このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

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この姦しい獣耳少女達とハーレムを!

カズマさんの子供が欲しい・・・という爆弾ワードを出してきたゆんゆんの発言にカズマはまんざらでもない様子で彼女と対面し、その様子をめぐみんたちは遠くで見つめている。ちなみにアクアはただ1人でミミィからもらった高級シュワシュワを堪能したり、ちょむすけにひっかかれたりしていた。

 

「・・・もう1回、言ってくれるかな?(イケボ)」

 

万が一聞き間違いじゃないと言質を取るために、カズマはなぜかかっこいい声を出して確認を取っている。

 

「か・・・カズマさんの子供が欲しいって言いました!」

 

ゆんゆんは顔を赤らめながら同じことを言った。どうやら本当に聞き間違いではないようだ。ゆんゆんの言葉になぜかカズマはカッコつけている。

 

「ふっ・・・俺としては、最初は女の子がいいんだけど」

 

「ダメです!!最初の子は男の子じゃないとダメなんです!!」

 

「「ちょっと待てぃ!!」」

 

自分たちを放置して話を進めるカズマたちにいい加減物申そうと双子たちが話に割って入ってきた。

 

「男とか女とか、そんな話はどうだっていいのよ!あんた自分が何を言ってるかわかってる?」

 

「そうだよ!だいたい、これがどんな男なのかちゃんとわかったうえで言ってる⁉」

 

「その通りだ!いったいどうしたというのだ?」

 

「正気に戻ってください!いったい何がどうなっているのか、ちゃんと順を追って話してください!」

 

「み、みんな落ち着いて・・・」

 

ゆんゆんに詰め寄る双子たちにミミィが全員を落ち着かせようと声をかける。

 

「わ、私とカズマさんが子供を作らなきゃ世界が・・・魔王が!!」

 

「魔王?」

 

子供と魔王にどんな関係があるのかさっぱりわからないめぐみんたちは疑問符を浮かべている。そんな中、空気が読めないカズマがノリノリで割って出てきた。

 

「そうかそうか、世界が。大丈夫だ。世界も魔王も俺に任せとけ。俺とゆんゆんが子作りすれば、魔王がどうにかなり世界が救われるっていうんだな?困ってる人の頼みを断るわけがないじゃないか(イケボ)」

 

とことんまでカッコつけているカズマに双子たちは異を唱える。

 

「バッカじゃないの!!?あんたバッカじゃない!!?脳みそお花畑かあんたは!!」

 

「なんでこういう時だけ物分かりがいいんだよ!!少しは疑問を持てよこのクズ!!」

 

「討伐クエスト受けようと頼んだ時はあれだけ嫌がったくせに!!」

 

「本当ですよ!!」

 

「うるさーーーーーい!!!!!!」

 

口を挟み続ける4人に対し、カズマは逆ギレした。

 

「関係ない奴が口を挟んでくんなよ!!せっかくのモテ期なんだよ!!邪魔すんな!!!!」

 

「知り合いが変な男に引っ掛かろうとしてたなら、口の1つも出しますよ!!」

 

「ほ、本当に落ち着いてください・・・もうこの間に挟まるの嫌なんですぅ・・・」

 

「す、すみませんミミィさん・・・私のせいで・・・」

 

4人とカズマの睨みあいに挟まれてるミミィはかなり涙目になっており、この状況を作った原因であるゆんゆんは申し訳なさそうに謝っている。

 

「素晴らしい!!素晴らしいよ!!俺初めてこの世界のこと好きになったよ!!ていうか何なの?お前ら俺のこと好きなの?ゆんゆんとお付き合い的なこと始めるから妬いてんの?だったら素直にそう言えやこのツンデレ共が!!!!!」

 

「いい加減その舐めた口を塞がないと一生婿に行けないような身体にしてやるわよ?」

 

「ていうかもうやっちゃおうよこの際。こいつをこのままにしたら世界は滅んだも同然だよ」

 

「ちょ・・・本当にやめて!手を出そうとしないで2人とも!!」

 

ムカつく動きや発言を繰り出しているカズマにいい加減我慢できないと取っ組み合いの喧嘩が始まろうとした時、ゆんゆんが口を開く。

 

「めぐみん・・・紅魔の里が・・・紅魔の里がなくなっちゃう!!!!」

 

紅魔の里がなくなる・・・その言葉を聞いて騒動は収まり、全員がゆんゆんに注目した。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

ゆんゆんの一声で一旦落ち着いたカズマたちはひとまずテーブルについた。アクアはゆんゆんとミミィにお湯が入ったティーカップを差し出した。

 

「粗茶ですけど」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

「そ・・・粗茶・・・?」

 

粗茶と言っているが、どう見てもこれはお湯である。大方またお茶を浄化してしまったのだろう。その話は置いておいて本題に戻る。

 

「どういうことなんです?里がなくなるとは穏やかじゃありませんね」

 

めぐみんが質問すると、ゆんゆんは手紙を取り出し、テーブルの上に置いた。めぐみんはその手紙を手に取る。

 

「これはゆんゆんのお父さん、族長からの手紙ですか。・・・『この手紙が届く頃には、きっと私はこの世にいないだろう』・・・!!?」

 

紅魔の里の族長からの遺言ともいえる内容にめぐみんは目の色を変え、手紙の内容を確認する。穏やかではない状況にカズマたちも緊迫した様子がうかがえる。手紙の内容はこのようになっている。

 

『この手紙が届く頃には、きっと私はこの世にいないだろう。我々の力を恐れた魔王軍がとうとう本格的な侵攻に乗り出したようだ。

すでに里の近くには巨大な軍事基地が建設された。それだけではない。

多数の配下たちと共に魔法に強い抵抗を持つ魔王軍の幹部まで送られてきた。

くくく・・・魔王め、よほど我々が恐ろしいとみた。

軍事基地の破壊もままならない現在、我らに取れる手段はたった1つだ。

 

そう、紅魔族族長として。

この身を捨ててでも、魔王軍と刺し違えること。

 

愛する娘ゆんゆんよ。お前さえ生き残っていれば、

紅魔族の血が絶えることはない。族長の座はお前に託した。

この世で最後の紅魔族として、決してその血を絶やさぬように』

 

「内容からして、紅魔の里が魔王軍に蹂躙されてるみたいですね・・・」

 

「待ってください。ここにもう1人紅魔族が生き残ってるのですが」

 

