朝早くの冒険者ギルド、双子は今回はパーティメンバーの誰よりも朝早くに来ており、朝からシュワシュワを飲み、シュワシュワに合うつまみを食べながらカズマたちが来るのを待っている。
「平和だねぇ~・・・」
「そうね。本当に平和だわ」
平和だというのは砂漠にいたころと全く変わっていないが、やはり盗賊稼業は砂漠にいた頃と比べれば、極端に少ないために、双子は刺激が足りなく感じている。とはいえ、今のパーティの方がスリルを楽しめるし、別の意味で退屈していないため、不満は何1つない。
「そりゃ、まだ3日しか経ってないけど、カズマのパーティは面白くて好きだよ?でも、こうしてると、盗賊稼業が恋しくなる時って、ない?」
「言いたいことはわかるわ。でも、このアクセルの街ではほとんど黒っていう奴がいないのも事実よ。こうして呑気に飲んだくれてる奴らがそれを物語っているわ」
「クリスに聞いても、ここに黒い噂の悪者は数えられる程度しかいないっていうからねー・・・」
「ま、0ってわけでもないのだから、のんびり行きましょう。今の私たちにできることといえば、自分の腕を衰えないようにすることだけよ」
今後黒の悪人が人を騙し、破滅へと誘う者は現れないとは思っていないアカメはそう言いながらつまみの焼きカエルたれ味を食べる。すると、アカメの発言がおかしいのかティアがにたにたと笑っている。
「衰えないようにするって・・・そもそもお姉ちゃん、盗賊技能はスティールしかとってないじゃんw」
「は?何笑ってんのよこのクソビッチ」
ティアが自分を見て笑っている姿が癪に障ったのかアカメはティアに突っかかってくる。
「だって、だってさ、スティールしか使わない間抜けなシーフだなんて、聞いたことがないんだもんwこれが笑わずにいられる~?」
「その分を戦闘で補っているって毎回言ってるわよね?なぜ理解しようとしないのかしら?」
「じゃあ聞くけどさ、お姉ちゃんはなんで盗賊技能をスティールしか振ってないわけ?施錠は?敵感知スキルは?何もかも振ってないから能力足りなすぎだと思うんだけどw」
「ぬぐっ・・・スティールしかとってないのは、大事なものを奪われた瞬間の間抜け面が・・・」
「うんうんたまらなく好きなんだよね?でもさ、その人が大事なものを常に身に着けてるっていったい誰が決めたのかな~?そういう場合のこと、ちゃんと考えてる~?」
「ぐっ・・・こ、こいつ・・・!」
今回の喧嘩の言い合いはアカメが言い負かされており、アカメはこめかみをひくひくしている。
「悔しかったら盗賊技能を振ってみれば~?その場合、お姉ちゃんのアイデンティティずったずただけどねw」
「い・・・いいわよ?振ってやろうじゃない。アイデンティティがなんぼのもんよ」
悔しさのせいかアカメは自分の冒険者カードを取り出し、盗賊スキルを覚えようとするが、表示されているスキルポイントは0だった。
「お姉ちゃん忘れたの?お姉ちゃんのスキルポイントは、短剣スキルの威力強化のために全部使ったんじゃん~w」
「・・・・・・」
「前にもこんなことがあったのに、またやらかすなんて、本当、こりないんだから~w」
いい加減堪忍袋の緒が切れたのかアカメはすっと席を立ちあがり、ティアの胸倉を掴み上げる。
「あんたちょっと表に出なさい。今日こそ姉に歯向かう妹の末路ってものを教えてあげるわ」
「望むところだよ。姉は妹より勝るって間違った認識を正してあげるよ」
自分の胸倉を掴んだアカメにたいしてティアはやり返しとしてアカメの胸倉を掴み上げる。そしてお互いに怒りの火花がバチバチとこみあがっている。
「お、おい!何をやっているんだ2人とも!喧嘩はやめないか!」
今にも殴り合いになりかねない様子を止めたのはちょうどいまギルドにやってきたダクネスだった。
「放してよダクネス。私はこの能力を偏った姉の根性を叩き直すんだから」
「それはこっちのセリフよ。戦闘力ゴミのあんたが、取っ組み合いで勝てると思ってんの?」
双子の怒りの矛先は未だに変わっていないのか、ダクネスに視線を合わせようともしない。その様子にダクネスはなぜか頬を赤らめる。
「た、確かにお前たちは家族同士なのだからお互いのことで鬱憤が溜まるだろう。だ、だ、だから・・・そういう鬱憤は、ぜひとも私に向けてくれ!なんだったら、私を殴ってくれても構わない!!いや、むしろ殴れ!!」
「「・・・・・・」」
相も変わらずドM根性むき出しのダクネスを見て、双子は喧嘩がバカらしくなったのかお互いの胸倉を掴んだ手を放す。ティアはかなり引いた様子で、アカメは嬉々とした様子で。
「へぇ・・・私の鬱憤、晴らさせてくれるっていうのかしら?なら、付き合ってもらおうじゃない?私の鬱憤晴らしに」
「望むところだ!」
「今ちょうど機嫌が悪かったし、今ならあんたを喜ばせてあげられる快楽を、味わえるチャンスよ」
「む、むむむ、むしろ望むところだ!!」
アカメはダクネスを連れてギルドの奥へと向かっていく。
「・・・はぁ・・・せっかく有利に立ててたのにな・・・つまんないの」
「何ですか?またアカメと喧嘩をしていたのですか?」
ティアがアカメが去ったのをつまらなさそうにしていると、ちょうどめぐみんもやってきた。
「あ、めぐみん。そうなんだよ。まぁ、私が喧嘩を吹っ掛けたから私が悪いんだけど」
「アカメとティアは本当に姉妹なのかというのを疑ってしまいますよ・・・」
アカメとティアの仲が悪いことにめぐみんは少しあきれている。
「それで、何が原因で喧嘩を?」
「スキル関連についてだよ。お姉ちゃんのスキル習得に偏りがあるからさ・・・」
「それはティアも言えたことではないのですか?攻撃スキル、1個も習得してないじゃないですか」
「めぐみんにだけは言われたくないよ。まぁ、そうなんだけど・・・。それでも限度ってものがあるじゃん?お宝の鍵の解除や敵感知もできないシーフなんて・・・」
ティアがアカメに対して文句を言おうとした時、ここでティアは考え始めた。
(待てよ?カズマの敵感知はシーフに劣るからいいけど・・・もしもお姉ちゃんがシーフの能力を全振りしてたりしたら・・・私の存在意義がなくなる!!?)
