さて、今回からオリジナル章です。
この砂漠地帯で漁業を!
今日も平和なアクセルの街。そんなアクセルの街の外にて・・・
「「ばっくれっつばっくれっつらんらんらーん♪」」
めぐみんとカズマは日課である1日1爆裂の散歩に出かけていた。なんだかんだ言いながらも、この日課も長く続いていた。それは穏やかな昼の時でも・・・土砂降りの雨の中でも・・・雪で平原が積もっていても、長く、長ーく続いた。
「エクスプロージョン!!!!!!!」
ドオオオオオオオオオオン!!!!!!!
今日爆裂魔法を放ったのは、散歩の際にたまたま見つけた岩場にあった巨大な岩だ。岩は爆裂魔法によって粉々になった。今日の爆裂魔法をカズマは見定めている。
「はぅ・・・どうでしたかカズマ・・・今日の爆裂は、何点でしたか・・・?」
「うーん、今日のはずんと衝撃が響いてよかったが、空気の振動がちょっと微妙だったなぁ・・・。アルカンレティアから帰ってきて、ちょっと気でも緩んだか?55点だな」
「むぅ・・・確かにあそこから解放できて、ちょっと肩の力が抜きすぎてしまったのかもしれません・・・リラックスしすぎなのも考え物ですね・・・あ、カズマ、おぶってください」
1爆裂を終えためぐみんをカズマが背負い、アクセルの街の帰路を歩いていく。
「今日はアカメがいなくてよかったです・・・カズマより辛口コメントしてきそうだったので・・・」
「そういえば双子、今日は急ぎの用があるとか言ってたけど・・・何なんだろうな?」
「気にするほどのことではないと思いますよ。最近では本業も休みですし、大抵がろくでもない用事なので」
「それもそうだな。よし、気にせず帰ろう」
どうせ大した用事ではないと思いながら、カズマとめぐみんは気にせず自分たちの屋敷へと戻っていくのであった。その用事が、カズマたちを巻き込むものであると知らずに。
ーこのすばー
少しの時間を経て、自分たちの屋敷に戻ってきたカズマとめぐみん。ちなみに、めぐみんは街に戻ってからカズマからドレインタッチで魔力を供給してもらい、歩けている。
「ただいまー」
「ただいま戻りました」
「おかー」
「ああ、戻ったか・・・んん///おかえり・・・くぁ・・・///」
リビングにいるのはソファでパジャマ姿で寝そべっているアクアとダクネス。双子は未だ帰ってきている様子はない。
「あれ?あの2人はまだ帰ってきていなかったのですか?」
「ああ。いつもならどんな用事でも・・・くぅ・・・///すぐに戻って・・・ああ///」
ダクネスは何やらさっきから嬉々とした表情を浮かべながら悶えている。腰にも何やらベルトを着けているようだが。
「・・・お前さっきから何を悶えてるんだ?それに、その変なベルトは何だ?」
「ふぅ・・・これか?実はこれは先日、散歩をしていた時にマホの店でだな・・・」
ダクネスはベルトの何かの機能を止めて先日の出来事を話した。
ー回想ー
『!おーい、ダクネス!ちょっと寄ってかないか?お前用のいい商品があるぜ』
『ああ、マホ。いい商品とは・・・何だ?』
『こいつさ。こいつはオレが開発したゴーレムベルトなんだが・・・ゴーレムの手に握りしめられる時の感覚が味わえるベルトだ』
『詳しく!!!』
『ボタン1つで力加減を小、中、高、絶まで調節できるんだ。・・・本当はこれ、マッサージ機としての機能だったんだが、調節をミスっちまって、高ければ高いほど想像を絶する痛みが・・・』
『買ったぁ!!!』
『毎度ありぃ!!さすがはお得意様!いい払いっぷりだぜ!今後ともうちをご贔屓にな!』
『ああ!次の商品も期待しているぞ!』
『おうよ、任せとけって』
ー回想終了ー
「・・・と、いうわけで衝動買いしたというわけだ」
「と、いうわけで、じゃねぇよ!!!お前何変なガラクタを買ってきてんだ!!お前はアクアか!!?ていうか待て。今お得意様って言ったよな?まさか今までもそれみたいなガラクタを買ってきたわけじゃないだろうな?」
「が、ガラクタとは何だ!!?私にとってはどれも素晴らしい商品ばかりだぞ!!」
「全部捨てて来い!!それが嫌なら俺が捨ててきてやる!!」
「んなっ!!?それはあんまりではないか!!?」
自分をとことんまでいじめぬく商品をマホの店で買っていたことを知ったカズマはダクネスに向かって捨ててくるように指示する。ダクネスはそれには反対の意を示している。
「あんたたちうるさいわねー。ハンスの討伐報酬が入ってくるからってちょっと浮かれすぎじゃない?みんな私みたいに優雅に落ち着くべきだと思うの」
「アカメがいないからってソファを独占してぐーたら寝てるお前にだけは言われたくねーぞ!!」
「屋敷に引きこもって舐めた人生を送ろうとするカズマにも言われたくないことですよ」
「少しは忙しそうにしてる双子を・・・」
「「私たちがなんだって?」」
「ふああああああああ!!??」
見習えとカズマが言い放とうとしたその時、急用で外に出ていた双子がカズマの背後に立っていた。急に背後から声をかけられて驚くカズマ。
「な、なんだお前らか・・・脅かすなよ・・・」
「んなこたぁ、どうだっていいのよ」
「それより、みんな揃ってるよね?」
「?いったいどうしたのですか?」
全員揃っているかという問いかけにカズマたちは首を傾げており、めぐみんが問いかける。
「実は、みんなにお願いがあるんだよ」
「お願い?」
「あのぅ・・・それについては・・・その・・・僭越ながら私が・・・」
何のお願いだと思っていると、扉の方から声が聞こえてきた。扉の方を見てみると、ひょっこりと顔を出し、びくびくと隠れたように様子を窺っているミミィがいた。
ーミミィ?ー
突然の来客ミミィにカズマたちはこたつを出し、こたつをどういうものなのかを理解しておらず、戸惑っているミミィをそこに入らせる。
「よい茶葉が入った紅茶です」
「あ・・・ありがとう・・・ございます・・・?」
アクアはミミィに粗茶を出したが、よく見てみるとカップに入っていたのは紅茶ではなくお湯だった。またも紅茶を浄化してしまったようだ。
「それで、ミミィがここにいるってことは、お願いって、盗賊団関連だったりするのか?」
