このすば!この微笑ましい双子に幸運を   作:先導

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この貧乏店主に居候姉妹を!

砂漠都市アヌビスから始まりの街アクセルまで辿り着いたアカメ、ティアの双子の姉妹は出迎えてくれた盗賊の少女、クリスと握手を交わした後、さっそく本題に入る。

 

「じゃあ、さっそくだけどウェーブ盗賊団のアクセル支部の仕事内容について説明するね」

 

「「ちょっと待った」」

 

仕事の説明の話をしようとした途端、双子がストップをかける。

 

「何?どうしたの?」

 

「どうしてクリスが盗賊団のことを・・・それも仕事内容も知ってるの?お頭は知り合いだからって、他の人に軽く仕事の話をするような人じゃないよ?」

 

「は・・・まさかあんた・・・お頭の隠し娘・・・とか・・・もしくは隠し彼女ってわけね!お頭の【ピーッ】とか、【ピーッ】とか、【ピーーーッ】を知ってるわけね!」

 

「んなわけねぇだろ、アホか」

 

ティアの疑問にアカメは的外れな発言をする。顔も心なしか興奮しているように見える。その様子に双子を町まで送った本人、スティーヴがツッコミを入れる。

 

「ははは・・・まぁ、お互いに仕事仲間だから、と言っておこうかな?たまにアタシの仕事を手伝ったり、盗賊団の仕事をアタシが手伝ったりしてるから、自然とね」

 

「あ、なーんだそういうことなんだ!納得ー!」

 

「なんだ・・・隠し娘じゃないのね、つまらないわ。ちっ・・・」

 

「え?今なんで舌打ちされたの?」

 

「気にすんな。姉はただ娯楽に飢えてるだけだ」

 

「は、はぁ・・・」

 

ティアはクリスの説明に納得するが、アカメは理不尽な舌打ちをしている。

 

「き・・・気を取り直して、アクセル支部の仕事は本部とたいして変わらないよ。諜報部の情報を待って、その人が真っ黒と判断したら改心のために盗みを決行してもらうって感じかな」

 

「本当だ、本部と全く同じ仕事だー」

 

「・・・と言っても、今はまだ仕事はないかなー。まだ真っ黒っていう感じの人はこの街にはほとんどいないからね」

 

「なんだ、結局はいつもと変わらないじゃない。期待して損したわ」

 

アクセルの街に移動してもやることは結局変わっていないことにたいして双子は残念そうにしている。ちなみに、アヌビスの街では黒い噂の連中は多くいたが、行動には至っていない。理由は盗賊団を深く警戒しているからだ。

 

「まぁそういうわけだから、この街でのんびりするもいいし、冒険者ギルドでお仕事しても特におとがめなしだから、君たちの好きなように振舞ってよ」

 

「言われなくても、すぐに冒険者ギルドで仕事をするつもりよ」

 

「えっ?何言ってるの?せっかく来たんだから街の観光からでしょ?」

 

「バカ言わないでちょうだい。そんなもん後でいくらでもできるでしょ」

 

「いーや!今日からこの街に住むんだから今のうちに見ておいて損はないでしょ!」

 

「一時的の滞在でしょうが。この街に深く馴染むつもりはないわ。先に仕事に行くべきよ」

 

「それでも住んでる街で迷子なんてなったら笑い話にもならないでしょ!先に観光が大事ー!」

 

まだクリスの話が終わっていないにも関わらず、双子はいつもの如く、喧嘩を始めてしまう。この光景を初めてみるクリスにとっては中々に面白い光景だ。

 

「すまんな、クリス。話の途中だってのに、こいつらときたら・・・」

 

「ははは、いいよいいよ。本当に、面白い子たちだね」

 

「度が過ぎてることもあるがな。まぁ、ちょっくら止めてくるわ」

 

このままにしたらいつまでたっても話が進まないため、スティーヴが止めに行った。仲裁によって喧嘩が収まり、盗賊団3人で話し合っている。そして、待つこと数分・・・

 

「話し合いの結果、まずは冒険者ギルドに挨拶をしてから、この街の観光をするってことでまとまった」

 

「ふふん、まぁ当然だよね!今から仕事に行ったって、今日は戻れなくなるだけだし!」

 

「この愚妹が・・・あまり調子に乗ってると痛い目に合わすわよ」

 

「やれるもんなら・・・」

 

「あー、もうやめろ。ティア、アカメを煽るようなことを言うな」

 

「大変だね、スティーヴさんも」

 

「全くだ」

 

喧嘩が始まる前にスティーヴがそれを止める。そんな苦労人のスティーヴをに労いの言葉をかけるクリス。

 

「じゃあ、アタシが冒険者ギルドを案内するよ。すぐにでも移動できるかな?」

 

「問題ないわ」

 

「いつでもいいよ」

 

「じゃあクリス、後のことは任せるぞ」

 

双子がクリスの案内で冒険者ギルドに向かおうとすると、スティーヴは出口とは別の道を進んでいく。

 

「あれ?スティーヴ、どこ行くの?出口はそっちじゃないよ?」

 

「このまま帰ったってアヌビスに着くのはどうせ明日になる。今日はここに泊まっていく。ついでにこの街にあるサキュ・・・げふんげふん!と、とにかく!クリスに迷惑かけんなよ、お前ら!!」

 

何か言いかけて慌てだしたスティーヴはその場から逃げるように走り出していく。

 

「よくわからないけど、一瞬最低な顔をしてたわね」

 