「いいから続けて!もう1枚あるから!」

 

手紙の内容に異を唱えたいめぐみんだったが、ゆんゆんに急かされて渋々もう1枚の手紙を読む。内容はこうなっている。

 

『里の占い師が魔王軍襲撃による、里の壊滅という絶望の未来を視た日。その占い師は同時に希望の光を視ることになる。

紅魔族唯一の生き残りであるゆんゆんはいつの日か魔王を討つ事を胸に秘め、修行に励んだ。そんな彼女は駆け出しの街で、ある男と出会う事になる。

頼りなく、それでいて何の力もないその男こそが、彼女の伴侶となる相手であった・・・。

ヒモ同然の動かない男。

それを甲斐甲斐しく養うゆんゆん・・・。

修行に明け暮れていたゆんゆんにとって、それは貧乏ながらも楽しく幸せな日々だった。

やがて月日は流れ。紅魔族の生き残りと、その間に生まれた子供はいつしか少年と呼べる年になっていた。その少年は冒険者だった父の跡を継ぎ、旅に出ることになる。

だが少年は知らない。彼こそが、一族の仇である魔王を倒す者であることを』

 

「・・・いろいろツッコミたい内容ばかりなんだけど・・・」

 

「とりあえず、1個ずつ整理していきましょうか」

 

今読み上げた手紙の内容を1つずつ整理しようとした時、真っ先にめぐみんが手を上げた。

 

「まず1つ!どうして唯一の生き残りがゆんゆんだけになってるんです⁉私の身に一体何が!!?」

 

「まぁまぁ・・・。それよりも・・・次の内容なんだけど・・・この伴侶となる男の人・・・頼りなくて何の力もないヒモ同然の男って・・・」

 

めぐみんの異論を落ち着かせたミミィは伴侶の男について話を持ち掛ける。頼りなく、力もない、ヒモ同然の男・・・見事にそれに合致している者がここに1人いた。ゆんゆん以外の全員はカズマに視線を向ける。

 

「おい、なんで俺を見つめるんだ?ひょっとして俺のこと言ってんの?ゆんゆんもそれだけの情報でここに来たのか?」

 

カズマの言葉にゆんゆんは目を逸らし始めた。

 

「カズマの文句は置いといて・・・ここが1番重要だよ。ヒモ男とゆんゆんの間に生まれた子供について」

 

「そのガキが魔王を倒す者ってあるけど・・・まさかこれに真に受けたってこと?」

 

アカメの問いかけにゆんゆんは恥ずかしそうに首を縦に頷き、全員がカズマに視線を集めた。

 

「お・・・俺たちの子供が魔王を・・・!!」

 

「おい待てカズマ!まさか占いなんて曖昧なものを疑り深いお前が信じたりしないだろうな!!?」

 

「ねぇ!そんなの困るんですけど!私としては困るんですけど!そんな悠長なこと言ってないで、とっとと魔王を倒してほしいんですけど!カズマの子供が大きくなるまで待てっていうの?3年くらいで負からない?負からないならその占いはなかったことにしてちょうだい!!」

 

「アクア・・・幼児に魔王退治させるつもりなの・・・?」

 

「最低ド畜生ねあんた」

 

占いの内容に真に受けているカズマは衝撃が走り、ダクネスとアクアが異を唱えている。そして幼児に魔王討伐させようとしているアクアの思考に双子は軽蔑の視線を送っている。

 

「里には腕利きの占い師がいるんです。つまり・・・」

 

「え・・・本当に・・・真実ってこと・・・?」

 

ミミィの問いかけにゆんゆんは恥ずかしそうに首を縦に頷いた。

 

「・・・わかった。そういうことなら任せとけ。世界のためだ仕方ない(イケボ)」

 

カズマはカッコつけてゆんゆんに男らしいセリフをはいた。下心のことを考えると全然カッコよくないが。

 

「お、お前という奴は!!普段は優柔不断なくせにどうして今日はそんなに男らしいのだ!!」

 

ダクネスが異を唱えている間にもめぐみんは手紙の端に折り目があるのに気づいた。それをめくって開いて見ると、そこには他にも文字が綴られていた。

 

「・・・紅魔族英雄伝第1章・・・著者:あるえ」

 

「!!!???」

 

めぐみんの一言にゆんゆんは彼女の持つ手紙に視線を向けて固まり・・・

 

「あああああああああああああああああ!!!!!」

 

突然の奇声を上げてめぐみんから手紙を奪い取り、くしゃくしゃに丸め込んで床に叩きつけた。

 

「あるえのばかあああああああああ・・・!!」

 

そして恥ずかしそうに涙を流しながら丸まって床に突っ伏した。

 

「おい!どういうことだ説明しろ!!俺の子供はどうなった⁉俺はどうしたらいい!!?ここで脱げばいいのか!!?部屋で脱げばいいのかんんんん!!?」

 

「いい加減黙れこの野郎!!!!」

 

チーーーーーーンッ

 

「あっ・・・」

 

戸惑うカズマの言動にキレたティアはカズマの大事な急所を力いっぱい蹴り上げた。急所を突然蹴られたカズマは気持ち悪い顔をして、床に突っ伏して悶えている。

 

「え、えっと・・・・それで・・・そのあるえって・・・誰のこと・・・かな?」

 

「あるえというのは作家を目指してる里の同級生です」

 

作家を目指す同級生あるえが書いたものならば、おそらく先ほどのものはあるえが書いた小説なのだろう。作り話であるとわかり、ダクネスたちは安堵する。

 

「なんだただの作り話か。・・・ん?では最初の手紙は?」

 

「こっちは本物じゃないですかね。紅魔族は昔から魔王軍の目の敵にされていましたから」

 

くしゃくしゃになった本物の手紙を拾い上げるめぐみんにカズマは大事な個所を抑えながら異を唱えようとする。

 

「おい・・・ちょっと待て・・・俺の男心はどうしたら・・・?ゆんゆんは・・・?これから俺とゆんゆんが甘酸っぱい関係になる・・・」

 

「わけないでしょ。妄想も大概になさい変質者」

 

カズマが抱いていた現実が妄想であるとアカメに突きつけられ、カズマは今度こそ力なく床に突っ伏す。そんな彼にアクアは優しく脱ぎ捨てたズボンを優しく穿き直させるのであった。

 

