このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

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この痛ましい里で休息を!

ぶっころりーたちのおかげで最短で紅魔の里に辿り着いたカズマたちは遺言ともとれる手紙を送った本人であるゆんゆんの父・・・紅魔族の族長の家にやってきたのだが・・・その死んだと思われる族長は普通に生きていた。しかも悪びれた様子は全くないと来た。

 

「え・・・?お、お父さん・・・?もう1度言ってくれない・・・?」

 

「はっはっはっは!!あれはあれはただの近況報告だよ。紅魔族の血がたぎりにたぎってな。手紙を書いている間に乗ってきてしまって・・・」

 

「わかります。すごくわかります」

 

「わかるな」

 

ゆんゆんの父、ひろぽんの言葉にティアは同意の言葉を述べているが、アカメは全く理解できないといった表情を見せている。

 

「えっと・・・お父さんが無事だったのはとても嬉しいんだけど・・・手紙が届く頃にはこの世にはいないだろうってあれは・・・?」

 

「紅魔族のいつもの挨拶じゃないか。学校でこういうこと習わなかったのか?」

 

あの遺言ともとれる手紙はカッコつけるためにわざと書いていたものだったようだ。書く側は楽しいのだろうが、受け取った側からすればたまったものでない。

 

「・・・魔王軍の軍事基地も破壊することもできないって・・・」

 

「ああ、あれか?連中もずいぶん立派な基地を作ったものだから、破壊するか観光名所として残すかで意見が割れているんだよ」

 

軍事基地が建てられたというのは事実ではあるようだが、破壊するべきか観光名所として残すかというしょうもない理由で未だ破壊できないでいるというのが現状のようだ。何ともどうでもいい事実にカズマたちはおろか、娘のゆんゆんでさえ白けたような表情を見せた。とここでアカメが一言。

 

「・・・ゆんゆん。あんたの親父、一発ぶん殴ってもいいかしら?」

 

「・・・いいですよ」

 

「ゆんゆん!!!???」

 

まったく悪びれないひろぽんに苛立ったアカメの言葉にゆんゆんが承諾した。実の娘から殴るのを許可された父は愕然とする。

 

「・・・あれ?ということは魔王軍の幹部は・・・?」

 

「ええ、来てますよ、魔法に強いのが。そろそろ来る頃かなぁ?よかったら見ていきますか?」

 

「「「「「「「?」」」」」」」

 

族長の誘いの言葉の意味が理解できないカズマたちは首を傾げている。すると、町内アナウンスが流れてきた。

 

『魔王軍警報。手の空いている者は里の入り口に集合。敵の数はおよそ1000匹程度と思われます』

 

「「「「「1000!!!???」」」」」

 

さらっと魔王軍の手先が1000もいるというアナウンスにカズマたちは驚愕の声を上げた。紅魔族の3人は平然(めぐみんは魔力切れでぐったりしてるだけ)としていた。

 

「魔王軍が1000匹、ね。とうとう女神の・・・」

 

「あんたは余計なことすんな」

 

「余計な事したらぶっ殺すわよ」

 

「なぁんでよー!!!」

 

アクアがバカなことを言いだしたところで双子が彼女の行動を阻止する。

 

「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。ここは強力な魔法使いの集落、紅魔の里なのですから。皆さんも見てみますか?」

 

どこまでも落ち着いているひろぽんは家を出て魔王軍が集まっているであろう入り口まで向かう。何が何だかわからないカズマたちはひろぽんについていく。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

『魔王軍襲来!!』

 

魔王軍が集まってきている入り口前・・・一言で言えばすごかった。

 

「うわあああああああああああああ!!!」

 

「シルビア様!!シルビア様ー!!撤退を!!どうかあなた様だけでも撤退を!!」

 

「チクショウ!チクショウ!!せめて連中に近づければ一矢報いられるのに・・・!!」

 

「だから紅魔の里を攻めるのは反対だったんだ!!だから俺は行きたくないって・・・!!」

 

魔王軍のモンスターたちは里に近づくことさえままならず、次々と手先を蹴散らしていった。1000を超える魔王軍に対し、紅魔族はおそらく50人程度。この50人の紅魔族の中にはぶっころりーたちもいる。その紅魔族たちが・・・

 

「ライトニング・ストライク!!」

 

「エナジー・イグニッション!!」

 

「フリーズガスト!!」

 

「カースド・ライトニング!!」

 

「トルネード!!」

 

情け無用で容赦なしに上級魔法を連発で放ち、魔王軍のモンスターを亡き者にしていく。モンスターの中には巨大なモンスターもいたが、上級魔法の連発の前に巨大モンスターは呆気なく倒されていく。

 

「すっげー・・・なんか・・・ここまですごいとちょっと引くわー・・・」

 

「か・・・かっこいい~・・・」

 

「これ戦闘じゃなくてもはや一方的な蹂躙と変わらないんじゃないの?」

 

雷に直撃、炎に包まれ、氷の彫像にされたり、暴風に吹っ飛ばされたりと・・・見れば見るほどかわいそうになってくる魔王軍のモンスターたちを葬っていく紅魔族にカズマたちは感心と同時に若干ながら引いてしまっている。ティアは純粋に感激しているが。

 

「どうです?ここの目玉にしようと思ってるんですよ!」

 

この現象を観光スポットの一部にしようとしているひろぽん・・・いや、紅魔族の感性はおかしいと思うカズマたちであった。

 

 

ーこのすば・・・ー

 

 

すごい光景を見た後、カズマたちはゆんゆんと分かれ、めぐみんが住んでいた実家へと向かっている。ちなみにミミィはゆんゆんの家に泊まるため、この場にはいない。

 

「いやー、あれが本物の紅魔族って奴かー」

 

「本物がいるってことは、偽物もいるってことよねー」

 

「お、うまいこと言うなー、アカメは」

 

「「はっはっはっはっは」」

 

本物の紅魔族、偽物の紅魔族の話でアカメとカズマは互いに笑いあっている。ただその話を面白くないと感じているのがめぐみんである。

 

「おいお前ら。その偽物の紅魔族がどこにいるのか聞こうじゃないか」

 

「まぁまぁめぐみん、落ち着いて落ち着いて・・・」

 

今にも2人につかみかかろうとするめぐみんに彼女をおぶっているティアがなだめる。他愛ない話をしている間にも、こぢんまりとした木造の平屋が見えてきた。

 

「ねぇめぐみん。もしかしてあの馬小屋?」

 

「馬小屋ではありませんよ。御母屋です」

 

「え」

 

