このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

33 / 38
遅くなってしまい申し訳ございません。もう1つ謝罪、本当は残り2話くらいでオリジナル章は終わりの予定だったのですが、あまりにも長すぎたので、もう1話追加します。サブタイトルも次話に引き延ばすことにしました。申し訳ございません。


このよからぬ噂に解明を!

アヌビスの観光を終えた翌日、記念祭の準備をしている広間では住民たちが本格的に舞台ステージの製作に取り掛かっていた。その中で記念祭の手伝いを準備すると約束したカズマたちも手伝いとして、土木作業を行っていた。

 

「お、やるねぇ、兄ちゃん!経験ありか?」

 

「はい!!バイトで!!経験!!してますから!!」

 

作業員の問いをカズマはつるはしを振るいながら答えている。アクアたちも自分たちに与えられた役割を全うしている。双子は少し離れた場所で記念祭で踊る舞の振り付けの練習をしている。

 

「ふぅ・・・まさかこんな重労働だったなんて思いもよりませんでした・・・」

 

「そうだな。それだけ記念祭に力を入れているのかもしれん。ふふ、やりがいがあるな」

 

めぐみんは重たいもの、そして熱い環境の中でもうバテ気味だが、ダクネスはそれとはうって逆にかなり生き生きとしている。

 

「すげぇな嬢ちゃん!塗る作業がうまいな!」

 

「ああ。俺たちも見習わなければいかんな、こりゃ」

 

(ふふん、やっぱり私って有能なのよね~)

 

(あいつ、アークプリーストよりこっちの仕事の方が向いてないか?)

 

アクアの塗り作業を見て、作業員は感心している。その感心の声にアクアは鼻を長くして優越感に浸っており、カズマは心の中で細かい作業が向いていると考える。

 

「おい!!手が止まってるぞ!!もっと腰を入れろぉ!!」

 

「はいすいません!!」

 

作業の手が進んでないカズマたちに作業員が喝を飛ばした。それを受けカズマたちは作業に戻る。そうして働くこと2時間、ようやく昼食タイムだ。カズマたちは休憩所に集まって受け取った賄い弁当を食べる。

 

「あ~~~・・・やっと休憩~・・・」

 

「もう・・・くたくたです・・・」

 

「この炎天下だ。普通の重労働の倍の体力は持っていかれるからな。無理もない。・・・私は、まだまだいけるが」

 

アクセルで重労働していた時よりも、砂漠の熱さのせいで普段よりも体力を持っていかれているカズマたちは疲れが出ている。

 

「・・・なぁ・・・ていうかさ、俺たちって・・・あいつらからまだ前報酬もらってなくないか?」

 

カズマの何気ないこの言葉にダクネスとめぐみんはあまりピンとこなかったみたいだが、アクアは目を見開かせて気づいた。

 

「はっ!!そうよ、そうじゃない!!私たち、昨日2人からプールに連れてってもらってないじゃない!!」

 

「・・・ああ、そういえば、そんな話をしていたな」

 

「あいつら・・・肝心な約束忘れてんじゃないだろうな・・・?」

 

「ありえそうですね・・・一昨日あんなに飲んでましたから」

 

前報酬であるプールに招待するという内容を思い出したアクアたちは双子は報酬の件を忘れてるのではと考えている。

 

「ちょっと聞いてみるわ!!双子ー!!双子ー!!ちょっとこっちに来なさいよ!!」

 

アクアは直接聞こうと双子を呼んだ。呼ばれた双子はむっとした表情で近づいてきた。振り付けの運動で汗をかいている状態だ。

 

「何よ?こっちはまだ振り付けの練習だったんだけど?」

 

「何、じゃないわよ!!報酬!!報酬の件はどうなってるのよ!!私たち、前報酬をもらわずに働いてるんですけど!!?」

 

「ああ、すっかり忘れてたよ」

 

「やっぱりな」

 

「なぁんでそんな大事なこと忘れんのよぉ!!!」

 

どうやら本当に忘れていたようでカズマは予想通りという顔になる。

 

「いやでもさぁ・・・昨日アクアたちプールがどうとかって言ってこなかったじゃん。それで今日懸命に働いてるわけでしょ?だったらもう後払いでもよくない?」

 

「よくないわよ!!なんで私が無償で働かなくちゃいけないのよぉ!!」

 

「無償とは言ってないのだが・・・」

 

あまりに駄々をこねるアクアにアカメはすごいうっとうしそうな顔になっている。

 

「わかったわよ。ちょうど今お頭があそこにいるから掛け合ってやるわよ・・・ちっ」

 

「本当になんなんだろうね・・・ちっ」

 

「ちょっとぉ!!なんで舌打ちするのよぉ!!!」

 

あまりのうっとうしさに双子はアクアに舌打ちしながら町長と話をしているネクサスに近づく。双子は報酬の件をネクサスに話すと、彼は双子を舞の練習に戻らせ、深いため息をついてカズマたちに近づく。

 

「今さっきバカ共から話を聞いた。何でも報酬が欲しいとかどうとか」

 

「は、はい・・・」

 

ネクサスに苦手意識を持っているカズマは思わず縮こまっている。

 

「・・・カズマさん」

 

「は、はい・・・」

 

「あんたはあいつらと一緒に魔王軍幹部を3人も倒し、デストロイヤーも沈めてみせたっていう偉業を果たした。仲間と手を組んでも簡単に成し遂げられることじゃない。依頼者としての立場ならあんたのその願いをぜひとも叶えてやりたいところだ」

 

「じゃあ・・・」

 

「だが・・・」

 

ネクサスの口ぶりにアクアは報酬は期待できると思った矢先、ネクサスが口をはさんだ。

 

「個人としては眉を顰めざるをえない。この手伝いはあいつらが勝手に言ったことで、俺は依頼を出してないし、あんたのことも信用してない。信用もしてない相手に前報酬を渡すと思うか?」

 

「・・・デスヨネー・・・」

 

ネクサスが言うには、自分は依頼は出してない、なおかつ信用もしてない相手に前報酬を渡すわけにはいかないということだ。

 

「まぁ、安心しろ。俺もそこまで鬼じゃねぇ。一応あんたは優秀だからな。今回の件とは別に俺からの仕事を成功できるなら、特別に報酬を渡してやってもいい」

 

「本当⁉やるやる!引き受けるわ!」

 

「おいちょっと待て!まだ仕事の内容も聞いてないだろ!」

 

