チキンレース・・・それは、猛スピードで障害物に突撃し、死ぬ寸前で身を躱すことで度胸を試すレースゲームのことだ。今その危険なレースの障害物に彼女が選ばれていた。
「来た来た来た来た来たぁーーー!!!!か、カズマ!!今度こそ、今度こそはもうダメだ!!ああ!!ぶつかるーーーー!!!!」
アルカンレティアへ行く道中の中、ダクネスの固さに惹かれて、絶賛繫殖期のモンスター、走り鷹鳶が馬車に向かってきており、それらを討伐するために護衛の冒険者と、尻拭いするために出たカズマたち。その過程で盗賊系の冒険者のバインドをダクネスが自分から食らいに行き、今に至る。足以外身動きの取れなくなったダクネスは今か今かとぶつかるのを待ち望んでおり、走り鷹鳶がダクネスにぶつかってしまうと思ったその時・・・
ぴょいんっ、ぴょいんっ、ぴょいんっ
走り鷹鳶はダクネスにぶつかるギリギリのタイミングでジャンプして躱して、そのまま通り過ぎていき、そのまま止まっている馬車を通過していく。
「カズマ!これは焦らしプレイの一環なのだろうか!!?このギリギリでのお預け感がまた・・・なんてことだ・・・私の体の上を発情したオスたちが次々と飛んでいく・・・!!」
「ギリギリで焦らす・・・その手があったのね・・・」
「お姉ちゃん?」
「よしお前ら!!人の目もあるんだ!!もう黙ってろ!!」
もういろいろとアウトな発言をするダクネスと、ドSな意味で納得するアカメにカズマは声を上げて黙らせる。
「アクア!ダクネスに運向上魔法を!」
「任されたわ!ブレッシング!」
「ああ!!お構いなく!!」
万が一当たったらと思い、カズマはアクアに指示を出して、そのままアクアはダクネスにブレッシングをかけて運を向上させる。本人はあまり望んでなかったが。これでひとまずはダクネスが走り鷹鳶にぶつかる確率は低くなった。
「ふぅ・・・ダクネスもこれなら大丈夫だろ」
「私のブレッシングのおかげね!」
「はいはい、これが終わったら座席変わってやるから」
カズマが座席を変わってくれると聞いて、アクアは思わずガッツポーズをとる。その間にも護衛の冒険者たちは走り鷹鳶に次々と遠距離攻撃を仕掛けていく。遠距離攻撃をくらった走り鷹鳶は倒れる際に冒険者たちにぶつかり、冒険者側に被害が出る。
「ちょ・・・待ちな・・・おぶ!!」
「お姉ちゃん!!!???」
「アカメーーー!!!」
「ああ、ずるい!!私にも当たってほしかったのに!!」
その倒れていった走り鷹鳶がアカメにも直撃した。
「ぐぬぬ・・・この・・・大人しく・・・こいつ力強・・・!」
「お姉ちゃんがぶつかった走り鷹鳶と格闘してる!」
しかも倒れた走り鷹鳶はまだ生きており、ぶつかった際に怒った走り鷹鳶がアカメに顔を近づけて襲い掛かっている。アカメは自慢の力で何とか掴んで持ちこたえているが、苦戦している。
「くそ!ティアはアカメを助けてやれ!俺たちは残りの奴を迎え撃つ!」
「わ、わかった!」
アカメを助けるようティアに指示を出して、ティアはアカメを助けに向かった。そうしてる間にダクネスと馬車を通過した走り鷹鳶は進路を変えて再び馬車・・・というかダクネスに向かってきている。
「まだ来るつもりか!!」
「よし!!」
ダクネスのドM思考は置いておいて、カズマは何かしらの策を思いついた。
「おっちゃん!この辺りに崖とかないか⁉」
「んなもんないよ!あるのは雨よけの洞窟くらいだ!」
「洞窟・・・それでいい!みんな!馬車に乗れ!」
名案を思い付いたカズマは全員に馬車に乗るようにアクアたちに指示を出し、自分はダクネスに近づいて持ち上げようとする。
「行くぞダクネス!ぐ・・・ぬおおおおお・・・重すぎて持ち上がらない・・・!!」
「お、おい!重すぎてとか言うな!!ちょっと私の鎧が重いと言い直せ!!」
だがダクネスはカズマの力ではなかなか持ち上げられないでいた。カズマのデリカシーのない発言にダクネスは少なからず傷ついている。
「んなこと言っても・・・ば、馬車に乗せられねぇ・・・!!」
「なら私たちに任せなさい」
「何言って・・・て、うおおお!!?」
カズマが双子たちを見てみると、双子たちは先ほど格闘していた走り鷹鳶を馬のように乗っている。
「私たちアヌビスの民は走り鷹鳶を手懐けられるんだよ!初めての試みだったけど、うまくいったよ!」
「そ、そいつはすげぇ・・・て、んなこと言ってる場合じゃねぇよ!早くしないと群れがこっちに・・・」
「だから私の出番よ。私がダクネスのロープを持って引きずる。馬車はこの子をその洞窟のとこまで案内なさい。カズマは馬車に乗ってこの子の援護を」
「え?マジで?」
ダクネスを引きずるということ・・・それはダクネスが走り鷹鳶の走りに引っ張られて地面に引きずられ、痛い目に合うということ。その案にはカズマはかなり引いている。
「それだ!それでいこう!!緊急事態だ仕方ない!!遠慮するな!仕方がないんだ!!」
「ダクネスはそれでいいの?かなり引くんだけど・・・」
ティアもアカメの案にはかなり引いており、それに興奮状態で同意しているダクネスにたいしてもかなり引き気味である。
「お客さん急いでくれ!!もう限界ですよ!!」
「・・・ええい!!仕方ねぇ!!アカメ、ダクネスを頼む!!」
「任されたわ。ティア、運転よろしく」
「えぇ・・・一応全体にバインドで落ちないようにはしてるけど、振り落とされないようにね」
迷っている時間も縛っている時間もないのでここは双子に任せ、カズマは言われた通りに馬車に乗る。
「おっちゃん!出してくれ!!」
「よし来た!!はいよお!!!」
準備が整い、馬車は雨よけの洞窟に向かって走り出す。
「ああ・・・縛られたまま、手懐けられた走り鷹鳶に引きずられるんだ・・・そして!そんな状態で私を追いかけてくるうえ!!!???」
馬車が走り出したと同時に双子が手懐けた走り鷹鳶もティアの指示でついていくように走り出す。アカメはダクネスのロープを持って、手懐けた走り鷹鳶に身を任せながらダクネスを引きずる。
「ああ!!いい!!いいぞアカメ!!やはりお前は最高だ!!!新発見だ!!この物扱いされてる感じがまたいい!!!」
「お褒めいただき光栄だわ、ド【ピーーッ】の変態」
