このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

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登場人物欄にキャラクター追加いたしました。


この仮面の騎士に隷属を!

アクアがやらかしてしまった問題を解決するために、カズマたちは例のモンスターが現れたというキールのダンジョンへとセナと共に向かっている。

 

「う・・・うう・・・私のせいじゃないはずなのに・・・」

 

「あんたのせいじゃないにしろ、余計なことするからよ」

 

「そうだよ。私たちの屋敷の幽霊騒ぎだって、アクアのせいなんだからね」

 

「お前はあれか?活躍の差し引きをマイナスにしないとどうにかなる病気なのか?」

 

モンスター騒ぎは自分たちではないにしろ、キールのダンジョンに魔法陣を張った張本人であるアクアの頭にはこれでもかっていうほどのたんこぶができている。全ての原因を知ったアカメがキレて何度も何度もげんこつしたからできたものである。

 

「はあ・・・何とか誤魔化せたが、魔法陣をなんとか消さないと・・・」

 

魔法陣が残っているのをセナたちに見られでもしたら何かと理由をつけてまた双子が逮捕される可能性がある。そんなことになれば、双子に気を使っているウィズに申し訳が立たない。だからこそカズマは何とかしたいと思ってる。ため息を吐いている間にもキールのダンジョンにたどり着いた。キールのダンジョンにはやたらと小さく、直立して歩いている人形サイズの人型の仮面のモンスターが何体も歩き回っている。

 

「おぉ・・・確かに・・・謎のモンスターだ・・・」

 

「こんなモンスター、今まで見たことないなぁ・・・」

 

「というかこいつら、本当にモンスターかしら?」

 

そのモンスターの存在は誰も見たことがない種類らしく、メンバーの中でも冒険者歴が長い双子もその存在を珍しがっている。

 

「サトウさん」

 

「サトウです」

 

「協力感謝します。どうやら何者かがモンスターを召喚しているようなのです。ですから術者を倒し、召喚の魔法陣にこれを張ってください」

 

「何よこれ?」

 

「あ、おい!勝手に取るな!」

 

カズマがセナに何かを渡そうとした時、アカメがそれを勝手に取り上げる。取り上げたそれは何やら札のようなものだった。

 

「それは強力な封印の札です。それを張り付ければどんなに強力な魔法陣でも即座に使えなくなるでしょう。術者を倒してもモンスターを呼び続ける物がありますので、どうぞそれを持って行ってください」

 

どうやら取り上げた札は強力な封印の魔法を施した札らしい。

 

「あの、そんなことせずとも、めぐみんの爆裂魔法でダンジョンの入り口を爆破して、入り口を封鎖させた方がよいのではないでしょうか?」

 

「む?出番ですか?任されました!!」

 

ティアの言葉にめぐみんはダンジョンの入り口で爆裂魔法を放とうとするが、セナに止められる。

 

「そ、それはいけません!!原因の究明をお願いします!!ダンジョンを封鎖したところで、テレポートを使える相手ならば逃げられてしまいます!!これだけのことをした相手なのですから、どうか、お願いします」

 

「確かにな・・・うーん・・・面倒な・・・」

 

カズマが悩んでいる間にも、アクアは小さな人形に向かって石を投げつけようとしている。

 

「私、あの人形の仮面が生理的に受け付けられないわ・・・。なぜかしら・・・。どうにもむかむかしてくるんですけど・・・」

 

そんなアクアを見つけた人形はとてとてとアクアに近づき、アクアの足に引っ付いてきた。

 

「え・・・ちょ・・・何・・・?何かしら・・・?甘えてるのかしら・・・?見てるとムカムカしてくる仮面だけど・・・なんだかかわいく見えて・・・」

 

アクアがだんだんと人形に心を許し始めたその時・・・

 

ドガアアアアアン!!!

 

突如として人形は怪しく輝きだして、そしてその場で自爆してアクアを巻き込んで爆発してしまった。

 

「ご覧の通り、このモンスターは相手に取り付き自爆するという習性を持っていまして・・・」

 

「なるほど、厄介なモンスターですね」

 

「なんでそんなに冷静そうなのよー!!」

 

「「ざまあ」」

 

爆発に巻き込まれたアクアを放置し、話を進めるカズマたち。するとダクネスは人形に近づいていく。当然気づいた人形はダクネスに引っ付き・・・

 

ドカアアアン!

 

「・・・ふむ。こんなものか」

 

自爆したのだがさすがはクルセイダー・・・傷1つついていなかった。

 

「私が露払いのために前に出よう。カズマは私の後ろについてこい」

 

「お、おう」

 

「まぁ・・・容疑者の私たちも、行かないわけにはいかないわね」

 

「うん。ダクネスはこのダンジョンは初めてだし、サポートしなきゃ!」

 

このキールのダンジョンに入るのは現段階ではダクネス、カズマ、双子の4人、そしてセナが連れてきた冒険者一同になる。

 

「カズマカズマ、私は足手まといになりますし、ここで待機してますね」

 

「それじゃあ私もここで・・・」

 

「おい!お前も来るんだよ!!サボってんじゃねぇ!!」

 

さりげなくサボろうとするアクアにカズマも行くように指示すると、途端にアクアは震えだす。

 

「い・・・いやあ!!もうダンジョンは嫌なの!!ダンジョンに入るときっとまた置いてかれるわ!!ダンジョンは嫌・・・嫌ぁ・・・」

 

「うわぁ・・・わっかりやすい拒絶反応・・・」

 

「はぁ・・・何トラウマになってるのやら・・・」

 

どうやらアクアはダンジョンに取り残されたことがトラウマになってしまい、わかりやすく恐怖で震えている。

 

「と、なるとダンジョンに入るのは俺と双子、ダクネスの4人か・・・」

 

「む・・・2人きりじゃないのか・・・そっちの方が身の危険を感じるのでそっちがよかったのだが・・・」

 

「・・・お前もダンジョンに置いていって、アクアと同じトラウマを植え付けてやってもいいんだからな?」

 

明らかに性欲を優先しており、非常に残念がっているダクネスにカズマは冷めた顔でそんなことを言いだした。とにもかくにも、ダンジョンに入るメンバーが決まり、人形の発生源の調査を行うのであった。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

『調査クエスト!!