失礼ながら一般よりもかなり貧乏なあの家こそがめぐみんの実家であるのは間違いないようだ。めぐみんの実家に辿り着いたカズマは玄関の扉をコンコンッとノックした。すると、家の奥からトタトタと駆けてくる音が聞こえきて、玄関の扉が開かれた。扉から出てきたのはめぐみんとよく似た顔を持つ小学生くらいの女の子であった。

 

「お、めぐみんの妹か?ずいぶんとかわいらしい子だな」

 

めぐみんの妹と思われる女の子の登場にカズマとダクネスは顔を綻ばせている。

 

「げっ、ガキ・・・」

 

「こーら、失礼なこと言わないの」

 

逆にアカメは露骨に嫌そうな顔をしており、それをティアに咎められている。

 

「なんかちっこいめぐみんが現れたんですけど。ねぇ、飴ちゃん食べる?」

 

アクアはめぐみんの妹に近づき、持ってきていた飴を渡そうとしている。

 

「こめっこ、ただいま帰りましたよ。いい子にしていましたか?」

 

ティアに肩を貸されたまま、めぐみんは妹、こめっこに優しい声で話しかけた。当のこめっこはカズマたちを見て目を見開き、固まっていた。そして、息を吸い込むと・・・

 

「お父さーーーーん!!姉ちゃんが男引っ掛けて帰ってきたーーー!!」

 

「ちょっとお嬢ちゃん!!お兄さんと話をしよう!!」

 

誤解を招きかねない言葉を言い放ちながら家の奥へと向かって行った。

 

 

ーこのすばああああああ!!!ー

 

 

めぐみん宅の居間にて、カズマは目の前の人物の雰囲気に呑まれて正座をしている。目の前の人物は一見すると黒髪のおじさんだが、彼はカズマを鋭い目で見つめており、威圧感もある。この人物こそがめぐみんの父、ひょいざぶろーである。そして隣にいるめぐみんの面影があるきれいな女性はめぐみんの母、ゆいゆいである。

 

「あー・・・こほん・・・ん、んん・・・」

 

ひょいざぶろーはわざとらしい咳払いをする。正座しているカズマは気まずくて縮こまっている。

 

(・・・どうしよう・・・本来なら1番この場を収めてくれなきゃいけない奴は・・・)

 

カズマは気まずい気分の中、ちらっとめぐみんに視線を移す。当のめぐみんは魔力を使い果たして疲れたのか居眠りをこいていた。

 

(くっ!!こいつーーー!!!)

 

呑気に寝ているめぐみんを見てカズマは心の中から彼女に憤りを感じた。そんな中アクアはちゃぶ台にマグカップを置き、こめっこに持ち芸を披露する。

 

「ほーら見てごらん?ひっくり返したマグカップが動き回りますよー」

 

アクアの手の動きに合わせてテーブルに置かれたマグカップは触れてもいないのにすいすいーっとちゃぶ台の上で動き回る。

 

「すごいすごい!!どうやって?ねぇどうやってるの?」

 

「磁石だ!きっと磁石で動かしてるんだ!」

 

「いいえー、磁石でも魔法でもありませんー」

 

すごい芸当に子供であるこめっこだけでなく、ダクネスも大はしゃぎだ。カズマも手品は気になったが、ひとまず置いておいて彼はちらっとだけキッチンに視線を向ける。

 

「何よー。本当になんもないじゃない。ザ・ド貧相って感じね」

 

「んー・・・明日のご飯もあるし、とりあえず材料を使いすぎないようにしないと」

 

キッチンの方では双子が今晩に出すご飯の材料をチェックして、献立を考えている。

 

「・・・うちの娘が日頃からお世話になってるそうだね。それについては心から感謝する」

 

「本当に、うちの娘が大変お世話に・・・。娘からの手紙でよくカズマさんのことが書かれていまして・・・。あなたのことはよく存じておりますよ」

 

ひょいざぶろーはカズマに軽く頭を下げ、ゆいゆいは深々と頭を下げた。その後ひょいざぶろーはキッと表情を引き締め、もう3度目となる質問をカズマに投げかける。

 

「・・・で、君はうちの娘とどのような関係なんだね?」

 

ひょいざぶろーの問いかけにカズマは同じ答えを返そうとする。

 

「・・・何度も言いますが、ただの友人です」

 

「なあああああああああああああああああ!!!!!」

 

答えを聞いたひょいざぶろーは目の前のちゃぶ台をひっくり返そうとする。その奇行にゆいゆいは必死になって止める。

 

「あなたああああああああああ!!やめて!!ちゃぶ台をひっくり返して壊すのはやめて!!もう、お金がないのよいやあああああああああああああああ!!!!」

 

ひょいざぶろーの奇行にカズマたちだけでなく、キッチンにいる双子までもが呆然としていた。取り乱したひょいざぶろーはゆいゆいが入れたお茶を啜って何とか落ち着きを取り戻した。

 

「・・・失礼。取り乱した。いや君が白々しくもただの友人だ、などと抜かすものだからね」

 

またもう1度、ただの友人ですという言葉が出そうになったところでカズマはアヌビスでのネクサスの圧を思い出し、その言葉は踏みとどまった。ひとまず場を落ち着かせるためにカズマは風呂敷からあるものを取り出した。それはアヌビス産の名物スイーツ、サボサボマカロンの包み箱であった。サボテンのような形をした色とりどりのマカロンは見ただけで食欲をそそる。

 

「あのこれ、つまらないものですが・・・」

 

カズマが差し出したサボサボマカロンの包み箱をひょいざぶろーとゆいゆいは同時に掴んだ。

 

「・・・母さん。これはワシにカズマさんがくれたものだろう?」

 

「あらあら。さっきまでは君なんてよそよそしい呼び方しておいて、急にカズマさん呼ばわり?やめてくださいな恥ずかしい。これは今日の晩御飯にするんです。お酒のつまみにはさせませんよ?」

 

「奥さん、今双子がキッチン借りて晩御飯を作っていますので・・・というかそれ、マカロンですからつまみにも晩御飯にもなりませんよ?」

 

カズマが補足を入れてもひょいざぶろーとゆいゆいの取り合いは収まらない。とここでこめっこがキラキラと輝いた目をしながら嬉々とした声を上げる。

 

「ねぇそれ!いつも食べてる薄めたシャバシャバなお粥とかじゃなくて、ちゃんとお腹に溜まるもの?」

 

こめっこの純粋な声を聞いたカズマは何も言わず風呂敷からサボサボマカロンの包み箱を全部ひょいざぶろーたちに渡した。

 

「すごく・・・つまらないものですが」

 