ないとは思ってはいるが、アカメがシーフのスキルを全振りした場合にたいして、自分が存在する意味がなくなることを危惧し始めたティア。
「や、ややや、やっぱりお姉ちゃんは今のままの方が1番だよ!」
「はぁ・・・今ティアが何を考えてるのか、手に取るようにわかるようです・・・」
焦り始めているティアを見て、いったい何を考えているのかわかってしまうめぐみん。
ドゴォン!!
「ぶはっ!!?」
「あふん♡」
「ティア⁉それに、ダクネス⁉」
話し込んでいるとアカメに投げられたダクネスはティアと激突する。
「ふ、ふふふ・・・さすがはアカメだ・・・実に・・・私好みの攻めであったぞ・・・!」
「お・・・お姉ちゃん・・・」ムカムカッ
「あー、ごめん。手が滑ったわ」
全然悪びれてない様子のアカメを見て、ティアはまた怒り出す。
「この・・・バカぁ!!」
ベチャッ!
「ぶっ!!?」
怒ったティアはどこからか取り出したパイをアカメの顔面に投げて直撃させる。それによってアカメも標的をダクネスからティアに変更する。
「・・・やってくれたわ・・・ね!!」
ベチャッ!
「ぶっ!!?」
アカメもどこからかパイを取り出し、ティアの顔面に向けて投げて直撃させる。
「もーー怒った!!!謝ったって許さないよ!!!」
「上等よ!!!その顔も体も汚しきってやるわ!!!」
一度は収まった喧嘩が再び起こり、双子によるパイ投げ合戦が始まる。そのおかげでギルド内は滅茶苦茶だ。
「おー!!いいぞ双子共ー!!やれやれぇ!!」
「や、やめてください!!ギルドがパイで汚れてしまいます!!」
周りの冒険者たちは悪ノリしているが、ルナを含む従業員はパイ投げ合戦をやめるように声を上げている。が、その程度で双子は止まらない。
「わっ!もういい加減にしてくださいよ!こっちにも被害が飛びます!」
「ああ!アカメ!なぜまた標的をティアに変えるのだ⁉そのパイ投げの刑はティアではなく私にやってくれぇ!」
飛んでくるパイを避けながらめぐみんは喧嘩をやめるように言っている。ダクネスは別の意味で声を荒げているが。
「なになにー?何の騒ぎかしら?私も混ぜなさいよー」
「なんだ?いったい何の騒・・・」
ベチャッ!×2
『あ・・・』
そこに遅れてやってきたアクアとカズマがやってきて、その2人の顔にパイが直撃した。それを見た双子と周りの冒険者たちは唖然となる。それも当然だ、アクアはともかく、昨日の一件でパンツ脱がせ魔と評されているカズマに当たったのだ。どうなるかなんて予想もつかない。
「・・・・・・おい、このパイを投げつけた奴は誰だ?」
『この2人です』
明らかに怒気を含んでいるカズマを見て周りの冒険者たちは事の発端である双子を簡単にカズマに差し出した。
「・・・お前らのことだ。言ったところで喧嘩をするのは目に見えてるからそこは諦める。だがしかし・・・今度こんなパイを使った喧嘩をしてみろ。その時は・・・」
「「その時は・・・?」」
「お前らを縛り上げて身動きの取れない状態でジャイアント・トードの口の中へと運び込ませる。それが出来ないなら今すぐにでも放り込ませてやる。きっとパイの甘味がべっとりついてるから、さぞうまくてベロベロとなめまわしてきれいにしてくれるだろうよ」
「「すみません、二度としないのでそれだけはご勘弁を」」
「よろしい」
ジャイアント・トードにそれなりのトラウマを持っている双子はベロベロされる姿を想像してしまい、顔を青ざめながらカズマに土下座をする。カズマの例えを聞いためぐみんを含んだギルドにいる人物全員は顔を青ざめながら引いている。ダクネスだけは顔を赤くして興奮しているが。