キールダンジョンの異変を調査せよ!!』

 

ダンジョンの中は以前とは違い、主がいるかのように明かりがともっている。これで暗闇で迷うことなく進むことができる。中には当然、外にいた同じ人形たちが待ちかまえていた。

 

「ふふ・・・ははははは!!!当たる!!当たるぞ!!カズマ見ろ!!こいつらは私の剣でもちゃんと当たる!!もうノーコンとは言わせないぞ!!」

 

「すごくうれしそうだな・・・」

 

人形たちは自分たちから当たりに行こうとするため、当然ながらダクネスの剣はヒットする。そしてダクネスは非常に嬉しそうにしながら人形たちに剣を振るう。

 

「それ!バインド!こいつらすごいね・・・バインドの縄だけでも爆破・・・あ!お姉ちゃん見てみて!私、レベル上がった!!こいつら経験値ちゃんとあるよ!!」

 

「何よ・・・カスみたいな経験値量じゃない・・・それで喜ばれても・・・ね!!」

 

ティアは多少ながらも経験値が上がり、レベルアップしたことに嬉しそうにしており、アカメは呆れながらも人形たちを投げナイフで潰していく。

 

(しかし、こいつらも一緒だと、アクアの魔法陣もすぐには消せないな・・・)

 

カズマだけでなく、他の冒険者もいるため、見られずに魔法陣を消すことは不可能と考え、どうしたもんかと悩むカズマ。

 

「おい、ちょっと待ってくれ。もっとゆっくり・・・うわあ!!?張り付かれたあ!!!誰かこいつを剥がしてくれぇ!!!」

 

「来るなぁ!!こっち来るなぁ!!おわあああ!!!」

 

だがそんな悩みを吹っ飛ばすかのように、冒険者たちは人形たちにとり囲まれ、悪戦苦闘している。この場で自由に動けそうなのはカズマたち4人だけだ。

 

「よしダクネス!!そのまま進めぇ!!」

 

「任せろ!!ああ・・・なんだこの高揚感は!!初めてクルセイダーとして、まともに活躍してる気がする!!」

 

実は結構活躍できてないことを気にしていたダクネスは激しい高揚感を抑えられず、嬉々とした表情をしながら人形たちを薙ぎ払い、前に進む。3人はそんなダクネスの後ろについていくのだった。

 

 

ーこのすばーーーーーーー!!!!ー

 

 

冒険者たちを置いていき、人形たちを薙ぎ払いながら奥へ進み、とうとうキールがいた部屋の前までやってきたのだが・・・やはり魔方陣を消すのは一筋縄ではいかぬようだ。

 

「・・・どう見たって、人形を作った【ピーッ】野郎はあいつよね・・・」

 

「しかもやばいよ・・・あいつの反応・・・魔王軍幹部クラス並みなんだけど・・・」

 

「げっ⁉マジか⁉どうしたもんかなぁ・・・」

 

キールの部屋の前には、このダンジョンの土で人形を作っている人物がいた。どう見てもこの騒動の原因は、タキシードを着込んでいて、顔に仮面をつけた男の仕業だ。この男がいる限り、キールの部屋には入れそうにない。どうするか考えていると、ダクネスが前に出た。

 

「おい貴様、ここで何をしている?その人形を作っているということは、この元凶はお前で間違いないな?」

 

仮面の男はダクネスの問いかけにようやくカズマたちの存在に気が付き、仮面の目を光らせ、口元が笑みでゆがめる。

 

「ほぅ・・・よもやここまで辿り着くとは・・・我がダンジョンへようこそ冒険者よ!吾輩こそが、諸悪の根源にして元凶、魔王軍の幹部にして、悪魔を率いる地獄の公爵・・・この世の全てを見通す大悪魔・・・バニルである」

 

「・・・本物の魔王軍来ちゃったーーー!!??」

 

どうやらこのタキシードの男・・・いや、悪魔、バニルは本当に魔王軍の幹部らしく、思わぬ大物に驚愕するティア。

 

『緊急クエスト発生!!

大悪魔バニルを討伐せよ!!』

 

「おい!!マジもんでやばいぞ!逃げるぞ!!」

 

「女神エリスに仕える者が、悪魔を前にして引き下がれるか!!」

 

「これだから堅物エリス教徒は!!だから宗教は嫌いなのよ!!」

 

カズマは逃げようと提案するが、堅物のダクネスに拒まれる。そんなダクネスの堅物にアカメはイラつきを見せる。

 

「ほう・・・魔王より強いかもしれないバニルさんと評判の吾輩を倒すと?しかし何をカッカしているのだ?そこの小僧に風呂場で裸を見られ、己の割れた腹筋を見られてないか心配する娘よ」

 

「ダクネス・・・筋トレは大概にしろってあれほど言ったのに・・・」

 

「やっぱあんたは筋肉女だったのね」

 

「ち、違う!!奴の言った事は嘘っぱちだ!!くそ!!ふざけるな、魔王の手先の悪魔め!!!」

 

バニルが放った言葉にダクネスを哀れそうに見る双子。バニルの言葉に激しく動揺するダクネス。

 

「まぁ落ち着くがよい。魔王軍の幹部とは言っても、城の結界を維持してるだけの、いわばなんちゃって幹部でな。魔王の奴にベルディアの件で調査を頼まれたのだ」

 

(あー・・・)

 

バニルの放った言葉にカズマは青ざめた。ベルディアを倒したのは自分たちなのだから無関係なわけがない。

 

「ついでにアクセルの街に住むという、働けば働くほど貧乏になるという不思議な特技を持つポンコツ店主に用があって来たのだ」

 

「ポンコツ店主?それってウィズのことかしら?」

 

「言わずもがなだ。ポンコツ店主に深い好意を持ち、常に母親であってもらいたいと願う双子の姉よ」

 

「は、はあ!!!???あんた急に何を言い出すのよ!!!???そんなこと考えてるわけないでしょ!!!???」

 

バニルに自分の願望を言い当てられ、激しく動揺を示している。

 

「お、お姉ちゃん・・・まさかそんなことを考えていたなんて・・・」

 

「あんたらも真に受けるのはやめなさい!!この悪魔ふざけんな!!今すぐぶっ殺してやる!!」

 

まさかの願望を聞いて、意外そうな顔をしているカズマたちに怒鳴りながらも怒りをバニルに向ける。しかしバニルはどこ吹く風のような態度だ。

 

「そして、吾輩は世間でいうところの悪魔族・・・悪魔の最高のご飯は汝ら人間から発する嫌だなと思う悪感情だ。汝ら人間はおいしいご飯製造機であり、それを壊そうなぞナンセンスだ。むしろ汝ら人間が1人生まれるたび、我は喜び庭駆けまわるだろう!!」

 

「でも悪感情を欲するってことは、人に危害を加えるってことじゃないの?悪魔って血も涙もない存在だってお頭から聞いたんだけど・・・」

 

「人聞き・・・いや悪魔聞きの悪いことを言うでない。家族に飢え、家族の匂いを堪能したいがため、よなよな姉のマフラーをクンカクンカしていた双子の妹よ」

 

「やややや、やってないやってない!!!そんなこと全然やってない!!!」

 

バニルに自分の性癖を暴露され、ティアは顔を真っ赤にして否定している。

 

「あんた・・・まさかそんな性癖があったなんて・・・」

 

「誤解だよ!!私はそんなカズマみたいな変態なんかじゃない!!!」

 

「おい!!!!」

 

