このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

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一応は次話も書きますが、もしかしたら今話が今年最後の投稿になるかもしれません。

来年は双子の過去、10歳の頃の話を乗せてみようかなとは思っていますが、どうでしょうか?


この暑苦しい都市で癒しを!

双子の生まれ故郷である灼熱都市、アヌビス。偶然出会ったマホの力でやっとこの都市にたどり着いたカズマたち一行はウェーブ盗賊団の仮拠点である冒険者ギルドまでやってきて、現在はギルドマスターの部屋で盗賊団の団長、ネクサスと対面していた。とはいっても、対面しているのはカズマだけであって、アクアたちは離れた席でバーバラが出したお茶菓子を食べている。双子は広間で冒険者たちと飲んだくれているが。

 

「・・・・・・こほん。あー・・・まずは初めまして、だな。うちの子分から名前は聞いてるだろうとは思うが、一応挨拶だ。俺の名はネクサス。この盗賊団の団長を務めてる者だ。で、あんたの仲間と茶をすすってるのが2人いる最高幹部の1人のバーバラ」

 

「よろー」

 

「で、俺の隣にいるのが、もう1人の最高幹部の・・・」

 

「カテジナと申します。あなたたちとは、あの2人の裁判で顔を合わせましたが、直接会うのは初めてですね。以後、お見知りおきを」

 

「は、はい・・・」

 

ネクサスたちはカズマたちに自己紹介をしたが、カズマの顔は全くすぐれなかった。というのも、先ほどからネクサスはカズマに対して誰でもわかるような強い警戒を示しているからだ。まるで鬼に睨まれているような感覚で、カズマは身が縮こまりそうな思いである。

 

「さて、あんたのことはあのバカ共の報告書で存じているさ。何でも裁判にかけられた2人を助けようとしたとか。アクセルの仮拠点のモンスターの相手もしたとか。何度も何度もあんたに助けられて世話になっているとか。その点については、団長として感謝している。ありがとう」

 

ネクサスはカズマに頭を下げて、感謝の意を示している。これはネクサスの本音であることがカテジナにはすぐわかった。が、すぐにネクサスは頭を上げて気を引き締め直した。

 

「・・・でだ。カズマさんや・・・あんたうちのバカ共とどういった関係だ?」

 

ぶっちゃけて言うが、ネクサスにとってこれが1番の本題となっている。一応は父親代わりとして大切に育ててきた娘たちが突然どこの馬の骨とも知らない男を連れてきたのが、ネクサスにとって気が気でないであろう。

 

「いや・・・あのですね・・・あの2人とはただの友人で・・・」

 

シュッ!!ザクッ!!!

 

「ひぃいいいいい!!?ナイフ!ナイフが飛んできた!!」

 

「あ・・・あ・・・あ・・・」

 

カズマの言葉を聞いて、ネクサスは有無を言わさずにナイフを投げつけた。そのナイフはアクアのチャームポイントの髪をかすらせて、壁に突き刺さった。突然ナイフが飛んできてアクアは騒ぎ出し、そのナイフに頬がかすったカズマはネクサスに対してさらに恐怖を募らせる。

 

「・・・・・・すまん。俺の聞き間違いか?もう1度言ってみてくれ。場合によっては・・・お前を殺す

 

「お、落ち着いてくださいネクサス様!!どうかここはお戯れを!!お戯れを!!」

 

他のナイフも取り出して明らかに怒りを示しているネクサスにカテジナは必死な思いで彼を落ち着かせる。カテジナはネクサスの怒りを必死になだめ、最後にはリラックスティーを出して、落ち着かせた。

 

「・・・すまん。少し冷静さを欠いてしまった。いやなに、あのバカ共にちょっかいを出しておきながら友人とかって白々しいことを抜かすもんでな」

 

(あいつら報告書にいったい何書きやがったぁ!!)

 

「申し訳ございません、カズマさん。リラックスティーです」

 

「あ、ありがとうございます・・・あ、そうだ・・・」

 

リラックスティーをもらったカズマは自分たちの荷物からアルカンレティアからのお土産、アルカン饅頭をネクサスたちに差し出す。

 

「これ・・・つまらないものですが・・・」

 

「・・・・・・気に使わなくてもよかったんだがな・・・まぁ、いただくとしよう。カテジナ、これに合う茶を出してくれ」

 

「畏まりました、ネクサス様」

 

「く、クラリッサ様・・・その役目は私が・・・」

 

「あなたはお客人なので手伝い無用です。それに・・・これはネクサス様よりいただいた指令。譲るわけにはいきません」

 

ダクネスがカテジナを手伝おうとしたが、カテジナはそれを許可しなかった。剣を教えてもらった師であるカテジナがこうしてネクサスに尽くしている姿を見て、ダクネスはネクサスがただものではないと感じ取った。

 

「でだ。話の続きだ。どうやらあんたらはバカ共と同じ屋敷に住んでるそうだな。同じ屋根の下で暮らすことは別に構わん。うちらとて、男女屋根の下で暮らしているわけだからな。ただ俺が言いたいのはな、あのバカ共と接するなら、もっと仲間として、紳士的で節度ある付き合いをしろってわけで・・・」

 

「いやすいません、何の話をしているのですか?あいつらとはただの友人であると何度も・・・」

 

「・・・・・・まだ言うか。あんなことをしておいて・・・」

 

本当に何を言っているのか理解していないカズマの言葉にネクサスはまたも怒りが込み上げてきた。

 

「ネクサス様、落ち着いてください。お饅頭と粗茶をどうぞ。カズマさんも」

 

「むっ・・・すまん」

 

「あ、ありがとうございます・・・。ち、ちなみに、さっきからあんなことと言ってますけど・・・あいつらの報告書になんて書いてあるか伺ってもいいですかね・・・?」

 

「「・・・・・・」」

 

双子の報告書に何と書いてあるのか尋ねたカズマにネクサスとカテジナは黙ってバーバラを見る。2人の視線に気づいたバーバラは懐から畳んであった双子の報告書を取り出し、ネクサスがカズマを警戒する理由を述べる。

 

「えー、これに書いてあったのは・・・カエルとミミズの口の中に放り込ませて、粘液まみれにさせたりとかー・・・アーちゃんのパンツを何の許可もなくスティールしたりとか・・・ティーちゃんがそこらに放り投げた古いブラジャーを持っておっぱいの成長を確認したりとか・・・2人がお風呂に入浴中の時に千里眼を使ってのぞこうとしたりとか・・・ペットのアレクサンダーにわざわざ高級大トロの刺身を使って、2人の新しい下着を盗ませてこようとしたりとか・・・いやー、君って本当に罪作りな男だねー」

 

「申し訳ございませえええええええええええええん!!!!!!!」

 