ネクサスから別の仕事を受ければ報酬を支払うと聞いて、アクアはプールの欲求が強く仕事を引き受けた。カズマは当然ながらそんなアクアにストップをかける。

 

「大丈夫よカズマ。この私がついてるんだもの。ちょちょいっと解決できるわよ!」

 

「どの口が言ってんだよ・・・」

 

大口をたたくアクアに対し、これまでのアクアの失態を覚えているカズマは安心できなかった。

 

「嫌ならやらなくていい。その場合、報酬はないと考えてくれ」

 

「えぇ~・・・マジですか・・・」

 

本来プールという報酬のためにやってきたカズマからすればネクサスの発言はとんでもなく横暴である。だが、一昨日のネクサスの敵意、殺意に当てられてからというもの、下手に発言したら殺されると考えている。

 

「ならせめて仕事内容だけでも教えてくださいよ・・・」

 

「仕事内容はシンプル、噂の真相の解明だ」

 

「「「「噂?」」」」

 

ネクサスから与えられた噂の解明という内容にカズマたちは首をかしげる。

 

「ああ。その噂っていうのはな・・・」

 

「最近夜になるとドラゴンが飛び回るって噂になってるぜ」

 

噂の詳細を答えたのは第3者、マホであった。

 

「マホ?」

 

「知合いか。なら話は早い。今回はこの手の専門家も協力してもらっている」

 

どうやらネクサスはカズマ以外に、モンスターの専門家のマホにも協力を要請していたらしい。

 

「お前らもこの仕事を受けるのか?」

 

「いや話を聞いてただけで・・・」

 

「それよりも今ドラゴンと言ったな!!!」

 

「その話について詳しくお願いします!!!」

 

ドラゴン。RPGにおいて王道の存在。それを聞いたダクネスとめぐみんはかなり興奮した様子で詳細を求めている。

 

「どうしたお前ら急に?」

 

「だってカズマ!ドラゴンですよドラゴン!!強靭な爪に鋭い牙を持つあのドラゴン!!我が爆裂魔法で消し炭にし、ドラゴンスレイヤーの称号を我が手に!!」

 

「灼熱の砂漠にすむドラゴンか・・・。一度ドラゴンのブレスに焼かれてみたかったのだ。ドラゴンの猛攻に対抗するも、無念に敗れ・・・その灼熱の炎で・・・いい!!!」

 

「おうお前ら落ち着け!!依頼人の前だぞ!!」

 

「・・・・・・」

 

「相変わらずぶっ飛んだ奴らだ・・・」

 

ドラゴンに対してそれぞれの思惑を持っているダクネスとめぐみんにストップをかけるカズマ。この光景を目の当たりにしたネクサスは微妙そうな顔をし、マホは呆れた表情になっている。

 

「まぁ、オレも詳しいことは知らねぇよ。何せ最近流れた噂だからな。そうだろ?」

 

「あ、ああ。この噂が流れ始めたのは記念祭の準備がちょうど始まった頃合いだ。この砂漠ではドラゴンは現れない。だから最初はただのいたずらだと思っていた。中には目撃者がいるらしいが、見てない奴が多いし、目撃者も返答が少し曖昧でな。うちのもんにも調べさせてるが、未だ進展がない。そういった経緯が積み重なって、早くもこんな噂が流れるようになったんだ」

 

「この噂が今街で悪影響を及ぼしてるらしいんだよな」

 

「10年に1度開かれる記念祭。本来ならもっと賑わいを見せるはずだったんだ。それがこんな噂のせいで皆怖がって来客数も一気に減り、街の住民たちも怯えている奴もいる。街の住民の代表の1人としては、もはや無視できない事態だ。だからこそ改めて聞く。この重要な仕事、引き受ける気はあるか?」

 

(うわぁ・・・やだなぁ・・・引き受けたくねぇなぁ・・・)

 

噂の解明の仕事が思っていたよりも重い内容だった。どこまでも他力本願であるカズマは正直に言って受けたくない思いでいっぱいだった。

 

「何度も言うが、この仕事は引き受けなくてもいい。他の人間に迷惑はかけ・・・」

 

「迷惑だなんてとんでもない!!受けましょうカズマ!!受けるべきです!!」

 

「現に街の人は怯えているんだ!!こういう時こそ冒険者の出番だ!!」

 

「お前らは欲を隠せぇ!!」

 

ネクサスが補足を入れようとした時、めぐみんとダクネスが間に入った。ドラゴンという欲望に忠実な2人にカズマは声を荒げ、ネクサスは任せるのが不安になっている。

 

「ねぇ、カズマカズマ。なんか思ってたよりもやばそうなんですけど。もう自腹でチケット買っちゃわない?」

 

「お前は逆にやる気出せよ」

 

逆にアクアは急に怖くなって自腹でと言い出す始末である。

 

「決めるのはあんただ。どうする?」

 

「・・・俺は・・・」

 

「受けるわ」

 

「受けま・・・ておい!!?」

 

カズマは仕事を思いっきり断ってやろうと思っていたところに双子が間に入ってきた。

 

「お前ら・・・練習に戻れって言っただろ」

 

「てかお前ら!今の話、聞いてたのか!!?」

 

「その噂さえなくせば、10年前の記念祭になるんだよね?」

 

どうやら双子は先ほどまでの話をバッチリ聞いていたようで、そのうえで仕事を受けようとしてる。

 

「・・・どの程度まで戻るかはわからんが・・・まぁ、勢いは取り戻すだろうな」

 

「なら受けるよ。やってやろうじゃん」

 

「おい待て待て待て!!」

 

カズマをよそに勝手に仕事を受けようとする双子にカズマはストップをかける。

 

「お前ら何考えてんだ?こんな重い仕事を勝手に・・・」

 

「カズマにとってはただの仕事でも、私たちはそうじゃないんだよ。私たちの生まれ故郷の危機になるかもしれないんだよ?それを放っておけって?できるわけないでしょ」

 

「別にあんたは受けなくてもいいわよ。あんたが受けないんだったら、私たちがやるから」

 

カズマにとってはただの仕事でも、双子はそうでもない。確証はないが、故郷の危機が迫っているのかもしれない。可能性は小さくても、それを無視するなんてことは、アヌビス育ちの双子にはできそうもないのだ。

 

「私は付き合いますよ」

 

「ああ、私もだ」

 

「・・・はぁ・・・」

 

欲を優先しているとはいえ、めぐみんとダクネスは双子に付き合うと言い出して、カズマは本当にしょうがないといわんばかりの顔をしている。

 

