変人ばかりが集まると有名なアクシズ教団の総本山、アルカンレティア。そこに住むアクシズ教徒の奇行ぶりは噂以上のもので嫌われても当然だ。そんなアルカンレティアにあるアクシズ教団の教会で・・・
バァン!!!!
「おらああああああああ!!!!責任者出て来おおおおおおい!!!!説教してやるああああああああああああ!!!!」
アクシズ教徒の奇行にやられた挙句、小さな少女までもがアクシズ教徒の毒牙に染まったことにたいして怒り狂ってるティアがここの司祭に抗議しにやってきた。アカメもカズマも付き添いでやってきた。そんなクレーマーティアの対応をしに、アクシズ教徒のシスターがやってきた。
「あらー、どうなさいましたか?入信ですか?洗礼ですか?それとも・・・わ・た・し?」
「え・・・あ・・・いや・・・俺はこいつらの・・・」
「何鼻の下伸ばしてんのよバカ」
「いや・・・あの・・・」
シスターの対応に一瞬ドキッとしてしまったカズマは頬を赤らめている。
「冗談ですよー、何本気にしてるんですかー?頭大丈夫ですかー?ふふふふふ」
「どうしよう、グーで殴りたい!!」
「奇遇だねカズマ・・・私も1発ぶん殴りたい!!」
シスターの小ばかにした態度はやはり女神アクアを崇拝してるだけあって、腹立たしい。そんな気持ちになったカズマと双子である。
「ムカつくのはわかるけど・・・んな遊びに付き合ってる暇はないでしょうが。んなことより、ここにだって司教とか司祭とかいるでしょ?そいつ出しなさいよ。ぶん殴ってやる」
「ゼスタ様にご用ですか?残念ですが、最高司祭のゼスタ様は布教活動という名の遊び・・・いえ、アクア様の名を広めるため出かけて留守にしております。すみませんが、またのお越しを・・・」
「あんた今とんでもない事を口走ったわね」
「あんな迷惑行為を遊び半分でやらないで!!こっちが滅入っちゃう!!」
あの執拗な勧誘を遊びで済ませようとしている最高司祭ゼスタという人物に対し、凄まじい怒りを覚える双子。
「まぁ・・・いないんならいいんだよ。それより、ここに眼帯を付けた魔法使いの女の子と水色の髪のアークプリーストが来なかったか?俺たちの仲間なんだが・・・」
最高司祭がいないとわかったカズマは別の本題、めぐみんとアクアがここに来ていないかを尋ねている。
「ああ、あのアークプリースト様はあの懺悔室の方を任せました。当教会のアークプリーストたちは出払っていますので。それで、魔法使いの方は・・・」
シスターの視線の先には大量のアクシズ教団の入信書を持ち、隅っこでガタガタと恐怖で震えているめぐみんがいた。どうやらめぐみんも執拗な勧誘にあい、心が折れてしまったようだ。それにはカズマと双子はめぐみんに同情する。
「ところで、あちらのお連れさん、子供たちに石を投げられてますけど・・・」
玄関先の方を見てみると、ダクネスが子供たちに石を投げつけられ、いじめられてる光景が広がっていた。
「あ!こらー!!何やってんだーーー!!」
それを見たカズマが子供たちを慌てて追い払った。当のダクネスは興奮している。
「か、カズマ・・・この街は女子供に至るまで、いろいろとレベルが高いな・・・!」
「そのエリス教徒のお守りしまっとけ!わざとか!」
「断る!」
カズマはエリス教徒のペンダントをしまえとダクネスに言うが、ダクネスは力強く断った。
ー断ああある!!ー
カズマがダクネスの相手をしている間に双子は懺悔室に向かい、アクアを呼びに来ている。
「アクア。いるんでしょ?出て来てよ」
ティアが声をかけているが、当のアクアは出てこようとはしない。それにイラついたアカメは強めにノックして出てくるように強めに言った。
「おいアクア!出てきなさいよ!いつまで引きこもってる気よ!」
それでもアクアは懺悔室の応接側から出てこようとしない。それにはアカメはさらにイラつきを増す。
「お姉ちゃん、もうこっち側に入った方が早いと思うの」
「・・・ちっ、クソアクアめ・・・面倒なことを・・・」
懺悔側に回った方がアクアは出るだろうと考えたティアは先に懺悔室の懺悔側に入る。アカメはイラつきを隠さないまま、それに続くように入った。懺悔室には机が1つ置かれているだけ。向こう側にはカーテンで隠されている。イラつきが収まらないアカメはちょっとの休息と思ってその椅子に座る。すると・・・
「ようこそ迷える子羊よ。さあ、罪を打ち明けなさい。神はそれを聞き、許しを与えてくれるでしょう」
応接側からアクアの声が聞こえてきた。どうやらこうやって懺悔にやってきた人の悩みを解決しているようだ。が、途端に聞こえてきたアクアの声にアカメはさらにイラつきを増した。
「あんた・・・よくものうのうとしてられるわね?この街いったいどうなってんのよ?おちおち観光もできないじゃない。つーか、あんたなんでそう平然といられるのよ?頭湧いてんじゃないの?あ、元から頭湧いてたか」
「お姉ちゃん・・・イライラのせいで毒舌がさらにきつくなってる・・・」
アカメの文句にアクアはシンと黙り込み、しばらくして口を開く。
「なるほど、自分の頭が悪いせいで人にきつく当たったと。深く、深く反省しなさい。さすれば、慈悲深い女神アクア様はお赦しを与えてくれるでしょう」
「ああ!!?誰が頭が悪いですって!!?ふざけんな!!頭悪いのはそっちでしょうが!!アークプリーストっぽいことができて、何調子乗ってんのよ!!いい加減出てきなさいよコラ!!お楽しみタイムは終わりよ終わり!!」
アクアの言葉にさらに怒りが増すアカメ。それにたいしてアクアはまた黙り込み、また口を開く。
「他に懺悔はありませんか?なければこの部屋から出て、再び前を向いて生きなさい」
「おい、何無視してんのよ?いい加減出てこいっつってんのが聞こえないの?というか、この街の連中をどうにかしなさいよ。あんたアクシズ教徒に褒めちぎられてたでしょ?あんたさえなんか言えば、あいつら大人しくなるかもしれないでしょうが」
「アクア、もういい加減出て来てよ。もう十分楽しんだでしょ?早く宿に戻ろうよ」
アカメは怒り交じりに、ティアは落ち着いてアクアを外に出させようと説得しようとしても、アクアはまた、黙るばかり。
「・・・もう何もないようですね。では、私は次の迷える子羊を待つとしてます。さあ、お行きなさい」
「部屋から出ろつってんでしょうが!!!!このくそったれ【ピーーーーーーーッ】女ぁ!!!!」