「ああ!!さらに容赦のない罵倒!!癖になってしまいそうだ!!」
「とんでもない会話が後ろで繰り広げてるんだけど・・・」
アカメとダクネスはしちゃいけないような会話をしていて、ティアはもう頭を抱えそうなくらい引いている。
「アカメさんは鬼畜だとは思っていたけど、これはあんまりじゃないかしら・・・」
「そしてそれに同意するカズマ・・・さすがは鬼畜コンビ・・・」
「ひ、ひどすぎる・・・」
「し、仕方ないだろ!!縛る余裕も持ち上げる余裕もなかったんだよ!!」
引いているのはアクアたちも同じでこの作戦を考えたアカメとそれに同意したカズマを引いた視線で見つめる。
「お客さん!!このままじゃ追い付かれますよ!!」
「ちょっとティア!もうちょっとスピード上がらないの⁉」
「無理言わないでよ!ダクネスが重いからこの子のスピードが落ちてるんだよ!」
「お、おい!重いって言うな!せめて鎧が重いってぐっはああああああ!!」
「おっちゃん!洞窟は⁉」
「まだだ!!」
走り鷹鳶が迫ってきており、このままでダクネスも双子の走り鷹鳶も、馬車もぶつかりかねない。もうダメだと思った時・・・
「ボトムレス・スワンプ!!」
ウィズが水の上級魔法、ボトムレス・スワンプで汚れ切った沼を出現させた。追いかけてきた走り鷹鳶の群れの一部は魔法の沼にはまり、身動きが取れなくなった。残りの走り鷹鳶は散開してダクネスを追いかける。いい時間稼ぎにはなった。
「サンキュー、ウィズ!」
「ぬああああああああ!!こんな・・・こんな貴族にあるまじきボロボロの恰好に・・・!アカメ、見るなぁ!!こんなボロボロにされていくみすぼらしい私を見るなぁ!!」
「こいつどうしようもない変態ね」
「アクアー!そろそろダクネスにヒールかけてあげて!」
「ヒール!ヒール!ヒール!ダクネス、がんばって!」
引きずられてボロボロになったダクネスは凄まじく興奮して喜びながら叫んでいる。さすがにあれ以上やると持たないと思い、アクアがダクネスにヒールをかけて回復させる。
「カズマ!洞窟が見えてきました!私の方はいつでも魔法が撃てますよ!」
「おっちゃん!洞窟の脇に馬車を止めてくれ!ティアもその走り鷹鳶を脇に止めろ!」
「よし!」
「わかった!」
「アクア!俺にも筋力増加の魔法をかけてくれ!」
「わかったわ!パワード!!」
カズマの指示でアクアは筋力増加の魔法、パワードをカズマにかけて、自分は馬車の御者台の屋根の上に乗り、狙撃体制に入る。
「狙撃!狙撃!狙撃!狙撃!」
カズマは狙撃を連発で発動し、追いかけてくる走り鷹鳶を何匹か討伐する。輪が乱れた走り鷹鳶の群れは体勢を立て直し、一列に並び直す。
「ピィーヒョロロロロローッ!!」
鳴く際に走り鷹鳶の声はトンビの鳴き声であった。トンビの要素はどこにあったのだろうと疑問であったが、その要素は声にあったようだ。
「お客さん!しっかり掴まっててくださいよ!」
馬車は勢いよく洞窟の脇に急停止する。カズマたちはその際の揺れに何とか耐える。
「あ、アカメ!そいつから降りてダクネスを洞窟の入り口に運べ!」
「わかったわ。ティア!」
「オッケー!バインド解除!」
カズマの指示でティアはアカメに巻いたバインドを解除させる。ロープが解かれたアカメはすぐに乗ってた走り鷹鳶から降りてダクネスを持ち上げる。
「ダクネス!!歯を食いしばりなさい!!!!」
「わああああああああああ!!!!」
ティアが乗ってる走り鷹鳶を脇に止めたのを見計らってアカメはダクネスを洞窟の入り口まで力いっぱいぶん投げた。
「悪くない!!悪くないぞこの仕打ち!!さすがはアカメだ!引きずりまわした挙句にモンスターの餌に・・・」
「だから!この子たちはダクネスを食べたりしないって!!」
ぶん投げられたダクネスはちょうどよく洞窟の入り口まで落ち、地面に激突する。そして、群れの走り鷹鳶はダクネスをギリギリのところでジャンプして躱し、洞窟へと入っていく。
「めぐみん!!今だ!!」
「エクスプロージョン!!!!!!!!」
ドオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!!
カズマの指示でめぐみんは洞窟にエクスプロージョンを放った。この大爆発によって洞窟に穴が開いた代わりに群れの走り鷹鳶を全て退治することに成功したのであった。
ーこのすばー
走り鷹鳶を討伐をし終えて、他の馬車に戻ってきた頃にはもうすっかり日が暮れてしまい、荒野の休憩所で商隊の人たちと共に宴を始めた。
「さあ!どうぞどうぞ!いい具合に焼けたのでどうぞ!」
おいしそうに焼けた大きな肉を持ってきたのは商隊のリーダーの髭の男であった。
「しかしお見事でした!まさか爆裂魔法を使えるほどの大魔法使いがおられたとは!しかもこれだけの負傷者を簡単に治療してしまったアークプリースト様!危険なはずの走り鷹鳶を従順に飼いならしてみせたシーフのご姉妹様!走り鷹鳶の群れに一歩も引かず、それを一心に引き受けた勇敢なクルセイダー様に上級魔法であられ、泥沼の魔法での咄嗟の足止め!そして何より見事な判断で敵を討伐へと導き、一網打尽にしたあなた様のその機転!いやー、お見事です!」
(マジ勘弁してください。本当にそんなんじゃないんです。俺たちのせいなんです)
走り鷹鳶の群れを討伐したカズマたちに商隊のリーダーはべた褒めをする。アクアたちは褒められてご満悦だが、走り鷹鳶を呼び出した原因は自分たちにあるため、カズマだけは後ろめたさでいっぱいである。
「これは心ばかりのお礼です!どうぞどうぞ、受け取ってください!」
商隊のリーダーはお金が入った袋をカズマに渡そうとするが、カズマは必死にそれを拒否する。
「いやいやいや!!本当に!!本当に結構ですから!!!」
「何を言われるのですか?走り鷹鳶を倒したのはあなた方ではないですか」
「冒険者であれば戦いに参加するのは当たり前ですよ」
「何という方だ・・・この世知辛いのに、まだあなたたちのような本物の冒険者がいたとは!!ううぅぅぅ・・・」
カズマの言葉で商隊のリーダーは感動して感激の涙を流す。
(こんなマッチポンプで報酬は受け取れません!!!)
