このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

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遅れながら、明けましておめでとうございます。

去年は投稿がかなり少なかったですが、今年はアニメ3期もありますし、たくさん書けたらいいなと思います。

さてさて、今回から新章突入でございます!

まずはOVAの話からでございます。その次にいよいよ本格的に紅伝説の幕開けでございます!




紅伝説!紅魔の里へレッツゴー!!
この素晴らしい芸術に祝福を!


アヌビスでの祝杯を終え、アクセルの街に戻ってきたカズマたち。冒険者ギルドではまたカズマが魔王軍の幹部を倒したことで噂が持ちきりである。そんな中双子はアクセルからアヌビスまでの行きと帰りの道中で手に入れた魔物の素材を持ってモンスターショップへ向かっていた。

 

「スターク討伐のおかげでアヌビスでできた借金返済。そのお釣りもまだまだたんまりあって、それプラスこの素材でさらに金が増える・・・もしかしたら、札束風呂なんてこともできるかもしれないわね・・・ふふふ」

 

「うちのパーティのことを考えると、そういうの期待しない方がいいよ。何かしら問題が起きるとすぐ借金するんだから」

 

またもお金に余裕ができたことにより、アカメは夢のある話を膨らませるが、現実的な考え方をするティアが水を差した。

 

「だいたい、数日たって今さら思い出して売りに行くとかバカじゃないの?素材絶対劣化してるから値段とかガタ落ちだよ」

 

「あんたこそバカ?素材が劣化したってねぇ、支払われる額は5倍よ。しかも、スタークの一部素材なんてそれこそ高値で売れるに決まってるわ」

 

「はぁ~~・・・ああ言えばこう言う・・・もういいよ。こんなことで揉め事なんてしたくないし」

 

「だったら初めから口出ししないでくれるかしらこのリアリストの理想主義者」

 

「はあ?リアリストの理想主義って何?意味不明なんだけど?変なこと言わないでくれる?このドSの守銭奴」

 

「ああん?」

 

「はあん?」

 

揉め事にしたくないと言っておきながら結局終始睨みあいをする双子。相変わらず仲がいいのか悪いのかハッキリしない双子である。睨みあっている間にもモンスターショップに辿り着いた。

 

「はん!見てなさい、絶対いい値で買い取ってもらうわ」

 

「はいはい、期待しないで見ててあげるから」

 

今日も今日とていがみ合いながら双子はモンスターショップに入っていく。

 

「マホ、ちょっと素材を・・・」

 

店に入る双子を出迎えたのは・・・

 

「ようこそいらっしゃいませ。買い物ですか?買取ですか?それとも・・・わ・た・しですか?」

 

アヌビスでかなりお世話になったリュドミラであった。もう会うことは叶わないであろうと思っていた人物が目の前にいて、双子は目をぱちくりさせている。

 

「おお、お前らか。ちょうどいいタイミングで来たな」

 

双子が唖然としていると、カウンターの方からマホがやってきた。

 

「・・・ねぇちょっと、なんでリュドミラがここにいるの?里に帰ったはずじゃなかったの?」

 

「質問。いつ誰がそんなことを言いましたか?」

 

「は?違うの?」

 

「そのことでな・・・重要なお知らせがある」

 

双子の疑問を応えるように、マホはリュドミラの頭上にライトを照らし合わせ、重大発表をする。

 

「なんと!リュドミラが我がモンスターショップの栄誉ある店員第1号となった!はい拍手!」

 

「オーダー、拍手を実行」

 

この場合、拍手は双子が送るべきだがなぜかリュドミラが拍手を送っている。リュドミラが店員になったと言われても、双子は未だに唖然としたままである。

 

 

ーえ~・・・?ー

 

 

店員と言われてもいまいち状況が呑み込めていない双子にマホが一から説明する。

 

「ミラ・・・ああ、リュドミラな、実は就職先を探してたみたいでな。いくつかの都会でバイトをしてたみたいなんだが・・・まぁ、なんだ。アグレッシブな行動がかなり目立ったらしくて全部クビにされたらしんだよ」

 

「やっぱ問題のある奴だったのね・・・」

 

「この街にはヤバい奴しか集まらないの?」

 

リュドミラの詳細は詳しくない双子はマホの説明で彼女にも何かしらの問題があると察し、頭の中でアクセルの街がヤバい奴、変人の集まりという認識が強まっていく。実際には事実だが。

 

「で、アヌビスで途方に暮れてたところをたまたま帰る予定だったオレが拾ってきたってわけだ」

 

「拾ってきたってそんな犬みたいに・・・大丈夫なの?問題とか起きたらどうすんの?」

 

「・・・まぁ、いざってなったらオレも責任を取るけど・・・そうならないことを祈るよ」

 

「ヤバい奴ならその祈りも無駄になるかもね」

 

問題を起きることを前提に話しているティアに対し、マホは遠い目をしながら素材鑑定の仕事をこなしているリュドミラを見つめる。マホの願いを一蹴するようにアカメが一言呟いた。

 

「まぁいいや。それよりも、お前らにちょっと頼みたいことがあるんだよ」

 

「「頼み?」」

 

頼みと言われて首を傾げる2人の前にマホは魔導カメラを取り出し、机の上に置く。

 

「ある遺跡にゴーレムが出現したらしいんだが、困ったことに誰かが討伐クエストを出しやがったんだ。けど今さらクエストキャンセルさせるわけにもいかなくてよ。そこで頼みだ。誰かがゴーレムを討伐する前にこの魔導カメラでゴーレムの姿を撮ってきてくれ」

 

「え?それってモンスターの生態調査?それを私たちに?」

 

「はあ?なんでよ?あんたが行けばいいでしょ?」

 

「そうしたいのは山々だが、今日から働き始めたミラを放置するわけにもいかなくてよ。それにミラはまだ研修段階だ。ある程度業務をこなすまでしばらくは魔物調査を休むことにしたんだ。だから頼んでんだよ」

 

「私はいいんだけど、お姉ちゃんや皆が何て言うか・・・」

 

モンスター調査の依頼に対し、ティアは引き受けてもいいと言うが、アカメは受けたくない様子だ。

 

「あのね、私は今日あんたんとこで素材売って得た金で札束風呂に浸かってのんびりしたいのよ。労働なんかする気はないわ」

 

「まぁそう言うなって。受けてくれたら前払いで今日の素材の額を10倍にしてやるし、成功報酬も上乗せしてやっからよ」

 

「よしやりましょう」

 

「早!やっぱ守銭奴・・・」

 

今日の素材で得る額が10倍、さらに成功報酬も多く渡されると聞いてアカメは180度の掌返しをした。

 

「他の連中にはゴーレム退治っていや食いつくだろ。頼んだぞー」

 