「ネクサスさん、その仕事俺たちで受けますよ」

 

「別に受けなくたっていいんだぞ。本当は嫌なんだろ?」

 

「ええ、嫌ですね。でも・・・こいつらを放っておいたら、もっと状況が悪化すると思うんで」

 

「・・・ありえなくもないか・・・」

 

情が移ったというのもあるが、仕事を受けようとした大体の理由は噂より厄介な事態にならないようにするためである。カズマの発言に双子の性格を考えて、ネクサスは苦い顔になる。

 

「・・・はぁ・・・まぁいい。この件に関しては捜査隊に話を通しておく。詳しくはそいつに聞いてくれ。・・・カズマさん・・・あんたの実力、見させてもらうぞ」

 

「えぇ・・・」

 

「あんたも大変ね、お頭に目をつけられて」

 

「まぁ、頑張れ」

 

「半分はお前らのせいだけどな・・・はぁ・・・」

 

重い役目を引き受け、ネクサスに目をつけられてしまったことにカズマはまたため息をこぼす。

 

「お前らはいつまでそこにいるつもりだ。練習の途中だっただろ。ほら、とっとと戻れ。コーチが怒るだろ」

 

「ああ、わかってるから押さないでって」

 

「はいはい、戻りゃいいんでしょ、戻りゃ」

 

双子はネクサスに急かされてせっせと練習場に戻っていく。それを見届けたネクサスはほんの少しため息をこぼし、カズマを一目見た後、自分の業務に戻っていった。これによって、カズマの緊張は解れた。

 

「・・・はぁ~・・・」

 

「お前、ずいぶんあの人に警戒されてんな・・・」

 

「俺あの人苦手すぎ・・・」

 

気が休まらないカズマにマホは深くながら同情している。

 

「疑問に思うのだが・・・なぜあの人はカズマにあそこまで警戒するのだ?仮にカズマが原因があったにしても、いささかやりすぎではないかと思う」

 

「それを言えば初めて会う時もそうですよ。まるで、双子をカズマから遠ざけているように見えます」

 

「確かに否定できないもんはあるが、それでも終始あんな露骨な態度をとられる意味がわからん!俺が何をしたって言うんだよ!」

 

「ネクサス様があのような態度をとるのは仕方のないことです」

 

ネクサスのカズマに対する態度に疑問を浮かべる3人にそう答えたのは、カテジナだった。

 

「クラリッサ様・・・」

 

「ネクサス様は、他の誰よりも、あの2人を大事に思っているのですよ。あの2人をここまで育てあげたのは、ネクサス様なのですから」

 

「「「「???」」」」

 

ネクサスが双子を育てたという意味を少し理解できてない4人は首をかしげる。

 

「育てたって・・・どういう意味でしょうか?」

 

「言葉通りの意味です。あの2人が赤ん坊の時からネクサス様はずっと面倒を見ていらっしゃいました」

 

「あー、なるほど、子育てって意味ですか。それなら納得ってえええええええ!!!??」

 

育てたという意味が子育てだということに気づいたカズマは驚愕の声を上げる。驚いているのは3人も同じだった。

 

「ど、どういうことですかそれ⁉」

 

「私が加入した時にはすでに双子はいましたので詳しい事情は私も知りません。気になるのであれば団の創設メンバーに聞いてください。私よりも詳しいはずなので」

 

「おーい!カテジナさーん!」

 

「・・・では、私は業務が残っているので、これにて」

 

「あ、クラリッサ様・・・行ってしまった・・・」

 

カテジナは街の住民に呼ばれ、カズマたちにお辞儀をしてその場を去っていった。

 

「まさかあいつらが団長さんに育てられていたなんてな・・・驚いたぜ」

 

「私たちもそうだ。こんな話、今まで一度も聞いたことがない」

 

「・・・何か深い事情でもあるのでしょうか・・・例えば、両親とか・・・」

 

今まで表に一度もでなかった双子の家庭事情に驚いた3人は双子の過去が気になりだす。

 

「・・・やめだやめだこの話。とにかく、あの人が俺を目の敵にしてるのは、要するに親バカだってことだろ?もうそれでいいだろ」

 

「カズマは気にならないのですか?」

 

「そりゃ気になるっちゃ気になるけど、もしあいつらに聞かれたくない内容だったらどうする?気まずくなる一方だぞ」

 

「あぅ・・・」

 

「・・・そうだな。さすがにこれ以上は本人たちの問題だ」

 

「だな。今はとりあえず、仕事の方に集中しようぜ」

 

重い話の可能性もあるのかカズマはこの話は本人たちが話すまでやめることにする。カズマの言葉にダクネスたちは同意する。・・・本音を言うと、面倒ごとには関わらないためなのだが。だがしかし、カズマたちは失念している。その会話を、耳のいいティアが聞き取ってしまっていることを。

 

「何つったってんのよ。さっさと戻るわよ」

 

「う、うん・・・」

 

ぶつぶつ文句を言って何も聞いていなかったアカメはティアの手を取り、練習場に戻っていく。ティアはさっきの話が気になって少し思案顔になっている。

 

「・・・そういやアクアは?」

 

「クソ女神ならカテジナさんが話す前におっさん共と飲みに行ったぞ」

 

「あいつちょっと眼を離したすきに・・・」

 

どこまでも自由奔放なアクアにカズマは仕事が成功できるかどうか不安になってくるのであった。

 

 

ーこのすばー

 

 

『捜索クエスト!!

ドラゴン出現の噂を解明せよ!!』

 

本日の昼の作業を終え、与えられた休みの時間でしっかりと英気を養い、夜の噂調査に挑むカズマたち。夜の砂漠には盗賊団の捜索隊も集まっている。しかし・・・

 

びゅうぅぅぅ・・・

 

「うううぅぅ・・・さ、寒い~・・・昼はあんなに暑かったのにぃ・・・」

 

「そりゃ砂漠だからね」

 

「夜は寒風の風が吹くに決まってるでしょうが」

 

砂漠の気温は昼の砂漠との熱い風とは違って、夜の砂漠は雪山ほどではないにしろ、寒い風が吹いている。多少緩和するだろうとなめてかかったアクアは案の定、寒さで震えている。

 

「では皆さん、詳細は伝えたとおりです。情報は少ないですが、噂の解明、頑張っていきましょう」

 

「お任せくださいフォステスさん!!必ずやその竜を根絶やしにしてみせます!!行くぜお前ら!!情報集めだ!!」

 