「よく来てくれたねカズマさん!母さん1番いいお茶を!」

 

「うちにお茶なんて1種類しかありませんよ、おほほほほ」

 

ひょいざぶろーはサボサボマカロンの包み箱を掠め取り、ゆいゆいはカズマたちにお茶を入れようと、双子のいるキッチンへと向かって行くのであった。

 

 

ーこのすばー

 

 

キッチンにいる双子はゆいゆいが入れてくれたお茶を啜り、サボサボマカロンをかじりながら晩御飯をづくりにとりかかった。一方居間いるカズマたちはサボサボマカロンをおいしそうに頬張り続けるこめっこの天使のようにかわいい姿を見てにっこりと微笑んでいる。ちなみにサボサボマカロンの味は名物というだけあっておいしいようだ。

 

「いくら食べ物を持ってきてもこめっこはやらんぞ!!!」

 

「違いますから!!そんなつもりじゃありませんから!!!」

 

ひょいざぶろーにいらぬ誤解をされてしまったカズマは弁明をし、こめっこに笑顔で優しく声をかける。

 

「後はこめっこが食べな」

 

「いいの⁉わーーーい!!」

 

カズマからの許可をもらい、こめっこは残りのサボサボマカロンを箱ごと持っていき、遠くで食べ続ける。

 

「そういえばカズマさんはすごい借金持ちだと聞いたのですが大丈夫ですか?いい人そうだし・・・反対はしませんが・・・せめて借金を返されてから、うちの娘と一緒になられては?」

 

「ブーーーーーーーーッ!!??」

 

ゆいゆいの言葉にカズマは口に含んでいたお茶を噴いてしまう。

 

「何の話をしてるんですか!!?ただの友人だって言ってるでしょうが!!」

 

「でも、娘からの手紙に・・・」

 

「いや、何書いてあったのか聞いてもいいですか?」

 

手紙の内容を尋ねるカズマにひょいざぶろーとゆいゆいはお互いに顔を合わせ、手紙の内容をゆいゆいが答える。

 

「例えば・・・娘を全身ヌルヌルの姿にして楽しんだり、魔力を使い果たした娘を背負いながら胸の感触を確かめたり、一緒にお風呂に入ったり、ソファで無防備に昼寝しているとスカートの中身を体育座りでじーっと観察していたり、ちょむすけに餌をやりながら『いいか?これだ、これを取ってくるんだ。そうしたらもっとおいしい餌をやろう』と下着を見せて覚えさせたり・・・」

 

「申し訳ございませええええええええええええええええん!!!!!!」

 

数々と出てくるカズマのセクハラ行為に彼は冷や汗を流し、やがていたたまれなくなりちゃぶ台をどかして畳に頭をこすりながら必死の土下座をかました。

 

「・・・それでも大切な仲間だからと・・・」

 

「へ・・・?」

 

続くひょいざぶろーの言葉にカズマは土下座したまま顔を上げた。

 

「例え借金まみれでスケベで暴言ばかりの常識ない男も、私が目を離すと簡単に死ぬから・・・と。娘がそこまで言うからには、きっと何かあるのだと」

 

引っ掛かる言い方はあるものの、めぐみんから大切な仲間だと思っててくれたのだと両親の口からきいて、カズマは少しだけ嬉しくなった。

 

「娘のパーティのことですし、助けてあげたいとこですけど・・・」

 

「ああ、大丈夫です。借金はもうすでに返済してますし・・・実はキッチンにいる双子とはビジネスパートナーでして、分け前として大金が手に入る予定なので・・・」

 

「ほう。ちなみにおいくらほどで?」

 

「分け前がどれくらいかはわかりませんが・・・双子がもらえる金額は3億エリスだとか・・・」

 

「「3億ぅ!!!???」」

 

3億エリスという大金が入るという事実を聞き、ひょいざぶろーとゆいゆいは驚愕で目を見開かせている。

 

(あれ?ちょっと余計なこと言っちゃったか?)

 

「そうだカズマさん!!!今日はうちに泊まっていきなさい!!!娘の仲間で友人ならば当然だ!!冒険者なんてやってるなら、家なんてないだろう!!!」

 

「い、いえ・・・俺アクセルの街に屋敷を持っているので・・・」

 

「「屋敷ぃ!!!???」」

 

さらに驚愕するひょいざぶろーとゆいゆいの目は嬉々として非常に目が輝いてる。2人の視線に目を逸らしていると、双子が本日の晩御飯を持ってやってきた。

 

「ご飯できたわよー。さっさとちゃぶ台を元の状態に戻しときなさい」

 

「いやー、途中でアクアが何か買ってきてくれて大助かりだったよ」

 

双子がちゃぶ台に今日の晩御飯を置いたところで未だに眠っているめぐみんを放って食事にありつくのだった。ちなみに今日の献立は鍋だった。

 

 

ーこのすばー

 

 

今日はめぐみん宅にて泊まることになったカズマたちは3億や屋敷の話をしてからすっかり好待遇な扱いを受けていた。そんな中双子は風呂から上がり、廊下を歩いていたカズマに次の風呂の催促して、居間でのんびりしようとした時、居間からダクネスがゆいゆいに異議を唱える声が聞こえてきた。何事かと思い双子は居間を覗き込んだ。

 

「何をバカなことを⁉自分の娘がかわいくないのか⁉あなたがやろうとしていることは1週間絶食させた野獣の檻に子羊を投げ込むようなものだぞ!」

 

「大丈夫ですよ。娘はもう結婚できる年ですし、カズマさんも分別できる大人。もし何かあったとしてもそれはお互いの合意の上ということではないでしょうか?ところでダクネスさんはなぜそんなに反対なさるのですか?カズマさんと娘が一緒に寝ると何か不都合でもあるのですか?」

 

「ええっ!!?そういう言い方をされるとなんだか私が妬いている思われそうで非常に不愉快なのでやめていただきたいのだが・・・」

 

「でもうちの娘をそちらの部屋に移すと大変大狭ですから、誰かがカズマさんと同じ部屋で寝ていただかないと・・・」

 

どうやらゆいゆいはめぐみんをカズマと同じ部屋で寝かせたいようなのだが、ダクネスがそれを反対して揉めているようだ。

 

「ならひょいざぶろーさんとカズマを一緒に寝かせれば解決だろう」

 

「そんな色気のない・・・げふんげふん・・・こめっこと一緒に寝かせるのは論外として、家の主人と一緒に寝かせるのも不安が・・・」

 

「なら・・・私が一緒に・・・」

 

「スリープ」

 

ダクネスが何か言おうとした時、ゆいゆいは彼女に向けてスリープの魔法を唱えて無理やり眠らせた。

 

((やりやがったぁ!!?))

