このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

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この作品の更新を未だに楽しみにしている方がいらっしゃれば・・・1年半以上もお待たせしてしまい、誠に申し訳ございません!!なかなか思いつくネタがなくて・・・挙句にはモチベーションが下がって他の作品を書いたりして・・・大変申し訳ございません!!
しかしようやく完成ができたので今日ここで更新を再開させていただきます。ちなみに、オリジナルエピソードはこの回だけでなく、他の章も載せる予定です。現時点ではこんな感じになっております。

達筆予定のオリエピ

・ウェーブ盗賊団VS暗闇盗賊団VS銀髪盗賊団

・盗賊団団長認定試験

・番外編:この双子盗賊見習いに連携を!

まぁ、いつ書くのかは検討もつきませんし、もしかしたら変更したり、そのエピソードをやめたりするかもしれませんのでご了承ください。まぁ、一度載せた章は最後まで書く気でいますが。


この記念祭に思い入れを!

アヌビスの街に流れていた噂のドラゴンの正体が竜人の少女、リュドミラだと判明したカズマたちは事の真実を明らかにするために街に戻り、今回判明した事実を全てネクサスに伝えた。

 

「つまり、あの噂は俺たちを嵌めるためのもので、裏切り者が俺たちの中に潜んでる。そういうことか?」

 

「ああ、そうだ」

 

その事実を聞いた途端、盗賊団員全員は当然ながら憤慨する・・・

 

「あー、バーバラの奴ついにやりやがったか・・・」

 

「いつかやるだろうなーって思ってたけど・・・ついに・・・」

 

「でも今回はいくら何でもやりすぎじゃね?」

 

「はああああん!!?」

 

・・・かと思いきやネクサス以外の全員がバーバラが事をやらかしたと思ってたいして気にもとめていなかった。

 

「どうせこいつの魂胆はぐえええええええええ!!?」

 

「教義に悪魔殺すべし魔王しばくべしがあるアクシズ教徒であるあたしがモンスターに擬態!!?そんなアホなことを言うのはこの口か!ディープキスで窒息させてやろうか!!」

 

「や、やめろー!!お前なんかにファーストキス奪われるとか嫌だわ!!」

 

逆にバーバラは自分が疑われたことに対し激しく怒りを燃やし、1人の団員に突っかかってきた。

 

「ぜ・・・全員がバーバラを疑ってきたぞ・・・」

 

「誰も信用されてないってそんなことあります?」

 

「疑われても仕方のないことをやってんのよあいつは」

 

「そうだね。当然の報いとも言ってもいいね」

 

「いったい何をやらかしやがったんだ・・・」

 

疑われたことで大暴れするバーバラにめぐみんとダクネスは困惑したような顔になる。アクシズ教徒らしい暴れっぷりに双子は呆れ、マホはジト目で暴れるバーバラを見る。

 

「チューしてやる!チューしてやるーーーー!!!」

 

「気持ちわりぃ、やめろ!!てか疑ってるやつは俺以外にもいるだろ!!なんで俺を狙うんだよ!!」

 

お前イケメンやろがい!!!!!!!!

 

絡まれてる団員の疑問にバーバラはガチギレで返答した。

 

「お前バカか!!!そんなん俺以外にもいるだろうが!!!つーかそれは理由じゃなくてお前の好みだろうが!!!」

 

「ああん!!!??」

 

「お前の好みだろうが!!!」

 

「ああああん!!!??」

 

「ぶっ飛ばすぞてめぇ!!!!」

 

「ああああああん!!??」

 

「・・・・・・」

 

「な、何よその顔!なんでそんな顔するの⁉」

 

大暴れするバーバラの姿を見てカズマは彼女の信仰対象であるアクアに腫れ物を見るような視線で見つめる。

 

「そいつの性格や質の悪さは俺が1番知ってる。だからそいつは絶対に違う」

 

「え、えぇ・・・マジっすか・・・」

 

「さっすがネッ君!あたしの親友。お礼にキスしたげる。んー♡」

 

「気持ち悪いからやめろ」

 

ネクサスの証言で疑惑が晴れたことでバーバラはネクサスにキスしようと迫るが、拒まれている。

 

「・・・ネクサス様、いかがなさいましょう?」

 

ネクサスは裏切り者の可能性に顎に手を添えて考え、視線をマホが連れてきたリュドミラに視線を向ける。

 

「・・・竜人の嬢ちゃん。誰かにこの首輪を着けられたと言ったな。その当時のことを覚えてるか?」

 

「すみません・・・思い出そうとすると・・・靄がかかって、中々・・・」

 

「そうか・・・さてどうするか・・・」

 

あまり仲間を疑いたくないネクサスはどうするべきか悩んでいると、バーバラが食い気味に近づいてきた。

 

「だったらあたしに任せてよネッ君!他はともかく、この私を陥れようとした落とし前はキッッッッッッチリつけないと気が済まない!!!必ず見つけ出してそれ相応の罰を与えてやるんだ!!!だから・・・ね?ね⁉ね!!!?」

 

だんだんと迫ってくるバーバラの勢いは凄まじく、顔もめちゃくちゃ怖くなってくる。

 

「お・・・おう・・・じゃあ任せた・・・」

 

「うおっしゃああ!!!!見てろやすっとこどっこい!!!!ぜっっっっっっったいに許さん!!!!裏切り者しばくべし!!!!!」

 

勢いに負けたネクサスは全てバーバラに丸投げした。許可をもらったバーバラは報復のためにめちゃくちゃはりきっている。出ていったバーバラをこの場の全員がジト目で見ていた。

 

「・・・よろしいんですかネクサス様?」

 

「ああなったあいつはもう誰にも止められねぇよ・・・言ったところで聞くもんか」

 

「・・・心中お察しいたします」

 

もういろいろと諦めたネクサスは大きなため息をこぼし、視界をカズマたちに移す。

 

「はあ~~~~~・・・。・・・とりあえずだ・・・あんたたち、ご苦労だったな。後のことは俺たちの問題だ。一応は仕事はこれで終わり、無事に依頼達成だ。話を聞く限りだと・・・あんたは何もやってないと思うが・・・」

 

「ドキィ!!」

 

仕事を達成できたのはマホのおかげで自分は何もやってないと指摘され、ドキッとなるカズマ。

 

「まぁいいさ。成功は成功だからな。約束通り、報酬のプールチケットをくれてやる」

 

ネクサスは自分の机からプールの無料チケットを取り出し、カズマたちにそれを人数分渡していく。

 

「やったわね!無料チケットゲットよ!」

 

「ずいぶん遠回りな気がするが・・・まぁいいや・・・本来の目的は達成したし・・・」

 

確かに遠回りではあるが、下手をすればチケットをもらえないかもと焦っていたカズマは変に追及するのはやめることにした。

 

「マホさんもありがとな。あんたにも・・・」

 

「あいにくオレはそんなもんに興味ねぇからいらねぇ。そんなもんよりモンスター図鑑くれよ」

 