「うん、最低な顔だったね」

 

「怪しい・・・」

 

一瞬スケベな顔をしていたスティーヴに残された3人は怪しい眼差しでスティーヴが去っていった方向を見つめるのだった。

 

 

ーん・・・このすばー

 

 

とりあえずクリスは双子をこのアクセルが誇る冒険者ギルドまで雑談をしながら案内していく。

 

「そういえばさ、なんで2人は盗賊団になろうって思ったの?」

 

クリスは好奇心で双子にそんなことを聞いてきた。当の双子はお互いに顔を向き合っている。

 

「んー・・・何でだっけ?」

 

「さあ?私たち、気づいたら盗賊団になってたって感じだし」

 

「ふーん・・・そうなんだ」

 

「あ、でもきっかけでって言えば・・・やっぱお頭かな?」

 

「そうね。あいつがいなかったら、私たちはいなかったし。一応、感謝はしないとね」

 

具体的なことはよくわからないが、双子はよほどネクサスによくしてもらっていた・・・いや、愛されていたのかがわかる。そう思うとクリスはくすりと微笑ましく笑った。

 

「・・・何笑ってるのよ」

 

「あ、ごめんね?おかしいとかじゃなくて・・・」

 

「気にしなくていいよクリス。お姉ちゃんはいつもあんな感じだから」

 

「ううん、笑ったのは事実だし・・・と、着いたよ」

 

話し込んでいると、ようやく、それらしき建物が見えてきた。

 

「アクセルの冒険者ギルドへようこそ!」

 

冒険者ギルドにたどり着き、クリスは改めて、双子を歓迎する。

 

「ふーん、ここが、ねぇ・・・」

 

「中はどんな風になってるんだろうね?」

 

「じゃあ中に・・・と言いたいところなんだけど・・・ごめん!」

 

中に興味がある双子にクリスは申し訳なさそうに手を合わせて謝罪する。

 

「本当はギルドや街を案内してあげようと思ってたんだけど・・・アタシもこれから仕事があって・・・。予定よりだいぶ遅くなっちゃったから、時間が迫ってて・・・」

 

「謝らなくてもいいよ。ギルドに案内してくれただけでもありがたいよ」

 

「ま、観光は自由気ままに楽しむわ。観光は本当に不本意だけど」

 

「本当にごめんね。支部の人たちには、アタシの方から言っておくから、2人は観光、楽しんでおいでよ」

 

クリスは本当に申し訳なさそうにしているが、双子は別段気にした様子はない。

 

「おっと!急がないと・・・それじゃあね!今度機会があったら、シュワシュワ一杯、奢らせてもらうよ!」

 

「うん!また会おうね!」

 

クリスは双子に手を振って冒険者ギルドを後にする。そんなクリスの背中を双子は手を振って見送る。

 

「さて、行くわよ、ティア」

 

「うん、行こう、お姉ちゃん」

 

双子は意を決して冒険者ギルドの扉を開け、中へと入っていく。そこで映った光景はアクセルの冒険者たちがシュワシュワを飲んだり、クエストを選んだり、わいわい騒いでたりと何かと賑やかだ。

 

「へえぇ・・・これがアクセルの街の冒険者かぁ・・・」

 

「何よ、うちのアジトと似たような雰囲気じゃない」

 

目の前に繰り広げられている光景にティアは目を輝かせるが、ティアはたいして変わらないと感じており、特に感動はなかった。

 

「おいお前ら・・・その装束・・・砂漠の冒険者だな?」

 

そんな2人に話しかけてきたのは、いかにも厳つそうな肉体に髭を生やしたモヒカンヘアの荒くれ者だった。

 

「え?うん、そうだけど・・・」

 

「砂漠は危険と隣り合わせの地域だ・・・そんな奴らがここに何の用だ?」

 

「へ?そりゃ、このアクセルの街の冒険者になるつもりだけど・・・」

 

「ま、初心に戻って、自分を磨くため、と言っておこうかしら」

 

クリスのような例外はいるものの、自分たちが盗賊団員であると知られるわけにはいかないゆえ、そう発言する双子。とはいえ、嘘自体はついていない。双子の答えを聞いて、荒くれ者はふっと笑みを浮かべる。

 

「ふっ・・・地獄を経験し、更なる地獄へと突き進むか・・・」

 

「「は?」」

 

「いいだろう・・・地獄の門へようこそ、命知らず共」

 

荒くれ者は笑みを浮かべて妙なことを言いながら親指をぐっと突き立てる。言ってることは理解できないが、とりあえず歓迎はしてくれてるようだ。

 

「何あれー?」

 

「さあ?変な奴であるのは変わらないけど」

 

荒くれ者は放っておいて、双子は早いところここで仕事ができるようにするため、ギルドの受付カウンターまで歩いていく。

 

「ようこそ、冒険者ギルドへ!」

 

受付カウンターで双子を出迎えてくれたのはティアより大きな胸を持ち、金髪を後ろに括りあげたギルドの受付嬢、ルナであった。

 

「ネクサスって奴から私たちのこと、なんか聞いてないかしら?」

 

「私たち、その人に言われてここに来たんですけど・・・」

 

「ネクサスさんから・・・ですか?少々お待ちください」

 

双子の言葉を聞いてルナは資料を探しだし、目的の資料を取り出して確認する。

 

「お待たせ致しました!冒険者ギルド、熱風の波のギルドマスター、ネクサスさんからの紹介ですね?お話は伺っております」

 