上げれば上げるほど、カズマのクズ行動が出てくる。改めて聞かされて、カテジナはクズを見るような目でカズマを睨み、ネクサスはどす黒いオーラを部屋中に充満する。いたたまれなくなったカズマは椅子から立ち上がり、机を割るような勢いで頭を下げ、必死な思いで土下座をする。

 

「・・・・・・そんなわけでな。俺としてはあんたみたいなクズでクソ変態野郎で態度が悪い非常識野蛮人を信用することが全くできない」

 

「・・・あの・・・そこまで言いますか・・・」

 

「ただ、人は見た目で判断しちゃいけねぇ。アクセルで活躍した偉業はもちろんのこと、あのバカ共は心の奥底からあんたを信用しているみたいだからな。だから、この記念祭の準備で、あんたのことを見極めさせてもらう。本当にあいつらにとって、相応しい人物かどうか、そして、俺たち盗賊団にとって信頼に値する人物かどうかをな」

 

「・・・はい、わかりました・・・」

 

完全に縮こまっているカズマはネクサスの言葉に賛同するしかできなかった。

 

「・・・まぁ、とはいえ、ここまで疲れただろう。宿の方はこちらの方で手配しておいた。今日はそこで休んで、明日この街を観光するといい。期限はまだある。1日くらい観光したって罰は当たらんさ」

 

「はい・・・そうさせていただきます・・・」

 

「話は以上だ。カテジナ、彼らを宿まで案内してやれ」

 

「承りました、ネクサス様。さあ、皆さん、どうぞ、こちらへ」

 

話が終わって、カズマたちはカテジナの案内に従い、ギルドから出て宿屋まで案内してもらう。とにかく話が終わって、般若のオーラに解放されて、カズマは若干ながら感涙を流しそうになっている。余談だが、双子はその間にかなり飲んで、もうべろべろの状態になっているのだとか。

 

 

ーあー、怖かった・・・ー

 

 

話が終わって、カズマたちは宿屋まで案内してもらっているのだが・・・カテジナがあまりにも無口で無表情、話しかけづらい雰囲気が漂っており、正直気まずさでいっぱいである。

 

(ね、ねぇカズマカズマ!あのカテジナって人、話しかけづらいんですけど!なんと言うか・・・話しかけてはいけないみたいな!そんなのを感じるんですけど!)

 

(わかる。ていうか・・・さっきの会話のこともあって、話しかけたら殺されそうだ・・・)

 

(ほとんどカズマに原因があるような気がしますが・・・2人の言いたいことはわかります。私のかっこいい自己紹介をとてつもない殺気で返したのはあの人が初めてですから・・・)

 

(お、おい!仮にも相手はカルヴァン家のご令嬢だぞ!失礼な発言は控えてくれ!)

 

貴族としての立場上でダクネスはカズマたちが失礼のないように注意を促す。

 

(しかし・・・やはりわからないな・・・クラリッサ様は王国の懐刀と呼ばれてもおかしくないほどの力量を持っているし、王国の人間もこの方を信頼している。それなのになぜ、王国には仕えず、盗賊団に仕えるのか・・・)

 

(直接聞けばいいだろ)

 

(いや・・・そうは言うがな・・・仮にもクラリッサ様は私の師だ。このようなことをプライベートで聞いてよいものか・・・)

 

「あの、先ほどから聞こえているのですが」

 

「「「ひぃ!!」」」

 

「も、申し訳ございません、クラリッサ様!!」

 

「そのクラリッサ様はやめてください。一応は身分は隠していますので」

 

カズマたちのこそこそ話を聞いていたカテジナはカズマたちに話しかけてきた。カズマたちは過剰に反応し、ダクネスは姿勢を正し、謝罪した。

 

「・・・なんてことはありません。ただ己の騎士道に従ったまで。だからこそネクサス様に仕えている、それだけです」

 

「き、騎士道に・・・?」

 

「ララティーナ、あなたもいつか理解できますよ。私の求める、騎士道というものを」

 

カテジナは自分が盗賊団に入った理由を語ったが、どういうことか全く理解できなかった。ただ、あとは自分たちで気づけと言われてるみたいで、カズマたちは深く聞くことはできなかった。

 

「さて、こちらが、アクアさんたちが泊まる宿になっております」

 

「やっと着いたー・・・」

 

「もうくたくたです。早く中に入って休みましょう」

 

「そうだな。ふー、暑かったぜー」

 

ようやくたどり着いたカズマたちは早く休もうと宿の中に入ろうとするが、カテジナはカズマだけを止める。

 

「あの・・・カテジナさん?どいていただけます?」

 

「申し訳ありませんが、カズマさんが泊まる宿はここではありません」

 

「え?」

 

「なので、あなただけはこの宿には入れません」

 

「な、納得できません!カズマは私たちの仲間ですよ⁉なぜカズマだけ中に入れないのですか⁉」

 

なぜカズマだけこの宿に泊まれないのかとめぐみんは異議を唱える。

 

「・・・宿の手配は全てネクサス様がいたしました。理由につきましてはネクサス様に直接お伺いしてもらえますか?」

 

「あー・・・あの人ですか・・・」

 

「もっとも、理由はご自身も大体察したようですが」

 

「・・・すいません」

 

宿の手配をしたのはネクサス本人だと知り、カズマだけハブられる理由を察しためぐみん。それによってカズマ自身も何も言えなくなる。

 

 

ーこのすば・・・ー

 

 

結局カズマはアクアたちといったん別れ、ネクサスが手配したという別の宿にカテジナに案内されることとなった。そしてちょうどその宿にたどり着いた。

 

「こちらがカズマさんが泊まる宿になっております。私は業務が残っておりますので、これにて失礼させていただきます。ご不明な点がございましたら、ここに泊まっている男衆にお聞きください。では」

 

カテジナはカズマに丁寧にお辞儀で挨拶をし、冒険者ギルドへと戻っていった。1人取り残されたカズマは1人寂しく、チェックインを済ませ、1人寂しく、用意された部屋のベッドに座り込む。

 

「・・・いや、おかしくね?俺、一応アヌビスに来たお客様だよ?なのにこの仕打ち・・・ひどくね?しかも、俺今日モグラに襲われたんだよ?そのトラウマを植え付けられた上に女っ気1つもない部屋。・・・俺の求めていた展開と違ああああああう!!!」

 

カズマはあまりの理不尽さに1人ぶつぶつと呟き、次にキレだして腰のちゅんちゅん丸を地面に叩きつけた。すぐに落ち着きを取り戻したが、その後涙を流すカズマ。

 

「ううぅ・・・アニメやゲームのような主人公なら・・・今頃女の子にモテモテになってもいいはずなのに・・・それが今1人って・・・辛い・・・辛すぎる・・・」

 

コンコンッ

 