捜索隊に指示を出した丁寧な口調をし、口元を服で隠し情報部の男、フォステスの期待に応えようとする髪が角のように尖った熱血男、捜索隊のガワラは捜索隊を連れてドラゴンの調査に向かった。

 

「あなたたちも、ぜひとも頑張ってください。もし竜を逃してしまえば・・・この砂漠地帯もなくなることでしょう・・・。それを回避するために、何卒宜しくお願い致します」

 

「なく・・・!やっぱ受けなきゃよかった・・・」

 

フォステスはカズマたちに一礼すると、持って来ていた書類に目を通していく。そんなフォステスにアカメは渋い顔になっている。

 

「私、あいつ苦手だわ」

 

「あん?何でだよ?」

 

「あいつ、口元隠してるでしょ。唇の動きが見えないから、嘘をついてんのかわかんないのよ」

 

「お姉ちゃん、いつも唇を見て嘘かどうかってわかるからね。天敵みたいなものだよ」

 

「私からすればそれで嘘を見抜くアカメさんが怖いんですけど・・・」

 

唇を見て嘘を見抜くアカメの特技にアクアは若干ながらの恐怖を感じている。

 

「とにかく、私たちも行動に移すとしよう」

 

「ちょっと待ってくれ。その前にちっと準備しないといけねぇ」

 

「準備?」

 

行動を開始しようとした時、マホに止められる。マホは持ってきた鞄からあるものを取り出す。

 

「翻訳マシーン!!」てっててー♪

 

マホが取り出したのは、モニターが付いた何かのリモコンだった。

 

「なんだ?その翻訳マシンとは?」

 

「翻訳マシーンだっつーの!これはオレが開発した道具で、これさえあれば言葉を喋れねぇモンスターが何を喋っているかわかる代物だ」

 

「またそんなことに金を使ってんのかお前・・・」

 

「でも、何故モンスターの言葉がわかる装置を?」

 

「人間の記憶や直観っつーのは今回のように割と曖昧な時があるんだ。けど、モンスターの直観は、例えば走り鷹鳶が固いものを判別できるくらいにたけぇ。それさえあれば何か隠れてたってバッチリ目に映るし、一度見たものはそう簡単にゃ忘れねぇよ。だからオレたちはこいつを使って、モンスターから情報を聞き出そうって寸法よ」

 

モンスターから情報を聞き出そうというぶっ飛んだ方法を聞いて、めぐみんたちは少し不安になる。

 

「そ、そんなことできるのですか?そんな方法聞いたこともないのですが・・・」

 

「オレはモンスターショップの店長だぜ?それくらい朝飯前だ。ただなぁ・・・」

 

自信満々にそう言った後、若干困ったような顔になる。

 

「まだ実験できてねぇんでうまく機能するかわかんねぇ。だからな、ちょっとテストさせてほしいんだよ」

 

「テスト?」

 

「ほら、お前ら走り鷹鳶連れてきてるだろ?こいつを使おうと思う」

 

「ピィヒョロ?」

 

「アレクサンダーって呼びなさいよ」

 

「ていうか、アレクサンダーに変なことしないでよ。ぶっ飛ばすよ?」

 

翻訳マシーンのテストにアレクサンダーを指名した瞬間、双子は軽めのジョブを放つしぐさをする。そんな双子を無視してマホはアレクサンダーに近づく。

 

「安心しろって。危害はねぇからよ。使い方はボタンを押したら、こいつが鳴き声を放つのを待つだけだ。声を拾えたら、このモニターに思ってることが表示されるんだ。試しに・・・おい、あのクソ女神について思ってることを教えてくれ」

 

「ねぇ、この高貴な女神様に向かって指ささないでくれる?」

 

「ピィーヒョロロ」

 

アレクサンダーは翻訳マシーンに向かって鳴いた。鳴き声はマシーンに見事にキャッチし、アレクサンダーの思ってることが出てきた。

 

「お、出たな」

 

「マジか。どれどれ・・・」

 

「ねぇねぇ、なんて言ってるの?やっぱりこんなに美しく気高い女神様は見たことない、とか?アレクサンダーもわかってるじゃなーい」

 

カズマたちは翻訳マシーンのモニターに注目をする。そこに映し出されたアレクサンダーの思いはこう書いてあった。

 

『こんなにアホで間抜けでどうしようもない自称女神の泣き虫ペテン師は見たことない』

 

「うん、事実だね」

 

「上等よこのダチョウもどき!!!そんなにあの世に行きたいのならこの・・・」

 

「動物虐待をするつもりかしらこのペテン師」

 

「ぎゃあああああ!!!痛い痛い痛い!!!」

 

アレクサンダーの本音にアクアはゴッドブローを放とうとしたが、アカメがアクアの頭に本気に近いぐりぐりを放った。

 

「これマジでこいつの本音?」

 

「この悪口だけじゃわかんねぇなぁ・・・じゃあ、ご主人様についてはどうだ?」

 

「ピィヒョロ」

 

アレクサンダーの鳴き声にまたマシーンは反応した。次に映し出されたのは双子にたいして・・・

 

『逆らっちゃいけない怖い人たち』

 

「・・・逆らっちゃいけないってさ、怖い人」

 

「あれ?怖い人はお姉ちゃんのことじゃないのかなー?」

 

「あ?」

 

「は?」

 

「どっちもどっちだろ・・・」

 

このモニターの文字に双子はお互いに突っかかりあい、睨みあいに発展する。

 

「あ、ついでもお前らのことに対しても反応があるぞ」

 

「「「え?」」」

 

カズマたちに対して思ってることも出ていたようで、3人はそこに注目する。浮き出た文字には・・・

 

『ブサイクな名のイカれた爆裂狂の変態。メスの交尾道具の変態。そして、バカでヘタレな臆病者の変態クズマ』

 

「こう・・・⁉へん・・・⁉ああ!!」

 

「おい、それは私のことを言っているのですか?よろしい!そんなに見たいなら今すぐにでもそのイカレっぷりをみせてあげ・・・」

 

「おい!!こんなとこで撃つな!!それよりお前ふざけんな!!?俺のことそんな風に見てやがったのか!!今すぐにでもフライドチキンにしてやろうか!!?」

 

本音という名の悪口にダクネスは悶えているが、めぐみんとカズマは怒りを示している。当のアレクサンダーはあくびをしている。

 

「バカやってんなよな。クズマって出てる時点でもう成功も同然だ。ほらさっさと情報収集に行こうぜ。早くしねぇと寝れねぇだろ」

 