 

双子が驚愕していると、倒れたダクネスの隣にひょいざぶろーが寝ていることに気がついた。もしかしたらひょいざぶろーもダクネスと同じようにされたのだろう。

 

「あらアカメさん、ティアさん、お風呂から上がったんですか?みんな寝てしまいましたので、部屋まで運ぶのを手伝っていただけませんか?」

 

「「は、はい・・・」」

 

無理やり眠らされたくない双子は冷や汗をかきながら下手に逆らわず、眠ったダクネスたちを運ぶのであった。

 

 

ーこ・の・す・ばー

 

 

なんとか無理やり眠らされることを回避した双子は寝室で皆が寝静まった頃を見計らい、キッチンでいくつか残った食材を使ってアレクサンダーのご飯を作っている。なぜわざわざ深夜に作るのか・・・それはこめっこにアレクサンダーのご飯を食べられないようにするためだ。ご飯が出来上がり、双子は外でくつろいでいるアレクサンダーの元に持っていく。

 

「遅くなってごめんね、アレクサンダー。はい、アレクサンダーのご飯。魚はたっぷり入れておいたからね」

 

「ピィヒョ」

 

アレクサンダーはお椀に入った魚たっぷりのご飯を食べ始める。その様子を見ているアカメは深くあくびをする。

 

「ふわ・・・あああああああ~・・・。眠・・・。さっさとお椀を回収して寝たいわ・・・」

 

「別に無理して付き合わなくてもいいのに。こういう時律義というか何と言うか・・・」

 

「うっさいわね。あんたにアレクサンダーを任せたらどうなるかわかったもんじゃないから仕方なくよ」

 

「その言葉、そっくりそのまま返させてもらう。お姉ちゃんにお世話を任せてたらアレクサンダーは粗暴になっちゃうもの」

 

「は?」

 

「あ?」

 

ペットの教育云々にケチをつけられた双子はいつもの如く睨みあい、喧嘩に発展しそうになる。アレクサンダーはそれに構わずご飯を食べ続けている。

 

くいっくいっ

 

「あ?」

 

「え?」

 

双子が睨みあっていると、起きたこめっこがアカメのズボンを引っ張っている。

 

「こめっこちゃん、起きちゃったの?ごめんねー、騒がしくして」

 

ティアがこめっこに謝っている中、彼女はご飯を食べているアレクサンダーに視線を向け、指をさす。

 

「ねぇねぇ、あの鳥、姉ちゃんたちの?」

 

「そうだけど、それが何?」

 

「あ、走り鷹鳶が珍しいのかな?ほーらこめっこちゃん、走り鷹鳶のアレクサンダーだよ~。仲良くしてあげてね~」

 

アレクサンダーに興味を持っているこめっこにティアはにっこりと微笑み、アレクサンダーを紹介している。ただこめっこがアレクサンダーを見る目は好奇心というより、獲物を定めた狩人のようなものだ。

 

「ねぇねぇ!あの鳥いつ食べるの!!?私にもちょうだい!!」

 

「え?」

 

「は?」

 

「ピィヒョ!!?」

 

こめっこのまさかの発言に双子は固まり、アレクサンダーは思わずビクついている。

 

「・・・・・・え~っと・・・こめっこちゃん?今なんて?」

 

「私にもちょうだい!」

 

「その前だよその前」

 

「?いつ食べるの?」

 

「・・・・・・」

 

どうやらこめっこはアレクサンダーを鶏肉と思っているらしく、口元に涎を垂らしていた。この様子を見てアカメは以前仲良くなる水晶で見た恥ずかしい過去にこのこめっこがいたことを思い出した。

 

「・・・そういえばこのガキ、めぐみんと一緒にザリガニやらセミやらを食べてたわね・・・」

 

「・・・え~っと・・・こめっこちゃん?これは食用の走り鷹鳶じゃないよ?こんなの食べたらお腹壊しちゃうよ?」

 

「大丈夫。火を通せば大抵のものは食べられる」

 

「いやいやそういうことじゃなくてね?」

 

「きっと親子丼にすればおいしくなる」

 

「だから・・・うぅ・・・困ったなぁ・・・なんて言って諦めさせよう・・・」

 

ティアはいろいろと説得を試みるも、こめっこの食い気と子供特有の純粋さが相まって、どう説得しようかとたじたじになる。その様子を見ていたアカメは仕方ないと言わんばかりにため息をこぼし、こめっこの前に立ち、座り込んで彼女と話す。

 

「はぁ・・・。ガキ、こいつは私たちのものよ?食用だろうが何だろうが、あげるわけないでしょ」

 

「ケチ」

 

「誰もなんもあげないとは言ってないでしょ。これあげるから、こいつは諦めなさい」

 

「あ!マカロン!わーい!いっただっきまーす!」

 

「それ食ったらさっさと寝なさいよ?」

 

アカメは夜食用にとっておいたサボサボマカロンをこめっこに譲った。サボサボマカロンを見てこめっこは嬉々とした表情になり、マカロンを食べ始める。

 

「相変わらず子供の扱いには手慣れてるね。羨ましいよ」

 

「ガキに好かれたって鬱陶しいだけよ。ジジババ共に好かれた方がまだマシなくらいよ」

 

「お姉ちゃんは知らないだろうけど、ジジババに好かれるのも結構疲れんだよ?」

 

「よく言うわ。たくさん貢がれて後からニヤッて笑う腹黒が」

 

「なんでそれを知ってるんだよ」

 

アカメは嫌々言ってるが、彼女は幼少期から子供や年下に好かれやすく、子供の扱い方についてよく熟知している。だからこういった場面の対処に慣れているのだ。ちなみにティアはその真逆でマダムなどのお年寄りに好かれやすく、よく貢物をもらったりしたことがあるようなないような。話し込んでいると、マカロンを食べ終えたこめっこがまたアカメのズボンを引っ張っている。

 

「あ?何?」

 

「ねぇ、まだなんか食べ物ある?もっとちょうだい!」

 

「はぁ?もう食い終わったの?あれで満足したんじゃないの?」

 

「全然足りない」

 

相当食い意地が張ってるこめっこにアカメは頭をかいている。おそらく残ったお菓子をあげてもこめっこは満足しないだろう。かと言ってあげないなんて言ったら拗れるだろうから厄介だ。ゆえにアカメは考えた。こめっこがお菓子を渡し、食べた後に眠らせる手段を。

 