「う・・・うぐぅ・・・汚された・・・私、汚されちゃったよぅ・・・私、女神なのに・・・。2人ともひどいよー!うわああああああ!!」
被害を受けたアクアはパイで汚れた顔を拭き取りながら泣いている。その際に拭き取っパイのクリームをペロリ・・・
「・・・あ、でも、このクリームおいしい・・・もっと欲しくなってきたかも!」
パイのクリームが絶妙においしかったのかすぐ泣き止んで、もっとパイを欲しがっているアクア。女神としてそれでいいのかと、カズマはそう思った瞬間である。
ーこのすば!ー
その後、アカメとティア、アクアはギルドの浴場に入って、身体についたパイのクリームを洗い落とした。身体を洗い終えた後は、仲間と共に着替えを行っているカズマの到着を待つことになった。そして、待つこと数分後・・・カズマはいつもとは違う恰好で出てきた。
「へぇ・・・かなり見違えたね。かっこいいよ、カズマ」
「カズマがちゃんとした冒険者に見えるのです」
今のカズマの恰好はジャージではなく、長ズボンにブーツ、シンプルな服に緑のマントといった、ちゃんとした冒険者の服を着こなしている。
「ジャージのままじゃファンタジー感ぶち壊しだものね」
「ファンタジー感?」
アクアの放った単語を理解していないのかダクネスは首を傾げる。
「初級とはいえ、魔法スキルを習得したからな。盾は持たずに、魔法剣士みたいなスタイルで行こうと思う!」
「あんたってば、本当に言うことだけはいっちょ前よね、言うことだけは」
カズマのかっこつけた発言にアカメは少しあきれている。
「ではさっそく、討伐クエストにいきましょう!それもたくさんの雑魚モンスターがいるやつです!」
「いや!一撃が重くて気持ちいい・・・すごく、強いモンスターを!」
「バカね、弱くも強くもない奴に決まってるでしょ。抵抗してるモンスターが苦痛に歪む顔が見たいわ」
「いや!ここは探索系のクエストにしよう!今こそ、私の真価を発揮する絶好の機会だよ!」
(こいつら全員まとまりがねぇー・・・)
やりたいクエストがバラバラでまとまりが全くないパーティにカズマは少し危機感を覚える。
「んー・・・じゃあ、ジャイアント・トードが繁殖期に入っていて、街の近場に出没しているから、それでも受け・・・」
「「「「カエルはやめましょう!!!」」」」
またジャイアント・トードの討伐を受けようとカズマが提案するが、ジャイアント・トードにトラウマがある双子、アクア、めぐみんは声を揃えてジャイアント・トード討伐に反対した。
「?なぜだ?」
「あー・・・この4人はカエルに食われてるからそれがトラウマになってるんだ。頭からぱっくりいかれて、粘液塗れにされたからな」
「!!粘液塗れ!!」
「・・・お前今、変な興奮しただろ」
「してない」
粘液塗れと聞いてダクネスは変に興奮したが、それをカズマに突かれて即座に否定する。
「だったら別のにするか?つっても、このメンツでのクエストは初めてだから、楽にこなせるやつがいいんだが・・・」
「これだからヒキニートは。そりゃ、カズマだけ最弱職の冒険者だから、慎重になるのもわかるけど、優秀な私をはじめ、上級職ばかり集まったパーティなのよ?お金ががっぽり稼ぐことができる高難易度クエスト一択に決まってるじゃない!」
アクアのこの言葉によって、カズマはアクアにたいして冷めた目で見ている。
「・・・お前、自分が1番優秀みたいな言い方してるけど、このパーティの中で1番役に立ってないのはお前だからな」
「!!」ビクッ!