カズマは別の意味で静かに涙流すのであった。
ーこのすば!ー
宴会は滞りなく続いており、アクアは一同に自身の宴会芸スキルを披露する。ウィズはアクアに付き合わされ、巻き込まれている。そことは離れた場所でカズマはダクネスのボロボロになった鎧を鍛冶スキルで直していく。その様子をダクネスとめぐみんは興味深そうに見つめている。
「・・・すごくやりづらいんですが」
「いや、器用に修理するものだなと思いまして」
「なんだか自分の鎧が目の前で綺麗になっていくのを見ているとわくわくするな」
「商品開発のために習得した鍛冶スキルが役立ってよかったよ」
カズマが鎧を修理している間にアクアたちのところには観客が大勢集まっている。
「あいつ、あれで食っていけばいいのに・・・」
遠巻きで呆れたように視線を向けてそう呟くカズマ。修理作業を終えるとふとカズマは双子が自分たちが飼いならした走り鷹鳶の世話をしている光景が目に映る。
「あんなに苦労した倒したモンスターの1体が、俺たちと一緒に過ごしてるのって驚きだよな」
「そうですね。滅多にみられる光景ではないですよ」
「そうだな」
感心しているカズマたちは双子たちに近づき、声をかける。
「お前たち、何をやっているのだ?」
「見てわからないかしら?この子の毛を私たち色に染めてるのよ」
アカメがやっている作業は飼った走り鷹鳶を毛染めスプレーで双子のメインの色を混ぜた色、紫色に染めている最中だ。
「私はこの子が何を食べるか検診していたんだよ。飼うのは初めてだから、わからないことが多いんだ」
ティアは商隊からもらった食べ物を1個ずつ飼った走り鷹鳶に与えていたようだ。ティアの書いていたメモにはこの走り鷹鳶の食べるものと食べないものが別れている。
「なぁ、お前ら本当にそいつ飼うつもりなのか?」
「何当たり前のこと聞いてるのよ。飼うに決まってるでしょ」
「うちの故郷じゃ走り鷹鳶を手懐けたら責任持って面倒を見ろっていう教えがあるからね。その教えには逆らえないよ」
「何その面倒くさい教え」
どうやら双子は本気でこの走り鷹鳶を飼うつもりで意思を曲げる様子はこれっぽっちも見当たらない。
「まぁよいではないか。見たところこいつは私たちに危害を加える様子はない。それに・・・こいつは先ほどから私に熱い視線を向けているのだが・・・」
「まだ交尾道具として見てるのかこいつは・・・」
走り鷹鳶は繁殖期の名残があるのか、ダクネスのことをさっきからじっと凝視している。それには昼間のこともあり、興奮するダクネス。
「ところで2人は、この走り鷹鳶に名前はもう付けましたか?まだなら、私がいい名前を付けてあげましょう」
「おい、お前人様のペットに余計なことするな!」
「この走り鷹鳶の名は、きつつきまる!!これで決まりです!」
めぐみんが勝手に走り鷹鳶の名を決めたようだが、当の走り鷹鳶はというと・・・
「・・・・・・」プイッ
「なっ!!???」
「めぐみんもダメみたいだね・・・ちゃちゃまるって名前にもこうだし・・・」
「そりゃそうだろ・・・」
紅魔族的の名は走り鷹鳶にも不評のようで首をそっぽに向く走り鷹鳶。名を却下されためぐみんはショックを受ける。
「勝手に名前を付けんじゃないわよ。こいつの名前はもうとっくに決めてあるわ」
「ほお。どんな名前なのだ?」
「アレクサンダーよ」
「・・・今なんて?」
「アレクサンダーよ」
紅魔族の名よりはマシとはいえ、なんとも捻りもない名前にカズマは若干渋い顔つきになっている。走り鷹鳶は少なくとも嫌がってる様子はないので名前はアレクサンダーに決定した。そして、そろそろ眠くなってきたようでカズマたちは全員寝ることに決めたのだった。
ーアレクサンダーよー
真夜中の荒野の休憩場で冒険者たちは毛布をかぶってぐっすりと眠っている。ここまで見れば本当に安全地帯のようにも見えた。
「ピィーヒョロロロロロ!ピィーヒョロロロロロ!」
すると、アレクサンダーが途端に遠くの方で鳴き始めて、その声でカズマは起きる。
「ん?どうしたんだ、アレクサンダー」
カズマはアレクサンダーが鳴いている方向に視線を向ける。何があるのかと思って千里眼で遠くを見る。千里眼で見てみると、何かが近づいてきているのがわかる。
「おい、起きろお前ら。なんか近づいてきてる」
カズマはめぐみんたちを起こそうとするが、みんな疲れが溜まってるのか、起きる様子はない。
「おい、お前ら起きてくれよ。でないと、俺の顔を見れないようなことするぞ。いいのか?いいんだな?」
「言い訳あるか!何をする気だお前は!」
「うわあああああ!!?」
なかなか起きないめぐみんたちにいたずらをしようとしたカズマだったが、いつの間に起きたのかダクネスが背後から止めに入る。それにはカズマはビックリする。
「お、驚かすな!あと少しでお前の目の前ですごいことするつもりだったぞ!」
「本当に何をするつもりだったのだ・・・それより、何か変だぞ」
「ああ・・・アレクサンダーがそれに気づいたみたいでさ・・・」
「おい!全員起きろ!!」
他の冒険者の呼びかけで何人かは目を覚ました。近づいてきているものは動きが鈍く、依然としてゆっくりと近づいてきている。その正体を確かめるべく、冒険者の1人は火で明かりを照らす。明かりがともり、見えてきたのは・・・
『おぉぉぉぉぉ・・・』
『うわあああああああああああ!!!???』
大量のアンデッド集団であった。大量のアンデッドに起きた全員は大きな叫びをあげる。
「ここは頼む!俺はアクアを呼んでくる!」
今こそ走り鷹鳶の群れのご迷惑をかけたお詫びをするチャンスだと思い、カズマはアクアを呼びに向かった。すると・・・
「わああああああああ!!?何事!!?なんで私、目が覚めたらアンデッドにたかられてるの!!?カズマさん!!カズマさ―――ん!!」
(・・・あれ?これってもしかして・・・)