「めぐみんはなぜそんなに落ち着いてられるんだ⁉家族や同級生が心配ではないのか?」

 

落ち着いた様子を見せているめぐみんにダクネスは問いかけている。その言葉にゆんゆんははっと泣き止み正気に戻る。

 

「そうだわ!!ねぇめぐみん、どうしよう・・・?」

 

「我々は魔王も恐れる紅魔族ですよ?里のみんながそうやすやすとやられるとは思えません。それに・・・族長の娘であるゆんゆんがいる以上、紅魔の里に何かあっても、血が絶えることはありません。なので、こう考えればいいのです。里のみんなは、いつまでも心の中に・・・と」

 

「めぐみんの薄情者~~~~~!!!!」

 

薄情な答えを出しためぐみんにゆんゆんは彼女の服を引っ張り、ぐわんぐわんと揺らすのであった。

 

 

ーこのすば・・・ー

 

 

騒動が落ち着き、カズマたちはゆんゆんを見送りのために外に出た。

 

「す、すみませんでした!!」

 

「お、おお・・・いいってことよ」

 

迷惑をかけてしまったことにゆんゆんは恥ずかしそうに顔を赤らめてカズマたちに頭を下げた。甘酸っぱい関係になれなかったことにカズマは内心複雑そうであるが。

 

「それより、どうするんだ?」

 

「はい。今から紅魔の里に。その・・・里には・・・と・・・友達が・・・」

 

「ハッキリと友達と言えない関係ってわけね」

 

「お姉ちゃんシー!!ゆんゆんのために黙ってあげて!」

 

ゆんゆんの言葉にアカメは一言呟き、ティアがそれを咎める。幸いにもゆんゆんには聞こえなかったようだ。

 

「それじゃあ・・・皆さん・・・」

 

ゆんゆんは頭を下げ、屋敷を後にした。寂しげなゆんゆんの背中を見て、めぐみんが思い浮かんでくるのは、紅魔の里で直面した危機を彼女と共に乗り越えた思い出であった。

 

 

ーこのすばー

 

 

翌日、カズマたちはウィズの店にやってきた。今日は手伝いに来たわけではない。ウィズに用があってここに来たのだ。

 

「テレポート?アルカンレティアに送ればいいんですね?」

 

「ああ。このツンデレが里帰りしたいって言うし」

 

「だ、誰がツンデレですか!!!??」

 

「というわけで、お願いね、ウィズ」

 

「紅魔の里の近道はそこしかないから仕方なくね」

 

そう、ウィズのテレポートで近道であるアルカンレティアにテレポートしてそのまま直通で紅魔の里へ向かうためにここに来たわけだ。マホのテレポートでもよかったが、あいにく彼女はリュドミラのあいさつ回りのために外出しているために今は不在である。ちなみに、めぐみんが里帰りしたい理由は彼女が言うには年の離れた妹と会うためだとか。まぁ、少なからずゆんゆんの心配もしているだろうが。

 

「か、カズマさん・・・無理を言ってしまって・・・すみません・・・」

 

「ああ、いいっていいって。ゆんゆんが心配だったんだろう?」

 

「は、はい・・・」

 

ちなみに紅魔の里へはミミィも同行することになった。理由はあの話を聞いた後では放っておけないかららしい。

 

「まぁ、支部に残っててやること言ったらネガウサの趣味と書類仕事だけだしね」

 

グサッ

 

「ここの団員、いっつもギルドにいるから支部拠点閑古鳥状態だし」

 

グサッグサッ

 

「真面目に通ってるのっていったらネガウサとその補佐だけだしね」

 

グサッグサッグサッ

 

「あ、それだけじゃないか。あのゴミカスチンピラのダストも来てるんだったね」

 

グサッグサッグサッグサッ

 

「は・・・はは・・・カスの溜まり場にはカスしか集まらないって・・・真理なんだね・・・あれ、涙が・・・」

 

「お前らミミィをいじめてそんなに楽しいか?」

 

双子の言い放つ言葉によって精神的ダメージを負っているミミィはぽろっと涙をこぼしている。ミミィの精神を追い詰めている双子にカズマがジト目で睨んできたが、双子はそっぽを向くばかりであった。

 

「おや!誰かと思えば・・・ここ最近立て続けに女にフラれ続けている冒険者の男に、最近双子共に腹筋ネタでいじられている娘に、クソ鬱陶しい似非女神の娘に、ツンデレに磨きがかかったネタ種族、そして小僧にこっ恥ずかしい台詞を吐いて後日部屋で悶えていた双子共、へいらっしゃい!!」

 

店の奥からバニルはカズマたちにたいして嫌味を言い放って現れた。その際にミミィだけハブられている。

 

「あ、あの・・・バニルさん・・・私も・・・います・・・けど・・・」

 

「おお、目立つ外見な割に地味すぎるウサギもおったか。陰が薄すぎて気がつかなかったわ」

 

「地味で影薄くて・・・すみません・・・」

 

「おおっと、悲嘆の悪感情!ん~、大変美味である」

 

ミミィにわざと気づかないふりをしているバニルはミミィから発する悲観的な悪感情を喰らい、実にご満悦である。

 

「それはそうと双子共、例の契約書、作成しておいたぞ」

 

「それ本当に期待してもいいんでしょうね?当日ドタキャンとかなしよ?」

 

「そんなせこい真似吾輩がするものか。サトウカズマの知的財産権を汝らに譲渡し、吾輩が3億エリス買い取る。そういう契約だ。安心するがよい」

 

バニルと双子は例の3億エリスの商談の話を進めている。3億が確実なものとするためか、アカメは期待で目が輝いており、ティアは少し不安気である。

 

「しかし、まだ契約成立ではないぞ、幾度もの借金を味わった双子よ」

 

「「はあ?」」

 

「あの商品を作る職人がまだ決まっておらんのだ」

 

「ちょっと・・・それ本当に大丈夫なんだよね?」

 

ガッシャーーーン!!!