カズマの言葉にアクアはビクついているが、容赦なくカズマは続ける。
「双子の息が合ってないといけないっていう条件付きだが、アカメの方は物理攻撃力が戦士クラス以上に高いし、物理攻撃の要として非常に役立ってる。ティアの方だって戦闘ではバインドで相手の動きを止めたり、俺たちの武器に状態異常属性を付与できて、俺でも割と簡単にカエルを素早く倒せたくらいだ。めぐみんだって1発しか撃てないとはいえ、威力は絶大。俺とティアの潜伏スキルをうまく組み合わせれば、奇襲だって仕掛けることが可能かもしれんのだぞ。ダクネスは敵に突っ込みたがる癖はあるものの、その防御力がピカ一なのは実証済みだ。まぁ、敵が引っ込んでもまた突っ込んでしまうのは難だが」
だがしかし!とカズマはアクアを指して言葉を続ける。
「お前、今日の今までなんか役に立つことがあったか?少なくとも俺にはお前が役に立った場面を見たことが一度もないんだが?ていうか、お前の存在意義って何?これまでのお前の姿を見ていると、元なんとかっていう威厳が全く見えないんだが?そんなお前が俺たちのパーティで役に立つことってなんだ?言ってみろよ」
「あ、あのぅ・・・私・・・回復魔法が得意でして・・・そ、それと・・・私、今も現在進行形で女神なんですけど・・・」
「女神!!お前が女神!!?お前のやったことなんてただ単にカエルに食われていただけじゃねーか!!それにさ、お前キャベツのクエストの時何やってたの?最終的にはキャベツをたくさん捕まえてたみたいだが、ただキャベツから逃げ回って転んで泣いてただけだろうが!!そんな奴が役に立つ女神だって言えるのかこの惰眠を貪る宴会芸しか取り柄のないごくつぶしがぁ!!!」
「わ、わあああああああん!!!!」
カズマの容赦のない口撃にアクアは耐え切れず泣き出してしまう。
「何か役に立ちたいという気持ちが少しでもあるのなら、何か手軽にできて儲かる仕事でも考えろ。俺が商売やる時の参考にしてやるから。それが嫌なら、お前の唯一の取り柄である回復魔法を教えろ。俺だって回復魔法を覚えたいんだよ」
「嫌ーーー!!回復魔法だけは嫌よーー!!私の存在意義を奪おうとしないでよ!!私がいるんだから別に回復魔法覚えなくたっていいじゃない!!うわあああああああん!!」
あまりに容赦のない口撃にアクアは回復魔法を教えるのを拒みながら大泣きしている。
「あんた・・・私以上に容赦ないわね・・・」
「カズマの口撃力はお姉ちゃん以上にえげつないね・・・」
「ですね。本音を遠慮なくぶちまけると、大概の女性は泣きますよ・・・」
「うむ・・・ストレスが溜まっているなら、代わりに私を、口汚く罵ってくれても構わないぞ・・・」
「いやそういう問題じゃないから」
その様子にはパーティメンバーたちに呆れられている(1名は除く)。するとカズマはふとダクネスをちらっと見る。
「・・・それにしても・・・」
「?どうした、カズマ」
「ダクネスさんって・・・着やせするタイプなんですね・・・」
現在ダクネスの鎧はキャベツの体当たりで壊れているために、今の姿は黒のスカートに黒のタンクトップ姿。その姿に加え、女性として誇らしい体つきで、明らかに下心丸出しのカズマである。そしてアクアをなだめているティアを見る。ティアの身体つきはダクネスには劣るが、出ているところはしっかり出ており、しかも軽装ゆえに、男心をくすぐられているカズマ。
「な、なんかカズマが・・・エロい目でこっちを見てるんだけど・・・」
「み、見てませんけど?」
「む?今私のことを、エロい身体つきしやがってこのメス豚がといったか?」
「言ってねぇよ!!?」
ダクネスのこの発言で、女性は見た目でなく中身が重要と認識したカズマであった。
「カズマ、エッチなのはいけないと思うの」
「すいません」
ティアに痛いところを突かれ、ぐぅのねもでないカズマ。そこで、ダクネスと隣にいた貧乳のアカメとロリっ子のめぐみんを比較する。
「今こっちをチラ見したわね?何か言いたいことでも?」
「おい、こっちをチラ見した意味を聞こうじゃないか」
「意味なんてないさ。ただ、俺に貧乳属性やロリ属性がなくてよかったと思っただけだ」
カズマのこの一言が余計で、アカメとめぐみんの怒りを買ってしまう。
「へぇ・・・いい度胸してるじゃないあんた・・・。ぐちゃぐちゃにされる覚悟があるってことよねぇ・・・?」
「紅魔族は売られた喧嘩は買う種族です。よろしい、表に出ようじゃないですか!!」
2人の怒りを買ったカズマは慌ててアクアを見ながら本題であるクエストの話に戻す。
「は、話を戻すが!とりあえずこの頭の悪いバカのレベルを上げられるクエストにしたいと思うんだが・・・何かいいのはないか?」
「ああ、それなら・・・これなんかどう?街外れの墓地に現れるゾンビメーカーの討伐」
ゾンビメーカーとは、他のゾンビたちを操るアンデッド族の中で下級と言われているモンスターのことだ。
「いいのではないですか?アクアのレベル上げには最適ですよ」
「どういうことだ?」
めぐみんの言葉の意味を理解していないカズマにアカメが説明する。
「プリーストのレベリングは他と比べて難しいのよ。何せ、私たちと違って攻撃スキルがないのだから。そういうわけで、プリーストのレベリングに最適なのがアンデッド族ってわけ。アンデッドは神の力が逆に働くわけだから、回復魔法を唱えると体が崩れるのよ」
「ああ、大概のゲームに近い話だな」
アカメの説明にカズマは納得する。
「俺としてはアクアがレベルアップして、知能が上がってくれれば問題ないが・・・問題はダクネスの鎧がないことなんだが・・・」
「うむ!私なら問題ない!伊達に防御スキルに特化してるいるわけではない。鎧なしでも、アダマンマイマイより硬い自信がある!それに殴られた時、鎧なしの方がずっと気持ちいいからな!!」
「今殴られると気持ちいいって言ったか?」
「言ってない」
「言ったろ」
「言ってない」
ダクネスのドMの趣向は置いておいて、ダクネスは鎧がなくとも、防御力が高いから問題ないとのことだ。
「後は、アクアがOKって言えば、問題ないんだけど・・・」
「おいアクア、どうするんだ?黙ってないで少しは会話に参加しろよ。今お前のレベリングの・・・」
「ぐーすかー・・・zzz」
「寝てるし・・・」
当のアクアは泣き疲れたのかぐっすりと眠っていた。
「へっ!大した大物っぷりだぜ!!」
「違う!!絶対そんなんじゃないから!!」
近くにいた荒くれ者の発言にカズマはツッコミを入れる。とはいえ、これでカズマたちの受けるクエストは決まったのだった。
ーこのすば!-
『討伐クエスト!