ティアのまさかの性癖にアカメには本気で引かれてしまい、否定しながらももうこんなことはやめようと心から誓うティア。

 

「悪感情と言ってもピンキリであるからな。そこは悪魔によって好みは変わる。人の恐怖や絶望を好む奴もいれば、絶世の美女に化けて男に近づき、散々惚れさせた後で、『残念!!実は吾輩でした!!』と言って相手に血の涙を流させるのが好きな吾輩のような悪魔もいる」

 

「こいつ退治された方がいいんじゃないか?」

 

悪感情を得るために非常にあくどいことをやろうとする悪魔の例えにカズマは倒された方がよいのではと思った。

 

「でもそれだったらその人形は何なんだよ?このダンジョンからその人形がぽこぽこ出てきて、その人間が難儀してるんだが?言ってることとやってることが違うじゃないか」

 

「何と。このバニル人形を使い、ただダンジョン内のモンスターを駆除していただけなのだが・・・ふむ・・・外にあふれ出してるということは、ダンジョン内にもうモンスターはおらんのだな。ならば、次の計画に移行するとしよう」

 

カズマの言葉によって、ダンジョン内にモンスターはいないとわかったバニルは用済みだと言わんばかりにバニル人形を土に戻す。それよりもカズマはバニルの計画というのが気になる。

 

「何を企んでるんだ?」

 

「企むとは失敬な。そこの双子共と鎧娘が数日帰ってこなかっただけで自室をくまなくうろうろして内心心配していた小僧よ」

 

「おいやめろよ!!何で見て来たみたいに言うんだよ!!?」

 

バニルが発した言葉にカズマはかなり動揺している。カズマの本音にアカメは頬を赤らめて困ったような顔をして頭をかき、ティアとダクネスは同じく頬を赤らめてもじもじしている。

 

「お前らももじもじするのはやめろ!!」

 

カズマの心情は放っておいて、バニルは自身が考えた計画についてを話した。

 

「限りなく永く存在した吾輩にはな、とびきりの破滅願望があるのだ。まずダンジョンを手に入れる。各部屋には悪魔たちを待機させ、罠を仕掛ける。挑むのは、歴戦の凄腕冒険者たち。やがて、苛烈な試練を潜り抜け、勇敢なる冒険者たちが最奥の部屋にたどり着く!待ち受けるのはもちろん吾輩!そして吾輩はこういうのだ!『よく来たな冒険者よ!さあ我を倒し、莫大な富をその手にせよ!』とな!ついに始まる最後の戦い!激戦の末、打ち倒された吾輩の背後には、封印されし宝箱が現れる!苦難を乗り越えた冒険者がそれを開くと、中には・・・『スカ』と書かれた紙切れが。それを見て呆然とする冒険者を見ながら・・・吾輩は滅びたい・・・」

 

「やっぱこいつぶち殺した方がいいんじゃない?」

 

「ひどすぎる・・・悪感情を得るのにそこまでするの・・・?」

 

あまりに冒険者たちが悲惨すぎる目に合う膨大な計画にバニルは危険なんじゃないかと抱く双子。それはカズマたちも同じだ。

 

「その計画を実行するために、友人の店で金を溜め、巨大ダンジョンを作ってもらうつもりだったのだが・・・偶然ここを通りかかり、主がいないようだったのでもうこのダンジョンでいいかなーっと」

 

「はぁ・・・そう言うことなら何も言わないよ。ウィズの友人みたいだし、その後ろにある部屋の魔法陣を私たちに消させてくれたら見逃してあげるよ」

 

「なっ!!?おいティア!!目の前に魔王軍の手先がいるのだぞ!!?それを見逃すというのか!!?」

 

「そうだよ。私たちでこんな相手をどうしろっていうのさ?」

 

「いいから黙ってなさいこの堅物色ボケドMド変態女」

 

「ド・・・変・・・!!!あふぅ・・・!!」

 

ティアはバニルを見逃すと言い張ってるがダクネスはそれを反対している。が、アカメの毒舌でダクネスを興奮させて、黙らせた。

 

「魔法陣?吾輩の後ろにある部屋に張ってある魔法陣の事か?それはそれはどうもご親切なことで。あの忌々しい魔法陣のせいで中に入れないのだ。それを消してくれるとはありがたい。礼と言っては何だが、吾輩手製の夜中に笑うバニル人形を進呈しよう」

 

「いらないわよそんなクソ人形。というか、さっさとそこをどきなさいよ。その後ろにある魔法陣があるだけで、こっちにとってはかなり不都合なのよ」

 

「バカ!!お前余計なことを・・・!!」

 

アカメの発した言葉にバニルは首を傾げ、不思議そうにしている。

 

「おかしなことを言う人間だ。後ろにある魔法陣があるだけで、なぜ汝らにとって不都合なのだ?どれどれ・・・ちょっと拝見・・・」

 

バニルは自身の能力を使い、アカメたちの過去を覗き込んだ。

 

「・・・フハハッ・・・」

 

その過去を見たバニルは乾いた笑い声を高らかに上げる。

 

「フハハハハハハハハハハ!!!なんということだ!!貴様らの仲間のアークプリーストがこのはた迷惑な魔法陣を作ってくれおったのか!!この大悪魔である吾輩すら入れぬ魔方陣を作り上げるとは!!そのプリーストはよもや・・・」

 

バニルは笑ってはいるが、明らかに怒っている様子だ。

 

「見える・・・見えるぞ・・・!プリーストが茶を飲んでくつろいでいる姿が見えるわ!!」

 

「はあ!!??何やってんのアクア!!!!」

 

「あいつ帰ったら死刑!!千本ノックの刑よ!!」

 

バニルの発した言葉に双子はアクアをただでは済まさないと言った怒りを示している。

 

「その男との賭けに負け、すんごい要求とやらが気になり、先ほどからいろいろと持て余し、期待し、ずっともじもじしている娘よ!」

 

「持て余してもいないしもじもじもしていない!!適当なことを言うな!!い、い、い、言うなあああ!!!」

 

「この件が終わったらその鎧娘にどんな要求をしようかそわそわしている小僧よ!」

 

「そ、そわそわしてねぇし!!?してねぇし!!!」

 

「そして!どうせクズな要求をするくらいなら、自分たちにその役目を変わってほしいとずっとモヤモヤしている双子共よ!」

 

「「も、モヤモヤしてないし!!適当なことを言うなクソ悪魔!!!」」

 

バニルに自分の内心を言い当てられ、激しく動揺しているカズマたち。バニルは構わず話を進める。

 

「そこを通してもらおうか!!なぁーに、人間は殺さぬのが鉄則の吾輩だ・・・ああ人間は殺さんとも・・・人間(・・)はな・・・。こんな迷惑な魔法陣を作りおってからに!!地上に出て一発きついのを食らわしてくれるわ!!!」

 