 

双子がバニルと商談を進めていると、何かが割れる音がした。そちらを見てみると、アクアの足元にはガラス瓶が割れ、中のポーションがぶち撒かれていた。どうやらアクアが商品を勝手に触り、落としたのでろう。

 

「しょ、商品に触るな!!!厄災女めぇ!!!!」

 

「む!!何よ!!お客様は神様でしょ⁉私は本物の神様だけど。神様相手に相応しい態度を示しなさいよね!!」

 

「商品をダメにしておいて、何を開き直っているのだこの貧乏神は!!!ええい、ウィズ!!とっとと送還してしまえ!!!」

 

揉めあいになっているバニルとアクアのやり取りを双子たちは呆れた表情を浮かべているのだった。

 

 

ーやっかましいわ!!!!ー

 

 

揉めあいはひとまず終わり、カズマたちは紅魔の里へ向かう準備を整えた。

 

「では、アルカンレティアの入り口までお送りしますね。素晴らしい旅と体験を。テレポート!」

 

「行ってくる!」

 

ウィズはテレポートを放ち、カズマたちをアルカンレティアの入り口まで転移させた。その場に残ったのはウィズとバニルだけである。

 

「おお、ウィズさん。今のってカズマたちか?」

 

「あ、マホさん。リュドミラさん」

 

「アヌビスではお世話になりました」

 

そこへあいさつ回りに出歩いているマホとリュドミラがやってきた。

 

「あいつらまたどっか出かけたのか?」

 

「はい。紅魔の里へ向かうそうです」

 

「紅魔の里?それヤバくないっすか?あそこの道中にはあいつらが・・・」

 

マホの言うそのあいつらと直面することを・・・この時のカズマたちはまだ知らない。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

ウィズのテレポートによってカズマたちはアルカンレティアの入り口までたどり着いた。もう来ることはないと思っていたので、入り口だけでも双子は憂鬱な気分だ。

 

「ねぇねぇカズマさん・・・」

 

「この街にはすぐに出るぞ。もうお前の教団の連中にはもう関わりたくないからな」

 

「泊まりたいなら1人で泊ってろ」

 

「死ね」

 

「なぁんでよー!!!アカメに至ってはただの暴言だし!!」

 

やっぱりというかアクアはここで一泊していきたいそうだが、カズマと双子はやはりアクシズ教に関わりたくないためすぐ出発する選択をする。

 

「え?アクアさん、ここに泊まりたいんですか?やめたほういいですよ?あんなのカス以下の生ゴミ同然の歩く公害なんですから。というかアクシズ教徒以外アクシズ教が好きな人なんて誰1人としていませんよいたとしてもそいつらと同類か変わり種か自殺志願者くらいしかいませんよマジで目障りなんですよねことあるごとに入信入信ってバカじゃないですかそれ以外の芸ってあるんですかないですよねそんなのあったら奇跡としかいいようがありませんし役に立たない恩恵とかありがたがるとか死にたいんですかあの人たち世のため人のためと言いたいのだったらまず自分が死んでくださいそうすれば大勢の方に役に立ちますから存在自体公害なアクシズ教徒なんて滅びればいいのにというか滅んでしまえそして女神アクアなんて死んでしまえそうしたらみんなハッピーみんなラッキーお届けアクシズ教徒が齎すのはアンハッピーアンラッキーなんだからやっぱり私以下のクズ集団で・・・」

 

「う・・・うわああああああああああああん!!!!!」

 

アクシズ教徒の話になった途端ミミィは死んだ魚のように目からハイライトが消え、早口でかなり聞き取りにくいがアクシズ教徒の悪口をこれでもかとぶちまけた。自分をカスだと言い張るネガティブ思考のミミィからの強烈な悪口にアクアは盛大に泣き出してしまう。

 

「か・・・カズマ以上に容赦ないですね・・・」

 

「言う時は言うからねミミィは」

 

「ネガティブなのか毒舌なのかハッキリしなさいよね」

 

「お前はハッキリしすぎだけどな」

 

ミミィの意外な一面を見たカズマたちはドン引きしている。ダクネスは興奮して悶えているが。

 

「ここからだと徒歩で2日ほどかかるからここは馬車で向かいましょう」

 

「馬車買っておいて正解だったね。アレクサンダーも嬉しいでしょ?」

 

「ピィーヒョロ」

 

時間短縮のために双子はアレクサンダーに手綱をつけ、マホからのゴーレム調査の際に手に入れた報酬で買った馬車にカズマたちが乗り込む。

 

「全員乗った?」

 

「じゃあ、出発するわよ」

 

全員が乗り込んだことを確認したところで、アクシズ教徒が来る前に馬車は紅魔の里に向けて出発した。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

カズマたちは紅魔の里までの道中を馬車の中で楽しんでいる。馬車を運転するアカメもどこか心穏やかな表情をして、景色を楽しんでいた。紅魔の里の道中にはモンスターが多いとの話だが、幸いにも今のところ空のモンスターを含めて1匹も出くわしていない。と、ここでティアは敵感知スキルで遠方からモンスターの気配を探知した。

 

「お姉ちゃん、前方にモンスターの気配があるよ」

 

「ええ。この辺りは一撃熊やグリフォン、ファイアードレイクとかヤバそうなモンスターがゴロゴロいるしね。ここは迂回していきましょう」

 

モンスターと遭遇したくないアカメはアレクサンダーに指示を出し、モンスターがいる方角とは別のルートを進もうとしたところ、カズマがストップを出した。

 

「まぁ待て待て。俺も敵感知スキルでモンスターの姿を見たけどありゃ人型だ。となるとあそこにいるモンスターは『オーク』・・・つまりザコ敵だ。狙われるのが女だけなら俺1人でもどうにかなる。だから俺が行ってくるよ」

 

オーク。それは二足歩行の豚顔の年中発情期のモンスターである。人型モンスターは多種族と交配可能で、特にオークが捕まったりすれば悲惨な目に合わせられる。オークならば弱い自分でも倒せるし、狙いが女性であるなら男である自分が行くべきであるとカズマは名乗りを上げるが、ダクネス以外の女性陣全員はなぜか青い顔をしている。

 

「な・・・何バカなこと言っちゃってんの⁉やめときなって!危ないよ!」

 

「そうですよ!マッチョモグラと同じトラウマを植え付けられたいのですか⁉」

 

「悪いことは言いません!アカメちゃんの言うとおり、ここは迂回しましょう!」

 

「大袈裟だなぁ。あんなザコすぐに片付けてやるからそこで見とけよ!」

 

「あ!こらバカ!男のあんたがむざむざと行くんじゃ・・・」

 

カズマは女性陣の制止を聞かず、むざむざと前方のモンスターへと向かって行く。カズマが近づいてきたことに気づいたモンスターはずんずんとカズマに近づいていく。それを見た女性陣は慌てふためき、必死に戻って来いとジェスチャーを送っている。