夜の墓場に現れるゾンビメーカーを討伐せよ!』
ゾンビメーカー討伐のためにカズマパーティ御一行は夕方の時間帯に街から出て、街外れにある墓地にまでやってきた。ゾンビメーカーが現れる時間帯は夜、まだ時間に余裕があるため、夜になるまでカズマたちはここでキャンプを行っている。とはいえ、墓の前でバーベキューなんて罰当たりなことをするわけにはいかないため、墓場より離れている場所でそれを行っている。
「あ!ちょっとアカメ!その肉は私が目を付けた奴よ!返してよ!私が食べようとした肉を・・・ああ!!食べられたーーー!!!」
「うるさいわね。世は弱肉強食、ボーッとしてる奴が・・・あっ!こらカズマ!それは私が食べようとした魚よ!魚や肉ばっか食べてないで野菜食べなさいよ!」
「世は弱肉強食じゃなかったのか?それに俺、キャベツ狩り以来どうも野菜が苦手なんだよ。焼いてる最中に飛んだり跳ねたりしないか心配になるから」
「大丈夫だよ。もしそうなってもお姉ちゃんの睨みで一ころ・・・というか、飛んだりするだけでどうして野菜が苦手になるのかわかんないんだけど」
「俺の故郷では野菜は飛ばないんだよ・・・」
なんやかんやあり、バーベキューを楽しんでいる間にも、もうすぐでゾンビメーカー出現時間の夜がやってくる。
「とりあえず眠気覚ましにコーヒー淹れるけど・・・誰か飲むやついるか?」
「ああ、私にも淹れてくれ」
「私も頼めるかしら」
「ああ、わかった」
カズマはまず3つのカップにコーヒー粉を入れ、そこに少量の水が出る初級魔法、クリエイト・ウォーターでカップに水を入れる。そしてそこにライターの火を出せる初級魔法、ティンダーをともして温めれば、コーヒーの出来上がりだ。これらの初級魔法はキャベツの収穫の際に仲良くなった冒険者から教えてもらったものだ。
「カズマ、私とティアにもお水をください」
「はいよ」
カズマはクリエイト・ウォーターでめぐみんとティアのコップに水を注ぎこんだ。
「カズマの初級魔法って便利だよね。初級魔法は誰も取得しないようなものなんだけど、ちょっと羨ましくなるよ」
「初級魔法って元々こういう使い方をするんじゃないのか?あ、そうだ。クリエイト・アース!」
カズマは突然初級魔法、クリエイト・アースを使ってさらさらと砂を出していく。この魔法についてめぐみんに尋ねる。
「なぁめぐみん、これって何に使うものなんだ?」
「その魔法で創った土で畑を耕すといい作物が取れるそうです。ただそれだけで他に使い道はありません」
この説明を聞いていたアクアは突如として割り込んできて、嘲笑う。
「何々、カズマさん、畑でも作るんですかー?冒険者から農家へとジョブチェンジするんですかー?土も創れるし、水も撒けるだなんて、さすがはカズマさん!私にはとてもマネできない汚れ仕事ですわー、プークスクス!」
「・・・クリエイト・アース!!&ウィンドブレス!!」
アクアの発言に怒ったカズマはクリエイト・アースで砂を出し、風を起こす初級魔法、ウィンドブレスで砂埃を発生させ、それをアクアの目元まで運び込む。
「ぎゃああああああああ!!!目が!!目がああああああああ!!!」
それには当然アクアは目に砂が入り、ゴロゴロとのたうち回る。
「す、すごいね、カズマは・・・魔法をあんな風に使うなんて・・・」
「へぇ・・・これが、初級魔法の正しい使い方なのね」
「違います違います!!普通はこんなことで初級魔法は使いませんよ!というか、なぜ初級魔法を魔法使い以上に使いこなせているんですかあの男は!!」
どうやら普通は初級魔法をこのような使い方をしないらしく、アカメやティアはおろか、魔法使いであるめぐみんでさえ驚いているのだった。
ーこのすば!-
コーヒーを飲んでいるうちにすっかり夜になり、いよいよ本格的にゾンビメーカーを討伐しようと動き出そうとするカズマたち。だが、夜だからか、それとも墓場の近くだからか知らないが、カズマたちは寒さで震えている。
「ううぅ・・・さささ、寒い~・・・」
「真夜中の墓地・・・うぅ・・・余計寒気が・・・」
「あんたたちなんてまだマシな方でしょ・・・うぅ・・・寒・・・」
「私たちは軽装だから余計に寒気・・・へくちっ!」
「うぅ・・・早く終わらせたいところだな」
「ああ・・・全くだ・・・」
あまり長いしたくないカズマたちは早く終わらせたい一心だ。するとここでアクアが不吉なことを言いだす。
「ねぇ、引き受けたのってゾンビメーカー討伐よね?私、そんな小物じゃなくて、大物のアンデッドが出る予感がしてるんですけど・・・」
「おい、そういう発言はやめろって!これがフラグになったらどうすんだ⁉」
「何よ!女神の言うことを信じないの⁉」
「お前の何を信じろって言うんだよ⁉」
カズマとアクアの方は放っておいて、そろそろ行動開始だ。
「そろそろだぞ、ゾンビが現れる時間は。カズマ、ティア、頼むぞ」