「半分は正解で半分は不正解よ」
「半分?」
「えっと、まずはこれを見てもらえるかな?」
「なんだ?」
ティアに差し出された用紙をカズマたちは受け取り、それを確認し、すぐに首を傾げた。
「アヌビス誕生50周年記念祭?」
その用紙というのは双子宛に届いた記念祭開催のお知らせだった。
「あの・・・アヌビスはご存知・・・ですよね・・・?あの・・・灼熱都市の・・・」
「ええ。確か2人の生まれ故郷でしたよね」
「実は・・・ですね、そのアヌビスでは・・・10年に1度にこの記念祭を開くことが生業・・・なんです・・・。その・・・街が誕生してくれてありがとう、これからも賑わっていこう・・・という・・・意味合いを・・・込めて・・・お祭りを・・・開くんです・・・」
「お祭り!!?なんだか楽しそうね!!」
アヌビスの記念祭に興味を持ったアクアは目を輝かせている。それを見たミミィは懐かしむ様な笑みを浮かべた。
「えへへ・・・はい・・・本当に・・・楽しい・・・ですよ・・・。私も・・・10年前・・・盗賊団にスカウトされて・・・アヌビスに来た頃に・・・記念祭がちょうど開かれたん・・・です・・・。屋台も・・・模擬店もあって・・・いろいろ新鮮で・・・本当に、本当に、楽しかった・・・です・・・」
「そうか。私もその記念祭に興味が湧いてきたぞ」
いつもネガティヴであまり笑わないミミィが笑っている姿と、他の街のことをよく知らないダクネスも、記念祭について興味が湧いてきている。
「・・・話を戻していいかなぁ?」
「あ・・・ご、ごめんね・・・勝手にベラベラと・・・。やっぱり私はカスだから・・・」
「だからぁ、それが話の腰を折ってるっつってんのよ」
「ご・・・ごめん・・・なさい・・・」
「ああ、そう落ち込むなって!ほら!続き!話の続きだ!」
本題がずれてしまっていることを指摘すると、さっきの笑顔は消え、ずーんとネガティヴになるミミィ。これ以上拗れさせまいとカズマが話の続きを催促する。
「それで、その記念祭の最後に、灼熱都市炎の舞っていう演舞で締めくくるんだ」
「この演舞ではね、踊り手として巫女役が何名かが指名されるのよ」
「巫女って何ですか?」
「・・・さあ?」
「実を言うと、私たちもよくわかってないんだよね」
巫女の存在を全く知らないめぐみんたちに、日本のことをよく知っているカズマが答える。
「巫女ってのは俺の生まれ故郷では神に仕える女性のことを指してるんだ。まぁシスターみたいなものだな」
「なるほど、アークプリーストと似たような職業ということか」
「うん、まぁ・・・だいたいあってる・・・のか・・・?」
「まぁ、本物の清く正しく、美しい女神様はここにいるけどね!」
「まぁあれはほっといて」
「ちょっとぉ!!!」
「カズマはたまに物知りなところがありますね」
カズマの説明である程度巫女という存在を理解したダクネスたち。さりげなく自分は神様であるとアピールするアクアだが、軽く流されてしまう。
「てかもしかして、その巫女役に・・・」
「はい・・・街の人たちの賛成派が多くて・・・この2人が・・・選ばれたん・・・です・・・」
「マジか!!?」
自分たちのパーティメンバーがそんな重要な役目を背負おうとしていたことに少なからず驚くカズマたち。約一名を除いては。
「神様の信仰心もなくて、踊りも下手そうな2人が巫女役って・・・全然似合わないんですけど!ウケるんですけど!超ウケるんですけどー!プークスクスクスw」
「何笑ってんよ・・・しばくわよ・・・」
「アクア、後で覚えておきなよ・・・」
笑い転げているアクアに怒りを覚える双子。
「笑ってる場合ではありませんよ。お祭りの最後を締めくくるって・・・」
「ああ。失敗は許されない、非常に重要な役目だ」
「そう、そうなのよ。全くなんだって私たちがこの役目を・・・」
「ただでさえ私たち2人は踊りとか不得意なのに・・・」
責任重大な役目を担わなければならない双子は踊りが苦手なので非常に憂鬱そうな顔をしている。
「断ることはできないのか?」
「それができたら苦労しないってのよ」
「ネクサスさん・・・あ、盗賊団団長さんは・・・その・・・現在記念祭の執行委員もやっておりまして・・・その人からの指示で・・・やってほしいって・・・言われてるらしいん・・・です・・・」
「団長直々に・・・ですか・・・。団長の期待は盗賊団の期待・・・そんな人から頼まれれば・・・」
「なおさら断れないのだな・・・」
どうもこの記念祭は盗賊団も大きく関わっているようで、団長のネクサスから言われてしまって、断るに断れない状況らしい。
「で、こっから頼みってのは・・・カズマ、あんたって確か土木作業のバイトしてたんだっけ?」
「おいちょっと待て。それ誰から聞いたんだ。俺もアクアも話してないはずだぞ」
「そういえば話してないわねー。何で知ってるの?」
「あ・・・この街の盗賊団の情報部の人から今日聞き・・・ました・・・。情報を集めるのも・・・お仕事・・・ですから・・・」
「「「「えっ・・・」」」」
「言っておくけど、私たちは住所は教えてないからね」
情報部が自分たちの住所や個人情報を特定したんだとすれば、下手な行動をすれば自分たちが標的になるかもしれないとカズマたちは若干ながらの恐怖を抱いた。
「話を戻すけど、今回は演舞を披露するための舞台も作らなくちゃなんだけどさ、みんな模擬店の準備でそっちまで手が回らなくて人手不足なんだよ。私たちも演舞の練習で手が回らないくて・・・」
「まぁそういうことだから・・・あんたたち、記念祭の準備を手伝ってちょうだい。主に舞台設立をね」
「カズマたちにとっても悪い話じゃないと思うよ?記念祭は基本誰でも参加自由だし、当日に祭りを楽しめるし、引きこもり生活脱出できるかもよ?」
「お前は一言余計だよ」
一通り説明し、双子は記念祭の準備の手伝いを申請してきた。ティアの放った一言にカズマは若干眉をひそめる。
「ね、お願いだよ~。10年に1回の大事なお祭りなんだ。失敗なんかできないんだよ~」
「そんなこと言われましても・・・」
「手伝い・・・と言っても、いいのか?私たちはアヌビスの民から見れば、記念祭とは一切関係ないよそ者だぞ?」