「出ていって!!!懺悔が終わった人は出ていって!!!」
「こいつ・・・!!!もう我慢の限界だわ!!!無理やり引きずり降ろして・・・」
「待ってお姉ちゃん!自分から開けようとしたらアクアの思うつぼだよ!」
アクアの態度に我慢の限界が来たのかアカメが無理やりカーテンを開けてアクアを引きずり降ろそうとしたところでティアが慌てて止める。
「じゃあどうすんのよ?このままだとこいつ調子に乗りまくって・・・」
「大丈夫。私にいい考えがあるよ。私も今のアクアには腹が立つし、手伝うよ」
アクアには聞こえないように耳打ちをする双子。ティアの出した案にアカメは納得して、再度座り直す。そしてティアはアクアに語り掛ける。
「・・・申し訳ございません。実は・・・アークプリースト様に打ち明けたいことがあります」
「!聞きましょう聞きましょう!さあ、あなたの罪を告白し、懺悔なさい」
ティアの言葉にアクアは上機嫌になる。
「実は・・・仲間のプリーストが大事にしていた宴会芸に使うコップを割ってしまって捨ててしまいました」
「!!!!????」
が、その上機嫌は一気に崩れ去り、アクアは黙ってしまった。
「後、滅多に手に入らない最高級のお酒を手に入れたと自慢していたので、腹が立って仲間のプリーストがお風呂に入ってる間に姉と一緒にめちゃくちゃおいしいそのお酒を全部飲んでしまいました」
「あ、そういえばそんなことあったわね・・・」
「!!!!!?????」
「だけど、最初は一口のつもりだったので・・・このままではまずいと思って、どうせ味なんてわかんないだろうという姉の助言に従い、1番安物のお酒を瓶に入れなおしました」
「何言ってるの?ねぇ、ティア何を言っちゃってるの!!?」
ティアの次々と出てくる懺悔の告白にアクアは焦りまくっていた。それに構わずティアは告白を続ける。
「そのプリーストがあまりに問題ばかり起こすと仲間の冒険者が嘆いていたので、私はその手助けとして、この街に来る前に、エリス教のプリースト募集の紙を冒険者ギルドのメンバー募集掲示板に張り付けて・・・」
「わああああああ!!!!背教者め!!!今天罰を・・・」
ガシッ!!!
ぎゅううううううううう!!!!
ティアの告白に我慢の限界が来たアクアが天誅を食らわそうとカーテンを開けて突っかかろうとした時、出てきたのを見計らったアカメがその両手を掴み、きつく、それはもうきつく力を入れて握った。
「やっと出てきたわねコラ・・・!誰が頭が悪いですって?あまり調子に乗るんじゃないわよこのクソプリースト・・・!」
「ぎゃああああああああああ!!!!痛い痛い痛い痛い痛いいいいいいいいいいいい!!!!ごめんなさい!!!!調子に乗ったこと謝るから!!!!罪を全て許しますから手を放してえええええええええ!!!!」
「いいよお姉ちゃん!そのまま手を折る勢いでやっちゃって!!」
もはやこれはアクシズ教の奇行ぶりをアクアで八つ当たりをしてるようにしか見えないのであった。
ー作戦勝ち!ー
ようやくアクアが出てきたので、双子は懺悔側から退室し、アクアに応接側の扉を開けてもらった。応接側では、さっき双子にやられたおかげでアクアが泣いていた。
「うぐ・・・ひっぐ・・・うええぇぇ・・・」
「はぁ・・・ねぇアクア、さっきのはやりすぎたって。謝るから泣き止んでよ」
「・・・本当にアークプリースト募集の件は嘘なんでしょうね・・・?」
「最初の2つはともかく、最後のだけは嘘だから安心なさい」
「ちょっと待って。今最初の2つはって言った?」
アカメが放った最初の2つはと言っている時点で宴会芸のコップとお酒に関しては真実であるというのがわかる。
ガチャッ
すると、懺悔側の扉が開く音が聞こえてきた。どうやら懺悔にやってきた人が現れたようだ。そこで双子は自分たちが応接側にいるのはまずくないか?という考えがではじめる。
「ようこそ迷える子羊よ。さあ、罪を打ち明けなさい。神はそれを聞き、許しを与えてくれるでしょう」
アクアはそれに構わず、懺悔人の懺悔に耳を傾ける。
「ああ・・・どうか聞いてください・・・。自分は長くアクア様を崇めてきたアクシズ教徒です。しかし!!エリス神の肖像画のあの豊かな胸!!あれが自分を惑わせるのです!!あの胸は悪魔の胸だ!!どうか・・・どうか他の女神に心を傾けてしまった罪深き自分をお許しください・・・!」
非常にどうでもいい懺悔に双子はそんなことで懺悔室に来るなよと懺悔人を引っ叩きたくなった。だがアクアは懺悔人に耳を傾け、優しい顔で優しく語りかける。
「安心なさい。神は全てを許します。汝、巨乳を愛しなさい。汝、貧乳を愛しなさい。アクシズ教は全てが赦される教えです。それはたとえ、ロリコンでも、ニートでも、人外ケモ耳少女愛好者でも、アンデッドや悪魔部類以外であれば、そこに愛があり犯罪でない限り、全てが赦されるのです」
「おお・・・おおおおおおおお・・・!!」
アクアの言葉に懺悔人は感涙の涙を流しながら感動した声をあげた。これのどこに感動の要素があるのかわからないでいる双子である。いや、それはアクシズ教以外の全人類もそうだが。
「汝、敬虔なる信徒よ。悪魔に惑わされないよう聖なる呪文を授けます。・・・エリスの胸はパッド入り」
「「は?」」
明らかに女神エリスに対する悪口でしかない呪文に双子は何言ってんだこいつと言った顔をアクアに向ける。
「今後惑わされそうになったなら、これを唱えなさい。他に惑わされている者がいれば、これを教えてあげるのもいいことですよ」
「エリスの胸はパッド入り・・・な、なんだか一気に目が覚めました!!」
懺悔人はなぜか感激している。
「さあ、もう1度一緒に」
「「エリスの胸はパッド入り!」」
「「・・・・・・」」
謎の復唱に双子は頭が抱えそうなくらい頭が痛くなりそうになる。
「素晴らしい呪文をありがとうございます!!」
そう言って懺悔人は懺悔室から退室していった。悪口でしかない呪文を教えたアクアに双子は呆れた顔になっている。
「あんた仮にも女神を自称するんだったら他の女神を陥れるようなことやめなさいよ」
「そうだよ。ただでさえ信用性がないのに一気に信用が落ちるよ?」
「何言ってるの?神にとって信者数と信仰心はとても大事なことなの。それがそのまま神の力になるんだから」