「ブレないわね、あんた・・・さすが変態だわ・・・」

 

「心外だな。変態はうちの店の常連だろ?」

 

チケットを受け取るのを拒んだマホと相変わらずブレない彼女に呆れるアカメはちらっとダクネスに視線を向ける。

 

「はぁ・・・!なんだ、今2人から一瞬蔑まれた目で見られた気が・・・!はぁ・・・はぁ・・・この飛び出そうで飛び出ないもどかしさはいったいなんだ・・・?だが、悪くない・・・悪くないぞ・・・!」

 

「ダクネスー、その感情は気のせいだから飛び出さないようにねー」

 

今日も平常運転なダクネスにティアが冷静ながらに制する。

 

「わかったわかった。マホさんの報酬は後で用意しておく。それと、竜人のお嬢ちゃんも悪かったな。後で宿の手配をしておくからゆっくりしていってくれ」

 

「お気遣いいただきどうも。メッセージ、ありがとうを入力」

 

「さ、カズマさんたちの仕事は終わりだ。他に用がないなら出てってくれ。しっしっ!」

 

そう言ってネクサスはカズマたちを邪魔者扱いするように部屋から追い出したのであった。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

噂解明から数日後、記念祭の開催がいよいよ明日となり、準備は最終段階に入っていた。そんな中街の状況はドラゴンの噂が解明されたことで賑わいがより一層に増していた。そんな中でアクアたちは・・・

 

バシャッ!バシャッ!

 

「ほーら!水の女神の水さばき、受けて見なさい!」

 

「なんの!倍返しです!はあああ!相克の激流波!」

 

「わっ!やったなぁ~、ならこれでどうだ!」

 

「わぷっ!ティア!道具を使うなんてひきょ・・・うぶ⁉」

 

「ふっ・・・戦争に、卑怯もクソもないわ。ほらほら、避けてごらんなさいよ!」

 

「ちょ、ちょっと!いくら何でもそのバズーカみたいなのは・・・わああああああ!!?」

 

「ふ・・・ふふ、それは、私に対する挑戦状と捉えてもいいのですね?よろしい、我が紅魔族流で返り討ちにしてさしあげましょう!」

 

ネクサスからの報酬のチケットを使ってプールで遊んでいた。そんな女子たちでワイワイと遊ぶ姿をカズマはにっこりと微笑んでいた。

 

(最初ネクサスさんに無理難題を突き付けられた時はどうしようかと思ったけど・・・万事うまくいって何より何より。うん、うん)

 

カズマがアヌビスに来た目的はこのプールで女子の水着を拝むためだったので、目的を達成できて苦労が報われたことで首をうんうんと頷いている。その後、カズマはアクアたちから目を逸らし、他の観光客の・・・主に女性の水着に視線を向ける。カズマは端から彼女たちの水着には何の興味も示してないのだ。

 

(うんうん、あちらのお姉さんは実に健康的ないい身体だなぁ。あっちのお姉さんは・・・うおおぉ⁉こ、これはぁ・・・!予想以上の破壊力だ・・・!だ、ダメだぁ・・・非リア充の俺には刺激が強すぎる・・・!)

 

水着姿の女性たちの魅力的な身体や大きな胸を凝視してカズマは鼻の下を伸ばしてデレデレしたり葛藤したりして内心興奮状態になっている。

 

「ごめん!結構人が並んでて・・・」

 

「んもう、遅いじゃない!もう待ちくたびれたんですけどー」

 

「お待たせ。ほら、アイスゼリーだよ。一緒に食べよう」

 

「わぁ・・・ありがとう!だーい好き!」

 

「・・・・・・・」イラッ

 

だが水着の女性たちの前に彼氏の男たちが現れたことによってカズマは一気に冷めた気持ちになった。これはダメだと思い、周りを見回してみると、どこもかしこも、彼氏連れの女性がたくさんで、自分たちのところ以外いちゃついた雰囲気が出ていた。

 

(どいつもこいつも見せつけやがって・・・!非リア充の俺への当てつけか・・・!こっちは問題児ばかりに囲まれて尻ぬぐいさせられたり、男にいらん愛を寄せつけられて・・・チクショウ!現実なんてクソくらえだ!!リア充爆発しろ!)

 

カズマがこれまでも、この街に来た時も散々な目にあったことを思い返し、先ほどまで浮かれていた気持ちから嘘のように不満の感情が爆発しそうになった。

 

「カズマー、いつまでもそんなところで何やってるのですか?」

 

「プールにも入らず、いい御身分ね?」

 

「せっかくの私たちの報酬を無駄にする気ですかー?」

 

そこへ一旦休憩のためにプールから上がっためぐみんたちが近づいてきた。近づいてきた彼女たちをカズマはジト目で見つめる。

 

「あ、わかったわ!さては私たちの水着に見惚れてたんでしょ?」

 

「・・・・・・」

 

「図星ね?図星なんでしょ?まーぁ?この水の女神である私の水着姿なんて、滅多にお目にかかれるものでもないしね?無理もないわ」

 

確かに、外見だけを見れば5人とも美人で文句のうちようもない。むしろ水着姿でさらにその魅力を増していることだろう。だがしかし、これまで散々やらかしてきた奇行によって全てが台無しになっているのだ。今更水着になったところで、その考えが変わることはないだろう。(ただし、ダクネスやティアの胸は凝視するだろうが)

 

「・・・チェンジで!」

 

「なぁんでよ~~~~!!!」

 

相変わらずのぞんざいな扱いにアクアは悲しみの叫びをあげながらカズマの肩を掴み揺さぶる。

 

「まぁまぁ。しかし・・・本当にこんなことをしてていいのか?裏切り者の件はまだ解決したわけじゃないのだろう?」

 

「あー、そうだ。その件で一応報告ね」

 

「とりあえずは、裏切り者は見つかったわ」

 

「「「「え?」」」」

 

ずいぶんとあっさりした裏切り者発見の報告にカズマたちはきょとんとした顔になる。

話を纏めるとこうだ。あの後バーバラが本格的に動き出し、各部隊長の事情聴取や家宅捜索してみたところ、情報部の部隊長であるフォステスの家にリュドミラを竜に変化させたものと同じ魔道具がいくつも見つかったとのことだ。帰りが遅れたフォステスに突きつけてみたところで詰み。バーバラが相手では勝ち目がないためあっさり裏切りを認めたとのことだ。裏切った理由はネクサスの方針が気に入らなかったとのことだそうだ。

 

「てなわけで、判決は当然ながらの有罪で団の脱退は確定。今は牢屋にいるらしいわ」

 

「でもバーバラの奴、これだけじゃ足りないのか記念祭が終わったらフォステスをアルカンレティアに連行、簀巻きで逆さに吊るしてアクシズ教の教義を24時間も唱えて、強制的にアクシズ教に入信させて勧誘活動をさせるんだってさ・・・」

 

「うえ・・・想像しただけで寒気と吐き気がするわ・・・」

 

「簀巻きで逆さま・・・!」

 