「それこそ関係ないわよ。アヌビスは他にも自由都市って呼ばれてるんだから、誰が手伝いに来たってあの浮かれ者共は歓迎するわよ」
アヌビスは砂漠にある街。そんな熱いところに行きたくないのと、部屋に引きこもってぬくぬくと過ごしたいカズマは却下と言いたいが言ったら双子に殺されそうな雰囲気があって言えそうにない。ゆえにどうやって断ろうかと懸命に考えている。
「私の方からも・・・その・・・お願いします・・・。確かに・・・その・・・カズマさんにお願いするのは・・・ちょっと不安・・・ですけど・・・」
「いやそれ本人に言っちゃダメだろ・・・」
「それでも・・・その・・・適材適所に対応して・・・普段から楽しそうにしているカズマさんたちなら・・・多分・・・適任・・・だと・・・思うんです・・・。なので・・・お願いします!」
「「お願いします!!」」
「えっ⁉ちょ・・・!や、やめてくれ!とりあえず顔をあげてくれ!」
ミミィやティアなどはともかくとして、プライドが高いアカメがこうして頭を下げてまでお願いされて、余計に断れにくくなったカズマ。
「ねぇカズマ。せっかくだから手伝ってあげたらどうかしら?なんだったら前座で私の宴会芸を披露してあげるわ!いよっ、花鳥風月ー♪」
「お前は記念祭で目立ちたいだけだろ」
「3人がこうして頭を下げてるんです。手伝ってもいいのではないでしょうか?」
「私も同感だ。困っているのならお互い様だ。それに、前にも言ったが、私はアクセル以外の街はあまり知らないのだ。この機会にアヌビスを知るのもいいだろう」
「そんなこと言ったって・・・アヌビスがあるのって、砂漠だろ?」
記念祭にて宴会芸を披露しようとするアクアはともかく、めぐみんとダクネスは双子の頭を下げた姿を見て、協力的である。しかし今もカズマは渋っている。
「もちろん、タダとは言わない。ちゃんと報酬は用意するわ」
「いや報酬って言われてもどうせ・・・」
「報酬は前払い、アヌビスにあるプール施設の招待を・・・」
「俺たちの家の金で・・・今プールと仰いましたか?」
「ねぇ!今プールがあるって言った⁉」
報酬がプールにご案内と聞いて、いやに食いつくカズマとアクア。
「砂漠は冬だろうが年中無休で暑いから、少しでもそれを癒してあげようと思って、プール施設もたくさんあるんだ」
「あんたたちも暑い中やる気とか起きないでしょ?手伝う代わりにプールで涼ませてもらえるように、私たちがお頭に掛け合ってあげるわ。どう?悪い話じゃないでしょ?特にカズマは」
確かに砂漠の気温で暑い中、やる気も削がれるゆえ、いい報酬だと思う。特にカズマは、プールに入れば、合法的に女性の水着をタダで拝めるのだからなおさら悪くない報酬である。
「ぷ、プールか・・・まぁ、それはどうでもいいが、大事な大事な祭りだからなー。しょうがないから、手伝ってやるかー(棒読み)」
「カズマさんってば、どうしてそんなに棒読みなの?本当はプールが楽しみなんでしょー?」
「そそそそ、そんなことねーし!!?」
明らかに下心が出まくっているが、プールと聞いて黙ってないカズマはついでとして祭りを手伝うことに決めた。
「決まりね」
「はー、よかったー・・・」
「あ、ありがとうございます!!私の代わりに・・・」
「ん?ミミィは手伝わないのか?」
代わりと聞いて、手伝わないのかとダクネスがミミィに尋ねる。
「本当は手伝いたいん・・・ですけど・・・紛いなりにも・・・支部長として片付けないといけないお仕事が山積みでして・・・とてもじゃありませんが・・・手伝いに回れないんです・・・」
「支部長の仕事も大変なのですか?」
「はい・・・。それに・・・ほら・・・どうせ私みたいなカスの練り物なんて・・・誰も相手にしないでしょうから・・・」
(なんというどうしようもないネガティヴ思考・・・)
ミミィのネガティヴ思考が面倒くさいと思ったカズマたち御一行であった。
ーこのすば!ー
翌日、カズマたちは自分たちの荷物を持って双子たちについていく。ミミィの話ではすでに馬車の予約はしてくれてるのだが、その前に双子たちは寄りたい場所へと向かっているのだ。
「お前たちの寄りたい場所というのは・・・こ、ここか・・・」
双子たちが立ち寄った場所というのは、ウィズの店であった。双子はバニルとの商談の話の続きをするためにやってきたようだ。
「何よ?嫌なの?」
「わ、私は一応エリス様に仕えるクルセイダーなのだから、あまりここに来たくないのだが・・・」
「私たちだって通うのが憂鬱なんだから文句言わないでよ。さ、入るよ」
渋っているダクネスをよそに双子たちは店の扉を開けて中に入った。カズマたちもそれに続く。
「フハハハハ!!へいらっしゃい!上がりやすい職業のくせにちっともレベルが上がらない男と、最近実家の威光以外ではあまり役に立たない娘!鬱陶しい光溢れるチンピラプリーストに、ネタ魔法しか使えないネタ種族、そして互いに姉妹愛を表に出せないツンデレ姉妹よ!ちょうどよいところに来たな!!」
「ネタ種族・・・」
双子たちを出迎えたバニルは早々に全員の軽い悪口とコンプレックスを突いた挨拶をした。痛いところを突かれたカズマ、めぐみん、ダクネスは悔しそうに唸る。アクアはバニルにジャブを放っている。双子は鬱陶しく思いながらもバニルと話す。
「・・・で?ちょうどいいって何がよ?またウィズが変なもんを仕入れたの?」
「言っておくけど、ここのガラクタ商品は買う気はないから」
「まあそう言わずに!吾輩とて毎度毎度ガラクタを売るつもりなど毛頭ないのだ。これなんかきっと汝らのお気に召されるはずだ!」
そう言いながらバニルは机に置いてあった蓋の開いた小さな箱を取り出し、双子に見せる。
「何この箱?なんで蓋が空いてるの?」
「アンデッド除けの魔道具だ。蓋を開けるだけでアンデッドを寄せ付けない神気が半日ほど漏れ続けるアイテムだ。ほれ、貴様らのところにはアンデッドに好かれるおかしなのがいるであろう?これを持っていればアンデッドに襲われることなくぐっすり眠れること請け合いである!」