アクアがアンデッドにたかられていた。それを目撃して、カズマはこの事態の原因に気付く。そう、アクアはアンデッドを呼び寄せる体質でそれにつられてアンデッドたちはアクアに寄ってきたのだ。
「寝込みの襲撃なんて、やってくれるじゃないアンデッド!!迷える魂よ、眠りなさい!!ターンアンデッド!!」
アクアは休憩場周辺にターンアンデッドを放つ。
『ぼええぇぇぇぇ・・・』
このターンアンデッドによってアンデッドたちは浄化されていき、天へと召されていく。しかし忘れてはいけない。これはアンデッドに利く魔法である。これを休憩場周辺に放った。それすなわち・・・
「ほええええええええええ!!!???」
「ああ!!?しっかりしろウィズ!!誰か!!ウィズが!!」
リッチーであるウィズにも瀕死のダメージが入るのだ。瀕死のダメージを負ったウィズは死んだように気絶してしまい、ダクネスが慌てふためく。
「すごい!ゾンビを一瞬で!」
(・・・すいません)
それとはよそに次々と浄化されていくゾンビを見て、起きた冒険者はアクアに惚れ惚れするような表情になっている。またも自分たちに原因で起きた事態にカズマは心の中で何度目かわからない謝罪をする。
「あははははは!この私がいる時に出くわしたのが運の尽きね!さあ!片っ端から浄化してあげるわ!!」
(・・・すいません)
「なんて美しいプリースト様!まるで女神みたい!」
「あのクルセイダー様の連れの人だよ、あの方は!」
(すいません、すいません、うちの仲間が次から次へと、すいません)
「ゾンビの襲撃なんて珍しいこともあるもんだが、ちょうどあのプリースト様が居合わせてよかったな!」
(すいません・・・うちの女神がこの場にいなかったら多分このゾンビたちはわざわざ呼んできませんでした・・・)
楽観的なアクアと冒険者たちとはよそにカズマは心の中でもう何度も何度も繰り返して謝罪を心の中でしている。
「どうカズマ?この私の女神っぷりは?この旅の間ずっと活躍しっぱなしじゃないかしら?そろそろ私にお供え物の1つくらい捧げてくれてもバチが当たらないわよ?」
自分が呼んできたくせに図々しいことを平気で述べているアクア。そこへ商隊のリーダーがお金が入った袋を持って近づいてきた。
「いやー、また助けられてしまいました!今度こそは礼金を受け取っていただきますから!」
「すいません!!!!!絶対にいただけません!!!!!」
カズマは涙を流しながら必死になって礼金はいらないと言い放った。
ーすいまっせんんん!!!!!!!ー
翌日になり、馬車はアルカンレティアへ向かって再び走り出した。アクアと席を交代し、荷台でカズマはぼんやりと荒野を抜けた草原と後ろからついてくるアレクサンダーを眺めるのだった。アカメは御者台の屋根の上からアレクサンダーの一口サイズのご飯を軽く投げて与えてる。アレクサンダーは器用にそのご飯を口でキャッチして食べている。
「あ!見てみてあれ!」
アクアの一声で前方を見てみると、そこには綺麗なトンネルがあり、そのトンネルを通過し、抜けた先には、一目惚れしてしまうほどの美しい街が見えてきた。
「来たわ!水と温泉の都、アルカンレティア!!」
そう、この街こそが今回の湯治旅行の目的地であるアルカンレティアなのだ。アルカンレティアにたどり着いた馬車はアルカンレティアの馬車の待合上まで移動する。そこまでに至る道のりには、エルフやドワーフたちも何人かいた。
「すげぇ!エルフとドワーフだ!これぞまさにファンタジー!」
「わあ・・・すごい!景色もアクセルやアヌビスとは違う!空気もおいしいし、最高だよ!」
今までに見たことのない景色にカズマやティア、ダクネスも非常にわくわくした気持ちでいっぱいになっている。
「あれは、饅頭かしら?何ともおいしそうな饅頭ね」
「あれはこの街の名物のアルカン饅頭ですね。中々の美味と評判です」
「へぇ・・・よく知ってるね、めぐみん。もしかして、1度ここに来たことあるの?」
「ええ。アクセルの街に行く道中の中でここに滞在していましたから。そうでなくてもアルカンレティアは冒険者の間では有名な湯治場ですよ。ここの温泉の効能はたいしたものですから」
「昔、父に連れられていくつかの街に行った事はあるが、この街はそのどこよりも美しい。いい湯治になりそうだな」
「こんなことなら、もっと他の街に行ってみればよかったな」
アルカンレティアの美しさに見惚れている間にも馬車は待合上まで到着した。カズマたちは馬車から降りて、アルカンレティアの地に足を踏み入れた。
「じゃあお客さん、よい休日を」
馬車はアルカンレティアに降りたお客が全員降りたのを見計らって次の目的地に向かって移動を始めた。ゆえに、違う目的地へ向かうレッドドラゴンとブルードラゴンの赤ちゃんとはここでお別れである。
「ああ・・・じゃりっぱ・・・じゃりっぱが行ってしまいました・・・」
「どんちゃんも行っちゃった・・・元気でね、どんちゃん・・・」
「じゃりっぱとどんちゃんって何よ・・・」
「え?あのレッドドラゴンとブルードラゴンの名前だよ。赤いのがじゃりっぱで青いのがどんちゃん。飼い主さん宛に名前を書いた手紙を添えたから大丈夫。きっと可愛がってくれるよ」
めぐみんとティアはあのベビードラゴンズに勝手に名前を付けてしまったようだ。
「ドラゴンは1度名前を付けると二度と他の名で呼んでも反応しなくなると聞いたのだが・・・」
ダクネスがここでとっても重大なことを言い放った。
「おっま!!?人様のペットになんてことをしてくれたんだ!!?特にめぐみん!俺、昨日人様のペットに余計なことするなって言ったよな!!?この先あの可愛そうな名前で呼ばれるドラゴンが不便でしょうがないわ!!!」
「かわいそう!!?アレクサンダー、私のつける名前ってそんなにかわいそう?」
「ピィーヒョロロ」コクコクッ
「肯定してるわね」
「んなっ!!?なぜですか!!?」ガーン!