「私たち、ここでクエストを受けられるようになりたいんです」

 

「そのための手続きをしに来たのよ」

 

「承りました。お2人は既に冒険者登録をしていますので、登録料は必要ございません。お2人の持っている冒険者カードを提示していただきますが、よろしいですか?」

 

「はい!」

 

「ええ」

 

ルナの説明に従って双子は自身の冒険者カードを提示する。ルナは2人の冒険者カードを受け取り、登録手続きを行う。

 

「こ、この数値は・・・お2人ともすごいです!お2人とも素早さも器用さも幸運値も非常に素晴らしい数値を示しています!まさにシーフに相応しい数値です!」

 

2人の職業、シーフと聞いて周りの冒険者たちはざわめいた。それもそうだ。ここは初心者の街。初めから上級職になれる人材は限られてきているのだから。そして2人は他所の冒険者ギルド(盗賊団)から来たシーフなのだから、皆が彼女たちをパーティに誘い、お金儲けができるチャンスが転がってきたのだから騒がない方が無理だ。

 

「私たちのこと、すごい見てるよ、お姉ちゃん」

 

「ま、当然の反応ね」

 

ざわつく冒険者の声を聞きながら登録手続きが終わるのを待つ双子。

 

「お待たせいたしました。登録手続きが完了いたしましたので、冒険者カードをお返しいたします」

 

「てことはこれで・・・」

 

「はい。いつでもこのアクセルの街でクエストを受けられるようになります」

 

『おおおおおおお!!』

 

「やったね、お姉ちゃん!」

 

「やれやれ、やっとかしら」

 

アクセルに新たな冒険者、それもベテランのシーフがやって来たことに冒険者たちは大声で双子を歓迎してくれている。

 

「では改めて・・・ようこそ!アクセルの冒険者ギルドへ!あなた方のご活躍、期待しております!」

 

こうして双子は正式にアクセルの街の冒険者として認められたのだった。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

冒険者登録を終えた双子はギルドから出ていって街の道のりを歩いていく。

 

「さて、登録も終わったし、この後は観光だ!お姉ちゃんもそれでいいでしょ?」

 

「・・・私がその約束を守らずにどっか行ったら?」

 

「その時は人の約束をろくに守らない正真正銘の最低のクズって街中に広める」

 

「大袈裟すぎるでしょそれは・・・」

 

アカメは非常に面倒くさそうに頭をかいてため息をだす。

 

「はぁ・・・どうせ今日はスティーヴの【ピーーッ】野郎が街に滞在してるし、別行動してたらより一層面倒なことになるし、仕方ないから・・・」

 

ついていってやる、と言おうとしたら当のティアはどこかに消えていった。

 

「お姉ちゃん、このポスター、新人踊り子メンバーの野外公演のお知らせだって!お姉ちゃん!この近くだし、早く行こうよ!」

 

「・・・はぁ・・・何が悲しくてこいつの好奇心に付き合わなくちゃいけないのかしら・・・」

 

ティアは近くに張ってあった踊り子のポスターを見て興味がくすぐられていき、踊り子の野外公演会場へと移動している。アカメはため息をこぼしながらティアについていく。ティアはアカメのように街に無関心というわけではない。その真逆で見るものはなんにでも興味を示してしまうほどに知的好奇心の塊だ。彼女のこの純粋さは両親がいないことの寂しさからの反動なのかもしれない。そしてなんだかんだ言いながらもその好奇心に付き合うあたり、アカメも少々妹に甘いところがある。

 

「て、何よこれ。人が全然少ないじゃない」

 

「新人なんだからだいたいそうなんじゃない?」

 

到着した野外公演会場を見てみれば、確かに人は数えられるほどではないが、お客が少なかった。よほど踊り子のレベルが低いのか、それとも興味がないのかわからないが、とにかく少なかった。原因を考えていると踊り子の公演が終了し、踊り子が退場し、司会進行役が登場する。

 

「はい!ありがとうございました!それでは、お時間も惜しいですが、次のメンバーが最後の公演となります!それでは登場していただきましょう!期待の新人、アクセルハーツだぁ!!」

 

進行が進んでいき、この公演の最後の踊り子ユニットが登場する。踊り子の人数は3人。踊り子3人が入場すると少し変わった挨拶をする。

 

「ぼ・・・僕のこと知りたい?教えろ教えろシエロちゃん!」

 

「み、見た目はクール、中身はホット!リアでほっと一息ついて、ね・・・」

 

「世界中の可愛いが大集合!可愛さ1000%、エーリカでーす!」

 

中々に独特な挨拶に初めて見る人たちは珍しがっている。それはこの双子の姉妹も同然であった。

 

「わぁ・・・これが外の世界の踊り子かぁ・・・。私、こんな個性的な挨拶をする踊り子初めてかも!」

 

「そうね。私が知る限りでは、アヌビスの街であんな挨拶をする踊り子はいなかったわね」

 

「これが外の世界ならではの挨拶なのかなぁ?」

 

「いや、独自で考えたんでしょ。周りの奴ら、目が点になってるし、何より世界には紅魔族なんて頭のおかしい奴がいるくらいだし」

 

「アヌビスの街でも何人か紅魔族がいたけど、そんなにおかしいかなぁ?」

 

「そうだった・・・あんたのセンスは紅魔族並みの出来の悪さなんだった・・・」

 

「今すごくムカつく単語が出てきたけど・・・許してあげるよ。公演中でよかったね」

 