「「うわあ・・・」」

 

「そ・・・そりゃ信者が増えるのは嬉しいけど・・・それは女神の私でも引くわぁ・・・」

 

盗賊団としては罰は軽く済ませたらしいが、バーバラは疑われた腹いせでそれで許すつもりはないらしく常識人ではとても耐えがたく、アクアでも引くレベルの罰を与えるつもりらしい。その内容にダクネスは若干頬を赤らめて興奮し、カズマとめぐみんは顔を青くして引いている。

 

「ま、まぁ・・・無事解決してよかったけど・・・仲間の件は残念だったな」

 

「いや別に残念でもないよ?ほら、フォステスって真面目だけど見た目が怪しいから、『あ、こいつ絶対なんかやらかすなぁ・・・』とかみんな内心では思ってたんだよ?」

 

「まぁ・・・女湯に私たちにはバレない覗き穴を作って男共から多大な信頼を寄せてたみたいだけどね」

 

「他にもバレないように女にいたずらしてきたから、正直妥当なところなんだよね」

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

カズマたちから見て、フォステスは怪しいが、言葉遣いが堅物そうな印象を見受けられたが故、印象が一気に180度変わって何とも言えないような顔になるのであった。

 

 

ーこ・の・す・ばぁ~ー

 

 

充分にプールを楽しみ、満足した頃にはもうすでに夕暮れになっていた。

 

「ではカズマ、アカメ、ティア、明日の記念祭で会いましょう」

 

「いい?絶対に遅れないでよ?遅れたりしたら承知しないんだから!」

 

「3人とも、また明日な」

 

アクア、めぐみん、ダクネスの3人はカズマたちと別れてから自分たちの宿に向かう。双子たちは自分たちの部屋があるギルドへと向かう。カズマも自分の宿へと向かっていく。

 

(・・・しかし、あいつらが巫女役なぁ・・・ミミィとかこいつらの後輩3人組とか他に適任がいるだろうに・・・)

 

と言いつつもカズマは巫女服を着込んだ双子の姿を想像する。白い着物とそれぞれ色が違う袴を穿き、お互い手を繋ぐ双子の姿を想像したカズマは鼻を伸ばし、口元がにやける。

 

(・・・はっ!何考えてんだ俺!相手は人を巻き込む喧嘩をして魅力を台無しにする双子だぞ!しっかりしろー、俺ー・・・)

 

妄想してたカズマは双子の問題点を思い出し、平常心を取り戻す。そこへスティーヴがたまたまやってきた。

 

「おー、いたいた。おーいカズマー!」

 

「スティーヴ?なんか用か?」

 

「実は折り入って頼みがあってよぉ・・・」

 

「頼み?」

 

「実はリーダーに仕事を頼まれてさぁ・・・や、もちろん他の奴らもいるんだけど・・・1人でも多くいた方が早く済むだろ?だからお前にも手伝って・・・」

 

「断る」

 

「え・・・」

 

頼みごとを速攻で拒否されたのが予想外なのか面を喰らう顔になるスティーヴ。

 

「俺は宿に戻ってゴロゴロするって忙しい仕事があるんだ。手伝えるわけないだろ?」

 

「あ、ああ・・・そうか・・・そりゃいそが・・・て、それ暇ってことだろ!なぁそう言わず頼むよ。お前だって、1日を終える時は、気持ちよく終えたいだろ?」

 

カズマの発言にツッコミを入れつつ彼と肩を組み、あるものを露骨に見せる。

 

「!こ、これは・・・!サキュバスの無料チケット・・・!」

 

スティーヴが取り出したものとはサキュバスの店の無料チケットだ。しかも2枚。つまり、これが欲しかったら仕事を手伝えと言っているのだろう。

 

「短い期間とはいえ・・・俺たち、仲間だろう?」

 

そう言ってスティーヴはアクセルでも使える無料券を2枚見せた。それぞれのチケットを合わせると4枚となる。それを見たカズマは彼のチケットを受け取り・・・

 

「もちろんだ(イケボ)」

 

無駄にかっこいい声でそう返した。

 

 

ーこのすば(イケボ)ー

 

 

スティーヴがカズマに頼んだ仕事というのは、記念祭に使う花火玉を闘技場まで運んでほしいというものだ。チケットを受け取った手前というのもあるが、それくらいならと思い、仕事を引き受けた。双子とわかれたカズマはスティーヴと共に街の倉庫にやってきた。倉庫には花火玉が入った箱がいくつもあった。

 

「こんなにあるのか⁉」

 

「これを明日までにって言うんだから面倒だよな。早く終わらせて、きれいな姉ちゃんの夢でも見ようぜ」

 

スティーヴは花火玉の箱を軽々と持って闘技場に運んでいく。カズマも花火玉を運ぼうと箱を抱える。

 

「あー、扱いには気を付けてくれよ。落としてボンしても知らねぇぞー」

 

「・・・何もしてない奴が他人事みたいに言いやがって・・・ふん!重・・・!」

 

仕事をサボって遊んでいた他の団員の注意には癪に触るが、仕事に集中するカズマ。ただ結構重いせいで持ち上げるだけが精一杯だ。

 

「大丈夫かい?よければ一緒に運ぶよ」

 

そう言ってカズマの持つ箱の片側を持ってくれたのは捜索隊のガワラであった。

 

「あ、ありがとうございます。えーっと・・・」

 

「ガワラだよ。捜索隊の隊長をやってるんだ。よろしくね」

 

ガワラはにっこりと微笑み挨拶をする。そんな彼にカズマは若干違和感を感じる。というのも、最初に会った時は熱い熱血漢の印象が強かったからだ。

 

「ん?どうしたんだい?」

 

「あ、ああ、いや・・・なんか最初のキャラとは違うなーって・・・」

 

「ああ、あれかい?あれは仕事だけそう見せてるだけさ。捜索隊は血の気が多いのが多いからね。舐められないようにするためだよ」

 

「な、なるほど・・・」

 

どうやらあの熱血漢は隊員に舐められないためにやっていることで、こっちが素の姿らしい。

 

「君のことはあの2人の報告書で知ってるよ。何でも魔王軍の幹部を3人も倒したんだって?すごいじゃないか」

 

「え?そんなこと・・・ありますけどねぇ」

 

「はは、そんな猛者とこうして話ができるなんて俺は嬉しいよ」

 

あの暑苦しさはどこへやら、ガワラは本当に爽やかな笑みを浮かべ、おかしな点など1ミリもない。だがカズマはだんだん学んでいる・・・この世界の人間はたいていロクでもない奴しかいないことを。絶対何か裏があるはずであろうと睨んでいる。

 

「それで、どうだい?あの2人、制御するのはなかなか大変だろう?」

 

「え、ええ・・・まぁ・・・でもそれと同等・・・それ以上の奴らを抱えてますんで」

 

「ははは、それは大変だね。まぁ俺も、あの2人にはやられたからねぇ」

 

(よぉーっく見極めろ俺・・・!絶対に・・・絶対に何かあるはずだぁ・・・!)