ちゃんとマシーンが機能してるとわかったマホは早く情報収集するように急かす。バカにされたカズマたちは怒りで少しプルプルとしている。

 

 

ー納得いかねぇ!!!ー

 

 

捜査隊とは別行動をとるカズマたちが情報収集のためにやってきた場所は走り鷹鳶の牧場であった。

 

「モンスターと戦うのは最終手段として・・・まずは、牧場にいる走り鷹鳶で情報収集だ」

 

「走り鷹鳶の牧場まであるんですか・・・」

 

「本当どうなってんだよ砂漠の住民の常識は・・・」

 

「あら、あれくらい私たちにとっては普通よ」

 

「みんな慣れとかないとこの先やってけないよ?」

 

「み、見られている・・・走り鷹鳶たちの、今にも突っ込みそうな熱い視線が・・・私に・・・くぅ///」

 

走り鷹鳶慣れが激しい砂漠の民にカズマはもちろん、めぐみんたちも常識を覆しているので未だに困惑している。ダクネスはアレクサンダーを含む走り鷹鳶全員に見られてアルカンレティアの道中を思い出し、興奮している。

 

「牧場主には許可は取れた。・・・なんか頭悪いなこいつ、みたいな顔をされたがな」

 

「でしょうね。内容自体が頭がおかしいものだし」

 

「お前にだけは言われたくねぇよクソ女神」

 

内容が内容なので仕方ないが、牧場主にバカにされたような顔をされたマホは納得いかなさそうな顔をしているが、さっそく翻訳マシーンを取り出す。

 

「よし、じゃあ、お前ら。この辺りで何か見たことねぇ魔物って見たことねぇか?どんな奴だっていい。知ってることがあったら教えてくれ」

 

『ピィーヒョロロー!!』

 

マホの問いかけに走り鷹鳶は一斉に鳴き始めた。すると翻訳マシーンのモニターに走り鷹鳶の思っていることが丁寧に1匹ずつ表示されていく。

 

「おー、さすがオレ。ちゃんと表示されてるぜ。どれどれ・・・」

 

マホは表示されている文字を1つずつ読んでいく。表示されている文字は・・・

 

『あれを使ってメスを手に入れたい。

 あれを使ってメスを手に入れたい。

 あれを使ってメスを手に入れたい。

 メスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメスメス

メ・ス・よ・こ・せ

 

「全員メスのことしか考えてねぇじゃねぇか!!!焼き鳥にするぞてめぇら!!!」

 

「怖い!!後半怪奇文章になってるんだけど!!」

 

「あわわわわわ・・・」ガクブル・・・

 

「あれとは私のことか⁉私のことなのだな!!?いいぞ!!思いっきりぶつかって来い!!」

 

「ダクネス!!あの数はさすがに死ぬよ!!」

 

全員がメスのことしか考えておらず、ろくな情報が集まらなかった。ダクネスは走り鷹鳶のチキンレースの障害物としてノリノリだが、さすがにティアに止められる。

 

「それならメスに聞いたら?多少はマシかもよ?もっとも、できれば、の話だけど」

 

「・・・はっ!そうじゃねぇか!何もオスにこだわる必要はねぇ!設定変更だ!オスの声は一旦受付拒否にして・・・」

 

「うまくいくとは思えないんですけど?」

 

「てめぇは黙ってろクソ女神」

 

「何よ!親切心で言ってあげてるのに!」

 

アカメの言葉にそれだと言わんばかりに翻訳マシーンの設定を変更し、メスの走り鷹鳶に狙いを変える。

 

「いらんお世話だ!さあメス、なんか見たことねぇ魔物は見てねぇか?」

 

『ピィーヒョロロ』

 

メスの走り鷹鳶が鳴き、翻訳マシーンのモニターが文字が一斉に出る。で、出てきた文字は・・・

 

『はぁ、私の欲求を満たすオスはいないかしら?』

 

『はぁ、オスが欲しい』

 

『度胸のあるオスってこの世にいるのかしら?』

 

オスのものと全く同じだった。

 

「こ・い・つ・ら・も・か(怒)」

 

「やっぱりそうなるんだ・・・」

 

「所詮オスもメスも同じよ」

 

思考がオスと同じでマホはストレスが溜まり、双子はやれやれといった様子で呆れている。

 

「なぁ、もう普通に情報収集しようぜ?どう考えたって無理あるだろ」

 

「諦めるかよ。諦めてたまっかよ・・・クソが・・・」

 

「いやそんなムキにならなくても・・・」

 

「変に頑固ですね・・・」

 

「ある意味アクアと似ているな・・・」

 

「そんなこと言われても嬉しくないんですけど」

 

断固として自分の意志を曲げようとしないマホにカズマは困り果てる。

 

「あ~~・・・どれも同じだ・・・他にないのか・・・」

 

「もう無理だって。こいつらじゃ話にならな・・・あれ?」

 

モニターを確認していると、カズマは一部だけ違うものを発見する。

 

「なんかこれだけ違うのが出てるぞ?」

 

「え⁉マジか!!うぉっしゃああ!!さっそく見てみるぞ!」

 

違う文字が出てきたことにマホは思わず歓喜する。マホはさっそく違う文字を確認する。カズマたちもそれを確認する。

 

『直接は見てないけど、ここにはいない魔物を見たって子なら知ってる』

 

「「「「「「おお!」」」」」」

 

「よし!な?言っただろ?こういうことくらい朝飯前だって」

 

「さっきまで手こずってた奴の言うセリフじゃないわね」

 

やっと有益な情報を手に入れ、得意げになるマホにアカメは冷たいことを言う。

 

「いいんだよ別に。で、その見たって子は何なんだ?」

 

「ピィーヒョロ。(確か・・・オアシスにいた安楽少女だったわね)」

 

「「「「「「!!!」」」」」」

 

安楽少女という名前が出てきて、マホ以外は全員固まった。

 

「ああ、あの安楽少女か。あんな場所にいたのが珍しいからよーっく覚えてるぜ」

 

「・・・ねぇカズマ・・・その安楽少女って・・・」

 

そう、メスの走り鷹鳶が言っている安楽少女とは、キレたカズマが処分した個体なのだ。まさか有益な情報源が殺めた安楽少女だと知り、カズマは汗がだらだら流す。

 

「・・・は?もういない?そんなはずねぇだろ。あの安楽少女が熱い場所に移動するはずが・・・」

 

焦っている間にも走り鷹鳶に安楽少女はもういないと知らされたマホはありえないという顔になるが、途端にカズマたちに視線を向ける。

 

「・・・おい」

 

「お、オレタチハナニモシリマセンデス」

 

白を切るカズマだが、周りの視線はかなり冷たかった。

 

「そうか。なら、素の喋り方をしてたのにキレてぶっ殺したってのはオレの見間違いなんだな?」

 

「み、見てたのか!!?」

 

「・・・おいこら」

 

「・・・あ」

 

かまをかけてボロを出してしまったカズマをマホは鋭い視線で睨みつける。

 

 

ーてめぇじゃねぇかぁ!!!