「あんなのが力ねぇ・・・嘘くさ」
「信じられないね」
ただでさえアクアが女神であると信じていない双子は、アクアの言うことは聞く価値なしといったような態度をしている。
「まぁ聞きなさいな。私の信者たちは数こそ少ないけれど、それはもう強い信仰を抱いてくれてるわ。そんなかわいい信者たちを守るためなら、私は何だってしてやるわよ!」
胸を張って堂々と今までそんなこと言わなかったアクアに双子は感心するところはあれど・・・
「あんたの思いはわかったわ。・・・でもそれとこれとは話が別よ。あんたがどうにもできないなら・・・」
「火を持ってこようよ。この街全部を焼き払ってアクシズ教を滅ぼしてやる」
「待ってえ!!!ねぇ、なんで!!??なんで2人はそこまでうちの信者を嫌うの!!??みんないい子たちなのよ!!??みんなの居場所を奪わないであげてよぉ!!!」
「「うっさい疫病神!!死ね!!」」
「うわああああああああ!!2人がついに死ねとか言ったああああああああ!!!女神なのに!!私女神なのにいいいいいいい!!」
アクシズ教徒をどうにかしてもらおうと思ったのに、当のアクアがあんな様子ゆえ、双子は自分たちでアクシズ教を滅ぼそうと強硬手段に出ようと懺悔室から出る。アクアは泣きながら必死に止め、懺悔室から出てその様子を確認したダクネスがそれを止めた。ちなみに双子の行為にカズマとめぐみんは止めなかった。理由はやはりアクシズ教徒が関連していた。
ーこのすば!ー
双子をなんとか大人しくさせることに成功し、疲労しきったカズマたちは自分たちが泊まる宿屋に戻ってきた。ちなみにアクアはまだ教会に残って懺悔人の悩みを解決するようだ。
「ただいまぁ~・・・」
「あ、おかえりなさい!」
唯一宿に残っていたウィズは部屋でゆっくりしていた。顔色ももうすっかりよくなったようだ。
「もう体は大丈夫なのか?」
「お風呂をいただいて、すっかり回復しました」
「それはよかった」
ウィズの体調が回復して、カズマたちは安心した。
「混浴のお風呂、誰もいなくて貸し切りみたいでした」
「え!!!???そ・・・それって・・・」
混浴の風呂と聞いて、カズマは混浴の光景を妄想をする。実に男らしい煩悩たっぷりの顔にもなっている。
「それで皆さん、観光の方はどうでした?」
観光はどうかと聞かれて、ダクネスを除いたメンバーたちの顔色が一気に悪くなった。
「アクシズ教徒・・・怖いです・・・」
「クソったれな街だったわ」
「もう行きたくない街ナンバー1になった」
たとえどんなことがあってもこの街には行きたくないという考えを示している双子とめぐみん。この中にカズマも含まれてるが、未だに混浴のことを考えている。
「わ、私は・・・明日も観光しようかな・・・」
「ダクネスぅ・・・」
「1人で行ってろ」
ダクネスは相変わらずぶれないのであった。
「まぁ、明日はとりあえず自由行動ってことで。俺は今から風呂に入ってくるから」
「ああ、ちょっと待ちなさい」
カズマはアカメに呼び止められ、混浴来たかと期待を大きく膨らませた。
「風呂に入るんだったらアレクサンダーを連れていきなさい。この宿の温泉、走り鷹鳶は別入り口から入れるはずよね?」
「うん、別入り口なら問題なく入れるよ。てことでカズマ、アレクサンダーは昨日お風呂に入ってなかったから汚いでしょ?きれいにしてあげてよ」
が、その期待は一気に崩れ去り、カズマは嫌そうな顔になっている。何が悲しくて人様のペット・・・それもオスと入らなきゃいけないんだといったように。
「・・・なんで?」
「なんでって、アレクサンダーはオスだよ?走り鷹鳶と言っても、さすがに女湯に入れるのはまずいでしょ」
「お前らが混浴に入ってアレクサンダーを洗えばいいだろ」
「いやよ。あんたの考えはお見通しよ」
「どうせあわよくば混浴に入れさせようとか考えてるんでしょ?」
「そそそそそ、そんなこと考えてねーしぐえふ!!??」
考えを言い当てられて、カズマは激しく動揺している。もう正解だと言っているようなものだ。そんなことは構わず双子はカズマにラリアットを決めさせ、倒れたところでカズマの両手両足を掴んで出口まで運ぶ。
「お、おい!!?何すんだ!!や、やめ・・・」
「「つべこべ言わずさっさと行け!!」」
「へぶっ!!?」
双子はカズマを宿の外に放り投げ、カズマはべちゃりと顔から地面に着いた。
「いい?ちゃんとアレクサンダーをきれいにしてね!」
「もし洗わなかったら、殺すわよ」
それだけ言い残して双子は宿屋の扉を閉めていった。外に放り出されたカズマは外で待機していたアレクサンダーを見る。
「・・・アレクサンダー・・・お前も大変だな。あんな凶暴なご主人様を持ってしまって」
「ピィーヒョロロ」
カズマは仕方なくアレクサンダーを連れて、遠回りでこの宿の温泉へと向かうのであった。入るのはもちろん、混浴だ。
ーこのすばー
カズマを外に放り出した後双子は部屋を出たついでに盗賊団員に送るためのお土産を買いに店の中にあるお土産コーナーに足を運んだ。
「無難に饅頭でいいわよね。ただでさえ人数が多いんだし、いちいち選ぶのも面倒だわ」
「それがいいと思うよ。それに・・・ここに置いてあるお土産もどれもガラクタやトラウマの品物ばかりだし・・・」
双子はお土産をアルカン饅頭だけに絞ったようだ。理由は盗賊団員の人数が多いのと、置いてある代物がガラクタや双子のトラウマの品物、アクシズ教徒が提供する洗剤と石鹸だからだ。しかも・・・
「・・・これ見よがしに入信書があるの、何とかならないかしら?」
「こんなのだれも見向きもしないし、入信もしないって・・・」
何故か商品の中にアクシズ教団入信書が混じっている。こんな所にもアクシズ教徒の勧誘の手が回っていて、双子は深くあきれるばかりである。
「ねぇそこの青い髪のあなた」
「はい?」
ティアがアルカン饅頭の箱を手にしようとした時、誰かに声をかけられた。その人物は赤い髪で猫科のような黄色い瞳をした大きな胸を持った女性だ。女性はじーっとティアを見つめている。
「なんでしょうか?」
「・・・違うか・・・」
「ちょっと、あんたうちの妹になんか用?」
ティアをまじまじと見つめている女性はアカメの声にはっと驚く。
「ご、ごめんなさいね。その髪色に顔がうちの知り合いによく似ていたから、つい・・・」
「私と同じ顔に同じ髪色?そんな人がいるんですか?」