とにかくマホは双子たちにゴーレム退治(調査)を頼み込み、前払いである素材額10倍を引き渡した。これだけでもかなりの額であるため、思わぬ儲けとなったのであった。

 

 

ーこのすばー

 

 

大金を手にした双子は屋敷に戻り、アクアたちに調査という名目を話さず、ゴーレム退治を提案した。ちなみにカズマはギルドにいるため今は不在だ。ゴーレム退治の話にアクアはかなり消極的・・・というより、働きたくないために全力で拒否った。

 

「はああああ!!?ゴーレム退治!!?バカなの?バカなんじゃないの!!?私は嫌よ。もうお金にも困ってないし、このままのんびり暮らすの!」

 

「あんたこそバカ?このままぐうたらしてたら身体なまるを通り越してデブ豚になるわよ?一冒険者としての自覚がないって思われたいの?」

 

「別にいいじゃないデブ豚で自覚がなくたって!ていうか、それは私じゃなくてクエストは嫌だ、冒険は嫌だって駄々こねてるカズマさんに言ってよ!!」

 

「あれは放っておいて・・・ダクネスとめぐみんはどう?」

 

アカメとアクアはクエストで醜い口論をしてやいやい言い合っている。2人の口論は置いておいて、ティアはダクネスとめぐみんの意見を聞く。

 

「ゴーレムといえば、あの重くて固くて大きい奴か!ガツンと強烈なのをねじ込んでくるたくましい奴だな!私はもちろん受けて立つ!」

 

「まぁダクネスは説明はいらないか。めぐみんは・・・て、あれ?なんか消極的じゃない?」

 

ダクネスは言わずもがなだが、めぐみんはちょむすけと戯れていて、ゴーレム退治に消極的だ。普段のめぐみんらしくない反応だ。

 

「今の私は、ゴーレムぐらいの太さや固さでは満足できませんね」

 

「えっ!!?あの短気で喧嘩っ早いめぐみんが!!?」

 

ゴーレムならば乗ると思っていたのに爆裂する相手はちゃんと選んでいることに対し、ティアは驚愕する。

 

「私を猛牛かバーサーカーだと思っているのですか!!?私にだって爆裂魔法を放つ相手を選ぶ・・・」

 

ティアの言い分に文句を言おうとしためぐみんだったが、ティアは左手の指で彼女の唇を止め、右手でちっちっちっのしぐさを取る。

 

「わかってないなぁめぐみんは。確かにゴーレムは手間取るし、お姉ちゃんだって相手によっては2、3撃で倒せない相手だけど、めぐみんならどんなゴーレムでも1発でしょ?これさえ倒せば、ただでさえ高い名声がさらに上がるのは間違いなし!やがて語れるめぐみん伝説の1ページが刻まれる歴史的瞬間、見てみたいなぁ~」

 

ティアはうまいことめぐみんを誘導するような発言をしながらちらちら見て様子を窺う。おだてられためぐみんはまんざらでもなさそうにうきうきした様子である。

 

「仕方ありませんねぇ!!さあ行きましょう!!すぐに行きましょう!!」

 

まんまと乗せられためぐみんは先ほどとは打って変わってやる気に満ち溢れている。

 

「チョロ」

 

「めぐみんったらどうしてそんなにチョロいの?」

 

一部始終を見ていたアカメとアクアはめぐみんのチョロさに引いていた。

 

「さて、と・・・後はカズマだけなんだけど・・・どうしたもんかなぁ~・・・」

 

「もういっそのこと無理やり引きずって連れて行きましょうそうしましょう」

 

「そして返り討ちに遭うんですねわかります」

 

「はあ?私がやられるって言いたいの?この愚妹。あれはちょっと油断しただけよ。小細工さえなければあんな雑魚・・・」

 

「いやいやいや・・・カズマの小細工舐めちゃいけませんよ姉御ぉ。このあっしの考えを先回るほどの頭脳でげすからぁ」

 

「何ふざけてんのよ?それ誰の真似よ?やめなさいようざったいわねぇ」

 

ふざけた会話を挟みつつ、カズマをどう説得するか考える双子。するとちょうどカズマが帰ってきた。

 

「おーいお前らー、クエストに行くぞー。ゴーレム退治のクエストなんだが・・・」

 

金が入った途端にだらだらとニート生活を送ってきたカズマが急にクエストに行こうという話を聞いた途端、双子は疑うように目をぱちくりしている。

 

「ん?なんだよ?なんか文句あんのか?」

 

「いや・・・今までぐうたら生活送ってた男がどういう風の吹き回しかなーって思って・・・」

 

「ベ・・・ベツニナンデモナイデスヨ?」

 

ティアの言葉に反応するように、カズマは片言になり、口笛まで吹き始めた。絶対何かあった時の反応である。理由が何であれ、ゴーレム退治のクエストに行くのならば都合がいいため何も聞かないことにした双子。

 

「・・・ま、理由は何であれ、ゴーレム退治のクエストは都合がいいわ。今ちょうどその話をしてたのよ」

 

「え?・・・あ、さてはマホからなんか頼まれたな?ま、こっちも好都合だからいいけど」

 

「よし、じゃあさっそく準備に取り掛かり・・・」

 

説得の手間が省け、クエストの準備に取り掛かるカズマたち一行。だが1人だけ、乗り気じゃない者がいる。

 

「ねぇ、私も行く流れになってるけど私は嫌よ!私は留守番してるからね!」

 

そう、アクアだ。あくまでも彼女は留守番を決め込むつもりのようだ。当然アクアの楽をアカメが許すわけがない。

 

「・・・あんたと議論するのも飽きたわ。来ないっていうのなら・・・こっちにも考えがあるわ」

 

「な、何よ・・・なんか嫌な予感がするんですけど・・・」

 

 

ーいーーーーやーーーーーーーー!!!!ー

 

 

『討伐(調査)クエスト!!

遺跡を守るゴーレムを退治せよ!!』

 

「うあああああああああ!!!返してよ!!大事なステッキを返してよ!!」

 

「・・・正直ここまでうまくいくとは思わなかったわ」

 

ゴーレムが現れるという遺跡にやってきたカズマパーティ。そして最後まで嫌々と言っていたアクアはアカメに盗まれたステッキを取り返そうと奮闘している。そう、アクアが動かす方法とは、彼女がとても大事にしているものを盗むことだ。大事なものが多いアクアならば、この方法は絶大だろう。

 

「あそこかぁ」

 

「ふむ・・・一見しただけでは古代ゴーレムとやらはいないようだが・・・」

 

「どこかに行ってしまったのでしょうか?困りますよ!我が伝説を記した1ページが減るではないですか!!」

 

「私も一応マホから頼まれたから出てきてもらわないと困るんだよなぁ・・・」

 

「少し近づいてみるか」

 

一目見ただけではゴーレムは見当たらないため、少し近づいて様子を見てみることにするカズマたち。

 