「欠点は?どうせしょうもないデメリットがあるでしょ?」
「そんなものはない。強いて言うならば、値段が高いうえに使い捨て商品だということくらいだ。効果は絶大である!箱を開けたうっかり店主が店の奥から出てこられなくなり、先ほどからずっと泣いている程度には高性能だ」
「ふーん。確かに、珍しくデメリットがないようね」
「いやさっきから奥の方で聞こえる泣き声ってウィズだったの⁉なんで2人ともそんな諦観な姿勢なのさ⁉早く蓋を閉めて換気しなよ⁉」
アンデッド除けの魔道具のせいで奥の部屋でずっとめそめそ泣いているウィズを放置するバニルとアカメにティアは思わずツッコミを入れる。
「まぁでも、アンデッド除けは便利そうだし、買っておいて損はないんじゃないか?実際、アルカンレティアの道中の夜、あいつのせいで苦労したし」
「そうなの?あの時は寝てたからよくわからないけど」
「ふん、せっかくだし買ってあげるわよ。で、値段はいくらほどよ?」
「毎度あり!お1つたったの100万エリスである!」
「高いよ!!その値段なら集まってきたゾンビと戦った方がマシじゃん!!」
「よいではないかお客様!何せお客様はこれから大金持ちになるのだからな!」
アンデッド除け1つで100万エリスは買うべきではないのだが、ここぞとばかりにバニルが商談の話を持ちかけて買わせようとする。
「それよりも凸凹姉妹よ、以前交わした契約、そろそろ答えを聞こうではないか。小僧が作った知的財産権を3億で買うか、月々100万で見積もるか」
「最近わかったことなんだけど、どうもこのパーティは厄介ごとに巻き込まれやすいのよ」
「その厄介ごとにお前らも含まれてるって忘れてないか?」
「だから、いざって時になったら困るから金だけもらうことにしたわ。それでいいわよね?愚妹」
「未だに納得なんてしてないけど・・・もうそれでいいよ・・・」
忌々し気に歯ぎしりをするティアだが、3億をもらうことを決定したアカメにとってこの態度はどこ吹く風だ。
「てなわけでこれまでカズマが作ったやつ、一括で渡して3億で頼むわ。後、無事にウィズのお守りを達成した追加報酬も忘れずにね」
「あれを無事と呼んでよいのかはいささか疑問ではあるが・・・あいわかった!後に契約書を制作するのでしばし待たれよ」
「これで俺たちも大金持ちか・・・ふふふ・・・」
「ま、待て!分け前とはいえ、この男に億などという大金を渡したら、いよいよ働かないダメ人間になるではないか!いや、でも・・・それも悪くは・・・」
大金が手に入るとわかってカズマはにやけ顔が止まらないでいる。ダクネスは1人でブツブツと悩みに葛藤するのであった。すると大金につられたアクアとめぐみんがニコニコと双子たちに迫ってきた。
「ねぇねぇ、私、屋敷にプールが欲しいんですけど」
「私は魔力回復効果が上がると言われる、魔力清浄機が欲しいです」
「おっと金の匂いに嗅ぎつけた亡者共め。双子にたかるとは現金だ」
「ま、まぁ、今は無理でも・・・もっとお金が入ったら買ってもいいよ」
「「やったーー!!」」
ティアの口から要求したものをさらにお金を入手したら買ってもよいといえば、喜んでいるアクアとめぐみん。
「このアンデッド除け、買わせてもらうわ。金は追加報酬か3億から差っ引いておきなさい。どうせまだ用意できてないんでしょ?」
「うむ。すまぬが、店の奥でめそめそしているガッカリ店主が余計なものを仕入れて出費を増やしおったからな。まだ金が集まらんのだ。なに、この街の出資者を集めておるのでな、すぐにでもまとまった金が手に入るであろう」
「あ、そうそう、もうすぐ私らの故郷で記念祭をやるんだけど・・・あんたは興味とかなさそうだけど、一応渡しとくわ」
アカメはそう言って記念祭開催のチラシをバニルに渡す。チラシを受け取ったバニルは顎に手を当てる。
「ふむ、そういえばもうじきそのような時期であったか。・・・なるほど、それで故郷へ帰還するというわけか。帰る前に宣伝とは、何とも殊勝な心掛けであるな、大変大儀な役目を担えた幸福な双子共よ」
「うっさい。あんた知ってて言ってるでしょ」
「・・・一応は宣伝したからね。来るか来ないかは自由だけど、ウィズにもちゃんと伝えておいてよね」
双子の事情を見通したバニルはニヤニヤと笑いながら嫌味を言い放った。その嫌味には若干の怒りでこめかみをひくひくさせる双子。
「てか話してたらもうそろそろ出発の時間じゃない。あんたたち、そんなガラクタ見てないでそろそろ待合所に行くわよ」
「じゃあね、バニル。ウィズにもよろしく言っておいて・・・てかいい加減換気してウィズを出してあげて」
双子は店の商品を見ているアクアたちを呼んで馬車の待合所へと向かった。結局ティアの願いは店から出るまで叶わず、ウィズは店の奥でしくしくと泣き続けるのであった。
ーこのすばー
街の待合所では相も変わらず旅行客やクエストに行く冒険者が集まっていた。今回カズマたちが乗るのは、馬の馬車ではなく、走り鷹鳶が動力の馬車である。この走り鷹鳶の馬車こそがアヌビス行きの馬車である。砂漠の環境下で水分補給できるようにアカメが売店で水を買いに行ってる間カズマたちは自分たちが乗る走り鷹鳶の馬車をまじまじと見つめる。
「走り鷹鳶を馬車の動力源にするとは・・・てかなんで走り鷹鳶を?」
「馬じゃ砂漠をうまく走れないからだよ。そりゃ砂の上でも走れる馬もいると思うけど、だいたいの馬がバランスを崩して転ぶって何回も聞いたし。ラクダもラクダで足遅いし。その分走り鷹鳶は砂漠の環境に適してるし、走りも早いし、力も強い。まさに馬車には最適なんだよ」
「そうなんですか。危険なはずのモンスターを飼いならすってよく思いついたものですね」
「そのおかげで、アヌビスには走り鷹鳶の調教師が多いんだよねー。もしかしたら、いずれは各国に調教師が増えるかもね」
走り鷹鳶を食用ではなく、馬車の動力にするのは普通ではぶっ飛んだ考え方なので、めぐみんは驚きつつも感心する。ゆくゆくは全国に走り鷹鳶の調教師が増えるだろうとティアは考える。
「か、カズマカズマ!!」
「はいはいカズマですよ」