すんませんでしたーーーー!!ー

 

 

その後翻訳マシーンを使って情報収集を一からやり直す。どこの牧場の走り鷹鳶はオスやメスのことばかりしか考えていないため、少しずつ、ほんの少しずつ手がかりをかき集めていった。そういった苦労もあって、ようやくドラゴンが岩山に潜んでいるという情報を掴んだ。だがその頃にはもうすでに時間は朝になりかけていた。当然、カズマたちに睡魔が襲ってきている。

 

「ね・・・眠い・・・」

 

「うっさいわね。何回目よそれ」

 

「だって~・・・」

 

「どっかの誰かが安楽少女を倒さなきゃ、もう少し楽だったんだがな・・・」

 

「すいません・・・マジですいません・・・」

 

皮肉を含んだマホの言葉に言い返せず、気まずそうにしているカズマ。

 

「もう少しの辛抱だよ。頑張って」

 

「・・・というか!カズマやティアが敵感知を使えばすぐじゃないの!」

 

「あんた情報部の話聞いてなかったでしょ。そのドラゴンはなぜか敵感知には反応しなかったって言ったじゃない」

 

「うん。現にこの洞窟の先にいると思われるドラゴンの反応もないし」

 

「考えられるとしたら、ここにはいないか、情報部の話が正しいのどっちかだけど・・・」

 

情報によればそのドラゴンは人目を避けて行動しており、目撃者が目撃したのは誰かがドラゴンを見て、ドラゴンが飛んで人間から逃げている姿らしい。そんな行動を繰り返し、最終的にはこの洞窟の奥深くで潜み、それ以降はここから動いていないようだ。

 

「それを調べるためにここにいんだろうがよ。とにかく、早く済ませてさっさと宿で寝ようぜ」

 

そう言ってマホはドラゴンを呼び出すための道具を取り出す。用意したのは肉焼き機と、骨付き肉であった。取り出した道具を見てカズマは怪訝な顔する。

 

「おい、なんだそれ」

 

「見ればわかんだろ。肉焼き機だよ」

 

「うん、それはわかってる。そうじゃなくてなんでここで肉を焼くのかって聞いてんの」

 

カズマの問いにマホは何言ってんだこいつみたいな顔になる。

 

「生物はみんな空腹には抗えないだろ?こいつの匂いで空腹を煽ってやりゃ、自ずと出てくんだろ」

 

特殊な方法の呼び出し方を想像していたカズマは、あまりに普通な呼び出し方にかなり渋い顔になっている。

 

「じゃ、始めるぞ」

 

「あ、私も手伝うよ」

 

マホはドラゴンを呼び出すために肉を焼いていき、料理上手なティアはマホの手助けに入る。

 

「いよいよドラゴンとお目にかかれるのだな・・・!ああ、いったいどんな奴なのだろうな・・・。強靭な爪や牙で引き裂かれるのを想像すると・・・よだれが・・・」

 

「ふふ、一度は切り刻んでみたかったのよね。鱗が剝がれ、生身を切りつけた時のドラゴンの苦痛の顔・・・今から楽しみだわ」

 

「竜のブレスなど、我が爆裂魔法で存在ごと消し去ってくれよう。そして、ドラゴンスレイヤーの称号を我が手に・・・!」

 

「お前ら本当にブレないなぁ・・・」

 

いつも我が道を突き進むメンバーにカズマは今更ながら呆れ果てる。で、アクアはというと・・・

 

「zzz・・・」

 

眠気に耐え切れず、この場で眠ってしまっている。

 

(こいつらどうしようもねぇ~・・・)

 

もはや制御することすらできないのではとカズマが思ったその時・・・

 

ドオオオン!!

 

「うおおお!!?」

 

「はっ!!?何⁉なになになに⁉」

 

洞窟から凄まじい轟音が響きわたり、何かが岩を突き破って洞窟から出てきた。

 

「お、おお・・・なんと見事な巨体だ・・・!」

 

洞窟の天井を突き破ったのは、巨大な尻尾を持ち、凶刃な爪を持ち、小さきものを覆いつくす翼、長い鬣に鋭い牙を兼ね備わった巨大な肉体に立派に生えた2つの角。その姿は・・・まさしく竜。

 

「「で、でかああああああ!!?」」

 

「噂は本当のことだったんだね!」

 

想像以上の巨体を持つドラゴンの出現にカズマとアクアは一気に恐怖に染まっていたが、他のメンバーは歓喜で震えていた。

 

「む、無理無理無理!!こんな奴、俺たちじゃ相手にならねぇよ!すぐ逃げるぞ!!」

 

「何を言っているのですか⁉せっかくの大物なんですよ!!?」

 

「街を脅かす存在を、見過ごすわけにはいかない!!」

 

「ああ、もうこいつらあ!!」

 

一歩も引く気がないダクネスたちにカズマは憤りを感じる。

 

「・・・ん?こいつ・・・もしかして・・・」

 

ドラゴンを見て、何か気づいたのかマホは焼いた肉を持って前に出る。

 

「ちょ、ちょっと危ないわよ!!早く逃げないと食べられちゃう!!」

 

「大丈夫だ!手を出すんじゃないぞ!」

 

アクアはマホに逃げるように言うが、彼女は臆することなくドラゴンに近づく。

 

「お前に危害を加える気はない!!こいつらがなんかしても全力で止めてやる!!安心して降りてきてくれ!!」

 

危害を加えないと聞いて双子は反発する。

 

「ちょ、ちょっと何言ってんのよ!あんた正気⁉」

 

「そうだよ!危ないよ!」

 

「大丈夫だ。こいつはオレたちを襲わない。そう確信してる」

 

「そんな保証なんてどこにも・・・」

 

言い合いを繰り広げている間にドラゴンはマホをじっと見る。そして・・・なんとドラゴンはマホの言うとおりにして、彼女の元まで下りてきた。

 