カズマの発言にショックを受けたティアは涙目でアレクサンダーに問いかける。アレクサンダーはカズマの意見に同意して首を縦に振る。それにはめぐみんもショックを受ける。
「全く・・・みんな本当に嘆かわしいですよ・・・ネーミングセンスがなくて・・・。特に、カズマなんてかっこいい名前を持っているというのに、何が不満なのですか・・・」
「全部だよ全部!!俺たちからすればお前ら紅魔族のネーミングセンスはおかしいんだよ!!ていうか待って。カズマって名前、紅魔族的にいかした名前なの?すごいへこむんだけど・・・」
「なんでですか!!?」
紅魔族的にカズマという名はかなりイケてる名前らしく、その事実を知ったカズマは落ち込みを見せている。
「さあみんな!どこに行く?この街の事なら何でも聞いて!なんせここは私の加護を受けたアクシズ教団の総本山なんだからね!」
「「「!!!???」」」
このアルカンレティアが双子が忌み嫌うアクシズ教団の総本山と聞いてカズマと双子は目を見開かせ、3人でひそひそと話し合う。
「今アクアはなんて言ったの?私の耳には変わり者で有名なアクシズ教団の総本山って聞こえたんだけど・・・気のせい?」
「いいや、俺の耳にもそう聞こえた。通りでアクアがここに来たがってたわけだ・・・」
「お頭がヤバイ街だって言ってた理由がこれだけでわかったわ・・・。そうだと知ってたら、絶っっっっっ対に来なかったわよ・・・」
この街に来た時の双子の印象は最高のものから一気に最悪なものに急降下した瞬間であった。ひそひそと話している間にも、この街の人間がカズマたちに話しかけてきた。
「ようこそいらっしゃいましたアルカンレティアへ!!」
「観光ですか?入信ですか?冒険ですか?洗礼ですか?」
「お仕事をお捜しに来たならぜひアクシズ教団へ!!」
「今なら他の街でアクシズ教の素晴らしさを説くだけでお金がもらえる仕事がありまーす!!」
「この仕事に就きましてはもれなくアクシズ教徒を名乗れる特典が付いてくる!!」
「「「「「どうぞ!!!さあどうぞ!!!!!」」」」」
「うわ・・・出たよこの変な勧誘・・・」
「だからこいつら嫌いなのよ・・・」
もてなしながらアクシズ教に勧誘しようとしているアクシズ教徒たちの勢いにカズマたちは苦い顔をしており、双子は嫌悪感丸出しの顔つきになっている。
「なんと美しく輝かしい水色の髪!!地毛ですか?羨ましい!!羨ましいです!!」
「そのアクア様みたいな羽衣もよくお似合いで!!」
アクアはというと街の住民にべた褒めされている。アクアはちやほやされて非常にご満悦な様子だ。
「こいつらといると頭がおかしくなりそうだわ・・・」
「もうこんなとこいたくないよ・・・早く宿屋に行こうよ・・・」
「そうだな・・・そこなら安全だろうし・・・」
「ああ・・・それに、ウィズの方も心配だ・・・早く休ませてやろう」
アクア以外は満場一致でこの場から離れるというティアの意見に賛同したカズマたち。
「うちにはもうアクシズ教のプリーストがいるもので・・・それじゃあ!!失礼します!!!」
カズマたちはアクアを無理やり引っ張ってその場を後にし、急いで宿へと向かう。
『さようなら同志!!!あなた方が良き1日であらんことを!!!』
そんなカズマたちを見送るアクシズ教徒たち。アクアはそんな信者たちに向かって手を振ってみせたのであった。
ーこのすば!ー
宿に向かう時でもアクシズ教徒の胡散臭い勧誘に何度もあい、ここに来るだけでも非常に疲れ切っているカズマたち。
「・・・お前らがアクシズ教を嫌う理由がよくわかったぜ・・・・」
「あんなのただの序の口だよ。アクシズ教はもっと恐ろしいのだから・・・」
「そうね・・・あんな胡散臭い勧誘だけならまだかわいい方だわ・・・」
「やばい、この街歩くのが恐ろしくなってきたんだけど・・・」
これまでの勧誘が序の口と聞いて、カズマはもう底知れない恐怖に襲われそうになっている。
「と、とりあえず、チェックインでもしとくか。マッチポンプで申し訳ないんだけど、あのおっちゃんからこの宿の宿泊券もらったわけだし、使わせてもらおうぜ」
「それならみんなはチェックインを済ませててちょうだい!私は、アクシズ教徒のアークプリーストとしてちやほやされてくるわ!」
「おいちょっと待て。その前にお前に言いたいことがある」
アクアがもうどこかへ行こうとしたところにカズマがちょっとだけアクアを呼び止める。
「わかってると思うが、ここで水の女神だとか言うなよ?絶対に大変なことになるからな。極力名前も使うな、偽名を使え」
「わかってるわよカズマ。私だってバカじゃないわ。大騒ぎになったら、慰安旅行どころじゃなくなるもの」
恐らくアクアは皆に崇められ、さらにちやほやされて大変になると考えているのだろう。が、カズマの場合はその逆、信者たちが怒り狂うことを危惧しているのだ。お互いに食い違いがあるが、一応は女神は名乗らないという点が一致しているのでカズマは安心する。
「じゃあ私、もう行ってくるわねー!」
「カズマ、なんだかアクアが心配なので一緒についていきます。私とアクアの荷物、部屋まで運んでおいてください」
「ああ、頼むよ」
アクアは待ちきれないと言わんばかりにどこかへと行ってしまった。めぐみんは一応アクアの監視という名目でアクアについていくのだった。
「俺たちは宿に入るか」
「早く入りましょう。あいつらが来る前に」
「そ、そうだな・・・ウィズを早く休ませてやりたい」
「あ、アレクサンダーはここで待ってて。後で街を回ろうね」
「ピィーヒョロロ」
当然ながらアレクサンダーは宿には入れないため、外で待機させ、自分たちはこの宿のチェックインを済ませに行くのだった。
ーこのすば!ー
宿のチェックインを済ませたカズマたちは部屋まで行き、ウィズをベッドに運び、寝かせてあげた。そして、カズマはダクネスにドレインタッチで体力を吸収し、それをウィズに分け与える。そして、しばらくたつと・・・
「・・・はっ!!!???」
「あ、ウィズ!よかったー、目が覚めたよー」
「たく、あのバカはウィズがいるってことを考えなさいよ」
