができた、盗賊の女の子と友達になったと喜んで帰って来たものだよ」
話に出てきたその盗賊の女の子というのが、クリスであるというのは、双子の中では何となく想像がつく。
「うちは家内を早くになくして、男手で甘やかしながらもとにかく自由に育ててきた。それが、悪かったんだろうなぁ・・・」
イグニスが言っているのは恐らくはダクネスの性癖なのだろう。イグニスは自由に育てすぎたから束縛されたがってると思ってるだろうが、あれは真性である。
「ララティーナ様は素晴らしい女性だと思いますよ。カズマ君がいなければ、僕は本気で妻にもらいたいと思っています」
「すいません、ちょっと何言ってるかわかんないです」
「いいんだ。君の方がララティーナ様を幸せにできるだろう」
「お前ちょっと表に出ろ。領主の息子だろうと関係あるか!!」
「ちょ・・・こらこのクズ!!やめなさい!!」
「そうだよ!!私たちの死刑が早まっちゃう!!」
「そうよ!!私まで死刑にあうのは嫌よ!!」
バルターの発言にムカついたのかカズマは喧嘩を吹っ掛けたがアクアたちに止められる。賑やかそうなカズマたちの様子を見て、イグニスは面白く笑う。
「ははははは。カズマ君、これからも娘をよろしく頼むよ。これがバカなことをやらかさないよう、見張ってくれ。頼む」
「え?あ・・・は、はあ・・・」
イグニスはカズマに軽く頭を下げ、そう頼んだ。カズマは曖昧ながらもそれには承諾した。
「う、うう・・・ん・・・」
「おお・・・目が覚めたか・・・」
話し込んでいる間にもダクネスは目が覚めた。
「・・・今のこの状況は事後なのか・・・?は!!?意識を失ってる間にいかがわしいことを・・・!!」
「してねぇよ!!まだ何もしてねえよ!!!お前が寝てた間に今微妙な空気になってんだよ!!」
意識がはっきりしてきて、今の状況を確認したダクネス。するとダクネスはふひっと笑う。
「お父様・・・バルター様・・・どうか今回の見合いはなかったことにしてください。今まで、隠してきましたが、私のお腹には、カズマの子が・・・」
「おおおおおおおい!!!???童貞の俺に何言ってんだこらあああああああああ!!!」
ダクネスのこの場で問題のある発言にカズマは激しく動揺している。当然ながらこれはダクネスの嘘である。嘘だとわかっているバルターは動揺せず、笑っている。
「ははははは!そうか・・・。お腹にカズマ君の子が。父には僕がお断りしたと言っておきます。その方が、彼女らにとっては都合がいいでしょうから」
「「え・・・」」
バルターの発言に双子は目を丸くしている。バルターは双子に視線を向けて、ウィンクしてみせた後、応接室から退室し、ダスティネス邸から去っていった。
「あの人・・・もしかして、私たちの身分を気づいてた?」
「あの発言だもの。間違いないでしょう。多分・・・私たちが盗賊団であることも・・・」
「それを知ったうえでも見逃して・・・?」
「あのお人好しさ加減からして、間違いないでしょうね」
「本当にいい人だ・・・領主とは大違いだよ・・・」
盗賊団員だと知っていても、見逃せるほどの人の好さにティアは本当に感動している。
「それよりこれ、どうにかならないかしら?」
「え?」
視点をダクネスたちに戻してみると・・・
「孫・・・初孫・・・こ、このワシに・・・初孫が・・・!!!」
「あわわ・・・2人がそんな関係になっていたなんて・・・!!」
「なんでお前まで信じてんだよ!!!???」
「うわぁ・・・カオスだ・・・」
イグニスは自分に初孫ができたとうれし涙を流しており、アクアは慌てふためておろおろしている。とにもかくにもカズマたちは何とか説明し、20分かけてようやく嘘だとわかってもらえた。その際にイグニスは結構残念そうにしていたが。ちょうど説得を終えた時に・・・
「アカメとティア!!アカメとティアはいるかーーー!!!」
「えー・・・またぁ・・・?」
セナがこの応接室に駆け込んできた。セナの隣にはめぐみんもいた。
「今度は何よ?モンスター駆除が終わったの?」
アカメのうんざりした問いかけにめぐみんは少し言いづらそうにしながらも答える。
「それがですね・・・モンスターの発生元は昨日探索したキールダンジョンでして・・・」
「はあ?」
「キールダンジョンから?」
「そして、ギルドの職員から話を聞いたところ、あそこを最後に入ったのはお前たちだと聞いたぞ。やはり心当たりがあるのでは?」
キールダンジョンからモンスターが溢れかえってることから、最後にダンジョンに入ったカズマたちが怪しいとセナは睨んでいるようだ。
「あのですね、セナさん。さすがに言わせてもらいますけど、それはギルドでの話でしょ?ギルドの人以外の奴が入ったって可能性は考えなかったのでしょうか?」
「うっ・・・それは・・・」
ティアに痛いところを突かれてしまったセナは何も言い返せず、口ごもっている。
「・・・でも念のために聞いておきますけども・・・カズマ、何もしてないよね?」
「俺がやったと言えば宝を持ち帰っただけだ!それはお前らも知ってるだろ⁉」
「私も同じよ。というか、私もあんたもカズマと一緒にいたでしょうが」
「めぐみんは?」
「私も爆裂魔法関連でなければ、心当たりはありませんよ」
「私も同様だ。日頃から問題は起こしていないはずだ」
「で、アクアは?」
「もちろんないわよ!いくら何でも私を疑いすぎでしょ!あのダンジョンに関しては、私のおかげでモンスターは寄り付かないはずよ?」
「・・・私の・・・おかげ・・・?」
ティアが1人1人心当たりがないか聞いていると、アクアの言葉だけ何かと引っかかる。
「アクア、ちょっと来て」
「?」
ティアはセナに聞こえないように少しだけ場所を離れる。
「はい、続けて」
「でねでね!リッチーがいた部屋に作った魔方陣は本気も本気!!今もしっかり残ってて、邪悪な存在は入り込めないはずよ!!」
「・・・今なんて言った?」
「な、何よ急に?言った通りよ。あそこには私が作った本気の魔法陣が残ってて、今もモンスターを寄せ付けないように・・・」
「こーーーのーーー・・・アホがああああああああああああ!!!!」
原因が自分たちでないにしろ、魔方陣自体が残ってるというのは問題だ。それを重々理解しているからこそ、アクアの行動には頭を抱えるしかないティアであった。
前略、敬愛するお父様。
私はもう、大切な肉親を殴りたくないのです。
ご存知ですか?愛の鞭とは叩かれるより叩く方が痛いのです。主に心が。
だからどうか、今しばらく、騎士として生きることをお許しくださいませ。
あなたの娘、ララティーナより。
これをこっそり見たカズマの心情
(そう思うなら殴るなよ・・・本当、かわいそうな親父さん・・・)
次回、この仮面の騎士に隷属を!