「あの馬車の走り鷹鳶たちを見てくれ!!先ほどから、こちらに突進してきそうな目で見つめてくるのだ!!ああ、あの時の高揚感を思い出す!!あれにぶつかればどんな目に合うのか・・・ああ!!」
「今度のは馬車がついてるからぶつかったら死ぬぞ、間違いなく」
走り鷹鳶たちは今にチキンレースを始めたそうな顔でダクネスをじっと見つめている。その視線だけでも興奮しているダクネスはアルカンレティアでの道中を思い出し、さらに興奮する。そんなダクネスに呆れるカズマ。
「うんうん、さすがミミィね!!私の目利きによれば1番の品質の馬車よ!!ほら、そんなとこ突っ立ってないでさっそく乗りましょう!!」
アクアはカズマたちが乗る1番手前の走り鷹鳶馬車の席を取ろうとせっせと中に入っていった。せっかちな奴と思っていると、ティアが辺りを見回す。
「あれ?そういえばアレクサンダーがいないんだけど」
「アレクサンダー?走り鷹鳶たちと紛れたのか?」
「アレクサンダーはアカメが体毛を紫に染めたので、間違えませんよ」
「どこかではぐれたのか?」
「えー、そんなー・・・」
どうやらアレクサンダーがどこかに行ってしまったようで、どこにも姿が見え・・・
「ねぇアカメさんティアさん、ちょっとこっちに来てー。アレクサンダーが馬車の席を陣取ってるんですけどー。どかすの手伝ってほしいんですけどー」
「あ、なんだもう馬車の中に入ってたのか。急にいなくなるから焦ったよー・・・」
「ていうか走り鷹鳶の馬車に走り鷹鳶が中に入るって・・・」
いや、アレクサンダーはすでに馬車の中に入っており、アクアが座ろうとしている席で丸まって寝ていた。場所を取られてアレクサンダーに抗議するアクア。
「ねぇアレクサンダー。その席、高貴なる私に譲りなさいよ。だいたいなんで走り鷹鳶が馬車に乗ってるのよ?外に仲間がいるんだから仲間と一緒に走ってきて!!早く馬車から出ていって!!」
アクアの抗議にアレクサンダーは鬱陶しそうな表情で・・・
「・・・ヴェッ!!」
「きゃああああああ!!?くっさあ!!!唾!!唾はいた!!この子私の顔に唾はいたんですけど!!」
アクアの顔に思いっきり唾をはいた。唾を付けられたアクアは泣きわめく。
「アレクサンダーも羽休めしたいんだね。よしよし」
「アルカンレティアでは気も休まらなかっただろうしな。思いっきり休めよ」
「おかしいわ!!おかしいわよ!!私唾かけられた被害者なのよ!!?どうして私じゃなくてアレクサンダーに気にかけるのよぉ!!?普通逆でしょ!!?」
被害者であるアクアではなく、アレクサンダーに気にかけるティアとカズマの姿にアクアはさらに泣きわめく。すると馬車の運転手が声をかけてきた。
「あー、ちょっとお客さん。私の馬車の定員は7名なんで、ペットたちの分を合わせると、定員オーバーなんですよ。一応はその子猫と走り鷹鳶の分の代金もいただいちゃってますんで・・・申し訳ないんですが、どなたか1名、座り心地は悪いですが、後ろの荷台に乗っていただけませんかね?」
「ちょっとぉ!!またこのパターンなのぉ!!?」
アルカンレティア行きの時と同じパターンにアクアはまたも嘆く。そこへ水を大量に買い込んだアカメが戻ってきた。
「何よ?あんたらまだ乗ってなかったの?」
「いやぁ、それがさぁ・・・」
戻ってきたアカメにカズマが運転手が話してたことを話した。それにはアカメは面倒くさそうな顔になる。
「めんどいわね。・・・で?誰が荷台に乗るのよ?またじゃんけんで決めようっての?」
「じゃんけんはもう嫌よ!!!どうせ全員でじゃんけんして私が全員に負けて荷台に載せられるんでしょ!!?わかってるわよ!!!!もう懲りたわよぉ!!!!」
じゃんけんの案を出したが、アクアは速攻で却下する。余談なのだが、カズマがじゃんけんで6連勝した後、アクアは他のメンバーにもじゃんけんしたが、全員に負けてしまい、さすがにじゃんけんは懲りたようだ。
「じゃあどうするの?」
「ふっふっふ、安心なさい。実はこんなこともあろうかとくじを用意してたのよね!!これなら完全に運任せだし、全員公平でしょ?さあみんな!それぞれ1本、割り箸を持ってちょうだい!!」
誰が荷台に乗るか決めるため、アクアがいつの間にか用意した割りばしのくじを全員が1本ずつ、手に取る。
「いい?赤い印の人が荷台行きよ。いっせーので引いてちょうだい。それじゃ、いくわよ!いっせーのーで!!」
アクアの合図で全員がくじを引いていく。赤い印のハズレくじを引いたのは・・・
「なぁんでよーーーーー!!!???」
言い出しっぺであるアクアであった。まさか6分の1の完全運任せの勝負で自分がハズレを引くとは思わなかったアクアは涙目である。
「じゃあそういうわけだ。荷台に・・・」
「待ってぇ!!誰か私のくじに細工をしたわねぇ!!?じゃないと私がハズレを引くなんておかしいわよ!!名乗り出なさいよ卑怯者!!」
「またこのパターンですか・・・」
「いや、アクアがくじを用意したの今日初めて知ったんだから細工できるわけないでしょ?」
「つーか単純にあんたの運がゴミだからでしょ?ちょっとあんたの冒険者カード見せなさいよ」
納得しておらず、言いがかりをつけてくるアクアにティアが正論をいい、アカメがアクアの冒険者カードを見せろと言ってきた。涙目のアクアは渋々ながら自分の冒険者カードを取り出し、全員に見せる。
「全体的のステータスは悪くないようだが・・・」
「賢さと運がゴミを通り越して【ピーッ】じゃない。こんなのハズレ引いても当たり前だわ」
「こんなのでよく運の勝負を持ち込もうとしたよね?バカすぎて涙が出るよ」
「ひどい!!」
「ですがこの運では当たるものも・・・おや?」
アクアの冒険者カードに何か違和感を感じためぐみんは首を傾げている。
「めぐみん、どうしたの?」
「いや・・・気のせいでしょうか。アクアの冒険者カード・・・以前初めて見たステータスと全く変わっていないような・・・」
アクアのステータスが初めて見たのと比べて全く変わっていないという発言に双子とダクネスは怪訝な顔つきになる。
「はあ?そんなわけないでしょ。アンデッドも大量に狩って、ついこの間もハンスを倒したじゃない。レベルアップしてステータス上がってるはずでしょ?」