 

「クリエイト・アース」

 

カズマは不意打ちの準備を整え、モンスターにずんずんと近づき、その姿を捉えた。そのモンスターは服は着ているが二足歩行の人型で豚顔である。やはりオークで間違いないようだ。ただその緑色の肌をしたオークは顔の造形が人に近く、パッと見れば本当に人間に近い。しかしそれだけではない。このオーク・・・

 

「こんにちは!ねぇ、男前なお兄さん、あたしといいことしない?」

 

オスではなくメスなのである。オークのメスということは、発情対象は女ではなく男・・・つまり今危機的状況にあるのはカズマの方である。

 

「お断りします」

 

オークではカズマのストライクゾーンに入らないため、オークの誘いをきっぱりと断った。

 

「あらそう、残念ね。あたしは合意の上での方がよかったんだけど」

 

オークはにたりと歯をむき出しにして笑っている。一応話ができるということなので、カズマはオークに交渉を持ちかけようとする。

 

「申し訳ないけど、ここを通してほしいんだ。通してくれるなら食料を分けてもいい」

 

「そんなものどうだっていいわ。ここはあたしたちオークの縄張り。通ったオスは逃がさない。・・・不思議ね。お兄さん強そうには見えないけどあんたからはなぜか強い生存本能を感じるわ。あたしの野生の勘はよく当たるのよ。さぞかし強い子供が生まれそうな気がするわ。さあ、あたしといいこと・・・」

 

「アレクサンダー!!!オークをぶっ飛ばしなさい!!!」

 

「バインド!」

 

「うおっ!!?」

 

アレクサンダーはアカメの指示を聞いて猛スピードで突進し、オークを吹っ飛ばした。その隙にティアはカズマにバインドを放ち、彼を縛り付けた。そしてめぐみんたちの手を借り、縛り付けた縄を引き寄せ、カズマを無理やり馬車荷台に乗せる。

 

「おい何すんだ!!」

 

「カズマ何考えてんの!!?オークと交渉だなんて!!いい!!?オークの狙いはカズマただ1人!!ここの平原を抜けるまではカズマ、狙われ続けるんだよ!!?だから迂回した方がいいって言ったんだよ!!」

 

切羽詰まって危機感を訴えているティアの発言にカズマはわけわからないといった表情をしている。

 

「待て待て待て。狙われるのが俺だけならいいことじゃないか」

 

「何を言ってるんですか!!?オークは・・・」

 

「!!??み、みんな・・・オークに囲まれてる・・・」

 

「「「「!!!???」」」」

 

ミミィがこの世界のオークについて話そうとした時、顔を青ざめたティアからの発言で周りを見回す。走っている馬車の周りには仲間であろうオークが走って追いかけてきている。しかも、先ほど吹っ飛ばしたオークまで追いかけてきている。しかもこのオークの集団・・・全員メスである。

 

(あれ~・・・?これひょっとしてヤバいんじゃ・・・)

 

今になってようやく危機感を覚えたカズマは嫌な予感がして汗をだらだら流している。そして、その嫌な予感が的中した。

 

『その男を・・・置いていきなさあああああああああい!!!!!!』

 

「「「「「「「わあああああああああああああ!!???」」」」」」」

 

オークは一斉に馬車に飛び掛かってきた。引きずられながらもオークは荷台に侵入しようとし、カズマに迫ろうとしていた。身の危険を感じたカズマは馬車から飛び降り、オークから全速力で走って逃げだす。それを見たオークは全員カズマを追いかけに向かった。

 

「いいいいいいいやあああああああああああああああ!!!!!」

 

初めてオークに恐怖したカズマは捕まらないように全速力で逃げる。それこそ、走る馬車を追い抜くように。そしてオークも全速力でカズマを追いかける。

 

『緊急クエスト発生!!

サバイブ!自分の身を守れ!!』

 

「ちょっと待ちなさいよおおおおおおおおおお!!!!」

 

「ねぇ、男前なお兄さん、あたしといいことしましょうよおおおおおおお!!!!」

 

「なんで女オークばっかりなんだああああああああああああああ!!!!???」

 

カズマは逃げ回りながら当然の疑問を口にした。その疑問を馬車で追いかけている女性陣が答える。

 

「カズマ!!現在この世にオークのオスはいません!!!」

 

「ええっ!!??」

 

オークにオスがいないというめぐみんの言葉にダクネスはなぜかショックを受けている。構わずミミィとティアが説明を続ける。

 

「オークのオスはとっくの昔に絶滅しました!!たまにオークのオスが生まれても成人する前にメスたちに弄ばれて干からびて死ぬんです!!!」

 

「だからこそオークと言えば、縄張りに入り込んだオスを捉え、集落に連れ帰り、それはもうすごい目に合わせる男性にとっての天敵なんだよ!!!!!」

 

最初に道を迂回しようとしたり、カズマに逃げろと言い続けてきたのはつまりはそういうことだったのだ。

 

「2、3日うちの集落に来てハーレムよ♡この世の天国を味合わせてあげる♡」

 

「お断りしまああああああああす!!!!初めて女性の誘いを断ってしまった・・・!」

 

ノーストライクと言えど、カズマは一応追いかけてくるオークの集団を女性として見ているようだ。

 

「待て!!オークと言えば女騎士の天敵だ!性欲絶倫で女と見るや即座に襲い掛かるあのオークが・・・」

 

「いつの話をしてんのよ?そんなもの、絶滅していないに決まってるでしょ」

 

「!!!!!!」

 

オークはいないとアカメの言葉を聞いたダクネスはショックのあまり姿勢が崩れ、馬車から転げ落ちてしまう。

 

「ダクネスーーーーー!!!」

 

「そんなにショックだったの!!?」

 

転げ落ちたダクネスを回収したいところだが今は危機に直面しているカズマ優先をするために今は放置だ。

 

「あたし、あんたの子を産むわ!!!」

 

「いやあたしよ!!!」

 

「最初は男の子がいいわね!オスが20匹でメスが40匹、そして海が見える白い家で毎日あたしといちゃいちゃするの!!!」

 

「帰りたい!!!!!もうお家に帰りたい!!!!!!!」

 

追いかけながら妄想を口にするオークたちに身の毛がよだちながら全速力で逃げるカズマ。必死に逃げるカズマだったが・・・

 

「とおおおお!!!」

 

ガシッ!!