「ええ。その子はちょっと変わった子でね・・・いつもどこかに放浪してるから、あなたを見てもしかしたらって思ってね・・・」
「それで勘違いされるなら迷惑な話ね」
「本当にごめんなさいね」
毒のある言い方をするアカメに女性は謝罪する。
「ところで、あなたはこの子と顔がよく似てるけど・・・」
「私とこの子は双子よ。そして私がこの子の姉」
「あら、やっぱり?」
「残念ながらそうなんですよね・・・今は仲間が少し前に怪我をしまして、その人と一緒に湯治旅行をしてる最中なんです」
「ちょっと、何が残念よこの愚妹」
「事実を包み隠さず言ってるだけじゃん、残姉ちゃん」
女性の疑問に答えた双子は小さいことでも突っかかり、睨みあいをしている。
「奇遇ね。私も湯治の最中なのよ。自分の半身と戦った際に力を完全に奪いきれなくてね。それで本来の力を取り戻すために湯治してるの」
「それうちの魔法使いが聞いたら思いっきり食いつきそうね」
「ふふ、あなたの仲間って、ひょっとして紅魔族?私が魔法を教えた紅魔族の女の子、元気にしてるかしら・・・」
「魔法を教えた身としては、やっぱり気になるものなんですか?」
「そりゃそうよ。あの子、元気でやってるといいのだけれど・・・」
女性が浮かべるその顔は何やら懐かしがこみ上げたような笑みを浮かべている。
「急に引き留めちゃってごめんなさいね。私はもう行くわね。・・・それと、明日からこの街の温泉はあまり入らない方がいいかもしれないわよ」
「え?それってどういう・・・」
女性は双子に手を振って、意味深な言葉を残して去っていった。
「行っちゃった・・・最後の言葉、なんだったんだろう?」
「どうせアクシズ教徒関連でしょ。気にすることはないわ。それよりさっさと饅頭買いましょう」
女性の言った事は気にはなるが、それは置いておいて自分たちは盗賊団員のお土産を買った双子。
「さて、と・・・お土産も買ったし、部屋に戻ってめぐみんたちを誘って・・・ん?」
「どうしたの?」
「いや、なんか変なおっさんが突っ立ってるわ」
お土産屋から出ようとした時、アカメはリビングに突っ立っていた顎髭を生やした男を見つけた。その男の顔はまるで死んだような目をしていた。
「・・・はぁ・・・まったく人が下手に出ていれば・・・やれ入信だ、やれ勧誘だなんだかんだなんだかんだ言いやがって・・・くそ!!!ああああああああああああ!!!!」
「「!!!???」」
男は急に狂ったように怒りだし、持っていた石鹸を地面に叩きつけた。これだけでアクシズ教徒にだいぶやられたというのがわかる。
「はぁ・・・はぁ・・・ん?」
「「あ・・・」」
男が息を整えると、双子がいるのに気が付いた。そこで双子もバッチリと目があってしまった。
「・・・違うか・・・あいつはあれほど若くは・・・」ブツブツ・・・
男は何かぶつぶつ言いながら宿から出ていった。
「あ、あの人もだいぶやられたみたいだね・・・」
「そ、そうね・・・ご愁傷様」
双子は男を気の毒に思いながら部屋に戻ってめぐみんたちを温泉に誘うのであった。
ーこのすばー
部屋に戻った頃にはめぐみんは少しは元気を取り戻し、温泉に入れる状態になった。それに安心した双子はめぐみんとダクネスを温泉に誘った。ダクネスたちは道中で疲れていた(めぐみんはそれ+アクシズ教徒の勧誘で疲労)のでそれに了承した。そして現在4人は女湯の脱衣所で服を脱いで、温泉の中に入る。
「お、おいめぐみん!泳ぐのはマナー違反だ!」
「はは!まぁまぁそう言わずに!」
「そうそう、むしろ今日は滅茶苦茶疲れたんだから大目に見てよ」
「だからといってティアまで湯舟に頭まで浸かろうと・・・ひゃっ!!?あ、アカメ!何をする!!」
「女に胸触わられたくらいで何驚いてんのよ?私たちは冒険者稼業をしてんのよ?そんな女々しくてどうすんのよ?」
「いやその理屈はおかし・・・ああ!!タオルが!!?」
「何よ?何よこの胸は!自慢してるの?自慢でもしてるのかしら?」
「アカメ、気持ちはわかりますよ。なんですかその胸は?私たちにも分けてもらいたいものです」
「何を言って・・・お、おい2人とも、やめろ!」
「2人とも、自分が育たないからってダクネスに当たらないでよ」
「「あんた(あなた)が言うな(言わないでください)!!」」
温泉に入った4人は疲れを癒しながらも普通の女子らしく、大いに盛り上がっている。4人の遠くでは、めぐみんが連れてきたちょむすけがゆったりと湯舟に浸かって気持ちよさそうにしてる。どうやらちょむすけはお風呂が好きなようだ。
「はぁ・・・それにしても・・・気持ちいぃ~・・・」
「ええ。たまには長湯するのも悪くないわね」
「ですね。本来はものぐさなカズマたちを外に連れ出し、アクアに引き寄せられたアンデッドを狩ろうと思ってカズマを焚きつけたのですが・・・これも悪くありません」
「ここに来ようと思ったのはそんな理由だったのか・・・」
どうやら昨日のアンデッド騒ぎはめぐみんの意図的な策略によるものだったようだ。まぁ、本人は未だ寝ていたので、その計画は計画の一部であるアクアによって崩れてしまったが。
「しかし、あいつはどういう男なのだ?保守的で臆病かと思えば、身分の差など気にせず、貴族相手ですらひどく強気なところもあるし・・・変わった奴というか・・・不思議な奴というか・・・」
「しっ!ちょっと黙ってて」
ダクネスがカズマのことを話題にすると、ティアがストップをかけた。
「隣側は混浴だよ。目の前に男湯と混浴があれば、カズマはどちらを選ぶと思う?」
「小心者で肝心な時にヘタレてしまうあいつだが・・・大義名分さえあれば、堂々と混浴に入るに違いない!」
壁の向こうでカズマが混浴に入っていると予想をした4人はお互いに顔を合わせ、首を縦に頷く。
「カズマ!そこにいるのでしょう?壁に耳をくっつけて、ダクネスとティアがどこから洗うのか想像したりして、はぁはぁ言ってるのでしょう?」
「ちょ、ちょっとめぐみん!!?恥ずかしいからやめて!!」
「そうだ!!なぜそこで私たちを引き合いに出す!!?」
「ちょっとアレクサンダー!カズマといるんでしょう?いたら返事をなさい!」
めぐみんとアカメが混浴の方に向かってカズマがいないか確認をしている。そして、混浴の方はというと・・・
(バカ!おま・・・静かにしろ!)