双子が話し込んでいる間にも公演は進行していっており、現在は彼女たちの踊りや歌をお披露目している最中だ。その美しい立ち振る舞いにティアは見惚れていた。

 

「わぁ・・・きれい・・・」

 

「・・・?んん?」

 

するとアカメは長い黒髪を持った青い瞳の少女、リアにたいして目を細めている。

 

「?どうしたの?お姉ちゃん?」

 

「いや・・・あいつ、どっかで見たことあるような・・・」

 

「お姉ちゃんの友達?でもお姉ちゃん、知り合いは多くても友達はいなかったような・・・」

 

「それはあんたも同じでしょうが。まぁそれはどうでもいいのよ。なんだったかしらあの子・・・」

 

アカメはリアをどこで出会ったかと思いだしているが、全く心当たりがなかった。

 

「もう、そんなの後でもいいじゃん。お姉ちゃんの事情なんてどうでもいいし」

 

「あんたはもう少し姉にたいして興味を持ちなさいよ」

 

双子は何かといがみ合いが発生しそうになるが、公演中ということもあってちゃんと大人しくしていた。公演にいる周りの客はというと、踊り子ユニット、アクセルハーツの美しい声や踊りに見惚れて、辺りは大歓声を上げていた。

 

「すごく・・・きれいだね、お姉ちゃん・・・」

 

「私の勘だとあの子たち、いつか大物になるわよ」

 

この大物発言だが、そのための経緯がまさか自分たちが関わることになることになるとは思わなかっただろうが、今は関係ない話だ。大歓声からして、アクセルハーツの初の公演は恐らく大成功だと思われる。

 

 

ーこのすば!ー

 

 

公演が終わった後、双子はアクセルの街の観光を再開させる。アクセルの街では砂漠の街では見たことがないものばかりでティアは新鮮な気持ちが隠せないでいる。アカメも無関心でありながらも、心なしか胸が躍ってるような気分になっている。

 

「へえ~・・・あれもこれも見たことのないものばかり・・・。外の世界に来れるきっかけをくれたお頭に感謝、だね!」

 

「うーん・・・やっぱ見たことあるのよね、あの子・・・」

 

ティアはアクセルの街に感激して周りを見て回っているが、アカメは少しだけ踊り子のリアのことを考えている。

 

「まだ考え事?これだけ考えても出ないなら、やっぱ知り合いじゃなかったんだよ。大体、お姉ちゃんがあんな可愛い子が知り合いなわけないじゃん」

 

「こいつぅ・・・!後で絶対に泣かす・・・!」

 

アカメはティアの発言にちょっとイラつきを見せている。

 

「あ、キツネのモンスターのぬいぐるみだ!可愛いなぁ・・・」

 

「キツネ?キツネ・・・キツネ・・・」

 

キツネのモンスターのぬいぐるみを見て、アカメは記憶を振り返り、思い出したような顔をする。

 

「あ、もしかして・・・コン次郎の時の奴かしら」

 

「・・・コン次郎って・・・誰?」

 

「あの黒髪の踊り子の持ってるぬいぐるみの名前よ」

 

「え・・・まさか・・・お姉ちゃん、本当に踊り子と知り合い?」

 

まさかのアカメがリアの知りあいだったことに驚いている。

 

「他2人は知らないけど、あいつは本当にたまたまよ。アヌビスで1人で歩いてたらたまたまあいつとぶつかってね。その時にコン次郎がいないとか喚いててね。あまりにうるさかったから、コン次郎探しを手伝ったってわけ」

 

「そうなんだ。お姉ちゃんって意外にも優しいとこあるからなぁ」

 

「意外には余計よ。私は常に優しいのだから」

 

「どの口が言ってるんだか、この嘘つきは」

 

相変わらずのいがみ合いはともかく、リアと知り合った経緯には納得するティア。

 

「・・・ところでさ、なんでさっきからぬいぐるみをコン次郎呼びなの?」

 

「あの場でぬいぐるみとか言ったらブチギレられてね。仕方なくその場の流れで呼んでたらいつの間にか定着したのよ」

 

「え・・・何それ・・・変なの・・・」

 

こん次郎をぬいぐるみ呼ばわりたいしてリアが過剰なほどに怒り狂ったことを聞き、ティアはかなりドン引きした。

 

「そんな奴がこんな街で踊り子とは・・・魔王退治はやめたのかしら?」

 

「魔王?それって世界のどこかにいるあの魔王?」

 

魔王・・・その存在はこの世界において邪悪の化身という存在。現にこの世界は今、魔王の配下である魔王軍による破壊活動が行われている。といっても、それはどこかに限られており、この街は未だにその影がないため平和そのものゆえだ。

 

「ええ。あいつ、魔王を倒すために来た、なんて事を言ってたわ」

 

「へぇー、勇者候補と似たようなことを言うんだね」

 

勇者候補とは、誰が決めたのか知らないが、魔王を討伐するための存在、勇者として選ばれているものたちのことだ。ちなみに、この世界でもっとも有力な勇者候補は、最近現れたという魔剣の勇者だ。

 

「私はてっきりそんな事を言うのは魔剣の勇者だけかと思ってたわ。名前は確か・・・オコノギだったかしら?」

 

「!?」

 

アカメが魔剣の勇者の名前を口にした時、偶然すれ違った青い鎧を着こんだ青年が変に反応する。

 

「違うよお姉ちゃん、魔剣の勇者はそんな名前じゃないよ。ほら・・・セセラギだよ!」

 

「!!?」

 