「ねぇちょっといい加減返しなさいよこの本物の泥棒!!」

 

「だああああ!!もう!!いい加減うっざいわねぇ!!!そんなにこれが大事ならもっと大事に扱いなさいよ!!あんたこれ、物干し竿にしてたじゃないこのマヌケ!!!」

 

いい加減突っかかってくるアクアが鬱陶しく感じたアカメは盗んだステッキを彼女にステッキを返却する。ステッキもどうやらぞんざいに扱っていたらしいから今回に至っては盗まれる原因を作るアクアが悪いとしか言いようがない。

 

「もうここまで来たからには逃げられないわよ!めぐみんの魔法で1撃なんだから安心しなさいよ!」

 

「・・・確かにそれもそうね。まぁいいわ。どうせめぐみんにやられるだけの雑魚なら、ちゃっちゃと片付けて帰りましょう!」

 

「・・・だからどうしてお前はそんな余計なフラグを立てるのが好きなんだ⁉」

 

盛大なフラグをぶちかまし、開き直るアクアにカズマがツッコミを入れる。

 

「よし。では私が遺跡へ先行しよう。ゴーレムが潜んでいるかもしれん。こういう時こそ、私を頼りにしてくれ」

 

「そうだな。お前いつも肝心な時役に立たないもんな」

 

「えっ!!?」

 

意気揚々と先行するダクネスだが、カズマの一言によってショックを受けた。

 

「えーっと、双子は・・・ゴーレムの写真を収めればそれでいいんだっけか?」

 

「そうだね。ゴーレムの動きを何枚か撮ればお仕事終わりって感じかな。その後のことはお好きにどうぞって言ってたし」

 

「じゃあめぐみんは、遺跡から離れたところで待機な」

 

「任せてください!見ててくださいね、ティア!あの遺跡ごとまとめて吹き飛ばしてみせましょう!」

 

「うん、そこまで頼んでないよ」

 

ドゴォンッ!!

 

「うおわっ!!?」

 

呑気に話し込んでいると、突如として強い地響きが鳴り、大地が地震のように揺れ動いた。

 

「ねぇ、なんか揺れてるんですけど・・・」

 

大地が揺れている中、遺跡の入り口の地面より、巨大な何かが姿を現そうとしていた。

 

「カズマ!これはさすがの私でも、ちょっとまずい気がするのだが!」

 

「姿を現したわよ!」

 

完全に姿を現した巨大な何かにカズマたちは驚愕で目を見開かせていた。現れたその巨体は・・・頭にアンテナのようなものが2つ備えており、全身鉄ように輝く黒光りした巨人だ。

 

「か、カズマさん・・・これってまずいんじゃないかしら・・・?」

 

「カズマこれ・・・」

 

「はい・・・」

 

「何ですか・・・?」

 

「あんなの・・・今まで見たことない・・・」

 

カズマたちの前に現れた巨人とは・・・日本のアニメなどでよく見る巨大人型ロボットであった。

 

「どー見てもゴーレムじゃなくて、巨大人型ロボットじゃねぇかぁ!!これ絶対、転生した日本人が関わってるだろぉ!!!」

 

カズマたちが驚愕している間にも巨大ロボットは動き出し、カズマたちに近づいてくる。カズマたちは巨大ロボットから逃げるように離れ、ダクネスはこれから来る攻撃に備え、構えている。巨大ロボットはダクネスに向けて拳を放った。ダクネスはその拳を両腕や身体を使ってしっかりと受け止める。

 

「大丈夫か!ダクネスー!」

 

「・・・?」

 

巨大ロボットの拳を受け止めたダクネスはこの一撃に対し、違和感を覚えた。

 

「どうした⁉」

 

「カズマダメだ!!こいつ案外中身が軽い!!これでは重い一撃が期待できない!!」

 

「え?」

 

「だが、こうも巨大な相手に成す術なく蹂躙されるというのも、それで・・・///」

 

巨大ロボットの中身が意外に軽いとわかり、わざと敗れた際に蹂躙される姿を妄想するダクネスは興奮している。このままではいろいろとまずい。

 

「おおいめぐみん!!あいつがいろいろな意味で手遅れになる前に爆裂魔法だ!!」

 

「嫌です!!!!」

 

「よぉーし!!!じゃあ・・・今なんてった?」

 

カズマはめぐみんに爆裂魔法の指示を出したが、めぐみんは全力の拒否の意思を示した。よく見るとめぐみんの表情はかなり輝いていた。

 

「あーんなかっこいいゴーレムを破壊するだなんてとんでもない!!カズマカズマ!あれをどうにか捕獲して持って帰りましょう!!」

 

「この非常時に何言ってんだ!!??」

 

「ちゃんと餌もやりますし、手入れもきちんとします!!散歩も躾も欠かしませんからぁ!!」

 

「飼うってか!!?あのでかいのを飼うってか!!?お前の頭どうなってんだーーーー!!!」

 

どうやらあのロボットはめぐみんの琴線を深く刺激されたようで、持って帰りたがっているようだ。アレクサンダーはともかく、あのような巨大ロボットを飼うという発言にカズマは頭を抱える。めぐみんの飼う発言に対し、ティアは顔を俯かせている。

 

「めぐみん・・・」

 

「ティアからも何か言ってくれ!!アレクサンダーはともかく、あんなでかいのは・・・」

 

「それ、ナイスアイディア!!!!」

 

「ええええええ!!!??」

 

否定するのかと思いきやまさかのめぐみんの考えに全肯定したティアにカズマは驚愕の声を上げる。

 

「だって見てよあれ!!あのフォルム!あの輝き!ちょーぜつかっこいいじゃん!!写真には何枚か収めたけど、実物と比べればこんな写真、への河童だよ!!カズマカズマ、どうにか悪知恵を働かせて捕獲しようそうしよう!!」

 

「ウジでも湧いてんのかお前の頭はあああああああ!!!」

 

パーティの中で腹黒以外まともなティアが中二心を拗らせたことにカズマは絶叫する。

 

「たく、何バカやってんのよ。写真ももう十分納まったんだし、とっとと壊しなさいよ。あんたができないってんなら私が・・・」

 

いつの間にか魔導カメラに写真を収め終えたアカメはもう十分だと言わんばかりにロボットを壊しに向かうが・・・

 

「ダメええええええええ!!!」

 

「させませんよおおおおおおお!!!」

 

「ぐべら!!??」

 

ティアとめぐみんがアカメの両足を掴みかかり、ロボットの破壊を阻止しようとする。両足を掴まれたアカメはそのまま転び、地面と激突する。

 

「バカなの?何バカなことを言っちゃってるのお姉ちゃん?あれは全人類にとっての芸術品だよ?至高の芸術だよ?それを壊すなんてもったいない!!」

 

