星乙女達の夢の跡   作:護人ベリアス

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猛者の突き付ける現実

「…まだ納得できんか?リオン?」

 

「あーあたしにも見えるぜーリオンが不貞腐れながらもそれでも意地でもあたし達を見送ろうと立ってるイメージがよ」

 

「…」

 

 派閥連合の会議の翌日。

 

 輝夜とライラは自らの役割の一つと定めた【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の説得へと早々に動き始めた。

 

 そして最初に交渉相手として狙いを定めたのは【フレイヤ・ファミリア】。

 

 二人は【フレイヤ・ファミリア】本拠『戦いの野(フォールクヴァング)』へ向かうべく準備を整えていた。

 

 そしてリューは二人の見送りのため二人のそばに付き添っている訳である。

 

 ただ輝夜が表情から汲み取り、ライラも察したのはリューの抱く不満。

 

 その不満の所以は二人が【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の交渉役を引き受けたことにあった。

 

「…納得はしようと努力しています。ただ私自身の経験上交渉の成功は相当困難を極めるかと思うと…」

 

「それくらい分かっておるわ。私達はリオン程楽観的ではないからな」

 

「そうそう。何もあたし達は一回で交渉を成功させようとは思ってないぜ?どこぞのリオンと違って」

 

「うっ…」

 

 輝夜とライラの嫌味にリューは言葉を詰まらせる。

 

 …二人の指摘通り楽観的に一回で交渉が成功すると思って動いたのがリュー自身だったからである。

 

 二人に指摘され自らの浅はかさを恥じ入るリュー。

 

 本当は輝夜とライラも事前申し入れをすることなく今から乗り込もうとしていたりとリューと大して変わりない振る舞いなのだが、生憎リューは気付かない。

 

 それはともかくとしても輝夜もライラもリューに嫌味を言って非難したいだけ…というつもりはなかった。

 

「ま、何も私達が自暴自棄になって殺されてでも構わないから、説き伏せてやるとかそういう重過ぎる覚悟で臨んでる訳ではないのだから、そう心配するな」

 

「そうそう。特に【フレイヤ・ファミリア】の連中に殺されそうになったら尻尾巻いて逃げてくるから、連中の追手が来たら相手してくれよ?」

 

「それは流石に…」

 

 ライラの冗談に苦笑いで応じるリュー。

 

 実はこの役割を輝夜とライラが担うと名乗り出た際にリューが一番不安視したのは輝夜が口にした事柄であった。

 

 輝夜とライラは直前まで生きる希望を失っていたこと。それはリュー自身目の当たりにし知っている。

 

【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】との交渉は困難を極め、最悪の場合には命を落とすリスクも検討の中に入れなければならないこと。シャクティやアスフィが延期を提案する程の警戒度で挑むしかないということをリューも知っている。

 

 だからそんな役割を輝夜とライラに任せるのはリューには気が進むはずがなかったのだ。

 

 だがそれでも輝夜とライラはリューにこう説いていた。

 

「色々話し合った上での決定である以上、私達の言い分もある程度記憶しておろうが、私達はリオンの理想が私達にとっても希望足りえるか知るためにこの役割を引き受けた」

 

「要はリオンの希望に賛成したいっていう意志はあることは忘れないでくれよ?色々思う所はあるけど、あたし達の本心としてはリオンの力になるために交渉に出向こうと思ってる」

 

「もちろん記憶しています。二人の思いを私が忘れるはずがありません。その思いを無碍にしたくないからこそ…私は今こうして二人を見送ろうとしています」

 

 輝夜とライラはリューの理想を信じ、希望足りえるか確かめるために交渉に臨む。

 

 輝夜とライラはリューの希望を共有し実現すべく交渉に臨む。

 

 そう前向きに希望を求めようとする輝夜とライラの姿勢を感じ取ったリューはそれまで抱いていた不安を脇に置かなければならないと理解した。

 

 未だに完全には脇には置けてはいないとはいえ、リューは積極的に前へと進み希望を取り戻そうとする二人の背中を支えようと決心していた。

 

 それは二人の要望を聞き入れ全員に認めてもらえるような会議の場を設け、こうして見送りに来ていることからも明らか。

 

 リューは輝夜とライラと同じ希望を抱くという理想を実現できるかもと期待していた。

 

 だが輝夜の『希望足りえるか知る』という言葉の意味は二人の中ではリューの思う以上に大きかった。

 