 

警戒しているカズマはいつ逃げ出してもいいように、ガワラの言動を注意深く観察する。そうして観察している間にも、花火は全て運び終えた。結論、最初から最後まで何もなかった。

 

「今日はありがとう。おかげで有意義な時間になったよ」

 

「お・・・おかしい・・・!何もない・・・だと・・・!いや、そんなはずは・・・!」

 

ガワラの常識人っぷりにカズマは自分の中にあるセンサーを疑い始め、ぶつぶつ独り言を呟く。そんなカズマの様子がおかしかったのかガワラはクスリと笑う。

 

「確かに変な人は多いし、君の気持ちは理解できるつもりだけど、疑ってばかりじゃ疲れるだけだよ。裏切り者はもういないんだし、気楽に行こうよ気楽に。ほら、スマイルスマイル」

 

「え・・・あ、はい・・・。

(・・・なんか変人かと思って疑ってた自分がバカみたいだ・・・)」

 

あまりのいい人ぶりに逆に激しく疑ってた自分が恥ずかしくなってくるカズマ。

 

「君たちはこの後は・・・ああ、お・た・の・し・み、だったね。いいね」

 

「べ、べべべ、別に、そんなことないですけど?」

 

「お楽しみもいいけど・・・ほどほどにね?女の子にバレてあれをちょん切られても責任は取れないから」

 

「ちょ・・・ちょん切・・・っ⁉き、気をつけます・・・」

 

笑顔から急に真顔で物騒なことを言うものだからカズマは思わず顔が真っ青になって、サキュバスの店をご利用の際はより一層気をつけようと心がけるようになる。

 

「じゃ、俺はまだ仕事が残ってるから。明日の記念祭、"運がよければ"また会おうね」

 

「は、はい、失礼しました」

 

最後までいい人間を貫き通しているガワラに若干拍子抜けだったが、稀に見る常識人にカズマは安堵する。だがカズマの直観は・・・別の意味で当たっていることに、今はまだ気づく由もなかった。

 

 

ーこのすばー

 

 

いよいよ迎えた記念祭本番の翌日、街の雰囲気は朝から祭り一色で準備中とは比べ物にならない賑わいを見せていた。

 

「皆様、大変長らくお待たせいたしました!10年に一度、今日しかないアヌビス誕生記念祭、心ゆくまで、お楽しみください!」

 

『イーーヤッホーーーーー!!!!!』

 

ステージで開催宣言をした後に、出店の営業は開始し、記念祭に来た人たちは散開し、記念祭の出し物を見に回りに行く。当然、その中にはカズマたちもいる。

 

「ついに始まったわね!記念祭!遊びつくすわよー!!」

 

「朝なのに張り切ってんなぁ・・・ふわぁ・・・ねみ・・・」

 

記念祭の話を聞いてから遊ぶ気満々なアクアは張り切っており、逆に一緒に来ているマホは眠そうにしている。

 

「しかしすごい賑わいだな。この賑わいはエリス祭り以上ではないか?」

 

「エリス祭り?」

 

エリス祭りという聞いたことない祭にカズマは首を傾げる。カズマの疑問にめぐみんが答える。

 

「知らないのですか?正式な名前は女神エリス感謝祭と言って、1年を無事に過ごせた事を喜び感謝し、女神エリスを称えるお祭りです」

 

「へぇ~・・・」

 

「紅魔の里でもやりましたが、盛り上がりの方で言えばこちらの方が圧倒的に上ですね」

 

「これは10年に1回だからな。信仰云々関係なく、羽目を外したいんだろうぜ」

 

「そう考えれば、手伝った甲斐があったというものだ」

 

伝統的でいえばエリス祭りの方が上だが、10年に1回というだけあって、記念祭の方が盛り上がりを見せている。それを手伝ったダクネスたちは感慨深いものを感じている。

 

「そのエリス祭りについていろいろ物申したいところだけど・・・そんなの後回し!今は記念祭よ!記念祭!バーバラに聞いた話によると、この街の敬虔なアクシズ教徒たちも面白そうな出し物をやってるそうなの!私、そっちに行ってみんなからちやほやされてくるわ!」

 

「あ、おい待て!だー、クソ!口約束なんてするんじゃなかった!待てって!」

 

ウキウキの様子のアクアはアクシズ教徒(エリス教徒監視の元)がやっている出し物がやっているペースに向かっていき、リュドミラの呪いの際に出した約束をここで行使され付き添うはめになったマホは愚痴をこぼしながら彼女を追いかけた。

 

「・・・あいつ、余計なことやらないだろうな・・・」

 

「まぁ、マホが一緒なのだから大丈夫だろう?」

 

「そう?そうかなぁ・・・」

 

またアクアが何かやらかさないか不安になっているカズマは顔を項垂れている。

 

「ではカズマ、祭りを回る前に景気に1発、撃ちに行きましょう!」

 

「待て、なんでそうなる?大人しくしてたんじゃなかったのか?」

 

「何を言うのです?10年に1度なんですよ?インパクトはより大きい方がいいに決まってるではないですか。ならば!!今日まで溜まりに溜まった撃ちたい衝動を一気に解き放った方が爆裂魔法のキレが増すし、記念祭にも派手に貢献できるのではないでしょうか!!」

 

「お前、まさかそのために今まで我慢してきたのか?」

 

「そうでなければ、なぜ日課の1日1爆裂を我慢しなければいけないのですか?」

 

「・・・・・・」

 

どこに行っても爆裂魔法のことしか考えていないめぐみんに対し、カズマは何とも言えない表情になる。

 

「ではさっそく・・・」

 

「待ってくれ。撃つにしてもどこで撃つつもりだ?私もカズマも砂漠の地形には詳しくない。遠くへ行けば迷う可能性だってある」

 

「ダクネスの言うとおりだ。案内係の双子は今最後の練習で今はいないんだぞ?」

 

「むむ・・・確かに・・・困りましたね・・・どうしましょうか・・・」

 

「我慢すればいいだろ」

 

「それでは私の我慢が無駄になるじゃないですか!!」

 

「無駄でいいんだよ!!」

 

「何をぅ!!!」

 

回りを気にせず不毛な言い争いをするカズマとめぐみん。そこへ・・・

 

「お困りのようですね?」

 

「「うわぁ!!?」」

 

2人の間にいつの間にかリュドミラが割って入ってきた。

 

「おお、リュドミラか。お前も祭りを見て回ってたんだな」

 

「はい。元々そのためにこの街までやってきたのですから」

 

「お、驚かすなよ!危うくちびるところだった」

 

「汚らしいのでやめてください。それより、何やらお困りのようですが?」

 

「聞いてくださいよ!せっかく今日まで爆裂魔法を我慢してきたのに、カズマが撃つなと無慈悲なことを言うんです!!」

 

「あのなぁ!近所だと怒られるし、遠くだと帰れなくなるんだぞ!こんなことで貴重な1日の時間を無駄にしたくない!」

 