これがゲームやアニメの甘い世界ではなく、厳しい現実なのであると目の当たりにし、カズマが涙を流していると、ノックの音が聞こえてきて、カズマが返事をする前に扉が開き、複数人の男が入ってきた。

 

「よっ!お勤めご苦労さん!」

 

『へへへへ』

 

入ってきた男のうちの1人、盗賊団員であるスティーヴとその他の男たちは気軽そうににこにこと笑顔を見せている。突然入ってきた知らない男たちを前にカズマは目をぱちくりさせる。

 

「あの・・・どなたですか?」

 

「おう!俺は盗賊団員のスティーヴってんだ。双子共の・・・まぁ、腐れ縁って奴だ。あんただろ?あの双子共に振り回されてるって男はさ」

 

「あ、はい。まぁ、あいつらだけに振り回されてるわけじゃないんですがね・・・」

 

「まぁでも、あいつらと付き合うと苦労するよな。わかるぜ、お前の気持ち。苦労人同士、仲良くやろうぜ?なぁ、お前ら」

 

『うんうん』

 

双子だけでなく、仲間たち全員に振り回されてるのを思い返し、カズマはさらに落ち込みを見せる。双子に振り回されたスティーヴを含む苦労人たちはそんなカズマの傷を癒そうと馴れ馴れしく接している。

 

「それにしてもリーダーも大人げねぇよなぁ。この場所に1人だけ泊まらせるってのは」

 

「従業員も泊ってる客も野郎ばっかだしなぁ」

 

「女なんて誰1人として来ない不人気の宿だしなぁ」

 

「う、ううううぅぅぅ・・・」

 

いらない情報ばかり聞かされて、カズマは本当に心がくじけそうになってくる。

 

「まぁそう気に病むなって。むしろ好都合と考えた方がいい」

 

「ぐすっ・・・好都合って・・・?」

 

男しか来ない宿で好都合という意味がよくわかってない様子のカズマ。首をかしげているカズマをよそに男たちは誰も聞こえないように扉を閉め、カズマの元へ近づく。

 

「・・・お前ってさ・・・アクセルの冒険者だよな?」

 

「それが?」

 

「・・・お前・・・サキュバスの店に興味ある?」

 

「詳しく」

 

サキュバスの店の名前が出た途端に急に決め顔になり、詳細を求めだしたカズマ。カズマのノリの良さに機嫌がよくなったスティーヴはカズマにこの街のサキュバスの店の詳しい説明をした。散々な目にあって心が病みかけていたカズマは躊躇うことなくサキュバスの店を利用したのだった。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

その翌日、めぐみんたちはとりあえず双子とカズマと合流するために冒険者ギルドへと足を赴く。その道中、アクアは熱い熱いと嘆いているが、プールのためにひとまずは我慢している。

 

「おーい!こっちこっちー!」

 

たどり着いた冒険者ギルドの前では双子が待っていた。

 

「はよー・・」

 

「2人はここで寝てたんですよね」

 

「まぁね。久しぶりの部屋は快適だったよー」

 

「それはよかった。ところでアカメ、どうしたんだ?その・・・私の琴線がくすぐるような視線でティアを睨んでるが・・・」

 

「関係ないでしょこの【ピーーーッ】が」

 

「く・・・くうぅぅぅん!!///」

 

ティアは調子よさげの様子だが、アカメは何やら不機嫌そうな顔になっている。と、いうのも、久方ぶりに双子は1つのベッドで一緒に眠ったのだ。その際にティアの胸がアカメの背中に当たってしまい、自分との格差でイラつきなかなか眠れなかったのだ。

 

「それはそうと、今日は私たちがこの街を案内するよ。みんな、この街をよく知らないでしょ?」

 

「お、おお・・・それはありがたい。この街には以前から興味はあったんだ」

 

「しかし、カズマをよく思ってないあの人がよく許可を出ましたね」

 

「お頭の許可なんていらないわよ。私たちが勝手に決めたことだし」

 

「まぁ、話を聞いてたのかお頭は終始嫌そうな顔してたけどね」

 

「まぁあの人カズマさんのこと信用してなかったみたいだし」

 

観光案内を自ら名乗り出た双子の判断に嫌そうな顔をするネクサスの顔が容易に浮かび上がっためぐみんとダクネスは苦笑いを浮かべる。

 

「つか、その肝心のカズマはまだのようだけど?」

 

「一応はここで待ち合わせしようとは言ったのですけど・・・」

 

「カズマのことだから昨日のことでいじけてんじゃ・・・」

 

「おーい!!待たせたなー!!」

 

まだここにいないカズマの話が出た途端、その本人がタイミングよくやってきた。それ自体はまぁいいのだが・・・アクアたちが気になったのはカズマがやたらと上機嫌で肌が潤っているように見えたことだ。

 

「お、おはようございます、カズマ・・・」

 

「な、なんかやけにご機嫌ね。何かあったのかしら?」

 

「なんてことないさ♪ただ宿が快適だったってだけ♪」

 

「そ、それならいいんだが・・・」

 

予想とは裏腹にやたら機嫌がいいカズマにアクアたちは戸惑い気味だ。それもそのはずだ。昨日カズマはスティーヴ達と一緒にサキュバスの店を利用し、いい夢を見たのだから。しかも、この街にいる間は毎日利用するつもりだからなおさらだ。

 

「お、男だけの宿で、やたらとご機嫌?モグラにやられた影響かな?」

 

「違うと思うわ・・・。滅茶苦茶怪しいわね・・・」

 

あそこが男だけしか泊まらない宿だというのを知っている双子はカズマの機嫌のよさには怪しんでいる。

 

「それより、アカメとティアがこの街を案内してくれるのかい?」

 

「え、ええ・・・」

 

「じゃあ、よろしく頼むよ♪」

 

にこやかに微笑んでいるカズマに女性陣はいつものカズマじゃないように見えて気持ち悪いと感じたのであった。

 

 

ー素晴らしき朝に、乾杯(イケボ)ー

 

 

双子の案内によって、カズマたちのアヌビスの観光が始まった。まず最初に双子が案内するのは絶景スポットである。こんな砂しかない砂漠で絶景なんてあるのかと怪しむカズマだが、その考えはすぐに変わった。

 

「さ、着いたわよ。あれが世にも珍しい盗賊王の墓とも言われてるピラミッドよ」

 

双子に案内された高台からは砂漠の中に黄金に輝いているピラミッドが見えた。

 

「おおお!!すげぇ!!本物のピラミッドだ!!これぞまさにファンタジー!!」

 

「カズマさんカズマさん!あのピラミッド、全部金でできてるわよ、金!!」

 

「すごいな・・・なんという神々しいピラミッドだ」

 

ピラミッドの作りが見事という感想もあれば、見事に金でできてることに興奮してる感想もあるが、ピラミッドの存在が見事すぎて興奮するカズマたち。

 