 

「あっ・・・」

 

「「「「カズマああああああああああああああ!!!!!!」」」」

 

「カズマさああああああああああああん!!!!!!」

 

1匹のオークが飛び掛かってきて捕まってしまうカズマ。

 

「よおーし!!すぐ済むからじっとして目を瞑りな・・・!」

 

「助けてめぐみん!!!いつもの奴!!!いつもの奴をおおおおおおおおお!!!!」

 

「こんな近くで使えませんよ!!!」

 

「待っててください!!今助け・・・」

 

「いや・・・ミミィ・・・この数じゃとてもじゃないけど・・・」

 

「カズマ・・・せめて安らかに・・・なむー・・・」

 

「だから諦めないでえええええええええええええええ!!!!」

 

カズマは女性陣に助けを求めているが、カズマを巻き込むため爆裂魔法は使えず、多種族との交配を続けたことでオークは強いため、強さも数も不利。なので双子はミミィを下がらせ、カズマを諦める選択をした。

 

「話をしよう!!!話をしよう!!!!」

 

「エロトークなら喜んで!!!さあ!!話してごらん?あんたの今までの恥ずかしい性癖をさあ!!!」

 

「ああああああああああああああ!!!!!!」

 

話し合いを持ち込もうとするも、エロトークに繋がり、さらにズボンを脱がされたために逆効果。

 

「や、やめてええええええええええ!!あ!名前を!!そういえばあんたの年も名前も聞けてない!!俺、これが初体験になるかもしれないんだ!!最初は自己紹介からあああああああ!!!私サトウカズマと申しますうううううううううう!!!」

 

「ピチピチの16歳、オークのスワティナーゼと申します!!さあ、あんたの下半身にも自己紹介してもらおうか!!あんたの自慢の息子を紹介しなよ!!」

 

「うちの息子はシャイなんですうううううう!!今日のところはお互いの名前を知ったってことでお開きをおおおおおおおおお!!!」

 

カズマは何とか逃れようと試みるが、話でどうにかなるオークではないため服を脱がされ、余計に状況が悪化していく。もはやこれまでかと思われた時・・・

 

ひゅんっ!!

 

「!!?」

 

突如オークのスワティナーゼの頬に矢が掠った。何事かと思い、スワティナーゼはカズマから放れ、周りを見回す。この矢はミミィが放ったものだ。そして、ミミィはオークの集団の真上に狙いを定める。

 

「アローシャワー!!!」

 

ミミィが放った矢はオークの集団の真上で輝きし、そして輝きの中で数を増やし、そのままオークの集団に矢の雨が降り注ぎ、オークの集団の身動きを取れなくさせる。

 

「カズマさん!今の内です!!」

 

「み・・・ミミィーーー!!!ありがどおおおおおおおおおおお!!!」

 

スワティナーゼから解放されたカズマはパンツ一丁の状態でオークの集団をすり抜け、何とか脱出に成功する。オークは逃げ出したカズマを捕まえようと動こうにも、降り注ぐ矢の雨で身動きが取れない。さらに・・・

 

「ボトムレス・スワンプ!!」

 

第三者がボトムレス・スワンプで汚れ切った沼を出現させ、何匹ものオークの身動きを封じた。この魔法を放ったのは・・・

 

「紅魔の里近くに住むオークたち!ご近所のよしみで今回は見逃してあげるわ!さあ!立ち去りなさい!!」

 

「ゆんゆん!!ゆんゆんじゃないか!!!うええええええええええん!!」

 

ゆんゆんの援護により、さらにカズマは大喜びのあまり泣き出してしまう。

 

「「「カズマ!」」」

 

「「カズマさん」」

 

女性陣たちがカズマに駆け寄る。ゆんゆんがボトムレス・スワンプを解除したことで、オークは敵わないと思ったのか一目散に散開して逃げ出した。ひと段落着いたゆんゆんはほっと一安心する。

 

「ゆんゆん~~~~!!!感謝します~~~~~!!!!」

 

貞操の危機が去ったことにより、駆けつけてくれたゆんゆんに抱き着いてきた。

 

「だ、大丈夫・・・大丈夫ですから・・・あの・・・大事なローブが・・・は、鼻水まみれに・・・あ~~~~~!!!!」

 

ゆんゆんに抱き着いてきたカズマは垂れた鼻水をゆんゆんのローブで拭くのであった。

 

『クエスト失敗!!

カズマは心に傷を負った!!』

 

 

ーこのすば~~~(泣)ー

 

 

危機を脱したカズマたちは気を失っていたダクネスを回収した後、再び紅魔の里に目指して馬車旅を再開させる。荷台ではオークによって心に深い傷を負ったカズマは泣いており、アクアにあやされている。

 

「う・・・う・・・うぅ・・・」

 

「よしよし、怖かったのねカズマ。もう大丈夫。大丈夫よ」

 

「私が気を失ってる間に何があったのだ・・・?」

 

「ひどかったとだけ言っとくわ」

 

「旅はまだ始まったばかりなのにもう疲れたよ・・・」

 

オーク騒動のせいで双子はもう一気に疲れがたまっている状態でそれが顔に出ている。

 

「ゆんゆん、ミミィ、感謝するよ・・・。特にミミィ。君には本当に感謝してるよ。双子が諦めた中よく助けてくれたよ・・・。どのくらい感謝してるかといえば、『これからの人生で尊敬する人は?』と聞かれたなら、ミミィですって即答するくらい感謝してる」

 

「や、やめてください!それ単なる嫌がらせでしかありませんから!」

 

カズマのオーバーな感謝の表し方はミミィには不評のようだ。

 

「でも、みんなはなぜこんなところに?めぐみんもやっぱり里のみんなが心配になったの?」

 

ゆんゆんの問いかけにめぐみんは少しぶすっとした表情を見せた。

 

「・・・ちょっと用事を思い出しただけです」

 

「素直じゃないわねー。やっぱり里のみんなが心配だったんでしょ?そうなんでしょー?」

 

ゆんゆんの発言に苛立っためぐみんは彼女の恥ずかしい秘密を暴露しようと口を開く。

 

「・・・カズマ。ゆんゆんの恥ずかしい秘密を教えてあげましょう。我々紅魔族には生まれた時から身体のどこかに刺青が入っているのです。ゆんゆんの身体に刻まれてる刺青の場所はなんと・・・」

 