「ただ私達はリオンの理想を正直簡単には受けれられん。【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】と手を取り合う…現実を見れば絵空事なのは誰もが思うことだからな」

 

「特に【フレイヤ・ファミリア】との協力はあたし達的には現実味がないと見るなぁ。連中の一番は迷宮都市(オラリオ)ではなく連中の慕う女神様。闇派閥(イヴィルス)が連中の脅威となるほどの戦力を取り戻さない限り動こうとはしないだろうぜ」

 

「それどころか連中にとっての今の仮想敵はこの小人族(パルゥム)様御贔屓の【ロキ・ファミリア】。そっちの連中も【フレイヤ・ファミリア】の警戒を招くくらいなら闇派閥(イヴィルス)との戦いからは手を引こうと一年も無駄に時を浪費した。正直私は当てにはしたくない。どちらも現状を鑑みれば共に協調するには値しない」

 

「輝夜の嫌味は置いておいてだな…どちらにせよ一方との協調は一方との敵対に繋がる以上軽率な判断は控えたいしよ。かと言って双方との敵対は当然論外で双方との協調は難し過ぎる。…ある意味八方塞がりだよなぁ。知恵を絞ればどうにかなるとはちょっとあたしには思い難いねぇ」

 

「…分かっています。二人の考えは」

 

 リューの理想である【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】との協調。

 

 輝夜もライラもリューの理想を完全に共有することだけはできなかった。

 

 輝夜の見定める現実もライラの頼りにする知恵もその実現への道筋を示さなかったからである。

 

 だがそれでも二人が交渉の場に立つことを決めたのは二人自身の言葉通りの理由であった。

 

「それでも…輝夜とライラは私と同じ理想を掲げ、同じ希望を抱くべく力を尽くしてくださる…そうでしたよね?」

 

「その通りだ。リオンに見える理想を私も共に見てみたいと思った。正直それだけでも連中の相手をする理由は立つ」

 

「同じく。あたしもリオンの理想が実現したら凄いじゃねぇか。ならあたしも力になりたいと思うのが当然だろ?」

 

「輝夜っ!ライラっ!」

 

「まぁ仮想敵の本拠に乗り込んでの敵情偵察は欠かせないしな」

 

「そうそう。どちらの派閥も活動自体が隠密になってるようで情報が掴みにくくてよぉ。交渉を名目に仕入れられる情報は仕入れないとな」

 

「…輝夜。…ライラ」

 

 輝夜とライラのリューの理想を共に信じようという意志のこもった言葉にリューは感極まりそうになる。

 

 …が、早々に輝夜とライラが裏の感情を暴露し始めたためリューは一瞬に冷めた表情に戻る羽目になる。

 

 などという風に色々話し込んでいたが、出発の時間をあまり遅らせてはいけないとリューは思い至る。

 

 そのためリューは話を切り上げるためにも輝夜とライラの前にすっと手を差し出した。

 

「ん?どうした?リオン?」

 

「…いつもはアリーゼが提案していましたが…今はアリーゼがいない。アリーゼは未だ目覚めない。なので…私が代理で」

 

「…そういえば会議の時上座が空いていたな。何気なく私達が使っていたが…」

 

「ええ。あそこはアリーゼの席です。派閥連合結成の際に私は【アストレア・ファミリア】団長であるアリーゼの代理として指導者に就任しましたから」

 

「…そうか。まぁその点はいい。それでリオンは例のあれをやろうと言うのだな?」

 

「…はい。事を成す前には決まってアリーゼが提案して下さった誓いの証を」

 

「…何の話をしてるのかピンとこなかったけど、まさかあの小恥ずかしいあれか?」

 

 輝夜が一瞬話を逸らせて複雑な表情を浮かべるという脱線を挟みつつもリューが提案したのはいつもならアリーゼが提案していた『あれ』。

 

 その『あれ』が何か輝夜とライラはすぐに察し、輝夜は若干の諦め顔を浮かべライラは嫌そうな表情になる。

 

 二人の様子から気が進んでいないのは明らかだが…

 

「…あの日以来誓いとして手を重ねることさえできない日々が続きました。だから…私は再び三人で共に戦えるようになったこの日改めて共に戦うことを誓いたいのです。そして…遠くないうちに希望を取り戻し、アリーゼも加えた四人で誓える日を取り戻す。それが私の願いなのです。なので…」