「そうですよ!アカメには芸術を楽しむという感性がないんですか⁉」

 

「あんたらの美学と全人類の美学を一緒にするんじゃないわよこのすっとこどっこい共!!」

 

「どっちでもいいからさっさと片付けろよぉ!!!」

 

巨大ロボットを壊す壊さないの口論で言い合いに発展しそうになる3人に早くするように急かすカズマ。

 

「ちょっとカズマ!!ダクネスが!!」

 

バカをやってる間にも巨大ロボットはダクネスの鎧をひん剥いた。

 

「にゅううううううん!!!」

 

鎧を剥がされ、無防備となるダクネスに巨大ロボットは拳を振り下ろし・・・

 

ボインッ、ボイーン・・・

 

・・・と思いきや指を上下に動かしてダクネスの胸を揺らしている。それも何度も何度も。

 

「や・・・やめろおぉぉぉ・・・♡け、けしからぁん♡」

 

やられているというのに、興奮して喜んでいるダクネス。

 

「・・・やっぱりもうちょっと様子を見ようか」

 

「「「この男!!!!」」」

 

鼻の下を伸ばしているカズマはもっと眺めたいがゆえに様子見を決め込もうとしている。

 

「・・・とはいえ、どうしたものでしょう・・・ダクネスが非常事態なのですが・・・」

 

「うん・・・あの黒光りと造形はひっじょーーーーに魅力的だからなぁ・・・」

 

「だから私がやるって・・・」

 

「「それだけはダメ(です)!!」」

 

「なんでよ!!」

 

ダクネスがピンチなので助けたい気持ちはあるが、ロボットを手放すのは抵抗があるめぐみんとティア。アカメが壊すと提案するが、2人はそれを全力で拒否している。

 

「今度私があれよりかっこいいのを作ってあげるから、何とかしてーーー!!」

 

「えっ!!?それ、マジ!!?言質取るからね!!?」

 

「その言葉忘れないでくださいね!!?あれよりかっこいいやつですよ!!?」

 

アクアの必死の説得により、何とかロボットを破壊する方針に変更することに成功した。

 

「もっと・・・もっとだ!!」

 

「私たちが魔法の詠唱を終わる前に連れ戻すよ!」

 

「ああ、頼む!」

 

双子はまだロボットに弄ばれ続けているダクネスを連れ戻そうと動き出す。その間にもめぐみんは爆裂魔法の詠唱を唱える。

 

「我を取り巻く戒律のるつぼよ、深淵の血肉が咆哮する!!今紅き波動の一部となれ!!!」

 

めぐみんが詠唱を終えたところで双子はダクネスの両腕を掴み、引きずろうとするが、ダクネスは無駄に抵抗している。

 

「ほらダクネス!!爆裂魔法が来るよ!早く!!」

 

「ああ!!お、お構いなく!!」

 

「お構いなくじゃないわよ!!ふざけたこと言ってると殺すわよ・・・って、わああああああ!!!」

 

取っ組み合いの揉め合いをしている間にもロボットの指が迫ってきた。そしてロボットはダクネスの胸を揺らし、3人は弾かれるように吹っ飛ばされる。

 

「「あーーーーーーーー!!!」」

 

「胸の感触ーーーーーー!!!」

 

「今だ、めぐみん!!!!」

 

「穿て!!!!エクスプロージョン!!!!!!」

 

ドオオオオオオオオオオン!!!!!!!

 

3人が吹っ飛ばされたタイミングを見計らい、めぐみんの爆裂魔法が炸裂した。大爆発によって遺跡前の荒野はクレーターが出来上がった。慌ただしいクエストが終わり、カズマは倒れ伏し、アカメは巻き添えを喰らった原因であるダクネスに片羽絞をお見舞いしている。

 

「ああ!!あああああ!!!いい!!いいぞお!!!」

 

「このクソッタレ!!!私まで巻き込んでんじゃないわよ!!!あんたの脳は筋肉お花畑でできたんじゃないの!!?死ね!!!!」

 

「くううううん!!!こんな猛攻は久しぶりなうえに下衆な視線に晒され、とどめにこの罵声に激しい仕打ち!!!これほどまで充実したクエストは久しぶりだーーーーーー!!!!」

 

「見てねぇし!!!下衆な視線なんて向けてないからな!!?」

 

激しい罵声と締め技を喰らっているというのにやはりドMだから喜んでいるダクネス。そして下衆な視線というワードに反応したカズマは必死に否定している。一方、ティア、アクアにおんぶされているめぐみんは奇跡的に形が残ったロボットに近づき、目を輝かせている。

 

「わはぁ!!!形まだ保ってる!!今なら部品をお持ち帰りできそうだよめぐみん!!」

 

「アクア!!ゴーレムの部品を持って帰るのです!!そうすれば、完成も早まることでしょう!!」

 

「ええ!!?こんな重そうなものどうやって運ぶのよ!!?こんなのアカメでも無理よ!!?うちに帰ったら牛乳パックで変形合体デンデロメイデン作ってあげるから、我慢してよ~」

 

「「牛乳パック?」」

 

「たく・・・」

 

相変わらずのパーティにカズマが呆れていると、ロボットの目が何やらチカチカと光り出した。音もピッピッピッピッと音を鳴らす。

 

(あれ~?ひょっとしてヤバい奴じゃ・・・)

 

嫌な予感を察したカズマだが、他のメンバーは気づいていない。

 

「まぁ今回はこれだけの相手に無事だったのはすごいことだわ!さーて、今日はみんな頑張ったんだし、さっさと帰っておいしいものでも・・・」

 

「バカ!!!どうしてそうポンポンポンポンフラグ立てんだよおい!!!」

 

アクアが盛大なフラグを立てた瞬間・・・

 

ドカーーーーーーーン!!!!

 

盛大な大爆発を引き起こしたので、全員無事とはいかなかったのであった。

 

その後双子は撮ってきた写真をマホたち(一部ティアが掠め取った)に渡し、大量の報酬を手に入れ、また儲かったのであった。ちなみにリュドミラは非常に珍しがっていたが、マホは終始微妙な顔をしていたそうな。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

ゴーレム退治(調査)のクエストが終わり、カズマ以外のメンバーは屋敷でのんびりと過ごしていた。ダクネスは紅茶を飲んでリラックス、アカメは読書、アクアは変形合体デンデロメイデンを牛乳パックで製造し、めぐみんとティアはその完成を今か今かと楽しみに待っている。そんな時にカズマが帰ってきて、クエストへ向かうという話が出たのだが・・・

 

「はあああああ!!?またおかしなクエストを受けてきたですって!!?バカなの!!?カズマってば賢いふりしたバカだったの!!?見ての通り今の私は忙しいの!変な見栄張ってないで、ギルドに行ってクエストをキャンセルしてきなさいな!!」

 

「アクアの言うとおりですよ!今はそんなものにかまけてる余裕はないのです!!」

 

「そのとーーり!!さあ、そんな依頼はほっといて早く!!デンデロメイデンを!!早く変形合体デンデロメイデンを完成させて!!もう禁断症状でおかしくなる!!」

 

変なことを言っているティアはほっといて、カズマは未完成とはいえ、牛乳パックで作ったとは思えないほどのきれいな造形をしているデンデロメイデンを見て、アクアに質問する。

 

「なぁ、それって本当に牛乳パックなんだよな?」

 

「そうよ?カズマもほしいの?でもダメよ?変形合体デンデロメイデンはこの世にたった1体だけなの!欲しければ2人に交渉しなさいな」

 

(こいつ、本当に他の道に進んだ方が楽に生きていけるんじゃないか?)