「やめてちょっと!!!ていうか、なんで刺青の場所知ってるのよ!!?この馬車の上じゃ、爆裂魔法なんてネタ魔法使えないでしょ!めぐみんを取り押さえるなんて簡単なんだから!」

 

「・・・アクア、支援魔法を。この子に痛い目見せてやります」

 

「ひ、卑怯者!めぐみんはやっぱりずるい!昔からずっとずるい!」

 

めぐみんとゆんゆんが低レベルな喧嘩を始めた時・・・

 

「おい!こっちだ!人間の声が聞こえてきやがる!」

 

奥の方から耳障りな甲高い声が聞こえてきた。

 

「あんたら、敵に私たちの会話を聞きつけられたみたいよ。迂回するからそろそろ静かに・・・」

 

「短気なゆんゆんがいつまでも大声出しているからですよ!」

 

「私よりめぐみんの方が短気じゃない!」

 

「何をぅ!!」

 

迂回して前方からやってくる敵から遠ざけようとするが、荷台の方でめぐみんとゆんゆんが未だに喧嘩を続けている。騒がしくてこれでは迂回しても声でどこへ向かったかバレてしまう。

 

「2人とも、いい加減にして!そんな大声を出すと迂回する意味がないよ!」

 

「おいカズマ、お前からも何か言ってやれ」

 

喧嘩する2人をティアとダクネスが咎めようとしようとするが・・・

 

「おい!!!そんなことよりゆんゆんの刺青の場所を詳しく!!!」

 

「おいあれだ!!あの走り鷹鳶の馬車に人間がいるぞ!!」

 

「お前という奴は!!お前という奴は!!!」

 

カズマの大声によって敵に見つかってしまった。ダクネスは見つかる原因を作ってしまったカズマの肩をぐわんぐわんと揺らした。

 

 

ー紅魔のガキがいるぜぇ!ー

 

 

敵に見つかったことにより、カズマたちは馬車から降りて、その敵と対峙する。敵は鎧を着込んだ鬼モンスターたち。その見た目は筋骨隆々な者もいれば小柄な者、スリムな者もいる。アクアはポキポキと鳴らし、鬼モンスターの前に出て・・・

 

「ん?見た感じ下級の悪魔もどきじゃないですかー。やだぁー!下級悪魔にすら昇格できない鬼みたいな悪魔くずれがなんですかぁなんですかぁ~?プークスクスー!今日は見逃してあげるからあっちへ行って。ほらあっちへ行って!!」

 

アクアの挑発に対し、鬼モンスターたちはギリッと歯を食いしばってアクアを睨み付ける。そしてそこに、他の鬼モンスターたちが集まってきた。

 

バキャッ!!!

 

「「何挑発してんだボケがああああああああああ!!」」

 

「ぎゃあああああああああああ!!」

 

この事態を生み出した本人であるアクアに双子は彼女に昇竜拳をかました。

 

「おいそこのプリーストなんだって?散々煮え湯を飲まされてる紅魔族のガキが2匹だ。見逃してやるわけねぇだろーがー!」

 

どっちにしろ鬼モンスターたちはカズマたちを逃がしてやる気はないようだ。ゆんゆんが前に出ようとした時、めぐみんが止めた。

 

「先ほどはよくもネタ魔法と言ってくれましたね。ネタ魔法の破壊力を久しぶりに見せつけてあげます」

 

めぐみんはゆんゆんにバカにされた腹いせとして爆裂魔法を放とうと杖を構えた。それを見たカズマたちは焦りの顔を見せた。

 

「ちょ・・・ちょっと待ってよ・・・」

 

「え?まさか・・・本気で撃つ気?ここに私たちの馬車があるのに!!?」

 

「おいやめろバカ!!ネタ種族!!本当に撃ったらただじゃおかないわよ!!ちょっと聞いてんの!!?」

 

ゆんゆんと双子は止めようとするがもう遅い。一切聞く耳を持たないめぐみんは・・・

 

「エクスプロージョン!!!!!!!!!!」

 

ドオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!

 

炸裂した爆裂魔法は辺りの木々を吹き飛ばし、双子の馬車さえも粉砕してしまう。あまりの威力の魔法に鬼モンスターは目を見開かせている。近くでぶっ放されたためにカズマたちはボロボロである。

 

「見ましたか!我が爆裂魔法を!さあ、これでもネタ魔法と言いますか⁉どうですカズマ!今の爆裂魔法は何点ですか!!」

 

「マイナス90点をくれてやる!!!どうすんだ!!!お前をおぶって逃げられるわけないだろうが!!!!」

 

この状況下で愚行中の愚行を繰り出しためぐみんにカズマは文句を言い放っている。そしてアカメは倒れ伏しているめぐみんに近づき、頬をつねった。

 

「この大バカネタ種族があああああああああああ!!!よくもやってくれたわね!!!私たちの馬車を壊しやがって!!!あれ1個いくらすると思ってんのよ!!!1000万エリスよ1000万エリス!!!!」

 

「いひゃいいひゃいいひゃいいひゃいいひゃい!!!な、なんですかやめてください!!!お金はまだたんまりあるんですからまた買い直せばいいじゃないですか!!!」

 

「そういう問題じゃねぇんだよこの【ピーーーーーーッ】がああああああああああ!!!」

 

「あの・・・ティアちゃん、大丈夫・・・?」

 

「・・・私、今になってスティーヴの気持ちが痛いほどにわかったような気がする・・・」

 

無惨に散った馬車を見て膝をつくティアにミミィは何とか慰めようとしている。

 

「び・・・びっくりさせやがって・・・!今ので援軍がやって来たぜ。覚悟しろよお前ら!!」

 

鬼モンスターの言うとおり、後ろから大勢のモンスターたちがやってきた。ただその様子は・・・援軍に駆けつけたというより・・・何かに逃げているかのようにも見える。

 

「泣いて命乞いするがいい!!ぜってーに許さねぇから・・・ぐば!!??」

 

イキリ散らす鬼モンスターは仲間であろう鬼モンスターたち吹っ飛ばされ、何度も何度も踏みつけられる。そして、逃げるようにやってきた鬼モンスターの前に、追いかけてきたであろう者たちが4人テレポートによって現れた。

 

「肉片も残らず消え去るがいい・・・!我が心の深淵より生まれる闇の炎によって・・・!」

 