「・・・わかった、こうしましょう。ここに残ったマカロンがある。今から私がこれ持って逃げるから、私を捕まえることができたら、ご褒美としてこれをあげる。逃げる範囲はこの家全体。ここから外に出るのはお互い禁止。わかった?」

 

「わかった!頑張る!」

 

マカロン欲しさにこめっこはアカメの提案を了承し、元気よく返事する。遊ばせておいて、疲れたタイミングでわざと捕まり、マカロンを食べさせる。そうすれば、満腹でなくとも遊び疲れて勝手に眠るだろうとアカメは考えているのだ。

 

「よし、はいよーいどん」

 

「待てー!」

 

ゲームがスタートし、アカメがこめっこから逃げ、こめっこはアカメを追いかける。2人が庭中を走り回る2人中、ティアはアレクサンダーをなだめる。

 

「あっちはお姉ちゃんに任せて・・・食器を片付けたらもう一風呂入ろうかな」

 

「ピィ」

 

こうしてティアは食後の食器を片付けてひと風呂浴び、アカメはこめっこを寝かしつけてから部屋で就寝するのであった。

 

 

ーこのすばー

 

 

翌日の早朝、カズマたちは居間に集まり、今日の朝食にありついている。ちなみに献立は昨日こめっこが言っていた薄めたシャバシャバなお粥である。

 

「まっず。これ本当にお粥?クソまずいんだけど」

 

「せっかく作ってもらっておいて何て言い草なの」

 

「文句があるのなら食べなくて結構ですよ。お母さんに言いつけますので」

 

「・・・ちっ・・・」

 

あんまりおいしくないようでアカメは文句を口にしていたが、めぐみんの言葉に渋々ながら黙って食事を続けることにした。

 

「めぐみんめぐみん、そんなことより、ここの観光案内してほしいんですけどー」

 

「そうですね。今日はのんびりして、もう一晩泊っていきましょうか」

 

「やったー!」

 

アクアに観光案内を頼まれためぐみんは里は安全であると判断し、それを了承した。

 

「私はめぐみんに案内してもらうけど、『クズマ』さんはどうする?」

 

「そうだな。俺も一緒に・・・おい、今俺のことなんつった?」

 

カズマもこの里を一緒に観光しようと言い出そうとした時、アクアの呼び方に過剰に反応にした。

 

「?私おかしなこと言った?」

 

「い、いや・・・俺の気のせい・・・か・・・?まぁいいや。双子やダクネスはどうするんだ?」

 

ただの聞き間違いだと思うことにして、双子やダクネスにもどうするかを尋ねるカズマ。

 

「行きたい!1度紅魔の里を観光したいって思ってたんだー」

 

「ま、どうせ暇だしね。このアホらしい里を見て思いっきりバカにして笑ってやるわ。アクアと『クソマ』と一緒に同行ってことで」

 

「そう・・・おい、今なんてった?」

 

アカメの自分の呼び方に対し、またも反応するカズマ。

 

「私はちょっと行きたいところがある。『カスマ』たちは遠慮なく、観光してきてくれ」

 

「そっか、わか・・・おい、今なんつった?」

 

ダクネスの呼び方でやっぱり聞き間違いではないとわかったカズマは引きつった表情を見せた。

 

「では、アクアと双子、『ゲスマ』の4人ということですね。この里にはいろんな観光名所があるので退屈しない・・・」

 

「待てやゴラアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

 

いい加減クズマだのカスマだのクソマだのゲスマだの言いたい放題な女性陣にカズマが一言物申そうとする。

 

「どうしたの?寝ているめぐみんにいたずらしようとしたクズマさん」

 

「・・・・・・」

 

だがアクアの言い放った言葉にカズマは黙り込み、茶碗をちゃぶ台に置き、正座をした。

 

 

ーすいませんでしたー

 

 

話を聞く限り、カズマはどうやらゆいゆいの狙い通りにめぐみんと同じ部屋で寝ることになったのだが、その際カズマは最初こそ葛藤したものの、次第にめぐみんと一緒に寝て、後で起きためぐみんが騒ぎ立て、大人しくなったところで本性をさらけ出したとのこと。それによってめぐみんは怒って家を飛び出し、ゆんゆんの家に泊まったとのこと。2人っきりの状況下で何もしないのはおかしいのではないかとカズマは熱く語ったが・・・

 

「あんたはもう1回マッチョモグラかオークに襲われるといいわ」

 

女性陣全員に心底見下された。その後、カズマがめぐみんにこの里に一件しかない喫茶店でいろいろ奢り、ようやく口を開いてくれた。めぐみんの機嫌が直ったことで改めて観光開始。観光スポットに向けて歩ていく。その最中、双子はあるものを見つけた。

 

「わ、すごい。みんな見てみて、グリフォンの石像だよ」

 

それは里の入り口に前にあったグリフォンの石像である。その出来栄えは本当に見事で今にも動いてしまいそうなほどにリアルである。

 

「へぇ・・・。見事な作りね。これは相当値打ちがあるに違いないわ。これは誰が彫ったものかしら?」

 

「それは里に迷い込んだグリフォンを石化の魔法で石に変えたものですよ。かっこいいので里の観光名所として残しておこうという話になりまして。現在では主に待ち合わせ場所に使われてますね」

 

「なんて無茶な観光名所だ・・・」

 

どうやらこの石像は彫刻家が彫ったものではなく、石化した本物のグリフォンらしい。事情を知ったカズマとアカメはドン引きしている。するとアクアは石像にペタペタ触りながら何かの魔法を唱えようとしている。

 

「・・・アクア、それ何の魔法を使おうしてるの?」

 

「状態異常を治す魔法よ?私、生きて動いてるグリフォンを見たことなくて・・・」

 

「あんたもしここで石化を解除して見なさい?【ピーーーッ】百叩きの刑に処してやるわ」

 

グリフォンの状態異常を治そうとするアクアはアカメが下す刑を聞いた途端に青ざめ、すぐに魔法を中断し、涙目で戻ってきた。えげつない刑を平然と口にするカズマとめぐみんも青ざめ、ティアはドン引きしている。

 

 

ーすいませんでしたー

 

 

最初に向かった観光スポットはこの里の神社である。神社には猫耳スク水少女のフィギュアが祀られていた。

 

「・・・なにこれ?」

 

「この里のご神体です」

 

「どう見ても猫耳スク水少女のフィギュアなんですけど」

 

「その昔、モンスターに襲われていた旅人をご先祖様が助けたらしいのですが、その際にお礼にと旅人がくれたのがこのご神体です。何の神様か知られていないですが、何かのご利益があるかもと、こうして大切に祀られているのですよ。この神社という施設も、旅人が教えてくれたものらしいです」