「・・・要約。あなたは爆裂魔法を撃ちたいけど、この砂漠では帰り道がわからなくなるので案内役がほしいと、そういうことですね?了解しました。ならばそのオーダー、私が引き受けましょう」

 

また揉めあいになりそうなところをリュドミラが揉めあいの原因を理解し、名乗りを上げた。

 

「はあ!!??」

 

「あ、ありがとうございます!!あなたこそ私のメシアです!!さあカズマ、これで問題は解決しました。いざ行きましょう!レッツ、爆裂!!」

 

リュドミラの名乗りでめぐみんは一気に上機嫌になり、杖を掲げて宣言した。

 

 

ーえ?マジで行くの?ー

 

 

結局めぐみんに付き合わされることになったカズマはめぐみんとリュドミラと共に街を出て砂漠を歩いている。その表情はうんざり君である。

 

「あちぃ・・・何やってんだ俺・・・」

 

「う~ん・・・この日に相応しい標的もなかなか出ませんね」

 

カズマが嘆いているのをよそに、2人は記念祭に相応しいような標的を探しているが、中々見つからないでいる。

 

「なぁ、もうその辺のオアシスでいいだろ。適当に撃って帰ろうぜ」

 

「それではいつもと同じではないですか。もっとこう・・・大きいものでなくては・・・」

 

「もじもじしながら言うな!!!だいたいこんな砂漠にそんな都合のいいものなんてあるわけ・・・あったわ」

 

もじもじと恥ずかしそうに言うめぐみんにツッコミを入れた後にカズマが見たものとは、砂に埋もれた大きいものであった。あの大きさならちょうどめぐみんの条件にあっている。

 

「分析。あれはおそらく、砂に埋もれた砦といったところでしょうか。まさに、条件ピッタリと推測」

 

「ふむ。そうですね。欲を言えば頑丈さも確かめたいですが・・・あれにするとしましょう」

 

標的を定めためぐみんは砂の砦に杖を向け、詠唱を唱える。

 

「吹き荒べ熱風、纏え爆熱。灼熱の荒野を真紅の爆焔にて覆い尽くさん。万象の摂理は、我が基に降臨せり!!!」

 

詠唱を称え終え、待ちに待った爆裂魔法が放たれる。

 

「エクスプロージョン!!!!!」

 

ドオオオオオオオオオオン!!!!!

 

爆裂魔法の大爆発は砂の砦を覆いつくし、纏っていた砂は散り散りに舞っていく。だが例の如く、砦は粉々、クレーターも出来上がっていた。

 

「これが爆裂魔法・・・予測以上のものと推定」

 

「はぅ・・・久々の爆裂魔法・・・最高に気持ちよかったです・・・」

 

「ふーむ、確かに久々ということもあって、凄まじい威力・・・なおかつ衝撃波の振動が空気にも伝わる滑らかさ・・・ナイス、爆裂!」

 

「ナイス、爆裂」

 

リュドミラは爆裂魔法を称賛し、カズマもなんだかんだ言って評価してめぐみんにグッドサインを送った。

 

「嫌々言ってたわりに、カズマもノリノリですね」

 

「もう吹っ切ることにしたよ」

 

「満足したようでなによりです。では、モンスターが集まる前に、ここを離れましょう。さあ、私に掴まってください」

 

「はい?・・・うおぉ⁉」

 

リュドミラは案の定倒れてるめぐみんと、隣にいるカズマを担いだ。そして・・・

 

「リュドミラ、驀進します」

 

「おい、お前何言って・・・」

 

ビュンッ!!ゴオオオオオオオ!!!

 

「「ああああああああああああ!!??」」

 

まるでスーパーカー並みのスピードで走り出した。あまりのスピードにカズマとめぐみんは恐怖を覚える。

 

「速い速い速いいいいいい!!止まってぇ!!怖い怖い怖いいいいいい!!!」

 

「驀進、驀進、驀進・・・」

 

「いいいいやああああああああああ!!!!!」

 

このスピード地獄はアヌビスの街に戻るまで続いたという。

 

 

ーこのすばああああああああ!!!ー

 

 

カズマたちが1日1爆裂をしている間、ダクネスは祭りの出し物を見て回っていた。彼女は貴族ということもあって、見るもの全てがやはり新鮮でとても楽しそうにしている。そんなうきうきしている様子のダクネスの元にカズマたちが帰ってきた。

 

「ああ、カズマ、めぐみん、おかえ・・・り・・・?」

 

「おおう・・・ダクネス・・・」

 

カズマとめぐみんは疲労困憊でふらふらした状態だ。

 

「な、何かあったのか?」

 

「困惑。街についた時にはすでにこの状態に・・・」

 

「お前のせいだろうが!!!」

 

「??理解不能。私は最善で安全な方法を取ったのですが、なぜ私のせいになるのでしょう?」

 

リュドミラの反応を見る限り、本当にカズマたちが疲れた原因がわかっていないようで、きょとんとした顔をしている。しかも全て善意ある行動で悪意が全くないので余計に質が悪い。

 

「・・・・・・」

 

「・・・そんなに見つめられると照れてしまいます」

 

「これ軽蔑の視線だからな?」

 

カズマのジト目にリュドミラはなぜか頬を赤らめる。そんな彼女にカズマは冷静にツッコミを入れる。

 

「きゃああああああ!!ひったくりよーーー!!」

 

こんなやり取りをしていると、遠くでひったくりの事件が起きた。ひったくり犯は女性から財布を奪ってどこかへ逃げようとしている。

 

「なっ!こんな祭りの時期でも悪事を働く輩がいるとは・・・!すぐに捕まえなくては!」

 

「待てダクネス!こういう時は俺のスティールで・・・」

 

「あれ?リュドミラはどこです?」

 

「「え?」」

 

ひったくり犯から物を取り返そうと動こうとした時、いつの間にかリュドミラがいなくなっていた。逃げるひったくり犯を見て見ると、リュドミラがすでに追いついて並走し・・・

 

ガシッ、ドゴオオオオオン!!!

 

「ぐべら!!?」

 

ひったくり犯の頭を掴み、地面に叩きつけた。

 

「す・・・すげぇはえぇ・・・」

 

カズマはリュドミラの行動の速さに驚く。しかし、真に驚く光景はここからだ。

 

ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!