「いや・・・そうなのですが・・・私の記憶では間違いなく以前と変わらない数値ですよこれは」
「・・・あれ?本当だ・・・言われてみれば、確かに・・・変わってないような・・・」
「ではなぜ上がって・・・て、カズマ?どうした?なぜ泣いているのだ?」
「いや・・・ちょっとな・・・」
以前見たアクアのステータスを何となく思い出して、なぜ上がらないのかと首を傾げる仲間たち。そんな中カズマだけが何故かさめざめと泣いていた。疑問を抱く仲間たちにアクアはふふんと笑い、さも当然のように答えた。
「みんなバカね。私を誰だと思ってるの?ステータスなんて最初からカンストしてるに決まってるじゃない!!初期スキルポイントも宴会芸スキルとアークプリーストの魔法を全部取得できるほど持ってるのよ?そこらの一般の冒険者と一緒にするのが間違いだわ!!」
「「「「!!!!」」」」
アクアの答えを聞いて、双子とめぐみんとダクネスは衝撃を受けて・・・ショックで顔をうなだれてしまう。当然であろう。カンストしてしまっているということはつまりアクアは、どれだけレベルを上げても、ステータスをあげることができないのだ。それは当然・・・知能も、運も上がらないのだ。以前それを知ったカズマもショックを受けたものであるが、改めて聞かされると、やはり涙が止まらない。
「・・・アクア、私が荷台に乗るわ・・・あんたは馬車に乗りな・・・」
「え?そ、それはありがたいんだけど・・・どうしてそんな哀れんだような顔をしているの?」
「・・・そろそろ乗ろうか・・・」
「ですね・・・」
「ああ・・・」
「ねぇ・・・みんなまで・・・どうしてそんな悲しそうにしてるの?ねぇ・・・ねぇってば・・・」
「行くぞ・・・うぅ・・・」
「カズマさんまで!もう何なのよ~~~!!?」
アクアのカンストを知った仲間たちはアクアを哀れみながら馬車の中へ、アカメは後ろの荷台に乗っていく。なぜ哀れみを向けられたのかわからないアクアはモヤモヤした気持ちを抱えながら馬車の中に入っていった。
ーこのすば・・・ー
カズマたちを乗せた馬車はアヌビスへと向かって出発した。数時間の間、カズマたちはアクアを哀れんだ悲しい顔をしており、アクアは席に座れたはいいが、納得できず不貞腐れている。その後はみんな元通りになり、めぐみんとダクネスは外の景色を楽しんでいる。アクアはちょむすけと戯れようとしているのだが、ちょむすけはアクアを毛嫌いしているため、逆に顔を引っ掻かれたりしている。カズマとティアはアレクサンダーの体毛が結構気持ちいいよくて、思わず一緒に昼寝をしている。アカメは荷台で意外にもゆったりしており、寝転がっている。馬車旅を楽しんでいると、アカメがすんすんとにおいをかいでいる。
「・・・この僅かに漂う砂の香り・・・半年ぶりね・・・」
「ねぇ!みんな見て!」
アカメがにおいを懐かしがっていると、アクアの一声が聞こえてきた。カズマたちが外の景色を見てみると、草原の向こう側で、砂漠の景色が見えてきた。
「おお・・・あれが砂漠か・・・なんと広大なのだろう・・・」
「私たち・・・本当にここに帰ってきたんだね・・・」
遠くに広がる砂漠の景色を見て、ダクネスは高揚しており、ティアは懐かしそうな顔で砂漠を見つめている。馬車は草原を駆け抜け、砂漠地帯へと入っていった。
「すげぇ・・・俺、本当に砂漠に来たのか・・・」
カズマが砂漠の世界に来て、これぞファンタジーだと関心を抱いていると・・・
じりじりじりじり・・・ びょおおおお・・・
「・・・て、あちーーーー!!!なんだこの暑さと熱風は!!??」
砂漠に入った瞬間にこれまで体験したことのない地獄のような暑さと熱風が馬車を通してでも感じ取り、カズマは思わず叫び出す。そしてこの暑さにまいっているのはカズマだけではない。アクアとめぐみんもそうだ。
「あ・・・あづい~・・・溶けちゃいそう~・・・」
「さ・・・砂漠に行くので、覚悟はしてはいましたが・・・聞きしに勝る灼熱地獄ですね・・・。もう汗が出てきちゃいましたよ・・・」
「さすがにこれだけ暑いとな・・・特に、鎧を着ているダクネスは相当な負担がかかるだろうな。ダクネス、大丈夫かー?」
砂漠の熱さの中で1番危なそうなのは鎧を着込んでいるダクネスだろうと思い、カズマは彼女に気にかける。
「よ・・・鎧が、焼けてしまうではないか・・・熱した鉄板でじりじりと焦がされ・・・ううっ・・・この肌をじりじりと灼きつかせるような感覚・・・痛みとは違った苦しみが・・・私を・・・燃え上がらせる・・・///」
「・・・・・・」
「・・・ご満悦みたいだけど・・・」
「・・・そうみたいだな」
当のダクネスはいつものドM心でこの暑さの苦しみでさえも興奮してしまっている。それを見たカズマたちは引いている。
「みんなだらしないなー。そんなんじゃ砂漠で生き残れないよ?」
「だって~・・・」
「アカメとティアは暑くないのですか・・・?」
「?全然暑くないよ?むしろ心地がいいくらい」
「あんたらとは育ちが違うのよ。一緒にしないでくれる?」
「さすがは地元民・・・クソ暑い中でも平気とは・・・俺たちにはとても真似できん・・・てかもうダメだ・・・水飲も・・・」
水を飲んでるカズマたちとは逆に、地元民である双子は平気そうにしており、暑さとは無縁そうに見える。
「とにかく、休憩場に入るまではみんな水飲んで我慢なさい。話はそれからよ」
「「賛成~・・・」」
「ふぅ・・・休憩が取れるのは助かる・・・早く日陰に入りたいぞ・・・」
「んん・・・///」
カズマたちは砂漠の暑さに翻弄されながらも、馬車に揺られて砂漠の休憩場へと向かっていくのだった。
ーこのすばー
十数分で砂漠の休憩場にたどり着いたカズマたちは張ってあるテントの中で昼食をとる。中は冷房が効いていて、中々に快適だった。
「ぷっはー!!生き返るー!!やっぱ涼しい部屋で飲むシュワシュワは最高ね!!」
先ほどまで生気がなくしたような顔をしていたアクアは涼しい部屋と冷たいシュワシュワで一気に生気を取り戻した。そんなアクアに呆れながらも、カズマたちは双子が注文してくれた数多くの魚料理を食べる。