人間を激しく強調しているところから察するに、バニルはアクアが女神であるということに気が付いている。標的がアクアであると気が付いたダクネスたちは前に出る。

 

「アクアに何かしようって言うのなら話は別!許さないよ!」

 

「ああ。アクアに危害を加えるつもりなら、なおさら引くわけにはいかない!!」

 

「アクアにお仕置きするのは私の役目よ。あんたはさっさとそこをどけばいいのよ」

 

ダクネスたちは戦闘態勢に入り、バニルと対峙する。

 

「腹筋だけでなく脳まで堅そうな娘よ!そいつらを連れて今すぐ帰れば2人とも邪魔されず、すんごい要求は期待通りになること間違いなしだ!!」

 

「「んなっ!!?」」

 

バニルの甘美なる?囁きにダクネスとカズマは揺れ動かされそうになっている。

 

「ちょっとダクネス!!?耳を貸しちゃダメ!!悪魔の囁きだよ!!惑わされないで!!」

 

「だ、だだだ、誰が惑わされるか!!!」

 

「そんな声を荒げても説得力ないわよ。後カズマ、あんたも時と場を考えなさいよ」

 

(あ、あれ~?俺はこんなに心揺り動かされているのに・・・)

 

双子は何とか持ちこたえさせようとするが、カズマは滅茶苦茶葛藤したままだ。

 

「フハハハハ!!何ならそこの魔法陣が張られた部屋でご休憩して帰るがよい」

 

「~~~~~!!!!」

 

さらなるバニルの囁きでカズマはさらに葛藤を増していく。

 

「おいカズマ葛藤するな!!同じ屋敷に住んでいるのにそんなおかしな関係になってどうする!!しっかりしろ!!!」

 

「はっ!!!見てくれがよくて体がよくても中身があれなダクネスだ・・・しっかりしろ、俺!」

 

「お、お前帰ったら覚えていろよ・・・!!」

 

ダクネスの一喝でカズマはダクネスの中身の問題を思い出し、甘美を打ち破った。それにはダクネスは涙目である。

 

「ほほう・・・吾輩の甘美に惑わされぬか。しかしどうしたものか・・・吾輩の持つ技の数々はチート級な物が多い。例えば、我がバニル式殺人光線。これは殺人光線なので人間である貴様らが当たれば死ぬ。当たらなくても死ぬ。人間の悪感情を好む吾輩たち悪魔にとって、それは死活問題に繋がるわけで・・・」

 

「もういい!!貴様と話していると、頭がおかしくなりそうだ!!」

 

これ以上バニルが余計なことを言わないようにダクネスが剣で攻撃を開始する。素早い連続攻撃を繰り出すが、やはり元がノーコンなのでバニルには全く当たらず、避けるような素振りをしてダクネスをからかうバニル。

 

「フハハハハ!!威勢の割には攻撃がスカばかりではないか!!・・・ん?あの狡猾そうな3人はどこ行ったのだ?あの手の者が厄介なのだが・・・」

 

カズマたちは潜伏スキルでバニルにバレないように隠れて隙を窺っている。バニルはカズマたちがどこにいるかあたりを探っている。

 

「どこを見ている!お前の相手は私だ!!」

 

そのすきを見逃さず、ダクネスはバニルに剣を振るうが、これも当たらないでいた。

 

「フハハ!!残念!!」

 

「今だ!!バインド!!」

 

攻撃を避ける素振りをしたバニルに隠れてたティアはすかさずバインドを放つ。それによってバニルは縄に縛られる。

 

「ぬう!!しまった!!」

 

「今だよ!お姉ちゃん!カズマ!」

 

「今すぐぶち殺してやる!!」

 

「行くぞおらああああ!!」

 

バニルが縛られたのを見計らって攻撃を仕掛けようとするアカメとカズマ。

 

ぐにっ!!

 

「そおおおい!!?」

 

「ちょおおおお!!?」

 

「まああああ!!?」

 

「のええええ!!?」

 

ところがカズマが石造の玉を踏んで転んでしまい、アカメとティアを巻き込ませ、最終的に3人がかりでバニルに体当たりをした。

 

「はあああああ!!」

 

ザンッ!!

 

「ぐあああああああああ!!!」

 

バランスを崩したバニルにダクネスは剣による斬撃を放ち、ようやく一撃を浴びせられた。

 

「まさか・・・ここで滅ぶのか・・・」

 

剣の一撃を食らったバニルの体は土となって粉々に砕け散った。残ったのはバニルの仮面だけ。

 

「し・・・仕留めたのか・・・?」

 

「ちょっとお姉ちゃん。何してんの?せっかくのチャンスをあんな・・・」

 

「私のせいにしないでちょうだい。あれをやったのはカズマのせいよ」

 

ダクネスはバニルを倒せたのが嬉しいのか顔が浮かれている。双子は転んでしまったことにたいしてで胸倉を掴みあい、揉め合っている。

 

「くそう・・・まさかあんなところに玉が転がってるなんて・・・しかしこれは・・・本当にやったんじゃないか?」

 

「と、期待させたところで、スカ!!」

 

カズマが頬を緩んでいると、突如としてバニルの声が聞こえてきて、バニルの仮面がダクネスの顔に張り付いた。

 

「ぐあああああああ!!」

 

「「ダクネス!!?」」

 

「もしや討ち取ったとでも思ったか?残念!何のダメージもありませんでした!吾輩の本体は仮面であるが故、いくら土塊の肉体を破壊したところで吾輩は無傷なのだ!!おっと、汝らの放つ悪感情・・・大変に美味である」

 

苦しそうにしているダクネス。急に動きが止まると、ダクネスは口を開く。しかし、その口から聞こえる声は、ダクネスではなく、バニルのものであった。

 

「フハハハハ・・・フハハハハハハハハ!!小僧共、聞くがいい!吾輩の力により(どうしよう3人とも!!身体を乗っ取られてしまった!!)」

 

ダクネスの体がバニルの声でしゃべっていると、突然ダクネス本人の声がバニルの声を遮るように放たれた。だが何となくだが、ダクネスはバニルに身体を乗っ取られてしまったようだ。

 

「どうだ小僧共!!攻撃できるものなら(一向に構わん!!遠慮なく攻撃してくれ!!さあ早く!!これは絶好のシュチュエーションだ!!)やかましいわあ!!!!なんなんだお前は!!!???」

 

「「「・・・・・・」」」

 

変なタイミングでダクネスと切り替わってしまい、バニルは思わずツッコミを入れる。その様子にはカズマたちは変なものを見るかのような顔つきになる。

 

「バカな・・・なんだこの(麗しい)娘は・・・。いったいどんな頑強な精神を・・・(まるでクルセイダーの鑑のような奴だな!)ええい!!やかましいわあ!!!」

 

変なところでダクネスの声がかぶさってしまうのでなかなか思うようにしゃべれないバニル。

 