 

「がはっ!ぐへっ!ぼべぇ!」

 

もう捕まえたにも関わらず、リュドミラは何度も何度も何度もひったくり犯の頭を叩きつけた。やりすぎである。

 

「もういい!!もういいって!!もういいって言ってんだろおおお!!」

 

さすがにひったくり犯がかわいそうになってきたカズマは急いで駆けつけてリュドミラを止めるのであった。

 

 

ー悪・即・滅・ですー

 

 

ようやく解放されたひったくり犯はリュドミラを恐れ、盗んだ財布を捨てて逃げた。リュドミラは被害者の女性に財布を返すのだが・・・

 

「いやあああああああああ!!」

 

あの撲殺行為を見たせいで悲鳴を上げ、財布を受け取って案の定逃げていった。

 

「財布の返却を確認。これでまた一歩、正義の味方に近づきました」

 

「いや女の人怖がって逃げていったよ?明らかに正義とは真逆なことをしていたよ?」

 

リュドミラはなぜか喜んでいたが、カズマは冷静に逆効果であるとツッコミを入れる。隣にいるダクネスは先ほどの光景を見て頬を赤らめてもじもじしている。

 

「あ・・・あの容赦のない連続攻撃・・・私もあいつと同じことをやればやってもらえるのか・・いや、私は騎士だ!あんな卑劣な行為などできるはずがない!ああでも・・・ああ!!」

 

「ダクネス、絶対にやらないでくださいね」

 

変に葛藤するダクネスにめぐみんが冷静に注意する。

 

「ところで、リュドミラは正義の味方になりたいのですか?」

 

「はい。我が里に伝わる童話の英雄。あの者の言葉1つ1つ、そして善意が私に勇気を与えてくれました。私も、童話の英雄のような正義の味方になりたい。そのためにも、1日1善は欠かせないのです」

 

言っていることは立派かもしれないが、それで人を困らせたり怖がらせたりしたら却って逆効果になっていることをリュドミラは全く気付いていない。

 

「人助けするならもうちょっと加減してやってくれよ」

 

「拒否。童話の英雄は言いました。手を抜く善に意味なし、全身全霊を以て悪を挫き、弱きを救う。善を貫くならば何事も全力を以て行うべきです。それが正義の味方になるための第一歩・・・その歩みは何人たりとも止められません」

 

この言葉でリュドミラに対しカズマは思った。結局はこの女もアクアたちと同類なのであると。

 

「受信。近くで困った人の反応を検知。すみませんが、失礼します」

 

「は?あ、おい!!・・・行っちゃった・・・」

 

リュドミラは困っている人を求めてどこかへと行ってしまった。

 

「やっと見つけたぜ・・・おぉ~い、カズマ~・・・」

 

「うぅ・・・ひっぐ・・・えっぐ・・・」

 

そこへすれ違うかのようにマホがアクアの手を取りながらカズマたちを呼んでいる。アクアはなぜか泣いている。

 

「おい!いつまで泣いてんだ!」

 

「ぐす・・・だって・・・だってぇ・・・」

 

「・・・一応聞くが、その駄女神はいったい何をやらかしたんだ?」

 

「あー・・・こいつ、アクシズ教徒が経営してる銭湯の祭り限定の湯を普通のお湯に浄化しちまって・・・いや、それだけならいいんだけどよ・・・はぁ・・・」

 

心なしか疲れている様子のマホはうんざりしたようにため息をこぼした。

 

 

ー回想ー

 

「お湯に浄化しちゃったのは謝るわ。でも仕方がないことなの。なぜなら私は、あなたたちが崇拝する水の女神・・・アクアなのだから!」

 

長い沈黙。そして・・・

 

「ざけんじゃないよ!!!!!」

 

「!!??」

 

「限定湯をお湯にした挙句、アクア様の名を勝手に名乗りやがって!!!」

 

「私たちに恨みでもあるの!!?私たち、こんなに人様のために尽くしてるのに!!」

 

「ち、違うの!!だましてるんじゃなくて私は本当に・・・」

 

「あああ!!さてはあんた!!!アルカンレティアの温泉を全部お湯に変えたってていうとんでもないいたずらをしたパチモンだね!!!!しらばっくれても無駄だよ!!孫から全部聞いてんだからね!!!」

 

「は!!?おいクソ女神!お前アルカンレティアでいったい何をしやがった!!?」

 

「違うの!!私はただかわいい信者たちのために・・・」

 

「パチモンとその仲間をとっ捕まえろおおおおおお!!!」

 

『おおおおおおおおおおおおお!!!』

 

「だああああああ!!オレ完全な巻き込まれじゃねぇかああああああああ!!」

 

「なぁんでこうなるのよおおおおおおお!!!」

 

 

ー回想終了ー

 

 

「それで追い掛け回されてるのよ!!?私何も悪いことしてないのに、どうしてかわいい信者たちに目の敵にされなくちゃいけないの!!?ねぇどうしてよぉ~~~!」

 

えんえんと泣き続けるアクアはダクネスに近づいて抱き着いてきた。アクアがまた厄介ごとを持って帰ってきたことにカズマは頭痛で頭を抱えそうになる。

 

「ま、そんなわけでこれ以上面倒ごとに巻き込まれんのは御免なんでな。このろくでなし、返しとくわ。後は自由に祭りを楽しんでくれ。オレはかえ・・・」

 

アクアをカズマに押し付けたマホはテレポートを使おうとするが、カズマとめぐみんが彼女のマントを掴んでいる。

 

「おい、何やってんだ?これじゃテレポートを使えねぇだろ?」

 

「行かせませんよ?何自分だけ助かろうとしてるんですか?」

 

「俺たち、仲間だろう?例え同じパーティじゃなくても・・・堕ちる時は一緒だ♪」

 

爽やかな笑顔でマホを引き留めようとするカズマとめぐみん・・・だがマホは腕づくで2人を引きはがそうとする。

 

「ええい!!放せ!!!お前らと違ってオレはノーマルなんだ!!堕ちるなら勝手に堕ちてろ!!オレをそっちに引きずりこむんじゃねぇ!!」

 

「何自分はまともみたいに言ってんだ!!言っておくけどな、モンスターの店を始めてる時点で、お前もこいつらと同類だからな!!」

 

「なんだとてめぇ!!」

 

「おい、どさくさに紛れて私を変人扱いするのはやめていただこう」

 

「おい!!いたぞ!!パチモン女神だ!!」

 

「ひぃ!!!」

 

不毛な争いをしていると、回想に出てきたアクシズ教徒たちがアクアに気付き、こちらに接近してきている。

 

『簀巻きだ!!!偽物とその仲間を簀巻きにしろぉ!!!』

 

「いやあああああああああ!!」

 

「うおおおおお!!お前らのせいで逃げ遅れたじゃねぇかあ!!!」

 

「知るか!!!もう・・・なんで毎回こんな目に合うんだよおおおおおお!!!」

 

自分たちを捕まえようと躍起になるアクシズ教徒たちから必死になって逃げるカズマたちなのであった。

 

 

ーこのすばぁ!!!!ー

 

 

カズマはなんとかアクシズ教徒の群れから逃げ切ることができたが、逃げる最中でアクアたちとはぐれてしまった。

 

「ぜーはー、ぜーはー・・・な、何とか撒けたか・・・?」

 

カズマが息を吐いて疲れを整えようとすると・・・

 

「カーズーマー」

 

彼の背後から手が・・・

 

「ふわああああああああああ!!!???」

 

「きゃああああああああああ!!!???」

 

不意に肩に触れられたカズマと、急な大声でティアは同時に悲鳴を上げた。ティアの隣にいたアカメは呆れ気味だ。

 