 

このご神体と呼ばれる美少女フィギュアはおそらく日本からこの世界に転生してきた日本人であるのは、カズマの反応からしてまず間違いないだろう。

 

「ねぇカズマ、美少女フィギュアが私と同じ神様扱いされてるのを見るのは腹立たしいんですけど」

 

「こんなものを持ち込む奴をここに送ったお前はとりあえず紅魔族に謝っとけ」

 

カズマたちがひそひそと話している光景を見て、双子とめぐみんは首を傾げている。

 

 

ーこのすばー

 

 

次に向かった観光スポットは一振りの剣が突き刺さった岩である。これはまさに、これを抜いた選ばれし者がというゲームでは有名なシーンである。

 

「これが、抜いた者には強大な力が備わると言われてる聖剣です」

 

「すごい!さすが紅魔の里!私の琴線が刺激される観光スポットだよ!」

 

岩場に刺さっている剣を見て、ティアはすごく興奮している。カズマも興奮しており、かなりそわそわした感情を抱いている。

 

「な、なぁ・・・めぐみん?ちょっと抜いてみてもいいか?」

 

「別に構いませんが、それが抜けるまでまだまだ時間がかかりますよ?鍛冶屋のおじさんに挑戦料を払わなければいけませんし。」

 

めぐみんの発言にカズマは少し怪訝な顔になった。

 

「鍛冶屋のおじさんに挑戦料?選ばれし勇者のみが抜ける剣とかそういったもんじゃないのか?あ、時間が経つと封印が緩くなるとか?」

 

「その剣は観光客寄せとして鍛冶屋のおじさんが作った聖剣です。剣を抜こうとする挑戦者がちょうど1万人目を迎えた時に抜ける魔法がかけられています。挑戦者数はまだ100人程度のはずですよ。1人1回のみの挑戦ですから、やるならもっと後をおススメします。それって4年前くらいにできたものですから」

 

「おい、ずいぶん歴史の浅い聖剣だな」

 

めぐみんの解説にカズマは呆れている。そんな中アカメとアクアは聖剣をまじまじと見つめる。

 

「でも剣自体は中々の代物よ。これ1個で相当値が張りそうね。アクア、これ、あんたの魔法で解除できない?とっととこれ抜いて売っ払いましょう」

 

「ええ?一応魔法で封印は解除できそうだけど・・・」

 

「や、やめてください!里の観光資源の1つなのですから持って行かないでください!」

 

アカメは聖剣をアクアに封印を解除させて持って帰ろうとしたが、めぐみんに必死に止められるのであった。

 

 

ー・・・ちなみにおいくら万円?ー

 

 

次なる観光スポットは木陰に佇む小さな泉であった。

 

「これは『願いの泉』と呼ばれてる泉です。この泉には言い伝えがありまして。斧やコインを供物として捧げると、金銀を司る女神が召喚できるのだとか」

 

その話を聞いてカズマは日本に伝わるおとぎ話を思い出した。

 

「胡散臭いわね。それ、マジな話なわけ?」

 

「そんなわけないじゃないですか。鍛冶屋のおじさんが定期的に泉の底をさらってくれなければ、今頃は鉄の山になっています」

 

「ちなみにその鍛冶屋のおっさんがさらったコインや鉄材をどうしてるんだ?」

 

「もちろん、武器や防具の材料としてリサイクルです」

 

やはり噂はどこに行っても噂でしかなかったようだ。一方でカズマは紅魔族に伝わる噂を誰が流したのかわかったような気がした。

 

「て、あれ?そういえばアクアは?」

 

話している間にもアクアの姿がどこにもなかった。辺りを見回してみると、泉の表面にさざ波が走り、泉の中央からアクアが顔だけ覗かせた。

 

「お前ちょっと目を離した隙に何やってんだ」

 

「コインが投げ込まれてるって聞いたからちょっと底まで拾いにね」

 

「意地汚いなぁ・・・そのまま泉の女神様ーとか胡散臭いこと言わないでよ?」

 

「・・・観光シーズンなら、それも悪くないわね」

 

ティアの発言を聞いて、まんざらでもないような表情になるアクア。

 

「なら今からこの短剣を投げ込んでやるから金に変えてみせなさいよこの似非女神」

 

アカメはそんなことを言いながら短剣を泉に投げ入れようとしたところ、アクアが抵抗として水をびゅっとかけてきた。向かってきた水をアカメは軽く躱した。

 

「遊んでないで次行きますよ、次」

 

遊んでいる2人にめぐみんが注意したところで、次の観光スポットへと向かうのであった。

 

 

ーこのすばー

 

 

次に案内されたのは謎の巨大な施設であった。

 

「ここは我ら紅魔族の天敵が封印されている謎施設です」

 

「謎施設・・・!」

 

「謎施設って何?あれって何に使う施設なのよ?」

 

謎施設というワードにティアは目を輝かせており、アカメは呆れるように質問した。

 

「謎施設は謎施設です。用途も謎ですし誰が何の目的で作ったのか、いったいいつ頃作られたのかも謎です」

 

この施設が何のために作られているのかは、めぐみんにもわからない・・・というより、おそらく全ての紅魔族もわかっていないのだろう。

 

「ねぇめぐみん、他にすごいものが眠ってる場所はないのかしら?」

 

「以前は、邪神が封印された墓だの、名もなき女神が封印された土地などがあったのですが・・・いろいいろあって、封印が解けてしまったのですよい」

 

あまりもザルな封印にカズマは思わずこう叫んだ。

 

 

ーお前んとこの封印ザルじゃねぇかーーーい!!!ー

 

 

次なる観光スポットへ向かう前に、めぐみんが寄りたい場所があると言うので、まずはそこに向かった。めぐみんが寄りたい場所というのは服屋であった。店に入って出迎えたのはこの服屋の店主である紅魔族の男性であった。

 

「めぐみんじゃないか。帰ってたのか・・・んん?ひょっとして・・・里の外から来た人たちかね?」

 

男性の質問にめぐみんは首を縦に頷いた。男性はカズマたちを鋭い視線でじっと見つめている。その視線にアクアは思わずカズマの後ろに隠れた。

 

「な、なんでしょうか・・・?」

 

男性には余所者には偏見があるのではと思い、カズマと双子は身構える。男性はカズマたちを見て、ふぅーっと息を吐き・・・

 

「我が名はちぇけら!アークウィザードにして上級魔法を操る者!紅魔族随一の服屋の店主!!」

 