「・・・我が支配力に耐えるとは・・・なかなかどうして大した娘よ。(い、いやぁー・・・///)だが、耐えれば耐えるほどやがてその身に抗えがたい激痛が(な、なんだと!!??)フハハハハ!!さあ、どこまで耐えられるか・・・?なんだこれは・・・?喜びの感情?」

 

バニルの声にダクネスの声、まるでダクネスが一人芝居を行っているような光景だ。そんな2人?に構わずカズマたち3人はキールのいた部屋へと入る。

 

 

ーはい、ちょっと通りますよー

 

 

カズマと双子がアクアの魔法陣を掃除している間にもダクネスの体で漫才のような一人芝居は続いていた。

 

「(私はこんな痛みなんかに負けたりしない!!)その心意気やよし!だが、これ以上の我慢は汝の精神の崩壊を招き・・・貴様、この状況を楽しんではいないか?」

 

一人芝居をしている間にもカズマたちはとりあえず魔法陣の掃除が終わり、部屋には後が1つも残っていない。

 

「よしダクネス、アクアと合流してとっとと逃げるぞ」

 

「それ以上近づくな小僧共」

 

カズマたちが部屋から出ると、ダクネスを乗っ取ったバニルが剣を3人に突きつける。

 

「(3人とも、私を置いて先に行け)そうそう貴様らの思い通りには(ああ!このセリフを1度言ってみたかったのだ!)貴様が憎からず想っているこの娘を傷つけたくはあるまい。(!!?)このまま娘が我が力に耐え続ければ(か、カズマ!この自称見通す悪魔が気になることを言ったのだが)やかましいわあああああ!!!!」

 

バニルが何か重要そうなことを言おうとしてはいるのだが、ところどころダクネスが重なってくるので話が全く読めない。

 

「くっ・・・!この身体は失敗だった・・・!(おい!人の身体に失敗だとか失礼ではないのか!!?)ええい!!やかましい!!吾輩はこの身体から出ていく・・・」

 

「それは困るわね」

 

「ちょっ!!?お姉ちゃんそれ!!?」

 

ダクネスの体から出ようとしたバニルだが、その前にアカメがセナからもらった札をバニルの仮面に張り付ける。

 

「む?なんだこの札は?(おいちょっと待てアカメ!これはまさか・・・)」

 

「そう、セナからもらった封印の札よ。このまま地上に出てアクアに浄化してもらう」

 

「(ちょっ!!?)」

 

まさかの展開にダクネスもバニルも驚かずにはいられなかった。

 

 

ー(このすば!!)ー

 

 

カズマたちは乗っ取られたダクネスと共にダンジョン出口へと向かって走っている。バニル人形たちは全部いなくなっており、邪魔する者はいない。

 

「小僧共!吾輩の力に抵抗しているこの身体には常に激痛が走っているのだ!このままでは、この娘の心が壊れてしまうぞ!(というわけだ3人とも!こんな強烈なものは初めてだ!さすがは魔王軍の幹部!堕ちてしまいそうだ!)」

 

「頑張ってダクネス!地上に出たら、アクアが何とかしてくれるから!」

 

「(お構いなく)」

 

「「「「・・・今なんて言った?」」」」

 

バニルに乗っ取られて激痛が走っているが、やはり平常運転のダクネスであった。

 

 

ー(お構いなく)ー

 

 

キールの部屋から遠かったが、ようやくダンジョンの出口まで近づいてきたカズマたち。

 

「ダクネス!よく耐えたな!」

 

「・・・フハハ・・・フハハハハ!!小僧、貴様はいったい誰に話しかけている?」

 

「!!まさか・・・」

 

ダクネスの口から発せられるのはバニルの声だけ。どうやらここまで走ってる間にもダクネスはバニルに完全に乗っ取られてしまったようだ!

 

「フハハ!支配完了!無警戒に出迎えてくる貴様らのプリーストにきついのを一発食らわしてくれるわ!!」

 

「そんな・・・ダクネス!目を覚まして!!」

 

「そんな悪魔に負けて・・・あんたはもっと頑張れるはずよ!!」

 

双子は何とかダクネスの精神を引っ張り上げようと声を上げるが、聞こえるのはバニルの声だけ。

 

「無駄だ双子共よ!さあ、ダンジョンから無事に生還した仲間との感動の対面だ!忌々しい我が宿敵が乗っ取られた体の前にいったいどう出るのかとくと・・・」

 

「セイクリッド・エクソシズム!!!!」

 

「(ぬああああああああああああああ!!!!????)」

 

ダクネスを乗っ取ったバニルがダンジョンから出た瞬間、アクアが対悪魔浄化魔法、セイクリッド・エクソシズムを放った。それにはバニルは大ダメージ。

 

「ダクネスー!!?大丈夫!!?」

 

「おいクソアクア!!いきなり魔法をぶっ放すんじゃないわよ!!」

 

「なんか、邪悪な気配が感じたから撃ち込んでみたんだけど・・・」

 

「お前なぁ・・・。ダクネスは今魔王軍の幹部に身体を乗っ取られているんだ!」

 

「魔王軍の幹部!!?」

 

魔王軍の幹部という単語に真っ先に反応したのはセナだった。するとアクアは何か匂ったのか顔をしかめながら鼻を抑える。

 

「臭っ!なにこれ臭っ!間違いないわ!悪魔から漂う匂いよ!ダクネスってばエンガチョね!!」

 

セイクリッド・エクソシズムを食らったダクネスを乗っ取ったバニルはよろめきながら立ち上がった。

 

「ふ・・・フハハハハ・・・まずは初めましてだ!忌々しくも悪名高い、水の女神と同じ名のプリーストよ!我が名は(あ、アクア!私自身は匂わないと思うのだが!!?)我が名はバニ(お前たちも嗅いで見てくれ!!臭くはないはずだ!!)やかましいわ!!」

 

が、アクアの魔法のおかげで激痛が弱まったのか、再びダクネスの声がバニルの声と重なる。

 

「我が名はバニル。出会い頭に退魔魔法とは・・・これだから悪名高いアクシズ教の者は忌み嫌われるのだ!礼儀というものを知らぬのか?」

 

バニルが礼儀と言った瞬間、アクアはバニルを小ばかにするように笑う。

 

「やっだー、悪魔が礼儀とか何言っちゃってるんですかー?人の悪感情がないと生きていけない寄生虫じゃないですかー、プークスクス!」

 

「いや、寄生虫はアクアの方でしょ。飲んだくれの分際が」

 

「うん。普段は何のとりえもないアクシズ教徒の悪魔だし」

 

「えっ・・・」

 

アクアがバニルに寄生虫と言った瞬間、双子が逆にアクアが悪魔と言った瞬間、嘘でしょ?みたいな顔をするアクア。

 