 

「…分かった。リオンがそこまで言うなら仕方あるまい。ライラ。お前も嫌がらずに大人しくリオンの望みを聞いてやれ」

 

「ったく…仕方ねぇなぁ。リオンのためならこれくらいの恥なんともない、か」

 

 リューの告げた願いを聞き、輝夜はリューの手の上に自らの手を重ね、もう片手でライラの手を自らの手の上へと導く。

 

 三人の手が重なったその時。

 

 今ここにはいないアリーゼに代わってリューが導きの言葉を紡ぎ出す。

 

「…私はアリーゼのように希望を示すことはできません。アリーゼのように頼りがいはないかもしれません。だとしても…私でも大切な仲間と共に戦うことはできます。輝夜。ライラ。共に希望を取り戻すために戦ってくださいますか?」

 

「あぁ。当然だ」

 

「もちろん」

 

 リューの不安交じりの質問に輝夜もライラも短くも力強い言葉で応じる。

 

 その言葉に背中を押され、自身を得たリューはアリーゼがいつもは口にしていた誓いの言葉を紡ぎ出した。

 

 

「使命を果たせ!天秤を正せ!いつか星となるその日まで!正義の剣と翼に誓って!!」

 

「「正義の剣と翼に誓って!!」」

 

 

 リューの言葉に続いて輝夜とライラは唱和する。

 

 ここに星乙女達の希望を取り戻すために戦う誓いが為されたのである。

 

 その初戦は【フレイヤ・ファミリア】との交渉と相成った。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「…あんな風にリオンに見送ってもらっておいてあれなんだが…あたし達この成果はちょっと…リオンに伝えにくくないか?」

 

「…こうなることは想定済みだったとも言えるし、本拠に入って【猛者】と交渉の場を設けられたという意味では前進はあったとは言え…リオンに顔向けしにくいという気持ちは分からんでもない」

 

 三人の誓いから半日。

 

 輝夜とライラは【フレイヤ・ファミリア】本拠『戦いの野(フォールクヴァング)』の前にいた。

 

 輝夜の言葉通り無事交渉を終えることはできた。

 

 事前の申し入れも抜きで唐突に乗り込んだ輝夜とライラではあったが、武装を解除した上で訪れるという誠意という名の準備は行っていた。この点をリューは見落としていた訳である。

 

 どちらにせよ現状の輝夜とライラでは【フレイヤ・ファミリア】の第一級冒険者達どころか下級冒険者にさえ後れを取る恐れがある…そんな厳然たる事実から来る判断でもあるとは言え、この判断は正しかった。

 

【フレイヤ・ファミリア】の警戒を一程度解消することに成功したのである。

 

 そして武装を解除した輝夜とライラはフレイヤではなく団長のオッタルに交渉を持ちかけた。

 

 確かに【フレイヤ・ファミリア】の行動を決定しているのはフレイヤであり、フレイヤに単刀直入に交渉すれば早いというリューの判断は強ち間違ってはいなかった。

 

 だがフレイヤに強烈な崇敬の念を抱く【フレイヤ・ファミリア】の団員達を前にフレイヤに会わせて欲しいと申し出るのは流石に警戒を招き不敬だと取られかねないという点まではリューには理解できなかった。

 

 その反省を生かしてという意味でも二人はオッタルとの交渉に対象を切り替えて挑むことにしたのである。

 

 だが…成果はほとんど何もなかった。

 

『フレイヤ様の御身のため。我々はフレイヤ様の御心に従う』

 

『団員の多くは【ロキ・ファミリア】との決着を望んでいる。…当然俺自身も』

 

【フレイヤ・ファミリア】団長である【猛者】オッタルとの交渉の場で得られた言質を要約すればこれ以上もこれ以下もなかった。

 

 フレイヤの身の安全を守るためなら実力行使を辞さないこと。

 

 フレイヤの命令には絶対的に従うこと。

 

【フレイヤ・ファミリア】の団員達は【ロキ・ファミリア】の決戦に逸っていること。

 

 要は判明した成果はそれだけ。ある意味事前に分かっていた情報以上のものを何一つ得られなかった。

 

【ロキ・ファミリア】の名前を口にしようものなら、オッタルの殺意のこもった視線で睨め付けられ、あの輝夜とライラが怯んで言葉を噤んだほどである。

 