「大昔、世界の全てにその存在を轟かせたという盗賊王。その剣筋は邪を払い、魔族を恐れひれ伏させ、手に入れられぬ財宝はなしといわれているらしいよ」

 

「な、なんですかその明言は⁉紅魔族の琴線にものすごく刺激されますよそれ!」

 

大昔に存在したといわれている盗賊王のキャッチフレーズに紅魔族の琴線が刺激されためぐみんが目をきらめかせている。

 

「しかし、本当に見事なつくりだなぁ。もしかして、このピラミッドの中に盗賊王の財宝があるーとか噂しそうだな・・・」

 

「あるわよ。あの中に財宝が実際に」

 

「マジで!!?」

 

ほんの冗談のつもりで言ったカズマだが、まさか本当に中に財宝があるとは思わなかったカズマは驚愕する。それによってアクアの目も変わってきた。

 

「でも中に入るのはお勧めはしないわ」

 

「う・・・そりゃそうだよな・・・大事な観光スポットだし・・・」

 

「違う違う、中に入らないのはあのピラミッド自体が最高難易度のダンジョンだからだよ。中に入る奴といえば、財宝目当ての奴か腕によっぽど自信のある奴くらいだよ」

 

「・・・なんでそんなとこを観光名所にするんだよ・・・」

 

別段大事にしてるというわけでなく、ただ見栄えの良さだけで危険なダンジョンを観光名所としているアヌビスの街の住人たちにカズマは頭おかしいのではないかと考える。

 

「それにね、あのピラミッドには・・・いるんだよ・・・モンスターと化した、本物の、盗賊王が」

 

「は?本物?」

 

あのピラミッドに本物の盗賊王がいると聞いて、カズマたちは首をかしげる。

 

「盗賊王はとんでもなく財宝にがめついらしくてね。死んだ後も財宝の未練ですぐにモンスターとなって復活したらしいわよ。で、復活してすぐに財宝を守るためにあのピラミッドが作られたってさ。その証拠に、あのピラミッド、金でできてるでしょ?あれ全部盗賊王の好みなんだと」

 

「前にあそこに挑んだ歴戦の冒険者もあそこだけは攻略できなかったみたいなんだよね。住み着いてるアンデッドもやたらと強いし、盗賊王自身も人間だった頃よりもずっと強いらしいし」

 

「しかも、大昔にあった不死と災いを司る邪神を奉るクソマイナー宗教の信者らしくて、その力で毎度毎度復活するらしいのよね。その度に手に入れてきた財宝が少しずつなくなってるらしいから、怒り狂って冒険者を全員殺してきたそうよ」

 

盗賊王の財宝に対する執念、残虐性、恐ろしいほどの強さ、そして何度でも復活する能力を聞いたカズマたちはその説明で顔を青ざめている。いや、ダクネスだけは悶々と葛藤しているようだが。

 

「と・・・ということは・・・盗賊王は財宝がある限り死なないってことですか・・・?」

 

「財宝に限らず、思い出の品なら復活するらしいけど・・・」

 

「ま、盗賊王にとって1番思い出のあるものっていったら財宝よね、やっぱ」

 

「そんなのを放置しておいてよくこの街は無事だったな・・・」

 

「話によると盗賊王が殺すのは自分の命を狙う奴と財宝目的の奴だけだって。それ以外に眼中にないからあそこから出ないんだって」

 

「まぁ、あいつの性格に救われてるって感じね」

 

双子は盗賊王の性格に少し苦笑いしている。余談ではあるのだが、盗賊王の崇拝している邪神の宗教は異世界で今も存在しており、はた迷惑な司教がその力を振りまいてるとかどうとか。

 

「・・・て、ダクネスどうした?」

 

「い、いや・・・伝説の盗賊王の剣の一撃・・・それを食らったら、どれほど気持ちいだろうなって・・・」

 

「今気持ちいいだろうって言ったか?」

 

「言ってない」

 

どこまでも平常運転なダクネスさんであった。

 

 

ーさ、次行くわよー

 

 

双子たちが次に案内したのは娯楽スポット。アヌビスには娯楽施設が多数あるので、全部を案内することはできない。ゆえに、1番人気のスポットをカズマたちに紹介する。

 

「このアヌビスで1番の娯楽スポットっていえば、やっぱりこの闘技場よね」

 

『わああああああああああ!!!!!』

 

『おおおいけええええええ!!!!!』

 

「わー、今日も賑わってるね。さすがアヌビスの闘技場だね、うんうん」

 

まだ中に入っていないが、外からでも大歓声が案内された闘技場の会場から聞こえてきた。

 

「すごい歓声だな・・・。何をやってるんだ?」

 

「この闘技場ではいろいろやってるわよ。大食い大会にマジックショー、スポーツ大会にさらに走り鷹鳶ダービー」

 

「それでも1番頻繁に行われてるのは誰が1番強いかを決める闘技大会だね。今は記念祭が近いから別の大会を開いているけど、あの白熱っぷりは誰が見ても大興奮間違いなしだよ」

 

「そうか、それはぜひとも見てみたかったものだな」

 

闘技場内を案内しながら嬉々として語る双子の話を聞いて、ダクネスは1度は見物してみたいと言い出した。尤も、カズマやアクアは闘技場での戦いにはあまり興味なさそうだが。

 

「中でも現チャンピオングレート・ゴンザレスの戦いっぷりはだけどすごいんだから!」

 

「グレート・ゴンザレスとは何ですか?」

 

「闘技大会でチャンピオンに君臨してる配管工よ。冒険者じゃないみたいだけど、やたら強くて誰も勝てた試しがないみたいよ」

 

「配管工が冒険者たちに勝つ⁉何かの間違いなのではないか⁉」

 

「いや、本当に勝っちゃうんだよ。地獄の処刑人グレート・ゴンザレスの試合を見れば嘘を言ってないのはわかるって!」

 

冒険者に勝ってしまうほどの実力を持つ配管工の男、グレート・ゴンザレスにめぐみんとダクネスは驚愕しつつ、事実を疑っている。

 

「なんか・・・グレート・ゴンザレスって聞いたことあるんだが・・・」

 

「あら奇遇ね。私もなんか聞いたことがあるのよ。どうしてかしら?」

 

カズマとアクアはグレート・ゴンザレスの名に聞き覚えがあるようで、それがなぜなのかというのを疑問を抱いていた。

 

「ちなみにグレート・ゴンザレスはほら、あそこのポスターの男がそうだよ」

 

「「!!???」」

 

グレート・ゴンザレスが載ってあるポスターを見て、カズマとアクアはぎょっとし、驚愕した。グレート・ゴンザレスの見た目は赤い服に青いオーバーオール、Mと書かれた赤い帽子に特徴のある丸い鼻や髭を持ち合わせた某ゲームに登場する男とそっくりであったのだ。