「フハハハハ!!仲間のシーフにすら嫌われるとは!哀れだな!中身が残念のアークプリーストよ!」

 

バニルがアクアを笑い飛ばした瞬間、短い沈黙が続き・・・

 

「セイクリッド・エクソシズム!!」

 

「甘いわ!!」

 

アクアはバニルに向かってセイクリッド・エクソシズムを放ったが、ダクネスの瞬発力を利用して難なく躱す。

 

「ちょっとダクネス!なんで避けるの⁉じっとしててちょうだい!!」

 

「(そ、そんなこと言われても・・・)」

 

「ずるいですよ!私もあの仮面が欲しいです!紅魔族の琴線に激しく響きます!」

 

「バカか!!あの仮面が悪魔の本体なんだよ!!」

 

「なんですと!!??」

 

「確かにあれは手配書に示されてる見通す悪魔!!皆さん!!確保!!」

 

『おう!!!』

 

セナの合図によって他の冒険者たちもバニルを捕えようと動き出した。

 

「フハハハハ!!フハハハハハ!!フハハハハハハハ!!」

 

だがダクネスの身体能力を利用したバニルの前には、冒険者たちの攻撃は全てはじき返され、全く歯が立たなかった。

 

「ねぇ、ダクネス!じっとして!助かりたいの⁉助かりたくないの⁉」

 

「あのダクネスがこんなに手強いなんて・・・!」

 

「当たらねえ!簡単に剣ではじき返されちまう!」

 

「ああ!俺たちが死なないのは、相手が手加減しているだけだ!」

 

「ふむ・・・この身体は具合がいいな。筋力もあるし耐久力もある。おまけに忌々しい神々の魔法にも耐久があるときた。(うぅ・・・すまん・・・みんな・・・)」

 

凄く苦戦しているセドル、ヘインズ、ガリルを含めた冒険者たちは苦虫を嚙み潰したような顔つきになる。そうとは構わずバニルは冒険者たちを煽る。

 

「フハハハハ!!キリキリとかかってこいこのへなちょこ冒険者共めが!」

 

「ダクネス!お前ちょっと剣が当たるようになったからって調子に乗りやがって!!」

 

「俺、あんたはカズマのパーティで1番まともだと思っていたのに!!」

 

「囲め囲め!!このへっぽこクルセイダーを取り囲め!!」

 

それには当然ながら憤慨する冒険者たち。

 

「(ああ・・・普段気さくに話しかけてくれる冒険者たちがこんな蔑んだ目で・・・!)・・・なぜか感じる喜びの感情・・・これはどういうことなのか・・・?」

 

冒険者たちの蔑んだ目にこんな時でも興奮してしまうダクネス。

 

「この状況、何とかなりませんか?」

 

「こうなったら、私たちが出張るしかないわね!ティア!援護を!」

 

「うん!ダクネスのために!」

 

バニルが冒険者たちを薙ぎ払ったと同時に、アカメがバニルに短剣を振るおうとする。バニルが行動に移す前にティアがバインドで動きを止めようとしても、ダクネスの眠らせていた反射神経のせいで全く動きを止められないでいる。

 

「バインド!バインド!もう!ダクネスじっとしててよ!当たらないじゃんか!」

 

「(そ、そんなことを言われても体が勝手に・・・)」

 

「はあああああ!!」

 

「甘いわ!!」

 

アカメがバニルに向かって短剣を振るうも、剣で簡単に受け止められしまう。

 

「ほお・・・へなちょこ筋力のシーフの割には、なかなかどうして、この娘を超える力ではないか!」

 

「お褒めの言葉、どうもありがとう、ね!!」

 

アカメが剣を跳ねのけ、短剣をバニルの仮面めがけて振るうが、それは簡単に躱されてしまう。

 

「が、詰めが甘すぎるわ!!」

 

そしてバニルはダクネスの持ち前の力を利用してアカメに蹴りを放った。耐久力がないアカメは簡単に吹っ飛ばされ、カズマたちがいた木に激突してしまう。

 

「がっ・・・!!」

 

「お姉ちゃん!!?」

 

「おい、嘘だろ!!?アカメがダクネスに負けた!!?」

 

「う・・・うぅ・・・くそ・・・ダクネスの分際で・・・!」

 

アカメがダクネスに負けるのを見てカズマたちは驚きを隠せないでいた。

 

「お姉ちゃん、大丈夫⁉」

 

「か、カズマ!何とかならないんですか⁉」

 

「サトウさん、参戦しないのですか!!?」

 

「か、カズマ――!!アカメまでやられちゃったんですけど!!これって今までで1番ピンチなんですけど!!?カズマさん!!カズマさーーん!!」

 

カズマがどうするべきか思考を悩ませていると、バニルがアクアに迫ってきている。文字通りきつい一撃を食らわせるために。

 

(くっ・・・今こそセナに説教でもしてやりたい!毎回毎回俺たちが騒動を起こしてるんじゃない!俺はただ巻き込まれてるだけなんだ!そんな俺が強運だとか・・・)

 

「カーズーマーさーーーーーん!!!!」

 

「・・・しょうがねぇなあああ!!!」

 

カズマは腹をくくってダクネスの前まで立つ。

 

「ダクネス!何簡単に悪魔にしつけられてんだ?お前ってばそんなにちょろいお手頃女だったのか?」

 

「無駄だ!この娘には貴様の声は通(誰がお手頃女だ!!しつけられているわけではないぞ!!)・・・うぅーむ・・・何たる鋼の精神・・・」

 

「今から俺が仮面に張られた封印を解く!そしたら一瞬でいい!バニルから支配権を取り戻し、仮面を捨てて投げ捨てろ!!」

 

「貧弱な貴様がこの娘の力を完璧に引き出した吾輩を相手にどうやってこの封印を解くのだ?(うむ、今の私は、誰にも負ける気はしない)フハハハハ!!この吾輩をねじ伏せて(この封印の札を)剝がすと(言うのなら)やれるものなら(やってみるがいい!!)やかましいわ!!!吾輩の決め台詞を持って行くな!!!」

 

バニルの味方になってしまっているダクネスの発言にカズマはどっちの味方なんだと言わんばかりの顔をしている。

 

「(スティールだ!きっとカズマお得意のスティールを使う気なのだろう!)」

 

「おい!お前手の内を教えてどうする!!?」

 

「カズマ!!私の後ろには私がついてるわ!!やっちゃいなさい!!」

 

アクアがついてるってだけで何かと不安が拭えないカズマ。

 

「おいダクネス!今回も賭けをしようぜ!もし俺が勝ったら、約束してたすんごい要求にさらにとてつもないことを出させてもらう!!」

 

「(ああ!!こ、この場面でそんな・・・!)こ、こら!甘言に惑わされるな!魔力を高め、スティールに耐える用意を!」

 

「ダクネス!バニルが動けないように抵抗しとけよ!」

 