「あんたら何驚いてんのよ?」

 

「ふ、双子かよ!!驚かせんなよ!!アクシズ教徒かと思ったじゃないか」

 

「そ、それはこっちのセリフだよ!練習も終わって本番まで暇になったから探してたのに・・・て、アクシズ教徒って言わなかった?近くにいないよね?」

 

「やめなさい。あんたが言うと現実なものになるじゃない」

 

ティアはアクシズ教徒に反応して怯えたように辺りを見回し、アカメはそんな彼女の行動を咎める。

 

「まぁそれはいいとして・・・あんたどうせ暇でしょ?私たちの買い物に付き合いなさい」

 

「ちょうど祭り限定の品で欲しいものがあったんだよね。あ、お金のことはご心配なく。どうせ3億の大金が入るわけだしね」

 

双子からの誘いを聞いてカズマは思った。これは自分が荷物持ちをやらされるんだと。そう思ったカズマはその誘いを断ろうと口を開く。

 

「俺はこの後宿に戻って部屋でゴロゴロするのに忙しいからパス」

 

「さすがヒキニートね。そうやって人生の半分を無駄にするのだから」

 

「ひ、ヒキニートじゃないから!」

 

「だったら私たちに付きあえるよね?というか、カズマに拒否権なんてないから」

 

(選択する権利もねぇのかよ・・・)

 

選択権も譲ってくれない理不尽双子に渋い顔つきになるカズマ。が、カズマはここで思案する。

 

(待てよ?これってもしやデートなのでは?いやいや待て待て・・・俺がこの2人とデートをしてあの親バカ親分が黙ってると思うか?いやまったく思わない。だけど冷静に考えろ?これはこいつらが誘ってきたわけであって、俺の意思じゃない・・・つまり合法なんだ。なら一緒にいたって問題はないはずだ。いやちょっと待て。デート自体はいい。俺も悪い気はしないからな。けど問題はその相手がどこ彼構わず喧嘩して人様を巻き込む凸凹姉妹だぞ?そんなのと一緒にいて無事で済むのか?いや、何とかフォローを入れれば問題ないか?いやそうではない。そもそも俺とこいつらとはそんな関係じゃないし、万一そうなったとしてもどっちかを選択するはめになる。あれ?でももしこいつらと結婚することになったら・・・どっちかが義理の姉か妹になるということになるのでは?ううむ、甲乙つけがたい・・・。いやいや待て待て・・・)

 

カズマは心の中で葛藤し、どうするべきかと悩みに悩んで辺りをうろうろしている。その様子に双子は次第にイライラし始めた。

 

「ああ、もう!何に悩んでんだよイライラする!!」

 

「あんたに拒否権なんてないっつったでしょ!いいからさっさと来いっつってんのよ!」

 

いい加減時間の無駄だと思った双子は無理やりカズマの手を取って祭りの屋台に向かおうとする。

 

「あっ!おい!!少しは考えさせ・・・て、それも拒否権ないのか・・・」

 

無理やり付き合わされることになったカズマだが、女の子とデートということで心の中では意外とまんざらでもなかったりする。

 

 

ーこのすばー

 

 

その後カズマは双子と共に屋台を見て回ったり、バザーで買い物をしたり・・・時にはいつも通りの双子の喧嘩を仲裁したり・・・時には街の住民と揉めあったり・・・時にはアクシズ教徒たちに追いかけまわされたりと・・・ずいぶんはちゃめちゃなことがあったが、なんだかんだで記念祭を楽しんでいた。そんなこんなで時間はあっという間に経ち、気づけば夜になっていた。3人は宿屋の屋上で祭りの景色を眺めていた。

 

「ん~~!結構はしゃいだな~!」

 

「はぁ・・・俺はもう疲れたよ・・・」

 

「何よ?こんな美少女と一緒に祭りを回ったのよ?もう少し喜んだらどう?」

 

「自分で言うな自分で」

 

自分を自画自賛するようなアカメの発言にカズマは呆れている。

 

(・・・まぁ正直?楽しくなかったって言えば噓になるけど・・・)

 

とはいえ、なんだかんだ楽しんだ自覚があるカズマ。

 

「てか、そろそろ戻った方がよくないか?演舞に主役が遅れちゃ意味ないだろ?」

 

「ざ~んねん、演舞は最後の締めくくり。時間にはまだまだ余裕があるよ」

 

「ふん、それ以前に、あんた如きがちゃんと締めを飾ることができるのかしらね?」

 

「は~~?それはお姉ちゃんの方なんじゃないの?」

 

「あ?何が言いたいのよ?」

 

「お姉ちゃんみたいな単細胞が締めを飾るなんて、不安でしかないってこと」

 

「ああ?」

 

「はあ?」

 

お互いの罵り合いに双子はまたいつもの喧嘩腰になって睨みあっている。

 

「ああ、もう!お前らはいつもいつも・・・」

 

今にも殴り合いになりそうな雰囲気にカズマが止めようとすると・・・

 

ピュ~~~・・・パァン!!パァン!!

 

花火の音が鳴り響き、3人はそちらに視線を向ける。次々と花火が夜空に弾け、祭りをさらに賑わせている。

 

「あ・・・花火・・・。きれい・・・今回も打ち上げたんだ」

 

「・・・はあ。なんか、あんたに喧嘩を売るのがバカらしくなってきたわ・・・」

 

「それはこっちのセリフだっつーの」

 

(ほっ・・・)

 

双子の喧嘩が花火で止まってほっとするカズマ。

 

「あー、ていうか喉乾いた。お姉ちゃん、なんか買ってきてよ」

 

「はあ?なんで私が?あんたが行けばいいでしょうが」

 

「ごはんから何まで私が出して当たり前とか考えてない?何でもかんでも思い通りになると思ったら大間違いだよ」

 

「あ?」

 

「は?」

 

せっかく収まったと思っていた喧嘩が些細なことでまた始まろうとした時・・・

 

パァン!パァン!パァン!

 

「・・・よしわかった。ならここは公平にジャンケンといきましょう」

 

花火の音で収まり、平和的にジャンケンで解決を提案するアカメ。

 

「はんっ、いいよ。ジャンケンでも私の方が上手だってことを教えてあげるよ」

 

「寝言は寝て言いなさい。ジャンケンで軽くひねってあげる」

 

双子は互いに睨みあい、数秒の時間が経った後、無言でジャンケンを行う。しかし、お互いに出すものが同じなためあいこが何回も何回も続く。

 

(・・・俺は何を見せられてるんだ・・・?)