 

「これがグレート・ゴンザレスか?」

 

「なんだか、全然印象に残らない髭男ですね」

 

「でも愛嬌はあるわよ、髭男のくせに」

 

「それになぜか最初っから人気者なんだよねー」

 

それさえも知らないめぐみんたちはグレート・ゴンザレス印象や、カリスマ性の有無を話し合っている。

 

(なあ・・・あれってどう見てもマ○オだよな?なんでこの世界にいんの?おかしいだろ。世界観とち狂ってんのか)

 

(い、いや・・・そんなはずはないはずよ?だってこれ、ゲームでしか登場しないはずなのに・・・)

 

グレート・ゴンザレスの見た目を知っているカズマとアクアはどういうことなのかと首を捻らせて考えている。するとアクアはあっ・・・と思い出した表情になる。

 

「そ・・・そういえば・・・前に他の転生者をここに送る時、転生特典として、見た目をマ○オにしてくれって・・・言われたような・・・」

 

「・・・お前が原因じゃねぇかあああああああああ!!!!!」

 

グレート・ゴンザレスという存在が現れた原因はアクアにあったということを知り、カズマは叫ばずにはいられなかった。

 

 

ーさあさあ、次どんどん行くよー。ー

 

 

闘技場の走り鷹鳶ダービーをちょこっと覗いてから次なるスポットへと向かっていく。次なるスポットは記念祭の準備をしている広間であった。

 

「この広間はね、毎日行商人が来るから毎日がバザーデイよ」

 

「今は記念祭の準備のおかげで別の場所でやってるけど、本番になったらきっと今以上に賑わうだろうね」

 

双子の言うとおり、今は記念祭の準備をしている人間は多いが、少なからず行商人は準備の邪魔にならない場所で行っていた。カズマたちがこんな熱い中でも切磋琢磨に働いている街の人間たちを見て感心していると、広間の中央に剣を天に掲げた男の像が建っている

 

「おお、なんと猛々しい像なんだ・・・」

 

「ああ、それ、なんか神様の像らしいよ、それ。確か・・・炎を司る男神だったっけ?」

 

「炎を司る男神・・・?ひょっとするとそれは、男神ホムラのことか?」

 

「ホムラ・・・?そんな名前の神様、初めて聞きました」

 

「なんだその男神ホムラってのは?」

 

男の像が炎を司る男神であると聞いた途端、ダクネスは思い当たる神の名を口にした。当然他の神のことについて知らないカズマは男神ホムラについて尋ねてきた。

 

「私も詳しいことは知らないのだが、どうやらエリス様、女神アクアと同等の力を持つ神様らしいのだ。お父様の話によれば、エリス様と女神アクアの先輩らしいぞ」

 

「えっ⁉マジで⁉」

 

「あー・・・確かそんなこと言ってたような、言ってなかったような・・・言ってたかしら?」

 

男神ホムラが女神エリスとアクアの先輩だと聞いて、カズマは少なからず驚いていた。

 

「神様っていう割には、かなり知名度は低いようなのですが・・・」

 

「それは多分、男神ホムラ?は宗教が存在しないからじゃないかな?ほら、女神エリスにはエリス教、女神アクアにはアクシズ教があるけど、男神ホムラ?を崇拝する宗教は今まで1個も聞いたことないし」

 

「男神ホムラはそれを必要としないと聞いたことがある。男神ホムラは我々冒険者の闘争心がそのまま力になるとかどうとか・・・。まだわかっていないことが多すぎるが・・・」

 

男神ホムラはこの世界ではあまり浸透しておらず、詳しい詳細も全く分かっていないようなのだ。その証拠に、周りは神の像を前にしても、崇め奉る人間は誰1人としていない。ただ綺麗な状態を保っていることから手入れだけは行き届いているようだ。

 

「ま、こんな意味不明な神様なんざどうだっていいわ。興味もないし」

 

「おい、仮にも神の像の前なんだ。そんな罰当たりな発言は慎んでほしい」

 

双子たちは全く気にした素振りを見せないが、アクアと女神のエリスの先輩というのがどんな人物像なのか気になり始めるカズマ。

 

「なあアクア、この男神像なんだけど・・・アクア?」

 

「・・・・・・」サァー・・・

 

男神ホムラについて尋ねようと思ったら、アクアの顔がやたらと顔が血の気が引いていくように青くなっている。

 

「アクア?どうした?」

 

「アクア、どうかしましたか?」

 

「おーい、アクアー?アクアさーん?聞こえてるー?」

 

「・・・・・・」ガクガクガクッ・・・

 

「お、おい・・・何か様子が変じゃねぇか?」

 

アクアは先ほどから目の前にある男神ホムラの像を見て、ガクガクと震えている。よく見てみると、冷や汗もだらだらと流れていた。その姿にはカズマたちは戸惑っている。

 

「ちょっと・・・いい加減反応しないとその腕・・・」

 

「!!ひ、ひいぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

「「「「!!??」」」」

 

「あ、アクア?」

 

何にも反応を示さないアカメが腕の単語が出た瞬間、これまでにない尋常でないくらいの悲鳴を上げている。

 

「ちょ、ちょっとアクア⁉落ち着いてください!!」

 

「いや・・・いやぁ!!!もう腕立て1億回は嫌なの!!もう、あのスパルタ教育は嫌なのよぉ!!!」

 

「一体何の話だ⁉いいから落ち着け!!」

 

「すみません、すみません、ホムラ先輩・・・もう許してください・・・。あのスパルタ教育は耐えられませんからぁ・・・」ガクガクガクガク・・・

 

この世界で様々なトラウマを植え付けられてきたアクアであったが、それ以前に天界で男神ホムラにスパルタ教育という名のトラウマをひどく植え付けられていたようだ。

 

(男神ホムラ・・・マジで何者なんだよ!!?)

 

ここまで怯え切っているアクアを見て、カズマは男神ホムラを知りたいような知りたくないような、そんな複雑な思いを抱えるであった。

 

 

ーこのしゅばぁ~・・・ー

 

 

いったん広間を後にし、この街の飲食店でアクアを休ませるついでに昼食をとった。食事を済ませ、アクアも落ち着きを取り戻したところで観光再開・・・の前に双子が記念祭で使う服の採寸をするためにちょうど開店時間になった服屋に寄ることになった。

 

「あ?なんだ、お前らもここに来てたのか」

 

目的の服屋の中に入ると、そこにはマホがいた。

 

「あれ?マホ、こんなところで何してんだ?」

 

「マントが古くなってきたんで新しいのを買おうと思ってたんだけどよ・・・肝心の店主がいないんだよな」

 

辺りを見回してみると、マホの言うとおり、店主と呼べる人物がいなかった。だが、双子はこの店の店主の性格をよく知っている。

 

「ねぇちょっと、いるのはわかってるんだから出てきなよ」

 

ティアが呼びかけるとそれに応じるように奥の部屋のカーテンが開かれた。そして、部屋からいくつもの花びらが舞い散る。

 

「な、なんだ⁉」

 

「・・・第一印象に気を遣う・・・」

 

「それが美しい男のたしなみ・・・」

 

まるで自分たちを魅せるように出てきたのは、少し小太りしている男と、やたらとイケメンで高身長な男であった。

 

「相変わらずね、あんたたち」

 

「あら、いらっしゃい双子ちゃん。帰ってきてたのね」

 

(!!?その、喋り方・・・この人オネェかよ!!?)