 

交渉云々はともかく、アクアのこの才能にカズマは冒険者やらずに造形師やらなにやらになった方がいいのではと考える。

 

「まぁとりあえず、どんな依頼なのか話だけでも聞こうではないか。強敵が相手なら・・・私としては受けるのもやぶさかではない!!」

 

「あんたの意見は聞いてないわよカス」

 

「にゅううん!!!」

 

クエストを受ける気満々なダクネスだが、アカメの毒舌に興奮して押し黙る。

 

「で?どんな内容よ?つまんない依頼だったら受けないし、受けさせようとした奴ボコボコにするから」

 

「おいやめろ!今回の依頼はこの前の遺跡の調査。遺跡を守るゴーレムを倒した功績として、調査中に発見したお宝は全部持ってっていいっておいしい・・・」

 

「受けましょう!!!」

 

お宝と聞いた途端、ずっと渋っていたアクアがやる気を出してクエストを受けることを承諾したのだった。

 

ーこ・の・す・ば!ー

 

『調査クエスト!!

遺跡の中を調査せよ!!

難易度不明!!』

 

結局全員で遺跡にやってきたのだが、いざやってきたとなると、非常に面倒くさくなってきたアクア。

 

「ねぇ、ちょこちょこっと中を覗いてそれで済ませればいいんじゃない?具体的には潜伏スキルを持ったカズマさんが1人で探索してくるとか」

 

「俺は別にそれでもいいけど、中で見つけたお宝独り占めするからな」

 

「行きましょう!!」

 

お宝を独り占めされたくないアクアは意気揚々とやる気を出し、遺跡の中へと入るのであった。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

遺跡の中の調査を開始したカズマたちであったが、特に目新しいものはなかった。強いてあげるとすれば・・・

 

「私でも理解が追い付かない魔道具ばかりです。何に使うものなのでしょうか・・・?」

 

「後これは何?ブルータルアリゲーターの模型?にしては全然似てないし・・・」

 

「こっちはカードゲームがあるけど・・・どこのメーカーよ?なんか人間が写ってるけど・・・」

 

「これは・・・かすかに残ってる香りからして、香水入れか」

 

(トイレの芳香剤じゃねぇか!!)

 

埃は被りまくっているが、日本人から見れば馴染みのあるおもちゃやカードゲーム、トイレの芳香剤が出てきた。カズマはこれだけでもここがなんであるか核心をついた。

 

(間違いない!!ここは転生した日本人が作った施設だ!!)

 

そう、ここは日本からこの世界に転生してきた日本人が作り上げた施設だったのだ。だからカズマにとって馴染み深いおもちゃやらなにやらが出てきたのだ。すると、ティアはこの施設内で敵の出現を感知した。

 

「みんな!敵感知スキルに反応があったよ!」

 

「どうせこの間倒したゴーレムの小さい奴が出てくるんじゃないかしら?となればダクネスがいれば大丈夫ね。ダクネスが敵を引き付けてる隙に、カズマとアカメがやっつけるの。建物内のゴーレムじゃ私とめぐみんじゃどうすることもできないし、攻撃できないティアは役立たずだから後ろで応援してるわね!」

 

「誰が役立たずじゃい!」

 

「応援してるよじゃなく、お前は支援魔法を使えよな!」

 

「冗談じゃないわよ!私の聖なる魔法は信者の子たちの祈りが力となっているのよ?ヒキニートや無宗教者のために無駄遣いするわけにはいかないの・・・わあああああああ!!???」

 

楽観的かつ、支援魔法を渋ろうとしたアクアに小型人型ゴーレムが襲い掛かってきた。それも大量にびっしりと。しかも狙いはアクア一択だ。

 

「なんで⁉なんでいつも私にばっかり!みんな私のこと好きなの⁉」

 

「ダクネス、デコイだ!囮スキルを使え!」

 

「もう使っている!だが様子がおかしい!これはもしかして!」

 

「言うまでもなく、間違いなくそうよね」

 

「うん、この群がりようは絶対にそう」

 

ダクネスのデコイに無反応ということは、このゴーレムは神聖な魔力を持つアクアに反応するあれである。

 

「アクア!それはゴーレムに憑依しているゴーストか何かです!ゴーストは人型の物に取り付きますから、アンデットですよ、アンデット!」

 

「ゴッドブローーー!!!!!」

 

目の前に群がるゴーレムの中身がアンデットだとわかった途端にアクアはゴッドブローを放った。

 

「・・・ゴッドォ~・・・レクイエムゥ~・・・」

 

そしてアクアはなぜか拳法家のような口調で迷える魂たちを天へと送り届けるのであった。

 

 

ー今日は絶好調だなぁ~・・・ー

 

 

アンデット駆除が終わり、カズマたちは遺跡調査を再開。しかし、やはりというか、これといってめぼしいお宝は見つけられないでいた。そして残ったのは誰かが住んでいたであろう部屋だけである。

 

「結局、まだ宝物らしきものはありませんねぇ・・・」

 

「ここが最後の部屋らしいが・・・」

 

「せめて1つだけでも面白いものがあればいいけど・・・」

 

部屋の中を探索する中、カズマとティアはこの部屋の奥にある金庫のようなものを調べている。

 

「これ金庫か?ティア、施錠スキルでこれ開けられそうか?」

 

「これパスワード式じゃん。さすがにこういうのは無理。せめてヒントがあればいいんだけどねぇ・・・」

 

カズマとティアが金庫をどうやって開ければいいのかと考えていると、アクアがタンスから何かを見つけた。

 

「何これ?日記かしら?」

 

日記らしいものを見つけたアクアはその中身を確認する。日記に書かれた文字はこの世界の人間からすれば読めない文字・・・日本語で書かれていた。

 

「何ですかこれは?紅魔族の私でも知らない文字ですね」

 

「これ日本語ね」

 

「何?あんたこれ読めるの?なんて書いてあるのよ?」

 

(これを書いた人は、いったい何を思っていたのだろう?他人の日記を勝手に読むことに、僅かばかりの罪悪感を覚えるが・・・)