「うん!」
「わかった!」
カズマとティアは敵感知スキルを発動し、墓地に現れているゾンビを察知する。だが、その数は少し異常だ。
「お、反応が出たな・・・1体、2体・・・3体・・・あれ?めちゃくちゃ多いな」
そう、ゾンビメーカーが取り巻くゾンビは2、3体程度なのだが、これはそれを越えているのだ。それはつまり、この先にいるのはゾンビメーカーではない可能性が出てきたということだ。すると、ティアが驚いた様子でいる。
「これ・・・まずいかも・・・!」
「どうしたんだティア⁉」
「この先にいるの・・・ゾンビメーカーじゃない!アクアの言うとおりこれ・・・大物のアンデッドだよ!しかも、魔王軍幹部クラス並みの!」
「「「なっ!!??」」」
「それは本当なのかしら⁉」
「どんなアンデッドかは知らないけど、間違いないよ!」
まさかアクアの言ったことが現実になるとは思わなかった。メンバーは驚愕している。
「ほら言わんこっちゃねぇだろ!!!なんてことを言ってくれたんだ!!!」
「何よ!私のせいだっていうの⁉それより私の言ったこと、本当だったでしょ!謝ってよ!私を疑ったこと謝ってよ!」
「喧嘩してる場合じゃないわよ。あれを見てみなさい」
アカメの視線の先には、青い光を放った魔法陣が敷かれていた。その奥には、大量に湧き出たゾンビと、大物らしき黒いフードを被った人物・・・いや、アンデッドの方が正しいだろうか。
「本当にゾンビメーカーではないようだな。突っ込むか?ゾンビメーカーじゃないにしろ、こんな時間に墓場に現れた以上、アンデッドなのは間違いない」
「待ってください、奴らは都合よく一か所に固まっています。ここは我が爆裂魔法の一撃で灰燼に帰して差し上げましょう」
「お前ら待てって!!相手は魔王軍幹部クラスなんだぞ⁉特にめぐみん!爆裂魔法なんか使ったら、墓地事吹っ飛ぶだろうが!いいか?絶対やるなよ?絶対だぞ!!フリじゃないからな!!」
カズマはめぐみんに爆裂魔法を放つなというと・・・
「・・・・・・・・・・・・冗談ですよ。そんな念を押さなくても撃ちませんって」
「おい今返事に間があったぞ!!?撃とうとするなって!!!」
明らかに間があり、カズマは念入りにめぐみんに注意する。
「・・・ティア、気づいてるかしら、あのローブ」
「うん・・・絶対・・・あの人だよね・・・?」
黒いフードの正体に気付いたアカメとティアがひそひそと話していると・・・
「ああああああああああ!!!!」
「ちょっ!!?1人で飛び出すな!!」
アクアは勝手に1人で飛び出し、辺りに敷いてある魔法陣を踏み荒らす。
「リッチーがのこのことこんなところに現れるなんて不届きな!!!成敗してやるーーーーー!!!!」
「きゃあああああああ!!?」
リッチー・・・それは、ヴァンパイアと並ぶ最高位のアンデッド。魔法を極めた大魔法使いが魔道の奥義によって人の身体を捨てたノーライフキングと呼ばれるアンデッドの王である。
「やめ、やめ、やめてーーー!!!誰なのいきなり現れて!!?なぜ私の魔法陣を壊そうとするの!!?やめて!!やめてくださあああああい!!!」
魔法陣を壊そうとしてるアクアを黒いフードを被ったリッチーが止めに入る。
「うっさい!!黙りなさいアンデッド!!どうせこの怪しげな魔法陣でろくでもないことを企んでるんでしょ!!何よこの魔法陣!!この!!このぉ!!!」
そんなリッチーに構わず、アクアはリッチーが作った魔法陣を壊し続ける。その様子にはゾンビたちも戸惑っている。
「やめて!!やめてーーー!!!この魔方陣は成仏できない迷える魂たちを天に還してあげるためのものなんです!!ほら!!たくさんの魂たちが魔法陣から空に昇っていくのが見えるでしょう!!?」
リッチーの言うとおり、魔方陣のゾンビを見てみると、浄化されて霊となり、天へと昇っていく姿が多々あった。ただそれはアクアにとっては気に入らなかったようだ。
「はっ!!!リッチーのくせに生意気よ!!!そんな善行はこの私がやってあげるから引っ込んでなさい!!!見てなさい、こんなちんたら面倒にやってないで、この共同墓地ごとまとめて浄化してあげるわ!!!」
「ええ!!?ちょ・・・やめ・・・」
「ちょっ!!?」
「バカ!!やめ・・・」
「ターンアンデッド!!!!」
アクアは共同墓地全体に浄化魔法、ターンアンデッドを放った瞬間、墓地全体が白い光に包まれる。その瞬間、ゾンビたちが浄化され、天へと昇っていく。それはつまり、リッチーである黒ローブも・・・
「ほえええええええ!!?か、身体が消える!!!消えちゃう!!!や、やめてください!!!私の身体が消えてなくなっちゃう!!!成仏しちゃうからああああ!!!」
「あはははははは!!!愚かなるリッチーよ!!自然の摂理に反する存在!!神の意に背くアンデッドよ!!!さあ!!私の力で欠片ごと消滅・・・」
バチンッ!!!