「~~~~~!!!」
案の定カズマは混浴で壁に耳を澄ませ、めぐみんたちの会話を盗み聞きしている。アレクサンダーは声をあげようとしてるが、カズマが無理やり口を閉じさせてそれを阻止されている。
「・・・返事がない。いないようね」
「疑いすぎたかな。アレクサンダーを洗ってくれてるし、お礼と謝罪を合わせてジュースでも奢ってあげよっと」
返事がないため、4人は混浴にカズマはいないと判断する。
「確かに、ちょっと失礼だったな」
「なんだかんだ言って、あれで頼りになりますからね」
「あいつはああ見えて、仲間が本当に困っていたら、必ず助けてくれる男だ」
「うん。そうだね。カズマは私たちが盗賊団だって知った今でも、私たちを助けてくれたし、今もパーティに残してくれてるしね」
「そうね。クズさ加減はあれど、素直じゃないだけで、根はいい奴よ。お頭ほどじゃないけど、尊敬に値するわ」
4人はカズマのダメさ加減に呆れはすれど、本当に高く評価しており、頼りにしているのがわかる。
(・・・な、なんか・・・盗み聞きしてる自分が、恥ずかしくなってきた)
混浴で盗み聞きしていたカズマは照れ臭そうにしていた。同じく会話を聞いていたアレクサンダーはカズマに入浴に戻るようなしぐさをした。カズマはそれに従い、入浴に戻ろうとした・・・
「ところでめぐみん、さっきから気になってたんだけど、そのお尻の・・・」
「!!」
「~~~~!!!」
時に女湯の会話を聞いて、アレクサンダーの口を再び閉じさせ、またも盗み聞きをする。
「おっと、いくらティアといえど、それ以上言うならただじゃ済みませんよ」
「ひゃっ!!?ちょ・・・めぐみんやめて・・・胸を触らな・・・んん・・・///」
「お、おい、何をやって・・・ひゃん!!?あ、アカメ!お前はまたそこを・・・」
「全くいつ見ても忌々しい胸ね。私なんて・・・明らかに人種差別よ」
女湯の向こうで何が起こってるのか気になるカズマは、ついに壁の隙間から女湯を覗こうとする。
「今です!!!」
「はああ!!!」
「うらあ!!!!」
ドオンッ!!!!!
「ぶはあ!!!???」
めぐみんの合図でダクネスとアカメは力いっぱい拳を壁に叩きつけた。壁に伝わった反動でカズマは殴られたかのように吹っ飛び、温泉に着水した。
「ほら見たことか!!!!やっぱりいたよあの変態!!!!」
「やはりな!日頃カズマから感じるあのエロい視線!あんな欲望に塗れた男が混浴にいないはずがない!!」
混浴から聞こえる水飛沫によってカズマが混浴にいたということが4人にバレてしまった。
「・・・クリエイト・ウォーター!!!」
「「「「ひゃあああああ!!?冷たっ!!!」」」」
カズマは反撃としてクリエイト・ウォーターを壁の上に放ち、水を女湯に入れた。それに怒った4人は石鹸や桶を混浴に向かって大量に投げていった。そしてめぐみんはちょむすけまで混浴に投げた。
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃーーーー!!?」
「ピィーヒョロロ」
落ちてきためぐみんをアレクサンダーが首でキャッチした。ちょむすけに怪我がなくて安心するカズマ。
「おい!!猫を投げんな!!!」
「盗み聞きした代償として、洗ってあげてください!!全く・・・私も身体を洗ってきます」
ちょっとは落ち着きを取り戻しためぐみんは身体を洗おうと湯舟から出て、他3人はゆっくりと湯舟に入る。
「あ、お前らに1つ注意な」
「何よ?今更話なんか・・・」
「もしアクシズ教徒がいたら、気を付けろよ」
「「は?」」
カズマの忠告を聞いて、双子は嫌な予感がして恐る恐る後ろを振り返る。そして、その先には・・・
「この石鹸ね、よく泡立つし、どんなステータス異常だって直るし、しかもこれね・・・食べても大丈夫なの!!天然素材で新鮮だから!!入信したらもらえるから!!タダだから!!」
「ひいぃ!!!いりません!!!やめてください!!!もううんざりです!!!!!」
従業員であるアクシズ教徒の女性にめぐみんが絡まれていた。そして、アクシズ教徒の魔の手は3人にも・・・
「さあ!!そちらのお嬢さん方もぜひともこちらへ!!洗ってあげますよ!!」
「ひぃ!!!や、やめろ!!じりじりとこっちにくんな!!」
「今ならポイント2倍だから!!タダだから!!」
「ポイントとか耳障りのいい言葉で誤魔化すのはやめてぇ!!!!」
「どうですか?エリス教徒のお客様?天に上るような気持ちよさでしょう?」
「ガボガボガボボボ・・・!」
「・・・遅かったか」
双子はめぐみんと同じように絡まれ、ダクネスは顔を無理やり温水に突っ込ませている。もうやりたい放題である。
「もういい!!付き合ってられるか!!とっとと上がるわよ!!」
「出ましょう!!ええ、そうすべきです!!」
「ぷはっ・・・もう上がるのか?できればもうちょっと・・・はぁ・・・はぁ・・・///」
「いいから行くよダクネス!」
「あ!ちょっとお客さん!!?」
これ以上アクシズ教徒の相手をしていられないと3人はダクネスを連れて上がるのであった。ダクネスは平常運転だが。しかし、勧誘はこれだけで終わることはなかった。脱衣所で着替えようと思った時、ダクネス以外の3人の服の上にアクシズ教徒の入信書と石鹸が置いてあった。
「「「・・・ああああああああああああ!!!!」」」
「!!??」
3人は狂ったかのような顔をし、石鹸を地面に叩きつけた。アクシズ教徒のせいでゆったり気分が台無しである。
ーこのすばー
温泉から上がって部屋に戻ってみると、部屋にはカズマだけでなく、アクアも戻ってきていたのだが・・・