 そんな訳で派閥連合への協力要請どころではなくオッタルは事実上の【フレイヤ・ファミリア】の意向を告げて、もう二度と来るなと言わんばかりに交渉の場…いや、交渉など成立していなかった以上宣告の場と言うべき場を輝夜とライラの意向を聞くこともなく幕切れさせた。

 

 交渉という意味では成果なしである。

 

 せめてものと副次的目標として掲げていた本拠に乗り込んだことで分かったことも【フレイヤ・ファミリア】の団員達は軒並み『洗礼』という名の死闘に明け暮れ、【ロキ・ファミリア】との決戦の日に向けた準備に余念がないということ。

 

 総括するなら成果は【フレイヤ・ファミリア】に一切協調する意志がないということが明確に分かったことのみである。

 

「…あの女神の乳離れもできん餓鬼めが…フレイヤ様フレイヤ様フレイヤ様とそれしか言えんのか!あのような迷宮都市(オラリオ)のことをほとんど考えぬ連中の力を借りねばならん我々の立場が実に忌々しい!!糞猪めがっ!!脳が空っぽな餓鬼なら大人しく女神の乳でもずっと吸っていろっっ!!」

 

「餓鬼と言っても輝夜より年上で実力も輝夜を圧倒してるがな…ともかくそのフレイヤ様の意志が読めねぇのが困るどころじゃねぇ…女神の気まぐれで色々と滅茶苦茶になるなんて勘弁しろよ…その上眷族にも止める気がねぇとか…どう考えても対策を怠る訳にはいかねぇじゃねぇかよ…」

 

 輝夜が苛立ちを顕にして罵倒を喚き、ライラが頭を抱える。

 

 …輝夜が罵倒を喚いているのが罵倒対象の【フレイヤ・ファミリア】の本拠の前であるという恐ろしい事実は気にしてはいけない。

 

 そして周囲で罵倒を耳にしている【フレイヤ・ファミリア】の団員達は主神であるフレイヤのことになれば別だが、団長であるオッタルが罵倒されることは全く問題ないらしい…という点はともかく。

 

 オッタルに気圧されてしまったという事実に、輝夜は自らの不甲斐なさを自覚せざるを得ず荒ぶる。

 

 ライラの懸念した輝夜の激昂による交渉の妨害はオッタルの気迫によって未然に防がれてしまっていた。そのためオッタルのいないこの場で輝夜は額に青筋を立てて罵倒し地団駄を踏みと荒れに荒れる。

 

 だが今更荒ぶったところで何の成果も生まれない。

 

 そしてこの荒ぶり具合がオッタルの前で発動せずに良かった…という訳にはいかなかった。

 

 ライラもまた碌に知恵を生かした交渉を遂行できなかったことへの後悔が止むことはない。

 

 もちろん生粋の武人である武骨なオッタル相手に知恵を生かして翻弄するという手段は取れないとしても理を説き利を説き弱みを握りと何とか交渉の糸口を掴めないかと尽力するはずが、糸口を掴むための言葉さえほとんど発せなかったのである。

 

 その上交渉終了後呑気に輝夜とライラが本拠内の状況を一程度把握できたこと自体【フレイヤ・ファミリア】の余裕の証。

 

 …それを輝夜は未だ気付いていない雰囲気だが、伝えるとさらに輝夜は荒ぶりライラに八つ当たりまで始めそうなので心に秘めている。

 

 言うまでもなくライラも輝夜と同じ程度にはオッタル達【フレイヤ・ファミリア】に不快感を抱いていた。その取り付く島のなさと余裕を目の当たりにすれば普段は冷静なライラでも不快感を覚えて苛立つ。

 

 だがライラはそんな不快感よりも憂慮が勝った。

 

 フレイヤが如何に動くかも読めず手足となって動く団員達は迷宮都市(オラリオ)のことなどお構いなしにフレイヤの命令に従う。

 

 ただでさえ闇派閥(イヴィルス)への対応だけでも四苦八苦している派閥連合に【フレイヤ・ファミリア】という不穏分子まで加わるのだ。

 

 対処策を練る策士の立場を担うと自らに課したライラからすれば頭を抱えるどころの騒ぎではない。

 

【フレイヤ・ファミリア】による【ロキ・ファミリア】との唐突な抗争の開始などまで踏まえて闇派閥(イヴィルス)への対処策を練る必要に迫られているのである。その上対処策を派閥連合全体に言い含めさせるとなると…