「やめなさいよこの【ピーーーーーーーっ】女ぁ!!!!」
「いたぁ!!!?」
リッチーが浄化されかけているところをアカメはアクアの頭を強めに叩いた。
「ちょ、ちょっとアカメさん!!?何をするの!!?」
「あんたこそ、うちの家主に何してくれてんのよ!!?」
「えっ?家主?家主ってなんだ?」
「ウィズー!!大丈夫ーー!!?」
後から出てきたティアは何とか踏みとどまったリッチーに駆け寄る。事情を知らないカズマたちは戸惑う。
「あ・・・アカメさん⁉それにティアさんも⁉なぜこちらに・・・」
「あれ?このリッチーと知り合いなのか?」
「知り合いも何も、私たちが住んでいるところの家主がこの人だよ」
「何っ⁉そうなのか⁉」
「ということは、2人は居候だったのですね」
そう、このリッチーの正体は双子が住んでいるウィズ魔道具店の店主のウィズであったのだ。
「えっと・・・アカメさんとティアさんのおっしゃる通り、お2人にお部屋をお貸ししているウィズと申します・・・。リッチーです・・・。危ないところを助けていただき、ありがとうございます、カズマさん」
「いや、俺は何も・・・あれ?俺、名前言ったっけ?」
ウィズが自分の名前を知っていることにカズマは首を傾げる。するとウィズはにっこりと微笑む。
「皆さんのことは、アカメさんとティアさんから伺っていますよ。冒険者のカズマさんに、えっと・・・アークプリーストのアクアさん・・・」
「はあ?」
「突っかからないでちょうだい」
ウィズにさん呼ばわりして不機嫌になったアクアはウィズを浄化しようとするが、アカメがそれを止める。
「アークウィザードのめぐみんさんに、昨日パーティに加わったクルセイダーのダクネスさん。お2人とも、楽しそうに皆さんのことを話していたので・・・」
「そうだったのか・・・」
「ちょ・・・ちょっとウィズ⁉何言ってんの⁉やめてよー!」
「・・・ちっ」
ウィズの話を聞いて、いろいろと納得がいったカズマたち。ウィズに話を暴露されてティアは顔を赤くしており、アカメは舌打ちをしている。
「だから話を聞いて、カズマさんには、お礼が言いたかったんですよ?」
「俺に?」
「お2人は、これまでちゃんとしたパーティに加わった経験がなかったようで・・・帰ってきた際には、少し悲しそうにしていたんです。それが今では、楽しそうに・・・。お2人に変わって、お礼を申し上げます。お2人をパーティに入れてくださって、ありがとうございました!」
「お・・・おう・・・」
ウィズの話を聞いて、カズマは双子をパーティに除名しようとしていたなんて口が裂けても言えないと思った。
「そ、それはそうと!ウィズ、こんな墓場で何してるんだ?魂を天に還すと言ってたけど、このアホってわけじゃないが、リッチーのあんたがやることじゃないんじゃないか?」
「ちょっとカズマ!こんな腐ったみかんと喋っているとあんたまでアンデッドが移るわよ!!?ちょっとそいつにターンアンデッド・・・」
「あんたは話がややこしくなるから黙りなさい。さもないとこの場で【ピーッ】して八つ裂きにするわよ」
「アクア、放送禁止用語に八つ裂きはさすがに止めるけど、本当に黙っててくれないかな?話の邪魔だから」
「う・・・うううぅぅぅ・・・何でよぉ・・・何でクソリッチーを庇うのよぉ・・・」
アクアがまたウィズにターンアンデッドをかけようとすると、アカメがどすの利いた目で睨みつけ、ティアが困ったようにしながら止める。仲間に強く言われ、ウィズを庇おうとする姿勢にアクアは涙目である。
「そ、そのぅ・・・私はリッチーですから、迷える魂たちの話が聞けるんです。この共同墓地の魂の多くはお金がないためろくにお葬式もしてもらえず、天に還ることもなく、毎晩墓場を彷徨っているんです。なので、定期的にここを訪れ、魂を天に送っているんです」
「いい人だ・・・アカメとティアが羨ましい・・・」
「それは立派だけど、そういうのはこの街のプリーストがやればいいんじゃない?」
ティアの至極全うな正論にウィズは少々困ったような表情をしながら答える。
「そ、そうなのですが・・・そのぅ・・・この街のプリーストさんたちは拝金主義・・・あ、いえ、その・・・お金がない人たちは、後回し、と言いますか、そのぅ・・・あのぅ・・・」