紅魔族流の挨拶をかました。服屋の店主、ちぇけらは挨拶をしてドヤ顔になっているが、カズマたちは白けたような表情をしている。

 

「我が名は・・・」

 

「やらんでいい」

 

ちぇけらに対し、ティアも紅魔族流の挨拶で返そうとしたが、アカメに阻まれてしまう。

 

「改めていらっしゃい!外の人なんて久しぶりだよ」

 

「紅魔族随一なんてすごいですね」

 

「ええ。紅魔の里の服屋はうち一件のみだからねぇ」

 

「バカにしてんのか⁉」

 

カズマはちぇけらにお世辞を言ったが服屋が一件しかないと聞き、思わずそう言い放った。

 

「実は今着ているローブの替えが欲しくてですね。これと同じものはありますか?昔ゆんゆんにもらったローブなのですが、一着だけでは何かと不便でして」

 

めぐみんは自分が羽織っているローブをちぇけらに見せびらかした。

 

「そのタイプのローブならちょうど染色が終わったばかりのやつがあるよ」

 

めぐみんのローブと同タイプのローブは物干し竿に干されて並んでいた。

 

「とりあえず、ここにあるものを全部ください」

 

「全部?ほお、あのめぐみんがずいぶんブルジョワに」

 

「そろそろ、私の名が里に聞こえてきてもおかしくない頃ですよ。ローブは勝負服ですし、たくさんあって困るものでもないですからね。というわけで、お金持ちになる予定の双子、お金貸してください」

 

「うっ・・・ここぞってばかりに・・・」

 

「はぁ・・・別にいいけど・・・絶対に返しなさいよ?返さないとロクでもない目に合わせるからね」

 

「それはわかってます。ロクな目に合いたくないですからね」

 

「まいどありー!!」

 

ひとまずはこれから大金が手に入る予定の双子に立て替えてローブを購入しためぐみん。ちぇけらが物干し竿に干してあるローブを卸していると、カズマはその物干し竿を見て驚愕した表情になる。

 

「・・・おい・・・」

 

「?なんですか?」

 

「お前これ・・・いやちょっと待ってくれ。なんてものを物干しにしてんだよ・・・」

 

「おや、お客さん。これが何か知ってるんですか?これはうちに代々伝わる由緒正しい物干し竿ですよ。サビたりしないんで重宝してるんです」

 

ちぇけらが物干し竿に使っているのは、銀色にキラキラと輝くライフル銃であった。

 

「どう見てもライフルなんですけど」

 

「だよなぁ・・・」

 

一目見てライフルであるとわかるカズマとアクアはともかく、めぐみんと双子にはあれがどういった代物であるのかわかっていない様子である。

 

 

ーこの里どうなってんの?ー

 

 

ローブを購入しためぐみんはうきうきとした様子で里を歩いていき、カズマたちは彼女の後についていく。

 

「あっ!カズマ!アクア!双子!紅魔の里の魅力がわかったところで、さらにとっておきの場所に案内してあげます!」

 

「「「「?」」」」

 

自信たっぷりに言うめぐみんに4人は首を傾げ、頭に?を浮かべるのであった。

 

 

ーこのすばー

 

 

めぐみんがいうとっておきの場所とは、めぐみんとゆんゆんがかつて通っていた学校である。その名も、レッドプリズン。

 

「ようこそ、我が魔法学園、レッドプリズンへ!!」

 

「よ・・・ようこそ・・・」

 

めぐみんはこの学校の制服を身に纏っており、隣には同じく学校の制服を身に纏っているゆんゆんがいた。

 

「なぜゆんゆんが?」

 

「昨日泊りに行ったら、ぼっちが寂しそうにしてたから、ミミィと一緒に誘っておいたのです」

 

「そういえばミミィはゆんゆんの家に泊ったんだっけ?」

 

「ああ、それでネガウサもいたのね」

 

「こんなゴミが由緒正しい学校の廊下を歩いてすみません・・・」

 

ゆんゆんの隣には学校の廊下を歩くことに罪悪感を覚えて落ち込んでいるミミィがいた。相変わらずのネガティブ思考である。

 

「べ、べべべ、別に寂しくなんて・・・」

 

「制服まで用意しておいて何を今さら」

 

ゆんゆんは反論しようとしたが、めぐみんの指摘によって顔を赤らめている。

 

「へぇ、これめぐみんたちの制服?かわいいわね!」

 

「そうでしょうそうでしょう!由緒ある魔法学園を案内するので、正装に着替えて当然なのです!」

 

アクアに学校の制服を褒められてご満悦なめぐみんにカズマが異を唱える。

 

「懐かしくなってお前が着たくなっただけだろ」

 

「カズマは学校のことになると途端に辛辣よね」

 

「私たちも訓練学校に通ってたけど、そこまで歪じゃなかったわよ?」

 

「学校で馴染めなかった古傷が痛んでるんだよきっと。かわいそうに」

 

「おいやめろ!プライバシーの侵害だぞ!」

 

アクアたちがカズマの心に傷口を抉ろうとしている時だった・・・

 

『くっくっくっく・・・』

 

『!!』

 

校内に笑い声が聞こえてきた。カズマたちは笑い声が聞こえてきた方角に視線を向ける。視線の先には、扉が開かれ、数人の紅魔族の少女たちがかっこいいポーズ(紅魔族に)をとって立っていた。数人の紅魔族の少女達はカズマたちに紅魔族流の挨拶をかます。

 

「我が名はあるえ。紅魔族随一の発育にして、やがて作家を目指す者」

 

「我が名はぷわちか!紅魔族随一の高身長にして、やがて踊り子となる者!」

 

「我が名はふにふら!紅魔族随一の弟想いにして、ブラコンと呼ばれし者!」

 

「我が名はどどんこ!紅魔族随一の・・・随一の・・・なんだっけ?」

 

1名締まりがない者がいたが、毎度恒例の紅魔族流の挨拶にカズマたちは何とも締まりがない表情を見せている。

 

「・・・あんたってブラコンなわけ?」

 

「うわぁ・・・引くわー・・・」

 

「ま、まだかっこいい通り名を思いついてないだけよ!」

 

ツインテールの紅魔族の少女、ふにふらの名乗りの際に出たブラコンという単語に双子は結構・・・いやかなり引いている。それに対してふにふらは思わず突っかかった。

 

「あるえ、ぷわちか。それに、どどんこにふにくら(  ・ )

 

「ふにふらよ!!わざとね⁉わざとやってるんでしょ⁉」

 