「お、この焼き魚、中々にうまいな」
「もぐもぐ・・・このお寿司やお刺身も、かなり新鮮でおいしいです!」
「おお!本当だな!どれもこれも、すげぇうまい!」
カズマたちも魚料理に絶賛しており、どんどんと平らげていく。
「でしょ?私たちも子供の頃、よくここで魚料理を食べたものだよ」
「ええ。この味、11年たった今でも変わらないわね」
双子は魚料理を食べて、幼かった頃を思い出して、思い出に浸っていた。
「2人はここによく通っていたのですか?」
「まぁ、ね」
「初めて食べたのは・・・5歳くらいだったかな?お姉ちゃんと大喧嘩してお互いに口利かなくなったことがあってね。その時にお頭・・・私たちの団長がここに連れて来てくれてさ。その時に食べたのが魚料理。初めて食べたこれが、本当においしくてね、気がついたら私たち、仲直りしてたんだ。それ以来、遊んだ時も、仕事終わりの時も、よくここで魚を食べに行くようになったんだよね」
「そうか。2人にとってこれは思い出の味なのだな」
あまり聞くことがなかった双子の思い出を聞けて、ダクネスたちは少し嬉しそうだ。まるで本当の仲間として認めてくれているような気がして。
「しっかし、こんなうまい魚どうやって手に入れられるんだ?ここって砂漠だろ?魚の入手も困難なんじゃ・・・」
カズマの疑問に双子は何を言っているんだ?という顔をしている。
「はあ?何言ってんのよあんた?無茶苦茶簡単に取れるわよ?」
「うん。むしろ砂漠で魚を取れない日が珍しいよ?」
「それはどういう・・・」
砂漠で魚がたくさん取れるとどうしても結びつかないカズマが問いかけようとすると・・・
『緊急!!緊急!!この場にいらっしゃる全漁師の皆さんと冒険者の皆さんは、至急広場に集合してください!!繰り返します!!この場にいらっしゃる全漁師の皆さんと冒険者の皆さんは、至急広場に集合してください!!』
突如として休憩所全体に緊急放送が広がった。この放送を聞いた冒険者たちは食事を止めて、広場へと向かっていく。
「なんだ⁉敵襲か⁉」
「違う違う。これから漁が始まるんだよ」
「は?漁?」
緊急の放送で漁が始まるという意味不明なことにカズマは何を言ってるんだという顔になる。
「ちょうどいいわ。あんたの疑問の答え、教えてあげるわ。全員広場に集まりなさい」
アカメに言われ、カズマたちは言われた通りに広場に集まる。広場には冒険者たちや漁師たちが集まっていた。
「今月も荒れるぞぉ・・・」
全員の視線は砂漠のずっと奥に集中している。カズマが千里眼で遠くを見てみると、何やら遠くで砂埃が立っており、こちらに近づいてきているのがわかる。
「・・・何だあれ?」
千里眼でじーっと目を凝らしていると、砂の中で何かがうごめいているのを発見する。そして、うごめいていた何かは砂の中から何匹も飛び出してきた。その正体を見てカズマは絶叫する。
「なんじゃありゃあああああああああああ!!!!???」
砂埃を立てていたものの正体は、大量の魚たちであった。しかも、アジやトビウオなどなど自分たちが知っている様々な種類の魚が砂の中を泳いでやってきたのだ。カズマからすれば驚くのも無理はない。
『緊急クエスト!!
砂漠を泳ぐ砂魚たちを捕獲せよ!!』
「皆さん!今月もご協力、誠にありがとうございます!!今月の魚たちも活きがよく、味が凝縮されているでしょう!!報酬金はサイズが大きいほど高くなります!!数多く捕獲するもよし!一攫千金を狙って大物を狙うもよし!できるだけ大量に捕獲をお願いします!!」
『ヒャッハーーーーーーー!!!!!』
「いけぇえええええ!!!!」
『うおおおおおおおおおおお!!!!!』
金に目がくらんでいる漁師たちは網や釣り竿などで捕まえ、冒険者たちは魚たちに突っ込んで剣で切ったり、魔法で焼いたり、縄で捕まえたりしている。
「そういえばカズマはまだ知らなかったわよね。この世界の魚は二種類存在しているの。1つは私たちが知っている水で生活する種類、もう1つはこの砂漠のみたいに砂の中を泳ぐ砂魚。特に成長しきった砂魚は餌の狩場を求めて、人里を襲い、里を滅ぼしたとも言うわ。そうならないためにどうすればいいのか!それは、襲ってくる砂魚を狩って狩って狩りまくって、おいしく食べようってわけよ!!」
「・・・もうヤダこの異世界!!」
自分の世界ではありえない光景とアクアの砂魚の説明でカズマはもう泣きたくなるくらいにこの世界のろくでもなさに嫌気がさす。
「ちなみに、私たちがさっき食べた魚の正体はあれよ。おいしかったでしょ?」
「それは1番聞きたくなかったわ!!どうしてくれんだ!!?一気に魚を食う気が失せたじゃねーか!!」
「何を言ってるの?畑でサンマが取れるという当たり前のことと同じじゃん」
「俺の故郷じゃ魚は畑や砂を泳いだりしないんだよ!!!」
さっきまで食べていた魚料理の正体を知ったカズマは何とも言えない憤りを感じた。するとめぐみんが爆裂魔法を放とうと詠唱を始めようとした。
「光に覆われし漆黒よ・・・夜を纏いし・・・」
「おまっ!!何やってんだ!!?こんな所で爆裂魔法なんて撃つな!!!」
「だって!あれほどの大群を前にしているのですよ!!?あの数を前にして爆裂魔法を撃たないという選択肢はありますか!!?いいえ!!!ありませんとも!!!!」
「あるわぁ!!!アクセルの連中はともかく、ここ連中は爆裂慣れとかしてないかもしれねぇだろ!!そうでなくても周りにでかい被害が出るわ!!!いいか絶っっっっ対に撃つなよ!!!!絶対だからな!!!!」
「それは、フリというやつですか?」
「違うわぁ!!!!」
カズマは必死でめぐみんを止めているが、さっきからめぐみんがうずうずしているので、今にも撃ちそうな雰囲気である。
「もののついでよ。砂魚、大量にゲットしておきましょう」
「記念祭のためにも、たくさんゲットするぞぁ!そしてお金も大漁にいただきだぁ!!」
「おい待てお前ら!!なんでキャベツ収穫みたいなことをここでもやらなくちゃいけないんだよ!!?て、聞いてねぇし!!」