「冒険者のスティールが通用すると思うか!」

 

「行くぞぉ!!」

 

「(来い!!)」

 

めぐみんたち全員がカズマのスティールが勝つか、バニルが耐えきるか、緊張した雰囲気でカズマたちを見守る。

 

「はああああ!!ティンダー―!!!」

 

「(んなっ!!?)」

 

『はっ?』

 

が、そんな期待を裏切るかのようにカズマはティンダーの火でバニルの仮面の札を燃やし尽くした。それには当然全員は目をきょとんとさせている。

 

「ふ・・・フハハハハ!(ああ!!ずるいぞカズマ!!卑怯者!!)まさかこの見通す悪魔をだまくらかすとはやるではないか」

 

「おいダクネス根性を見せろ!!今こそ仮面を外せ!!」

 

封印の札を解いた今がバニルとダクネスを引きはがすチャンス。ダクネスがバニルの仮面を引きはがそうとするが、全くビクともしない。

 

「は、外れない・・・!!」

 

「何っ!!?」

 

「カズマどうするの!!?もう撃ってもいいのかしら!!?」

 

「いや、アクアの魔法を撃っても、ダクネスの耐性で・・・」

 

どうすればいいのかと悩んでいると、ダクネスが口を開いた。

 

「(構わん、撃て。アクアの魔法が効かないのなら、このまま私もろとも、爆裂魔法食らわせてやれ)」

 

「た、確かにそれならバニルを葬れるかもしれないけど・・・でもそれは・・・」

 

「そうですよ!!無理です!!私の爆裂魔法は経験を重ね、以前よりも更なる高みに上りつつあります!いくらダクネスでも・・・」

 

強力になっためぐみんの爆裂魔法ではバニルどころか、ダクネスまで葬りかねないと言い張っている。

 

「(・・・バニル、わずかなひと時だが、共にいた時間は悪くなかった。だからせめて、選べ。私から離れて浄化されるか、共に爆裂魔法を食らうか)」

 

ダクネスは取り付いているバニルに問いかけている。そんなダクネスの問いかけにバニルは愉快そうに笑う。

 

「フハハ・・・破滅主義者にとってはまさに至高な選択である。吾輩の破滅願望がこのような形で実を結ぶとは・・・。吾輩とて汝への憑依は、中々に楽しかったぞ」

 

ダクネスより出された選択肢に、破滅願望者のバニルの答えは決まっていた。

 

「吾輩は悪魔である!敵対者である神に浄化されるなど、まっぴらだ!!」

 

バニルはアクアの浄化を選ばず、めぐみんの爆裂魔法による消滅を選んだ。

 

「(さあ!!めぐみん!やれ!!)」

 

「で・・・できません・・・」

 

「めぐみん・・・ダクネスの思いを無下にしないでちょうだい・・・」

 

「アカメ・・・」

 

めぐみんはやはり戸惑っているが、弱っているアカメがティアに支えられながらそう告げられた。ダクネスを信じて、双子は覚悟を決めたような顔だ。

 

「セナさん、もし万が一があれば、私たちが指示したってことで、あなたが証人になってください。牢屋に入るのも、甘んじて受けます」

 

「アカメさん・・・ティアさん・・・あなた方は・・・」

 

「・・・今回も、全責任は私たち双子がとります」

 

双子が決死の覚悟を決めたことで、カズマたちも覚悟を決める。それによって、めぐみんも苦肉ながら、爆裂魔法の詠唱を唱える。

 

「空蝉に忍び寄る叛逆の摩天楼・・・我が前に訪れた静寂なる神雷・・・時は来た!今、眠りから目覚め、我が狂気を以て現界せよ!!!」

 

ダクネスの足元に魔法陣が展開され、発動する前でも強力になっているのが見ていてわかる。そして、詠唱を唱え終え、めぐみんは爆裂魔法を放つ。

 

穿て!!!エクスプロージョン!!!!!!!!!

 

ドオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!

 

爆裂魔法はこれまで以上の火力で爆発し、ダクネスとバニルは大爆発の炎に、包まれるのであった。

 

 

ーこのすばー

 

 

あの後というもの、ダクネスはめぐみんの爆裂魔法により、瀕死の重傷を負い、大事にしていた鎧もなくなった。バニル自身も仮面が割れ、完全に消滅している。アクアの介抱によって、一命をとりとめ、今では普段通り、元気に歩き回れている。そして、ダクネスが元気になったところで、冒険者ギルドでは、カズマたちパーティによる、バニル討伐の際の感謝の授与式が行われていた。

 

「冒険者、サトウカズマ殿!これまでの貴殿の活躍を称え、感謝状を進呈します!」

 

騎士を2人引き連れたセナがパーティの代表者であるカズマに感謝状を贈呈した。感謝状を受け取ったカズマに全冒険者たちは純粋にカズマの功績を称え、拍手を送っている。

 

「続いて、ダスティネス・フォード・ララティーナ卿!今回の貴公の献身素晴らしく、ダスティネス家の名に恥じぬ活躍に対し、王室から感謝状並びに、先の戦闘において失った鎧に代わり、第一級技工士たちによる、鎧を送ります」

 

感謝状、並びに鎧を受け取ったダクネスはあまり落ち着かない様子でかなりそわそわとしていた。と、いうのも・・・

 

「おめでとうララティーナ!!」

 

「ララティーナ、よくやった!!」

 

「さすがララティーナだ!!」

 

「ララティーナー!!可愛いよララティーナー!!」

 

冒険者全員がダクネスのことを本名であるララティーナと呼び始めたのである。賭けでダクネスが泣いて嫌がるすごいこととは・・・本名であるララティーナという名を街の人間全員に広めたことである。

 

「・・・こんな・・・こんな辱めは私の望むすごいことではない・・・!!」

 

ダクネスは顔を真っ赤にしながら、泣きそうな顔を手で覆う。それにはめぐみんたちは笑いをこらえるのに必死である。

 

「ねぇダクネス、私はララティーナって名前はとってもかわいいと思うの。ララティーナの名前を面白半分に広めたカズマは後で叱っておいてあげるから、ララティーナって名前に自信を持って!」

 

「うええええええええええん!!」

 

無意識にダクネスを追いつめるアクアによってダクネスはついに泣き出してしまう。

 

「・・・続いて、ウェーブ盗賊団員、アカメ殿、ティア殿!貴殿らを魔王軍の関係者と疑った事を、ここに謝罪すると同時に、感謝状を進呈します!」

 

セナは最初に双子に向けていた敵対心のある顔ではなく、心からの柔らかな微笑で感謝状を双子に贈呈した。魔王軍の関係者があれほど身を犠牲にしてまで幹部を倒すはずがないという理由から、魔王軍のスパイ疑惑は完全に晴れることができた。

 

(やったね、お姉ちゃん!これで死刑に怯えずにすんだよ!)