「あああんまりよおおおおおおお!!!!私、ただ温泉に入ってただけなのにいいいいいい!!!!」
「あ、アクア様、アクア様の涙が当たると、すごくピリピリするんです・・・」
「・・・何よこれ?どういう状況よ?」
「知らん。戻ってきたらこんなんになってた」
何故かアクアは泣いていて、ウィズに慰めてもらっていた。ただウィズはアクアの涙に当たって、ダメージが入ってるが。
「はぁ・・・今日は何人の人に迷惑をかけてきたのさ?」
「迷惑って何よ!!?どうして私が悪いことをしたって決めつけるのよぉ!!!」
「ほ、本当にどうしたというのだ?」
「それが、本部の秘湯に入ったら、温泉がただのお湯になったらしく・・・」
「それで追い出されたのよ!!?私を崇めていた教会からどうして追い出されなきゃいけないの!!?ねぇ、どうしてよおおおおおおお!!!」
「そういえば、カズマたちが似非セレブをやってた時も、アクア、紅茶をお湯に浄化してましたね」
「やっぱお前が原因じゃねーか!!!」
どうやらアクアが温泉に入ってた際に例の浄化体質が災いしたようで、温泉をお湯に変えてしまったようだ。追い出されても当然だと思うが。
「1番腹が立ったのは、そこの温泉の管理人に私が女神であると教えてあげたの!そうしたら、管理人の人が・・・うぅ・・・ふっwて鼻で笑って・・・!女神なのに!!私女神なのに!!!」
どうやらアクアは自身が女神であると話したようなのだが、その管理人に信じてもらえず、鼻で笑われたようだ。まぁ、一般的に当然の反応だ。
「「「・・・ふっw」」」
「うわああああああああああああ!!!!!」
アクアを見てカズマと双子も鼻で笑った。アクアはそれにはさらに泣いてしまったとさ。
ーこのすばー
翌日、泊まってる宿の1階でカズマたちは朝食を食べている。そんな時・・・
「みんな!この街の危険が危ないみたいなの!!」
突然アクアが意味不明なことを言いだした。
「危険が危ないって何よ?一晩中ピーピーピーピー泣いてたと思ったら・・・」
「1番危ないのはアクアのその体質だよ。お願いだから露天風呂以外ではそれやめてよね」
意味不明なことを言っているアクアに双子は呆れたような顔になっている。
「昨日管理人のおじさんが言ってたんだけど、どうもこの街では温泉の質が突然悪くなってるみたいなの。私は普通は汚れだろうが入浴剤だろうがコーヒーだろうが一瞬で浄化できるのに、あの時は時間がかかったの。それはそれだけその温泉が汚染されてるって証拠なのよ!これはつまり、我がアクシズ教団を危惧した魔王軍が真っ向から勝てないと踏んで、温泉というアクシズ教団の大切な財源を奪いに来たのよ!」
「「「ソウナンダ、スゴイネ」」」
「信じてよーーー!!」
アクアの話にカズマたちは全く信じていなかった。だが双子はその話に思い当たる節があった。それが昨日の女性が言っていたことだ。温泉に入らない方がいいとはこのことを言っていたようだ。
「まぁ、アクシズ教団がドン引きされて疎まれてるのは確かですが、そこまで回りくどいことをしますかね?」
めぐみんの言い分は尤もなので、アクア以外は魔王軍の線は薄いと考えている。
「私はこの街を守るために立ち上がるわ!!というわけで、みんなも協力してくれるわよね?」
アクアはアルカンレティアを守ろうと意気込み、カズマたちに協力を仰ごうとするが・・・
「俺は街の散歩だとか、いろいろ忙しいからパス」
「アクシズ教徒嫌いの私が、この街を守るとかありえないわ」
「右に同じく。助ける価値全くなし」
「私もアクシズ教徒の恐ろしさは嫌というほど知ったので、もう関わりたくありません」
カズマはどうでもいいことを言ってパス、双子とめぐみんはアクシズ教徒に関わりたくないゆえに却下した。
「なぁんでよーーーー!!!!散歩なんてどうだっていいじゃないの!!!双子もめぐみんもうちの信者たちを嫌わないでよぉ!!!!じゃ、じゃあダクネスは・・・」
「わ、私はその・・・あれだ・・・」
「お願いよーーーーーー!!!!」
「わ、わかった!!付き合う!!付き合うから私のグレープジュースを浄化しないでくれぇ!!!」
ダクネスも若干渋っていたが、アクアがダクネスのグレープジュースを水に浄化されそうになり、仕方なくアクアに協力をする。だがすでに遅し、グレープジュースはすでに水となってしまった。
「ウィズはなんだかんだあんたにクッソ甘いからウィズを誘いなさいよ」
「あれ?そういえばまだウィズの姿がないけど・・・まだ寝てるのかな?」
ティアはウィズの名前が出た途端、朝食を食べ終えたにも関わらず、未だにウィズが来ていないことに気付いた。
「私が一晩中泣きついてたら、朝には消えかけちゃって・・・今は寝かせてあげてるわ」
「街より先にウィズを救えよぉ!!!!」
悲報、どうやらまたアクアのせいでまた臨死体験を行っていたようだ。またベルディアに、『来いよぉ・・・こっち来いよぉ・・・』と囁かれていたりするかも・・・。
ーほら!こっち来いよ!ー
全員の朝食が終わると、アクアはダクネスを引っ張って街を守る活動を、カズマとめぐみん、そして気怠そうにしておりながらも起きたウィズは1日1爆裂をやりに街の外へと出ていった。特に今日はやる気が起きなかった双子は街の観光スポットでのんびりと過ごそうと宿の外に出ていた。街はアクシズ教徒がいなければ普通にいい街だった。
「・・・こうしてたら普通の街なのにね」
「うん・・・景色もきれいだし、食べ物もおいしいんだけど・・・人間だけが致命的にダメだね・・・」
双子が遠い目をしながらそんなことを話していると・・・
「あぁーーらかわいいお嬢ちゃんたち!また会ったわねぇ!!!これもアクア様の思し召しかしら?」
((うわ来たぁ!!!))