「ま、魔剣の勇者なんて、どうでもいいけど」

 

「!!??」

 

先ほどから聞き耳を立てている鎧の青年は何やら信じられないといった顔をしている。

 

「なんせ魔王を倒すのは私たちよ。踊り子でも魔剣の勇者アマガニでもないわ」

 

「!!!??」

 

「私たちが魔王を倒せば、私たちの存在が政府に認められて、堂々と歩き回れるもんね!」

 

「そうよ。功績が認められて、非公式から正式に活動できるようになる、万々歳よ」

 

「うわっ!なんだかやる気がみなぎってきた!」

 

双子たちはどうにも魔王を倒す気でいるようでそれ前提で話を進めている。

 

「わかったなら、さっさと居候先に行くわよ。もう十分に観光したでしょ。明日のクエストに向けてもう今日は休みましょう。魔王を倒すためにね」

 

「う・・・まだ観光したりないけど・・・わかったよ、お姉ちゃんも疲れてそうだし」

 

「じゃ、行くわよ。踊り子の奴にも魔剣の勇者アカガニにも負けてられないわ」

 

双子はここで観光を終わらせ、居候先へと移動を始める。その様子を鎧の青年はプルプルと震え、双子に向けて叫び声をあげる。

 

「ぼ・・・僕の名前はミツルギだあああああああああ!!!

 

 

ーちくしょおおおおおお!!-

 

 

双子がこのアクセルで住む場所の名はウィズ魔道具店。魔道具を取り扱っている店だ。双子はその店へ向かって、メモに書いてある住所へと向かっている。

 

「魔道具、かぁ・・・」

 

「あまりいい思い出がないわね・・・」

 

双子は魔道具にたいしてあまりいい思い出がない。というのも前日、盗賊団のアジトでネクサスにクエストの大失敗によるお仕置き兼仲直りのきっかけと評して魔道具を付けられたことがあった。魔道具を付けられた後、双子はすぐに喧嘩したが、その喧嘩に魔道具が反応して、爆発を引き起こしたのだ。ちなみにその魔道具は爆発を引き起こすことで喧嘩を仲裁させるためのもので、この爆発からなる恐怖心で仲直りさせる代物である。結局爆発に巻き込まれても双子が喧嘩をやめることはなかったが。

 

「メモだと・・・この辺りよね」

 

「あ、ここじゃない?」

 

話し込んでいる間にも目的の魔道具店にたどり着いた双子。ウィズ魔道具店にはcloseの立て札がかけられている。

 

「閉まってるのかな?」

 

「私たちは居候者なのよ。こんなの無視よ無視」

 

「お、お姉ちゃん・・・」

 

アカメは立て札を無視して扉を開けようとする。扉は普通に開いていた。

 

「開いてる・・・」

 

「ほら、入るわよ」

 

「お、お邪魔しまーす・・・」

 

中に入ってみるとそこには数多くの魔道具が飾られている光景が映る。

 

「すごい・・・魔道具がいっぱい・・・」

 

「そりゃ魔道具店だからね」

 

辺りを見回しているとカウンター席から何かごそごそという音が聞こえてきた。そっちをじーっと見てみると、席の方からこの店の主らしき女性が現れた。長い茶髪で片目が隠れており、ルナよりも大きな胸を持った女性は双子の姿を確認すると、途端に慌てた振る舞いを見せる。

 

「あ、ああ!お、お客さん!困ります!今日は店じまいでして・・・勝手に入られると・・・その・・・」

 

あまりに弱気な忠告に双子は店主に対して頼りなさを感じる。

 

「はぁ・・・私たちは客じゃないわよ」

 

「あのぅ・・・今日からここに住むことになったんですけど・・・」

 

「え?」

 

途端にこの店に住む発言をするティアに店主は首を傾げ、すぐに気づいたのか笑顔を見せてポンと手を叩く。

 

「ああ!じゃああなた方がネクサスさんの!お話は伺っています。ようこそ、ウィズ魔道具店へ」

 

店主は双子にそれぞれ手を差し出し、互いに握手を交わす。

 

「私はウィズと申します。この魔道具店の・・・そのぅ・・・店主、をやってます」

 

「私、ティアと言います。この人がうちの残姉ちゃんのアカメです」

 

「ちょっと、誰が残姉ちゃんよこの愚妹」

 

「他に誰がいるっていうの残姉ちゃん」

 

「言わせておけばこの!」

 

アカメはティアの態度に怒ってティアの頭にげんこつを与えた。

 

「痛っ!何すんの!」

 

「やろうっての⁉」

 

「上等だよ!」

 

「え・・・ええ!!?」

 

双子は取っ組み合い喧嘩をウィズの目の前でやってしまい、ウィズは戸惑ってしまうがすぐに止めに入る。

 

「や、やめてください!お店の中で暴れないでください!」

 

「この【ピーーーッ】が!!」

 

「この毒舌噓つきが!!」

 

ウィズが止めに入っても双子は喧嘩をやめる気配はない。

 

「ああ・・・いったいどうすれば・・・あ!あれがありました!」

 

何かを閃いたウィズは棚から2つのベルトを取り出し、それを笑顔で双子に見せつける。それを見た双子は顔を青ざめながら喧嘩をやめ、ウィズから距離を取り始める。

 

「う、ウィズさん・・・?そ、それって・・・」

 

「ふふふ、これはですね・・・」

 

「仲良しのベルト・・・でしょ・・・仲直りさせるための魔道具・・・」

 