ウィズが目を覚ました。これにはカズマたちは安堵する。
「・・・ここは・・・?」
「安心しろ、もうアルカンレティアについてるから」
「・・・なんだか、きれいな川の向こうで、ベルディアさんが楽し気に手を振っていました・・・」
「「「「えっ?」」」」
どうやらウィズは幽体離脱をしてしまっていたようで、魂が三途の川でデュラハンのベルディアと再会したようだ。
「ありがとうございます、カズマさん」
「お礼ならダクネスに言ってやってくれ」
「無事に帰ってこられて何よりだ」
何はともあれ、ウィズの魂が本体に戻ってきたことは素直に喜ばしい気持ちのカズマたちである。
「それよりもあのバカ・・・変なことやってないでしょうね?」
「うん・・・アクシズ教徒たちにちやほやしてくるって言ってたけど・・・」
「・・・不安だ・・・」
「ま、まぁ大丈夫だろう・・・めぐみんもついていってくれたし」
「そう?・・・そうかなぁ・・・不安しかないんだが・・・」
カズマたちはアクアが変なことをやらかさないか変に不安になってきている。
「私はもう大丈夫ですから、皆さんは街を見て来てはどうですか?」
「みんな、行ってみよう。私もこの街を見てみたい」
「・・・正直、外に出たくないんだけど・・・まぁ、せっかくだし、行こうかしら」
「うん、そうしよっか。アレクサンダーと一緒に回るって約束したし」
「そうするか」
カズマたちはウィズの言葉に甘えて、この街を観光することに決めたのだった。
ーこのすばー
ダクネスは町民のような平々凡々な服装に、双子は私服であるアラビアンの服に着替え、カズマと共にアレクサンダーを連れてアルカンレティアの街を観光する。
「みんな見てくれ!噴水があるぞ!」
「本当だな」
「なんであいつあんなにはしゃいでるのよ」
「やっぱり貴族だから珍しいって思ってるんだよ」
ダクネスは貴族として世間知らずなところもあるゆえに、噴水が珍しくはしゃいでいる。噴水を眺めていると、噴水に建てられている女神像に目が留まる。おそらくこれは女神アクアをイメージした女神像なのだろう。
「なんて美しい女神像だ・・・」
「あれが女神アクアなんでしょうね・・・忌々しい」
「こいつさえいなければ、アクシズ教徒はなかったのに・・・」
「そこまで言うか・・・。にしても、詐欺だな」
アクシズ教徒が崇める女神アクアも嫌っている双子は忌々し気な顔つきになっている。実際に本人は自分たちのパーティにいるのだが。それを知っているカズマは目の前にある女神像と実物を比べて、これは詐欺であると口にする。
「あっ・・・!りんごが・・・」
すると、たまたま通りかかった女性が転んでしまい、バスケットに入れていたりんごを落としてしまう。
「大丈夫ですか?今りんご拾います」
「助けなくていいわよ。そいつ絶対・・・」
「そうとも限らないだろう?助けるぞ」
「・・・私たちは助けないし、どうなっても知らないよ」
カズマたちとダクネスは女性のりんごを拾って助けるが、双子は助けようとはしなかった。理由は双子の本能が嫌な予感を察知しているからだ。全てのりんごを拾い終えたカズマたちは女性のバスケットにりんごを入れる。
「ありがとうございます!おかげで助かりました!」
「いや、これくらいはどうってことは・・・」
「あのぅ・・・何か、お礼をさせてはもらえないかしら?」
女性のしぐさにカズマは少なからずときめきを感じた。
「この先に、アクシズ教団が運営するカフェがあるんです。そこで私とお話しませんか?」
「結構です」
が、アクシズ教団の名が出た途端にそれも崩れ去った。そう、この女性はアクシズ教徒であり、双子の嫌な予感が的中したのだ。カズマはすぐさま断りを入れてアクシズ教の女性から逃げようとする。
「まぁまぁまぁ!!お待ちになってください!!私、実は占いが得意なんです!!お礼に占わせていただけませんか!!?」
「け、け、結構です!!ちょ・・・本当に結構なんで!!は、はな・・・離せえええええええ!!!!!」
だが、アクシズ教の女性は逃がさないと言わんばかりに力強く構ってきた。カズマは振りほどこうとするも、アクシズ教の女性の勢いが凄まじくて振り払えないでいた。
「今占いの結果が出ました!!!このままではあなたに不幸が!!!でもアクシズ教に入信できればその不幸が回避できます!!!入りましょう!!!さあ、入っておきましょう!!!」
「不幸なら今遭遇してる!!!ちょ・・・離せえええええ!!!!!」
悪質な宗教勧誘に双子は予想通りといった表情で遠くでその光景を眺めている。
「あーあ、だから助けない方がいいって言ったのに・・・」
「アクシズ教の悪質な手口の1つなのよね、これ・・・」
「呑気に見てないでお前ら助けろよ!!!ちょ・・・離せ・・・や、やめ、やめろおおおおお!!!」
「い、嫌だよ絶対!!!そんなこと言いだしたらそいつ・・・」
「おや!!??あなた方にも何やら不幸の相が!!!でもご安心を!!!この方と共にアクシズ教に入信すれば不幸が回避するだけでなく、あなた方に幸せが訪れます!!!なんでしたらそこのペットの走り鷹鳶もご一緒に!!!さあ!!!ぜひに!!!入信を!!!入信を!!!!!」
「ピィーヒョロロ!!??」
「こらクズマ!!!私たちを巻き込ませるんじゃないわよ!!!こいつら、見境がないのよ!!!」
「クズマ言うなあ!!!!」
カズマの助けの一声でアクシズ教の女性は狙いを双子とアレクサンダーにも定め、悪質な勧誘が双子にも迫る。
「ひいいぃぃ!!!か、カズマを連れてこっちに来るなああああああ!!!!」
「ダクネス!!!ダクネーース!!!早く助けなさいよコラああああああああ!!!!!」
「い、いい加減離せってお前・・・!!ダ、ダクネス、助けてくれ!」
あまりの悪質な勧誘にダクネスに助けを求める3人。ダクネスはエリス教の証のペンダントを出して、すぐに悪質なアクシズ教の女性に話しかけ、それを止める。
「すまない、私はエリス教の信徒でな。その者たちを勧誘するつもりならまず一言断ってから・・・」
「ぺっ!!」
「「「「「!!??」」」」」