アクシズ教徒のおばちゃんが鍋をもって双子に声をかけてきた。それには双子はうんざりしたように絶望的な顔になる。
「それはそれとしてこの鍋ね・・・焦げないのぉ!!!今入信すれば必ずもらえるから!!!」
「「・・・・・・」」
「あ!ねぇちょっと!!遠慮しなくてもいいのよ!!」
アクシズ教徒に関わりたくない双子は無言でおばちゃんから離れていった。だが運が悪いことに、他のアクシズ教徒2人とばったりすれ違った。当然アクシズ教は双子を逃すはずもない。
「まぁお散歩ですか!!?お姉様にはこの石鹸を!!!」
「妹様にはこのタオルをプレゼント!!!」
「今ならなんともう1個ついてくる!!!」
「「・・・・・・」」
このアクシズ教徒も執拗な勧誘をしているが、双子は相手にせず、無視を貫こうとする。が・・・
ガシィッ!!!!
「ちょっとぉ!!!!!なぜ私の目を見て話さないのですぅ!!!!!あなたのため!!!!!あなたのためなのです!!!!!!!」
「ぎゃああああああああああああああああ!!!!???」
「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!???」
アクシズ教徒の男は滅茶苦茶怖い顔でアカメの肩を掴み、顔をずずずいと近づけていく。これには双子はものすごい恐怖で逃げることしかできなかった。
ーこのすばあああああああああ!!!!!!ー
この後も何度も何度もしつこい勧誘に合い、大量の入信書をもらってしまった双子はもうすっかり疲労困惑である。
「・・・石鹸って・・・飲めるのかな・・・」
ティアにいたってはもう死んだ目をして、とんでもない事を口にしている。
「ああぁ・・・くそ・・・ねぇんだよ・・・洗うもんが俺には溜まりねえんだよ・・・」
「・・・ん?あのおっさん・・・昨日の・・・」
湖を眺めていると、遠くで1人の男が大量の入信書を持って突っ立っているのを見つけたアカメ。その男は昨日リビングで見かけた男で、相変わらず死んだ目をしている。
「石鹸洗剤石鹸洗剤石鹸洗剤・・・」
「飲める・・・」
「え?」
「石鹸洗剤石鹸洗剤石鹸洗剤・・・」
「飲める・・・」
「石鹸洗剤石鹸洗剤石鹸洗剤石鹼洗剤石鹼洗剤石鹼洗剤石鹼洗剤石鹼洗剤石鹼洗剤!!!!石鹸洗剤石鹼洗剤石鹼洗剤!!!!!飲めるかああああああああああああああああ!!!!!!!」
呪いのように石鹸洗剤と嘆いている男とティアの飲める発言が変なハーモニーを生み出していたが、男は逆ギレして、大量の入信書を湖に投げ捨てた。
「きれいになっちまうわぁ・・・!!・・・ん?」
「あ・・・」
息を整えている男が双子を発見し、アカメとばっちり目が合った。
「や、やあ・・・あんたも大変ね・・・ははは・・・」
「・・・・・・」
男とアカメとの間で何とも微妙な空気が漂っている。
「アカメさーん!ティアさーん!」
そんな空気を破ったのは、ウィズであった。後ろにはカズマとめぐみんがついてきていた。
「あらあんたたち。1日1爆裂、お疲れ様」
「あの後大変だったけどなぁ・・・」
「いつまで初心者殺しのことを引きずってるのですか?過ぎたことを言ってるとハゲますよ?」
どうやらカズマたちはカズマたちで大変な事態にあったようだ。
「ところで、そっちは楽し・・・めてないみたいだな・・・」
「ええ。ティアのあの目を見れば一目瞭然です・・・」
「そういえば、お2人はここで何をしていたのですか?」
「私は・・・あれ?あのおっさんは・・・?」
何をしていたのかと問われてアカメは男の方に視線を向けたが、男の姿はなかった。
「あそこに洗剤が・・・石鹸が・・・おじさんがいたよ・・・」
「まあ!」
「ティア・・・もうこれ以上しゃべるな・・・」
「ティア・・・なんてかわいそうに・・・」
一応ティアが男があそこにいたと伝わったのだが、洗剤や石鹸が先に出てきたので、カズマとめぐみんは涙を流しながらティアを哀れんでいた。
「悪魔倒すべし!!魔王しばくべし!!」
すると、街の噴水広場からアクアの声が聞こえてきた。
ー嫌な予感しかしないー
アクアが気になって噴水広場に行ってみると、そこにはアクシズ教徒たちの人だかりができており、その中心でアクアが何やら演説を行っていた。
「我が親愛なるアクシズ教徒たちよ!!この街では現在、魔王軍による破壊活動が行われています!!」
「・・・ます・・・」
「何が行われてるのかというと、この街の温泉に毒が混ぜられています!!すでに多くの温泉で破壊工作が行われていることを確認しました!!」
「・・・しました・・・」
付き添われてしまったダクネスは顔を赤く染めており、恥ずかしそうにしながらアクアに合わせている。
「さっきそこの温泉に入ってきたけど、何もなかったですよ?」
「それはこの私が温泉の毒を次々と浄化して回っていたからです!!」
「あいつ、朝から温泉巡りしてたのか・・・」
「でもまだ安心はできません!!そこで皆さんにお願いがあります!!この事件が解決するまでは、温泉に入らないでほしいのです!!」
街を守るためとはいえ、温泉に入るなと言われたら、さすがのアクシズ教徒たちも快く首を縦に振ろうとはしなかった。
「ここは温泉街だよプリーストの姉ちゃん。1番の目玉である温泉に入るなだなんて言われたら、この街が干上がっちまうよ!」
「大体何の目的で魔王軍が?」
「それはアクシズ教団の収入源を潰すためです!!そう、魔王軍はあなた方アクシズ教徒を恐れているのです!!これは私が温泉に入れず悔しい思いをしてるのにみんなだけずるいと嫌がらせで言ってるわけじゃありません。さあ、敬虔なるアクシズ教徒の皆さん・・・」
「こんな所にいやがった!!!」
アクアは必死の思いでアクシズ教徒たちに説得をしようとすると、突如として怒りの声をあげたものがいた。それはこの街の温泉を管理していた数名のアクシズ教徒たちだった。
「そいつは街中の温泉をお湯に変えるっていう質の悪い嫌がらせをする女だ!!」
「ちょっ!!?」
集まったアクシズ教徒たちは管理者たちの言葉にざわつき始める。体質で災いを起こすとはまさにこのことを言うのだろう。
「みんな!!捕まえてくれ!!」
「簀巻きだおい!!簀巻きにしろ!!」
「おかしいと思ってたんだ!!俺たちを騙すつもりだったんだろ!!」