「あ、ご存じだったんですね。これはですね、いつも仲が悪い人たちの関係修復にとても役に立つ優れも・・・」

 

「「そんな爆発して命の危険のある魔道具のどこが優れもの!!?ゴミ同然よ(だよ)!!」」

 

「え、ええええ!!?」

 

下手をすれば命を落とす危険な魔道具を優れものというウィズに双子は息ピッタリでツッコミを入れる。

 

「お、おかしいですね・・・ネクサスさんはいい品物だって言ってたのに・・・」

 

「ちょっと待ちなさい。お頭が?」

 

「これを、いい品物?」

 

「はい。だからネクサスさんがはるばるアヌビスからここまで来て買ってい・・・」

 

「「このゴミを売ったのはあんただったのかぁ!!?」」

 

「ほえええええ!!?」

 

自分たちによくない思い出を作った原因がウィズであったことに双子は大きく声を荒げて叫んだのだった。

 

 

ーこのすばあ!!!-

 

 

ごたごたがありながらも、ウィズは双子に魔道具店の奥にあるリビングへと案内し、そして双子の部屋を案内していった。そしてその後は双子が観光の際に買ったものを調理して、ウィズと共に夕食を食べた。そして、夕食を食べ終えた双子は各々の時間を満喫している。

 

「ふぅ~、さっぱりしたよぉ~・・・」

 

ティアは風呂から上がってパジャマに着替え、濡れた髪をバスタオルでよく拭きながらリビングへと向かっていく。リビングにはウィズが何かとにらめっこしている。ティアの存在に気付いたウィズはにっこりと微笑んでいる。

 

「あら、ティアさん。お湯加減はいかがだったでしょうか?」

 

「あ、はい。最高でしたよ。ウィズさん、ありがとうございました」

 

「それは何よりです」

 

ティアは髪を拭き終えてウィズの隣まで歩いていく。

 

「ウィズさん、何してるんですか?」

 

「ウィズさんだなんて、そんな・・・。普段通りの接し方で大丈夫ですよ。呼び捨てにしても構いません」

 

「じゃあ、ウィズ。何してたの?」

 

「今月の魔導具の売れ行きを確認していたんです。まぁ・・・と言いましても、全く売れませんので、赤字続きですが・・・」

 

「そ、そうなんだ・・・」

 

「絶対に何かがおかしいんです・・・。間違いなく売れる商品だと思っていたのに・・・」

 

ウィズの店はどうにも魔道具が売れず赤字が続いているようで、それを気にしているウィズは目に涙を浮かべている。

 

(そりゃあんな売れないものを売ってたらそうなるよ・・・)

 

その原因が魔道具にあるとわかっているティアは心でツッコミを入れる。

 

「ぐすん・・・それでティアさん、何か不自由なことはありませんか?気になったものがあれば、何でも言ってくださいね」

 

「ああ、大丈夫だよ。割りといい部屋で私もお姉ちゃんも、気兼ねなくくつろげてるよ」

 

「そう言っていただけると、頑張ってお部屋を掃除した甲斐があります」

 

ティアの正直な感想を聞くとウィズは安心したようにっこりと微笑む。

 

「・・・ねぇ、ウィズ。どうして初対面の私たちをここに置こうって決めたの?」

 

急なティアの問いにウィズは少し困ったような顔をした。

 

「えっと・・・ネクサスさんにどうしてもと言われまして・・・熱意に負けてしまい、承諾したんです。いらないといったのにお金や食料も無理やり受け取っちゃいましたし・・・」

 

「お頭が・・・」

 

「それに・・・ネクサスさんの話を聞いていたら・・・失礼かもしれませんが、かわいそうと思ってしまったんです」

 

「かわいそう?」

 

ウィズの放ったかわいそうという単語にティアは首を傾げる。

 

「あの・・・ご両親が、いないんですよね?」

 

「・・・うん」

 

「ご両親の愛情を受けることができないどころか・・・会うことも叶わないだなんて・・・そんなの、悲しすぎます・・・」

 

「はは、まぁ・・・人から見たらそりゃ悲しいと思われても仕方ないよね」

 

ウィズの言葉を否定しないのかティアは少し苦笑しているが、そこに後ろめたさはない。

 

「でもね、私は悲しくなんかないよ。だって、私には盗賊団のみんながいる。みんなが私に希望を与えてくれたんだよ。盗賊団がいたからこそ、私は、生きていられるんだ。悲しいより、嬉しいの方が勝っちゃってるね」

 

「ティアさん・・・」

 

「それにね、お母さんはこの世界のどこかで生きてるのはわかってるんだ。可能性は0ってわけじゃないんだよ。だから私は立派になって、どこかにいるお母さんに会って、私たちを置いていった性根を盗んでやるんだ!それで、改心したら・・・思いっきり甘えるんだ!」

 

ティアの揺るぎない決意と願い、そして屈託のない笑顔を見て、ウィズは微笑み、ティアの頭を撫でた。

 

「ティアさんは、思っていた以上に強いんですね。感心しました」

 

ティアはウィズに撫でられたことに目をぱちくりとさせている。

 

「はっ!す、すみません!つい・・・」

 

「ううん、ウィズなら、撫でられても・・・大丈夫だよ」

 

ティアはウィズに身をゆだねるように体を寄せてきている。それに合わせてウィズは微笑み、またティアの頭を撫でる。

 

「なんだろう・・・ウィズに撫でられると・・・とっても心地がいいな・・・。なんでだろう」

 