 

 …ライラには二人が【フレイヤ・ファミリア】との交渉の結果を報告した後の会議が紛糾する様子がありありと思い浮かんでしまう。

 

 こうして輝夜もライラも揃ってリューに今回の交渉の結果を伝えるのが気が進まないという訳である。

 

 だが実は輝夜とライラの気掛かりはそれだけでもなかった。

 

 

 その気掛かりとはリューの口から出たアリーゼの名。

 

 

 …輝夜もライラもアリーゼに関するリューが知らない事実を知っている。

 

 アリーゼが目覚めていることもアリーゼが自らの希望を探すべく輝夜達でさえ知らぬ場所で尽力していることも。

 

 にも関わらずリューはそれらの事実を知れずひたすらアリーゼが目覚めるのを一途に待っている。

 

 常にリューの心の中でアリーゼのことを想いながら。

 

 派閥連合の会議の場でアリーゼの席を設け、自らはアリーゼの代理に過ぎず派閥連合の指導者は本来はアリーゼであるという歪さまでも感じる執着を抱きながら。

 

 輝夜もライラもリューの名を聞いた時思わず二人の知るアリーゼに関する事実を伝えたいと揃って思ってしまっていた。

 

 だがそれはできなかった。リューに伝えないことをアリーゼが二人に厳命していたからである。

 

 そのためリューは今もアリーゼの真実を何も知らぬまま。

 

 派閥連合の行く末も不安だが、アリーゼが今何をしているのかという点も輝夜にとってもライラにとっても気掛かりであった。

 

 だが行く末をいくら案じても未来は変わらないし、アリーゼのことを案じた所で何もできないことは輝夜もライラも理解している。

 

 だから輝夜もライラも自らの役割を全うすべく心機一転を図るように呟いた。

 

「…まぁいい。明日は【ロキ・ファミリア】との交渉か。それまでに今日得た情報をできる限りまとめるぞ」

 

「…あぁ。うちの勇者様には期待したい所だけどよ…先のことより今日得た知識を知恵に変える方が優先だな。せっかくおこぼれで頂戴した情報。しっかり生かさせて頂きますかねぇ」

 

 輝夜もライラも【フレイヤ・ファミリア】との交渉の失敗ではなく情報の整理や【ロキ・ファミリア】との交渉へと意識を切り替える。

 

『輝夜。ライラ。あんた達は自分の力で希望を見つけ出しなさい。片腕がなくなっても失明してもできることはあるはず。希望は必ずある。今は希望が見出せていないだけ。私はそう信じている』

 

 そんなアリーゼの伝えた信頼にこたえるかのように。

 

 輝夜とライラは『戦いの野(フォールクヴァング)』に背を向けたまま一歩また一歩と先を急いだ。




お久しぶりと言いつつ今作では初めての【アストレア・ファミリア】の誓いのシーン。
…四人が揃うことはもう少し先になりそうです。

その点はともかく今回は【フレイヤ・ファミリア】に一応は焦点は当ててあります。
が、オッタルと輝夜さんとライラさんが話すシーンが思いのほかイメージできなかったのと何より一発で説得させる気はさらさらないというか…
そもそも原作でも3周年『大抗争』ではまずまずに共闘してましたが、原作で共闘を成立させたのは外伝12巻だけ。あそこまでの異常事態にオラリオは現状到達していない。
…そんな状況下でフレイヤ様が共闘というある意味の束縛に従うのか作者的には甚だ疑問です。
伴侶を見つけるためでも救界に参加であろうともどちらにせよ現状の闇派閥は正直【フレイヤ・ファミリア】の脅威ではない。オラリオの治安を乱すという意味では未だ脅威でもフレイヤ様的には関心を失っている状況でしょうか?
フレイヤ様の意向は原作既読の方はどう描くのかまぁお察しでしょう。
よって輝夜さんとライラさんが向き合うのはオッタルさんの意向ですね。
オッタルさんは現状【ロキ・ファミリア】との決戦に過激派ではなくもやる気は満々。
どう対処するかは今後次第です。

そして誰かがアリーゼさんのことを思い浮かべたら今作お約束(にしたい)アリーゼさん回の導入です。
まぁ流れから誰が登場するかお察しでしょう。
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