 

罪悪感を覚えるカズマであったが、金庫を開けるヒントがあるのでないかと思い、日記の内容に耳を傾ける。日本語が読めないアカメたちのためにも、アクアが日記を読み上げる。日記の内容はこうであった。

 

『異世界生活1日目。

この日、私は女神に頼まれ、この世界に降り立った。魔王を倒し、この世界を救うために。道は困難を極めるだろうが、俺の決意に揺るぎはない』

 

カズマはこの日記に書かれた言葉を聞いて、己を恥じた。同じ目的でこの世界に送られながら、自分は何をしてたのだと。今回のクエストを頼まれなければ、恐らく今日もだらだらと過ごしていたはずであると。

 

『異世界生活7日目。

女神様からもらった力を試してみた。それはいろいろと制約はあるものの、自らが望むものを創り出すという恐るべき能力だった。これがあれば世界も征服することもできるのではないだろうか?だが私の望みはただ1つ、魔王を倒し、この世界の人々を救うこと』

 

望むものを創り出す能力・・・確かにその力があれば世界征服は容易に達成されるであろう。だが日記の持ち主は世界を救おうという選択をした。その心意気にカズマは感動した。

 

『異世界生活113日目。

魔王に対抗できるものを創り出そうとするも難航している。というのも、能力についてくる制約が問題なのだ。モノ作りの際には強い思いを必要とする。創り出す物に、どれだけ強い思いを抱けるか。私が魔王を倒したいという思いはこの程度のものなのか?苦悶が続く』

 

日記には深く苦悩する様が綴られていたのが文字を見ればわかる。さらに日記の持ち主は何度もこの世界の文字を練習して覚えてきたのか、日本語が徐々に減り、やがてこの世界の文字が主流となってきている。

 

『わかっている。自分が本当に望むものは何なのかを。だが、魔王を倒したいというのも嘘ではない。私は悩んだ。いったいどうすればいいのだと。何度も何度も自分に問いかけた。そして・・・悩みに悩んだ末に・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔王討伐は、諦めることにした』

 

先ほどまで緊迫していたカズマたちの表情は一気に白けたものへと変わった。

 

『しょうがないよなぁ、だって俺元ニートだし。異世界に来たくらいで早々に中身が変わるわけないじゃん。俺はこれから好きに生きる。自分が本当に作りたいものだけ作ろう。まずは男の憧れ、美少女ロボットが欲しい。それから巨大ロボットもロマンだなぁ。よし、どっちも作っちゃおう!』

 

『巨大ロボ改め、巨大ゴーレムを作ってみたけどダメだ。搭乗できない。ちょっとだけ乗ってみたけど本当無理。気持ち悪い、軽くというか盛大に吐いたわ。でも作ったものはしょうがないしここ守らせとくことにした。おっと、自爆装置は外せないな』

 

『異世界生活289日目。

念願の美少女型ゴーレムの制作を開始。でも失敗ばかりだ。だって固いんだもん膝枕が。力加減もできないし、頭を撫でてもらった時首折れるかと思ったww。ついでに言うと致命的な欠陥があった。美少女型ゴーレムを作る際に最も重要なものが足りなかったんだよコンチクショウ!!巨大ゴーレムといいこいつといい、眼を離したすきに暴走を始めた。反抗期でも出たのかな?』

 

『異世界生活563日目。

もう1度原点に立ち返る。妥協することなく、自分の理想を追求したものを作ることにした。まず、俺が求めるのは、Mか?Sか?いや、ひとまずそれは置いとこう』

 

『異世界生活783日目。

違う!!!何が違うんだ!!??目鼻立ちか!!?髪型か!!?それとも造形そのものなのか!!?もう1度デザインから見直しだ!!ここで妥協してしまったら今までの努力が水の泡となる!!

あ、ちなみに俺Mだったわやべ、おいやべ!まぁひとまず、それは置いとこう』

 

(あれだ、わかった。こいつ絶対ダメな奴だ!!)

 

最初とは打って変わっての無駄な努力の使い方をしている日記の持ち主。もうこれだけでその人物がダメ人間であるとわかったカズマ。ただ判明したことといえば、外で守っていたあのロボットはこの日記の持ち主が作ったものであるという今となってははた迷惑なものだ。次のページを開いてみれば、日記の持ち主であろう髪の毛がびっしりと挟まっていた。

 

『異世界生活1230日目。

悟った。そうだよ、俺の力があれば美少女型ゴーレムに拘る必要ないじゃん。この力でどっかの技術大国に仕官しよう。高給もらって美人メイド雇えばいいじゃんやべぇテンション上がってきた!!!この世界に送ってくれた女神さま、あざーしたーーーー!!』

 

「お前かあああああああああああああ!!??」

 

この日記の内容から日記の持ち主がかのデストロイヤーの責任者であるのものであると悟ったカズマは思わず叫んだ。と、ここで日記に追伸があることに気付いた。内容はこうだ。

 

『追伸。もし誰かがこの日記を読んだのなら、ここに眠るゴーレムたちを大事にしてやってください。ちっとも言うこと聞かないけれど、みんなかわいい我が子です』

 

おそらく、そのゴーレムが眠っていると思われるのは・・・この金庫なのだろう。

 

 

ーこ・の・す・ば!ー

 

 

日記には金庫を開けるために必要なパスワードが乗ってあるため、カズマはこのパスワードを使って金庫を開けようと試みる。だがアクアは金庫の解放に消極的である。

 

「ねぇカズマ帰りましょう?もう調査終了でいいじゃない。この扉開けるとロクな目に合わないような気がするの」

 

「なーに言ってんだ。日記によれば、この先には美少女型ゴーレムが安置されてるんだぞ?あのでかいゴーレムみたいにいつ暴走するとも限らない。そんな危険なものを俺たちベテラン冒険者が放って帰れるか」

 

尤もなことを言うカズマにダクネスは意外そうな顔をしている。

 

「ほう?どうしたんだカズマ?いつものお前らしくもない」

 

「そうかい?」

 

「だがベテラン冒険者としての自覚に目覚めたのならいいことだな」

 

「ありがとう」

 

「ダクネス、騙されちゃダメだよ。あれ絶対嘘だから」

 

「大方、その美少女ゴーレムが欲しいんでしょこいつは」

 

「あ、バレた?」

 

「なっ!!?こ、この男は!!」

 

双子の言うとおり、カズマの狙いはその美少女型ゴーレムを手に入れることなのだ。バカな考えを起こしているカズマにアクアが説得しようとする。

 

「ねぇ、この後のオチなんて簡単に予想できるわ」

 

「言ってみ?」

 

「どうせすんごいのが出てきてダクネスが悶えて私が泣かされて、双子がまた喧嘩をして、めぐみんがカズマの制止も聞かずに全てを灰燼と化すのよ!」

 

「それはまずい」

 

「そして大事な施設を破壊したってことでなんやかんやで借金ができるの!」

 

「おいやめろよ。本当にそんな気がしてくる」

 

「失礼ですよアクア。いくら私だって、こんなところで魔法は放ちませんよ。ちゃんと外に出てから放ちます」

 

「おい、今なんてった?」

 

そうこう言っているうちにパスワードの入力を終え、金庫の鍵が開き扉が開かれた。金庫の中はとても広い。

 

「おい!カズマ見ろ!」

 

中央には何かの人影がガラスケースの中で見えている。おそらくあれが美少女型ゴーレムなのだろう。

 

「これこそが、この世界に送り込まれてきた先輩の美少女型ゴーレム!