「もうダメだ、我慢できない・・・我が破壊衝動を清める贄となれ・・・!」

 

「永久に眠るがいい・・・我が氷の腕に抱かれて・・・!」

 

「お逝ゆきなさい・・・あなたたちのことは未来永劫に刻まれるの・・・私の記憶の中に・・・!」

 

4人はそれぞれかっこいいと思っている決め台詞をはき、魔法で演出し、さらに放つ魔法の詠唱を始める。

 

「ちょ・・・ま・・・やめ・・・」

 

「ライト・オブ・セイバー!!!!」

 

「ライト・オブ・セイバー!!!!」

 

「セイバー!!!!」

 

「バー!!!!」

 

4人の紅魔族は光の魔法ライト・オブ・セイバーを放ち、大勢のモンスターたちを蹴散らしていった。やがてその場にはズタズタにされたモンスターの残骸があるだけとなった。

 

「闇の炎だの氷の腕などはどこに行った?」

 

「そう?かっこいいと思うけど?」

 

「愚妹は置いとくとして・・・あの髪、あの目・・・間違いなく紅魔族ね」

 

いろいろと疑問はあるものの、目の前に現れた人物は全員黒い髪で赤い瞳を持っているため、この人物たちは紅魔族であるとわかる。

 

「遠く轟く爆発音に来てみれば・・・めぐみんとゆんゆんじゃないか」

 

現れた紅魔族がめぐみんとゆんゆんを知っているということは、やはり紅魔の里の紅魔族であるのは間違いないようだ。

 

「靴屋のせがれのぶっころりーじゃないですか。お久しぶりです。里のピンチだと駆けつけたのですが・・・」

 

「「「「????」」」」

 

めぐみんの言葉に紅魔族の青年、ぶっころりーを含めた紅魔族は全員首を傾げている。その様子にカズマたちも頭に?を浮かべながら首を傾げている。

 

「ところでめぐみん、こちらの方たちは君の冒険仲間かい?」

 

ぶっころりーはカズマたちに興味津々のようでめぐみんに問いかけた。めぐみんは何も言わないが、照れている様子を見せている。全てを察したぶっころりーは真剣な表情となり・・・

 

「我が名はぶっころりー!紅魔族随一の靴屋のせがれ!アークウィザードにして、上級魔法を操る者・・・!!」

 

毎度恒例の紅魔族流のかっこいい自己紹介をした。それに対しカズマは・・・

 

「これはどうも。我が名はサトウカズマと申します。アクセルの街で数多のスキルを習得し、魔王の幹部の者と渡り合った者です」

 

まったくやる気のない紅魔族流の自己紹介で返した。

 

「おおお!!素晴らしい!!実に素晴らしいよ!!まさか外の人がそんな返しをしてくれるだなんて!!」

 

里の外の人間が紅魔族の自己紹介をしたことで、紅魔族4人は好印象を抱いた。

 

「我が名はアクア!崇められし存在にして、やがて魔王を滅ぼす者!そしてその正体は水の女神!」

 

誰かに求められるわけでもなく、突然アクアが紅魔族流の自己紹介をしだした。どうやら紅魔族に便乗したらしいが・・・

 

「「「「そうなんだ、すごいですね」」」」

 

「待ってよー!!なんで?ねぇなんで私だけいつもそんな反応なのよ!!?」

 

軽く流されてしまった。やはり女神云々はうさん臭く信用してもらえないようだ。泣きわめくアクアは放っておいて、ぶっころりーたちは今度はアカメたちに期待の眼差しを向けている。

 

「ね・・・ねぇ・・・これどうしたら・・・」

 

「どうもこうもないわよ。見てみなさいよ隣の中二病妹を」

 

どう反応したらいいのか困り果てているミミィにアカメは隣のティアを見るように促した。姉に指さされたティアはというと・・・

 

「我が名はティア!盗賊稼業を生業とする完全無欠の妹!シーフにして、紅魔族の最大の理解者となる者!」

 

「おおおおお!!何という完璧なあいさつ!!一瞬紅魔族と間違うところだった!!」

 

中二心を拗らせてるからか、かなりノリノリで紅魔族流のかっこいいポーズを決めながら紅魔族の挨拶をした。紅魔族からはかなりの大絶賛である。

 

「え・・・ええ・・・あれ私たちもやらないといけないの・・・?」

 

「郷には郷に従えって奴よ。やってやりましょう」

 

抵抗を覚えるが、仕方なく紅魔族の挨拶をすることにしたアカメ、ダクネス、ミミィの3人。

 

「あー・・・。我が名はアカメ。盗賊稼業を生業とする最強無敵の姉。シーフにしてやがては盗賊団の団長となる者」

 

「我が名はダスティネス・フォード・ララ・・・ティー・・・ナ・・・。アクセルの街で・・・うううううっ・・・!///」

 

「わ・・・わ・・・我が・・・我が名・・・我が名は・・・み・・・み・・・ミミィ・・・はう~・・・///」

 

アカメはやる気が感じられない紅魔族の挨拶をしたが、ダクネスとミミィは恥ずかしがって最後まで続くことはなかった。

 

「めぐみん、いい仲間でなによりだね」

 

ぶっころりーの誉め言葉にめぐみんは少し照れくさそうにしており、ゆんゆんはその様子を見てにっこりと微笑んでいる。

 

「里まではまだ距離がある。送ってあげよう。テレポート!」

 

ぶっころりーはテレポートを発動し、自分やアレクサンダーを含め、この場にいる全員を紅魔の里へと転移させる。視界内がいきなりぐにゃっと曲がり、立ち眩みと共に辺りの景色が一変した。

 

その場所はのどかという言葉がよく似合っている小さな集落である。そう、この場所こそがめぐみんとゆんゆんの生まれ故郷、紅魔の里である。

 

「紅魔の里へようこそ、外の人たち。めぐみんとゆんゆんも、よく帰って来たね!」

 

ぶっころりーたちは笑顔を浮かべ、カズマたちを紅魔の里に迎え入れたのであった。




ティア「ついに・・・ついに紅魔族流の挨拶をやれた~。もう感無量だよ~」

めぐみん「実に様になっていた挨拶でした。もう私に教えられることは何もありません!」

ティア「師匠~~~!!」

カズマ「・・・何この茶番劇?」

アカメ「そっとしておいてやりなさいな・・・あの子疲れてるのよきっと・・・」

次回、この痛ましい里で休息を!
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