「ふふふ」

 

ティアとウィズのこの光景を見つめる影がある。その正体はアカメだ。

 

「ふん・・・」

 

会話の内容を聞いていたアカメは鼻を鳴らし、この場を去る。

 

 

ーこのすば!-

 

 

翌日の朝の魔道具店、双子は朝食を食べ終えた後、本格的にアクセルの冒険者として仕事を行おうと思い、各々がその準備をしている。そしてアカメはそのために役に立つ魔道具がないか探している。

 

「お姉ちゃん、何してんの?」

 

「魔道具探しよ。こんなゴミばっかでも、1つくらいは役に立つものがあるはずよ」

 

「ご・・・ゴミだなんてそんな・・・ひどいです・・・どれも苦労して仕入れてきたものなのにぃ・・・」

 

自分が仕入れた魔道具をゴミ呼ばわりされて、ウィズは涙目になる。

 

「長くなりそう?」

 

「手伝う気がないなら先にギルドに行きなさい。じろじろ見られたら目障りよ」

 

「むっ・・・せっかく待っててあげるのに何その言い方?」

 

「いいからさっさと行きなさい」

 

「はいはい先に行ってますよーだ。全く、これだから・・・」

 

朝からでも仲が悪い双子の様子にウィズは喧嘩しないかハラハラしているが、先にティアが店から出るようで事なきを得た。

 

「あ、ティアさん、道中は気をつけてくださいね」

 

「平気平気ー。アクシズ教徒が現れない限り、私は大丈夫だからー」

 

ティアは盛大なフラグを残して魔道具店から出ていった。それを見てアカメはため息をこぼす。

 

「はぁ・・・あいつ、また余計な一言を・・・」

 

「ほ、本当に大丈夫でしょうか?この街にもアクシズ教徒の方々は少なからずいますし・・・」

 

「いや、絶対大丈夫じゃないわ。変なことを言ったらあの子必ず・・・」

 

アカメが続けて口を開こうとした時・・・

 

「ぎゃーーーーーー!!!!出たーーーーーー!!!!」

 

「待ってください素敵なお嬢さん!!あなたほどの美しい人はぜひともアクシズ教に入信してください!!今ならもれなく、お金ももらえて、アクシズ教徒と名乗れる素晴らしき名誉、さらにはこの洗剤も差し上げますからー!!」

 

「いや本当結構です!!お帰り下さい!!」

 

店の外から悲鳴に近いティアの声と、アクシズ教徒と思われる人物の声が聞こえてきた。どうも追いかけまわされているようで声がだんだんと店から遠ざかっていく。

 

「はぁ、やっぱり。予想以上に早かったわね」

 

「あの・・・いいんですか?放っておいて」

 

「いいのよ。余計な一言を言ったあの子の自業自得だし。それに私もアクシズ教徒には関わりたくないのよ」

 

双子は共通で大のアクシズ教徒嫌いである。正確には苦手の方が正しいが。そういうこともあってアクシズ教徒絡みは例え姉妹がピンチでもお互いに関わりたくないのだ。

 

「で、ですが・・・」

 

「心配しなくても私たちはシーフよ。アクシズ教徒くらい、逃げ切れるわ。ていうかそうでないと困るわ。入信させられるもの」

 

「は、はぁ・・・」

 

「ま、愚妹なんてどうでもいいわ。それよりも魔道具よ。さっきよさそうなものを見つけたんだけど」

 

アクシズ教の話を終わらせるためにアカメは1つの魔道具を取り出した。形はダウジングの道具のように見える。

 

「あ、その魔道具は採掘クエストにとっても便利な魔道具です。その魔道具にクエストに必要とされる鉱物の名前を入力すれば、自動的でその鉱物がある個所を示してくれるんですよ」

 

「へぇ、これさえあれば探す苦労もせずに目的なものが取れるってわけね」

 

「はい。ただ、その魔道具は常に使用者の魔力を異常に吸い取ってしまうので・・・すぐに疲れてしまい、1週間も身動きが取れなくなってしまうという欠点が・・・」

 

「ただのゴミじゃないのよこれ!!!」

 

よさげな魔道具かと思えば欠点が大きすぎて使い物にならず、思わずアカメは魔道具を地面に叩きつける。

 

「・・・で?この願いが叶うチョーカーはどう?当店で珍しく売れてるって書いてるけど・・・」

 

「あ!アカメさん!それを首につけちゃダメですよ⁉それは願いを叶えるまで外れないうえに、日を追うごとに徐々に首が締まってしまうもので・・・」

 

「呪いのアイテムじゃないこれ!!これのどこが売れるってのよ!!?」

 

「そ、そちらは女性の人気のアイテムでして・・・死ぬ気になれば絶対に絶対に痩せられるという・・・」

 

「しかも自分で願いを叶えるの!!?あっぶな・・・付けなくてよかったわ・・・」

 

またも命の危険のある魔道具を手にしたことにアカメはひどい冷や汗をかいた。

 

「・・・これは?」

 

「そちらは・・・」

 

アカメは次々に気になった魔道具をウィズに解説してもらったが、どれもこれも使える代物どころか、自分に負担しか返ってこない魔道具しか置いておらず、激しい頭痛にあう。

 

「いったいどうなってんのよ・・・全部ゴミでしかないじゃない・・・これでよく売ろうと考えたわね・・・」

 

「うぅぅ・・・ごめんなさい・・・」

 