「新手の詐欺ね!!何を企んでるの!!?私たち、こんなに世の中よくしようとしてるのに!!」
「ち、違うの!!これにはちゃんとしたわけがあるの!!」
「何という超展開・・・」
「「ざまあみろ」」
集めたアクシズ教団たちによるまさかの暴動にアクアは涙目になる。超展開にカズマは呆れ、双子は逆にすかっとしている。
「あ、あの、アクア様が泣きそうですよ?」
「ほっとけばいいわよ。あいつの自業自得だし」
「ウィズも本気で構わなくていいって。時間の無駄だよ」
「ですが・・・それではあまりにかわいそうで・・・」
とことんにまでアクアに甘いウィズはこの展開におろおろとしており、双子は助けなくていいと諦観の姿勢を貫いている。
「みんな落ち着いて!!私の話を聞いて!!ねぇダクネス、さっきから固まってないで何とか言ってよ!!打ち合わせ通りちゃんと言って!!アクシズ教を、アクシズ教をお願いしますって!!言って!!照れてないでさあ!!早く!!!」
「・・・あ・・・アクシズ教を・・・お願い・・・します・・・」
「パツキンの姉ちゃん聞こえねぇよ!!!!!」
「気の毒に・・・」
「「ぷ・・・ぷぷぷ・・・w」」
アクアは一同を落ち着かせようとしているが、ダクネスの協力があっても逆に怒りを買うだけだった。カズマは付き合わされているダクネスを気の毒に思い始め、双子は笑いをこらえるので必死である。
「ああ、もう!!なら私の正体を明かします!!お集りの敬虔なるアクシズ教徒よ、私の名はアクア!そう・・・あなたたちが崇める水の女神、アクアよ!!あなたたちを助けるために、私自らこうしてやってきたの!!」
どうにもならないと思ったアクアは何を思ったのかついに自分の正体をアクシズ教徒たちに打ち明けた。アクアの正体を聞いたアクシズ教徒たちは全員黙り込み・・・そして・・・
「ふざけんなぁ!!!!!!」
「!!!???」
まさかの怒声が上がってきた。それにはアクアは目が点になる。
「青い髪と瞳だからってアクア様を騙るとバチが当たるよ!!!」
「やっぱ簀巻きだ!!!簀巻きにして湖に放り込んじまえよおい!!!」
「水の女神であるアクア様なら湖に放り込んでも問題ないだろうよ!!!」
「噓つきいいいいいいいいいいい!!!!!」
「さてはお前!!!本当はこの温泉街を破綻させるためにやってきた魔王軍の手先だろう!!!!」
女神だと信じてもらえてないどころか逆に魔王軍の手先だと思われてしまい、もう滅茶苦茶な状況になってしまっている。
ー本当だから!!私本当に神様ですからあああああ!!ー
もうすっかり日が暮れた頃、カズマたちはアクアを連れて宿に戻ってきたはいいが・・・
「うわあああああああああん!!!!私がここの女神なのに!!あぁんまりよおおおおおおお!!!私、どうして信者の子たちに石を投げられなくちゃいけないの!!??うわあああああああああん!!!!」
自分の信者たちから手ひどい目にあったアクアは戻ってきてからずっと泣きっぱなしである。
「あ、アクア様、これを飲んで落ち着いてください。でないと私、興奮したアクア様の神気に当てられて・・・」
神気というよりはアクアの涙に当たって消えかかっているウィズだが、アクアを慰めるためにホットミルクを差し出した。
「・・・お酒がいい・・・」
「アクア、実はそんなに気にしてないでしょ?」
こんな時にまで欲求は正直なアクアにティアは冷ややかな目で見つめている。
「一生懸命なのはわかりますが、自分を神様だというのはさすがに・・・」
「でも・・・あんな汚染された温泉に入ったら、みんな病気になっちゃう・・・」
「あんな目に合わされてまで、助ける必要もないだろうに・・・」
「うぅぅ・・・でもこのままじゃ私の可愛い信者たちが・・・」
アクアがアクシズ教徒たちに一生懸命さは嫌というほどわかるが、あれはどうにもならんだろうと考えるカズマたち。すると・・・
「ピィヒョーーーーー!!!!」
外で待機していたはずのアレクサンダーが突然カズマたちの部屋に駆け付けてきた。
「あ、アレクサンダー!!?どうしたの!!?」
突然入ってきたアレクサンダーにカズマたちは何事かと心配になる。よく見るとアレクサンダーが怯えてるようにも見えた。
「何?どうしたのよ?外になんかあるの?」
慌てて宿に入ってきたのだから外で何かあったのではと思ってアカメは窓のカーテンを開けてみる。そこに映っていたのは・・・
『悪魔倒すべし!!!!魔王しばくべし!!!!悪魔倒すべし!!!!魔王しばくべし!!!!』
この街のアクシズ教徒たちがこの宿に集まってきていた。アクシズ教徒嫌いからすればこれは地獄絵図であり、卒倒ものだ。
「な、何よこれ・・・あふぅ・・・」
「あああ!!お姉ちゃんしっかり!!」
「こ、これは・・・」
「何々?うちの子たちが私の話を信じて来てくれたのかしら?」
呑気なことを言っているアクアだが、実際はその逆で・・・
「いたぞぉ!!!!」
「女神の名を騙る魔女めぇ!!!!」
アクアを魔女だと思い込み、アクアを倒そうと息巻いていたのだ。それにはカズマもアクアも唖然となる。
『魔女狩りじゃあああああああああああ!!!!!』
もはやこの光景は、カオスとしか言いようがないほどに混沌に満ちていたのだった。
親友のふにふらさん、どどんこさん。
絶対に来ないでください。
アクセルの街まであと二日とのことですが、今すぐ引き返してください。決してフリではありません。
街は今、かつてない嵐と地震と魔王軍の幹部たちに襲われていてとても危険です。
というか、そんなに人を追いつめて楽しいですか!!?ねぇ、ねぇ!!?
ゆんゆん
ゆんゆんの現状・・・
ゆんゆん「あああぁ・・・どうしよう・・・どうしよう・・・」
手紙で今更ながら1人で慌てふためいているゆんゆん。泣きそうになった時・・・
ミミィ「はぁ・・・どうせ私なんか・・・私なんかぁ~・・・」
いつものネガティヴ思考で街の真ん中で膝を抱えているミミィ。ここに・・・
ゆんゆん「・・・あ、あなたはあの時酔ってた獣人さん・・・」
ミミィ「え・・・あ・・・あ・・・あなたは・・・」
これが本当の意味での初めてのアイコンタクト・・・なのか・・・?
次回、素晴らしい仲間たちに祝福を!