 

(でも、私たち個人の疑いは晴れても、私たちの組織の方はまだ疑ってるでしょうね)

 

(それでも、私たちを認めてくれたってことは、多分だけど、政府の組織の見方も変わるはずだよ!カズマと一緒なら、きっと!)

 

(・・・ふふ、そうね。でもしばらくは、大人しくしてましょう)

 

感謝状を受け取って、2人でひそひそと話している間にも、パーティ全員に対する賞金授与が行われる。

 

「冒険者、サトウカズマ一行。機動要塞デストロイヤーの討伐における多大な貢献に続き、今回の魔王軍幹部バニル討伐はあなたたちの活躍なくばなしえませんでした。よってここに、あなたの背負っていた借金、及び、領主殿の弁償金を報奨金から差し引き、借金を完済した残りの分、金四千万エリスを進呈し、ここにその功績を称えます!!」

 

『おおおおおおおおおおおお!!!』

 

カズマたちの功績が認められ、カズマたちを含めた冒険者一同は大歓声を上げ、場が祝賀会へと空気が変わっていった。

 

「ふっ・・・浮かれていやがる・・・だが・・・そんな日があってもいい」

 

バーのテーブルで酒を飲みながら見ていた荒くれ者がふっと笑い、そう呟いた。これまでの全ての借金を返済することができ、自由という名の翼を手に入れたカズマたち。そんな中でも、双子とダクネスは、心から笑えないでいた。その理由は、やはりバニルである。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

祝賀会から離れ、双子とダクネスはウィズの店までやってきた。ウィズもまた、バニルと同じく魔王軍幹部の1人、その仲間に手をかけたという残酷な真実を伝えるために3人はやってきたのだ。

 

「バニルのことは私が報告しよう。ほんのひと時だったが、身体を共有し、暴れ回った仲だ」

 

「「ダクネス・・・」」

 

「エリス様に仕えるクルセイダーがこんなことを言ってはいけないだろうが・・・まぁ・・・嫌いな奴ではなかったよ」

 

哀愁が漂う雰囲気の中、ダクネスは意を決し、店の中へと入ろうとする。

 

「ウィズ、話したい事がある!」

 

ダクネスが店を開け、彼女を出迎えたのは・・・

 

「へいらっしゃい!!店の前で何やら恥ずかしいセリフを吐いて遠い目をしていた娘よ、汝に1つ言いたいことがある。まぁ・・・嫌いな奴ではなかったよ・・・とのことだが、我々悪魔には性別がないため、そんな恥ずかしい告白を受けてもどうにもできず」

 

「あれーーーー!!???普通に生きてる!!??」

 

あの時消滅したはずのバニルであった。普通にバニルが生きていたことにティアは思わずツッコミ、ダクネスは恥ずかしさで顔を赤らめて膝を抱えて蹲る。

 

「おおっと!!これは大変な羞恥な悪感情!!んー、美味である!お、どうした!膝を抱えて蹲って!よもや、吾輩が滅んだとでも思ったかハハハハハハ!!フハハハハハハ!!」

 

バニルはダクネスの羞恥を見て悪感情を食らいながら高笑いしている。そこへウィズが何食わぬ笑顔で出迎えてくれた。

 

「アカメさん、ティアさん、聞きましたよ!バニルさんを倒してスパイ疑惑が晴れたとか!おめでとうございます!」

 

「・・・ウィズ、なんでこいつ生きてんの?爆裂魔法を食らってぴんぴんしてるとか、どうなってんの?なんでこいつ無傷なのよ?」

 

「何を言う、そこの鎧娘に負けてすんごい腹立たしい気持ちになった双子の姉よ。あんなものを食らえば、さすがの吾輩も無傷でおられるはずがなかろう。この仮面をよく見るがよい」

 

アカメの尤もな疑問にバニルが自身の仮面の額に指をさす。そこには、『Ⅱ』という文字が刻まれていた。

 

「「・・・Ⅱ?」」

 

「残機が1人減ったので、二代目バニルということだ!!」

 

どうやらこのバニルは残機が減ったことによって二代目になったおり、初代とは違う存在とのこと。それには双子は声を揃えてこう言った。

 

 

ーなめんな!!!ー

 

 

バニルについてはウィズから話を聞くことにした双子。ダクネスは未だに顔をうなだれており、バニルは商品を並べている。

 

「バニルさんは魔王軍を辞めたがっていたのですよ。なので今のバニルさんは魔王城の結界の管理をしていません。なので無害なはずですよ」

 

「む、無害かなぁ・・・?」

 

「怪しさ満点なんだけど・・・」

 

ウィズがにこにこ笑っているので、信じたいところだが、バニルの胡散臭さを考えると、信じきれない双子。

 

「汝ら、砂漠の地よりやってきた義賊共よ。この見通す悪魔である吾輩が1つ忠告をしてやろう」

 

「「忠告?」」

 

「そう遠くない未来にて、汝ら双子はある選択を迫られるであろう。その選択を一歩でも間違えれば、汝らの関係は崩れ落ち、歪なものとなるであろう。気を付けることだ」

 

バニルの忠告に双子はわけわからんと言った顔になる。

 

「何言ってんのよ?もう十分に歪な関係でしょうよ」

 

「そうだよ。誰が悲しくてこんな姉と一緒に・・・」

 

「はあ?」

 

「ああ?」

 

お互いに発した言葉に双子は睨みあい、今にも殴り掛かろうとする雰囲気が出ている。

 

「そう捉えるのであればそれもよいだろう。とにかく吾輩は忠告したぞ。ゆめゆめ、忘れぬようにな。・・・それはそうと、同じ場、同じ商売を担う者として、仲良くやろうではないか。いい話が1つあるのだが・・・そのためには、貴様らの仲間の遠い彼方よりやってきた冒険者の小僧の協力が吉と出た。どうだ?乗っかってみる気は、ないか?」

 

バニルは胡散臭そうなことを言いながら、楽しそうに口元を笑みで歪めた。




お父さん、お母さん、お元気ですか?
私は元気です。
日々冒険者として頑張っています。
え?ぱ、パーティーメンバー?も、もちろんいるよ?
みんな仲のいいお友達だよ?
嘘じゃないよ?
だから心配いらないってば、本当に!

ゆんゆん

実際のところ・・・

ゆんゆん「・・・はぁ・・・友達欲しいな・・・」

そこへたまたますれ違ったミミィ。

ミミィ(・・・なんだろう、あの子・・・なんでか知らないけど、すごく親近感が湧いてくる・・・。・・・お近づきに・・・なりたいな・・・。あ、いや、でも・・・どうせこんなゴミが声をかけても、何あんた?みたいな反応になるに決まってる!!わかってるもん、そんなこと!私は嫌われ者だから・・・)

ゆんゆん・ミミィ「・・・はぁ・・・」

次回、この煩わしい外界にさよならを!
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