あまりに疲れ切ってるアカメにウィズは申し訳なさそうにしている。その様子を見てアカメはため息をこぼす。

 

「はぁ・・・仕方ないわね・・・。クエストで何かよさげな魔道具が見つかれば、無償で譲ってあげるわ。それを売って生活の足しにしなさい」

 

「え?」

 

「あ、後、時間があれば店も手伝うわ。客足が来ないんじゃ、あんたも潤わないでしょ」

 

「あ、あの、アカメさん?」

 

「それから、命に関わる魔道具は全部捨てなさい。お試しで使って死んだら経営どころじゃないでしょ」

 

アカメの急な優しさを見せている姿にウィズは戸惑っている。

 

「あの・・・もしかして・・・私を気遣って・・・?」

 

「勘違いしないで。私は恩を仇で返すような真似をしたくないだけよ。別にあんたのためでも、お頭のためでもない。全て、私のためよ」

 

口ではきついことを言ってはいるが、心の奥底では、深い優しさが込められていた。ただアカメは不器用なだけなのだ。

 

「・・・ありがとうございます。アカメさんは、お優しいですね」

 

アカメなりの優しさを見てウィズは少し嬉しそうにしている。アカメは表情を変えることなく、その優しい発言を否定する。

 

「優しい、なんてバカバカしい。私には無縁なものよ。私は、嘘つきなのだから」

 

アカメはそう言い切って魔道具店の扉を開いて、外に出ようとする。

 

「アカメさん」

 

そんなアカメをウィズはきちんと見届ける。

 

「いってらっしゃい」

 

ウィズの言葉を受け取ったアカメは振り向かず、扉を閉めてそのままギルドへと向かっていく。この時のアカメはらしくないことをしたと考えている。そう考えているうちにギルドへの道のりを歩いていると・・・

 

「わああああああああ!!!お、お、お、お姉ちゃーーーーん!!!!」

 

「お待ちをーーー!!!」

 

「入信してくださいーーーー!!!」

 

「洗剤あげますからーーー!!!」

 

「今なら石鹸もプレゼント!!!」

 

未だにアクシズ教徒から逃げていたティアがアカメに向かってきている。しかも、1人とかではなく、複数人・・・恐らくは10はいってるだろう。

 

「げええええええ!!?こっち来ないでよ!!!」

 

「そ、そんなこと言わずに助けてよ!!!」

 

アカメは巻き込まれたくない一心でティアとアクシズ教徒から逃げ出す。ティアはアカメを追いかけ、アクシズ教とはそんな2人を追いかける。

 

「あんたの言葉はアクシズ教徒ほいほいと似たようなもんなんだから余計なことを言って増やしてんじゃないわよ!!!」

 

「お姉ちゃん!!怖いよ!!アクシズ教徒がこんなにいるなんて想像してなかったよ!!アヌビスの温泉のアクシズ教徒のおばちゃん並みに怖いよ!!」

 

「あのクソババアの方が遥かにマシよ!!こんなのはそれを越えた地獄よ!!」

 

迫りくるアクシズ教徒の恐怖から双子は悲痛な叫びをあげながら必死に逃げている。

 

「そこのお嬢さんはこの方のご家族なのですか⁉」

 

「それはなんと幸運でしょう!!ぜひともアクシズ教に入信を!!」

 

「お2人とも入信すれば、ご家族まとめて、アクア様のお恵みが齎されるでしょう!!」

 

「ああ、何と幸福なことでしょう!!」

 

アクシズ教徒たちは2人に入信してもらおうと必死な勢いで迫っている。

 

「しかも今ならなんと!!洗剤や石鹸も付いてくる!!」

 

「そしてお得な話、この洗剤、飲めるんです!!!」

 

「飲めるかああああああああ!!!!」

 

「さらにこの石鹸、食べられるんです!!!」

 

必死の勢いでアクシズ教徒から逃げていく双子。この追いかけっこはもう1時間、いや2時間も続いたような。

 

 

ー食えるかああああああああ!!!!-

 

 

ようやく冒険者ギルドにたどり着いたころには、双子はもうすっかりまいっている。2人とも心が死んだように机に突っ伏しており、目にも光が宿っていなかった。

 

「は・・・ははは・・・石鹸や洗剤って・・・飲めるんだね・・・知らなかったよ・・・ははは」(ハイライトオフ)

 

「女神アクア・・・あいつは・・・女神なんかじゃない・・・悪魔の生まれ変わりよ・・・」(ハイライトオフ)

 

アクシズ教徒に振り回された双子は夕方になるまでこの状態が続いたような。

 

 

ーこのすば・・・-

 

 

「へぇっくしょん!・・・誰か、女神である私の悪口を言ったような気がするわ」

 

「おらぁ!カズマ!手が止まってるぞ!働けぇ!!」

 

「は、はいぃ!!」

 

「おーい、お嬢ちゃん、こっちに水を頼むー」

 

「あ、はーい」




次回予告的なもの

ティアです・・・定時報告です・・・。

アクセルの街は魔窟のような場所でした・・・。一見すれば、街もにぎやかですし、食べ物もおいしいです・・・。ウィズも優しくて、温かくて、とても居心地がよかったです。でもそれ以上にこの街に住むアクシズ教徒は怖いです・・・。たった数日で、砂漠に帰りたくなってきました・・・。ああ・・・アクシズ教徒に呪いを・・・。

報告書作成者、ティア

頭の一言:アルカンレティアの方が地獄だからまだマシだ!!

次回、この異世界転生者に駄女神を
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