「ひぃ!降りてきたぁ!!」

 

ドラゴンが降りてきたことにより、カズマたちはダクネスの後ろに隠れ、ダクネスは皆を守ろうと剣を構える。当のドラゴンはマホに近づくと、マホの持っていた肉の匂いを嗅ぎ、大人しくちょこんと座った。

 

「あ・・・あれ・・・」

 

「襲って・・・こないな・・・」

 

「ど、どういうことだ?ドラゴンとは凶暴な生き物なのだろう?襲ってこないならば・・・期待外れではないか・・・」

 

「今期待外れって言ったか?」

 

襲ってこないドラゴンに対して、露骨にがっかりしているダクネスは置いといて、カズマたちはどういうことか疑問を抱く。

 

「その答えは、こいつの首輪の呪いを解けばすぐわかる」

 

「「「「呪い?」」」」

 

呪いと聞いて首をかしげるカズマたち。ドラゴンの首には確かに首輪らしきものがついていた。

 

「確かに・・・その首輪から呪いのくっさい匂いが漂ってるわね・・・あんなものをつけてるなんてエンガチョね!」

 

「こいつが襲ってこないのはオレが保証してやる。つーわけでクソ女神。最高級の酒をくれてやるからこいつの呪いを解け」

 

「え・・・そ、それは魅力的だけど・・・の、呪いを解いた瞬間、襲ってこないわよね・・・?」

 

呪いを解けと言われて、アクアは急に弱腰になる。

 

「やったら敬いでも何でもしてやるから頼むわ」

 

「!!今何でもって言ったわよね!やっていいのよね?言質取ったわよ?」

 

「わかったからさっさとやれしばくぞ」

 

「・・・んもう~!しょうがないわねぇ~!今言ったこと忘れないでよ?」

 

アクアを嫌うマホが何でもやると聞いて、上機嫌になったアクアはうきうきした様子で肉を食べているドラゴンに近づく。

 

「まさかアクアを嫌ってるあいつがあんなこと言うなんて・・・」

 

「よっぽどのことなのかしら」

 

「何かあるのかな?」

 

「そんな面倒な事せずとも、爆裂魔法で倒せば全て解決だと思うんですけど」

 

「頼むからやめてくれ」

 

マホが珍しいことを言うから何事かと思うようになったカズマたち。めぐみんは今もなおドラゴンを倒そうとうずうずしているが。その間にもアクアはドラゴンの首輪に触れる。

 

「・・・これは高度な呪いね。普通じゃ解くこともできないわ」

 

「できねぇのか?」

 

「ふふん、こんな呪い、女神の私なら朝飯前よ。見てなさい」

 

アクアの顔はいつもの駄女神のような顔ではなく、女神らしい顔になる。

 

「・・・セイクリッド・ブレイクスペル」

 

パアアアアア・・・

 

「うおっ⁉急に光りだした⁉」

 

アクアが首輪に向けてセイクリッド・ブレイクスペルを唱えたその時、首輪が光だし、その光はドラゴンを包んでいく。

 

「ま、前が見えないです!」

 

「なんだ!何が起きたんだ⁉いや、どんなものでも受けて立とう!!」

 

カズマたちは放たれた光の眩しさで目を閉じている。光がやむと、アクアの足元にはドラゴンがつけていた首輪がチョーカーとなって外れていた。

 

「んだこりゃ・・・チョーカー?」

 

「これがさっきの首輪のようね。安心して、それにはもう邪気はないわ」

 

「それよりドラゴンはどうなったのよ!」

 

「そ、そうだ!いったいどうなったのだ!」

 

全員がドラゴンがいた場所に視線を向けてみると、そこにはドラゴンの姿はなく、代わりに1人の少女が立っていた。髪色はさきのドラゴンのように青く、澄んだ瞳が輝いている。ただ、人間と違うところはいくつもある。両腕や頬にはドラゴンの鱗のようなものがあり、爪も人間のものではなく、歯も牙である。そして決定的なのが、人間にはないドラゴンのような尻尾に頭には角が生えていた。

 

「・・・呪いの除去を確認。リュドミラ、再起動完了」

 

 

ー・・・誰?ー

 

 

呪いの首輪を外した瞬間に現れた謎の少女の出現に、カズマたちは戸惑っている。この子は何者?さっきまでのドラゴンはどこに行った?そんな疑問が出たのをよそに、少女はカズマたちの前に出て、お辞儀をする。

 

「呪いを解いていただき、感謝します。メッセージ、ありがとうを入力。私の名はリュドミラ。竜人の里より遥々やってまいりました」

 

異形の少女、リュドミラが名を名乗った瞬間、めぐみんは驚愕の顔になる。

 

「竜人って、あの竜人ですか!!?火山の秘境に住んでいるあの少数民族の!!」

 

「はい。その通りです」

 

竜人とは、獣人と同じように、半分が人間、半分が竜の因子を持った種族である。だがこの竜人は少数民族でその姿を目撃する者はいないほどに少ない。

 

「竜人・・・まさかお目にかかれる日がこようとは夢にも思わなかったよ・・・」

 

「世界はやっぱり広いわね・・・」

 

「そ、それよりもリュドミラはなぜここにいるんだ!!?それにドラゴンは!!?先ほどまでいたあのドラゴンはいったいどこに!!?」

 

「ダクネス落ち着け!!」

 

竜人に会えて双子は感動しているが、それとは打って変わってダクネスは焦ったように質問をぶつけ、カズマが落ち着ける。

 

「質問の内容を受理しました。私は今まで、ステータス、呪いにかかっていました。私はアヌビスへ来る道中、何者かに呪いの首輪を着けられてしまい、その呪いによって、本物の竜となっていました。とどのつまり、あなたたちが見たドラゴンとは、私のことです」

 

「何だって!!?」

 

「その呪いの首輪がこれだろ?」

 

マホが取り出したのは、先ほどドラゴンがつけていたと思われていたチョーカーであった。

 

「何それ?」

 

「こいつは魔障の首輪っつって、装備した奴に瘴気を流し込み、そいつを魔物に変えちまう恐ろしい代物だ」

 

「ひ、人を魔物に変えるだと!!?」

 

このチョーカーがそんな恐ろしい代物だとわかって、カズマ以外は驚愕した。

 

「と、ということは、それを着ければ、醜い魔物に変身し、冒険者たちに討伐の対象と見なされ・・・あんなことや・・・こんなことも・・・///」

 

「ダクネス、妄想も混じってるよ」

 