わざとらしく名前を間違えるというめぐみんの行為にふにふらは憤慨している。

 

「久しぶりに戻ったって聞いてね」

 

「驚くかなーって思ってサプライズをしてみたの」

 

紅魔族の少女たちのことを何も知らないアクアは彼女たちが誰なのかとめぐみんに尋ねる。

 

「誰?」

 

「魔法学園時代の同級生たちです」

 

そう、彼女たちはめぐみんとゆんゆんの同級生たちなのである。先ほどめぐみんに憤慨していたツインテールの少女がふにふら。ポニーテールの少女がどどんこ。通り名の通り、大人顔負けの高身長を持つ三つ編み少女がぷわちか。そして同じく通り名の通り、抜群のスタイルを持った眼帯を着けた少女があるえである。ひろぽんが送った手紙に混じっていた小説の1ページを書いた人物こそが、このあるえである。

 

「おかえり。無事戻れて何よりだよ」

 

「うっかり信じてしまう人が出るので、あんな手紙はやめてください」

 

「えぇ⁉」

 

名前を伏せてはいるが、うっかり信じてしまう人物こそゆんゆんである。驚くゆんゆんをよそに、どどんこたちはカズマたちに興味を持っている。

 

「あなたたちがゆんゆんのパーティメンバー?」

 

「!!!」

 

「「はあ?」」

 

ゆんゆんのパーティメンバーという聞き捨てならない単語を聞いて双子は怪訝な顔をしている。

 

「本当に実在したのね。ゆんゆんのパーティ仲間」

 

「えっと・・・何を言ってるの?」

 

「なんか勘違いしてない?私たちは・・・」

 

「しょ、紹介します!!こちらはただの駆け出し冒険者の男の子とアークプリーストの女の子!それでこちらがレンジャーの獣人のお姉さんにシーフの双子の女の子!今はいないけど、やたら頑丈なお姉さんもいるんですよ!後、めぐみんがぼっちしてたから最近パーティに誘ってあげました!」

 

ゆんゆんの必死すぎる紹介にめぐみんは強張った表情を見せ、カズマたちは少しかわいそうな目でゆんゆんを見ている。その様子を見て紅魔族の同級生たちは真相を察した。そんな中であるえだけがゆんゆんにフォローを入れる。

 

「素敵なパーティじゃないか」

 

「ゆんゆんはパーティじゃないけど、いつも助けてくれるのよね。パーティじゃないけど」

 

「ちょっ!!?」

 

「ええ。パーティじゃありませんが」

 

「私は・・・カズマさんのパーティにもゆんゆんちゃんのパーティにもいません・・・。私と同じ基本ソロプレイです・・・」

 

「まっ・・・!!」

 

ゆんゆんの主張をぶち壊すようにアクアたちが本当のことを言い放ち、ゆんゆんは慌てふためている。

 

「「「でしょうね」」」

 

自分の見栄が同級生たちにバレてゆんゆんは恥ずかしそうに顔を赤らめている。

 

「私は心の中でゆんゆんをカエルスレイヤーと呼んでいるわ」

 

「何それ?」

 

「ほら、ビカビカ光る剣みたいな魔法でジャイアント・トードをやっつけてくれたじゃない」

 

「ああ、あの時お姉ちゃんがカエルに食われてた時の?」

 

アクアの言葉で双子は自分たちがスパイ疑惑で疑われていた時に起こったあの出来事を思い出していた。それとは別に紅魔族の同級生たちは驚いた様子を見せていた。

 

「それって・・・」

 

「ライト・オブ・セイバーのことだよね?やっぱり」

 

「ほお。立派な上級魔法じゃないか」

 

「えっ!!?ゆんゆんって中級魔法使いじゃなかった!!?」

 

「「「?」」」

 

ふにふらの驚いた発言にカズマと双子はどういうことかと頭に?マークを浮かべる。めぐみんはそのことに対し、思うことがあるのか顔を俯かせている。

 

「ゆんゆんってさー、半端な時に中級魔法を習得しちゃったから、卒業までに上級魔法を覚えられなかったのよね」

 

「も、もう・・・そんなこと覚えてなくていいよ・・・」

 

カズマはこのふにふらの言葉に少し意外そうな顔をしている。

 

 

ーこのすばー

 

 

学校を出る頃にはもうすでに夕方となっていた。丘の道中を歩いている中、カズマは先ほどの話が気になって少し上の空になっている。

 

「どうしたのカズマ?やっぱり友達がいなかったこと後悔してるのー?」

 

「違うわ!!!いやゆんゆんのことなんだけどさ・・・」

 

「・・・さっきの話ですか?」

 

「あ、それは私も思ったよ」

 

「私もよ。てっきり私は紅魔族って上級魔法をアホみたいにぶっ放すぶっ壊れ集団だと思ってたわ」

 

めぐみんは魔人の丘と呼ばれているこの丘から見える夕焼けを見て、かつて起きた出来事を話す。

 

「・・・実は・・・私は学生の頃、爆裂魔法を覚えるためスキルポイントを大事に大事に貯めていました。それはもう来る日も来る日も。全ては爆裂魔法を覚えるために。しかし、ある日・・・魔物に襲われたこめっこを助けるため、ゆんゆんは自分のポイントを使って中級魔法を習得してくれたんです。私が躊躇している間に」

 

「それって・・・めぐみんが爆裂魔法を習得できるためにかばってくれたってこと?」

 

「・・・・・・頼んだわけではないのですけどね・・・」

 

めぐみんの脳裏にはかつてゆんゆんが中級魔法を覚えるきっかけとなった出来事が浮かんでいる。爆裂魔法を習得することができたのは、間違いなくゆんゆんのおかげである。憎まれ口を叩いてはいるものの、めぐみんはゆんゆんを感謝している。とはいえ、申し訳ない気持ちも入り混じっているため、複雑な心境を抱えていることをカズマと双子は感じ取った。

 

「まぁ、今じゃめぐみんよりも一級な魔法使いなわけだし、結果オーライよね!」

 

「あ、それは言えてる」

 

「そうだな」

 

「アクア、あんたもたまにはいいこと言うじゃない」

 

「なんですとおおおおおお!!!」

 

しかしアクアの放った言葉と、それに同意した4人のせいでしんみりとした気分は吹っ飛び、めぐみんは憤慨する。

 

ドオオオオン!!!

 

「「「「「!!」」」」」

 

するとその直後、めぐみんの家のすぐそばの木柵の外側辺りに爆発が鳴り響いた。これが意味するところは・・・魔王軍の侵入である。




次回、この恨めしい遺物に爆焔を!
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