 

小太りな男の似合わないオネェ口調に嫌に寒気が出る。すると、イケメンの男はカズマに気づいた。

 

「あーら、見るからに冴えなくてパッとしない見た目だけど・・・なかなかいい男じゃない」

 

(この人もかよ!!?)

 

このイケメンの男も小太りの男と同じ喋り方をしている。

 

「紹介するよ。ここは鍛冶屋と服屋を合わせてる店で、鍛冶担当のイッテツと仕立て屋担当のルーク」

 

「性格は見てのとおりよ」

 

「初めまして。鍛冶を担当してる、ドワーフのイッテツよ。武具のことなら、あたしにお任せ♡仲良くしてね♡特にそこのお兄さん♡」

 

「あたしは服屋を担当してる、エルフのルークよ。ファッションでお困りなら、あたしが磨いてあげる。よろしくね、そこのお兄さん♡」

 

(なんか初対面で気に入られてるんですが・・・)

 

初対面でありながらいきなりカズマを気に入っているエルフルークとドワーフイッテツのオネエコンビにカズマは先とは比べ物にならない寒気を生じる。少しフリーズしかけているカズマに代わり、ダクネスが対応する。

 

「よ、よろしく・・・。ところで、2人はエルフとドワーフと言っていたな。なんというか・・・仲がいいのだな。てっきりエルフとドワーフは仲が悪いというのが印象的なのだが・・・」

 

「あらやだ!あなたまでそういう口?」

 

「いやーねー、そんな古い臭い風習」

 

「ふ、古い・・・?」

 

エルフとドワーフは仲が悪い。それはRPGではよくあることだが、この2人はそうではない。というか2人とも、エルフとドワーフらしくないのだ。

 

「先に言っておくけど、あたしは耳は丸っこいけど、本物のエルフよ。嘘だと思うなら触ってもいいわよ、耳」

 

ルークに耳を差し出され、言われた通りにルークのエルフらしくない耳を触ってみるカズマ。触った感触からして、本物であるのがわかった。

 

「森で暮らすエルフはそりゃ人と交わらないから耳は長いけどね、ここみたいに人と交わって暮らすとどうやったって血が混ざっちゃうのよ。それでこの耳になるわけ。それを知らない人が多いんだけど、それでがっかりされちゃうの。失礼な話でしょ?」

 

「あたしも衛生面の話なんだけど、知り合いの中に土産物屋を扱ってる子がいるんだけど、その子、食事を作ったりしちゃうのよ。で、その食事に髭が入ってたら嫌でしょ?だからドワーフのみんなは髭を剃ったりしてるの。世間ではエルフとドワーフは仲が悪いって話だけど、そんな話はナンセンスだわ!だからその噂を覆そうって思って、あたしとルークはこうやって一緒に働いてるってわけ」

 

「・・・なんか夢が一気にぶち壊された気分です・・・」

 

エルフとドワーフは仲が悪いという噂を信じていたカズマたちは非常にがっかりした顔になっている。この中でまともそうなのは双子とそもそも話に興味がないアクアだけである。

 

「あら?もしかして今までそんな話信じてたの?嫌な偏見ね!」

 

「思い込みはダメよー?不器用なドワーフもいれば、弓も下手くそなエルフもいるんだから」

 

「・・・本当、この世界嫌い」

 

元からこの世界に嫌気がさしているカズマであるが、この事実によってさらに嫌気が増すのであった。

 

「まぁ・・・そんな夢のない話は置いといて・・・話は聞いてるよね。記念祭で使う巫女服の採寸をしてほしいんだ。私たち2人だけなんだよね?まだ完成できてないの」

 

「あー、はいはい、わかってるわよ。記念祭の服の採寸、及び服の制作、それが頼まれたことよね。うっふふふふ、デザイナーの血が騒ぐわぁ」

 

ティアが本題に切り替えた瞬間、ルークの目がデザイナーとしての目に変わった。

 

「こうしちゃいられないわ!!早速始めましょう!!すぐに始めましょう!!もう・・・もうね・・・昨日から服が作りたくて作りたくて作りたくて・・・体の奥底が・・・むらむらしてしょうがないのよぉ!!!」

 

『ひぃっ!!?』

 

そして、途端にルークが興奮状態になり始め、その光景を見たカズマたち、オネェコンビを知っている双子もすごい寒気を感じた。そして・・・寒気を感じた瞬間、双子はすぐさま逃げ出した。

 

「あっ!逃げた!!」

 

「逃がさないわよぉ♡」

 

ポチッ

 

バシュッ!

 

「「わあああああ!!?」」

 

ルークが手元にあったボタンを押した瞬間、出口の真上に縄が出現し、双子はあっさりと捕まってしまった。

 

「さあさあ、時間は有限♡ちゃちゃっと採寸しちゃいましょ。あなたたちってどれだけ大きくなったのかしら?服の作り甲斐があるわぁ~♡」

 

「ねぇちょっと!!本当にサイズ図るだけで済むのよね!!変なとこ触ったら、ぶっ殺すわよ!!おい!!聞いてんの!!?」

 

「ちょ、ちょっと、みんな助けて!!このままじゃ私、おかしくなっちゃう!!せめて私だけでも助けて!!」

 

「ダメよ~、あなたたちってスリーサイズは違うもの♡服を完璧にするためには・・・そこも・・・調べて、あ・げ・る♡」

 

「「いやあああああああああ!!!!」」

 

双子は縄から脱出しようとするが、それも虚しく、ルークによって奥の部屋に連れていかれてしまうのだった。この場に残ったのは、イッテツとカズマたちのみとなった。

 

「い・・・行っちゃったわね・・・」

 

「うふふ、ルークってば、本当、しょうがないわねぇ」

 

「なんか・・・濃すぎる人ですね、あの人・・・」

 

「濃いなんてレベルじゃねぇと思うがな・・・」

 

「・・・いいなぁ・・・」

 

「今いいなぁって言ったか?」

 

「言ってない」

 

取り残されたカズマたちはただ唖然としつつ、標的が自分たちに向けられなくて内心ほっとしている。ダクネスだけは心の本音は違うようだが、それにはカズマはジト目でそんな彼女を見つめた。

 

「「あーーーーれーーーーーーーーー!!!!」」

 

『!!?』

 

「ふふふ、ルークったら、張り切っちゃって・・・本当、漢臭いわぁ♡」

 

(一体中で何が起こってやがんだぁ!!?)