アクシズ教の女性はエリス教のペンダントを見た瞬間、道端に唾を吐いた。アクシズ教の女性はカズマから手を放し、荷物を持ってすたすたと離れていく。そして、再びカズマたちに視線を向け・・・
「ぺっ!!」
またも道端に唾を吐いてそのまま去っていった。手ひどい扱いを受けて、カズマたちはポカーンとなる。
「・・・そういえば、アクシズ教とエリス教は仲が悪いって聞いた事あったわね・・・」
「お、おかげで助かったけど・・・これはさすがにひどすぎるでしょ・・・」
「ま、まぁ・・・あんまり気にする必要はないからな、ダクネス・・・」
ぞんざいな扱いをされたダクネスにカズマは気にかけようとしたが・・・
「ん・・・んん・・・///!!」
「・・・え・・・ダクネス、もしかして、ちょっと興奮したの?」
「し、してない・・・」
「だって・・・ん・・・って・・・」
「してない・・・」
「正直に言いなさい。帰ったらご褒美をあげるから」
「・・・・・・・・・し、してない・・・」
当のダクネスはアクシズ教の態度に興奮してしまっていた。アカメのご褒美に反応しても、それでもしてないと言い張った。まぁ、興奮してるのは見ればわかるが。
ーご褒美はお預けね。
何!!?そんな!!?ー
さっきの悪質な勧誘に合わないようにカズマたちは人通りの少ない道のりをあえて選び、その道のりを歩いていく。
「さすがはアクシズ教の総本山だな・・・」
「ううぅ・・・もう帰りたい・・・」
「この街にいる限り、あんなのがこれからも続くわよ・・・」
「それはさすがにないだろ・・・ちゃんと人通りの少ない道を選んだし、大丈夫だって」
人通りが少ないから悪質な勧誘はないと楽観的な考えをするカズマ。すると・・・
「きゃあああああ!!助けてえ!!!」
カズマたちの前に助けを求める女性と、何やら女性を追いかけている巨漢の男性が現れる。
「そこの方!!助けてください!!あのエリス教徒と思しき男が私を無理やり蔵へ引きずり込もうと!!」
「へへへ、おいそこの兄ちゃんと顔がそっくりの嬢ちゃん2人!!お前らはアクシズ教徒じゃねぇな?へっ!!強くてかっこいいアクシズ教徒だったなら逃げ出したところだが、そうじゃねぇなら遠慮はいらねぇ!!暗黒神エリスの加護を受けた俺様の邪魔をするってんなら、容赦はしねぇ!!!」
男がさっきからアクシズ教をかっこいいだの強いだの、女神エリスを暗黒神と言っている時点で男はアクシズ教徒であるのがわかる。
「あああ!!なんてこと!!今私の手元にあるのはアクシズ教団への入信書!!これに誰かが名前を書いてくれさえすればこの邪悪なエリス教徒は逃げていくのに!!」
とどのつまり、この襲われた女性役を引き受けてるこの女性もアクシズ教徒である。わかりやすい芝居に付き合ってやるほどお人好しでない・・・というか、関わったらいけないのはさっきの悪質な勧誘で身に染みているので、カズマたちは無視して通り抜ける。
「あああ!!?ちょっと見捨てないでそこの方!!大丈夫!この紙に名前を書くだけでアクア様から授けられる超すごいあれなパワーで強くてかっこよくなれます!その力で恐れをなしてこのエリス教徒も逃げ出すことでしょう!」
「そうだぜ!!しかも入信すると芸達者になったり、アンデッドモンスターに好かれやすくなったりと、様々な不思議特典もあるんだぜ?」
いらない効果でアクシズ教の素晴らしさを説いているアクシズ教徒2人にいい加減我慢の限界が来たのかダクネスがエリス教のペンダントを取り出す。
「私はエリス教徒だ!私の前でエリス様を暗黒神呼ばわりすると・・・」
「「ぺっ!!」」
エリス教のペンダントを見た瞬間、アクシズ教徒2人はさっきのアクシズ教徒の女性と同じ反応をしている。興味をなくした2人はそそくさと立ち去り・・・
「「ぺっ!!」」
またも道端に唾を吐いて、今度こそその場からいなくなった。あまりの奇人っぷりにカズマたちは一気にどっと疲れが出始める。
「・・・アクシズ教徒はこんなのしかいないのか・・・」
カズマの言い分は尤もである。
「・・・んんん・・・///!!」
「・・・エリス教徒もこんなんばっかじゃないだろうな?」
「この変態をうちのお頭と一緒にしないでちょうだい」
「そうだよ。エリス教徒のお頭に失礼だよ」
「あ、はい、すいません」
双子の言い分で、ウェーブ盗賊団の団長はまともな人であるとわかるカズマは少なからず安心したのであった。
ー興奮したろ。
してないー
その後もアクシズ教徒の怒涛の勧誘は続いた。
「おめでとうございます!!あなた方はこの大通りを通られた100万人目の方です!!記念品を贈呈したいのですが、この記念品、実はアクシズ教団がスポンサーとなっておりまして!なので、記念品受け取りのために、ちょっとお名前だけ、よろしいでしょうか?」
「絶対詐欺よね、これ・・・」
「いりません、お帰り下さい」
時には記念品の贈呈のために入信書を書かされそうになったり・・・
「あれ?あれあれぇ?ひっさしぶりぃ!!!私私!!元気してた?ほら、学校の同級生の!!同じクラスだったけど、覚えてる?アクシズ教に入信して、私だいぶ変わったから、わかんないよねー?」
「・・・こいつ誰よ」
「人違いです、お帰り下さい」
時には学校の同級生と偽って接近して来たり・・・
「あーら、ちょっとぉ!!かわいらしいお嬢ちゃんたちねぇ!!もしかして、2人は姉妹かしら?んまぁ、なんてそっくりなのかしら!!そちらの方はお友達?素敵なお友達でおばちゃん羨ましいわぁ!!あ、そうだ!!可愛いお嬢ちゃんたちに洗剤をプレゼント!!持ってってちょうだいねぇ!!あ、いいのよお礼なんて!!おばちゃんのご厚意だと思って受け取ってちょうだい!!この洗剤すごいのよぉ?なんせアクア様のご加護を受けてるからどんな汚れだってすぐ落ちるし、身体にも全く害がないの!!本当よぉ!!それにこの洗剤・・・飲めるの!!!」
「・・・飲める・・・」
「飲めるかああああああああ!!!!!」
時にはアクシズ教のおばちゃんに絡まれて洗剤を大量にもらったりともう散々な目にあってばかりである。疲れきったカズマたちは近くにあったカフェで昼食を取ることになった。もちろん、アレクサンダーは入れないので、外で留守番である。