(そう!男のロマンが詰まったガラスケースだ!!)」

 

スモークでよく見えないが、ガラスケースに入っている美少女ゴーレムにカズマは興奮を隠しきれていない。ガラスケースの隣にはおそらく美少女ゴーレムを目覚めさせるスイッチがある。めぐみんはこのスイッチをじっと見つめ、そのスイッチを・・・

 

ポンッ

 

押そうとしたところでカズマに止められる。

 

「おい、なぜ私を掴まえるのかを聞こうじゃないか」

 

「今から何をするつもりなのかを言ったら答えてやるよ」

 

2人の間に沈黙が流れ・・・めぐみんは必死にボタンを押そうと抵抗し、カズマは必死になって止める。

 

「そこにボタンがあるのなら、何が起こるのかわかっていても紅魔族としては押さないわけにはいかないじゃないですか!!」

 

「余計なことするんじゃねぇよ!!そういうのは最初に目覚めさせた奴が、『あなたがマスターですか?』とか言われんだよ!!いいか絶対に押すなよ!!?絶対だからな!!!」

 

ポチッ

 

「「あ・・・」」

 

カズマとめぐみんが戯れている間にもアクアがスイッチを押した。その瞬間、ガラスケースが開き、中からスモークが放たれる。

 

「ふわっ!!?わ、私は悪くないわよ?誰が悪いのかって言うのなら、絶対に押すなよなんて言い出したカズマのせいだからね!!」

 

「どっちにしろ押したことには変わらないんだよねぇ~」

 

「アクア、カズマ、死刑」

 

「なぁんでよ~~!!なんでいつもいつも下される刑が重いのアカメさん!!?」

 

「俺もかよ!!てか、余計なことしないとどうにかなっちまうのかお前は!!?」

 

「おいみんな!!私の後ろに下がれ・・・て、おい!!なんでアカメは私の前に立つんだやめろ!!」

 

カズマたちはダクネスの後ろに下がるがアカメだけ指示を無視してダクネスの前に立つ。スモークが放たれる中、ガラスケースから美少女型ゴーレムが現れた。長い赤髪に白いメッシュが入った美少女型と言うだけあって愛らしい美少女型ゴーレムだ。

 

「私のご主人様はどなたです?」

 

「俺です」

 

美少女ゴーレムの問いかけにカズマは前に出て間髪入れずに名乗り出た。

 

「この男!!何のためらいもなく言い切りましたよ!!」

 

「ええ。これ以上ないくらいに即答したわね」

 

「てかやっぱり思った通りだよチクショウ!」

 

「何がご主人様よ!ふざけんなこのクズ!!」

 

「おい!ご主人様とやらになるな!そういったプレイがしたいなら、後で私がしてやるから早くこっち来い!!」

 

「うるさーーい!!!美少女型ロボットのご主人様になるというのは、男のロマンなんだよ!!!」

 

女性陣の非難の声(1名は嘆願)にカズマは逆ギレして聞く耳を持たないでいる。

 

「あなたが私の・・・ご主人様・・・」

 

「はい・・・♡」

 

美少女型ゴーレムが近づいてきたことによって、顔だけでなく、身体が露になった。

 

ビシッ!!!

 

「ふあ・・・?」

 

その美少女型ゴーレムは・・・ハイヒールブーツを履き、お嬢様風の格好をしており、手には鞭が備わっていた。

 

「さあ、ご主人様・・・お仕置きのお時間です」

 

美少女型ゴーレムには鞭だけでなく、髪には数多くの拷問道具が備わっていた。

 

「シットダウン!!!」

 

「ひいいいいいい!!!」

 

「伏せ!!ハウス、ハウス!!!」

 

美少女型ゴーレムはご主人様と名乗ったカズマに数多くの拷問道具を押し付けようとしている。文字通り、お仕置きという名の調教のために。と、ここで、デストロイヤーの責任者の日記の内容を思い出す。

 

『あ、ちなみに俺Mだったわ、やべ!!俺やべ!!やべ!!!』

 

・・・どうやらMやらSやらの問答はサイズとかではなく、自身の性癖のものであったのだ。

 

「ヘイガイズ!!!おら、泣けよ!!!いい声で泣けよ!!!オラオラオラオラ!!!!」

 

「美肌立ちなんて問題じゃねええええええええええええええええええ!!!!!!」

 

結局美少女型ゴーレムの気圧にダクネスは悶え、アクアは泣き、アカメは自分の方が上手と勝負をけしかけようとしてティアに止められて喧嘩、施設から逃げた後にめぐみんが遺跡に爆裂魔法を放った。結局、アクアの宣告通りになったのであった。

 

 

ーエンジョイプレイー

 

 

カズマたちが戻った頃には夜になっていた。クエストを終えて疲れたアクアたちはテーブル席で飲んでいるが、カズマだけはカウンター席で飲んでいた。というのも、その原因はカズマの隣に座っている少女である。

 

「とまぁ、そんなことがあったのさ。その後、俺の華麗な活躍により、例の遺跡のゴーレムたちは安らかな眠りにつくことになったのさ(イケボ)」

 

隣の少女にカズマはあることないことを言っている。ちなみにカズマの隣に座っている少女の名はラン。アクセルの街の新米冒険者であり、一応カズマのファンとのことであるが・・・。

 

「ねぇ、あの男、ここぞとばかりに新米冒険者にあることないこと吹き込んでるわよ?実際には私たちに襲い掛かってきたあのすんごいのにダクネスが悶えて、私が泣かされて、アカメがあれと勝負すると言ってティアが止めて喧嘩、めぐみんがカズマの制止を聞かずに全てを灰燼と化しただけなのに。そして大事な遺跡を破壊したってことで依頼失敗の違約金まで払わされたってのに」

 

「本当、そんな男だってのに、どこがいいのかねー?カズマのファンって・・・私、あの子の神経を疑うよ」

 

「しー!カズマのファンなんて言うレアキャラなんですから、そっとしておいてあげましょう。すぐにボロが出て愛想が尽かされるに決まってますから」

 