「要するにこの街のごくつぶしプリースト共は金儲け優先の奴ばっかで金が寄り付かない連中が埋葬されてる共同墓地には興味がないってことでしょ」
「あ・・・えっと・・・言い方はともかく・・・そうです・・・」
「ああ・・・」
「なるほど・・・」
「納得だ・・・」
「うん・・・いい例がいるしね・・・」
「ちょ・・・何よ⁉なんでみんなしてこっち見るのよぉ!!?」
ウィズの説明とアカメの解釈に納得した4人は真っ先にアクアを見つめる。
「まぁ・・・いいんだけどさ・・・ゾンビを呼び起こすのだけはどうにかしてくれないか?俺たちがここに来た目的って、ゾンビメーカーを討伐してくれってクエストを受けてきたからなんだが・・・」
「あ・・・そうでしたか。でもその・・・呼び起こしてるわけではなく、死体が私に反応して勝手に目覚めちゃうんです。私としては、この墓場に埋葬されている人たちが迷わずに天に還ってくれれば、私がここに来る理由もなくなるんですが・・・」
「要はここのゾンビたちを浄化さえできれば問題ないって、ことだよね?でも、ここのプリーストはダメだってわかったからなぁ~・・・」
一同はどうすればよいのかというのを悩んでいると・・・
「いるじゃない。ここに1番の適任が。ねぇ?自称、女神様?」
「!」ビクッ
アカメがアクアの後ろに回り込んでゆっくりと肩を掴みかかる。それにはアクアはビクッと震わせている。
ーこのすば!-
そういうわけで、今後はアクアが定期的に共同墓地に赴き、ゾンビたちを除霊するという形で話がまとまり、とりあえず双子は残りのゾンビをアクアたちに任せて、ウィズを家まで送っていくという名目で魔道具店までの帰路を歩いていく。
「とりあえず、アクアに浄化されなくてよかったね、ウィズ」
「あ、ありがとうございます・・・すみません、ご迷惑ばかり・・・」
「まぁ・・・あいつのことだから、これで懲りるとは思わないけど」
数日の期間でアクアのことを理解している双子は若干ながら苦笑を浮かべる。
「・・・それはそうと、あんたがリッチーだったなんて、聞いてないけど?」
アカメの言葉にウィズは申し訳なさそうな顔をしている。
「ご、ごめんなさい・・・隠すつもりはなかったんです。ただ・・・そのぅ・・・なんといいますか・・・」
「大丈夫だよ。私たちはあそこに住み始めて、ウィズがどんな人かっていうのはもうわかってるから。そこにリッチーは関係ないよ」
「ティアさん・・・」
ティアの嘘偽りない言葉と気遣いにウィズは自分の素性を教えなかったことを本当に申し訳さなそうにしている。
「ま、害がないのなら、私から言うことは特にないわ。せいぜい自称女神様に浄化されないように、精進することね」
「アカメさん・・・」
素っ気ない態度ながらも、アカメはウィズにたいしてそう言い放った。双子はウィズがリッチーだからといって、態度が変わることはないようだ。
「でもあの場の相手がウィズでよかったよー。何せリッチーはアンデッドの王・・・もしもウィズじゃない奴だったら、カズマとめぐみんは間違いなく死んでたね」
「でも、アクアのターンアンデッドで浄化されかけていたのが、不思議でならなかったのだけど」
「確かに・・・不思議なことがあったものだねー」
「あ、あのぅ・・・」
双子が話し込んでいると、ウィズが申し訳なさそうに話しかけてきた。
「ほ、本当に私・・・今まで通りに、お2人と接してもよろしいのでしょうか?」
ウィズのその問いに、双子は互いに顔を合わせて、再びウィズに顔を見せる。
「何言ってんの?当たり前じゃん。嫌う理由がないもん」
「ま・・・こっちの期待を裏切るようなことがあれば別、だけどね」
「お姉ちゃん!」
「ま、せいぜい行動で信頼を強めることね」
双子の答えにウィズはほんの少し間があったが、すぐに穏やかににっこりと微笑む。
「・・・はい。ありがとうございます」
双子とウィズはウィズ魔道具店までの道のりを微笑ましい話をしながら、歩いていくのだった。
「・・・あ、そういえば思い出したけど・・・クエスト・・・どうしよう?」
「・・・あ」
「ああああ!!す、すいません!すいません!本当にすいません!!」
『討伐クエスト!
夜の墓場に現れるゾンビメーカーを討伐せよ!
リタイア!!』
次回、この強敵に爆裂魔法を!