 

突然のジャンケン、何回も続くあいこを見せられて、カズマは少しうんざり気味だ。そんな2人の攻防もちょうど今終わった。アカメがチョキでティアがグーを出した。よって勝者はティアとなった。

 

「よっしゃ私の勝ち!!」

 

「ちいぃぃぃ!!」

 

「はいというわけで飲み物買ってきてね。私コークでいいから」

 

「あ、ついでに俺の分も頼むな」

 

勝者のティアはドヤ顔をしながらアカメにパシリを頼んだ。ついでにカズマも恩着せがましくも頼んだ。

 

「この私をパシらせて・・・!覚えてなさい・・・!」

 

アカメは忌々しそうな顔をティアとカズマに向けた後、渋々ながら飲み物を買いに向かった。

 

「・・・なぁ、今さらながらだけど、喧嘩の原因はお前らの煽り合いが大半なんだから姉の挑発行為はやめてくれないか?」

 

「無理。そもそも先に挑発してくるのはあっちなんだから私は悪くないよ」

 

「そうですか・・・」

 

なんとか説得して喧嘩の回数を減少しようとしたカズマだが、予想通りの解答がきてがっくりする。

 

「それよりさ、どう?記念祭?楽しかった?」

 

「どうって・・・まぁ、楽しかったけど・・・」

 

「はは、だよね。・・・今日は大事な日だもの・・・楽しいものであってもらわないと困る」

 

「その発言、なんか意味ありげだな」

 

「うん。だって記念祭はお父さんとお母さんの結婚記念日だもん」

 

「そっか・・・て、え?」

 

さらっと重要なことを口にしたカズマは軽く流しそうになったが面を喰らった表情になる。

 

「私たちの両親はこの記念祭で結婚したらしいの。だからお頭にとっても私たちにとっても、この記念祭は特別なものなの」

 

「えっと・・・ご両親は?」

 

「カテジナから聞いてるよね?私たちがお頭に育てられたって。つまりはそういうこと。名前も知らない。お母さんはどこかにいるってことはわかってるけどね」

 

ネクサスに育てられた・・・それ即ち、双子の両親はいないことを指している。いきなり重い話を出されてカズマはどう反応すればいいか困っている。

 

「どうしてお母さんが私たちを置いて行っちゃったのかはわからない。けど・・・お頭は言ってたんだ。お母さんはこの記念祭を楽しみにしていたって。それってお父さんとの思い出を覚えてるってことだと思うの。なら、この記念祭を盛り上げていけば、噂を聞きつけてお母さんは戻ってくる。私はそう考えてる」

 

ティアはカズマの隣に立って柵を掴んで打ちあがる花火を見つめる。

 

「私はお母さんに会いたい。そのためにできることはなんだってする。だって・・・血の繋がった家族だもん。会いたいって気持ちに嘘なんてつけないでしょ?」

 

ティアの気持ちにカズマに考えさせられるものがあった。家族に会いたいという気持ち・・・それが自分にはもう叶えられないものであるがゆえ。何せカズマは日本で一度死んでこの世界に転生したのだから。もう会うことは叶わないだろう。

 

(母親に会いたい・・・か。そうだよな・・・。どんな形でも、自分を生んでくれたわけだしな。・・・今にして思えば俺、全然親孝行できなかったな・・・)

 

こんな事なら、引きこもってばかりいないで親孝行すればよかったなと、若干ながら後悔する。だからこそ、ティアの考え方に尊敬できるのかもしれない。

 

「と、ごめん。こんな話、つまんなかったでしょ?」

 

「何言ってんだよ?いい話じゃないか。むしろ、今の話で自分がどんだけ親不孝なのかって思い知らされたんだ。お前のこと、少しは見直したぜ」

 

「え・・・そ、そう・・・?あ、ありがとう・・・///」

 

まさか褒められるとは思ってなかったのか、ティアはカズマの言葉に少し照れている。

 

「なんだよ、全然らしくないじゃん。どうしたの?」

 

「なんてことないさ。ただかわいいなって思っただけだよ」

 

「か・・・!!?」

 

まさかカズマの口から自分に向けてそんな言葉が出てくるとは思わずティアは朱に染まった顔はさらに赤くなる。

 

「ま、またまたそんな・・・どうせからかってるだけでしょ?」

 

「お前な・・・俺が本心で言ってることがそんなにおかしいか?」

 

「だ、だから質が悪いんだよ!だいたいカズマはさぁ・・・」

 

カズマから褒め慣れていないティアは頬を赤くしたままカズマに詰め寄ろうとする。

 

ガッ!

 

「きゃっ!」

 

「うおっ⁉」

 

だがそこで自分のつま先で躓いてしまい、カズマを押し倒してしまう形でティアは転んでしまう。その結果、倒れたカズマにティアが跨がっている状態となる。しかも2人の顔の距離は近い。そして、心なしかティアの顔は赤い。

 

「・・・カズマってほんっっっとうにずるいよね。普段はカッコつけで平然とゲス行為をしたりするパンツ脱がせ魔のクズマのくせに。・・・でも、なんだかんだ言っても私たちを見捨てないでくれるし、ここぞって時に頼りになる。なんだかんだ言っても我がまま聞いてくれるカズマの優しさに、仲間として惹かれたし、尊敬もしてる。だからこそカズマには、この大事な記念祭で、日々の疲れを労いたかったんだ」

 

「・・・・・・」

 

「いつもありがとうね・・・カズマ」

 

ティアはカズマに跨った状態で笑みを浮かべ、感謝の言葉を紡いだ。そんな状況の中、急展開の連続にカズマは困惑する。

 

「・・・なあ、これはいったいどういう状況なんだ?いきなり突っかかってきて転んだかと思ったら・・・大事なことを打ち明けたり、俺に感謝してきたり・・・俺に跨ってきたり・・・お前こそどうしたというんだ?」

 

「その言葉・・・そっくりそのまま返すよ。私がカズマたちを労うことがそんなにおかしい?」

 

「いや・・・この態勢でそんなこと言われると・・・逆に反応に困るというか、なんと言うか・・・」

 

「くす・・・こういった展開になると男は襲いたがるものだけど・・・やっぱりカズマはそう言った度胸がないヘタレだね」

 

ティアは跨った状態のままおかしそうにクスクスと笑っている。というより、意外にもまんざらでもない様子。この様子を見てカズマは考える。

 

(えっと・・・この状況・・・もしかして・・・ついに俺にもモテ期が来たのか・・・⁉)

 

先ほどまでのティアへの尊敬、親孝行できなかった恥はどこへやら、カズマは変な期待を抱き始めた。そう思って、ティアの顔をじっと見つめ続けていると・・・

 

ヴゥー!!!ヴゥー!!!ヴゥー!!!

 

『緊急事態発生!!緊急事態発生!!街に大量の虫型モンスターが発生!!混乱に乗じ、人型の虫モンスターも侵入!!非戦闘員、また住民の方は直ちに避難を!!冒険者の方は至急、モンスターの討伐を!!そして冒険者サトウカズマさん一行はすぐにギルドへ向かってください!!』

 

淡い期待をぶち壊すがごとく、緊急の放送が街全体に響き渡った。

 

「・・・ほらこんなもん!!!!!」

 

期待と雰囲気をぶち壊されたカズマは怒りの表情でブチギレて心からの叫びを発したのであった。




次回、このお邪魔虫に天誅を!
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