「そうだな。どうせ泣いて帰ってくるに決まってる。そうしたら、みんなで優しくしてやろう」

 

「ぷっ・・・ぷぷ・・・w」

 

「「「「?」」」」

 

ぼろくそに言っているアクアたちはアカメがなぜか笑っていることに気がついた。

 

「何お姉ちゃん?ついにおかしくなった?」

 

「違う・・・あれ・・・見てればわかるから・・・くく・・・w」

 

アカメがなぜ笑っているのかわからないアクアたちは言われた通りにカズマたちの様子を見る。

 

「そうですか・・・それはすごいですね。えっと・・・それじゃあまた・・・」

 

ランは笑顔を浮かべたままルナの元へと向かって行く。その様子に思った反応じゃないと思ったカズマは疑問符を浮かべる。

 

(あれ?俺何かしたか?いやいや、心当たりはまるでない。ちょっとばかし同じ自慢を何度かしたそれだけだ・・・)

 

カズマは気のせいだと思い込ませ、シュワシュワを飲み干す。

 

「ごちそうさーん」

 

「まいどありー!」

 

シュワシュワを飲み終えたカズマはアクアたちの元に戻ろうとした時、ランがルナと揉めている姿を見かけた。

 

「トラブルか。ファン1号のためだ。ベテラン冒険者の俺の出番だろう・・・」

 

カズマはベテラン風を吹かせ、問題解決に取り組もうとした時、2人の会話が聞こえてきた。

 

「まったくー・・・最初はニートにやる気を出させるだけの簡単なお仕事だって聞いてたのに、これじゃ割に合わないですよー。あの人毎日私を捕まえて同じ話を何度もするんですよ?他の冒険者には男の趣味が悪いってからかわれるし、追加報酬くださいよー」

 

「そうは言われましても・・・そう言ったことも含めての高額報酬だって伝えたじゃないですか。あのパーティは問題は起こしますが、実績だけはあるんです。遊ばせておくわけにも・・・」

 

「それはわかりますけどだからって・・・」

 

「・・・・・・」

 

「「あ・・・」」

 

話を全て聞かれてしまった2人はしまったといった表情を浮かべている。つまり、ランは別にカズマのファンでもなんでもなく、ただカズマたちがクエストを向かわせるという仕事を受けた1人の冒険者にすぎなかったのだ。真相を知ったカズマは涙目である。いや、涙目というよりすでに泣いていた。

 

「プーーー!クスクス!ちょっと、カズマってばちょープルプルしてるんですけどーw」

 

「なるほど・・・wこれがわかってたから笑ってたわけか・・・wウケる・・・w」

 

「ダメ・・・wやっぱ笑いがこらえきれそうにないわざまみろw」

 

「笑ってはいけませんよw愛想尽かされるどころか、こんなオチだったなんてw」

 

「ふふふwまぁ問題ないw優しくしてやろうではないか・・・プッ!w」

 

一部始終を陰でこっそり見ていたアクアたちは哀れなカズマを笑っていた。

 

「あ、あの、サトウカズマさん?違うんです!これはですね?ギルドの上の方からの命令でして・・・あ、あの!カズマさんはその・・・前から思ってたんですが・・・あの・・・」

 

「あ、あたしは依頼を受けただけですから・・・でもあの・・・カズマさんに憧れてたのは本当ですし、その・・・」

 

「「カズマさんって、そこはかとなく、いい感じですよね!!」」

 

ルナとランは必死になってカズマをフォローしているが、まったく褒めていないためにかえって逆効果だ。

 

「・・・スティーーーーーール!!!!!」

 

「「いやああああああああああああああああああ!!!!!」」

 

悲しみのあまりカズマは2人に目掛けてダブルスティールを放ち、2人のパンツを奪い取った。かわいそうだとはいえ、これによってパンツ脱がせ魔のカズマの名がさらに轟くこととなった。

 

 

ースティーーーール!!!!ー

 

 

ギルドの大騒動が落ち着き、屋敷に戻ってきたのはいいが・・・カズマはすっかり落ち込んでしまい、リビングの隅っこで体育座りをして顔を俯かせている。

 

「そ・・・それでカズマさん、あんなに落ち込んでたんだ・・・」

 

「み・・・ミミィ・・・その話させるの本当やめて・・・w笑うから・・・w」

 

「嘘ついてたのはわかってたけど・・・wオチがわかっててもやっぱ笑う・・・w」

 

ギルドであった話を遊びにやってきたミミィに話す双子は思い出し笑いでさらに笑う。それによってさらにカズマの心が傷ついた。話を聞いてミミィはカズマにドン引きしている。

 

「でもどうしよう・・・タイミングが悪かったかも・・・。カズマさんがネクサスさんに仮団員に認められたからお祝いの品を持ってきたのに・・・。やっぱり私は空気が読めないカスだ・・・」

 

ミミィの手元には最高級のシュワシュワの酒瓶があった。どうやら仮団員任命祝いのプレゼントのようだ。

 

「ほらカズマ!いつまでウジウジしてるの!シャキッとしてシャキッと!」

 

「あんたがそんなんじゃみんながどんよりするでしょ!しっかりなさい!」

 

「そうよそうよ!嫌なことはパーッと飲んでパーッと忘れましょ!」

 

「わ・・・すごい現金・・・」

 

最高級シュワシュワを見た双子とアクアはそれを飲みたいがゆえにカズマを励まそうと奮闘している。だが気休め程度ではカズマの傷ついた心は埋まらない。すると・・・

 

バアン!!!!

 

「?ゆんゆん?」

 

突然ゆんゆんが扉を勢いよく開き、リビングに入ってきた。ゆんゆんは真剣な表情をしてまっすぐに落ち込んでいるカズマの元へと向かっている。いつものゆんゆんならばめぐみんに勝負を仕掛けてくるのだが、今日はそういった様子は一切見られない。その様子に戸惑いを感じるめぐみんたち。そうこう考えてるうちにゆんゆんはカズマの元へ。

 

「カ・・・カズマさん・・・」

 

「・・・なんだよ・・・どんなこと言われたって俺の傷ついた心は・・・」

 

「私・・・私・・・」

 

すっかり不貞腐れているカズマを気にせず、ゆんゆんは話を振ろうとしているが、もじもじしていて中々切り出せないでいる。心なしか顔も赤くなっている。そして意を決し、ゆんゆんはとんでもない発言をかます。

 

「私・・・カズマさんの子供が欲しい!!!!」

 

「「ブーーーーー!!!???」」

 

ゆんゆんの特大な爆弾発言に双子は驚愕のあまり思わず噴いてしまう。そして、この発言を聞いたカズマは・・・

 

「・・・モテ期、入りました」

 

さっきの落ち込みはどこへやら、まんざらでもない笑みを浮かべるのであった。




次回、この姦しい獣耳少女達とハーレムを!
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