 

部屋の奥から双子の悲痛な叫び声が聞こえて、何が起こってるよりも先に、カズマたちは恐怖で震えるほかなかった。マホは中で何が起こっているのか、気になってしょうがなかったが、やはり恐れがあって聞くことができなかった。

 

 

ーうっふん♡ー

 

 

服の採寸の間、カズマたちはマホのマント購入に付き合い、ついでに服や防具を見て回って時間を潰して双子の戻りを待った。戻ってきた頃には双子は何やら生気を失った状態で戻ってきたのだ。何があったのか聞きたかったが、恐ろしくて聞けなかったそうな。そんな抜け殻状態になりかけの双子はふらふらの状態ながらも、カズマたちを飲食店に連れて行き、名物の灼熱スープを飲み、落ち着きを取り戻す。

 

「・・・ふぅ・・・やっと落ち着いたわ・・・」

 

「もうあんなのはこりごりだよ・・・」

 

「おお、正気に戻ったか・・・懺悔を言い始めた時はどうしようかと思ったぞ」

 

双子が生気を取り戻したことで一同は安堵する。

 

「迷惑をかけたわね。詫びと言っては何だけど、ここで好きなものを好きなだけ注文していいわよ。奢ってやるわ」

 

「本当⁉何よー、2人にしては気が利くじゃないー。すいませーん!!こっちにシュワシュワ1杯ちょうだーい!!」

 

「お前はちょっと遠慮しろよ」

 

アカメの口から奢りと聞いて、アクアは遠慮なしに自分の分を注文し始める。

 

「まぁ、せっかくだ。ここはお言葉に甘えてもいいじゃねぇか?」

 

「んー・・・そうだな。こいつの口から奢りなんて滅多にないしな」

 

「ところでどうしてマホまで来ているのですか?」

 

「あのままこいつら放っておいたら後味が悪すぎだろ」

 

マホはあまりにも死んだような雰囲気を出していた双子を放っておくことができずについてきたらしい。

 

「なら、私はここの名産品をいただこうか」

 

「オレもそれでいいか」

 

「では私も。ここの名物とは何ですか?」

 

「ここの名産品といえる郷土料理はやっぱり灼熱スープだね。程よいあったかさと、ペッパーとスパイスの味がスープとマッチしていて、これがおいしいんだよね」

 

「へぇ・・・」

 

「ただ・・・」

 

「そんなにおいしいの?ちょっと一口ちょうだい」

 

灼熱スープの説明をし終える前にアクアがアカメの灼熱スープを飲んだ。そして、その瞬間、アクアは顔が真っ赤になり・・・

 

からあああああああああああああああああ!!!????

 

口から実際に火を吐いて見せて、悶え始めて地面をじたばたする。

 

「灼熱の名の通り、すごい辛いから普通の人が食べたらあんな感じになるよ」

 

「ちなみに、私が注文したのはその灼熱スープの中で地獄の激辛よ。辛さに慣れてない奴が食べるとすぐ死ぬわよ」

 

ふぁふぁふふいふぁふぁふぃふぉ(はやくいいなさいよ)!!!!」

 

「何言ってるかわからないわよ」

 

「話を最後まで聞かないからだろ駄女神」

 

説明を最後まで聞かずにスープを飲んだアクアの口は腫れ上がっている。

 

「さ、さすがにあれを飲むのはちょっと・・・」

 

「オレも遠慮するわ・・・」

 

「ああ・・・私も胃は丈夫だが・・・私の求める痛みとは違うな・・・」

 

「おいしいのにな・・・」

 

アクアの惨状を見た後でめぐみんとダクネスは少しためらってしまい、灼熱スープを注文するのをやめた。ティアはもったいないといわんばかりの顔で灼熱スープのキャベツをぶっ刺し、それを口に運んだ。

 

「あれ?先輩?」

 

カズマたちが注文を悩み、双子の食事が進んでいると、誰かに声をかけられた。振り返ってみると、そこには3人組の美少女がいた。

 

「アルカ、イム、ツバサ」

 

「やあ、久しぶりだね、3人とも」

 

案の定双子の知り合いのようで双子は気軽に美少女コンビに挨拶をした。

 

「やっぱ先輩らやーん!久しぶりやなー!」

 

「お変わりなくて、なによりどすわぁ」

 

「先輩、おかえりなさい!」

 

美少女コンビは久しぶりに双子に会うことができてうれしそうな顔つきになっている。

 

「この3人は2人の知り合いか?」

 

「ええ。こいつらは訓練生時代の後輩たちよ」

 

「3人とも、こっちが今私たちのチームメイトだよ」

 

「オレは違うけどな」

 

「初めましてー!うち、イムいうねん!先輩らがお世話になったようで!」

 

「ようおこしやすー。うち、アルカ言います。以後よろしゅうに」

 

「は、初めまして。ボク、ツバサといいます。ようこそ、アヌビスへ」

 

双子の紹介で自己紹介を始める美少女コンビ。黒髪のお団子ヘアスタイルがアルカ、茶髪のツインテールがイム、茶髪のショートカットがツバサである。

 

「なんか変わった喋り方ですね」

 

「あんたらもそう思う?絶対変よね、こいつらの喋り方」

 

「せやろか?うちはそうでもないと思うんやけど」

 

「こういうのは慣れが大切なんやでぇ」

 

「そういうもの?」

 

めぐみんたちが気になっているのはイムとアルカの喋り方である。訓練時代一緒にいた双子でさえ、2人の喋り方には変だと思い込んでいる。

 

(なぁあれって、どう聞いても関西弁だよな?しかも片方は京都弁。あの子たちも転生者か?)