「・・・どうなってんだこの街は・・・」
「これ・・・今までの勧誘とは度を越えてるんだけど・・・」
「もういや・・・何なのよこのくそったれな街は・・・」
勧誘の嵐にあったカズマと双子は死んだような目をして、机に突っ伏している。
「これも異郷の地の試練・・・ああ・・・堪能した・・・」
「お前は本当ぶれないな・・・」
「今だけはその笑顔が腹立たしいわ・・・私たちがこんな苦労してるってのに自分だけ・・・」
「そうだね・・・その楽しそうな顔見てるとぶん殴りたくなるよ・・・」
「やめとけ、喜ばすだけだぞ」
ドMのダクネスだけはぞんざいな扱いを受けて興奮しており、この街に好印象を抱いている。カズマはあきれ果て、双子は楽しそうなダクネスに八つ当たりしそうな視線を向けている。
「お待たせしました、お客様」
少し話をしている間に注文していた料理が届いた。料理がカズマたちのテーブルに並べられていく。
「あ、エリス教徒のお客様、こちらは当店からのサービスです。ごゆっくりどうぞー」
そう言ってウェイトレスがダクネスの足元に置いたのは犬用の皿に乗った骨だった。ダクネス・・・というかエリス教徒を犬扱いしているウェイトレスもアクシズ教徒なのだろう。これにはカズマも双子もマジかよ、みたいな顔つきになる。
「・・・なぁ3人とも・・・みんなでこの街に暮らさないか?」
「絶対嫌だ!!」
「寝言は寝て言えクソ女」
「地獄に落ちろドM【ピーーーッ】が」
「ああ!!ティアが普段私には言わない罵声を・・・!!これは新感覚だ!癖になりそうだ・・・!」
ダクネスはとことんこの街が気に入ったようでこの街に住まないか提案したが当然却下されるどころか、逆に罵られることになった。もちろんダクネスはこれで興奮しているが。
ーこのすば!ー
昼食を食べ終えたカズマたちは人通りが少ない道を通りながら自分たちの泊まっている宿に向かっている。
「よかったね、アレクサンダー。ただでご飯がもらえたよ」
「ダクネスに感謝して味わって食べなさい」
「・・・・・・」
「食わないって・・・いいからそれ捨てろよ・・・」
双子はアレクサンダーにエリス教へのサービスとして渡された骨を渡しているが、アレクサンダーは食べようとしない。食べないとわかった双子はすぐに骨をそこらにポイ捨てする。
「はあ・・・早く宿に戻ろうぜ・・・」
疲れた表情を見せながら、宿への道のりを歩いていると、カズマたちの目の前で10歳くらいの女の子が足をつまずいて転んだ。
「あ!大丈夫?」
「怪我してないか?見せてみろよ」
カズマたちはすぐに女の子に駆け寄り、怪我をしてないか足を確認する。
「ただのかすり傷みたいね。絆創膏でも貼れば治るわよ」
「ありがとう!お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
「・・・っ!!ああ!!こんな頭のおかしい集団がはびこる街にも、一凛の花のような少女が・・・!!う・・・うぅ・・・」
女の子の子供らしい純粋さを目の当たりにし、変人ばかりのアクシズ教徒しか目にしてこなかったティアは感激して涙が溢れそうになっている。
「ほら、立てる?どうかな?足、まだ痛む?」
「ううん、もう大丈夫!ねぇ、親切なお姉ちゃん、お名前教えて!」
「私はティアだよ。こっちのお兄ちゃんが、サトウカズマ。隣のお姉ちゃんがダクネス。そしてこっちの怖そうなお姉ちゃんが私の姉のアカメだよ」
「ちょっと、何自分を正当化しようとしてるのよ。何よその紹介のし方?私が怖いならあんただって怖いわよ」
ティアがさりげなくアカメを怖い人扱いしようとしており、それにはアカメはティアに突っかかる。
「ティアってどんな文字で書くの?書いてみて、お姉ちゃん!」
女の子は1枚の紙とペンを差し出して、ティアの名前を書いてほしいと頼んでいる。
「これくらいならいいよ。私の名前はね・・・はっ!!!!!」
ティアがその名前を書こうとして、その用紙を見て目を見開いて冷や汗を大量にかき始める。差し出された用紙には・・・アクシズ教団入信書と書かれていた。その用紙を見てカズマとアカメは嘘だろといったような驚愕な顔で唖然としていた。そう・・・この女の子も、アクシズ教徒の1人だったのだ・・・。
「・・・ふん!!!!!!」
ビリリリリリリィ!!!!!!
ティアは手元にあるアクシズ教団の入信書を女の子の目の前で力いっぱい引き裂いた。
「くそったりゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「お姉ちゃーーーーーーーーーん!!!!!!」
ティアは変えがたいアクシズ教徒の奇行ぶりに心の奥底からの悲痛な叫びをあげるのだった。
大切な友達のふにふらさん、どどんこさん。
遊びに来るとのことですが、どうか来ないでください。
お忙しいでしょうから、無理をなさらないでください。
こちらも何かといろいろあるので、お呼びできるまでお時間を頂けないでしょうか。
なにとぞ、なにとぞよろしくよろしくお願いいたします。
ゆんゆん
ゆんゆんの現状・・・
カズマたちが旅行に行っているので、屋敷は今日も留守である。にもかかわらず・・・というか、旅行に行ってること自体気づいてないゆんゆんは今日も屋敷になってきた。律儀に、豚の丸焼きの差し入れを持ってきて。
ゆんゆん「た、たのもー!!きょ、今日こそは勝負してもらうわよめぐみん!こ、これはほんの気持ち!皆さんで食べて!」
・・・しーん・・・
ゆんゆん「??も、もしもーし?」
当然、返事が返ってくるわけがないのである。
マホ「・・・お前、昨日からカズマの屋敷の前にいるけど、何してんだ?」
ゆんゆん「ひゃっ!!?あ、えっと・・・その・・・」
マホ「カズマか他の奴らに用があるなら今はいないぞ。あいつら、今旅行に行ってるからな」
ゆんゆん「・・・えええええええええええええええ!!!!????」
ようやく旅行に行ってるという知らせを受けて、ゆんゆんは大声をあげたのであった。その後は宿に戻って、静かに涙を流したのだとか。
次回、この不浄な温泉街に女神を!