双子は記念祭の準備、及びお金のために、カズマの制止も聞かず、他の冒険者たちと同じく漁に参加しに行った。
「しかし、あれを放っておけば少なからずここに被害が出るのは間違いない。ならば、我々も加勢する他あるまい。それに・・・砂魚たちもぬるぬるすると聞く!あれほどの大群に飲まれればどうなることか・・・!きっと、全身がぬるぬるに侵され、欲情しきった男たちの、舐め回すような視線で・・・」
「よし!!人の目もある!!お前は1回黙ろうか!!」
「とにかく!!ここを守るためだ!!私は行くぞ!!どっひいいいいいい♡」
ドM心丸出しのダクネスは砂魚たちにもみくちゃにされるために剣を構えて群れの中へと突進していった。一応クルセイダーの本分は忘れてはいないが、やはり平常運転である。自分勝手に行動する仲間にカズマは肩を落とす。
「もう本当・・・どうすりゃいいんだよ・・・」
「カズマ何やってるのよ!カズマも早く魚を取ってきてよ!ここの砂魚、小さい奴でも1匹2万エリスの価値があるのよ!じゃんじゃん釣ってじゃんじゃん儲けるのよ!」
基本面倒くさがりのアクアでさえお金のために釣り竿を借りてきて砂魚を釣ろうとする始末である。もうカズマでは手におえない状況になってきた。
「ああ、もう!!!こうなりゃヤケだ!!!スティーーール!!!」
もうやけくそ気味になり、カズマもスティールで漁に参加する。スティールによって砂魚1匹はカズマの手元に来てピチピチする。その瞬間、カズマは魚特有の生臭さで顔をしかめる。
「な、生臭ぇ~・・・!」
「カズマ、もう爆裂・・・」
「撃つなよ?」
今もなお撃ちたそうにしているめぐみんはうずうずしており、カズマは両方とも気が抜けない状態である。
「第2波が来たぞぉ!!!」
「こっからが大本命だぁ!!!」
「うおおぉ!!捕まえろ捕まえろぉ!!!」
その間にも砂魚の襲来は第2波を迎えた。第2波の砂魚たちは1波よりもかなり大きくなっている。
「ちょっ・・・なんかでかい奴が来てないか!!?」
「そりゃそうでしょ。でかい魚の主食は砂魚・・・つまり共食いするんだから。まぁもっとでかいやつは最悪人も食べるけど」
「ちょっ!!?」
大きな砂魚が共食いするのはまだ理解できるが、あれよりでかい魚は人間までもを食すと聞いてカズマは恐怖を覚える。
「心配しなくていいよ。人を食べる砂魚は滅多なことでは現れな・・・」
「んにゃあああああ!!!砂マグロがぬめぬめすりゅううううううう!!!!」
「「「・・・・・・」」」
ティアがそんな魚は現れることは少ないと言った直後、全員より前に突進していたダクネスはすごくでかいマグロに上半身を食われていた。マグロはダクネスを咀嚼してる。食われているダクネスは嬉々とした声をあげている。ダクネスは固いから無事とはいえ、言っている傍から人食い砂魚の出現を前に、カズマは双子をじっと見る。
「・・・おい」
「さ、早く大物を捕まえましょう」
「第1波の小魚も捕まえとこうよ」
ジト目で見られた双子は知らんぷりした様子で漁を再開する。
「たく、あいつらときたら・・・」
「ねぇ、そんなこといいからカズマ!ちょっと網持ってきて!今魚が食いついてるの!」
アクアの方を見てみると竿がぐぐいっと引いており、今にも魚が竿を持って行きそうな勢いである。
「これはきっと大物よ!!こいつを釣り上げて、今日のおかずも賞金もいただきよ!!女神の底力、見せてあげるわぁ!!」
晩ご飯とお金の執念とは恐ろしいものである。めんどくさがりのアクアが力いっぱい竿をあげて、砂魚を釣り上げようとしている。そして・・・
ザッパーーーン!!!
「来たぁ!!!釣りあげたわぁ!!」
功を奏したのかアクアは大きくもなければ小さくもない、中くらいの大きさの砂魚を釣り上げた。・・・が、その直後・・・
ドバアアアアアアアア!!!!
バクリッ!!
「ひいいいいいいいい!!??」
「さ、サメーーーーーー!!!???」
砂の中から巨大なサメが出てきてアクアが釣り上げた砂魚をバクリと喰らった。砂魚を喰らった砂サメは勢いに任せ、砂の中に着水する。そして、砂サメは背びれを出し、アクアに近づく。
「待って・・・ねぇちょっと待って・・・私は食べてもおいしくな・・・」
砂サメがこちらに近づき、アクアは恐怖で涙ぐんでいる。お構いなしに砂サメは顔を出し、アクアを喰らおうと口を開けて強靭な牙を見せる。そして・・・
「いいいいいいやああああああああああああああ!!!!!カズマしゃん!!!!カズマしゃああああああん!!!!」
「結局こうなるのか・・・」
アクアと砂サメによる追いかけっこが始まるのであった。割と見慣れた光景にカズマはもううんざりとしている。
『ぐわあああ!!!』
その間にも砂魚たちはだんだんと凶暴になってきており、倒れていく冒険者たちが続出してきた。
「お、おい!なんか凶暴になってないか!!?」
「大物だって言ってんでしょうがぁ!!!」
「小物を捕まえるべきだって何度言えば理解するのさぁ!!!」
「なんでお前らは目を離した隙に喧嘩するんだよぉ!!!今喧嘩してる場合じゃねぇだろぉ!!!」
いつの間にか双子は大喧嘩の最中で、カズマは頭を抱え始めた。アクアは砂サメと追いかけっこ、ダクネスは未だに砂マグロに食われており、双子はいつもの大喧嘩。このままでは本当に砂魚たちに食われると思ったその時・・・
「もう我慢できません!!!撃ちます!!!」
とうとう我慢の限界が来ためぐみんが詠唱を唱え、爆裂魔法を撃とうとする。
「ちょっと待てこらああああああ!!!!向こうにはまだ人が・・・」
カズマが慌てて止めに入るが時すでに遅し・・・
「エクスプロージョン!!!!!!!」
ドオオオオオオオオオオン!!!!!!!
『うわああああああああああ!!!!????』
めぐみんが本当に爆裂魔法をぶっ放し、大爆発に冒険者たちと漁師たちは何人か爆風で、吹っ飛び、砂魚たちも何匹か爆風で打ち上げられ、何匹かは大爆発によって焼かれるのであった。・・・一応人間は全員無事で済んだが、この後カズマたちには冒険者たちからの苦情はもちろん、とんでもない事態が訪れるのだった。
次回、この弱小冒険者に救いの手を!