 

(う~ん・・・この世界に送った人間は何人もいるから覚えてないけど・・・少なくともあの2人はリストには載ってなかったわねぇ・・・)

 

(てことは父親か母親がそうだってことか?つーか・・・てめぇこの世界に何人送りやがったんだよこのクソ女神)

 

アルカとイムの喋り方が関西弁だとわかっている日本転生組はアクアの話を聞いて、父親か母親の影響なのであろうと想像がついた。

 

「あ、あの!あなたって・・・先輩の報告書にあったサトウカズマさんですよね!」

 

「はい、カズマですが、何か?」

 

ひそひそと話していると、ツバサがカズマに声をかけてきた。声をかけたツバサは何やらもじもじした様子だ。

 

「えと・・・あの・・・ボク・・・ボク・・・」

 

「どしたんや、ツバサ?」

 

「お腹でも崩しはりましたか?」

 

もじもじしたツバサは意を決してカズマにある衝撃発言をする。

 

「ボク!!先輩の報告書を読んでから、カズマさんの大ファンです!!!握手してください!!!」

 

「「「「はああ!!!???」」」」

 

「「ぶーーー!!!???」」

 

ツバサのカズマファン発言にアクアたちは驚愕し、双子も飲んでいたスープを噴出した。そしてファンと告げられたカズマは・・・

 

「・・・モテ期、入りました」

 

ものすごくまんざらでもない顔になっている。

 

「待ちなさいツバサ!あんた、本気で言ってる!!?こんな奴のファンになったってあんた正気!!?」

 

「そうだよ!!だいたい・・・こんなクズで変態でヘタレ小僧のカズマにどこにファンになる要素があるの!!?」

 

「そうよそうよ!!世間ではクズマやカスマなんてあだ名で呼ばれてる人よ!!?」

 

「だ、だいたい、あなたと私たちは初対面じゃないですか!!?それがどうしてカズマのファンになるのですか!!?」

 

「そうだ!大体お前は、これがどういう人間かわかっているのか!!?」

 

「嬢ちゃん・・・悪いことは言わないからこいつはやめとけ」

 

「おうお前ら好き放題言いやがって。後で覚えてろ」

 

当然ながら納得のいかない双子たちは好き放題言い放っている。

 

「まぁまぁまぁ、先輩ら、落ちつきぃや」

 

「それで、ツバサ、どうしてこの人にファンになったんや?」

 

取り乱している双子たちをイムが何とかなだめながらアルカがどうしてファンになったのかと理由を問う。

 

「えっと・・・カズマさんは・・・いろんなスキルを器用に使いこなしてみせて・・・とても・・・男らしくて・・・いけないことでも堂々と行動してて・・・ボクにはできないことをやって見せてるんです・・・。報告書で見ただけですが・・・そんなボクにはできないことをやり遂げるカズマさんを・・・すごく尊敬してるんです!!」

 

「おいお前・・・何嬢ちゃんに悪影響を与えてんだよ・・・嫌な部分に憧れちまってるじゃねぇか」

 

「いやあの・・・すいません・・・まさかそんな部分を憧れるなんて思いもよらないし、こいつらの報告書を読んでたなんて思わなくて・・・というか・・・そんな部分を憧れてもちっともうれしくないんですが・・・」

 

報告書というのはバーバラがカズマたちの目の前で読んだものでそれのアウトな部分を読んで尊敬してしまっているツバサを思い、マホはカズマの胸倉を掴み、殴りかかろうとしている。カズマ自身も若干アウトな部分を尊敬されて、申し訳なさそうにしている。

 

「はぁ・・・でも納得したよ。ツバサって誰よりも男らしさを求めてるからね」

 

「それが例え、クズの変態行為だったとしてもね。本当、こいつが変態にならないか心配だわ」

 

一応はファンになる要素を納得した双子は本気でツバサを心配している。が、アクアたちは未だに納得していない。

 

「ちょっと!!何2人で納得しちゃってるの!!?」

 

「そうですよ!!一大事ですよ一大事!!」

 

「だいたい、男らしさとは言うが、なぜ女性のこの子が・・・」

 

ダクネスの女性という単語を聞いて、双子、イム、アルカは首をかしげる。

 

「女性?あんた何言うてますの?」

 

「いややわぁ・・・おもんない冗談ですわ」

 

「いや冗談ではなくてだな・・・」

 

「そっか、みんなは知らないんだったね。じゃあしょうがないか」

 

ダクネスたちの反応を見て、双子はなるほどみたいな顔になった。そして・・・アカメが口を開く。

 

「あのね・・・こいつはね・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女じゃなくて、男なのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アカメの発言で、アクアたちは石のように固まった。カズマを殴ろうとしたマホも、そしてカズマ自身も。

 

「・・・え・・・今・・・なんと・・・?」

 

「私の耳には・・・その子が男って聞こえたんですけど・・・」

 

「そうだよ、ツバサは女の子じゃなくて、男の娘だよ」

 

きっと聞き間違いだと思って聞き直しためぐみんたちだが、現実は一切変わらなかった。

 

「し、信じられるか!いつものお前たちの質の悪い冗談に決まって・・・」

 

「私は嘘つきでも、こんなアホくさいことで嘘なんかつかないわよ。証拠を見せましょうか?証拠を」

 

「け、結構だ!!どうせろくでもないことになるに決まってる!!」

 

アカメはツバサが男だという証拠を見せようとしたが、ダクネスが顔を赤くして拒否した。

 

「あ・・・あのぅ・・・ボクは・・・男です」

 

「体つきを見ればわかるやんな」

 

「いや、うちは最初はわからなかったどすが?」

 

本人自身も恥ずかしそうにそう言っていることと、イムとアルカの発言で、嘘ではなく本当に男であるというのは事実のようだ。

 

「・・・負けた!!!」

 

「ええ・・・女としていろいろ負けました・・・」

 

「いるのだな・・・女らしい男というのは・・・。女としては複雑だ・・・」

 

ツバサは男だとは思えないほどの女性らしい顔立ちゆえに、女であるめぐみんたちは、女として敗北感を味合わずにはいられなかった。

 

「・・・はっ!待てよ・・・こいつが男ってことは・・・カズマは・・・男のファンを・・・」

 

「・・・・・・」ぷるぷるぷる・・・

 

女だと思っていた相手が男だとわかったカズマは本当にぷるぷると震えている。しかも、涙も浮かべている。それもそうだ。この世界に、この街にやってきてエリスと同等の第2のヒロイン、本当の癒しになるだろうと思っていたのに、ふたを開けてみれば、実は男であって、ヒロインの可能性は一気になくなってしまったのだ。顔立ちがかわいいため、ショックもかなり大きいだろう。

 

「・・・その・・・悪かったな、変な言いがかりつけちまって。で、でもよかったじゃねぇか!ファンになってくれる奴はちゃんといたんだぞ?それはあいつの眼差しを見ればわかるだろ?」

 

マホは謝罪しながらカズマにフォローを入れるが、男だと知った今となってはもうすべて手遅れ。ツバサに尊敬の眼差しを送られても、心には全く響かなかった。

 

「・・・ああああああああああ!!!!!ちくしょうめええええええええええええええええええ!!!!!!!

 

カズマはあまりの無情な現実に血涙を流したのであった。




カズマ「はぁ・・・まさかツバサが男だったなんて・・・モテ期がやっと来たと思ったのに・・・」

ティア「いや、カズマがモテるのはありえないと思うけど」

アカメ「寝言は寝て言え、【ピーーッ】の同性愛者」

カズマ「やめろぉ!!!俺はノーマルなんだぁ!!!普通に女の子と恋がしたいのぉ!!!」

次回、このよからぬ噂に解明を!
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