「つか絶対にやめなさいよそれつけるの」

 

ダクネスは呪いのチョーカーを使ってドM的な意味でよからぬことを妄想したが、双子は全力で阻止しようとする。

 

「じゃあ、ドラゴンになってたのって・・・」

 

「竜人の血が強かったんだろうな。それが影響して姿形がオレたちの知る竜になったんだろうぜ。よかったなめぐみん、爆裂魔法をぶっ放してたら、お前今頃罪を着せられて牢にぶち込まれてたぞ」

 

「・・・私は初めからあれが本物ではないとわかっていましたよ。そうでなければ、今頃は爆裂魔法をぶっ放してましたから」

 

「はい嘘ね。唇の動きでわかるって言ったでしょ」

 

「だろうな」

 

「まぁ、めぐみんにしては我慢してた方だよ」

 

罪が着せられると聞いてめぐみんは平然とした顔で嘘をはいたがあっさりとアカメに見抜かれてしまう。

 

「・・・ていうか、カズマは驚かないんですね」

 

「いや?一応は驚いたよ。ただ大声で出すほどではなかったってだけだ」

 

「カズマって肝が据わってるのかどうかわからないところあるよね・・・」

 

まぁ、実際にはゲームでそういうシーンを見たことがあるってだけなのだが、絶対メンバーには理解できないのであえて黙ってるカズマ。

 

「まぁでも、いろいろ納得がいったよ。ドラゴンなのに逃げた理由も、敵感知スキルになんで反応してなかったのかってのも。それって全部お前が一応人間だったってことなんだろ?」

 

「はい。危ないところをありがとうございました」

 

「そして!そんなあなたの命を救ったのが、この私、アクシズ教団が崇拝する女神、アクア様よ!もっと私に感謝してもいいのよ?」

 

リュドミラにアクアはここぞとばかりに女神アピールする。そして結果は当然・・・

 

「なるほど。これがバッドステータス、中二病というものですか」

 

「ちっがうわよ!!本物!!私本物よ!!」

 

「適当に流していいわよ」

 

「うん。信じるに値しないものだし」

 

「オーダー、承りました」

 

「ちょっとぉ!!!」

 

やっぱり信じてもらえず、軽く流されてしまうのであった。

 

「しかし、こいつはきな臭くなってきたな」

 

「と言いますと?」

 

「誰かにこれを着けられたってことは・・・そいつは、ドラゴンになったリュドミラを倒すことで、盗賊団を嵌めるつもりだったって考えられねぇか?」

 

「「盗賊団を嵌める!!??」」

 

ドラゴン姿のリュドミラを討伐することが盗賊団を嵌める行為だと言われた双子は誰よりも驚いた。カズマたちはいまいちピンとこなかった。

 

「なぁ、何でそれが盗賊団を嵌めることに繋がるんだ?真実は知らないわけだから、事故ってことにならないか?」

 

「・・・この首輪の質の悪いところはな、装備した奴の命が絶たれた瞬間に呪いが解除される点にある。つまり、ドラゴンとして倒されたら、元の姿に戻っちまうんだよ。しかも、絶った命も元に戻らねぇ。普通なら真実も知らねぇから事故ってことになるんだが、盗賊団となると話は別だ」

 

「誰かが盗賊団は人を魔物に変えて討伐していた・・・そんな事実が流れるってことですか?」

 

「「は?」」

 

「何!!?」

 

「「ええ!!?」」

 

マホの説明を聞いて、めぐみんはすぐに盗賊団にとって都合の悪い情報を推察する。それには全員が驚愕する。

 

「さすがは紅魔族だ。頭の回転がいい。そんな事実が政府に知られてみろ。盗賊団は間違いなく壊滅する」

 

「そして、今まで培ってきた人々の信頼も全て無駄になる・・・ということですね」

 

「ででで、でも!魔物に変えたっていうのは嘘なんでしょ⁉」

 

「たとえそれが嘘でも、竜人、人間を討伐しちまったっていうのは事実になる。政府は盗賊団を黒って思ってるからな。こっちが白でも・・・」

 

「なるほど・・・それは、確かに盗賊団には都合の悪い情報だな・・・」

 

(・・・あいつら呼ばなくて正解だった・・・)

 

都合が悪い情報があれば間違いなく盗賊団は終わる。それを理解したカズマは捜索隊に知らせなくてよかったと心から思う。そして討伐せずによかったと思う。討伐していたら、間違いなく捕まっていただろうから。

 

「でも問題は、誰が私たちを嵌めようとしたか、だよね・・・」

 

「少なくとも、一般人にはできないわよ?街の連中でさえ、砂漠地帯に盗賊団の本拠地があるって知らないもの」

 

「それなら、街の外から来た連中も外していいんだよな。盗賊団の事情どころか、団員が誰かなんてのも知らねぇはずだし」

 

「アクセルから来た者もそうだ。知っているのは、双子が盗賊団員だということだけだからな」

 

盗賊団の事情を知る者はいない。知っているとすればそれはカズマたちを含む盗賊団にとって有益になる人物だけ。

 

「それに、竜人は武に長けた種族だ。普通の冒険者たちじゃ首輪を着けるどころか、返り討ちに遭うのがオチだ」

 

ドオオン!!

 

「ほわああああああ!!?」

 

「ちょうど、このように、ですね」

 

「そ、そうですね・・・」

 

マホが説明した瞬間、リュドミラはカズマのすぐ近くにあった巨大な岩を拳1つで砕いた。ものすごく強いのはわかったが、何の前触れもなく手を出すのと、せめて一声くらいかけてほしいと、拳が頬にかすったカズマは恐怖ながらに思った。

 

「うちの事情を知っていて、なおかつ竜人と戦える冒険者っていえば・・・うちらのところの各部隊長くらいね」

 

「・・・それって、裏切り者がうちらの中にいるってこと?」

 

盗賊団の仲間の中に団を嵌めようとしていた裏切り者がいるという可能性に、双子は穏やかにはなれなかった。

 

「・・・お前ら、いったん戻るぞ。それから、リュドミラ、お前も来い。お前は重要な証言者だからな」

 

「オーダー、承りました。ミッション、あなたたち同行を受理いたしました」

 

「こいつは、真実を明らかにする必要がある」

 

マホはこの場にいる全員を引き連れて街に戻るとカズマたちに指示を出した。そして、カズマはこう思ったのであった。

 

(・・・あれ・・・今回俺何もしてなくね・・・?)




次回、この記念祭に思い入れを!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。